JP2007503846A5 - - Google Patents

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非食細胞中への侵入について減弱化されているリステリア、そのリステリアを含むワクチン、およびそれらの使用法
(関連出願)
本発明は2003年2月6日付け米国仮出願第60/446,051号、2003年2月21日付け米国仮出願第60/449,153号、2003年7月24日付け米国仮出願第60/490,089号、2003年10月15日付け米国仮出願第60/511,719号、2003年10月15日付け米国仮出願第60/511,919号、2003年10月15日付け米国仮出願第60/511,869号、および題名「非食細胞へ導入するための減弱化リステリア、リステリアを含むワクチン、およびその使用法(Listeria Attenuated for Entry into Non−Phagocytic Cells,Vaccines comprising the Listeria,and Methods of Use Thereof)」の2004年2月2日付け米国仮出願の優先権の利益を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの内容を本発明の開示に援用して参照する。
(発明の分野)
本発明の分野はワクチン用の減弱化細菌に関する。詳しくは、本発明はワクチン組成物中で有用な減弱化Listeria monocytogenesと、これらのワクチンの処置における使用法に関する。
(発明の背景)
異種抗原を送達するワクチンとして使用するために微生物が開発されてきた。異なった種由来のタンパク質または抗原をコードする核酸配列を含むように改変された微生物により、異種抗原の送達が行われる。癌または病原性物質(例えばHIVまたはB型肝炎)等の有毒または致死的病原から生じる疾患または病状を処置または予防するために、異種抗原の送達は特に有利である。天然型または有毒感染性物質の注入は、受容生物に対し潜在的に有害である。罹患個体中で散発的に生じる癌細胞はその後伝播することがあり、同様に受容生物に対して潜在的に有害である。減弱化または死滅した物質または細胞の投与が有効な免疫応答を誘発するのに成功しないことがはっきりしている場合、または感染性物質または癌細胞の十分な減弱化の保障が許容可能な範囲で得られない場合、異種抗体送達は特に有利である。最近、ある種の細菌株が組み換えワクチンとして開発されている。例えば、プラスモジウム・ベルグヘイ・サーカムスポロザイト(Plasmodium berghei circumsporozite)抗原を発現するように改変した減弱化サルモネラ(Salmonella)の経口ワクチンは、マウスをマラリアから保護することが示されている(Aggarwalら、1990、J.Exp.Med.172:1083)。
異種ワクチンとして使用できる可能性のあるクラスの細菌は通性細胞内細菌である。これらの細菌に対する免疫応答は体液性反応、細胞媒介反応またはその両方である。しかしながら、細菌した細胞内細菌、または細胞内細菌の成分は完全な細胞媒介免疫応答を誘発し得ない(Lauvauら、2001、Science、294:1735−9)。これらの細菌はその生活環の一部をその宿主の循環系またはリンパ系で自由に過ごすことが可能で、そこでヒトの免疫系の先天性および抗体(例えば体液性)反応に関与する。
通性細胞内細菌はまた、その生活環の一部を宿主細胞内に閉じ込められて過ごし、そこで細菌は宿主の免疫系の先天性および体液性特性から保護され、宿主の免疫系の細胞媒介反応に感受性となる。全ての細胞媒介免疫応答は、記憶(エフェクターまたは中心)T細胞でもあるエフェクターTリンパ球を刺激する免疫応答である。全ての細胞媒介免疫応答は宿主細胞の表面上の抗原の提示に由来する。宿主の食細胞が生きた細菌、死滅細菌または細菌の成分をリソソーム中に貪食し、リソソームはファゴライソソームに成熟し、タンパク質抗原をペプチドに分解する。食細胞のファゴライソソーム内に含まれる抗原のペプチドは、T4+T細胞による認識およびTヘルパー反応の活性化のため、MHCクラスII分子によりこれらの食細胞の表面上に提示される。哺乳動物の体内の任意の細胞の細胞液中に発現する抗原のペプチドは、CD8+T細胞による認識および細胞毒性T細胞(CTL)反応の活性化のため、MHCクラスI分子によりその細胞の表面に提示される。しかしながら、細菌した細胞内細菌または細胞内細菌の成分は非食細胞中に侵入し得ないか、または食細胞のファゴライソソームから逃れて細胞液中に侵入することができず、結果的に食細胞、例えばマクロファージおよび樹状細胞を活性化し成熟させる。従って、細菌した細胞内細菌または細胞内細菌の成分は、直接MHCIの提示に利用できず、CTL反応を活性化し得ない。完全に有効な細胞媒介免疫応答を誘発するためには、細胞内細菌がタンパク質をファゴライソソームおよび/または宿主の細胞液内に生産する能力が必要と思われる。
Listeria monocytogenesは、抗原を免疫系に送達する異種タンパク質の細胞内送達賦形剤として開発され、癌(Paterson、米国特許第6,051,237号、第6,565,852号)およびHIV(Portnoyおよびパターソン、米国特許第5,830,702号)等の疾患を誘導する病原体の注射ができない病状に対し免疫応答を誘発する。条件性細胞内細菌であるL.monocytogenesは体液性および細胞媒介細菌抗原特異性免疫応答を誘発する。リステリアが宿主生物の細胞内に侵入後、リステリアは貪食宿主細胞のファゴライソソームから逃れ得るリステリア特異性タンパク質をその細胞の細胞液中に生産する。細胞内でL.monocytogenesが増殖し、生存に必要なタンパク質を発現する一方、リステリアプロモーターに作動的に結合した異種遺伝子も発現する。これらの異種タンパク質をMHCタンパク質により貪食細胞の表面に提示することにより、T細胞反応を発達させることが出来る。L.monocytogenesは免疫無防備の個体および妊婦で重大な感染を生じるグラム陽性の食物内在ヒトおよび動物病原体であるので、宿主に対する毒性を減少するが、ワクチンの免疫原性を維持する方法でこれらの細菌種を減弱化しなければならない。この毒性は宿主の臓器および肝臓、脾臓および中枢神経系等の組織に細菌が侵入した結果である。選択的感染と重症疾患に関連する異種コード抗原に特異的な適応性細胞媒介免疫を誘発する潜在能力に影響を及ぼすことなく、ワクチンとしてのListeria monocytogenesの使用に伴う危険性を減少することは有益であると思われる。
(発明の要旨)
本発明は全体として減弱化リステリアおよびListeria monocytogenesを提供する他、特にワクチン中でこれらのリステリアを使用する方法を提供する。このワクチンは免疫応答の誘導、および癌を含む広い範囲の疾患の処置および/または予防に有用である。
ある態様では、本発明は非食細胞中への侵入について減弱化され(例えばインターナリン(internalin)B等のインターナリンを欠損)、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する単離されたリステリア細菌を提供する。ある実施態様では、細菌は細胞から細胞への伝播に対してさらに減弱化される(例えばActAに対して欠損性)。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。ある実施態様では、リステリア細菌は抗体または抗体断片を細菌に結合することにより減弱化されている。リステリア細菌を含む免疫原性組成物も、細菌と、薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとの双方を有するワクチンとして提供される。さらに、宿主に減弱化リステリアを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、非リステリア抗原に対する免疫応答を宿主において誘導する方法、および減弱化リステリアを含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患(例えば癌または感染症)を予防または処置する方法も提供される。減弱化リステリア細菌を含む単離されたプロフェッショナル抗原提示細胞も提供される。
他の態様では、本発明は非食細胞(例えばインターナリンB等のインターナリンが欠損)中への侵入、および細胞から細胞への伝播(例えばActAにが欠損)の両方について減弱化された単離されたリステリア細菌を提供する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株である。ある実施態様では、細菌が細胞から細胞への伝播について減弱化されるように、リステリア細菌の核酸が核酸標的化合物で改変されている。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はinlBおよびactA遺伝子双方中に少なくとも1箇所の突然変異(欠失突然変異等)を有する。ある実施態様では、減弱化リステリアはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection;ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesΔactAΔinlB株(またはListeria monocytogenesactAinlBと呼ばれる)、またはインターナリンBおよびActAに関して欠損している寄託株の突然変異体である。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。減弱化リステリアを含む免疫原性組成物も、減弱化リステリアおよび薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントを含むワクチンとして提供される。さらに、宿主に有効量の減弱化リステリア細菌を含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発する方法が提供される。宿主に有効量の減弱化リステリア細菌を含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、宿主における疾患(癌、リステリオーシスまたは非リステリア病原体で発症する疾患)を予防または処置する方法も提供される。減弱化リステリア細菌を含むプロフェッショナル抗原提示細胞もさらに提供される。
さらに別な態様では、本発明は(a)リステリア細菌であって、非食細胞への侵入について減弱化されているリステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを含むワクチンを提供する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンBが欠損している。ある実施態様では、ワクチン中の減弱化リステリアはListeria monocytogenes種に属する。ある実施態様では、減弱化リステリアは突然変異リステリア株である。宿主に有効量のワクチンを投与する工程を包含する、非リステリア抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法が提供される。宿主に有効量のワクチンを投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法も提供される。
また別な態様では、本発明はリステリア細菌を含む単離されたプロフェッショナル抗原提示細胞(例えばインターナリンB等のインターナリンが欠損)であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されている抗原提示細胞を提供する。ある実施態様では、細菌は細胞から細胞への伝播についてさらに減弱化(ActAが欠損)されている。ある実施態様では、プロフェッショナル抗原提示細胞中の減弱化エステリア菌は突然変異リステリア株である。ある実施態様では、リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。本発明はまた、宿主に有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を投与する工程を包含する、宿主において免疫応答を誘発する方法であって、減弱化リステリア細菌が上記抗原をコードする核酸を有する方法を提供する。さらに別な態様では、本発明は宿主に有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法を提供する。
他の態様では、本発明はMHCクラスI抗原提示またはMHCクラスII抗原提示を抗原提示細胞上に誘発する方法であって、減弱化リステリア細菌が、非食細胞中への侵入についてさらに減弱化され、かつMHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープを有する非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する方法を提供する。
さらに別な態様では、本発明は抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、以下の工程:(a)減弱化リステリア細菌を抗原提示細胞(例えば宿主由来の抗原提示細胞)と接触させる工程であって、減弱化リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、上記抗原をコードする核酸分子を有する工程;と(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。
他の態様では、本発明は宿主に突然変異リステリア株を含むワクチンを投与する工程を包含する宿主における疾患(癌等)を予防または処置する方法であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持している方法を提供する。
他の態様では、本発明は有効量の突然変異リステリア株を含む組成物を宿主に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持し、上記抗原をコードする核酸分子を有する方法を提供する。
さらに別な態様では、本発明は突然変異リステリア株を抗原提示細胞に接触する工程を包含する、抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原提示またはMHCクラスII抗原提示を誘発する方法であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持し、MHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープをそれぞれ有する抗原をコードする異種核酸分子を有する方法を提供する。
他の態様では、本発明は宿主において抗原に対する免疫応答を誘起する方法であって、以下の工程:(a)適切な条件下に抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリアを宿主由来の抗原提示細胞と接触する工程であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持し、上記抗原をコードする核酸分子を有する工程;と(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。ある実施態様では、抗原は癌関連抗原であるか、または癌関連抗原由来である。
さらに別な態様では、本発明はワクチン中に使用されるリステリア株の病原性を減少する方法であって、株が非食細胞に侵入する能力を減少するが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持するように株を改変する工程を含む方法を提供する。これらの方法は特定の非食細胞に対する細菌の向性(インベーシン)を指令するタンパク質をコードする遺伝子中の欠失突然変異、または上記インベーシンをマスクするポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体で細菌を処理し、その結果非食細胞の感染を阻害する工程を含んでもよい。
さらに別な態様では、本発明は非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞に侵入する能力を実質的に維持する突然変異リステリア株を有する組成物を宿主に投与する工程を含む、タンパク質を宿主中の食細胞(非食細胞とは反対の細胞)に選択的に送達する方法であって、タンパク質を発現する突然変異リステリア株のゲノムが、インターナリン等のインベーシン(または「侵入タンパク質」と呼ばれる)をコードする少なくとも1個の遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する方法を提供する。
他の態様では、本発明はワクチンを製造する方法を提供する。例えば、本発明は適切な条件下で抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリア株をインビトロまたはエキソビボで抗原提示細胞と接触する工程であって、非突然変異リステリア株と比較して突然変異リステリア株は非食細胞への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持し、上記抗原をコードする核酸分子を有する工程を包含する方法を提供する。
上記の各態様のある実施態様では、突然変異リステリア株はインターナリンBが欠損する、および/またはインターナリンB(inlB)をコードする遺伝子中および/またはその発現を制御する要素中に少なくとも1箇所の突然変異を有するListeria monocytogenesの突然変異株である。上記の各態様のさらに別な実施態様では、突然変異株はインターナリンBおよびactAの両方が欠損する、および/またはインターナリンBおよびactA遺伝子の双方中および/またはその発現を制御する要素中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
さらに、本発明は上記方法の他、その他の使用に有用な様々な組成物および株を提供する。例えば、さらに別な態様では、本発明は突然変異株と薬学的に受容可能なキャリアを有する医薬組成物であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持する医薬組成物を提供する。ある実施態様では、突然変異株のゲノムはインターナリン等のインベーシン(例えば侵入タンパク質)をコードする少なくとも1個の遺伝子中、および/またはその発現を制御する要素中に少なくとも1この突然変異を有する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株を有する免疫原性組成物であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持し、抗原をコードする異種核酸分子を有する組成物を提供する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株を含むワクチンであって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持し、抗原をコードする異種核酸分子を有するワクチンを提供する。
さらに別な態様では、本発明は突然変異リステリア株を含む樹状細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持する細胞を提供する。
上記各態様のある実施態様では、リステリアの突然変異株はListeria monocytogenesの突然変異株である。
上記各態様のある実施態様では、リステリアの突然変異株はインターナリンBが欠損している。上記各態様のある実施態様では、インターナリンBが欠損しているリステリアの突然変異株のゲノムはインターナリンB(inlB)をコードする遺伝子、および/またはその発現を制御する要素中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
上記各態様のさらに別な実施態様では、突然変異株はインターナリンBおよびActAの双方が欠損している。ある実施態様では、突然変異株はinlB遺伝子(および/またはinlB遺伝子の発現を制御する要素)およびactA遺伝子(および/またはactA遺伝子の発現を制御する要素)の双方に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
別な態様では、本発明は宿主に突然変異リステリア株を含むワクチンを宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患(癌等)を予防または処置する方法であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損している方法を提供する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、突然変異リステリア株はインターナリンBが欠損し、上記抗原をコードする核酸分子を有する方法を提供する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株を抗原提示細胞と接触する工程を包含する、抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原の提示またはMHCクラスII抗原の提示を誘起する方法であって、突然変異リステリア株はインターナリンBが欠損し、HMCクラスIエピトープまたはHMCクラスIIエピトープそれぞれを有する上記抗原をコードする異種核酸分子を有する方法を提供する。
さらに別な態様では、本発明は宿主において抗原に対する免疫応答を誘起する方法であって、以下の工程:(a)適切な条件下に抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリア株を宿主由来の抗原提示細胞に接触する工程であって、突然変異リステリア株はインターナリンBが欠損し、上記抗原をコードする核酸分子を有する工程;と、(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程とを有する方法を提供する。ある実施態様では、抗原は腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍関連抗原由来である。
他の態様では、本発明はインターナリンBが欠損するようにリステリア株を改変する工程を含む、ワクチンで使用するリステリア株の病原性を減少する方法を提供する。
他の態様では、本発明はワクチンの製造法を提供する。例えば、本発明は適切な条件下、抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリア株を抗原提示細胞と接触する工程を含むワクチンの製造法であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損する方法を提供する。
さらに、本発明は上記方法の他、他の使用にも有用な様々な組成物と株を提供する。例えば、さらに別な態様では、本発明は突然変異リステリア株と薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損する組成物を提供する。ある実施態様では、突然変異株のゲノムはinlB中、またはその発現を制御する要素中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株を含む免疫原性組成物であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損し、抗原をコードする異種核酸分子を含む組成物を提供する。
他の態様では、本発明は突然変異リステリア株であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損するワクチンを提供する。
さらに別な態様では、本発明は突然変異リステリア株を含む樹状細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損する抗原提示細胞を提供する。
上記各態様のある実施態様では、リステリアの突然変異株はListeria monocytogenesの突然変異株である。
上記各態様のある実施態様では、インターナリンB欠損リステリアの突然変異株はインターナリンB(inlB)をコードする遺伝子、および/またはその発現を制御する要素中に少なくとも1箇所の突然変異を含む。他の実施態様では、inlBは突然変異リステリア株のゲノムから選ばれる。
上記各態様のさらに別な実施態様では、突然変異株はインターナリンBおよびActAの双方が欠損している。ある実施態様では、突然変異株はinlB遺伝子(および/またはinlB遺伝子の発現を制御する要素)およびactA遺伝子(および/またはActA遺伝子の発現を制御する要素)の双方中に少なくとも1箇所の突然変異を含む。
別な態様では、本発明はインターナリンB等のインターナリンおよびActAの双方が欠損しているListeria monocytogenes株を提供する。ある態様では、本発明はインターナリンBおよびActAの双方が欠損しているListeria monocytogenes株を提供する。ある実施態様では、inlB遺伝子およびactA遺伝子の双方が欠損している。ある実施態様では、その株は2003年10月3日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体(またはListeria monocytogenesactAinlB二重突然変異体と名付けられる)である。他の実施態様では、その株はPTA−5562により識別される株の突然変異体であり、その突然変異体は野生型Listeria monocytogenesと比較して非食細胞中への侵入について減弱化されている。
培養、免疫原性組成物および任意の上記株を含む医薬組成物も提供される。任意または全ての上記方法におけるこれらの特定の株の使用も提供される。
(発明の詳細な説明)
(1.緒言)
本発明は非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリアを提供する(例えばインターナリンB等のインターナリンが欠損したリステリアの突然変異株)。ある実施態様では、減弱化リステリアが細胞から細胞への伝播についてさらに減弱化されている。ある実施態様では組み換えリステリアの毒性が、株に加えられた改変により大きく減少しているが、株の免疫原性は十分に保持されている。従って、減弱化リステリアの免疫原性をリステリアの毒性から分離することに始めて成功した。本発明は薬剤組成物、免疫原性組成物、および減弱化リステリアを含むワクチンと、治療上有効な免疫応答を含む免疫応答を宿主において誘発するためのこれらの減弱化リステリアとリステリア含有組成物とを提供する。このワクチンおよび方法はリステリアで発症する感染症の予防のため、または腫瘍関連抗原または非リステリア病原体由来の抗原等の異種抗原を送達するために使用することができる。
特に、本発明はinlB遺伝子が欠損する(すなわち例えば非食細胞、例えばc−met受容体経由で肝細胞への侵入について減弱化された株)、またはactA遺伝子とinlB遺伝子の双方が欠損する(すなわち非食細胞中への侵入および細胞から細胞への伝播について減弱化された株)Listeria monocytogenesの減弱化株を提供する。ΔactAΔinlB株は野生型Listeria monocytogenesより約1,000倍毒性が弱いことが分かった(以下の実施例2および表1参照)。非食細胞中への侵入のためのΔactAΔinlBリステリア株およびΔinlBリステリア株の減弱化が確認された(以下の実施例9および図9参照)。異種抗原を発現するΔinlBおよびΔactAΔinlBリステリア株によるワクチン接種は、抗原特異性T細胞を生産する結果になることが示されている(以下の実施例5〜7、図3A、3B、および実施例4〜6参照)。さらに、異種抗原を発現するΔactAΔinlBリステリア株によるワクチン接種も、抗原特異性標的細胞に対しインビボで有効で強い細胞毒性反応を誘発することが示されている(以下の実施例3および図1参照)。さらに、異種抗原を発現するΔactAΔinlBリステリア株による治療ワクチン接種が、結腸直腸癌マウスにおいて肺転移の数を減らし、生存率を増加するのに有効であることが示されている(以下の実施例4、図2A−C参照)。さらに、ΔactAΔinlBリステリア株の肝臓および脾臓からの排出が、野生型リステリア、ΔactA株、またはΔinlB株の排出よりはるかに速いことが示されている(以下の実施例8、図7−8参照)。すなわち、actAとinlB欠損突然変異の組み合わせは相乗的であり、多量の細菌を静脈内投与した動物からの肺排出が早くなる結果となっている。
従って、本発明は非食細胞中への侵入のために減弱化し(例えばインターナリンB等のインターナリンが欠損)、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有するリステリア細菌を提供する。ある実施態様では、細菌は細胞から細胞への伝播についてさらに減弱化されている(例えばActAが欠損)。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株である。細菌と、薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとの双方を含むワクチン組成物である、リステリア細菌を含む免疫原性組成物も提供される。さらに、宿主に減弱化リステリア細菌を含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発する方法;および有効量の減弱化リステリア細菌を含む組成物を宿主に投与する工程を包含する宿主中で疾患(癌または感染症等)を予防または処置する方法も提供される。減弱化リステリア細菌を含むプロフェッショナル抗原提示細胞も提供される。
本発明はまた、非食細胞中へ侵入する(例えばインターナリンB等のインターナリンが欠損する)、および細胞から細胞への伝播(例えばActAが欠損する)の双方について減弱化されたリステリア細菌を提供する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株である。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はinlBおよびactAの双方に少なくとも1箇所の突然変異(例えば欠損突然変異等)を有する。ある実施態様では、減弱化リステリアはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesΔactAΔinlB株であるか、またはインターナリンBおよびActAの両方が欠損した寄託株の突然変異体である。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。減弱化リステリアおよび薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントの双方を有するワクチンである、減弱化リステリアを含む免疫原性組成物も提供される。さらに、減弱化リステリアを含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発する方法も提供される。減弱化リステリア細菌を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患(癌、リステリオーシス、または非リステリア病原体で発現する疾患等)を予防または処置する方法も提供される。減弱化リステリア細菌を含むプロフェッショナル抗原提示細胞もさらに提供される。
本発明はさらに(a)減弱化リステリア細菌であって、減弱化リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されている細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントを有するワクチンを提供する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンBを欠損している。ある実施態様では、ワクチン中の減弱化リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株である。宿主に有効量のワクチンを投与する工程を包含する、非リステリア抗原に対する免疫応答をホスト中に誘発する方法が提供される。宿主に有効量のワクチンを投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法も提供される。
さらに、本発明は減弱化リステリア細菌を含むプロフェッショナル抗原提示細胞であって、減弱化リステリア細菌が非食細胞中(例えばインターナリンB等のインターナリン欠損)への侵入について減弱化される細胞を提供する。ある実施態様では、細菌は細胞から細胞への伝播に対してさらに減弱化(例えばActAが欠損)される。ある実施態様では、プロフェッショナル抗原提示細胞中の減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株である。ある実施態様では、リステリア細菌はListeria monocytogenes種に属する。本発明はまた、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、宿主に有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を投与する工程を包含する方法を提供する。この減弱化リステリア細菌は、上記抗原をコードする核酸分子を含む。さらに別な態様では、本発明は宿主に有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法を提供する。
本発明はまた、抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原提示またはMHCクラスII抗原提示を誘発する方法であって、減弱化リステリア細菌を抗原提示細胞と接触させる工程を包含する方法を提供する。この減弱化リステリア細菌は、非食細胞中への侵入について減弱化され、MHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープをコードする核酸分子を含む。
さらに、本発明は、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、以下の工程:(a)減弱化リステリア細菌を宿主由来の抗原提示細胞と接触する工程であって、ここで、この減弱化リステリア細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化され、かつ上記抗原をコードする核酸分子を含む、工程;および(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程。を包含する方法を提供する。
本発明はまた、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、有効量の突然変異リステリア株を含む組成物を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非食細胞中への侵入に対し非突然変異リステリア株に比べて減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持し、そして上記抗原をコードする核酸分子を含む。上記抗原は、この抗原が免疫応答を誘発するように、突然変異リステリアにより宿主内で発現する。
本発明は、宿主における疾患(癌等)を予防または処置する方法であって、突然変異リステリア株を含むワクチンを宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異リステリア株と比較して、非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞に侵入する能力を維持している。
本発明はまた、MHCクラスI抗原提示とMHCクラスII抗原提示を抗原提示細胞上に誘発する方法であって、突然変異リステリア株が抗原提示細胞と接触する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異リステリア株と比較して、非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞に侵入する能力を維持し、そしてMHCクラスIエピトープとMHCクラスIIエピトープをそれぞれ有する抗原をコードする異種核酸分子を有する。
さらに、本発明は、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、以下の工程:(a)適切な条件下、抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリア株を宿主由来の抗原提示細胞と接触する工程であって、非食細胞中への侵入に対し非突然変異リステリア株と比較して突然変異リステリア株が減弱化されているが、食細胞に侵入する能力を維持し、上記抗原をコードする核酸分子を有する、工程;および(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程、を包含する方法を提供する。
本発明はまた、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、有効量の突然変異リステリア株を含む組成物を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、インターナリンBに関して欠損があり、上記抗原をコードする核酸分子を含む。この抗原は、免疫応答を誘発するように、突然変異リステリアによって宿主内に発現する。
本発明はまた、宿主における疾患(癌等)を予防または処置する方法であって、突然変異リステリア株を含むワクチンを宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。このリステリア株は、インターナリンBを欠損する。
本発明はさらに、MHCクラスI抗原提示とMHCクラスII抗原提示を抗原提示細胞上に誘発する方法であって、この突然変異リステリア株が抗原提示細胞と接触する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、インターナリンBを欠損し、MHCクラスIエピトープとMHCクラスIIエピトープをそれぞれ有する抗原をコードする核酸分子を含む。
さらに、本発明は、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法であって、以下の工程:(a)適切な条件下、抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、突然変異リステリア株を宿主由来の抗原提示細胞と接触する工程であって、突然変異リステリア株がインターナリンBを欠損し、上記抗原をコードする核酸分子を有する工程;および(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程、を包含する方法を提供する。
本発明はまた、医薬組成物、免疫原性組成物、および非食細胞中への侵入に対し非突然変異株に比べて減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持する突然変異リステリア株を含むワクチンを提供する。ある実施態様では、リステリアの突然変異株はインターナリンB等の少なくとも1個のインベーシンが欠損している。例えば、ある実施態様では、リステリアの突然変異株は、インターナリンタンパク質(インターナリンB等)をコードする少なくとも1個の遺伝子中、および/またはインターナリンタンパク質遺伝子(inlB遺伝子等)の発現を制御する要素中に突然変異を有するListeria monocytogenesの突然変異株である。ある実施態様では、インターナリンB等のインターナリンタンパク質が欠損する株は、ActA等の第2リステリアタンパク質も欠損している。
本発明はさらに、インターナリンBとActAの双方が欠損するListeria monocytogenesの新規種を提供する。例えば、ある実施態様ではinlB遺伝子とactA遺伝子の双方が欠損している。ある実施態様では、その株は2003年10月3日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体である。
(II.減弱化リステリア)
本発明の減弱化リステリアは、少なくとも1個の抗原、および/またはマクロファージ、好中球および樹状細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞(APCs)を発現および送達させる一方、器官および非免疫系の細胞等の非APC細胞中への細菌の侵入を減少させるために開発された。従って、本発明の組成物、ワクチンおよび方法で使用されるリステリア細菌は、非食細胞中への侵入に対し、野生型リステリア等、当該する減弱化改変がないリステリアと比較して減弱化されている。
本明細書で用いる用語「減弱化リステリア細菌」および「改変リステリア細菌」(または「減弱化リステリア」および「改変リステリア」)は、野生型リステリアと比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているリステリア細菌(またはリステリア)を指し、本明細書では互換的に使用される。当然のことながら、本明細書に記載の減弱化リステリア(すなわち改変リステリア)は非天然起源リステリアであるか、または天然起源であるが、天然に存在しない形で単離および/または発見されたリステリアである。本明細書で用いる用語「非減弱化リステリア細菌」および「非改変リステリア細菌」(または「非減弱化リステリア」および「非改変リステリア」)は、野生型リステリアと比較して非食細胞中への侵入に対し他のリステリア細菌またはリステリアを減弱化する特定の改変を含まないリステリア細菌(またはリステリア)を指し、本明細書で互換的に使用される相対的用語である。従って、非改変リステリアの一例は野生型リステリアである。
ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は突然変異リステリア株であり、突然変異リステリア株のゲノム内の突然変異により、非食細胞中への侵入に対しリステリアが減弱化される。ある実施態様では、リステリア細菌が他の手段、または突然変異に追加する手段によって改変され、非食細胞中への侵入に対しリステリア細菌が減弱化される(例えばリステリアに対する抗体結合により)。
ある実施態様では、野生型リステリア等の非改変リステリアに比べて減弱化リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されるばかりでなく、非改変リステリアに比べて減弱化リステリアは細胞から細胞への伝播について減弱化される。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は、リステリアを細胞から細胞へ伝播させる少なくとも1個のゲノム突然変異を有する突然変異リステリア株に属する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は他の手段、または突然変異に追加する手段で改変され、非食細胞中への侵入に対しリステリア細菌が減弱化される(例えばS−59/UVA処理により)。
減弱化細菌はリステリア属に属する。ある実施態様では、減弱化リステリアはListeria monocytogenes、Listeria ivanovii、Listeria seeligeri、またはListeria innocuaからなる群より選択される種に属する。さらに、本発明は様々なリステリア種の株の突然変異を図るものであり、特にこれらの細菌が通常は病原性であるか、および/または非病原性真核細胞に侵入するためにインベーシンを利用する株の突然変異を図る(例えば通常はインターナリンBを発現する種、またはその等価な株)。ある実施態様では、突然変異するリステリア株はリステリアの病原種である。他の実施態様では、突然変異するリステリア株は少なくとも1種のインベーシンを生産する。他の実施態様では、株はListeria monocytogenes、Listeria ivanovii、Listeria seeligeri、またはListeria innocuaである。他の実施態様では、リステリアの突然変異株はListeria monocytogenesの突然変異株である。
本発明はさらに、突然変異株の培養等の本明細書に記載の減弱化リステリアの培養を提供する。
(A.非食細胞中への侵入に対する減弱化)
一般に、本発明の減弱化リステリア細菌は、非食細胞中への侵入に対し細菌を減弱化する改変をもたない同じリステリア細菌(「非改変リステリア細菌」または「非減弱化リステリア細菌」)と比較して、少なくとも1つの改変を有し、非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリア細菌(「改変リステリア細菌」または「減弱化リステリア細菌」)である。非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリア細菌は、同じ種の野生型リステリアより非食細胞の細胞外環境由来の少なくとも1つのタイプの非食細胞に感染し難い。ある実施態様では、減弱化リステリアが非食細胞に侵入する能力は野生型リステリアと比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%減少している。ある実施態様では、他の実施態様では、減弱化リステリアが非食細胞に侵入する能力は少なくとも約75%減少している。
ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は、非食細胞中への侵入に対し株(「突然変異」リステリア株)を減弱化する少なくとも1箇所の突然変異をゲノム中に有する突然変異リステリア株に属し、この株は当該少なくとも1箇所の突然変異をもたない同じリステリア株(「非突然変異」リステリア株)と比較して減弱化されているリステリア株が非食細胞に侵入する能力は、非改変(非突然変異)リステリア株と比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%減少している。
突然変異リステリア株等の減弱化リステリアは、非食細胞の1つのタイプ以上の中への侵入に対し減弱する必要は必ずしもないことが理解される。例えば、減弱化株を肝細胞中への侵入について減弱化しても、上皮細胞中への侵入について減弱化しなくても良い。特定の収縮リステリアが非食細胞中への侵入に対する減弱化は、特定の細胞受容体と相互作用するインベーシンタンパク質をコードする特定に遺伝子の突然変異、例えば欠失突然変異の結果であり、その結果、非食細胞の感染を促進することも理解される。例えば、リステリアΔinlB突然変異株は、肝細胞株(例えばHepG2)および初代ヒト肝細胞を含む肝細胞成長因子(c−met)を発現する非食細胞中への侵入について減弱化される。
ある実施態様では、リステリア(例えば突然変異リステリア)が非食細胞中への侵入について減弱化されているが、そのリステリアは少なくとも樹状細胞および/またはマクロファージ等の食細胞に取り込まれることもできる。ある実施態様では、減弱化リステリアが食細胞中に侵入する能力は、インベーシンの突然変異等のその株に加えられた改変で減少しない(すなわち食細胞に取り込まれる株の測定される能力の約95%以上が改変後に維持されている)。他の実施態様では、減弱化リステリアが食細胞に侵入する能力の減少は約10%以下、約25%以下、約50%以下、または約75%以下である。
非食細胞中への侵入に対しリステリア細菌(例えば突然変異リステリア細菌)が減弱化されているかどうかを測定するためのインビトロ分析は、当業者に公知である。例えば、Dramsiら、Molecular Microbiology、16:251−161(1995)、およびGaikkardら、Cell、65:1127−1141(1991)は、L.monocytogenesがある細胞株に侵入する能力の分析を記載している。例えば、特定の改変を受けたリステリア細菌が特定のタイプの非食細胞中への侵入について減弱化されているかどうかを決めるために、減弱化リステリア細菌が特定のタイプの非食細胞中へ侵入する能力を測定し、改変のない同等なリステリア細菌の非食細胞へ侵入する能力と比較する。同様に、特定の突然変異を有するリステリア細菌が特定のタイプの非食細胞中への侵入について減弱化されているかどうかを決めるために、突然変異リステリア細菌が特定のタイプの非食細胞中へ侵入する能力を測定し、突然変異のない同等なリステリア細菌の非食細胞へ侵入する能力と比較する。
本発明のある実施態様では、リステリア細菌が非食細胞中へ侵入する能力は、2倍の減少からより大きいレベルの減弱化の範囲に及ぶ。ある実施態様では、リステリア細菌が非食細胞中へ侵入する能力の減弱化は対数表示で少なくとも約0.3、約1、約2、約3、約4、約5、または少なくとも約6である。ある実施態様では、減弱化は対数表示で約0.3〜>8、約2〜>8、約4〜>8、約6〜>8、約0.3〜8、または約0.3〜7、または約0.3〜6、または約0.3〜5、または約0.3〜4、または約0.3〜3、または約0.3〜2、または約0.3〜1の範囲である。ある実施態様では、減弱化は対数表示で約1〜>8、1〜7、1〜6、または約2〜6、または約2〜5、または約3〜5の範囲である。
ある実施態様では、本発明のリステリアの減弱化は、宿主上のリステリアの生物効果で測定される。リステリア株の病原性は、マウスまたは他の脊椎動物におけるLD50の測定で評価される(実施例2、表1)。LD50は50%の脊椎動物が死亡するに必要な、脊椎動物中に注射されたリステリアの量、または投与量である。LD50値を特定の改変(例えば突然変異)を受けたリステリアと、特定の改変を受けないリステリアで、減弱化の尺度として比較することができる。例えば、特定の突然変異のないリステリア株が10個の細菌のLD50を有し、特定の突然変異を有するリステリア株が10個の細菌のLD50を有する場合、その株はLD50が100倍または対数表示で2倍増加するように減弱化されている。
または、リステリア細菌が非食細胞に感染する能力の減弱化度をインビトロでより直接的に評価することができる。リステリア細菌が肝細胞等の非食細胞に感染する能力を、非改変リステリアまたは野生型リステリアが食細胞に感染する能力と比較することができる。この様な分析では、改変および非改変リステリアを典型的にはインビトロで非食細胞中に限られた時間(例えば1時間)加え、次いでゲンタマイシンを含む溶液で細胞を洗浄して細胞外細菌を殺し、細胞を溶菌して力価を評価するためにプレートに接種する。この様な分析の例は以下の実施例9および10に提供される。
減弱化度を組織病理学の程度または血清肝臓酵素レベル等の他の生物効果で測定してもよい。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、血清中のアルブミンおよびビリルビンレベルが、本発明のリステリアを注射したマウスにつき臨床検査室で測定される。この様な効果のマウスまたは他の脊椎動物における比較を、リステリアの減弱化を評価する方法として特定の改変/突然変異のある、およびないリステリアで行うことができる。本発明に関連するリステリアの減弱化を組織病理学で測定することもできる。肝臓、脾臓および神経系等の感染脊椎動物の様々な組織から回収し得るリステリアの量を、突然変異と非突然変異リステリアを注射した脊椎動物で比較することにより、減弱化のレベルとして用いることができる。例えば、突然変異および非突然変異リステリアを注射したマウスの対応する量を比較することにより、時間の関数として肝臓または脾臓等の感染組織から回収し得るリステリアの量を減弱化の尺度として用いることができる。
従って、野生型リステリアの標的であることが知られている特定の選ばれたマウスの器官中の細菌負荷について測定することにより、本発明のリステリアの減弱化を測定することができる。例えば、BHI寒天培地上で肝臓または脾臓ホモジェネートの希釈プレート培養で生じるコロニー(コロニー形成ユニット;CFU)を測定することにより、本発明のリステリアの減弱化を測定できる。例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内および皮下を含む任意の数の経路を経由する本発明の改変リステリアの投与後、肝臓または脾臓cfuを時間経過で測定することができる(例えば以下の実施例8参照)。さらに、投与後の上記のような競合的指標分析により本発明のリステリアを測定し、肝臓または脾臓(または任意の他の選ばれた器官)中で、経時的に薬剤耐性の野生型リステリア(または任意の他の選ばれたリステリア株)と比較することができる。
非食細胞による本発明のワクチン中に含まれる細菌の取り込みの減弱化度は、安全で効果的なワクチンを提供するための絶対的な減弱化である必要はない。ある実施態様では、減弱化度は毒性の症状を予防、または生命を脅かさないレベルに減少させるに十分な毒性の減少を与える度合いである。
(1.リステリアが非食細胞中への侵入について減弱化される突然変異を有するリステリア)
ある実施態様では、インターナリン等の通常はリステリアが生産する少なくとも1種のインベーシン(または侵入タンパク質と呼ばれる)がリステリアにおいて欠損する、少なくとも1箇所の突然変異を減弱化リステリアが有する。本発明のある実施態様では、減弱化リステリアが非食細胞に侵入する能力の減弱化が、細菌が発現する少なくとも1種のインベーシンに影響する突然変異を用いて行われる。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は非食細胞中への侵入が減弱化された突然変異リステリア株のメンバーである。
ある実施態様では、減弱化リステリアは少なくとも1種のインベーシンの生産が欠損している。減弱化同様に、細菌株がインベーシンの機能性バージョンの生産量を減少するか、または部分的または全体的に非機能性であるインベーシンのバージョンを発現する、またはその両方の場合、リステリア株はインベーシンの生産を欠損している。
ある実施態様では、減弱化リステリアのゲノムはインターナリン等のインベーシンをコードする遺伝子に少なくとも1箇所の突然変異を有する。突然変異は任意に点突然変異、挿入突然変異、末端突然変異、フレーム移動突然変異、またはインベーシンをコードする遺伝子の一部または全部の欠損である。ある実施態様では、インベーシンをコードする遺伝子(例えばinlB)が欠損している。
ある実施態様では、インベーシンをコードする遺伝子の突然変異はコード配列内である。これらの実施態様では、インベーシンをコードする遺伝子の突然変異により、非突然変異並列よりタンパク質のインベーシンとしての機能をより少なくする。ある実施態様では、インベーシンをコードする突然変異により、タンパク質の機能が全く失われる。
別な実施態様では、突然変異株中でインベーシンをコードする少なくとも1個の遺伝子の発現が非突然変異株に比べて阻害される。例えば、突然変異リステリアのゲノムはインベーシンをコードする遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有し、突然変異が発現を妨害する。例えば、その突然変異は遺伝子の少なくとも1個の制御配列(プロモーターまたはリボソーム結合領域等)内であり、インベーシン遺伝子の発現が減少または消失する。または、突然変異リステリアはインベーシンをコードする遺伝子以外に遺伝子に少なくとも1箇所の突然変異を有するが、それにもかかわらず少なくとも1種のインベーシンの発現レベルが減少する結果となる。
インベーシンはリステリアで発現し、選ばれた宿主細胞で発現する受容体と相互作用するタンパク質であり、その結果、リステリアの宿主細胞中への貫通を促進する。他のインベーシンはリステリアにより分泌される。リステリアのインベーシンにはインターナリン関連タンパク質ファミリー(複数のインターナリン)のメンバーが含まれるが、それに限定されない。インターナリンタンパク質は典型的には肝細胞、脾臓細胞または脳細胞等の非食細胞による取り込みを指令する。
いくつかのインターナリンがL.monocytogenesで同定されている(Bolandら、Clinical Microbiology Reviews、2001、14:584−640)。これらのインターナリンにはInlA、InlB、InlC、InlC2、InlD、InlF、InlGおよびInlH(Dramsiiら、Infection and Immunity、65:1615−1625(1997);Raffelsbauerら、Mol.Gen.Genet.260:144−158(1988))が含まれるが、それに限定されない。これらのタンパク質をコードする遺伝子配列は以前に報告されている。例えば、inlAおよびinlBの配列はGaillardら、Cell、65:1127−1141(1991)およびジェンバンク(GenBank)寄託番号M67471に報告されている。さらに多くの数のインターナリン関連タンパク質ファミリーをコードする遺伝子は、lmo0327、lmo0331、lmo0514、lmo0610、lmo0732、lmo1136、lmo1289、lmo2396、lmo0171、lmo0333、lmo0801、lmo1290、lmo2026、およびlmo2821、を含みGlaserらの付属ウエブマテリアルのウエブ表2、Science、294:849−852(2001)(www.sciencemag.org/cgi/content/294/5543/849/DC1)に同定されている(インターナリン関連タンパク質ファミリーの各メンバーの配列はL.monocytogenes株EGDゲノム、ジェンバンク寄託番号AL591824、および/またはL. monocytogenes株EGD−eゲノム、ジェンバンク寄託番号NC_003210に見出すことができる。様々なインターナリン関連遺伝子の位置はグラサーらによって同定されている)。
ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は先に列記したインターナリンタンパク質、または先に列記したインターナリン遺伝子でコードされるインターナリンタンパク質の少なくとも1種等のインターナリンが欠損する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンB、またはその等価タンパク質が欠損する(使用したリステリアの種による)。他の実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンA、またはその等価タンパク質が欠損する(使用したリステリアの種による)。他の実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンA以外の少なくとも1種のインターナリン、またはその等価タンパク質が欠損する。
例えば、突然変異リステリア株は任意には機能性インターナリンBの生産が欠損するように改変されたL.monocytogenes株である。さらに別な実施態様ではL.monocytogenesはインターナリンA(InlA)以外のインターナリンの生産が欠損するように改変されている。(インターナリンBを含む先に列記したインターナリンの機能的に等価なタンパク質が、Listeria monocytogenes以外のリステリア種に存在しえることが理解される。従って、ある実施態様では、突然変異リステリア株がインターナリンBと機能的に等価なタンパク質の生産が欠損するように改変されている)
本発明の突然変異リステリア種は、非突然変異リステリア株より少ない野生型インターナリン配列を発現し得る。または、突然変異リステリアは、非機能性であるか、非突然変異リステリアで発現されるインターナリンよりも機能性の少ないインターナリンの突然変異型を発現し得る。さらに別な実施態様では、インターナリンをコードする遺伝子または配列のほとんど、または全部が欠損しているので、突然変異リステリアはインターナリンB等の特定のインターナリンを全く発現しない。
ある実施態様では、突然変異リステリアのゲノムは少なくとも1つの遺伝子中に減弱化突然変異を有する(咲に列記したものを含むが、必ずしもそれに限定されない)。ある実施態様では、非食細胞中への侵入について減弱化された突然変異リステリアのゲノムは、inlA遺伝子、inlB遺伝子、inlC遺伝子、inlC2遺伝子、inlD遺伝子、inlE遺伝子、inlF遺伝子、inlG遺伝子、およびinlH遺伝子でなる群から選ばれた遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。他の実施態様では、突然変異リステリアのゲノムはinlB遺伝子、inlC遺伝子、inlC2遺伝子、inlD遺伝子、inlE遺伝子、inlF遺伝子、inlG遺伝子、およびinlH遺伝子なる群から選ばれた遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。ある実施態様では、突然変異リステリアはインターナリンBが欠損した突然変異Listeria monocytogenesである。さらに別な実施態様では、突然変異リステリアは突然変異Listeria monocytogenesであり、その遺伝子はinlB遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。他の実施態様では、突然変異リステリアはinlA遺伝子以外のインターナリン遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。他の実施態様では、突然変異リステリアはinlA遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
本開示を通じて、リステリアが非食細胞中への侵入に対しリステリアを減弱化する突然変異であるのか、または他の突然変異(細胞から細胞への突然変異等)であるのかという遺伝子突然変異を指すために、別な術語が用いられる。用語「xyz」、「Δxyz」および「xyz欠失突然変異体」が、少なくともほとんどの、または全部のxyz遺伝子のコード配列が欠損する欠失突然変異体を指すために、本明細書で互換的に使用される。(多くの場合、これらの突然変異体からxyz遺伝子全体が欠損している)例えば、用語「inlB」、「ΔinlB」および「inlB欠失突然変異体」が本明細書で一般的に互換性をもって使用される。
InlA(インターナリンA)(ガイラードら、セル(Cell)、65:1127−1141(1991);ジェンバンク登録番号NC_003210)は、腸の上皮細胞等の上皮細胞によるリステリアの取り込みを指令する。株がインターナリンAを欠損にすることによるリステリアの減弱化は、医薬品およびワクチン組成物中のワクチンの使用の安全性を改善すると考えられる。リステリアによる腸上皮細胞への侵入は、発熱、頭痛、下痢または嘔吐が特徴であるリステリアの消化管感染を引き起こす。
InlB(インターナリンB)(Gaillardら、Cell、65:1127−1141(1991);ジェンバンク寄託番号AL591975(Listeria monocytogenes株EGD、完全ゲノム、セグメント3/12、inlB遺伝子領域:nts.97008−98963);およびジェンバンク寄託番号NC_003210(Listeria monocytogenes株EGD、完全ゲノム、inlB遺伝子領域:nts.457008−458963)、それぞれその全文を本明細書に引用して援用する)は、肝細胞による、または血液脳障壁を有する脳微細血管の血管上皮細胞等の上皮細胞によるリステリアの取り込みを指令する。(インターナリンBのこれ以上の説明についてはIretonら、J.of Biological Chemistry、274:17025−17031(1999);Drasmiら、Molecular
Microbiology、16:251−261(1995);Mansellら、J.of Biological Chemistry、276:43597−43603(2001);およびBierneら、J.of Cell Science、115:3357−3367(2002)参照。全文を本明細書に引用して援用する)リステリアをインターナリン欠損にすることにより、ワクチンおよび医薬組成物中に株を使用する安全性を改善すると考えられる。リステリアによる肝細胞の感染の結果、肝細胞の溶解による肝臓炎症を発症し得る。脳微小血管上皮細胞の感染の結果、頭痛、首筋硬直、バランス間の喪失、精神錯乱、鈍麻、または死亡が特徴である髄膜脳炎を発症し得る。髄膜炎が成人間のリステリアによる死亡の主な原因である。
ある実施態様では、本発明の突然変異リステリア株は、少なくとも1箇所の突然変異のないリステリア株と比較してその株がインターナリンB欠損になる、少なくとも1箇所の突然変異をゲノム内に有するリステリアの1つの株である。その株の細菌がインターナリンBの機能性バージョンの生産量を減少する場合、または部分的または全体に非機能性であるインターナリンBのバージョンを発現する場合、またはその両方の場合、リステリア株はインターナリンの生産が欠損している。(本明細書で用いる用語「インターナリンB」とは、Listeria monocytogenesのインターナリンBのみでなく、リステリアまたは他の種中のそれと等価なものを言う)
ある実施態様では、リステリアのゲノムはインターナリンB(inlB)をコードする遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。その突然変異は任意に点突然変異、挿入突然変異、末端突然変異、フレーム移動突然変異またはインターナリンBをコードする遺伝子の一部または全体の欠損である。ある実施態様では、インターナリンBをコードする配列の全部、または少なくとも大部分がリステリアのゲノムから欠損している。ある実施態様では、inlB遺伝子のほとんどまたは全部が欠損している。ある実施態様では、減弱化リステリアが機能性インターナリンBを生産しない。
ある実施態様では、inlBの突然変異はコード配列内である。ある実施態様では、inlBの突然変異によりインターナリンBは非突然変異inlB遺伝子から生産されたタンパク質より機能性が減少する。ある実施態様では、inlBの突然変異によりインターナリンBが完全に非機能性になる(非突然変異リステリアより機能性が約100%減少)。ある実施態様では、突然変異リステリアが発現するインターナリンBの機能性は非突然変異リステリアより少なくとも約90%、少なくとも約75%、少なくとも約50%、または少なくとも約25%減少する。
また別な実施態様では、突然変異株中のinlBの発現は非突然変異株に比べて阻害されている。例えば、突然変異リステリアのゲノムは少なくとも1箇所の突然変異を有し、その突然変異が発現を妨げる。例えば、突然変異はinlBの少なくとも1個の制御配列(プロモーターまたはリボソーム結合領域等)内であり、inlBの発現が減少するか失われる。または、突然変異リステリアはinlB以外に少なくとも1箇所の突然変異を有するが、それにもかかわらずインターナリンBの発現レベルが減少する結果になる。ある実施態様では、インターナリンBの発現が少なくとも約100%、少なくとも約90%、少なくとも約75%、少なくとも約50%、または少なくとも約25%減少し得る。
インベーシン(invasion)は非食細胞の感染を促進する細菌タンパク質であり、インターナリン遺伝子またはコードされた生成物が非食細胞による結合および取り込みを促進する任意の他の細菌遺伝子から選び得ることを理解する必要がある。
細菌の突然変異を変異原性薬品または放射線、およびその後の突然変異体の選択等の伝統的な変異原性法で行うことができる。細菌の突然変異を等業者により、組み換えDNA技術で行うこともできる。例えば、欠失突然変異体等の突然変異体の作成に使用するに適した対立遺伝子交換法がGamiliら、Molecular Micro.8:143−147(1993)に報告されている。(対立遺伝子交換法の応用例の説明は以下の実施例1参照)または、Biswasら、J.Bacteriol.175:3628−3635(1993)に記載の遺伝子交換プロトコールも使用できる。他の同様な方法は等業者に公知である。
特定のinlB突然変異等の特定の突然変異がリステリア株中に存在するか、またはその株でインターナリンB等の特定のインターナリンの生産が欠損しているかの確認が、当業者が公知の様々な方法で得ることができる。例えば、株のゲノムの関連する部分をクローンニングし配列決定することができる。または、欠損または他の突然変異に隣接した領域をコードするプライマー対を用いて特定の突然変異をPCRで同定することができる。細菌ゲノム中の変化を検出するため、サザンブロットを使用することもできる。また、ウエスターンブロット等の当業界に標準的な技術を用いて、特定のタンパク質が株で発現しているかどうかを分析することもできる。所望の遺伝子中に突然変異を含むことの確認を、株の表現型を以前に報告された表現型と比較することにより得ることができる。例えば、株にインターナリンBが欠損していることの確認を、その株の表現型をインターナリンBに対し以前に報告された表現型と比較することにより行い得る。
少なくとも1つのタイプの非食細胞中への侵入に対してその株が減弱化されているかどうかを評価することにより、突然変異体の本発明での有用性を任意に評価することができる(上記II.A節参照)。本発明の方法と組成物における使用の適正を決めるため、食細胞に取り込まれる能力で突然変異株を評価することもできる。
株のLD50、野生型リステリの攻撃に対してその株が与える防御、抗原に対する特定のT細胞反応を誘発するその株の能力、抗原を発現する細胞に対するインビボ細胞毒性反応を誘発するその株の能力、および/または標的病原に対するその株のインビボでの治療有効性(例えばモデルマウス中で)を測定する他に、当業者に公知の他のタイプの分析により、特定のインターナリン遺伝子(例えばinlB)中に欠損を有するリステリア等の特定のリステリア突然変異体のワクチン中での使用の適性を評価することができる。これらの分析のいくつかの具定例は、以下の実施例2〜7に示される。リステリアの様々な突然変異株の免疫原性は以下の実施例5〜7のICS分析で試験される。以下の実施例3は突然変異リステリア株のインビボ毒性を評価するための可能な分析の1つの例である。以下の実施例4は、突然変異リステリア株の治療効力を試験する分析の一例を提供する。
上記の様に、本発明はさらにリステリア株が非食細胞中に侵入する能力を減少するが、食細胞中に侵入する能力を実質的に維持する方法であって、インベーシンをコードする少なくとも1個の遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を導入し、その株が生産する活性インベーシンのレベルを減少する方法を提供する。ある実施態様では、インベーシンはInlA以外のインターナリンである。
(2.非食細胞中への侵入に影響する他の改変を有するリステリア)
ある実施態様では、リステリアを特定のインベーシンタンパク質(例えばインターナリンB)に特異的である、または複数の抗原または細菌の表面に発現した繰り返し分子パターンに特異的であるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(またはその断片)と反応させる。選ばれたインベーシンタンパク質、または複数のタンパク質および/または高分子に特異的な抗体(Ab)により、Ab処理を加えない同じリステリア株(「非オプソニン化」リステリア株)と比較してリステリアが非食細胞中への侵入について減弱化される(Abオプソニン化リステリア株;例えば以下の実施例10参照)。抗体結合リステリア株が非食細胞中へ侵入する能力は、抗体と結合しないリステリア株と比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90減少する。
本発明のある別な実施態様では、リステリア株が非食細胞中へ侵入する能力は、リステリア表面上の少なくとも1つのキーとなる部分をブロックすることにより減弱化される。例えば、細胞表面タンパク質と結合し、非食細胞上の受容体への結合妨害をブロックする集団により、リステリアが食細胞中へ侵入する能力に関与するタンパク質をブロックすることができる。ある実施態様では、リステリア表面上のインターナリンがブロックされる。ある実施態様では、細胞表面タンパク質はインターナリンBである。ある実施態様では、リステリアの表面上のキーとなる部分が抗体またはFab断片等の抗体断片でブロックされる。ある実施態様では、リステリアの表面が抗リステリア抗体または抗体断片で覆われる。
ある実施態様では、リステリアが非食細胞中に侵入する能力はリステリアのオプソニン化で生じる。ある実施態様では、減弱化リステリアは高力価抗リステリア血清でオプソニン化されている。ある実施態様では、減弱化リステリアはポリクローナル抗体でオプソニン化されている。ある実施態様では、減弱化リステリアはモノクローナル抗体でオプソニン化されている。ある実施態様では、オプソニン化でリステリアを減弱化するために用いられる抗体はポリクローナル抗リステリア抗体である。ある実施態様では、オプソニン化でリステリアを減弱化するために用いられる抗体はインターナリンB特異性モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体等の抗インターナリン抗体、またはその断片である。
リステリア特異性抗体を、高力価リステリア特異性血清を生産するためのリステリアによるマウスの静脈内感染等の、当業者に公知に技術で製造することができる。オプソニン化リステリアを、減弱化されるリステリアの抗リステリアマウス血清によるインキュベーションで生成することができる。本発明者らは、この様にして得られたオプソニン化リステリアが非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中への侵入について減弱化されていないことを示している(例えば以下の実施例10参照)。
従って、ある実施態様では、減弱化リステリア細菌がオプソニン化される。ある実施態様では、オプソニン化リステリアは細胞から細胞への伝播について減弱化される。例えば、減弱化リステリア細菌はActAが欠損したオプソニン化細菌である(例えばactA欠失突然変異体)。
(B.細胞から細胞への伝播に対するリステリアの減弱化)
ある実施態様では、本明細書に記載の組成物、ワクチンおよび方法に使用される減弱化リステリアは非食細胞中への侵入について減弱化されているばかりでなく、細胞から細胞への伝播について減弱化されている。ある感染細胞(その細胞質内にリステリアを有する細胞)から隣接する細胞へリステリア細菌が細胞間で伝播し難い場合、リステリア細菌は細胞から細胞への伝播について減弱化されている。言い換えると、減弱化リステリアが成長し伝播する能力が、同じ主の野生型リステリアに比較して減少している。ある実施態様では、細胞から細胞への伝播に対するリステリアの減弱化は直接影響される。例えば、ある実施態様ではリステリアが感染細胞から隣接細胞に侵入する突出物を形成する能力が野生型に比べて損なわれているので、リステリアは細胞から細胞への伝播について減弱化されている。他の実施態様では、細胞から細胞への伝播に対するリステリアの減弱化は、それにもかかわらずリステリアを細胞から細胞への伝播について減弱化するより間接的でない損傷のためである。例えば、ある別な実施態様では、リステリアが食細胞の液胞から出る能力が損なわれている。
ある実施態様では、減弱化リステリアが細胞から細胞へ伝播する能力は野生型リステリアに比べて少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%減少している。ある実施態様ではある実施態様では、減弱化リステリアが細胞から細胞へ伝播する能力は野生型リステリアに比べて少なくとも約50%減少している。
ある実施態様では、減弱化リステリアはリステリアを細胞から細胞への伝播について減弱化するゲノム内に突然変異を有する。例えば、本発明のある実施態様では、リステリアの減弱化株のゲノムはインベーシン遺伝子以外に少なくとも1箇所の突然変異を有する。例えば、ある実施態様では、リステリアの突然変異株のゲノムはinlB以外の遺伝子内に少なくとも1箇所の突然変異を有する。例えば、突然変異株は細胞から細胞への伝播に影響する少なくとも1個の有毒因子が欠損している。他の実施態様では、リステリアは別な手段で細胞から細胞への伝播について減弱化されている。
減弱化リステリアが細胞から細胞への伝播について減弱化されるこれらの実施態様中でも、減弱化リステリアがなお樹枝細胞および/またはマクロファージ等の食細胞中へ侵入し得ることが好ましい。ある実施態様では、減弱化リステリアが食細胞中へ侵入する能力は、リステリアに加えられた改変により減少しない(すなわち、株が食細胞中へ侵入する能力の約95%以上が改変後に維持される)。他の実施態様では、減弱化リステリアが食細胞に侵入する能力は、野生型に比べて約10%以下、約25%以下、約50%以下、または約75%以下減少している。
リステリア細菌が細胞から細胞への伝播について減弱化されているかどうかを決めるためのインビトロ分析は、当業者に公知である。例えば、選ばれた培養細胞単層の感染後の時間経過で形成したプラクーの直径を測定することができる。L2細胞単層内のプラクー分析を、先の報告通りに行うことができる(Sun、A.A).およびD.A.Portnoy、1990、「細胞内生育と細胞間伝播について欠損したListeria monocytogenes小プラークの単離(Isolation of Listeria monocytogenes small−plaque mutants defective for intracellular growt and cell−to−cell spread)」、Infect.Immunol.58:3770−3778)が、測定法はSkobleらが記載するように修正されている(J.Skoble、D.A.PortneyおよびM.D.Welch、2000、「ActA内の3つの領域がArp2/3複合体媒介アクチン核形成およびListeria monocytogenesの移動性を促進する(Three Regions within ActA promote Arp2/3 Complex−Mediated Actin Nucleation and Listerai monocytogenes Motility)」)。簡単に言えば、L2細胞が6ウエル組織培養皿内で密集状態に成長し、細菌で1時間感染する。感染後、細胞に40℃に暖めた、0.8%アガロース、ウシ胎児血清および所望の濃度のゲンタマイシンを含むDMEでなる培地を重ねる。培地中のゲンタマイシンの濃度はプラクーサイズに劇的に影響し、選択したリステリアが細胞から細胞へ伝播する能力の尺度となる(I.J.Glomski、M.M.Gedde、A.W.Tsang、J.A.SwansonおよびD.A.Portney、2000、J.Cell Biol.156:1029−1038)。例えば、50μg/mlの濃度のゲンタマイシンを含む培地を重ねた場合、単層の感染後3日で、細胞から細胞への伝播の欠損の表現型を有するリステリア株のプラクーサイズは、野生型リステリアと比較して少なくとも50%減少する。一方、感染単層にわずか5μg/mlの濃度のゲンタマイシンを含む培地+アガロースを重ねた場合、細胞から細胞への伝播の欠損の表現型を有するリステリア株と野生型リステリア間のプラクーサイズは類似している。従って、野生型リステリアと比較した、選択した株が感染単層中で細胞から細胞への伝播を行う相対能力は、アガロースを含む培地中のゲンタマイシンの濃度を変えることによって測定できる。任意には、プラクー直径の可視化と測定が、ニュートラルレッド(GIBCO BRL;DME+アガロース培地中1:250希釈)を含む培地を添加し、感染後48時間重ねることで容易になる。さらに、プラクー分析を他の初期培養細胞または継続培養細胞由来の単層中で行うことができる。例えば、肝細胞由来の細胞株であるHepG2細胞、または初期培養ヒト肝細胞を、野生型リステリアと比較した選択した突然変異体の細胞から細胞への伝播を行う能力を評価するために使用することができる。ある実施態様では、リステリアが細胞から細胞へ伝播する能力が減弱化した突然変異対または他の改変体が、ゲンタマイシンの高い濃度(約50μg/ml)で「ピンポイントプラーク」を生成する。
本発明の減弱化リステリアの減弱化も、宿主に対するリステリアの生物効果で直接測定することができる。減弱化リステリアの病原性をマウスまたは他の脊椎動物のLD50の測定で評価することができる(実施例2、表1参照)。LD50は、脊椎動物の50%が死亡するのに必要な、脊椎動物中へ注射したリステリアの量、または投与量である。特定の突然変異または改変を有するリステリアと、特定の突然変異または改変を受けないリステリア間でLD50値を比較し、減弱化の尺度とすることができる。例えば、特定の突然変異または改変を受けないリステリアのLD50が10個の細菌であり、特定の突然変異または改変を有するリステリアのLD50が10個の細菌である場合、その株はLD50が100倍または対数表示で2倍増加するように減弱化されている。
減弱化の程度は、組織病理学の程度または血清酵素レベル等の他の生物効果で定量的に測定することができる。本発明のリステリアを注射したマウスに対し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、血清中のアルブミンまたはアルブミンレベルが臨床検査室で測定される。マウスまたは他の脊椎動物中のこれらの効果の比較を、リステリアの減弱化を評価する方法として、特定の突然変異を受けた、および受けないリステリアに対して行うことができる。本発明に関連するリステリアの減弱化も、組織病理学で測定し得る。肝臓、脾臓および神経系等の感染した脊椎動物の様々な組織から回収できるリステリア量を、減弱化および非減弱化リステリアを注射した脊椎動物間でこれらの値を比較することにより、例えば、肝臓または脾臓等の感染組織から採取し得る、時間の関数としてのリステリアの量を、減弱化および非減弱化リステリアを注射したマウス間でこれらの値を比較することにより、減弱化の尺度として使用することができる。
本発明のワクチンに含まれる細菌の細胞から細胞への伝播に対する減弱化度は、安全で有効なワクチンを提供するためには絶対的な減弱化である必要はない。ある実施態様では、減弱化度とは、生命を脅かさないレベルで毒性の症候を予防または減少するに十分な毒性の減少を提供する減弱化度である。
(1.細胞から細胞への伝播に影響する突然変異を有するリステリア)
ある実施態様では、減弱化リステリア細菌は細菌を細胞から細胞への伝播に対してさらに減弱化する少なくとも1箇所の突然変異を有する。例えば、ある実施態様では、減弱化リステリアは、ActA、リポエートタンパク質リガーゼ、PI−PLC、PC−PLC、亜鉛依存性メタロプロテアーゼおよびILO(または使用したリステリア種によってはこれらのタンパク質と等価のもの)等の、細胞から細胞への伝播に関与する少なくとも1種のタンパク質が欠損した突然変異リステリア株である。ある実施態様では、減弱化リステリアはactA、lplA,lpcA,lpcB、mlpおよびhly(または使用したリステリア種によってはこれらの遺伝子と等価のもの)でなる群から選ばれた遺伝子中の少なくとも1箇所の突然変異を有する突然変異リステリア株であり、遺伝市中の突然変異が細胞から細胞への伝播に対し細菌を減弱化する。
ある実施態様では、リステリア細菌は非食細胞に対する侵入について減弱化され(例えばインターナリンB等の少なくとも1種のインターナリンの欠損)、少なくとも1種のアクチン重合タンパク質も欠損している。この様なアクチン重合タンパク質の1つは、actA遺伝子(コックス(Kocks)ら、セル(Cell)、68:521−531(1992);ジェンバンク寄託番号AL591974、nts9456−11389)でコードされるアクチンポリメラーゼである。アクチンポリメラーゼタンパク質はリステリア細菌の1つの極における宿主のF−アクチンの動員と重合に関与している。その後のアクチンの重合と溶解により、リステリアが細胞質を通って隣接した細胞へ推進される。この運動により、細胞外環境にそれ以上晒されることなく細菌が細胞から細胞へ直接伝播することが可能で、抗体の発達等の宿主の防御を逃れることができる。ある実施態様では、減弱化リステリアは任意にinlB等のインターナリン遺伝子中、およびactA遺伝子中に双方の突然変異を有する。本発明の本実施態様のリステリア株は非食細胞中への侵入について減弱化されている他、細胞から細胞への伝播に対しても減弱化されている。用語「actA」、「ΔactA」および「actA欠失突然変異」は本明細書では互換的に使用される。
ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はインターナリンBおよびactAでコードされるアクチンポリメラーゼの両方が欠損したListeria monocytogenesの突然変異株である。他の実施態様では、エステリアの突然変異株のゲノムはinlBおよびactAの両方に突然変異を有するリステリアの突然変異株のゲノムである(例えばインターナリンBおよびActAに対するコード配列のほとんど、または全ての欠失)。ある実施態様では、株は2003年10月3日付けでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体である。他の実施態様では、株はPTA−5562により識別される突然変異株であり、その突然変異株は野生型Listeria monocytogenesと比較してインターナリンBおよびActAが欠損している。再度述べるが、先に示した様に用語「actA」および「ΔactAΔinlB」は二重欠失突然変異体を指すために互換的に使用される。
ある実施態様では、減弱化リステリアのゲノムは、lplA遺伝子でコードされるリポエートタンパク質に対して欠損している(O’Riordanら、Science、302:462−4(2003);ジェンバンク寄託番号NC_003210)。ある実施態様では、減弱化リステリアはインターナリンBおよびリポエートタンパク質リガーゼが欠損している。ある実施態様では、減弱化リステリアはlplA遺伝子に突然変異を有する突然変異体である。ある実施態様では、減弱化リステリアはinlBおよびlplAの双方に突然変異を有する。いくつかのlplA突然変異体の例は、米国特許出願第2004/0013690号に報告され、全文を本明細書に引用して援用する。
ある実施態様では、非食細胞中への侵入について減弱化されているリステリア細菌は、少なくとも1種のホスフォリパーゼが欠損している。ある実施態様では、減弱化リステリアは少なくとも1種のインターナリン(インターナリンB等)が欠損し、また少なくとも1種のホスフォリパーゼが欠失、および/または突然変異している。ホスフォリパーゼはホスフォグリセリドの加水分解を触媒する酵素の1つのクラスである。ホスフォリパーゼCは、他の細菌経路中の第2のメッセンジャーであるジアシルグリセロールを放出するホスフォジエステラーゼである。リステリア中では、これらはファゴリソソーム膜中の孔の形成に寄与する。ある実施態様では、本発明に含まれるリステリア中で突然変異したホスフォリパーゼ遺伝子はplcA、plcBおよびsmcLでなる群から選ばれる。ある実施態様では、減弱化リステリアはplcAおよび/またはplcB遺伝子(ジェンバンク寄託番号NC_003210;Angelakopolous、H.ら、2002、Infect.Immun.70:3592−3601)中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。ある実施態様では、減弱化リステリアはsmcL遺伝子中に突然変異を有する。ある実施態様では、減弱化リステリアはinlBおよびplcAおよび/またはplcB中に減弱化突然変異を有する。本発明のこれらの実施態様のリステリア株は、非食細胞中への侵入について減弱化されている他、ファゴリソソームから宿主細胞の細胞質中へ逃れ、その結果細胞から細胞への伝播に対しても減弱化している。
ある実施態様では、減弱化リステリアのゲノムはmpl遺伝子でコードされる亜鉛依存性メタロプロテアーゼプロテアーゼが欠損している(Marquisら、J.Cell Biol.137:1381−92(1997);ジェンバンク寄託番号NC003210)。ある実施態様では、減弱化リステリアはインターナリンBおよび亜鉛依存性また路プロテアーゼの双方が欠損している。ある実施態様では、減弱化リステリアはmpl遺伝子に突然変異を有する突然変異体である。ある実施態様では、減弱化リステリアはinlBおよびmplの双方中に減弱化突然変異を有する。
ある実施態様では、非食細胞中への侵入について減弱化しているリステリア細菌は、LLOも欠損している。ある実施態様では、少なくとも1個のインベーシン(例えばインターナリンB)が欠失するリステリアの突然変異株はまた、リステリアの侵入の最初の位置からの逃避、または伝播を仲介するに有効な、少なくとも1個のリステリアタンパク質が欠失、またはそれに対し突然変異している。この様な逃避タンパク質は天然リステリオリシンO(LLO:ジェンバンク寄託番号M24199、全文を本明細書に引用して援用する)の他、LLOの突然変異型を有する。ある実施態様では、減弱化リステリアのゲノムはLLOをコードするhly遺伝子中に突然変異を有する。LLOは侵入するリステリアをカプセル化するファゴリソソームの膜に孔を形成する役割を果たすサイトリシンタンパク質である。これらの孔により、リステリアはファゴリソソームの細菌環境から宿主細胞の細胞質中へ逃れることができ、そこでリステリアは成長し隣接する細胞中へ伝播することができる。リステリアの可能な突然変異LLOタンパク質はアミノ酸置換を含む。この様なアミノ酸置換はLLOタンパク質の少なくとも1個のアミノ酸を含み、得られたタンパク質の最適pHまたは安定性を変えることによりLLOの細胞毒性に影響し得る。本発明に含まれるリステリアの他の突然変異LLOタンパク質は、LLOの少なくとも1個のアミノ酸の欠失を有する。この様なアミノ酸欠失も、得られたLLOタンパク質の安定性を変えることにより細胞毒性に影響し得る。少なくとも1種のインターナリンが欠損し、またLLOタンパク質が欠失または突然変異した本発明に係わるリステリア株は、非食細胞中への侵入について減弱化されている他、ファゴリソソームからの逃避と、その結果の成長と細胞から細胞への直接伝播について減弱化されている。hly突然変異体のいくつかの例が公開米国特許出願第2004/0013690号に記載され、その全文を本明細書に引用して援用する。
従って、ある実施態様では、非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリア細菌のゲノムは、細胞から細胞への伝播に対しても減弱化され、actA、hly、lplA、mplおよびplcBからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子に少なくとも1箇所の突然変異を有する。別な実施態様では、突然変異株のゲノムはactA中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。例えば、改変リステリア細菌のゲノムは、inlBおよびactA、hly、lplA、mplおよびplcBからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子の双方中に少なくとも1箇所の突然変異を有し得る。または、減弱化リステリアのゲノムはinlBおよびplcBの双方中に少なくとも1箇所の突然変異を有する。
リステリア株中に別な突然変異を導入し、上記II節または以下の実施例に記載された方法と同じ方法でスクリーニングすることができる。典型的には複数の突然変異を順次導入する。例えば、野生型リステリアで出発して、actA遺伝子を対立遺伝子交換を用いて削除することができる。最後に、対立遺伝子交換によりinlB遺伝子をactA突然変異体またはactA/uvrABから削除し、actA/inlB突然変異体を生成することができる。
別な実施態様では、公知の既存の突然変異リステリア株をさらに改変して、非食細胞中に侵入する能力を減衰する、および/またはその株をインターナリンB欠失にする。例えば、いくつかのリステリア株が以前に記載されている。突然変異株LLO L461T(DP−L4017)がGlomskiら、J.Cell Biol.156:1029(2002)に記載され、全文を本明細書に引用して援用する。ΔactA突然変異体(DP−L4029)はそのプロファージで処理したDP−L3078株であり、Scolbeら、J.Cell Biol.150:527−537(2000)に記載され、全文を本明細書に引用して援用する。(プロファージ処理はLauerら、J.Bacteriol.184:4177(2002);米国特許公開番号2003/0203472に記載されている)LLO突然変異体(DP−L4042)(Laurelら、Science、290:992(2002))も先に報告されている。これらの株のいずれも、本発明の突然変異リステリア株を生成するための出発点を有する。または、上記の対立遺伝子交換法、または当業者に公知の他の方法を用いて様々な突然変異リステリア株の任意の一つをまず野生型リステリアから生成し、次に非食細胞中への侵入に対し細菌を減弱化する突然変異をその後で株に導入してもよい。
ワクチン用に細胞から細胞への伝播に対しても減弱化された、非食細胞中への侵入について減弱化された特定のリステリア株(例えばインターナリンB欠失株)の妥当性を、II.A節のインベーシンに影響する適切な突然変異を評価するために記載されたものと同じタイプの分析を用いて評価することができる。
本発明の減弱化リステリアのゲノムは、リステリアを非食細胞中への侵入に対しても、細胞から細胞への伝播に対しても減弱化しない別な突然変異も有し得る。
(2.細胞から細胞への伝播に影響する他の改変を有するリステリア)
ある実施態様では、非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播との双方について減弱化されたリステリア細菌が別な手段、または先に概説した突然変異に追加する手段で改変されている。例えば、ある実施態様では、リステリア細菌のリステリア核酸が改変されて細菌の増殖が減衰し、その結果細菌が細胞から細胞への伝播について減弱化されている。
ある実施態様では、リステリアの増殖の減弱化は投与量に依存して制御可能である。ある実施態様では、リステリア細菌中のリステリア遺伝子の発現は、微生物の増殖の減弱化で実質的に影響されない。ある実施態様では、リステリアは抗原を十分なレベルで発現し、個体にワクチンを投与すると個体中で抗原に対する免疫応答を誘発する。
ある実施態様では、細菌の核酸が核酸標的化合物との反応で改変され、細菌の増殖が減衰する。ある実施態様では、リステリアの核酸が、核酸と直接反応する核酸標的化合物との反応で改変されている。ある実施態様では、核酸標的化合物は核酸アルキル化剤である。例えば、ある実施態様では、核酸アルキル化剤はβアラニンN−(アクリジン−9−イル)−2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]エチルエステルである。ある実施態様では、核酸標的化合物は放射線照射により活性化する。ある実施態様では、核酸標的化合物はUVA照射により活性化されるソラレン化合物であり、減弱化リステリア細菌の核酸がUVA照射により活性化したソラレン化合物と接触して改変される。例えば、ある実施態様では、核酸標的化合物は4’−(4−アミノ−2−オキサ)ブチル−4、5’、8−トリメチルソラレン(本明細書では「S−59」と呼ぶ)である。S−59/UVA照射に対するプロトコールは以下の実施例11に提供される。架橋化合物等の標的化合物のさらに別な説明は、関連する米国出願番号60/446,051、60/449,153および60/551,869に提供され、全文を本明細書に引用して援用する。同様に、題名「改変された増殖微生物、ワクチン組成物およびその使用法(Modified Free−Living Microbes, Vaccine Compositions, and Methods of Use Thereof)」の関連米国出願も、全文を本明細書に引用して援用する。
ある実施態様では、減弱化リステリアは非食細胞中への侵入について減弱化され、その核酸が増殖に対して(上記の通り)減弱化される様に改変されているばかりでなく、リステリア核酸に対する改変を修復するように機能するタンパク質も欠損している。ある実施態様では、減弱化リステリアはDNA修復酵素が欠損している。ある実施態様では、突然変異リステリア株はインターナリンBと、その核酸に対する改変を修復するように機能するタンパク質との両方が欠損している。例えば、inlBに突然変異を有するリステリアの突然変異株は、微生物のDNA修復機構に関与する様々な遺伝子の任意の遺伝子に突然変異を有する(Aravindら、Nucleic Acid Reserarch、27(5):1223−1242(1999))ある実施態様では、修復欠失突然変異体は、ピリミジン二量体を修復するPhrBを合成する能力が失われている。例えば、別な突然変異がphrB遺伝子、またはリステリアの種によっては機能的に等価な遺伝子に存在し得る。この様な突然変異体は微生物の紫外線照射(例えばUVB、UVC)と組み合わせて使用し、微生物核酸中にピリミジン二量体を生成することができる。他の実施態様では、インターナリンB突然変異対も鎖間の架橋の修復が不可能である。これらの突然変異にはuvr遺伝子、すなわちuvrA、uvrB、uvrCおよびuvrD遺伝子の1つまたは全ての他、recA遺伝子、または微生物の属と種によっては機能的に等価の遺伝子の突然変異が含まれるが、それに限定されない。これらの突然変異は対応する酵素UvrA(ATPase)、UvrB(ヘリカーゼ)、UvrC(ヌクレアーゼ)、UvrD(ヘリカーゼII)およびRecA(リコンビナーゼ)の活性の低下をもたらす。典型的にはこれらの突然変異をソラレン等の架橋化合物と組み合わせて使用する。ある実施態様では、uvrAおよびuvrBの双方(uvrAB)を減少させる突然変異が存在する。
従って、ある実施態様では、非食細胞中への侵入について減弱化した突然変異株は、さらにphrB、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDおよびrecAからなる群より選ばれた少なくとも1個の遺伝子に少なくとも1箇所の突然変異をさらに有する。例えば、突然変異リステリアのゲノムはinlBおよびphrB、uvrA、uvrB、uvrC、uvrDおよびrecAからなる群より選ばれた遺伝子の双方に少なくとも1箇所の突然変異を有する。または、減弱化リステリアはinlB、actAおよびuvrAB中に少なくとも1箇所の突然変異を有する突然変異Listeria monocytogenesである。
上記II.A説または下記の実施例に記載と同じ方法で、リステリア株の追加突然変異を導入し、スクリーニングすることができる。典型的には複数の突然変異が順次導入される。例えば、野生型リステリアで出発して、対立遺伝子交換を用いてactA遺伝子を削除する。次に、対立遺伝子交換を用いてuvrAおよびurvB遺伝子をΔactA突然変異体から任意に削除することができる。(Listeria monocytogenesΔactAΔurvAB突然変異体は2003年10月3日付けでATCCに寄託され、PTA−5563で指定される)最後に、inlB遺伝子を対立遺伝子交換でΔactA突然変異体またはΔactAΔuvrAB突然変異体(actA/uvrABとしても知られる)から削除し、ΔactAΔinlBΔuvrAB(actA/inlB/uvrABとしても知られる)突然変異体を作成することができる。
別な実施態様では、当業者に公知の既存リステリア株をさらに改変し、非食細胞に侵入する能力を減弱化、および/またはその株をインターナリンB欠失にする。例えば、ΔactAΔuvrAB株の構築が、2003年2月6日付け係属米国仮出願第60/446,051号にL4029/uvrABとして記載されている(例えば該出願の実施例7参照)。この株は、本発明の突然変異リステリア株を作成するための出発点を有する。または、様々な突然変異リステリア株の任意の1つを、上記の対立遺伝子交換法、または当業者に公知の他の方法を用いて最初に作成し、非食細胞中への侵入に対して細菌を減弱化する突然変異(inlB等)をその後導入し得る。
ワクチンで使用するために細胞から細胞への伝播について減弱化された特定の減弱化リステリア株(例えばインターナリンB欠失株)の妥当性を、上記II.A節にインベーシンに影響する適切な突然変異を評価するために記載された様な同じタイプの分析を用いて評価することができる。
米国仮特許出願第60/446.051号、第60/449,153号、および第60/511,869号(それぞれ本明細書に引用して援用する)は、リステリアが改変された核酸を修復する能力を減少する遺伝子突然変異を有する減弱化リステリアの調製と評価に関する追加情報を提供する。同様に、題名「改変された増殖微生物、ワクチン組成物およびその使用法(Modified Free−Living Microbes,Vaccine Compositions,and Methods of Use Thereof)」の関連米国出願も、全文を本明細書に引用して援用する。
(C.抗原および異種タンパク質の発現)
本発明のある実施態様では、減弱化リステリア(例えば突然変異リステリア株)は抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、抗原はリステリア抗原である。または、抗原は非リステリア抗原である。全てではないが、本発明のある実施態様では、抗原をコードする核酸は突然変異リステリアに関して異種である。抗原をコードする核酸分子を突然変異リステリアのゲノムに組み込んでもよい。または、抗原をコードする核酸分子はリステリア内のプラスミッド等の上であってもよい。
突然変異リステリア株中で異種核酸によって発現する抗原は、突然変異リステリア株がワクチンの一部、または他の組成物として投与される宿主動物に対して同種または異種であってもよい。
抗原を発現する異種核酸を含むリステリアを調製する方法は当業者に公知である。リステリアを当業者に公知の組み換えDNA技術で変化させてもよい(例えばSambrookおよびRussel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spting Harbor Laboratory Press、2000参照)。抗原に対するコード配列、またはその断片および/または突然変異体が適当な制御配列に作動的に結合し、リステリア内で抗原配列を発現する。適当なプロモーター配列は当業者に公知である。例えば、hlyプロモーターが発現コンストラクト中に使用するに適している。ある実施態様では、抗原コード配列を含む発現コンストラクトはさらに、作動的に結合する信号ペプチド配列を有する。ある実施態様では、LLO等のリステリアタンパク質の少なくとも一部をコードする配列に、抗原配列が直接または間接的に融合している。リステリア中で抗原を発現するに適した組み込みベクターの具体例には、Rauelら、J.Bacteriol.184:4177−4186(2002)、および米国特許公報第2003/0203472A1に記載のpPL2およびpPL1が含まれ、全文を本明細書に引用して援用する。
異種核酸配列は少なくとも1つのタンパク質抗原、または疾患に対し期待療法を提供する他のタンパク質をコードすることができる。少なくとも1個の抗原、または他の所望にタンパク質をコードする少なくとも1個の配列を含む様に、リステリアを変化させることができる。特定の抗原をコードする異種核酸配列は、正確な核酸配列に限られず、個体に投与した場合、所望の免疫応答を誘発すると思われる抗体の発現を提供するに十分な配列である。他のタンパク質をコードする異種配列と同様、所望の効果(例えば期待効果)を個体に提供するために所望のタンパク質が発現する限り、あるタンパク質をコードする配列は変化してもよい。異種配列を特定の疾患に関係する抗原として発現することができる。この様な抗原を発現するリステリアをワクチンとして使用することが出来るが、そのワクチンを期待療法または治癒療法として使用し得る。この様なワクチンで処置することのできる疾患には感染症、自己免疫疾患、アレルギー、癌および他の過剰増殖疾患が含まれるが、それに限定されない。
本発明に関係するリステリアを、腫瘍関連抗原である、または腫瘍関連抗原由来の抗原をコードする異種核酸配列を含む様に変更し得る。T細胞で認識される多数の腫瘍関連抗原が同定されている(Renkvistら、Cancer Immunol.Immuother.50:3−15(2001))。これらの腫瘍関連抗原は分化抗原(例えばPSMA、チロシナーゼ、gp100)、組織特異性抗原(例えばPAP、PSA)、発育抗原、腫瘍関連ウイルス抗原(例えばHPV16E7)、癌睾丸抗原(例えばMAGE、BAGE、NY−ESO−1)、芽細胞抗原(例えばCEA、アルファ−フェトタンパク質)、腫瘍タンパク質抗原(例えばRas、p53)、過剰発現タンパク質抗原(例えばErbB2(Her2/Neu)、MUCI)、または突然変異タンパク質抗原である。異種核酸配列でコードされる腫瘍関連抗原には707−AP、アネキシンII、AFP、ART4、BAGE、β−カテニン/m、BCL−2、bcr−abl、bcr−abl
p190、bcr−abl p210、BRCA−1、BRCA−2、CAMEL、CAP−1、CAPS−8、CDC27/m、CDK−4/m、CEA(Huangら、Exper.Rev.Vaccine、2002、1:49−63)、CT9、CT10、Cyp−B、Deck−cain、DAM−6(MAGE−B2)、DAM−10(MAGE−B1)、EphA2(Zantekら、Cell Growth Differentiation、1999、10:629−38;Karles−Kinchら、Cancer Res.2002、62:2840−7)、ELF2M、ETV6−AML1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGR−6、GAGE−7B、GAGE−8、GnT−V、gp100、HAGE、HER2/neu、HLA−A0201−R170I、HVP−E7、HSP70−E7、HST−2、hTERT、hTRT、iCE、アポトーシス阻害剤(例えばサービニン)、KIAA0205、K−ras、LAGE、LDLR/FUT、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−6、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−C2,MAGE−C3、MAGE−D、MART−1/MelanーA、MDM−2、MART−2、メソテリン、ミオシン/m、MUC1、MUC2、MUM−1、MUM−2、MUM−3、ネオ−polyA、ポリメラーゼ、MA88−A、NY−ESO−1、NY−ESO−1a(GAG−3)、PAGE−4、PAP、プロテナーゼ3(Molldremら、Bloo、1996、88:2450−7;Molldremら、Blood、1997、90:2529−34)、P15、p190、Pm1/RARα、PRAME、PSA、PSM、PSMA、GAGE、RAS、RCAS1、RU1、RU2、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SPAS−1、TEL/AML1、TPI/m、チロシナーゼ、TARP、TRP−1(gp75)、TRP−2、TRP−2/INT2、WT−1、およびNY−ESO−1およびLAGE1遺伝子由来の別に翻訳されたNY−ESO−ORF2およびCAMELが含まれるが、それに制限されない。本発明の減弱化リステリアは、今後同定される抗原を含め腫瘍特異性免疫応答を誘発し得る任意の腫瘍関連抗原を包含し得る。少なくとも1個の腫瘍関連抗原をコードする少なくとも1個の異種配列を含む様に、リステリアを変化し得る。ある実施態様では、抗原はメソテリン(Arganiら、Clin.Cancer Res.7(12):3862−8(2001))、Sp17(リム(Lim)ら、Blood、97(5):1508−10、2001)、gp100(Kawasakiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:6458、1994)、PAGE−4(Brinkmannら、Cancer Res.50(7):1445−8、1999)、TARP(Wolfgangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97(17):9437−42、2000)、またはSPAS−1(米国特許出願公報第2002/0150588号)である。
ある実施態様では、腫瘍関連抗原と同一ではなく、むしろ腫瘍関連抗原に由来する抗原を異種核酸がコードする。例えば、突然変異リステリアが発現する抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍県連抗原の突然変異体、または腫瘍関連抗原の突然変異体の断片を有してもよい。ある場合は、その配列が宿主に対して内因性である抗原と異なる場合、腫瘍抗原等の抗原がワクチン中により重要な免疫応答を誘発することができる。ある実施態様では、腫瘍関連抗原の突然変異体、または腫瘍関連抗原の突然変異体の断片が腫瘍関連抗原、またはその対応する断片と少なくとも1つのアミノ酸で異なる。腫瘍関連抗原由来の抗原は、突然変異リステリアを宿主に投与すると所望の免疫応答を誘発しえる、少なくとも1個のエピトープ配列を有すると思われる。
従って、ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はSPAS−1、プロテアーゼ3、EphA2、SP−17,gp100、PAGE−4、TARP、Her−2/neu、WT−1、NY−ESO−1、PSMA、K−rasまたはCEA等の抗原、またはこれらのタンパク質の1つに由来する抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はメソテリン、SPAS−1、プロテアーゼ3、gp100、PAGE−4、Her−2/neu、WT−1、NY−ESO−1、PSMA、K−rasまたはCEA等の抗原、またはこれらのタンパク質の1つに由来する抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はメソテリン、SPAS−1、プロテアーゼ3、EphA2、SP−17,gp100、PAGE−4、TARP,WT−1、NY−ESO−1またはCEA等の抗原、またはこれらのタンパク質の1つに由来する抗原をコードする核酸分子を有する。他の実施態様では、減弱化リステリア細菌はメソテリン、SAPS−1、プロテアーゼ3、SP−17、gp100、PAGE−4、TARP、WT−1、NY−ESO−1またはCEA等の抗原、またはこれらのタンパク質の1つに由来する抗原をコードする核酸分子を有する。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌はヒトメソテリン、またはヒトメソテリン由来の抗原をコードする核酸分子を有する。他の実施態様では、減弱化リステリア細菌はヒトEphA2、またはヒトEphA2由来の抗原をコードする核酸分子を有する。さらに別な実施態様では、減弱化リステリア細菌はヒトNY−ESO−1、またはヒトNY−ESO−1由来の抗原をコードする核酸分子を有する。
ある実施態様では、減弱化ヒステリアが発現する異種抗原はプロテアーゼ3またはプロテアーゼ3由来のタンパク質である。例えば、ある実施態様では、抗原はHLA−A2.1−制限ペプチドPR1(aa169−177;VLQELNVTV(配列番号1))である。プロテアーゼ3および/またはPR1エピトープに関する情報は、以下の参考資料に公開されている:米国特許第5,180,819号;Moldremら、Blood、90:2529−2534(1997);Moldremら、Cancer Research、59:2675−2681(1999);Moldremら、Nature Medicine、6:1018−1023;およびMoldremら、Oncogene、21:8688−8673(2002)。
または、本発明の減弱化リステリアが自己免疫疾患特異性抗原をコードする異種核酸配列を含む様に変化してもよい。T細胞媒介自己免疫疾患では、自己抗原に対するT細胞反応の結果、自己免疫疾患を生じる。本発明のワクチンによる自己免疫疾患の処置に用いる抗原のタイプは、自己免疫応答に関与する特定のT細胞を標的にすると考えられる。例えば、抗原はT細胞受容体、すなわち自己免疫応答を生じるこれらのT細胞に特異性のイディオタイプの一部であると思われ、本発明のワクチン中に含まれる抗原が、自己免疫応答を生じるこれらのT細胞に特異性の免疫応答を誘発すると考えられる。これらのT細胞を除去することが、自己免疫疾患を軽減するための治療機構であると考えられる。他の可能性は、自己抗原に対して生成する抗体を標的とする、または抗体を分泌する特異性B細胞を標的とする免疫応答を生じる抗原を取り込むことである。例えば、この様なB細胞および/または自己免疫疾患中の自己抗原と反応する抗体に対し抗イディオタイプ免疫応答を生じるリステリア中に、イディオタイプ抗原を取り込んでもよい。
本発明の他の実施態様では、抗原はヒトまたは動物病原体由来である。その病原体は任意にウイルス、細菌、カビまたはプロトゾアである。ある実施態様では、抗原は病原体が生産するタンパク質、または病原体が生産するタンパク質の断片および/または突然変異体である。
例えば、抗原はヒト免疫欠失ウイルス(gp120、gp160、gp41、p24gagおよびp55gag等のgag抗原の他、HIVのpol、env、tat、vif、rev、nef、vpr、vpuおよびLTR領域等)、ネコ免疫欠失ウイルス、またはヒトまたは動物ヘルペスウイルス由来でもよい。ある実施態様では、抗原はヘペス単純ウイルス(HSV)タイプ1および2由来(gD、gB、gH、ICP27等の即効初期タンパク質糖)、サイトメガロウイルス由来(gBおよびgH等)、エプステイン−バールウイルスまたはバリセラ・ゾスターウイルス由来(gpI、IIまたはIII等)である(例えばチー(Chee)ら、1990、サイトメガロウイルス(J.K.McDougall編集、Springer Verlag、pp125−169;McGeochら、1988、J.Gen.Virol.69:1531−1574;米国特許第5,171,568号;Baerら、1984、Nature、310:207−211;およびDavisonら、1986、J.Gen.Virol.、67:1759−1816参照)。
他の実施態様では、抗原はB型肝炎ウイルス(例えばB型肝炎ウイする表面抗原)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、またはG型肝炎ウイルス等の肝炎ウイルス由来である。例えばWO89/04669、WO90/11089およびWO90/14436参照。肝炎抗原は表面、コアまたは他の関連抗原でよい。HCVゲノムはE1およびE2を含むいくつかのウイルスタンパク質をコードする。例えばHoughtonら、Hepatology、14:381−388(1991)参照。
ウイルス抗原である抗原は、ピコルナウイルス(例えばポリオウイルス、リノウイルス等)、カリシウイルス、トガウイルス(例えばルベラウイルス、デングウイルス等)、フラビウイルス、コロナウイルス、レオウイルス(例えばロタウイルス等)、ビルナウイルス、ラボドウイルス(例えばラビースウイルス等)、オルソミキソウイルス(例えばA、BおよびC型インフルエンザウイルス等)、フィロウイルス、パラミキソウイルス(例えばムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス等)、ブンヤウイルス、アレナウイルス、レトロウイルス(例えばHTLV−I、HTLV−II、HIV−I、HIV−11b、HIV−SF2、HTVLAV、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−2、サル免疫欠失ウイルス(SIV)、パピロマウイルス、ダニ由来脳炎ウイルス等)の任意の1つのファミリー由来である。これら、および他のウイルスについては例えばVirology、第3版(W.K.Joklik編集、1988年);Fundamental Virology、第3版(B.N.Fields、D.M.KnipeおよびP.M.Howley編集、1996)参照。
また別な実施態様では、抗原はマイコ細菌、バシラス、エルシナ、サルモネラ、ネイセリア、ボレリア(例えばPspAまたはOspB、またはその誘導体)、クラミジア、またはボルデテラ(例えばP69、PtおよびFHA)、またはプラスモジウムまたはトキソプラズマ等の寄生虫由来である。ある実施態様では、抗原はマイコバクテリウム・ツベルクローシス(例えばESTA−6、85A、85B、72F)、バシラス・アンスラシス(例えばPA)、またはエルシニア・ペスチス(例えばFI、V)等の細菌抗原由来である。さらに、本発明での使用に適した抗原を、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核、細菌または肺炎、中耳炎、淋病、コレラ、チフス、髄膜炎、単核症、ペスト、シゲラ感染症またはサルモネラ症、レジオネラ症、ライム症、らい病、マラリア、鉤虫症、回旋糸状虫症、住血吸虫症、トリパマソミアルシス、レスマニアシス、ギアルディア、アモエビアシス、フィラリア、ボレリアおよびトリチノシスを含むがそれに限定されない、疾病に関与する既知の原因性物質から得られるか、それらに由来する。さらに別な抗原がクル病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CDJ)、ヒツジ赤痢、伝染性ミンク脳障害、および慢性消耗症、から得られるか、またはそれらに由来する、または狂牛病に関連するプリオン等のタンパク性感染粒子に由来する。
さらに別な実施態様では、抗原は神経退行性疾患(アルツハイマー病等)、代謝疾患(Iかた糖尿病等)および麻薬常習病(ニコチン症等)から得られるか、それに由来する。または、抗原発現突然変異リステリア株を含む組成物が痛みの処置に用いられ、抗原は痛みの受容体または痛みの信号の伝達に関与する痛み受容体その他の薬剤である。
ある実施態様では、抗原配列は抗原を発現するリステリア宿主に優先的なコドンに合致する最適化コドンであってもよい。さらに、抗体ペプチドに融合した信号ペプチドをコードする配列は、抗原を発現するリステリア宿主に優先的なコドンに合致する最適化コドンであってもよい。リステリア中のコドンの最適化および信号配列に関しては、本明細書に引用して援用する2003年12月24日付け米国仮出願第60/532,598号参照。
(D.減弱化リステリアの免疫原性)
ある実施態様では、減弱化リステリア(例えば突然変異リステリア株)は宿主動物中に免疫応答を誘発可能である。ある実施態様では、免疫応答は細胞媒介免疫応答である。ある実施態様では、減弱化リステリア細菌で誘発される有効な免疫応答はCD4+T細胞反応またはCD8+T細胞反応等のT細胞反応、またはその両方を含む。
これらの免疫細胞反応をインビトロおよびインビボの双方で測定し、本発明に関するリステリアの免疫応答が有効であるかどうかを決定することができる。減弱化リステリアに対するこれらの測定と、非減弱化リステリアに対するコレラの測定を、任意の特定の抗原または異種タンパク質に対して比較することにより、効力を決めることができる。一つの可能性は、リステリア群と混合した抗原提示細胞による、関連するタンパク質または抗原の提示を測定することである。リステリアを例えば樹状細胞等の適当な抗原提示細胞または提示株と混合し、樹状細胞によるタンパク質または抗原を認識するT細胞に対する抗原提示を測定することができる。リステリアが十分なレベルでタンパク質または抗原を提示している場合、樹状細胞によってタンパク質または抗原がペプチド断片に加工され、T細胞に対するMHCクラスIまたはクラスIIの文脈中に表現される。表現されたタンパク質または抗原を決定するため、特定のタンパク質または抗原に関与するT細胞クローンまたはT細胞株を使用し得る。T細胞はT細胞ハイブリドーマでもよく、そのT細胞は癌細胞株との融合により不死化されている。この様なT細胞ハイブリドーマ、T細胞クローン、またはT細胞株はCD8+またはCD4+細胞を含み得る。抗原が加工される経路によっては、樹状細胞がCD8+またはCD4+T細胞に提示される。CD8+T細胞はMHCクラスIの文脈中の抗原を認識し、一方、CD4+T細胞はMHCクラスIIの文脈中の抗原を認識する。T細胞は、T細胞受容体による特異的認識により提示された抗原により刺激され、定量的に測定可能な(例えばELISA分析、ELISPOT分析、または細胞間サイトカイン染色(ICS)により)IL−2、腫瘍壊死因子α(TNF−α)またはインターフェロンγ(IFN−γ)等のある種のタンパク質を生産することになる。免疫原性を測定する分析の具体例は以下の実施例5〜7参照。
または、提示された抗原によるT細胞ハイブリドーマの刺激により活性化される、β−ガラクトシダーゼ等のレポーター遺伝子を含む様に、ハイブリドーマを設計することができる。β−ハイブリドーマの生産の増加を、色の変化を生じるクロロフェニルレッド−β−ガラクトシダーゼ等のその基質に対する活性により容易に測定できる。色の変化を特定の抗原提示の指示薬として直接測定できる。
本発明のリステリアワクチンの抗原発現をインビトロおよびインビボで評価する別な方法は、当業者に公知である。リステリアによる特定の異種抗原の発現を直接測定することも可能である。例えば、放射線ラベルアミノ酸を細胞群に加え、特定のタンパク質中に取り込まれた放射線量を測定することができる。細胞群で合成されたタンパク質を、例えばゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動で単離し、放射線活性量を定量的に測定して特定のタンパク質の発現レベルを評価することができる。または、タンパク質を放射線活性なしで発現し、ELISA分析またはゲル電気泳動、およびウエスターンブトッロにより可視化し、酵素結合抗体または蛍光ラベル抗体を用いて検出することができる。
さらにある実施態様では、異種または同種抗原を発現する減弱化リステリア(例えば突然変異リステリア株)は抗原を発現および/または有する細胞に対しインビボで細胞毒性を誘発する(例えば以下の実施例参照)。ある実施態様では、異種または同種抗原を発現する減弱化リステリアは治療上有効である(例えば以下の実施例4参照)。
リステリアの改変が非減弱化リステリアと比較してタンパク質発現レベルを低下させることが可能であるが、ある実施態様では、免疫原組成物またはワクチン中で減弱化リステリアがなお有効であることが理解される。本発明のある実施態様で重要なのは、非食細胞インベーシンの減弱化と、適当なタンパク質発現の組み合わせである。ワクチンの効力は、一般に微生物で送達され得る抗原の投与量と関連している。リステリアの非食細胞インベーシンの減弱化は数ログであるが、リステリア遺伝子の発現はなお適切に保たれている。同じ投与量の減弱化リステリアを減弱化改変しないリステリアの投与量と比較すると、減弱化リステリア群中の得られた抗原発現(上記の方法で測定)は、減弱化改変のないリステリア群中の抗体発現の少なくとも1%、5%、10%、25%、75%、または90%である。非食細胞インベーシン中の減弱化は対数表示で1桁であるが、減弱化リステリアの投与量を表示で1桁まで安全に増加させ得るので、ワクチン接種に際し減弱化改変のないリステリアと比較して減弱化リステリアがより多量の抗原を提示する結果となる。
(III.減弱化リステリアを含むワクチンおよび他の組成物)
本明細書に記載の減弱化リステリアに加えて、本発明は免疫原性組成物、医薬組成物、細胞およびワクチンを含む減弱化リステリアを含む様々な組成物を提供する。(本発明の組成物に有用な減弱化リステリアの例は上記II.A−C節、および以下の実施例に記載されている)
例えば、本発明は(a)非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸を有する減弱化リステリアと、(b)薬学的に受容し得る賦形剤を有する医薬組成物とを提供する。本発明はさらに、(a)非食細胞中への侵入と、細胞から細胞への伝播について減弱リステリアと、(b)薬学的に受容し得る賦形剤を有する医薬組成物とを提供する。
本発明はまた、突然変異リステリア株と薬学的に受容可能なキャリアとを有する医薬組成物であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持する組成物を提供する。ある実施態様では、突然変異リステリア株はインターナリンBが欠損している。他の実施態様では、突然変異株のゲノムはインターナリンB等のインターナリン等のインベーシンをコードする少なくとも1つの遺伝子中に、少なくとも1箇所の突然変異を有する。他の実施態様では、inlBのコード配列(または遺伝子)が、株のゲノムから欠損している。さらに別な実施態様では、inlBとactAのコード配列(または遺伝子)が欠損している。細菌株と一緒に使用するに適した薬学的に受容可能なキャリアは、当業者に公知である。
本発明はまた、宿主に投与するために、第1株を突然変異リステリア株で置換する工程を包含する、リステリアの第1株を有する医薬組成物の毒性を減少させる方法であって、突然変異リステリア株が第1リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持している方法を提供する。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBが欠損している。他の実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの両方が欠損している。
本発明はまた、本明細書に記載の減弱化リステリアを含む組成物を提供する。例えば、本発明は非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸を有する減弱化リステリア細菌を有する免疫原性組成物を提供する。本発明はさらに、非食細胞中への侵入、および細部から細胞への伝播について減弱化されている、減弱化リステリアを含む免疫原性組成物を提供する。
さらに、本発明は突然変異リステリア株を含む免疫原性組成物であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持し、抗原をコードする異種核酸分子を有する方法を提供する。ある実施態様では、株はインターナリンが欠損し、抗原をコードする異種核酸を有する。他の実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの両方が欠損している。
本発明はまた、本明細書に記載の減弱化リステリアを含む様々なワクチン組成物を提供する。例えば、本発明は(a)非食細胞中への侵入に対しては減弱化されて、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する減弱化リステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを有するワクチンを提供する。本発明はさらに、(a)非食細胞中への侵入と、細胞から細胞への伝播について減弱化された減弱化リステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを有するワクチンを提供する。本発明はまた、(a)非食細胞中への侵入について減弱化された減弱化リステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアまたはアジュバントとを有するワクチンを提供する。ある実施態様では、本明細書に記載のワクチンは1つ以上のタイプの減弱化リステリアを有する。例えば、ある実施態様では、ワクチンは複数の異なったタイプの減弱化リステリアを有する。異なったタイプの減弱化リステリアは、それらが発現する抗原、および/またはそれらの改変と突然変異で相互に異なってもよい。
本発明はさらに、突然変異リステリア株を有するワクチンであって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持するワクチンを提供する。ある実施態様では、その株はインターナリンBが欠損している。ある実施態様では、ワクチン中の突然変異株はインターナリンBとActAの両方が欠損している。ある実施態様では、ワクチンは1種以上の突然変異リステリア株を有し、それぞれが非食細胞中への侵入について減弱化されている。
本明細書で用いる用語ワクチンは、個体により強い免疫応答を引き起こさせ、それにより抗原または抗原を有する細胞に抵抗する能力を増加するための抗原を包含する薬剤に晒す前に、免疫応答を誘発するために投与されるワクチン等の、予防ワクチンを包含することを意図している。用語ワクチンはまた、ワクチン抗原に関連する疾患を既に有する個体に投与されるワクチン等の治療用ワクチンであって、そのワクチンが抗原に対する個体の免疫応答を推進し、疾患または抗原を運ぶ細胞と戦う能力を増加させることができるワクチンを包含することを意図している。
この様なワクチン組成物の投与法は公知であり、インビトロ、経口、静脈内、皮内、腹腔内、筋肉内、リンパ節内、鼻腔内、および皮下投与経路が含まれる。ワクチン組成物はさらに、アジュバントまたは共刺激分子等のワクチンに対する免疫応答を改善するための公知の添加化合物を有してもよい。例えば、共刺激分子はGM−SCF、IL−2、IL−12、IL−14、IL−15、B7.1、B7.2からなる群より選択される少なくとも1種の因子を含み、B7−DCが本発明のワクチン組成物に任意に含まれる。他の共刺激分子は当業者に公知である。
ワクチンの処方は公知であり、保存剤、安定化剤、アジュバント、抗生物質および他の物質を含み得る。ラクトースまたはグルタミン酸1ナトリウム塩(MSG)等の安定化剤は、温度変化または凍結乾燥工程等のワクチン処方の様々な条件に対し安定化するために添加される。ワクチン組成物には滅菌水または食塩水等の懸濁用液も含まれる。ある実施態様では、ワクチンは非経口または経口投与に適した、少なくとも1種の薬学的に受容し得る賦形剤を含む凍結または凍結乾燥処方である。他の実施態様では、ワクチンは粘膜投与またはエアゾルとしての投与に適した、少なくとも1種の薬学的に受容し得る賦形剤を含む凍結または凍結乾燥処方である。
ワクチンの効力をインビボモデル、例えばマウスモデルを用いて評価し得る。特定の疾患に対する予防または処置効果を提供する能力に付き、ワクチンを評価することができる。例えば、感染性疾患の場合、細菌が感染性疾患関連抗原を発現する所定量の本発明の適当なワクチンで、マウスの群をワクチン接種することができる。この抗原はリステリア自体の由来、または異種抗原である。続いてマウスをワクチン抗原に関連する感染物質で感染し、感染に対する防御を評価する。対照群(ワクチン接種されないか、または賦形剤のみ、または適当な抗原を発現しないリステリアでワクチン接種された群)と比較して、感染疾患の進行を観察する。
癌ワクチンの場合は、腫瘍モデルを使用し得るが、所定の腫瘍関連抗原または腫瘍関連抗原由来の抗原を含む本発明に含まれるリステリアでワクチン接種する前(治療モデル)または後(予防モデル)に、所定の腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞株をマウス群に注射する。腫瘍抗原を含むリステリアによるワクチン接種を、ワクチン接種されない、賦形剤でワクチン接種された、または所定の抗原を発現しないリステリアでワクチン接種された対照群と比較する・この様なモデルにおけるワクチンの有効性を、腫瘍注射後の時間の関数として腫瘍体積で評価するか、または腫瘍注射後の時間の関数として生存群で評価する。一般に、負対照(非ワクチン接種試料等)と比較して、ワクチンはほとんど、または全ての時点で腫瘍体積が減少し、中間生存率が延長する結果となる。
本発明のある実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したこれらのマウスの腫瘍体積は、対照マウス中の腫瘍体積より小さいか、それに等しかった。ある実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したマウスの腫瘍体積は、対照マウス中の腫瘍体積とほぼ同じであった。他の実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したマウス中の腫瘍体積は少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%、対照マウス中より小さかった。他の実施態様では、腫瘍体積のこの差は、マウス中へ腫瘍を移植した後の少なくとも7、14、30または60日に観察された。ある実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したマウスの中間生存時間は、対照リステリアでワクチン接種したマウスの生存時間とほぼ同じであった。他の実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したマウスの中間生存時間は、対照リステリアでワクチン接種したマウスの生存時間より少なくとも約1日、少なくとも約3日、または少なくとも約5日長かった。他の実施態様では、突然変異リステリアでワクチン接種したマウスの中間生存時間は、対照リステリアでワクチン接種したマウスの生存時間より少なくとも約10日、少なくとも約20日、または少なくとも約30日長かった。本発明のある実施態様では、突然変異リステリアによるワクチン接種を、対照リステリアの投与量とほぼ同じ投与量で行った。他の実施態様では、突然変異リステリアを、対照リステリアのワクチン接種量より少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約10倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約10倍で安全にワクチン接種した。
ワクチンの効力の測定に加えて、安全性と毒性の試験も行うことができる。この様な安全性を測定する方法には、非突然変異リステリアと比較して肝細胞中へ侵入する突然変異リステリアの数を測定する方法が含まれる。ある実施態様では、突然変異リステリアはインターナリンBが欠損している。他の実施態様では、突然変異リステリアはインターナリンBとActAの両方が欠損している。
他の実施態様では、本発明は株が非食細胞中に侵入する能力を減少するように株を改変するが、食細胞中へ侵入する能力を実質的に維持する工程を包含する、ワクチン中に用いられたリステリア株の病原性を減少する方法を提供する。ある実施態様では、本発明はインターナリンBを欠失させる様に株を改変する工程を包含する、ワクチン中に用いられたリステリア株の病原性を減少する方法を提供する。ある実施態様では、ActAが欠失するように株がさらに改変される。
他の態様では、本発明はワクチンの製造法を提供する。例えば、本発明は減弱化リステリア(例えばリステリアの突然変異体)がプロフェッショナル抗原提示細胞と、適切な条件下にプロフェッショナル抗原提示細胞を負荷するに十分な時間接触する方法であって、リステリアは野生株等の非改変リステリアと比較して非食細胞中に侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持し、上記抗原をコードする異種核酸を有する方法を提供する。さらに別な態様では、本発明はリステリア細菌を含むプロフェッショナル抗原提示細胞であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されている抗原提示細胞を提供する。本発明はまた、突然変異リステリア株を含むプロフェッショナル抗原提示細胞であって、突然変異リステリア株が非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持する抗原提示細胞を提供する。ある態様では、突然変異リステリアはエキソビボまたはインビボで専用抗体提示細胞と接触する。ある実施態様では、プロフェッショナル抗原提示細胞はマクロファージである。抗原の例については上記II.C節参照。
(IV.免疫応答の誘発法、および処置法)
本発明は減弱化リステリア、細胞組成物、および本明細書に記載のワクチンの使用を含む、免疫応答の誘発法と疾患の処置および/または予防法を提供する(本発明の方法に有用な減弱化リステリアの例は、上記II.A〜D節、および以下の実施例に記載される。組成物、ワクチン、および細胞の例は、上記III節に記載される)。
例えば、本発明は、宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有するリステリア細菌を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。本発明はまた、宿主において抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播について減弱化されたリステリア細菌を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、上記抗原をコードする核酸を有する。本発明はさらに、(a)非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを有する、抗原に対する免疫応答を宿主において誘発する方法を提供する。
本発明はまた、宿主において抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、突然変異リステリア株を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異リステリア株と比較して、非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持し、抗原をコードする核酸分子を有する。免疫応答は細胞媒介反応であってもよい。ある実施態様では、免疫応答はCD8+T細胞反応である。他の実施態様では、免疫応答はCD4+T細胞反応である。さらに別な実施態様では、宿主において誘発される免疫応答はCD8+およびCD4+反応の双方である。抗原の例のいくつかについては、上記II.C節参照。ある実施態様では、抗原、は腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍関連抗原に由来する。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBが欠損している。他に実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの双方が欠損している。
他の態様では、プロフェッショナル抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原の提示を含む方法(インビトロ、インビボ、またはエキソビボ)であって、本発明は突然変異リステリア株がプロフェッショナル抗原提示細胞と接触する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異リステリア株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持し、MHCクラスIエピトープを有する抗原をコードする異種核酸分子を有する。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの双方が欠損している。
さらに、本発明は、抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原提示とMHCクラスII抗原提示(インビボまたはインビトロのいづれか)を含む方法であって、リステリア細菌が抗原提示細胞と接触する工程を包含する方法を提供する。このリステリア細菌は、非食細胞中への侵入について減弱化され、MHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープを有する非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する。本発明はさらに、プロフェッショナル抗原提示細胞上にMHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープを誘発する(インビトロ、インビボ、またはエキソビボ)方法であって、突然変異リステリア株をプロフェッショナル抗原提示細胞に接触する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異株と比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中に侵入する能力を維持し、MHCクラスIIエピトープを有する抗原をコードする異種核酸分子を有する。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBが欠損している。他の実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの両方が欠損している。
本発明はまた、宿主において抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、宿主に減弱化リステリア細菌を有する有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を投与する工程を包含する方法を提供する。この減弱化細菌は、非食細胞中への侵入について減弱化され、抗原をコードする核酸を有する。
本発明はさらに、宿主において抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、以下の工程:(a)減弱化リステリア細菌が適切な条件下で抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、宿主由来の抗原提示細胞と接触する工程であって、減弱化リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、抗原をコードする核酸分子を有する工程;および(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程、を包含する方法を提供する。本発明はまた、宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するであって、以下の工程:(a)突然変異リステリア株が適切な条件下に抗原提示細胞を負荷するに十分な時間、宿主由来のプロフェッショナル抗原提示細胞と接触する工程であって、突然変異リステリア細菌が、非突然変異株に比べて非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持し、抗原をコードする核酸分子を有する、工程;および(b)抗原提示細胞を宿主に投与する工程、を包含する方法を提供する。ある実施態様では、抗原は腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍関連抗原由来である。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBが欠失する。他の実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAの双方が欠失する。
また別な態様では、非突然変異リステリア株に比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力が実質的に維持されている突然変異リステリア株を含む組成物を宿主に投与する工程を包含する、本発明は異種タンパク質を宿主中の食細胞に選択的に送達する方法であって、突然変異リステリア株のゲノムがインターナリン当にインベーシンをコードする少なくとも1個の遺伝子中に少なくとも1箇所の突然変異を有する方法を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載の減弱化リステリアを用いる、宿主における疾患(癌、感染症またはリステリオーシス等)を予防または処置する方法を提供する。例えば、本発明は非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する減弱化リステリアを含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法を提供する。本発明はまた、非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播との双方について減弱化された減弱化リステリア細菌を含む有効量の組成物を宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法を提供する。本発明はさらに、(a)非食細胞中への侵入について減弱化された減弱化リステリア細菌と、(b)薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを宿主に投与する工程を包含する、宿主における疾患を予防または処置する方法を提供する。
ある態様では、本発明は、宿主における疾患を予防または処置する方法であって、突然変異リステリア株を含むワクチンを宿主に投与する工程を包含する方法を提供する。この突然変異リステリア株は、非突然変異リステリア株に比較して非食細胞中への侵入について減弱化されているが、食細胞中へ侵入する能力を維持する。疾患に関連する抗原に対する治療上有益な免疫応答の誘発により、疾患が予防または処置される。ある実施態様では、突然変異株はインターナリンBが欠失する。他の実施態様では、突然変異株はインターナリンBとActAとの双方が欠失する。ある実施態様では、疾患は癌である。他の実施態様では、疾患は自己免疫疾患である。さらに別な実施態様では、疾患は感染症、またはウイルス、細菌、カビまたはプロトゾア等の病原体で発病する他の疾患である。
本発明はまた、宿主における疾患を予防または処置する方法であって、減弱化リステリア細菌を含む有効量のプロフェッショナル抗原提示細胞を宿主に投与する工程を包含し、この減弱化リステリアが、非食細胞中への侵入について減弱化されている、方法を提供する。
本発明はさらに、本発明は医療用リステリア細菌を有する組成物であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を含む組成物を提供する。他の実施態様では、本発明は医療用リステリア細菌をであって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を含むリステリア細菌を提供する。
本発明はまた、医療用のリステリア細菌を含む組成物であって、細菌が非食細胞中への侵入について減弱化された組成物を提供する。本発明はまた、医療用のリステリア細菌であって、細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されたリステリア細菌を提供する。
さらに、本発明は医療用リステリア細菌を含む組成物であって、細菌が非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播の両方について減弱化された組成物を提供する。本発明はまた、医療用リステリア細菌であって、細菌が非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播の両方について減弱化されたリステリア細菌を提供する。
さらに、本発明はリステリアに関係しない、および/またはリステリアで発病しない疾患の治療用の薬剤の製造のためのリステリアの使用であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子有するリステリアの使用を提供する。例えば、ある実施態様では、疾患は癌であり、抗原は、腫瘍抗原であるか、または腫瘍抗原に由来する。
本発明はまた、本発明はリステリアに関係しない、および/またはリステリアで発病しない疾患の治療用の薬剤の製造のためのリステリアの使用であって、細菌が非食細胞中への侵入について減弱化される使用を提供する。ある実施態様では、細菌菌が細胞から細胞への伝播について減弱化されている。ある実施態様では、疾患は癌であり、抗原は、腫瘍抗原であるか、または腫瘍抗原に由来する。
ある実施態様では、癌の予防または処置における減弱化リステリアの使用は、既存の、または環境暴露および/または家系素因等の個体の危険因子が増加する癌を予防または処置するための、個体の免疫系の細胞への減弱化リステリアの送達を含む。ある実施態様では、ワクチンで処置される個体は除去した腫瘍および/または過去に癌を有していたことがある。
減弱化リステリアの送達、または減弱化リステリアを含む組成物の送達は、皮内、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、リンパ節内、経口または鼻腔内を含む任意の適当な方法でよいが、それに限定されない。ある実施態様では、減弱化リステリアの送達は非経口である。
ある実施態様では、減弱化リステリアを含む組成物が、免疫刺激剤と組み合わせて投与される。減弱化リステリアおよび免疫刺激剤を同時に、順次に、または別々に投与できる。免疫刺激剤の例にはIL2、IL−12、GMSCF、IL−15、B7.1、B7.2、およびB7−DCおよびIL−14である。ある実施態様では、免疫刺激剤は抗体、またはT−細胞調節分子を標的とする小分子である。例えば、ある実施態様では、免疫刺激剤はCTL−4またはBTLA−4である。ある実施態様では、免疫刺激剤は調節T細胞を標的とする薬剤である。例えば、減弱化リステリアと組み合わせて使用される免疫刺激剤は、抗CD25抗体、抗LAG−3抗体、またはシトキサンである。
本明細書に記載の宿主は任意の脊椎動物、好ましくは家畜動物、スポーツ動物およびヒトを含む霊長類を含む哺乳動物である。
宿主に投与される医薬組成物またはワクチンの投与量は、宿主の種、宿主のサイズ、および宿主の疾患の状態に応じて変化する。組成物の投与量はまた、組成物の投与頻度および投与経路に依存する。ある実施態様では、1回の投与量は減弱化リステリア細菌の約10〜1012個である。他の実施態様では、1回の投与量は減弱化リステリア細菌の約10〜1011個である。さらに別な実施態様では他の実施態様では、1回の投与量は減弱化リステリア細菌の約10〜1010個である。
(V.キット)
本発明はさらに、本発明の減弱化リステリアを含むキット(または製品)を提供する(上記および以下の実施例に記載)。
ある態様では、本発明は(a)リステリア細菌を含む組成物であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する組成物、および(b)本発明中の組成物の使用または宿主における疾患の予防または処置に使用するための指針を有するキットを提供する。他の実施態様では、指針はキット内に含まれる挿入物である。
他の態様では、本発明は(a)リステリア細菌を含む組成物であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化され、非リステリア抗原をコードする核酸分子を有する組成物、および(b)組成物を宿主に投与するための指針を有するキットを提供する。他の実施態様では、指針はキット内に含まれる挿入物である。ある実施態様では、指針はキット上またはキット内のラベル上にある。
さらに別な実施態様では、本発明は(a)リステリア細菌を含む組成物であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されている組成物、および(b)宿主における疾患の予防または処置に組成物を使用するための指針を有するキットを提供する。ある実施態様では、リステリア細菌が細胞から細胞への伝播に対してさらに減弱化されている。ある実施態様では、指針はラベル上、またはキット内にある。他の実施態様では、指針はキット内に含まれる挿入物上にある。
本発明はさらに(a)リステリア細菌を含む組成物であって、リステリア細菌が非食細胞中への侵入について減弱化されている組成物、および(b)組成物を宿主に投与するための指針を有するキットを提供する。ある実施態様では、指針はラベル上、またはキット内にある。ある実施態様では、指針はキット内に含まれる挿入物上にある。
以下の実施例は説明のために提供されるが、本発明を制限するものではない。
(実施例1.突然変異リステリア細菌の構築)
(A.突然変異リステリア株の調製)
リステリア株は10403S(Bishopら、J.Immunol.139:2005(1987))由来である。指定された遺伝子のフレーム内欠失を有するリステリア株をSOE−PCRおよび確立された方法による対立遺伝子交換により作成した(Gamilliら、Mol.Microbiol.8:143(1993))。突然変異株LLO
L461TはGlomskiら、J.Cell Biol.156:1029(2002)に記載され、本明細書に引用して援用する。ΔactA突然変異体(DP−L4029)は本明細書に引用して援用するScolbeベら、J.Cell Biology、150:527−537(2000)に記載された、そのプロファージで処理したDP−L3078株である。(プロファージ処理はLaurelら、J.Bacteriol.184:4177(2002);米国特許公報第2003/0203472号に記載される)LLO突然変異体(DP−L4027;Laurelら、J.Bacteriol.184:4177−4286(2002))およびLLOΔ26(DP−L4042;Decaturら、Science、290:992(2000))も既に記載されている。ΔactAΔuvrABの構築は、2003年2月6日付け係属中米国仮出願第60/446,051号にK4029/uvrABとして記載されている(例えば該出願の実施例7参照)。DP−L4029uvtAB(ΔactAΔuvrABまたはactA/uvrABとしても知られる)は2003年10月3日にATCCに寄託され、PTA−5563で指定される。
(B.対立遺伝子交換によってリステリアからinlBを削除するためのpKSV7−dl inlBの構築)
リステリアDP−L4029からの(または他の選ばれた突然変異株、または野生型リステリアからの)inlBの削除をCamilliら、Mol.Microbiol.8:143−147(1993)に記載通り、対立遺伝子交換で行うことができる。スプライス・オーバラップ伸長(SOE)を使用して対立遺伝子交換法に用いられるコンストラクトを調整することができる。インターナリンB遺伝子の起源は、全文を本明細書に引用して援用するジェンバンク寄託番号AL591975として列記された配列(Listeria monocytogenes株EGD、完全ゲノム、セグメント3/12;inlB遺伝子領域:nts97008−98963)、および/または全文を本明細書に引用して援用するジェンバンク寄託番号NC_003210(Listeria monocytogenes株EGD、完全ゲノム、inlB遺伝子領域:nts457008−458963)である。
一次PCR反応では、リステリアinlB遺伝子5’および3’末端からそれぞれ上流および下流の約1000bpの配列が、以下の鋳型およびプライマーを用いて増幅される:
鋳型:DP−L4056またはDP−L4029ゲノムDNA
プライマー対1(inlBの5’末端から上流の領域の増幅用)
Lm−96031F:5’−GTTAAGTTTCATGTGGACGGCAAAG(配列番号2)(Tm:72℃)
Lm−(3’inlB−R+)97020R:5’−AGGTCTTTTTCAGTTAACTATCCTCTCCTTGATTCTAGTTAT(配列番号3)(Tm:114℃)
(下線配列はInlBカルボキシ末端の下流の領域に相補性)
アンプリコンサイズ(bps):1007
プライマー対2(inlBの3’末端から下流の領域の増幅用)
Lm−(5’inlB−F+)98911F:5’−CAAGGAGAGGATAGTTAACTGAAAAAGACCTAAAAAAGAAGGC(配列番号4)(Tm:118℃)
(下線配列はInlBアミノ末端の下流の領域に相補性)
Lm−99970R:5’−TCCCCTGTTCCTATAATTGTTAGCTC(配列番号5)(Tm:74℃)
アンプリコンサイズ(bps):1074
2次PCR反応では、ペア1からのリバースプライマーとペア2からのフォワードプライマーとの間の相補性を利用して1次PCRアンプリコンをSQE PCRで融合した。これによりinlBコード配列:nts.97021−98910=1899bpsが正確に削除された。以下の鋳型およびプライマーが2次PCR反応に使用された:
鋳型:精製した1次PCR反応性生物
プライマー対:
Lm−96043F:5’−GTGGACGGCAAAGAAACAACCAAAG(配列番号6)(Tm:74℃)
Lm−99964R:5’−GTTCCTATAATTGTTAGCTCATTTTTTTC(配列番号7)(Tm:74℃)
(アンプリコンサイズ(bps);2033)
構築プロセスを完成するプロトコールは以下の通りである:
1次PCR反応(3つの温度サイクル)をVent DNAポリメラーゼ(NEB)を用いて行い、10μlの洗浄したリステリアDP−L4056またはDP−L4029を30℃で一晩培養した。1%アガロースゲルによるリステリアアンプリコンの予測サイズは1007bpsと1074bpsであった。1次PCR反応生成物をゲルで精製し、DNAをジェンクリーン(GeneClean;BIO101)で精製した。
ほぼ等量の各1次反応性生物を鋳型として用いて、2次PCR反応を行った(約5μl)。2次PCR反応からのリステリアアンプリコンの予測サイズを1%アガロースゲルで実証した(2033bps)。Taqポリメラーゼを用い、アデノシン残基をリステリアdl inlBアンプリコンの3’末端に付加した。
次にリステリアdl inlBアンプリコンをpCR2.1−TOPOベクター中に挿入した。pCR2.1−TOPO−dl inlBプラスミドDNAをXhoIおよびKpnIで消化し、2133bp断片をゲルで精製した。KpnI/Xhoの2133bp断片を、KpnIおよびXholで消化し、CIAP(pKSV7−dl inlB)で処理したpKSV7ベクター中に挿入した。次にpKSV7−dl inlB中のdl inlB配列の正確さを立証した。pKSV7−dl inlBとの対立遺伝子交換により、inlB遺伝子を所定のリステリア株から削除した。
(C.抗原発現株の構築)
AH1(SPSYVYHQF(配列番号8))として知られるマウス結腸直腸癌由来の免疫主体エピトープであるモデル抗原オバルブミン(OVA)の切断型を発現する突然変異リステリア株、および関連するエピトープAHI−A5(SPSYAYHQS(配列番号9);スランスキー(Slansky)ら、イミュニティ(Immunity)、13:529−538(2000))を調製した。pPL2組み込みベクター(Laurelら、J.Bacteriol.184:4177(2002);米国特許公開第2003/0203472号)を、OVAおよびリステリアゲノムの無害な部位に組み込んだ単一コピーを含むAH1−A5/OVA組み換えリステリア株を誘導するために使用した。
(i.OVA発現リステリア(DP−L4056)の構築)
切断OVAと融合し、pPL2組み込みベクター中に含まれるヘモシアニン欠失LLOで構成される抗原発現カセットを最初に調製した。pPL2/LLO−OVAをファージ処理L.monocytogenes株DP−L4056のPSA(ScottA由来ファージ)付着部位tRNAArg−attBB’に導入して、リステリア−OVAワクチン株を誘導した。
以下の鋳型およびプライマーを用いてヘモライシン欠失LLOを増幅するためにPCRを用いた。
起源:DP−L4056ゲノムDNA
プライマー:
フォワード(KpnI−LLO nts.1257−1276):5‘−CTCTGGTACCTCCTTTGATTAGTATATTC(配列番号10)(Tm:LLOspec:52℃、全体:80℃)
リバース(BamHI−XhoI−LLO nts.2811−2792):5’−CAATGGATCCCTCGAGATCATAATTTACTTCATCCC(配列番号11)(Tm:LLO−spec:52℃、全体:102℃)
以下の鋳型とプライマーを用い、切断OVAを増幅するためにPCRを使用した。
起源:DP−E3616E.coli由来のpDP3616プラスミドDNA(Higginsら、Mol.Molbiol.、31:1631−1641(1999))
プライマー:
フォワード(XhoI−NcoI OVAcDNA nts.174−186):5’−ATTTCTCGAGCCATGGGGGGTTCTCATCATC(配列番号12)(Tm:OVA−spec:60℃、全体:88℃)
リバース(XhoI−NotI−HindIII):5’−GGTGCTCGAGGCGGCCGCAAGCTT(配列番号13)(Tm:全体:82℃)
本構築プロセスの仕上げとなるプロトコールの1つには、最初にLLOアンプリコンをKpnIおよびBamHIで切断し、KpnI/BamHIベクターをpPL2ベクター(pPL2−LLO)中へ挿入する工程が含まれる。次にOVAアンプリコンをXhoIおよびNotIで切断し、XhoI/NotIで切断したpPL2−LLO中へ挿入する。(注:pPL2ベクターはXhoI部位を含まない;pDP−2616は、OVAリバースプライマーの設計に利用される1個のXhoI部位を含む)コンストラクトpPL2/LLO−OVAは制限解析(KpnI−LLO−XhoI−OVA−NotI)および配列決定で立証される。プラスミドpPL2/LLO−OVAを形質転換でE.coli中に導入し、次いでラウエルらが記載する通りに接合により正確にリステリア(DP−L4056)中へ(またはΔinlB突然変異体またはΔactAΔinlB突然変異体中に)導入し組み込む。
OVAを発現する抗原発現カセットの挿入の説明は、題名「増殖微生物系ワクチン組成物(Free−Living Microbe Based Vaccine Composition)」、の2003年10月15日付け米国仮出願番号60・511,869の実施例8に見出すことができる。
(ii.AH1/OVAまたはAH1−A5/OVAのいずれかを発現するリステリアの構築)
AH1/OVAまたはAH1−A5/OVAを発現するリステリアを調製するため、抗原を有するインサートをオリゴヌクレオチドからまず調製し、次いでベクターpPL2−LLO−OVA中にライゲートした(上記の様に調製)。
AH1またはAH1−A5インサートの調製に以下のオリゴヌクレオチドが使用された:
AH1エピトープインサート(CalI−PstI適合末端)
トップストランドオリゴ(AH1 Top):5’−CGATTCCCCTAGTTAGTTTACCACCAATTTGCTGCA(配列番号14)
ボトムストランドオリゴ(AH1ボトム):5’−GCAAATTGGTGGTAAACATAACTAGGGGAAT(配列番号15)
AH1−A5エピトープインサート(ClaI−AvaII適合末端):
AH1−A5エピトープの配列はSPSYAYHQF(配列番号9):(5’−AGTCCAAGTTATGCATATCATCAATTT−3’)(配列番号16)
トップ:5’−CGATAGTCCAAGTTATGCATATCATCAATTTGC(配列番号17)
ボトム:GTCGCAAATTGATGATATGCATAACTTGGACTAT(配列番号18)
与えられたエピトープに対するオリゴヌクレオチドペアを等モル比で混合し、95℃で5分間加熱した。次にオリゴヌクレオチド混合物を徐冷した。次にアニールしたオリゴヌクレオチドペアを、関連する制限酵素で消化して調製したpPL2−LLO/OVAと200:1のモル比でライゲートした。新しいコンストラクトの同一性を制限酵素分析および/または配列決定で実証することができる。
次に形質転換によりプラスミドをE.coli中に導入し、次いでラウエルらの記載通りに接合によりリステリア(DP−L4056)中に(またはΔinlB突然変異体またはΔactAΔinlB突然変異体等の他の所望のリステリア株中に)導入し組み込む。
(実施例2.リステリアの病原性の検討)
突然変異リステリア株のいくつかの中間致死投与量(LD50)をIV感染マウスで測定した。3〜5匹の雌C57B/6マウスを、指定した株の3〜5倍希釈でIV感染した。マウスを10日間、毎日モニターし、不全の兆候を示した時点で殺した。中間致死投与量を計算した。データを下記の表1に示す。その結果は、インターナリンBが欠失する突然変異リステリア株(ΔinlB、ΔactAΔinlB、およびΔactAΔinlAB)は、actA欠失と組み合わせた場合、毒性が低いことを示す。ΔinlB株のみが野生型リステリアに類似した毒性を示す。
(表1.減弱化Listeria monocytogenes株)
Figure 2007503846
(実施例3.Listeria monocytogenesをワクチン接種したマウス中のインビボ細胞毒性活性の評価)
ワクチン接種マウスが抗体特異性標的細胞をインビボで溶解する能力を評価するために、一連の研究を行った。最初の研究では、Listeria monocytogenes株DP−L4029(ΔactA)、DP−L4029ΔinlB(ΔactAΔinlB)および表2に記載のAHI−A5を発現するように遺伝子操作された同じ株で、Balb/cマウスを静脈内(IV)または筋肉内(IM)ワクチン接種した。AHI−A5を発現するリステリアコンストラクトは、ヘモライシン欠失KKOおよび切断OVAも発現する(上記実施例1.C参照)。ワクチン接種量は0.1LD50であった。標的細胞群を10匹のナイーブBalb/cマウスの脾臓をRPMI媒体中で集めて調製した。細胞を解離し、赤血球を溶解した。白血球を計数し、2つの等しい群に分けた。各群を0.5μg/mLの標的(SynPep、Dublin、CAより入手したAH1、SPSYVYHQF(配列番号8))または対照(β−gal、TPHPARIGL(配列番号19))としての特異性ペプチドで、37℃で90分間パルス処理した。次いでカルボキシフルオレッセン・ジアセテート・スクシニミジルエステル(CSFE、分子プローブ、Eugene、OR)で標識するため、細胞を媒体で3回、PBS+0.1%BSAで2回洗浄した。標的細胞懸濁液にCFSEの5mMストックを1.25μL加え、試料を渦巻き混合した。対照細胞懸濁液に10倍希釈CFSEストックを加え、試料を渦巻き混合した。細胞を37℃で10分間インキュベーションした。大容積(>40mL)の氷冷PBSを加えて染色を停止した。細胞をPBSで2回、室温で洗浄し、懸濁して計数した。各細胞懸濁液をmLあたり50×10個の細胞に希釈し、各群の100μLを混合し、ワクチン接種から6日後にナイーブまたはワクチン接種マウスに尾静脈から注射した。12〜24時間後、脾臓を採取し、合計5×10個の細胞をフローサイトメトリーで分析した。高い(標的)および低い(対照)蛍光ピークを数え、両者の比をHBSS対照群と比較した標的細胞溶解を決定するために用いた。その結果を表2および図1Aに示す。(本実施例の表は3匹のマウスの平均を示すが、図は個々のマウスの代表的なヒストグラムを示す)ΔactAΔinlBを用いるワクチン接種と、ΔactAを用いるワクチン接種の比較から、IMでなくIV投与の場合の抗原特異性インビボ細胞毒性の改善を示す。
(表2:表に示す様にワクチン接種したBalb/cマウスのインビボ細胞毒性(非ワクチン接種対照試料と比較した標的細胞の細菌%))
Figure 2007503846
ΔactAとΔactAΔinlB二重突然変異体を用いて別の研究を行ったが、双方の株はAHI−A5を発現し、表3に記載の静脈内ワクチン接種を行った。この研究で、ナイーブ脾臓細胞はβ−gal、AH1またはP60−217(KYGVSVQDI(配列番号20))でパルス処理した。β−galパルス処理細胞を低濃度のCFSEで標識し、AHIおよびP60−217を高濃度でCFSEr標識した。各セットの2匹のマウスに、第5日に上記β−galおよびAH−1パルス処理細胞を注射した。各セットの残りの2匹に、第5日にβ−galおよびP60−217パルス処理細胞を注射した。結果を表3および図1Bに示す。
(表3:表に示す様にワクチン接種したBalb/cマウスのインビボ細胞毒性(非ワクチン接種対照試料と比較した標的細胞の細菌%))
Figure 2007503846
AHI−A5のない、またはある、表4記載のIVワクチン接種したΔactAΔinlB二重突然変異体を用いて別な研究を行った。この研究では、ナイーブ脾臓細胞をβ−gal、AH1またはAH1−A5(SPSYAYHQF(配列番号9))でパルス処理した。β−galパルス処理細胞をCFSEで低濃度標識し、AH1およびAH1−A5をCFSEで高濃度標識した。第6日に、各セットの3匹のマウスにβ−galおよびAH−1パルス処理細胞を上記の様に注射した。各セットの残りの3匹に、第6日にβ−galおよびAH−1パルス処理細胞を注射した。結果を表4および図1Cに示す。
(表4:表に示す様にワクチン接種したBalb/cマウスのインビボ細胞毒性(非ワクチン接種対照試料と比較した標的細胞の細菌%))
Figure 2007503846
(実施例4:Listeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体による治療ワクチン接種)
Balb/cマウスを用い、CT26腫瘍細胞(ATCC CRL−2639)をマウスに注射し(HBSS中、100μLIV中の2×105個の細胞)、肺転移を確立した。CT26細胞は、MMTVgp70エピトープAH1を発現するマウス結腸線癌である。(ヒト腫瘍抗原を発現するように細胞をさらに改変したが、この特性は本明細書に示すデータに関連しない)有効な治療ワクチン株として、Listeria monocytogenesΔactAΔinlBの使用を評価するため、いくつかの研究を行った。ある研究では、Listeria monocytogenes株ΔactA、AH1−A5を発現するように改変したΔactA、およびAH1−A5を発現するように改変したΔactAΔinlBを13匹のマウスのワクチン接種群に用いた。全ての株は37℃、300rpmでHBI培地(ブレイン・ハート・インフュージョン(Brain Heart Infusion)、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scentific))中で生育した。各株の凍結ストックをHBSS中で希釈し、腫瘍移植後4日にマウスを各株に1×10CFU/100μLでワクチン静脈注射した。腫瘍移植後20日に、各グループ3匹のマウスを殺し、肺を採取した(図2Aに示す)。
各群に残りの10匹のマウスの生存率をモニターした(データ示さず)。ΔactA、AH−A5、およびΔactAΔinlBの他、ある研究では無関係な抗原対照としてのOVAを発現するL461T、他の研究では無関係な抗原としてのFluHAを発現するΔactAを用い、OVA10匹のマウスの群についてさらに研究を続けた(生存マウスのみ、いずれのマウスからも肺を取り出さなかった)これらの研究に対する生存結果を図2Bおよび2Cにそれぞれ示す。AH1抗原はマウスにとっては内因性であり、免疫効果はマウス中で免疫寛容を破壊すると考えられる。結果は、ΔactAΔinlB突然変異体がこのモデルで免疫寛容を破壊し、腫瘍を有するマウスの生存を有意に増大する有効なワクチンであることを示している。
(実施例5:筋肉内投与後のListeria monocytogenesの様々な株の免疫原性)
C57BL/6マウス(グループあたり3匹)に、表5に示す0.1LD50のListeria monocytogenes株を含む100μLのHBSSをIM注射した。全ての株を37℃、300rpmでBHI培地中で生育(ブレイン・ハート・インフュージョン、フィッシャー・サイエンティフィック)し、使用前に凍結保存した。ワクチン接種後7日にマウスを殺し、脾臓を採取し細胞内サイトカイン染色(ICS)で評価した。
ICSのため、マウスのワクチン接種および対照群由来の脾臓細胞をOVA特異性CD8+細胞を刺激するSL8OVA257−264ペプチド(SL8OVA抗原、SIINFEKL(配列番号21)、インビトロゲン、サン・ディエゴ、CA)、リステリオライシンO(リステリア抗原)に対するMHCクラスIIエピトープであるLLO190(NEKYAQAYPNVS(配列番号22))、またはリステリオライシンOに対するMHCクラスIエピトープであるLLO296(VAYGRQVYL(配列番号23))で、ブレフェルジンA(ファルミンゲン(Fharmingen))の存在下に5時間インキュベーションした。ブレフェルジンAは、T細胞の刺激で生産されるサイトカインの分泌を阻害する。関連のないMHCクラスIペプチドでインキュベーションした脾臓細胞を対照として用いた。PMA(フォルボール−12−ミリステート−13−アセテート)20ng/mL、およびイオノマイシン(シグマ(Sigma))2μg/mLで刺激した脾臓細胞を、INF−γおよびTNF−α細胞内サイトカイン染色のための正の対照として使用した。細胞質サイトカイン発現の欠失のため、細胞をFITC−抗CD4mAB(RM4−5)およびPerCP−抗CD8mABで染色し、固定しCytofix/Cytoperm溶液(ファルミンゲン)で透過性にし、氷上で30分間、PE−共役抗TNF−αmAB(MP6−XT22)およびAPC−共役抗IFN−γmAB(XMG1.2)で染色した。細胞内INF−γおよび/またはTNF−αを発現する細胞の割合をフローサイトメトリー(FACScalibur、Becton Dickinson、Mountain View、CA)で測定し、CELLQuestソフトウエア(ベクトン・ディッキンソン・イムノサイトメトリー・システム)を用いてデータを解析した、様々な抗体上の蛍光レベルはFACScaliburで消光できるので、抗IFN−γまたは抗YNF−αのいずれか、またはその両方で染色したCD8+およびCD4+に対しゲートを開閉することにより、適当な細胞を同定することができる。結果を図3A〜Fに示す。ΔabAΔinlB株は、OVA特異性免疫応答を誘起するのにより有効な株の一つである
(表5:Listeria monocytogenesの様々な株によるC57B/6マウスのワクチン接種)
Figure 2007503846
(実施例6:C57BL/6マウス中でListeria monocytogenes株により誘発されるOVA特異性免疫の評価)
C57BL/6マウス(グループあたり3匹)を、0.1LD50の表6に示す株を含む200μLのHBSSでIV注射した。ΔinlB株を過剰の投与量で注射したが、これらのマウスは7日間生存しなかった。ワクチン接種後7日でマウスを殺し、脾臓を採取し、異種抗原オバルブミン(OVA)およびリステリア抗原LLOに対する抗体特異性T細胞反応を、実施例5に従いICSで分析した。OVA、SL8(OVA257−264)およびLLO(LLO190−201、LLO296−304)に対するT細胞エピトープでワクチン接種および対照マウスの脾臓細胞を刺激するに加えて、それらの細胞をC57BL/6マウス(EL−4)由来のマウス胸腺腫細胞、およびオバルブミン(EG−7)をコードするプラスミドで安定に形質転換されたEL−4細胞で5時間刺激した。生きた刺激細胞、または150μMのソラレンS−59および3J/cm2のUVA光線(FX1019照射装置、バクスター・フェンバル(Baxter Fenwal)、ラウンドレーク(Round Lake)、IL)で不活性化後の刺激細胞を用いた。S−59による不活性化は光化学処理(PCT)と呼ばれ、細胞を完全に不活性化する。LLO刺激試料以外のIFN−γに対する結果を図4に示す。最適T細胞エピトープSL8または生きた、または不活性化全腫瘍細胞を使用して5時間刺激した場合、ワクチン接種マウスの脾臓細胞の同等の刺激が観察された。全細胞による刺激は、OVA特異性T細胞が腫瘍細胞の実態中のOVAの内因性レベルを認識することを暗示している。ΔactAΔinlB株は、ペプチドの他に細胞全体による刺激に対し、比較的強いOVA特異性反応を生じる。
(表6:Listeria monocytogenesの様々な株によるC57B/6マウスのワクチン接種)
Figure 2007503846
投与量に対する反応を調べるため、Listeria monocytogenes野生型、およびOVAを発現するように改変したΔactAおよびΔactAΔinlB株を用いて別な研究を行った。以下の様にC57BL/6マウスに200μLのHBSSを静脈内注射した;野生型5×10、5×10、5×10、5×10;ΔactA
1×107、1×10、1×10、5×10、1×10;ΔactAΔinlB 1×10、1×10、1×10、1×10、1×10。ワクチン接種後5日にマウスを殺し、脾臓を採取し、SL8、LLO190およびKKO296で刺激してICSで分析した。結果を図5に示す。
(実施例7:異なった経路でマウスに投与した、LLO−OVAを発現するListeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体の免疫原性)
Balb/cマウスにListeria monocytogenesΔactA(DP−L4029)またはListeria monocytogenesΔactAΔinlB二重突然変異体を注射したが、双方の突然変異体はOVA抗原を発現するように遺伝子操作した。マウス(グループあたり3匹)にHBSS中の1×10CFUのΔactAまたは1×10CFUのΔactAΔonlBを、200μLのIV(静脈内)、100μLのSC(皮下)、100μLのIM(筋肉内、各脚の大腿四頭筋あたり50μL)、50ミクロンのIM(筋肉内;各脚の脛骨あたり25micronL)、50μLのID(皮内)、または200μLのIP(腹腔内)注射した。ワクチン接種の7日後、脾臓を採取し、実施例5に準じて細胞内サイトカイン染色(ICS)で分析した(SL8のみ、IFNのみ)。図6は脾臓中のCD−8+OVA特異性T細胞を示し、数箇所の投与経路でactA/inlB突然変異体がΔactAより大きな反応を与え、IV、IPおよびIM経路が最大の反応を示すことを示している。
(実施例8:ナイーブ免疫担当C57BL/6マウス中のListeria monocytogenesΔactAΔinlB突然変異体のインビボ生育の動力学)
リステリアの減弱化株は野生型と比較して高濃度で投与できるが、感染の1次器官、すなわち肝臓または脾臓を損傷せずに感染を素早く消滅できることが安全なワクチンの開発に重要である。
C57BL/6マウスにListeria monocytogenesのDP−L4056(野生型)、DL−L4029(ΔactA)、DP−L4406(ΔinlB)およびΔactAΔinlB株を注射した。注射は表7に示すレベルでHBSS中100μL(IV)であり、HBSS対照群を含みグループあたり35匹のマウスであった。全ての株を37℃、300rpmでBHI培地()中で生育させ、使用前は凍結保存した。表7に示す時点でグループあたり3匹のマウスを殺し、血液、脾臓および肝臓を分析のために採取した。肝臓と脾臓とを0.05%TritonX−100を含む5mlの2回蒸留水中にホモジェナイズし、BHI/ストレプトマイシンプレート上に逐次希釈液を接種して生きたリステリア数を測定した。グループあたり2匹のマウスに付き、肝臓と脾臓を10%緩衝液フォルマリン中で固定した。肝臓および脾臓あたりのCFUの結果を図7Aおよび8Aに示す。この実験を図7Bおよび8Bに示す株の濃度で繰り返した。
野生型リステリアによるマウスの感染は、投与後8〜11日で終了した。野生型リステリアの数は4日間で着実に有意の増加を示し、脾臓および肝臓中では11日で検出の最低レベルへ減少した。興味のあることに、ΔinlB突然変異体は脾臓および肝臓中で同様な動力学を示し、11日で無菌免疫を誘発した。対照的に、ΔactA突然変異体は肝臓中のみで24時間で10倍の増加を示したが、脾臓中では増加せず、感染後4日で実質的に減少した。最高濃度で投与したが、ΔactAΔinlB二重突然変異体は他の3種の株と比較して肝臓中できわめて速やかに消失し、無菌免疫が4日で誘発された。細菌種の消滅の加速は、強力な予防および治療腫瘍モデルにおける抗原特異性免疫の誘発能力と対照的である。
(表8:減弱化Listeria monocytogenesのインビボ生育動力学の研究に対する投与およびサンプリングスケジュール)
Figure 2007503846
(実施例9:非食細胞と食細胞のListeria monocytogenesの様々な株によるインビトロ感染)
Listeria monocytogenes野生型、ΔactA、ΔinlBよびΔactAΔinlB株を、ヒト単核細胞株THP−1(ATCC#TIB−202)、初代ヒト単核細胞、ヒト肝細胞株HepG2(ドリュー・パードル(Drew Pardoll)、ジョンス・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)、ATCC#HB8065として入手可能)、または初代ヒト肝細胞(インビトロ・テクノロジーズ(In Vitro Technologirs)、バルチモア(Baltimore)、MD)とインキュベーションした(37℃、5%CO)。初代ヒト単核細胞をリンパ球を精製するためのフィコール勾配を用いて全血から調製し、次いで単核細胞特異性抗体を結合した磁気ビーズ(ミルテニ・バイオテク(Miltenyi Biotac))を使用して単核細胞を単離した。THP1およびヒト単核細胞を10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、23.8mM重炭酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸m2mM Lグルタミン、10mM HEPES緩衝液、および1mMピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI中でインキュベーションした。リステリア株を5×10CFUで5×10個のTHP−1に、および3.5×10CFUで3.5×10個の単核細胞に加えた。HepG2細胞を20%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、および1×非必須アミノ酸を補充したイーグル最小必須培地中でインキュベーションした。リステリア株を1×10CFUで1×10個のHepG2細胞に加えた。初代ヒト肝細胞を、リステリアを添加する前に肝細胞生育インキュベーション培地(インビトロ・テクノロジーズ)中でインキュベーションし、リステリアを添加後に10%FBS、2mM L−グルタミンおよび1×非必須アミノ酸を補充したDMEM中でインキュベーションした。リステリア株を3.5×10CFUで3.5×10個の肝細胞に添加した。1時間インキュベーション後、全ての細胞外細菌を死滅させるため細胞をゲンタマイシン(50μg/mL)を含む完全培地で洗浄した。次に細胞を225μLの滅菌水で溶解し、25mLの10×PBSを加えた。得られた溶液を逐次希釈でBHI上に接種し、各試料からの細菌力価を評価した。細胞に感染する細胞数を細胞に添加したリステリア数で割り、株の感染性を測定し、野生型株の感染性に対して正規化した。
結果を図9に示す。図9に示す様に、全ての株は同様な速度でTHP−1細胞とヒト単核細胞に感染することが可能で、ActAまたはinlBのないことが食細胞の感染に影響しないことを示している。しかしながら、肝細胞の感染はInlBのないリステリア株でかなり減少した。InlBのない突然変異株であるΔinlBまたはΔactAΔinlBのいずれかで感染した場合、ヒト肝細胞の感染は約60%、HepG2細胞の感染は80%減少する。これらの研究は、InlBタンパク質の欠失は培養および初代肝細胞の感染を阻止することにより、InlBタンパク質の欠失が食細胞による取り込みを選択することを示している。
(実施例10:オプソニン化Listeria monocytogenesによる非食細胞と食細胞のインビトロ感染)
野生型リステリアを、ΔactAリステリア突然変異体(1:20希釈)、または対照としてのHBSSにより氷中で1時間、IV感染した高力価リステリア特異性マウス血清とインキュベーションした。食細胞樹状細胞様細胞株(DC2.4)および非食細胞直腸上皮細胞株(Coco−2)を1および10のMOIそれぞれで、37℃で1時間感染した。細胞外微生物を除去するため、細胞を3回洗浄した。残存する細胞外細菌を死滅させるため、細胞を50mg/mlのゲンタマイシンの存在下にさらに2時間培養した。細胞株の感染性を測定するため、細胞を0.01%Triton X−100を含むdHOで溶解した。生存リステリア数をHBI観点プレート上に逐次希釈で播種して測定した。
図10に示す様に、ワクチン接種マウス由来の高力価免疫血清でインキュベーションしたリステリアΔactAでは、非食細胞株CacO−2に対する感染能が減少していたが、食細胞樹状細胞株DC2.4に対しては減少しなかった。オプソニン化リステリアによる非食細胞の感染の減少は、actAおよびinlBが欠損した減弱化リステリアと同程度である。理論に制約されるものではないが、リステリア特異性抗体(インターナリンを標的とするモノクローナル抗体、またはポリクローナルAbs)は、インビボで非食細胞の感染を可能にするリステリアΔactA細菌の表面上の受容体をブロックすると考えられる。
(実施例11:リステリアのS−59ソラレンUVA処理の例)
リステリアのΔactAΔuvr突然変異株(DP−L4029uvrAB)を、OVA抗原を発現するように改変した。この株、およびOVAを発現するように改変したDP−L4029を様々な濃度でソラレンS−59により処理した。リステリア株を37℃で一晩生育し、2mL分を100mLのBHIで希釈し、37℃で約4時間、OD600が0.5(約1×10CFU/mL)まで生育させた。各リステリア株の5mL分を15mLのチューブに加え、2300×gで20分間遠心し、上清を除去し、細菌を懸濁して約1×10CFU/mLとした。UVRAB突然変異体に対し、3mMのS−59ストックを33.3μLから10mMのPBSに希釈し10μM溶液とし、この適当な分量をリステリアに加えて最終濃度10、20、30、40、50、60、70、80、90および100nMとした。一方、DP−L4029に対しては、最終容積5mL中にS−59を加えて最終濃度100、200、400、800および1000nMとした。これらを6ウエル培養プレート上に移し、0.5J/cmの線量で照射した(FX1019UVA装置)。試料を15mLチューブに移し、5mLのPBSを加え、未反応のソラレンを洗浄除去するため2300×gで20分間遠心した。上清を除き、細菌を5mLのPBS中に懸濁し、新しい6ウエルプレートに移した。ソラレンモノ付加物を架橋するため、これらを5.5J/cmのUVA線量で照射した。各リステリア株の試料も、72℃、3時間で熱殺菌した。
細菌試料の抗原提示を、マウスDC2.4細胞株(ダナ・ファーバー・カンサー・インスティチュート(Dana Farber Cancer Institute)からの樹状細胞株、シェン(Shen)ら、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol.)、158(6):2723−30(1997)参照)およびB3ZT細胞ハイブリドーマ(Dr.シャストリ(Shastri)、カリフォルニア大学バークレーから入手)を用いて評価した。B3ZはMHCクラスI分子の文脈中のOVA抗原を認識してβ−ガラクトシダーゼを発現する、lacZ誘導CD8+T細胞ハイブリドーマである。β−ガラクトシダーゼの基質であるCRPG(クロロフェノールレッド−β−ガラクトピラノシド、カルビオケム(Calbiochem)、La Jolla、CA)の代謝を、DC2.4細胞が提示するOVA抗原の量と直接相関する生成したβ−ガラクトシダーゼのレベルを評価するために用いた。DC2.4細胞およびB3Z T細胞を、10%FBS(ウシ胎児血清、HyClone)を含むRPMI1640培地中に維持した。DC2.4細胞を200μLずつ96ウエル培養プレート(ウエルあたり1×10DC)に移した。細菌試料を50μLストックから450μLのPBSへ1×10CFU/mLまで逐次希釈した(S−59処理試料はCFU当量である。すなわちS−59処理前のコロニー形成単位数である)。各希釈液の20μL分をDC2.4を含むウエルに移し、約1×10、1×10、1×10、1×10、または1×10CFU/mLとした。さらに、PBSのみの20μL分を負の対照として加えた。試料を37℃で1時間、5%CO中でインキュベーションした。細胞外細菌を除くため、プレートをPBSで3回洗浄した。B3ZT細胞の200μL分(1×10個の細胞)、および100μg/mLのゲンタマイシン(シグマ)を各ウエルに加えた。正の対照として、100nMのSK8OVA257−264(SL8OVA抗原、SIINFEKL(配列番号21)、インビトロゲン、サン・ディエゴ、CA)を各1×10個のDC2.4」およびB3Z細胞を含むウエルに加えた。試料を5%CO中、37℃で一晩インキュベーションした。プレートを400×gで3分間遠心し、各ウエルを250μLのPBSで洗浄した。100μMの2−メルカプトエタノール、9mMのMgCl、0.125%のイゲパル(Igepal)CA−630((オクタフェノキシ)ポリエトキシエタノール、シグマ)、および0.15mMのCPRGを含むPBSの100mL分を各ウエルに加えた。試料を37℃で少なくとも4時間インキュベーションした。プレートリーダーを用い、655nmで対照を測定して吸光度を595nmで測定した。
S−59処理試料に対する結果を表8および図11Aおよび11Bに示す(抗原提示はDC2.4細胞あたり1個のリステリア、バックグラウンドレベルを差し引かずに計算)。両方の熱死滅株に対する結果は、検出限界以下の力価を示し(完全な不活性化)、熱細菌細菌はB3Z分析でOVA抗原を示さなかった。この結果は、非uvrAB突然変異体が増殖の関数として抗原提示のより大きい(本質的に完全な不活性化に伴うほぼバックグラウンドレベルへの)減少を示す場合、増殖が検出限界まで減弱化されてもuvrAB突然変異体が極めて強い抗原提示を示すことを示している。このことは、uvtAB突然変異体が、ソラレン減弱化リステリアの実質中のuvrABMHVクラスI提示を維持し、有効な免疫応答とかなりのレベルの安全性を提供するに違いないことを示すものである。
(表8A:ソラレンS−59の濃度を変えてUVA処理したリステリア株の減衰の対数とOVA抗原提示)
Figure 2007503846
*未処理の、DC2.4細胞あたり1個のリステリアで測定した%
同じ株を用いて別な研究を行った。この研究では、リステリアをBHI中、37℃で一晩生育させた。これらをBHI中に1:50で希釈し、37℃、300rpmでOD600が0.5まで生育させ、その時点で50mLの溶液を清浄なフラスコに移し、S−59を表12Bに示すレベルに加えた。これらの試料を37℃、300rpmで約1時間インキュベーションした(OD600が約1.0、約1×10個/ml)。1mL分の力価を評価するために取り出し、残りを150mmのペトリ皿に移し、6J/cmの線量で照射した(FX1019)。各試料につき照射後の力価を測定し、OVA抗原の提示を上記の様に評価した。結果を表8Bおよび図11Cおよび11Dに示す(DC細胞あたり10個のリステリアの提示、バックグラウンドレベルを差し引かずに計算)。結果は、親株では抗原提示が本質的に完全に不活性化されるバックグラウンドレベルであるが、uvrAB突然変異株では、約10倍の範囲のS−59濃度であり、それ以上では基本的に完全に不活性化されると同時に、適度の抗原が提示される。
(表8B:細菌の生育中に存在するソラレンS−59の濃度を変えてUVA処理したリステリア株の、減弱化の対数とOVA抗原提示)
Figure 2007503846
*未処理の、DC2.4細胞あたり10個のリステリアで測定した%
(実施例12:既存の免疫および/または抗体の存在下の抗原特異性反応の刺激に対するリステリア突然変異株の有効性)
既存の抗リステリア免疫を、C57B/6マウスIPを、1回または3回(10日の間隔)で投与したLD500.1の野生型リステリアで感染して誘導した。リステリア免疫(1または3vx)を有するマウスとナイーブマウスを、最後のリステリア暴露後32日に0.1LD50の同じリステリア株でワクチンIP投与した。7日後、脾臓を採取し、OVA特異性CD8+T細胞の割合をIFN−gに対する細胞内サイトカイン染色で測定した。結果を図12Aに示す。OVA特異性CD8+T細胞反応の開始が、野生型リステリアの致死攻撃に対し防御する既存免疫のレベルでマウス中に観察された。
既存の抗リステリア免疫を、0.1LD50の野生型リステリアで腹腔内感染させて全てのC57B/6マウス中に誘発した。70日後に0.1LD50の示されたリステリア株でマウスにIPワクチン接種した。21日後、2e5B16−OVA腫瘍細胞をマウスに皮下移植し、腫瘍を毎週2回、測定した。結果を図12Bに示す。腫瘍の研究は、抗リステリア免疫の存在で生じたOVA特異性免疫応答が、B16−OVA腫瘍の攻撃に対し効果的に防御し得ることを示した。
0.1LD50の指定された株で4回、C57B/6マウスを静脈内感染させて高力価血清を生成した。200μlの食塩水、血清(免疫または非免疫)またはウサギポリクローナル抗リステリア抗体を、ナイーブC57B/6マウスに第1日に1回注射した。第0日に0.1LD50のΔactA−OVAリステリアをIVワクチン接種した。脾臓を採取し、OVA特異性CD8+T細胞の割合をIFN−gに対する細胞内サイトカイン染色で測定した。結果を図12Cに示す。結果は、リステリア特異性抗体のナイーブマウスへの受動転移は、処置マウス中の初回OVA特異性免疫応答の開始を減少させなかったことを示す。
本明細書に引用した全ての報告、特許、特許出願および寄託番号(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を含む)は、個々の報告、特許および特許出願が特異的かつ個別に引用して援用されるべきであるとして、同程度に全ての目的に対し全文を本明細書に引用して援用する。
Figure 2007503846
Figure 2007503846
図1は指定されたリステリア株または対照賦形剤でワクチン接種されたマウスの注射後の標的細胞群を示す。非特異性標的細胞に対する抗原特異性標的細胞のレベルは、ワクチン接種に反応するT細胞のインビボ細胞毒性を示す。図1AはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内(IV)または筋肉内(IM)ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1BはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1CはΔactAΔinlB二重突然変異体でIVワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。 図1は指定されたリステリア株または対照賦形剤でワクチン接種されたマウスの注射後の標的細胞群を示す。非特異性標的細胞に対する抗原特異性標的細胞のレベルは、ワクチン接種に反応するT細胞のインビボ細胞毒性を示す。図1AはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内(IV)または筋肉内(IM)ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1BはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1CはΔactAΔinlB二重突然変異体でIVワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。 図1は指定されたリステリア株または対照賦形剤でワクチン接種されたマウスの注射後の標的細胞群を示す。非特異性標的細胞に対する抗原特異性標的細胞のレベルは、ワクチン接種に反応するT細胞のインビボ細胞毒性を示す。図1AはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内(IV)または筋肉内(IM)ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1BはΔactA突然変異体またはΔactAΔinlB二重突然変異体で静脈内ワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。図1CはΔactAΔinlB二重突然変異体でIVワクチン接種されたマウスにおけるインビボ細胞毒性を示す。 図2は突然変異リステリア株または対照で治療ワクチン接種を受けた、株化CT26肺腫瘍を有するマウスの肺を示す(図2A)。肺の転移が肺の上に点として見える。さらに2回の追加実験からのマウスの生存率が図2B−Cにプロットされている。 図2は突然変異リステリア株または対照で治療ワクチン接種を受けた、株化CT26肺腫瘍を有するマウスの肺を示す(図2A)。肺の転移が肺の上に点として見える。さらに2回の追加実験からのマウスの生存率が図2B−Cにプロットされている。 図2は突然変異リステリア株または対照で治療ワクチン接種を受けた、株化CT26肺腫瘍を有するマウスの肺を示す(図2A)。肺の転移が肺の上に点として見える。さらに2回の追加実験からのマウスの生存率が図2B−Cにプロットされている。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図3は突然変異リステリアをワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド(図3A−B)、またはLLO190ペプチド(図3C−D)、またはLLO296ペプチド(図3E−F)で刺激したマウス由来の、脾臓CD8+T細胞に対するINF−γおよびTNF−αサイトカイン染色(ICS)分析の結果を示す(「PCT」はS−59/UVA不活性化細胞のデータを示す)。 図4は突然変異リステリアで(静脈内)ワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチド、生またはS−59/UVA不活性化EL−4−細胞、または生またはS−59/UVA不活性化OVA−発現EG7細胞で刺激したマウス由来の脾臓細胞に対するIFN−γICS分析の結果を示す。 図5は様々な投与量の突然変異リステリアで(静脈内)ワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチドで刺激したマウス由来の脾臓細胞に対するIFN−γICS分析の結果を示す。 図6は突然変異リステリアで様々な経路を経てワクチン接種し、SL8OVA257−264ペプチドで刺激したマウス由来の脾臓細胞に対するIFN−γICS分析の結果を示す。 図7Aおよび7BはListeria monocytogenesΔactAΔinlB株のインビボにおける排泄の加速を示す。時間に対する肝臓内の細菌レベルが図に示される。 図7Aおよび7BはListeria monocytogenesΔactAΔinlB株のインビボにおける排泄の加速を示す。時間に対する肝臓内の細菌レベルが図に示される。 図8Aおよび8BはListeria monocytogenesΔactAΔinlB株のインビボにおける排泄の加速を示す。脾臓中の細菌レベルの時間経過が図に示される。 図8Aおよび8BはListeria monocytogenesΔactAΔinlB株のインビボにおける排泄の加速を示す。脾臓中の細菌レベルの時間経過が図に示される。 図9はListeria monocytogenesΔinlB株とListeria monocytogenesΔactAΔinlB株がインビボで非食細胞への侵入について減弱化されているが、食細胞へ侵入に対しては減弱化されていないことを示す。 図10は高力価抗リステリア血清が非食細胞による取り込みを阻害するが、食細胞による取り込みを阻害しないことを示す。 図11AはOVA抗原を含むDP−L4029(ΔactA)株の減弱化をスポラレンS−59濃度の関数として示すと共に、樹状細胞株に対するOVA抗原提示の測定を示す。細菌の力価の対数と、未処理に対する抗原提示%(直線スケール、DC2.4細胞あたり1個のリステリア)がS−59のnMに対してプロットされる(0.5J/cmのUVAを照射、リステリアを1回洗浄、5.5J/cmのUVAで再度照射)。 図11BはOVA抗原を含むDP−L4029ΔuvrABリステリア株の減弱化をスポラレンS−59濃度の関数として示すと共に、樹状細胞株に対するOVA抗原提示の測定を示す。細菌の力価の対数、および未処理に対する抗原提示%(直線スケール、DC2.4細胞あたり1個のリステリア細胞)がS−59のnMに対してプロットされる(0.5J/cmのUVAを照射、リステリアを1回洗浄、5.5J/cmのUVAで再度照射)。 図11CはOVA抗原を含むDP−L4029(ΔactA)リステリア株の減弱化をスポラレンS−59濃度の関数とし示すと共に、樹状細胞株に対するOVA抗原提示の測定を示す。 図11DはOVA抗原を含むDP−L4029ΔuvrAB(ΔactAΔuvrAB)リステリア株の減弱化をスポラレンS−59濃度の関数として示すと共に、樹状細胞株に対するOVA抗原提示の測定を示す。 図12Aは抗リステリア免疫の存在におけるOVA特異性T細胞反応の誘発を示す。 図12Bはリステリア特異性免疫の存在で有効抗腫瘍免疫応答が刺激されることを示す。 図12Cはリステリア免疫血清の輸血がOVA特異性CD8+細胞の初回抗原刺激を阻害しないことを示す。

Claims (76)

  1. 非食細胞中への侵入について減弱化され、かつ非リステリア抗原をコードする核酸分子を含む、単離されたリステリア細菌。
  2. 細胞から細胞への伝播に対してさらに減弱化された、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌。
  3. actA、lplA、plcA、plcB、mplおよびhlyからなる群より選択される1つ以上の遺伝子中に、少なくとも1つの突然変異を含む、請求項2に記載の減弱化リステリア細菌。
  4. actA中に突然変異を含む、請求項3に記載の減弱化リステリア細菌。
  5. 前記細菌の核酸が、核酸標的化合物との反応により、該細菌の増殖が減弱するように改変されている、請求項2に記載の減弱化リステリア細菌。
  6. 前記細菌の核酸が、UVA照射により活性化されたソラレンとの接触によって改変されている、請求項5に記載の減弱化リステリア細菌。
  7. 1種以上のインターナリンに関して欠損がある、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌。
  8. インターナリンBに関して欠損がある、請求項7に記載の減弱化リステリア細菌。
  9. inlB遺伝子中に突然変異を含む、請求項8に記載の減弱化リステリア細菌。
  10. 細胞から細胞への伝播についてさらに減弱化されている、請求項8に記載の減弱化リステリア細菌。
  11. ActAに関して欠損がある、請求項10に記載の減弱化リステリア細菌。
  12. actAおよびinlBの双方において、少なくとも1つの突然変異を含む、請求項11に記載の減弱化リステリア細菌。
  13. Listeria monocytogenes種に属する、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌。
  14. 前記抗原が、腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍関連抗原に由来する、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌。
  15. 前記抗原が、メソテリン、sp17、PAGE−4、gp−100、PSMA、K−ras、TARP、プロテイナーゼ3、WT−1、NY−ESO−1、CEA、Her−2およびSPAS−1からなる群より選択される腫瘍関連抗原であるか、または該腫瘍関連抗原に由来する、請求項14に記載の減弱化リステリア細菌。
  16. 前記抗原が感染症抗原であるか、または感染症抗原に由来する、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌。
  17. 請求項1に記載の減弱化リステリア細菌を含む、免疫原性組成物。
  18. 以下:(a)請求項1に記載の減弱化リステリア細菌、および(b)薬学的に受容可能なキャリアまたはアジュバント、を含む、ワクチン。
  19. 宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌有効量を含む、組成物
  20. 宿主において疾患を予防または処置するための組成物であって、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌有効量を含む、組成物
  21. 請求項1に記載の減弱化リステリア細菌を含む、プロフェッショナル抗原提示細胞。
  22. 非食細胞中への侵入と細胞から細胞への伝播との双方について減弱化されている、単離されたリステリア細菌。
  23. actA、lplA、plcA、plcB、mplおよびhlyからなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子中に、少なくとも1つの突然変異を含む、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌。
  24. actA中に突然変異を含む、請求項23に記載の減弱化リステリア細菌
  25. 前記細菌の核酸が、核酸標的化合物との反応により、該細菌の増殖が減弱するように改変されている、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌。
  26. 前記細菌の核酸が、UVA照射により活性化されたソラレンとの接触によって改変されている、請求項25に記載の減弱化リステリア細菌。
  27. 前記減弱化リステリア細菌が、1種以上のインターナリンに関して欠損がある、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌。
  28. インターナリンBに関して欠損がある、請求項27に記載の減弱化リステリア細菌。
  29. inlB遺伝子中に、少なくとも1つの突然変異を含む、請求項28に記載の減弱化リステリア細菌。
  30. ActAに関して欠損がある、請求項28に記載の減弱化リステリア細菌。
  31. 前記減弱化リステリア細菌が、actAおよびinlBの双方において少なくとも1つの突然変異を含む、請求項30に記載の減弱化リステリア細菌。
  32. Listeria monocytogenes種に属する、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌。
  33. 非リステリア抗原をコードする核酸分子を含む、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌。
  34. 非リステリア抗原が、腫瘍関連抗原であるか、または腫瘍還元抗原に由来する、請求項33に記載の減弱化リステリア細菌。
  35. 抗原がメソテリン、sp17、PAGE−4、gp−100、PSMA、K−ras、TARP、プロテイナーゼ3、WT−1、NY−ESO−1、CEA、Her−2およびSPAS−1からなる群より選択される腫瘍関連抗原、または腫瘍関連抗原に由来する、請求項34に記載の減弱化リステリア細菌。
  36. 前記非リステリア抗原が、感染症抗原であるか、または感染症抗原に由来する、請求項33に記載の減弱化リステリア細菌。
  37. 請求項22に記載の減弱化リステリア細菌を含む、免疫原性組成物。
  38. 以下:(a)請求項22に記載の減弱化リステリア細菌、および(b)薬学的に受容可能なキャリアまたはアジュバント、を含む、ワクチン。
  39. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌有効量を含み、ここで該減弱化リステリア細菌が、該抗原をコードする核酸を含む、組成物
  40. 宿主において疾患を予防または処置するための組成物であって、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌有効量を含む、組成物
  41. 請求項22に記載の減弱化リステリア細菌を含む、プロフェッショナル抗原提示細胞。
  42. 以下:アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenes ΔactAΔinlB、またはインターナリンBとActAとの双方に関して欠損がある該寄託株の突然変異体、からなる群より選択される、株。
  43. アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、受託番号PTA−5562により識別されるListeria monocytogenesである、請求項42に記載の株。
  44. 請求項42に記載の株を含む、免疫原性組成物。
  45. 以下:(a)請求項42に記載の株、および(b)薬学的に受容可能なキャリアまたはアジュバント、を含む、ワクチン。
  46. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、請求項42に記載の株有効量を含み、ここで該株が、該抗原をコードする核酸を含む、組成物
  47. 宿主において疾患を予防または処置するための組成物であって、請求項42に記載の株有効量を含む、組成物
  48. 請求項42に記載の株を含む、プロフェッショナル抗原提示細胞。
  49. 以下:(a)リステリア細菌であって、該減弱化リステリア細菌は、非食細胞中への侵入について減弱化されている、リステリア細菌、および(b)薬学的に受容可能なキャリアまたはアジュバント、を含む、ワクチン。
  50. 前記減弱化リステリア細菌が、1種以上のインターナリンに関して欠損がある、請求項49に記載のワクチン。
  51. 前記減弱化リステリア細菌が、インターナリンBに関して欠損がある、請求項49に記載のワクチン。
  52. 前記減弱化リステリア細菌が、inlB遺伝子中に突然変異を含む、請求項49に記載のワクチン。
  53. 前記減弱化リステリア細菌が、Listeria monocytogenes種に属する、請求項49に記載のワクチン。
  54. 宿主において疾患を予防または処置するための組成物であって、有効量の請求項49に記載のワクチンを含む、組成物
  55. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、有効量の請求項49に記載のワクチンを含み、ここで該減弱化リステリア細菌が、該抗原をコードする核酸を含む、組成物
  56. リステリア細菌を含む、単離されたプロフェッショナル抗原提示細胞であって、該リステリア細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化されている、抗原提示細胞。
  57. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、有効量の請求項56に記載のプロフェッショナル抗原提示細胞を含み、ここで該減弱化リステリア細菌が、該抗原をコードする核酸を含む、組成物
  58. 宿主において疾患を予防または処置するための組成物であって、有効量の請求項56に記載のプロフェッショナル抗原提示細胞を含む、組成物
  59. インビトロで抗原提示細胞上にMHCクラスI抗原提示またはMHCクラスII抗原提示を誘発する方法であって、該方法は、リステリア細菌と抗原提示細胞とを接触させる工程を包含し、ここで該リステリア細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化され、かつMHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープを包含する非リステリア抗原をコードする核酸分子を含む、方法。
  60. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、該宿主に由来する抗原提示細胞を含み、該組成物は、リステリア細菌と接触されるのに適しており、該リステリア細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化され、かつ該抗原をコードする核酸分子を含む、組成物
  61. 医療用途のためのリステリア細菌を含む組成物であって、該リステリア細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化され、かつ非リステリア抗原をコードする核酸分子を含む、組成物。
  62. 医療用途のためのリステリア細菌を含む組成物であって、該細菌が、非食細胞中への侵入について減弱化されている、組成物。
  63. 細菌が細胞から細胞への伝播についてさらに減弱化されている、請求項62に記載の組成物。
  64. キットであって、以下:
    (a)請求項1に記載のリステリア細菌を含む組成物;および
    (b)宿主における疾患の予防または処置における、該組成物の使用についての説明書、
    を含む、キット。
  65. キットであって、以下:
    (a)請求項22に記載のリステリア細菌を含む組成物;および
    (b)宿主における疾患の予防または処置における、該組成物の使用についての説明書、
    を含む、キット。
  66. キットであって、以下:
    (a)非食細胞中への侵入について減弱化されているリステリア細菌を含む組成物;および
    (b)宿主における疾患の予防または処置における、該組成物の使用についての説明書、
    を含む、キット。
  67. 宿主において非リステリア抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌の使用。
  68. 宿主において疾患を予防または処置するための医薬の製造のための、請求項1に記載の減弱化リステリア細菌の使用。
  69. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項22に記載の減弱化リステリア細菌の使用であって、該減弱化リステリア細菌は、該抗原をコードする核酸を含む、使用。
  70. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項42に記載の株の使用であって、該株は、該抗原をコードする核酸を含む、使用。
  71. 宿主において疾患を予防または処置するための医薬の製造のための、請求項42に記載の株の使用。
  72. 宿主において疾患を予防または処置するための医薬の製造のための、請求項49に記載のワクチンの使用。
  73. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項49に記載のワクチンの使用であって、減弱化リステリア細菌は、該抗原をコードする核酸分子を含む、使用。
  74. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項56に記載のプロフェッショナル抗原提示細胞の使用であって、減弱化リステリア細菌は、該抗原をコードする核酸分子を含む、使用。
  75. 宿主において疾患を予防または処置するための医薬の製造のための、請求項56に記載のプロフェッショナル抗原提示細胞の使用。
  76. 宿主において抗原に対する免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、該宿主に由来する抗原提示細胞の使用であって、該医薬は、リステリア細菌と接触されるのに適しており、減弱化リステリア細菌は、該抗原をコードする核酸分子を含む、使用。
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