JP2007336752A - 圧電アクチュエータの駆動方法、圧電アクチュエータの駆動装置、電子機器、圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム及び記憶媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題手段】圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせるとともに、前記圧電素子を有する振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、その閾値以上となる範囲内で、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープする。駆動信号の周波数を検出信号が所定の閾値以上となる範囲内で変化させているので圧電素子を確実に駆動できる。駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を無くすことができ、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を向上でき、負荷などの変動があっても、所定時間内の駆動時間のばらつきを低減でき、振動体で駆動される駆動対象の駆動速度のばらつきも低減できる。
【選択図】図11
Description
そのため、圧電アクチュエータを効率的に駆動するために、主に次に2種類の駆動制御が行われている。
第1の制御方法は、圧電アクチュエータの駆動信号および検出信号などの位相差を、予め設定された目標位相差に近づけるように制御する方法である。この制御方法は、目標位相差近辺で駆動制御することで、駆動効率を非常に高めることができる利点がある。しかしながら、この制御方法は、制御対象の圧電素子における位相差と駆動状態との相関関係を予め把握しておく必要があり、このような相関関係が認められない圧電素子に対しては適用できないという問題があった。
また、周囲温度や負荷の変動等により、圧電振動子を駆動できる周波数領域が変動するため、発振周波数をfLからfHまでスイープさせる間、実際に圧電振動子が駆動される区間(時間)も変動し、圧電振動子が駆動していない区間が生じる。このため、特に特許文献1において顕著であるが、圧電振動子で被駆動体を回転あるいは移動している場合、被駆動体の単位時間あたりの駆動量、つまり駆動速度にバラツキが生じ、駆動効率を向上することもできない。
また、前記検出信号が最初に所定の閾値以上となるとは、圧電素子に最初に供給される駆動信号の周波数が圧電素子の駆動範囲外の周波数であった場合には、周波数をスイープさせて圧電素子が駆動し、その検出信号が閾値以上になることを意味し、圧電素子に最初に供給される駆動信号の周波数が圧電素子の駆動範囲内の周波数であった場合には、その周波数で圧電素子が駆動して検出信号が閾値以上になることを意味する。
さらに、検出信号が閾値以上となる範囲とは、周波数をアップ方向(周波数が高くなる方向)にスイープした際に、前記検出信号が閾値以上から閾値未満に変化する周波数を上限とし、周波数をダウン方向(周波数が低くなる方向)にスイープした際に、前記検出信号が閾値以上から閾値未満に変化する周波数を下限とし、これらの上限および下限間の範囲を意味する。そして、検出信号が閾値以上となる範囲内とは、前記上限および下限間の範囲全体でもよいし、その範囲に含まれる一部の範囲でもよく、要するに本発明では駆動信号の周波数をスイープさせた際に、少なくとも前記範囲を超えることがないように制御すればよい。
また、駆動信号を前記範囲内で常時スイープさせているので、周囲温度、外乱、負荷の変動などで圧電素子の駆動周波数がばらついても、そのバラツキに無調整で対応できる。このため、駆動装置に、周囲温度、外乱、負荷の変動などを検出する検出回路や、その検出データに基づいて駆動信号の周波数を調整する調整回路を設ける必要が無く、駆動装置の構成も簡易化できる。
さらに、振動体の振動状態を表す検出信号に基づいて前記駆動信号の周波数のスイープ範囲を制御しているので、駆動開始後、一旦、検出信号が閾値以上となれば、検出信号が閾値以上の範囲つまり圧電素子が駆動状態となる範囲内でスイープ制御することになるため、圧電素子を常時駆動し続けることができる。これにより、駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を無くすことができ、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を向上できる。また、非駆動状態の時間を無くすことができるので、負荷などの変動があっても、所定時間(例えば1分間)における駆動時間のばらつきを低減でき、振動体で駆動される駆動対象(被駆動体)の駆動速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も実現できる。
その上、圧電素子の駆動を常時継続できるので、圧電素子が停止→駆動→停止を繰り返す場合に比べて、駆動対象および圧電アクチュエータの摩耗も低減でき、圧電アクチュエータの長寿命化を図ることもできる。
同様に、アップ方向にスイープさせた際に検出信号が閾値以上から閾値未満に変化した際の駆動信号の周波数を上限の周波数とした場合、この上限の周波数から所定周波数分(例えば、6kHz分)だけ小さな周波数を下限の周波数とし、これらの上限および下限の周波数間でスイープさせればよい。
例えば、圧電素子として、板状に構成された圧電素子の駆動電極の位置や、重量バランスを調整することで、板状の圧電素子の長手方向に振動する縦振動および幅方向に振動する屈曲振動を起こさせて圧電素子の端部に設けた突起先端を楕円軌道で移動させる圧電素子を用いた場合、前記検出信号が閾値以上となる範囲の下限となる縦振動の共振周波数から屈曲共振周波数側の数kHzの領域が駆動力や回転数の点で好ましいスイープ範囲となる。そして、本発明では、このスイープ範囲で圧電素子を容易に駆動することができるため、前記検出信号が閾値以上となる範囲全体で周波数をスイープさせる場合に比べて駆動効率を向上できる。
また、駆動信号を所定周波数範囲で常時スイープさせているので、周囲温度、外乱、負荷の変動などで圧電素子の駆動周波数がばらついても、そのバラツキに無調整で対応できる。このため、駆動装置に、周囲温度、外乱、負荷の変動などを検出する検出回路や、その検出データに基づいて駆動信号の周波数を調整する調整回路を設ける必要が無く、駆動装置の構成も簡易化できる。
さらに、振動体の振動状態を表す検出信号に基づいて前記駆動信号の周波数のスイープ速度を制御しているので、圧電アクチュエータで駆動される駆動対象が非駆動状態時には前記駆動信号の周波数のスイープ速度を高速にし、駆動状態時には低速にすることができる。これにより、駆動対象を駆動できない無駄な駆動信号出力時間を短くでき、無駄な消費電流を低減できるとともに、効率を向上できる。また、非駆動状態の時間を短くできるので、負荷などの変動があっても、所定時間(例えば1分間)における駆動時間のばらつきを低減でき、振動体で駆動される駆動対象の駆動速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も実現できる。
その上、圧電素子の駆動を常時継続できるので、圧電素子が停止→駆動→停止を繰り返す場合に比べて、駆動対象および圧電アクチュエータの摩耗も低減でき、圧電アクチュエータの長寿命化を図ることもできる。
この構成の発明では、消費電力が少なく、駆動速度のバラツキが小さくて安定した駆動を実現できる圧電アクチュエータを備えているので、特に腕時計などの小型で携帯に適した電子機器を提供することができる。
また、本発明の記憶媒体は、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であることを特徴とする。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、電子機器の実施形態として、圧電アクチュエータによって駆動される日付表示装置を備えた電子時計を例示する。
図1は、本実施形態に係る電子時計1の外観図である。電子時計1は、ムーブメント2、文字板3、時針4、分針5、秒針6のほか、文字板3に設けられた窓部3Aから日付を表示する日付表示装置10を備えた腕時計(ウォッチ)である。
図2は、底板1Aに支持された日付表示装置10を示す平面図である。日付表示装置10は、圧電アクチュエータ20と、この圧電アクチュエータ20によって回転駆動される被駆動体としてのロータ30と、ロータ30の回転を減速しつつ伝達する減速輪列40と、減速輪列40を介して伝達される駆動力により回転する日車50とを備えて大略構成されている。
ロータ30は、日の変わり目、あるいは日付補正時に圧電アクチュエータ20により回転駆動される。減速輪列40は、ロータ30と同軸に配置されてロータ30と一体的に回転する歯車41と、歯車41に噛合する日回し中間車42と、日回し車43とで構成されている。
次に、図2の部分拡大図である図3も参照して圧電アクチュエータ20について説明する。
圧電アクチュエータ20は、矩形板状である2つの圧電素子21と、各圧電素子21の間に介装された導電性の補強板60とを有する積層構造の圧電振動体20Aと、駆動回路が実装された図示しない回路基板とを備え、取付対象である底板1A(図2)にスライダ70によってスライド可能に取付固定されている。
以下、圧電アクチュエータ20を構成する圧電振動体20Aの構成について詳細に説明する。
圧電素子21は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等から選択した任意の材料で形成されている。
これらの圧電素子21の表面には、ニッケルあるいは金などによるめっき、スパッタ、蒸着等による電極が設けられ、この電極がエッチング等による溝で分割されることにより、5つの駆動電極261〜265が設けられている。具体的に、圧電素子21の長手方向に沿って延びる2本の溝により電極は3等分され、さらに圧電素子21の幅方向両端側の電極が圧電素子21の幅方向に沿って延びる溝により2等分されることで、5つの駆動電極261〜265が設けられている。
なお、スライダ70と対向する裏面側の圧電素子21にも、表面側の圧電素子21と同様に駆動電極261〜265が設けられており、例えば駆動電極261の裏面側に駆動電極261が配置されている。
補強板60は、ステンレス鋼、その他の導電性材料から形成され、圧電素子21が配置される矩形状の本体と、本体の幅方向両側にそれぞれ突出する一対の支持部62と、支持部62の端部に設けられ、スライダ70に固定される固定部63とを一体に有する。
本体は、各圧電素子21への電圧印加により振動し、各圧電素子21と共に、略矩形板状の振動部を構成する。振動部は、各圧電素子21への電圧印加によって縦一次振動と屈曲二次振動とを励振する。
本体の両側の短辺略中央には、長手方向に沿って突出する突起611,612がそれぞれ形成され、一方の突起611がロータ30の側面に当接される。なお、圧電アクチュエータ20は、ロータ30の側面に対して略垂直に配置されており、突起611の向きがロータ30の径方向に沿っている。また、振動部の平面はロータ30の軸に対して直交するように配置されている。なお、突起611がロータ30に当接されても、もう一方の突起612が励振に寄与するため、振幅を大きくでき、始動性が良好である。
支持部62は、振動部を挟んで設けられ、振動部を振動可能に支持する。
スライダ70は、底板1Aに対して長穴などを介してスライド可能に取り付けられている。
次に、圧電アクチュエータ20の動作について説明する。図示しない駆動回路を通じて、各圧電素子21における駆動電極261〜265への電圧印加が振動部20Bの各突起611,612を結ぶ中心線に対して線対称に切り替えられることにより、突起611の振動軌跡が変更される。
つまり、駆動電極261、263,265のみに電圧を印加すると、振動部20Bは、縦振動と屈曲振動との混合モードで振動し、これら縦振動と屈曲振動との位相差に基くリサージュ図形として、突起611は楕円状の振動軌跡を描く。この振動軌跡との接線方向にロータ30が間欠駆動され、突起611が所定の駆動周波数で楕円運動を続けることにより、ロータ30は正方向R1(図3)に所定の速度で回転する。このとき圧電アクチュエータ20は、計時による日付変更を行う正転モードであり、ロータ30の正回転により、減速輪列40を介して日車50(図2)が正方向R1に送られる。
次に、圧電アクチュエータ20の駆動装置80の構成を図4に基づいて説明する。
図4において、駆動装置80は、圧電アクチュエータ20の圧電素子21に対して駆動信号を出力する駆動回路81と、振幅検出用基準電圧を出力する定電圧回路82と、定電圧回路82から出力される振幅検出用基準電圧と圧電アクチュエータ20から出力される検出信号の振幅(電圧)とを比較して比較結果信号を出力する振幅検出回路83と、振幅検出回路83からの比較結果信号に基づいて出力電圧を調整する電圧調整回路84と、この電圧調整回路84で出力された電圧に対応して駆動回路81に出力する信号の周波数を調整する可変周波数発振器(VCO)85と、を備えている。そして、駆動回路81は、可変周波数発振器85から入力される信号の周波数に応じた駆動信号を圧電素子21に対して出力している。
なお、振幅検出回路83は、検出信号の振幅が振幅検出用基準電圧以上である場合にはHレベルの比較結果信号を出力し、検出信号の振幅が振幅検出用基準電圧未満である場合にはLレベルの比較結果信号を出力するように設定されている。
また、圧電素子21から出力される検出信号は、圧電素子21において駆動電圧が入力されていない電極261〜264から出力される信号が利用されている。
電圧調整回路84は、高クロック(例えば1MHz)および低クロック(前記高クロックよりも低い周波数であり例えば1kHz)の少なくとも2つの周波数のクロック信号(基準信号)を出力可能な基準信号発振器としてのクロック回路841と、このクロック回路841から出力されるクロック信号に基づいてスイープ制御を行うスイープ制御回路842と、スイープ制御回路842からの信号が入力されるアップダウンカウンタ(UDカウンタ)843と、このUDカウンタ843から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)844とを備えている。
従って、スイープ速度選択信号がHレベル信号の場合、AND回路911からは低クロック信号がそのまま出力されるが、AND回路912にはNOT回路914からLレベル信号が入力されるため、AND回路912からの出力もLレベルのままに維持される。このため、OR回路913からはAND回路911から出力される低クロック信号がそのまま出力される。
一方、スイープ速度選択信号がLレベル信号の場合、AND回路911からの出力はLレベルのままに維持されるが、AND回路912にはNOT回路914からHレベル信号が入力されるため、AND回路912からは高クロック信号がそのまま出力される。このため、OR回路913からはAND回路912から出力される高クロック信号がそのまま出力される。
従って、スイープ制御回路842は、振幅検出回路83から入力される振幅検出結果信号に応じて、前記UDカウンタ843の計数速度(カウンタ値の変化速度)を切り換えるように構成されている。例えば、スイープ制御回路842は、前記検出結果信号がHレベルであれば、クロック回路841から出力されるクロック信号のうち、低クロック信号(例えば、1kHz)を利用してUDカウンタ843のカウンタ値を変化し、検出結果信号がLレベルであれば、高クロック信号(例えば、1MHz)を利用してカウンタ値を変化する。これにより、UDカウンタ843のカウンタ値の変化速度が切り換えられる。
一方、スイープ方向選択信号がLレベル信号の場合、AND回路922からは第1のクロックセレクタ91からの信号がそのまま出力されるが、AND回路921からの出力はLレベルのままに維持される。このため、UDカウンタ843は、クロックセレクタ91で選択されたクロック信号の入力により徐々にカウントダウンされる。
Dラッチ901のデータ入力には、実駆動のON/OFF信号が入力され、クロック入力には、振幅検出回路83からの検出結果信号が入力される。このため、日付が変更される時刻になって圧電素子21の駆動が指示されて実駆動がON(Hレベル)に変化されても、最初に検出結果信号がHレベルになるまでは、Dラッチ901つまり調整回路90はスイープ速度選択信号としてLレベルの信号を出力し、クロックセレクタ91では高クロック信号が選択される。一方、最初に検出結果信号がLレベルからHレベルになるとDラッチ901の出力はHレベル信号となり、その後はデータ入力である実駆動信号がON(Hレベル)である限り、Dラッチ901の出力はHレベルに維持され、クロックセレクタ91では常時低クロック信号が選択される。
なお、調整回路90としては、図7に2点鎖線で記載したように、Dラッチ901を無くして、検出結果信号を直接スイープ速度選択信号とし、検出結果に応じてスイープ速度を選択するようにしてもよい。
可変周波数発振器85は、D/A変換器844から出力される電圧に応じた周波数信号を駆動回路81に出力し、駆動回路81は入力された信号の周波数に応じた周波数の駆動信号を圧電素子21に出力する。このため、UDカウンタ843のカウンタ値によって駆動信号の周波数が設定され、かつ、UDカウンタ843のカウンタ値の変化速度つまりはスイープ制御回路842が利用するクロック信号の周波数によって駆動信号の周波数のスイープ速度が設定されることになる。
図8に示すように、駆動装置80の電源を投入あるいは駆動開始を指示すると、駆動装置80は、圧電素子21に出力する駆動信号の周波数スイープを開始する(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
なお、本実施形態では、周波数スイープの方向、速度、駆動開始時の駆動信号周波数は、電圧調整回路84に予め設定されている。例えば、スイープ方向はDOWN(駆動信号の周波数をダウンさせる方向)、スイープ速度は高速度(高クロック:A×1MHz/sec)、駆動開始時の駆動信号周波数は初期周波数fmaxとされている。従って、駆動信号の周波数は、周波数範囲のfmaxから前記スイープ速度に応じて周波数が順次減少することになる。
D/A変換器844からはUDカウンタ843のカウント値に応じた電圧が出力されるので、UDカウンタ843のカウンタ値が減少すれば、D/A変換器844から出力される電圧も順次減少する。
そして、その電圧値に対応した周波数の信号が可変周波数発振器85から出力され、この周波数に応じた駆動信号が駆動回路81から出力されて圧電素子21が駆動(励振)される(S2)。
スイープ速度切替処理(S3)では、図9に示すように、振幅検出回路83が、圧電素子21から出力される検出信号をモニタし(S31)、その検出信号の振幅(電圧)を定電圧回路82から出力される振幅検出用基準電圧と比較する(S32)。
電圧調整回路84は、Hレベルの比較結果信号を受信すると、スイープ速度を低速度にする(S35)。すなわち、スイープ速度が低速度に設定されている場合にはその状態を維持し、高速度に設定されていた場合には低速度に切り替える。そして、一旦低速度に設定されると、スイープ制御回路842の調整回路90におけるDラッチ901により、比較結果信号がLレベルとなっても低速度が維持される(S36)。
なお、本実施形態では、図9にも示すように、低速度スイープはAkHz/secであり、高速度スイープは低速度の1000倍のA×1MHz/secである。また、Aは例えば「1」などであり、適宜設定すればよい。
このように、本実施形態のスイープ速度切替処理S3では、スイープ速度を高速度または低速度の2種類に切り替えている。
スイープ方向切替処理S4では、図10に示すように、振幅検出回路83から出力される振幅検出結果信号がHレベルからLレベルに変化したか否かを検出する(S41)。振幅検出結果信号がHレベルからLレベルに変化した際には、スイープ方向を反転して切り替える(S42)。つまり、スイープ方向がDOWN方向であればUP方向に切り替え、UP方向であればDOWN方向に切り替える。
一方、S41で「No」と判断された場合には、スイープ方向は切り替えずにそのままの方向を維持する。
そして、縦振動の縦共振周波数と屈曲振動の屈曲共振周波数との間で振動体20Aを駆動すると、縦振動および屈曲振動双方の振幅が確保され、圧電アクチュエータ20は高効率で駆動する。このため、本実施形態においても、向上するように、各共振周波数の間でスイープ駆動制御するように構成されている。
このため、前述の通り、検出電圧VANPが比較電圧Vref未満の場合つまりロータ30が駆動していないと判断される場合には、スイープ速度が高速度に設定され、検出電圧VANPが比較電圧Vref以上の場合つまりロータ30が駆動していると判断される場合にはスイープ速度は低速度に設定される。
そして、駆動信号の周波数が、検出電圧VANPが比較電圧Vref以下に低下する時点(図11の点D)まで変化すると、つまり振幅検出結果信号がHからLレベルに変化すると、スイープ制御回路842によってスイープ方向が再度切り替わり、駆動信号の周波数はDOWN方向にスイープされる(図11の矢印E)。
以下、同じ動作を繰り返すことで、駆動信号の周波数は、検出電圧VANPが比較電圧Vref以上となる範囲で往復しながら変化される。また、スイープ速度は、Dラッチ901によって低クロックの状態に維持されている。
従って、本実施形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態の圧電アクチュエータの駆動装置80は、圧電素子21を駆動する駆動信号を、振幅検出信号が比較電圧Vref以上となる範囲内でスイープさせているので、圧電素子21を常に駆動することができる。このため、圧電素子21を用いた超音波モータであれば、被駆動体であるロータ30を確実に回転させることができる。
従って、ロータ30を駆動できない無駄な駆動信号出力時間がほとんど無いため、無駄な消費電流を低減でき、駆動効率を向上できる。また、非駆動状態の時間が殆どないため、負荷などの変動があっても、例えば1分間などの所定時間における駆動時間のばらつきを低減でき、圧電素子21で回転駆動されるロータ30の回転速度の偏り(ばらつき)も低減でき、高速駆動も可能にできる。
このため、例えば、fmaxからfminのスイープを繰り返す従来の制御方法に比べて、1桁以上の効率改善を図ることができる。すなわち、特許文献1、2、本実施形態および位相差に基づく制御の4つの方式で駆動した際の駆動力とロータ回転速度との関係を実験によって確認すると、図12に示すように、実線121で示される本実施形態による結果は、二点鎖線122で示される位相差によって制御した場合の結果よりは低くなるが、点線123で示される特許文献1による結果や一点鎖線124で示される特許文献2による結果よりは駆動効率を向上することができる。従って、特に位相差と駆動状態とに相関関係が認められない圧電素子を制御する場合には、本発明による制御を行えば最も効率的な駆動を実現することができる。
このため、例えば、fmaxからfminに向かって周波数をスイープさせる最初のスイープ処理時間においても、ロータ30が非駆動状態となっている時間を短くできる。さらに、その後は、常に検出振幅が基準電圧以上つまりロータ30が駆動されている状態に維持でできる。
また、電圧調整回路84はUDカウンタ843を備えた構成としたので、外付け部品が不要とされ、スイープ速度を容易に可変することができるので、IC化が有利となる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態とはスイープ制御回路842の調整回路90の構成のみが相違するため、その他の構成の説明は省略する。
第2実施形態の調整回路90Aは、図13に示すように、第1実施形態の調整回路90と同じくDラッチ901、Tフリップフロップ902を備える他、クロックカウンタ903を備えている。
クロックカウンタ903は、クロック回路841からのクロック信号が入力され、駆動信号の周波数がDOWN方向からUP方向に変化した後、駆動信号の周波数が予め設定されている周波数分変化する分に相当するクロック信号をカウントしたら、再度、DOWN方向に切り替える信号をTフリップフロップ902に出力するものである。すると、Tフリップフロップ902は、第2のクロックセレクタ92に対してDOWN方向を選択するスイープ方向選択信号を出力する。
また、Tフリップフロップ902は、DOWN方向にスイープした際に、検出信号が閾値以上から閾値未満に変化した際には、スイープ方向をDOWN方向からUP方向に反転させるスイープ方向選択信号を第2のクロックセレクタ92に出力するように構成されている。
すなわち、検出結果入力がHからLに立ち下がると、クロックカウンタ903は単パルスをTフリップフロップ902に出力する。Tフリップフロップ902は、入力された単パルスの立ち下がりで出力を反転し、スイープ方向を切り替える。
また、クロックカウンタ903は、検出結果入力のHからLの立ち下がりで、クロックカウンタ903に入力されるスイープクロックのカウント処理をスタートする。なお、検出結果がHからLになると、スイープクロックも高速度に切り替えられるが、スイープ方向が切り替えられるため、検出電圧VANPはすぐに基準電圧以上となって検出結果もHに立ち上がり、スイープクロックも即座に低速度に切り替えられる。
図15に示す例では、クロックカウンタ903は、スイープクロックの立ち上がりが8回カウントされると、次のクロックの立ち上がり時に、単パルスをTフリップフロップ902に出力し、かつ、カウンタをリセットするように構成されている。
なお、検出結果が入力されるクロックカウンタ903やTフリップフロップ902は、検出結果信号を直接受けてもよいが、チャタリング防止回路を介して受けるようにしたほうが、安定した制御を行える点で好ましい。
すなわち、実際の検出電圧信号(振幅電圧)VANPは、駆動周波数と同等の周波数で出力される。なお、図11等に示される検出電圧VANPは出力波形の最大値をプロットしたものである。そして、検出電圧VANPを比較電圧Vrefと比較する場合、所定の検出信号数(例えば4パルス)のうち、比較電圧(閾値)Vrefを超えている検出信号数が例えば3パルス以上あれば比較電圧以上であることを検出したものとして結果を「H」で出力し、2パルス以下しか越えなければ「L」を出力し判別している。この際、実際のアクチュエータ駆動では、検出電圧が比較電圧以上となっている周波数範囲でも、個体差や負荷等の変動により、稀に振幅が閾値以下になることがあり、制御結果として「L」になってしまうこと、つまり一般的なチャタリング(信号がON/OFFを繰り返す現象)のような状態になってしまう可能性がある。そこで、ラッチ回路などを用いた公知のチャタリング防止回路を設けることで、アクチュエータ駆動が行われていて検出電圧が比較電圧以上となるはずの周波数領域において、検出結果が「L」になって高速度スイープ処理を行ってしまうことを防止でき、安定した制御を行うことができる。
さらに、スイープさせる周波数範囲を狭めているので、回転数およびトルクが高い領域のみをスイープさせることもでき、駆動効率をより一層向上することができる。特に、本実施形態の圧電素子21は、前記検出電圧VANPが閾値以上となる範囲の下限(図14の点B)となる縦振動の共振周波数から屈曲共振周波数側の数kHzの領域が駆動力や回転数の点で好ましいスイープ範囲となるため、第2実施形態では、このスイープ範囲で圧電素子21を容易に駆動することができ、前記第1実施形態に比べても駆動効率を向上できる。
例えば、前記第2実施形態では、検出信号が閾値以上の範囲のうち、下限の周波数を基準にした所定(例えば4kHz)の範囲でスイープさせるように設定していたが、上限の周波数を基準にした所定範囲でスイープさせるように設定してもよい。
さらに、駆動信号の周波数を所定範囲でスイープさせる場合には、その範囲を駆動が継続することに伴って狭めるように制御してもよい。例えば、駆動周波数の1往復のスイープ制御が所定回数継続したら、図16の矢印Bのように、そのスイープ範囲を狭める(例えば、4kHz分スイープしていたのを2kHz分のスイープに半減させる)制御を行ってもよい。
この場合、継続回数に比例して徐々にスイープ範囲を狭めるように制御してもよい。例えば、スイープ範囲を4→3→2→1kHzに徐々に狭めるように制御してもよい。
さらに、本発明では、最初にスイープし始めてから圧電素子21が駆動開始した後は、常時圧電素子が駆動する範囲で周波数スイープを行うため、スイープ速度が高速に制御される期間も殆どない。このため、本発明において、スイープ速度の切替は必須ではなく、例えば、第1のクロックセレクタ91を無くし、第2のクロックセレクタ92に常時低クロック信号が入力されるように構成し、スイープ速度を常時、低クロックのままに維持しても良い。
また、これらのスイープパターンを、圧電素子21の駆動状態に基づいて選択するように構成してもよい。
ここで、前記プログラムやデータは、時計や携帯機器等の電子機器内に組み込まれたRAMやROM等のメモリに予め記憶しておけばよい。また、例えば、時計や携帯機器内のメモリに所定の制御プログラムやデータをインターネット等の通信手段や、CD−ROM、メモリカード等の記録媒体を介してインストールしてもよい。そして、メモリに記憶されたプログラムでCPU等を動作させて、各手段を実現させればよい。なお、時計や携帯機器に所定のプログラム等をインストールするには、その時計や携帯機器にメモリカードやCD−ROM等を直接差し込んで行ってもよいし、これらの記憶媒体を読み取る機器を外付けで時計や携帯機器に接続してもよい。さらには、LANケーブル、電話線等を時計や携帯機器に接続して通信によってプログラム等を供給しインストールしてもよいし、無線によってプログラムを供給してインストールしてもよい。
さらに、計測機器のメータ指針の駆動機構や、可動玩具の駆動機構、自動車等のインパネ(instrumental panel)のメータ指針の駆動機構、圧電ブザー、プリンタのインクジェットヘッド、プリンタ等の紙送り機構、超音波モータ等に本発明の駆動手段を用いてもよい。
例えば、図17に示すように、プリンタ100において、紙送り用のローラ101を回転駆動させる駆動源として本発明の圧電アクチュエータ20を利用してもよい。
また、圧電アクチュエータの構成も前記実施形態のものに限定されず、例えば、超音波の進行波でロータを回転させるいわゆる超音波モータなどでもよく、要するに本発明は圧電素子を備えた各種の圧電アクチュエータに広く利用できる。
Claims (13)
- 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体を備えた圧電アクチュエータの駆動方法であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数を予め設定された初期周波数から所定方向にスイープさせるとともに、前記振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、
前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、その閾値以上となる範囲内で、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項1に記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、検出信号が閾値以上から閾値未満に変化する毎に、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数のスイープ方向を反転させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項1に記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、検出信号が閾値以上から閾値未満に変化する際の駆動信号の周波数に基づいて所定の周波数範囲を設定し、その周波数範囲内で前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項3に記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、
駆動信号の周波数を周波数が小さくなるダウン方向または周波数が大きくなるアップ方向にスイープさせている場合に、検出信号が閾値以上から閾値未満に変化した際の駆動信号の周波数を下限または上限の周波数とし、
この下限または上限の周波数から前記スイープ方向とは反対方向にスイープさせた際に、前記下限または上限の周波数から所定の周波数分だけ離れた周波数を上限または下限の周波数とし、
前記下限周波数および上限周波数間の範囲内で前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項3に記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、
駆動信号の周波数を周波数が小さくなるダウン方向または周波数が大きくなるアップ方向にスイープさせている場合に、検出信号が閾値以上から閾値未満に変化した際の駆動信号の周波数から前記スイープ方向とは反対側に所定の周波数分だけ離れた周波数を下限または上限の周波数とし、
この下限または上限の周波数から前記スイープ方向とは反対方向にスイープさせた際に、前記下限または上限の周波数から所定の周波数分だけ離れた周波数を上限または下限の周波数とし、
前記下限周波数および上限周波数間の範囲内で前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項3から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
圧電素子の駆動が継続されるに伴い、前記駆動信号の周波数をスイープさせる範囲を狭めることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動方法において、
前記検出信号が前記閾値未満の場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を第1設定速度に設定し、
前記検出信号が前記閾値以上の場合には、前記駆動信号の周波数のスイープ速度を前記第1設定速度よりも低速な第2設定速度に設定することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。 - 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体を備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせる周波数制御手段を備え、
前記周波数制御手段は、振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、前記検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、その閾値以上となる範囲内で、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。 - 請求項8に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記周波数制御手段は、
前記検出信号の振幅を検出するための閾値となる振幅検出用基準電圧を出力する定電圧回路と、
この定電圧回路で出力される振幅検出用基準電圧と前記検出信号の振幅とを比較して比較結果信号を出力する振幅検出回路と、
前記比較結果信号に基づいて出力電圧の変化方向を切り替える電圧調整回路と、
電圧調整回路から出力される電圧によって出力信号の周波数を可変可能な可変周波数発振器とを備えて構成されることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。 - 請求項9に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記電圧調整回路は、周波数の異なる複数のクロック信号を出力可能なクロック回路と、アップダウンカウンタと、このアップダウンカウンタのカウンタ値に基づいて出力電圧の電圧値を設定するデジタル/アナログ変換器と、前記クロック信号に基づいて前記アップダウンカウンタのカウンタ値を制御するスイープ制御回路とを備え、
前記スイープ制御回路は、前記アップダウンカウンタに入力するクロック信号の周波数を高低2段階に切り替える第1のクロックセレクタと、前記クロック信号の入力先をアップダウンカウンタのカウンタアップ用入力またはカウンタダウン用入力のいずれかに切り替える第2のクロックセレクタと、前記振幅検出回路からの比較結果信号に基づいて前記各セレクタを制御する調整回路とを備えることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。 - 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体を有する圧電アクチュエータと、請求項8から請求項10のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置と、を備えたことを特徴とする電子機器。
- 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体を備えた圧電アクチュエータにおける前記圧電素子へ駆動信号を供給する圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラムであって、
前記駆動装置に組み込まれたコンピュータを、
前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせるとともに、前記振動体の振動状態を表す検出信号を検出し、この検出信号が最初に所定の閾値以上となった後は、その閾値以上となる範囲内で、前記圧電素子へ供給する駆動信号の周波数をスイープさせる周波数制御手段として機能させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置の制御プログラム。 - 請求項12に記載の制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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