JP2007332004A - 水蒸気雰囲気下での固相反応法による結晶性層状珪酸塩及びゼオライトの迅速合成法 - Google Patents

水蒸気雰囲気下での固相反応法による結晶性層状珪酸塩及びゼオライトの迅速合成法 Download PDF

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Takushi Ikeda
拓史 池田
Shunsuke Kayamori
俊介 茅森
Toshiro Yokoyama
敏郎 横山
Takamasa Hanaoka
隆昌 花岡
Yasunori Omi
靖則 近江
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Abstract

【課題】高シリカゼオライトの迅速合成方法を提供する。
【解決手段】結晶性層状珪酸塩アイレライト(ilerite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法、結晶性層状珪酸塩アイレライトに有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカMFI型ゼオライトの製造方法、及び結晶性層状珪酸塩カネマイト(kanemite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
【効果】高シリカゼオライトを固相反応により迅速に合成することを可能とする新しい高シリカゼオライトの合成方法を提供できる。
【選択図】図10

Description

本発明は、固相反応による高シリカゼオライトの迅速合成に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤、化学反応場、建築材などに用いることのできる、耐熱性に優れた高シリカゼオライト及び結晶性層状珪酸塩を、既存の結晶性層状珪酸塩を用いて、固相から固相への相転移反応させることにより迅速に合成することを可能とする結晶性層状珪酸塩及びゼオライトの迅速な製造方法に関するものである。
ゼオライトは、原子レベルで規則的に配列したマイクロ孔(3−20Å)を有し、骨格構造の構成元素がSi、Al、Oからなるアルミノシリケート型、Si、Oのみからなるハイシリカ(ピュアシリカ)型に主に分類することができる。ゼオライトは、形状選択的なあるいは骨格構造に起因した化学的・物理的吸着作用を持つことより、モレキュラーシーブ(分子ふるい)、分離吸着剤、イオン交換体、触媒反応としての機能を有する。天然及び合成ゼオライトとして160種類以上の構造が知られ、それと骨格元素の組成を組み合わせることで、目的に合わせた化学的性質や構造安定性、耐熱性を兼ね備えた多孔質材料として、石油化学を中心とする幅広い産業分野で用いられている。
それぞれのゼオライトは、規則的な細孔を形成する幾何学的な骨格構造により区別され、一義的なX線回折パターンを与えることから、実験的に区別することができる。すなわち、骨格構造(結晶構造)は、ゼオライトの細孔の形や大きさを規定している。各ゼオライトの吸着特性や機械的強度、固体酸の性能は、部分的にはその細孔の形や大きさ、骨格を構成する組成で決まる。従って、特定の応用を考えた場合、ある特定のゼオライトの有用性は少なくとも部分的には、その結晶構造や組成に依存する。
高シリカ組成のゼオライトは、耐熱性、疎水性という2つの点で、低シリカ組成よりも優れており、一般に、充分な機械的強度を備えている。これらの性質は、ゼオライトを分離剤や触媒として使用する場合に重要である。ゼオライト合成研究の初期の段階では、シリカ/アルミナ比の低い生成物しか得られていなかったが、シリカ源からなる出発ゲル中に有機構造規定剤(Organic Structure Directing Agent: OSDA)を加えることで、シリカ/アルミナ比が非常に高い組成を持つゼオライトの合成が可能になった(非特許文献1)。例えば、代表的な高シリカゼオライトであるMFI型ゼオライト(シリカライト−1)は、高い疎水性を有し、分離吸着剤として優れている。
ゼオライトは、一般に、水熱合成法、すなわち、大量の水とシリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属及びアミン類などのOSDAを所望の化学組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込め、加熱することにより、自己圧下で製造されている。ここで、OSDAは、生成するゼオライトの細孔を形成するための鋳型剤として機能し、主にアミン分子が用いられている。近年、触媒・材料分野では、より大孔径の高シリカゼオライトへの要望が高まっており、多くの研究がなされているが、製造コストやOSDAの設計・合成が容易ではないため、実用化が困難となっており、実際に使われている高シリカゼオライトの種類は非常に少なく、細孔径もケイ素12員環以下に制限されている。
一方、多量の水を用いず、固相から固相への相転移に似た反応を使って層状珪酸塩からゼオライトもしくはマイクロポーラス構造体へ構造変化させる技術が報告されている。研究例は少ないものの、合成可能な既知構造のゼオライトとして、MFI型(シリカライト−1)とMEL型ゼオライト(シリカライト−2)が報告されている(特許文献1、2及び非特許文献2〜6)。これらによれば、固相反応では、原料に、層状珪酸塩の粉末結晶と有機アミン分子、更に水を加え、オートクレーブを用いて加熱するだけで生成物が得られるとされる。また、これらは、反応時間が数時間から24時間程度と、水熱合成法に比べ迅速な合成法であることが大きな特徴である。また、水熱合成に比べ必要な原料を最小限に減らすことができることから、低コスト化が期待される。しかしながら、これらは、生成物の構造と出発物質である層状珪酸塩の構造に類似性や共通性が殆どないことから、どのようなメカニズムで相転移しているのかが明らかではないという問題も指摘されている。
本発明で得られる、結晶性層状珪酸塩PLS−1は、高シリカゼオライトCDS−1の前駆体であり、PLS−1を焼成し脱水重縮合させるだけで、CDS−1が得られることが分かっている。従来、PLS−1の製造法では、シリカ、TMAOHのほか、最終生成物であるPLS−1に殆ど含まれないが、結晶化のために、アルカリ源や1,4−dioxaneを必要とし、合成時間も10日程度必要であった(特許文献3〜6、非特許文献7)。また、高シリカMFI型ゼオライトについては、産業利用においても重要なゼオライトであり、非常に多くの研究が報告されている(非特許文献8、9)。
また、SODゼオライトは、多くの研究が報告されているが、骨格の化学組成がSiOで表される高シリカ型のものは、エチレングリコールを溶媒に用いた1例だけしか報告されていない(非特許文献10、11)。また、RUTゼオライトは、既存の報告例においては、殆どの場合で骨格の一部にAl元素を含んだもので、高シリカ(純シリカ)型については、下記に示す2例だけである。Bhaumikらの報告では、dry gel conversion法によって結晶化時間は5−6日とされているが、結晶性はあまり高くない。また、結晶性が最も良いMarlerらの報告では、フッ素源を用いるうえ、副生成物としてMTN型ゼオライトが50%以上含まれ、なおかつ合成時間が14日とされている(非特許文献12、13)。
これまでの水熱合成法によるゼオライト合成でも、骨格にAl元素を含むアルミノシリケート型では、24時間以内に合成できるものも報告されている。しかし、高シリカゼオライトの場合、合成時間は、一般的に、5−14日程度かかり、それ以上の時間がかかることも珍しくはない。また、生成物には含まれないにもかかわらず、合成条件として、添加物や有機溶剤、水などを多量に必要とする場合があった。産業利用を目指した高シリカゼオライトの合成においては、可能な限り原料消費を減らし、最小限のエネルギーで合成する手法の開発が大きな課題となっている。
特開2003−73115 特開平8−319112 特開2005−41763 特開2005−194113 特開2004−339044 特開2004−175661 R. M. Barrer, Hydrothermal Chemistry of Zeolites, New York: Academic Press, Inc. pp. 157-170 (1982) M. Salou, Y. Kiyozumi, F. Mizukami, P. Nair, K. Maeda and S. Niwa, J. Mater. Chem., 8(9), 2125-2132 (1998) F. Kooli, Y. Kiyozumi and F. Mizukami, New J. Chem., 25, 1613-1620 (2001) F. Kooli, Y. Kiyozumi, V. Rives, and F. Mizukami, Langmuir, 18, 4103-4110 (2002) F. Kooli, F. Mizukami, Y. Kiyozumia and Y. Akiyama, J. Mater. Chem., 11, 1946-1950 (2001) F. Kooli, J. Mater. Chem., 12, 1374-1380 (2002) :T. Ikeda Y. Akiyama, Y. Oumi, A. Kawai, F. Mizukami, Angew. Chem. Int. Ed. 43, 4892-4895 (2004) H. van Koningsveld, H van Bekkum and J. C. Jansen, Acta Crystallogr., B43, 127-132 (1987) E. M. Flanigen, J. M. Bennett, R. W. Grose, J. P. Cohen, R. L. Patton, R. M. Kirchner and J. V. Smith, Nature, 271, 512-516 (1978) J. Felsche, S. Luger and Ch. Baerlocher, Zeolites, 6, 367-372 (1986) D. M. Bibby, M. P. Dale, Nature, 317, 157-158 (1985) A. Bhaumik and T. Tatsumi, Microporous Mesoporous Materials, 34, 1-7 (2000) B. Marler, U. Werthmann and H. Gies, Microporous Mesoporous Materials, 43, 329-340 (2001) L. D. Rollmann and E. W. Valyocsik, Inorganic Synthesis, New York, 22, 61 (1983)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来の固相反応技術を拡張して、様々な結晶性層状珪酸塩とアミン分子とを組み合わせを検討し、合成と分析・解析を行っていく過程で、本発明を見いだすに至った。本発明は、従来、水熱合成法でしか得られなかった結晶性層状珪酸塩PLS−1、SOD型ゼオライト、RUT型ゼオライトを、固相反応により、従来法よりも簡便で、短時間で合成することができる新しい高シリカゼオライト等の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)結晶性層状珪酸塩アイレライト(ilerite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
(2)結晶性層状珪酸塩アイレライトに酸処理を施したH型アイレライトにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)を混ぜ合わせ、圧力容器内において、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、上記(1)記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
(3)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)をモル比でTMAOH/Si=0.1−0.3の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/H−ilerite=0−4.0の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、上記(2)記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
(4)結晶性層状珪酸塩アイレライトに有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
(5)結晶性層状珪酸塩アイレライトに酸処理を施したH型アイレライトに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)をモル比でTPAOH/Si=0.05−0.2の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/H−ilerite=0.0−1.0の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、上記(4)記載の高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
(6)結晶性層状珪酸塩アイレライトにテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)をモル比でTPAOH/Si=0.05−0.2の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/ilerite=0.0−2.8の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、上記(4)記載の高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
(7)結晶性層状珪酸塩カネマイト(kanemite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
(8)結晶性層状珪酸塩カネマイトにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)をモル比でTMAOH/Si=0.05−0.35の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/kanemite=1.0−3.0の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、上記(7)記載の高シリカSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
(9)圧力容器内で水を直接粉末に触れないように分離し、加熱時おいて、水蒸気雰囲気下として固相反応させる、上記(1)から(8)のいずれかに記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1、高シリカMFI型、又はSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
はじめに、本発明で用いる結晶性層状珪酸塩アイレライト(ilerite:別名octosilicate)、カネマイト(kanemite)について述べる。アイレライト及びカネマイトの単位格子内における化学組成は、それぞれSi3256(OH)16・[Na(HO)、及びSi16(OH)・[Na(HO)で定義される。図1に代表されるような結晶構造をしている。Si−Oの4面体配位の繰り返し単位をシリケート基本構造に持ち、層間にはNaイオンと水分子を規則的に挟んだ構造を有している(文献:S. Vortmann, J. Rius, S Siegmann and H. Gies, J. Phys. Chem. B, 101, 1292-1297 (1997)、S. Vortmann, J. Rius, B. Marler and H. Gies, European Journal of Mineralogy, 11, 125-134 (1999))。
本発明方法で用いるilerite及びkanemiteは、いかなる方法で合成されたものでも構わないが、上記の化学組成と文献で定義された結晶構造を有していることが必要条件である。アイレライトの合成は、シリカ源に水酸化ナトリウム水溶液を加え圧力容器(オートクレーブ)中で水熱合成することで容易に得られる。シリカ源としては、好適には、例えば、SiO(具体的には、例えば、和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)等が使用されるが、これらに制限されるものではない。また、カネマイトの合成は、市販されている結晶性層状珪酸ソーダ(具体的には、例えば、株式会社トクヤマシルテック製SKS−6)を蒸留水に浸漬した後、乾燥させることで得られる。アイレライトの酸処理では、アイレライトの粉末結晶を塩酸水溶液中で攪拌する。酸処理後のH型アイレライトは、化学組成がSi3256(OH)16となり、層間からナトリウムイオン及び水分子が抜けた構造になっていることが知られている(文献:M. Borowski, B. Marler, H. Gies, Z. Kristallogra., 217, 233-241 (2002))。
固相反応で用いる有機アミンは、構造規定剤としての役割を果たすと考えられる。本発明では、出発源に層状珪酸塩を用いることから、層間内にアクセスでき、層間を広げられ、また、シリケート骨格構造を形成する鋳型としての作用を有するものであれば、従来公知のものが全て使用できる。例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などの四級アルキルアンモニウム塩が挙げられる。本発明で好ましく使用される有機結晶化調整剤は、テトラメチルアンモニウム塩及びテトラプロピルアンモニウム塩である。次に、本発明で目的とする各生成物の製造について説明する。
(1)結晶性層状珪酸塩PLS−1の合成
結晶性層状珪酸塩PLS−1は、高シリカゼオライトCDS−1の前駆体化合物として知られ、PLS−1を脱水重縮合させることで、トポタクシーな構造変化によりCDS−1(CDO型)ゼオライトが得られる(図1)。従来、PLS−1の合成は、シリカ源−アルカリ金属イオン−TMAOH−1,4−dioxane−HOを原料とする水熱合成法により得られる。本発明により、水熱合成法では大量に必要であった水及び1,4−dioxaneが実質的に削減でき、なお、かつ、合成時間も10日から24時間程度に短縮できることが大きな特徴である。図2に、結晶性層状珪酸塩PLS−1とそれをトポタクシーな構造変換することによって得られる高シリカゼオライトCDS−1を示す。
以下に、PLS−1の合成方法を一実施の態様を例として説明する。H型アイレライト粉末0.5gとTMAOH・5HO粉末0.21g(TMAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加える。次に、水蒸気を得るため、0.5mlの蒸留水を入れた小さな容器を内筒容器に加える。これにより、蒸留水が直接混合物に浸ることを避けることができる。この小さな容器には、小さなガラス瓶(例えば、アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を用いる。オートクレーブ内の状態を模式的に表したものが図3である。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、24時間の加熱を行う。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得る。この合成例では、収率は、シリカ源に対し、ほぼ100%で、生成物の色は白色であった。図3に、固相反応におけるオートクレーブ内の状態を表す概略図を示す。尚、本発明は、上述の例に限定されるものではない。
このように、水を分離して内筒に入れる理由は、水の量が水熱合成法に比べ圧倒的に少ないことから、直接、層状珪酸塩粉末に水を加えると、不均一に粉末が浸されるため、固相反応の中心となる加水分解速度に差が生じ、そのため、最終生成物も不均一となる恐れがあるためである。初期状態において水を分離させ、高温の自己静圧下において水蒸気雰囲気で層状珪酸塩粉末を曝すことで、均一な反応を促す効果がある。また、合成条件を検討し、加熱温度及びHOの量を任意の条件に固定したときのTMAOH/Si−加熱時間の合成条件マップ、加熱温度170℃、TMAOH/Si=0.15としたときの加熱時間−HOの合成条件マップ、及び加熱時間24時間、HOの量を1mlとしたときのTMAOH/Si−加熱温度の合成条件マップを作成したところ、生成領域を示す図4から図6のような結果が得られた。ここで、合成条件で示すHOは、付加的に、加えた水(の量)のみを指し、TMAOH試薬に含まれる水和水の量は考慮していない。
図4に、加熱温度170℃、HOの量を1mlとしたときのTMAOH/Si−加熱時間のPLS−1の合成条件マップを示す。図5に、加熱温度170℃、TMAOH/Si=0.15としたときの加熱時間−HOのPLS−1の合成条件マップを示す。図6に、加熱時間24時間、HOの量を1mlとしたときのTMAOH/Si−加熱温度のPLS−1の合成条件マップを示す。この生成物は、図7に示す粉末X線回折パターンを与え、先の文献で記載されるパターンと同等であることから、結晶性層状珪酸塩PLS−1と同等の結晶構造を有していることが分かった。図7に、固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターンを示す。
こうして得られたPLS−1の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図8に示す。一辺が2−3μm厚みが0.1μm以上のサイズで結晶形態は四角い板状である。これは、出発物質であるアイレライトの結晶形態と類似している。また、0.1μm程度の小さな結晶も観測された。このSEM像から、アイレライトの結晶形態と基本的に相似の関係を保っていることから、結晶性層状珪酸塩アイレライトからPLS−1への相転移は、アイレライトの層状シリカ骨格内での縮合によるものが支配的であると考えられる。図8は、アイレライト(左)及び固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1(右)のSEM像である。
また、本発明で得られたPLS−1が層状構造であることの証明として、29Si MAS DDNMRスペクトルから、先の文献に示されるPLS−1のスペクトルとほぼ一致し、−99.6ppm、−103.6ppmに(SiO)Si(OH)の局所構造を表すQシグナルと、−111.7ppmに局所構造が(SiO)SiとなるQシグナルが観測された。図9に、固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1の29Si DDMAS NMRスペクトルを示す。
(2)高シリカMFI型ゼオライトの合成
以下に、高シリカMFI型ゼオライトの合成方法を一実施の態様を例として説明する。
Na型もしくはH型アイレライト粉末0.5gと1M濃度のTPAOH水溶液0.157g(TPAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加える。次に、PLS−1の固相反応の場合と同様に、0.5mlの蒸留水を入れた小さな容器(例えば、アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を内筒容器に加える。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、48時間の加熱を行う。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得る。この合成例では、生成物の色は白色であった。
このとき、アルカリ濃度の高い、すなわち、多くのTPAOHを用いたときは、固相反応後の吸引濾過において濾紙(桐山ロート用濾紙No.5C、保留粒子サイズ1μm)で結晶を採集しきれず、見かけ上の収率は50%であり、また、濾液は白濁していた。乾燥後に得られた化合物の粉末X線回折測定から、図10に示されるXRDパターンを得た。このパターンから、生成物がMFI型の高シリカゼオライトであることが分かる。アイレライトの酸処理の有無に関係なく、得られるMFI型ゼオライトの結晶性は同一である。図10に、固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのXRDパターンを示す。尚、本発明は、上述の例に限定されるものではない。
こうして得られた高シリカMFI型ゼオライトのSEM像を図11に示す。出発原料であるアイレライトのモルフォロジーとは全く異なり、直径がサブミクロン程度の小さな球状微結晶になっていることが分かる。また、白濁した濾液を遠心分離したところ、沈殿管の底に白い沈殿物が堆積した。これを採取し乾燥させたものを、粉末X線回折測定を行ったところ、図7と同等のXRDパターンを与え、SEM観察からは、図8と同等の粒子径と結晶形態が観測された。図11は、固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのSEM像である。
しかし、TPAOHの量を増やした場合、結果的には結晶が溶けてしまい、収率は大幅に低下した。これは、用いたTPAOHが1M水溶液であったため、TPAOHの量を増やすと結果として、水も増え、加水分解が促進されるためと推測される。また、合成条件を検討したところ、用いるアイレライトがNa型かH型かに関係なく、殆どの場合で良好な結晶性を有するシリカライトが得られることが分かった。合成時間については、例えば、上述の合成条件において、合成時間を8、12、18時間とした場合でも結晶ができていた。主な合成条件をマップにすると、図12、図13のようになった。ここで、合成条件で示すHOは、付加的に加えた水(の量)のみを指し、TPAOH試薬に含まれる水和水の量は考慮していない。
以上のことから、1M水溶液を用いる限りは、過剰に水を加える必要はなく、TPAOHの量も少ない条件(TPAOH/Si=0.05)で、かつ加熱時間も8時間で良いことが分かった。図12に、Na−ilerite及びH−ileriteを用いた場合の、加熱温度170℃及び加熱時間48時間におけるTPAOH/Si−HOの高シリカMFI型ゼオライトの合成条件マップ、(左)Na−ilerite、(右)H−ilerite、を示す。図13に、Na−ileriteを用いた場合の、TPAOH/Si=0.1、及びHO=0mlにおける加熱時間−加熱温度の高シリカMFI型ゼオライトの合成条件マップを示す。
(3)高シリカSOD型及びRUT型ゼオライトの合成
以下に、SOD型及びRUT型ゼオライトの合成方法を一実施の態様を例として説明する。カネマイト粉末0.5gとTMAOH・5HO粉末を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加える。次に、PLS−1の固相反応の場合と同様に、0.5mlの蒸留水を入れた小さな容器(例えば、アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を内筒容器に加える。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、48時間の加熱を行う。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得る。この合成例では、生成物の色は白色で、収率はほぼ100%であった。この組み合わせでは、加熱温度、加熱時間、仕込み組成比を変えることで、SOD型ゼオライトとRUT型ゼオライトが得られる。
合成条件を検討した結果、所定の温度及び加熱時間に固定したときの、TMAOH/Si−HOの合成条件マップ(図14)、及び加熱温度−HOの合成条件マップ(図15)が得られた。合成条件で示すHOは、付加的に加えた水(の量)のみを指し、TMAOH試薬に含まれる水和水の量は考慮していない。また、HLSとは、先に示したKooliによる文献で示されるKLS3と同一である(文献:F. Kooli, J. Mater. Chem., 12, 1374-1380 (2002))。
このHLS及びKLS3は、文献(T. Ikeda, Y. Akiyama, F. Izumi, Y. Kiyozumi, F. Mizukami and T. Kodaira, Chem. Mater., 13, 1286-1295 (2001))で示される、層状珪酸塩β−HLSと同一のXRDパターンであることから、β−HLSと同じ、基本構造を持つことが示された。図14に、所定の温度及び加熱時間におけるTMAOH/Si−HOの高シリカRUT/SOD型ゼオライトの合成条件マップを示す。図15は、所定のSi比(TMAOH/Si)及び加熱時間48時間における加熱温度−HOの高シリカRUT/SOD型ゼオライトの合成条件マップを示す。
乾燥後に得られた化合物の粉末X線回折測定から、図16に示される2種類のXRDパターンを得た。上の回折パターンはTMAOH/Si=0.35、180℃、48時間、HO=0.5mlの条件で得たもので、SOD型ゼオライトに帰属され、RUT型ゼオライトに帰属されるピークも僅かに観測された。下の回折パターンは、TMAOH/Si=0.05、170℃、48時間、HO=0.5mlの条件で得たもので、RUT型ゼオライトに帰属されるピークが観測された。
生成物のSEM像を図17に示す。SOD型ゼオライトは、棒状で先のとがったモルフォロジーをしており、長さ方向で2−3μm、短い方で0.5μm大きさで、その分布もかなり均一であった。一方、RUT型では、角の取れた球状や多角形のモルフォロジーを有しており、粒径は小さいもので0.5μm程度、大きなものでは3μm程度までのものが観測された。図17は、固相反応により得られた高シリカSOD型ゼオライト(a)、(b)及び高シリカRUT型ゼオライト(c)、(d)のSEM像である。
本発明により、次のような効果が奏される。層状珪酸塩PLS−1は、高シリカゼオライト(CDO型)であるCDS−1を合成するための前駆体であり、また、PLS−1とCDS−1の結晶構造は、骨格部位は相似の関係にあり、PLS−1を脱水重縮合させることでCDS−1が容易に得られる。CDS−1は、その特徴である高いシリカ含有量、平均0.48nm以上のマイクロ孔を有することから、金属担持用固体、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤材料及び化学反応場などへ適用させることができる。また、高シリカMFI型ゼオライト(シリカライト)は、非常に様々な産業利用があり、ガソリン精製触媒、ナフサ分解用触媒、ε−カプロラクタム製造のための気相ベックマン転位用触媒など様々な用途がある。また、高シリカSOD型ゼオライトやRUT型ゼオライトは、細孔径が非常に小さいため、水素、メタンなど小さなガス分子を分離する材料として期待される。近年、ゼオライトを多孔質アルミナチューブなどの支持体に膜化させ部材加工することによって、分離剤などの応用を目指す研究が盛んになり、一部は実用化もされている。従来、この2種類のゼオライトは、アルミを骨格に含んだものが殆どであった。従って、骨格が負に帯電し、細孔窓の中心に電荷を中和するためのアルカリ金属イオンが分布するため、実質的に細孔内へのアクセスが困難となりガス分離剤としての利用には適さなかった。これを高シリカ型にすることで、耐水性、耐熱性に有利な分離用ゼオライト膜の原料として用いることが可能となる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下、粉末X線回折(XRD)パターンは、マックサイエンス社M21Xを使用し、Cu Kα線を用いて、0.02゜間隔のステップスキャンにより得た。SEM像観察にはHITACH S−800を用い、あらかじめ試料をイオンコートした後、加速電圧15kVで観察した。29Si DDMAS NMR測定には、ブルカーバイオスピン社ANANCE400WBを使用した。
結晶性層状化合物PLS−1の製造
SiO(商品名:和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)を2.0g取り、水酸化ナトリウム(NaOH:和光純薬工業製)を用いて4mol/L濃度の水溶液4.0mlと一緒に、PEFEテフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブ(Parr社製、内容積23ml)に移し、108℃で10日間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、水で充分洗浄を行い、70℃の温度下で12時間乾燥させ粉末状の生成物Na−ileriteを得た。次に、Na−ilerite 1.0gを塩酸(和光純薬工業製)を1M濃度(100ml)に加え、2時間ほど十分に攪拌した後、吸引濾過により結晶を分離し、60℃で乾燥させることでH型アイレライトが得られた。
H型アイレライト粉末0.5gとTMAOH・5HO(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製)を0.15g(TMAOH/Si=0.11)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加えた。次に、水蒸気を得るため、1.0mlの蒸留水を入れた小さな容器を内筒容器に加えた。これにより蒸留水が直接混合物に浸ることを避けることができる。この小さな容器には小さなガラス瓶(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を用いた。オートクレーブ内の状態を模式的に表したものが図3である。
このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、18時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。収率は、シリカ源に対しほぼ100%で、生成物の色は白色であった。本実施例は、後に示す表1で示されるRun No.1の実施条件に対応する。図3に、固相反応におけるオートクレーブ内の状態を表す概略図を示す。この生成物は、図7に示す粉末X線回折パターンを与え、先の文献で記載されるパターンと同等であることから、結晶性層状珪酸塩PLS−1と同等の結晶構造を有していることが分かった。図7に、固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1を示す。
こうして得られたPLS−1の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図8に示す。一辺が2〜3μm、厚みが0.1μm以上のサイズで、結晶形態は四角い板状である。これは、出発物質であるアイレライトの結晶形態と類似している。また、0.1μm程度の小さな結晶も観測された。図8に、アイレライト(左)及び固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1(右)のSEM像を示す。
また、本発明で得られたPLS−1が層状構造であることの証明として、29Si DDMAS NMRスペクトル(図9)から、先の文献に示されるPLS−1のNMRスペクトルと同様に、−99.6ppm、−103.6ppmに(SiO)Si(OH)の局所構造を表すQシグナルと、−111.7ppmに局所構造が(SiO)SiとなるQシグナルが観測された。図9に、固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1の29Si DDMAS NMRスペクトルを示す。
更に、固相反応による実施例として、表1に示すRun No.2−21の条件でも結晶性層状珪酸塩PLS−1が得られることが分かった。表1中の結晶性については、○:良い、△:やや低い、を表す。
これらの条件で合成された結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターンを図18、19に示す。図18は、各条件による固相反応で得られ結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターン:その1、である。図19は、各条件による固相反応で得られ結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターン:その2、である。
高シリカMFI型ゼオライトの合成
実施例1で合成したNa−ilerite 0.5gを、1M濃度のTPAOH水溶液(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製)0.113gを、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に一緒に加えた。このときのTPAOH/Si比は0.1であった。次に、PLS−1の固相反応の場合と同様に、1.0mlの蒸留水を入れた小さな容器(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を内筒容器に加えた。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、65時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。生成物の色は白色であった。このとき、吸引濾過においては、結晶が小さいことに起因して、濾紙(桐山ロート用濾紙No.5C、保留粒子サイズ1μm)で結晶を採集しきれなかった。また、濾液には生成物が含まれ、白濁していた。本実施例は、後に示す表2で示されるRun No.1の実施条件に対応する。
乾燥後に得られた化合物の粉末X線回折測定から、図10に示されるXRDパターンを得た。このパターンから生成物がMFI型の高シリカゼオライトであることが分かった。図10に、固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのXRDパターンを示す。こうして得られた高シリカMFI型ゼオライトのSEM像を図11に示す。出発物質であるアイレライトのモルフォロジーとは全く異なり、直径がサブミクロン程度の小さな球状微結晶になっていることが分かった。また、白濁した濾液を遠心分離したところ、沈殿管の底に白い沈殿物が堆積していた。これを採取し乾燥させたものを、粉末X線回折測定を行ったところ、図7と同等のXRDパターンを与え、SEM観察からは、図8と同等の粒子径と結晶形態が観測された。図11は、固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのSEM像である。
高シリカMFI型ゼオライトの合成
実施例1と同様にして合成したNa−ileriteを酸処理したH−ilerite 0.5gを、1M濃度のTPAOH水溶液(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製)0.157gを、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に一緒に加えた。このときのTPAOH/Si比は0.15であった。次に、PLS−1の固相反応の場合と同様に、0.5mlの蒸留水を入れた小さな容器(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を内筒容器に加えた。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、48時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。生成物の色は白色であった。この場合も、実施例2と同等の結晶性を有する高シリカMFI型ゼオライトが得られた。
実施例2及び実施例3に関係する他の実施例として、次の表2に示す条件で固相反応を試みたところ、高シリカMFI型ゼオライトが得られた。表2中の結晶性については、○:良い、△:やや低い、を表す。
これらの条件で、合成された高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターンを図20、21、22に示す。図20は、各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その1、である。図21は、各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その2、である。図22は、各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その3、である。
高シリカSOD型及びRUT型ゼオライトの合成
本実施例で用いるカネマイトは、市販されている結晶性層状珪酸ソーダ、具体的には株式会社トクヤマシルテック製SKS−6 10g、を水1Lに6時間浸した後、吸引濾過で結晶を採取し、60℃にて8時間乾燥させることで得た。次に、カネマイト0.5gとTMAOH・5HO(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製)の粉末を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加えた。次に、実施例1の固相反応の場合と同様に、0.5mlの蒸留水を入れた小さな容器(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶内:内容積1.6ml)を内筒容器に加えた。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、48時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過した後、60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。生成物の色は白色又は薄い茶色で、収率は、ほぼ100%であった。
この実施例では、使用する原料の種類は変えず、仕込み組成比や温度、時間などのパラメーターを変えることで、SOD型ゼオライト、RUT型ゼオライトもしくはその両方が混在する結果が得られた。本発明で実施した高シリカRUT/SOD型ゼオライトについて、合成結果を表3に、粉末X線回折パターンを図23、24、25にそれぞれ示す。
Run No.8、23について、乾燥後に得られた化合物の粉末X線回折測定を行ったところ、図16に示される2種類のXRDパターンを得た。上の回折パターンは、TMAOH/Si=0.35、180℃、48時間、HO=0.5mlの条件で得たもので、SOD型ゼオライトに帰属され(Run No.23)、RUT型ゼオライトに帰属されるピークも僅かに観測された。下の回折パターンはTMAOH/Si=0.05、170℃、48時間、HO=0.5mlの条件で得たもので、RUT型ゼオライトに帰属されるピークが観測された(Run No.8)。
生成物のSEM像を図17に示す。SOD型ゼオライトは、棒状で先のとがったモルフォロジーをしており、長さ方向で2−3μm、短い方で0.5μm大きさで、その分布もかなり均一であった。一方、RUT型は、角の取れた球状や多角形のモルフォロジーを有しており、粒径は小さいもので0.5μm程度、大きなものでは3μm程度までのものが観測された。
図23は、各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトのXRDパターン:その1、である。図24は、各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトのXRDパターン:その2、である。図25は、各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトのXRDパターン:その3、である
結晶性層状珪酸塩ilerite(左)とkanemite(右)の結晶構造モデル。 結晶性層状珪酸塩PLS−1とそれをトポタクシーな構造変換によって得られる高シリカゼオライトCDS−1。 固相反応を行うときのオートクレーブ内の固形原料、水の位置関係を示す概略図。 加熱温度170℃、HOの量を1mlとしたときのTMAOH/Si−加熱時間のPLS−1の合成条件マップ。 加熱温度170℃、TMAOH/Si=0.15としたときの加熱時間−HOのPLS−1の合成条件マップ。 加熱時間24時間、HOの量を1mlとしたときのTMAOH/Si−加熱温度のPLS−1の合成条件マップ。 固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターン。 アイレライト(左)及び固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1(右)のSEM像。 固相反応により得られた結晶性層状珪酸塩PLS−1の29Si MAS NMRスペクトル。 固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのXRDパターン。 固相反応により得られた高シリカMFI型ゼオライトのSEM像。 Na−ilerite及びH−ileriteを用いた場合の、加熱温度170℃及び加熱時間48時間におけるTPAOH/Si−HOの高シリカMFI型ゼオライトの合成条件マップ(左)Na−ilerite、(右)H−ilerit。 Na−ileriteを用いた場合の、TPAOH/Si=0.1及びHO=0mlにおける加熱時間−加熱温度の高シリカMFI型ゼオライトの合成条件マップ。 所定の温度及び加熱時間におけるTMAOH/Si−HOの高シリカRUT/SOD型ゼオライトの合成条件マップ。 所定のSi比(TMAOH/Si)及び加熱時間48時間における加熱温度−HOの高シリカRUT/SOD型ゼオライトの合成条件マップ。 固相反応により得られた高シリカSOD型ゼオライト(上)及び高シリカRUT型ゼオライト(下)のXRDパターン。 固相反応により得られた高シリカRUT型ゼオライト(a)、(b)及び高シリカSOD型ゼオライト(c)、(d)のSEM像。 各条件による固相反応で得られ結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターン:その1。 各条件による固相反応で得られ結晶性層状珪酸塩PLS−1の粉末X線回折パターン:その2。 各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その1。 各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その2。 各条件による固相反応で得られ高シリカMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その3。 各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その1。 各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その2。 各条件により得られた高シリカRUT/SOD型ゼオライトの粉末X線回折パターン:その3。

Claims (9)

  1. 結晶性層状珪酸塩アイレライト(ilerite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
  2. 結晶性層状珪酸塩アイレライトに酸処理を施したH型アイレライトにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)を混ぜ合わせ、圧力容器内において、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項1記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
  3. テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)をモル比でTMAOH/Si=0.1−0.3の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/H−ilerite=0−4.0の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項2記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1の製造方法。
  4. 結晶性層状珪酸塩アイレライトに有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
  5. 結晶性層状珪酸塩アイレライトに酸処理を施したH型アイレライトに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)をモル比でTPAOH/Si=0.05−0.2の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/H−ilerite=0.0−1.0の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項4記載の高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
  6. 結晶性層状珪酸塩アイレライトにテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)をモル比でTPAOH/Si=0.05−0.2の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/ilerite=0.0−2.8の範囲内の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項4記載の高シリカMFI型ゼオライトの製造方法。
  7. 結晶性層状珪酸塩カネマイト(kanemite)に有機結晶化調整剤を混ぜ合わせ、水の存在下で固相反応させることを特徴とする高シリカSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
  8. 結晶性層状珪酸塩カネマイトにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)をモル比でTMAOH/Si=0.05−0.35の範囲内で混ぜ合わせ、これに重量比でHO/kanemite=1.0−3.0の水の存在下、圧力容器内で所定の加熱条件の下で、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項7記載の高シリカSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
  9. 圧力容器内で水を直接粉末に触れないように分離し、加熱時おいて、水蒸気雰囲気下として固相反応させる、請求項1から8のいずれかに記載の結晶性層状珪酸塩PLS−1、高シリカMFI型、又はSOD型/RUT型ゼオライトの製造方法。
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