JP2007327473A - 内燃機関の燃焼室 - Google Patents

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一浩 渡辺
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Abstract

【課題】多点点火式内燃機関におけるノッキングの発生を抑制する。
【解決手段】吸、排気弁3、5をそれぞれ複数有し、吸気弁3および排気弁5に包囲された燃焼室中央領域に第1の点火栓11を、第1の点火栓11に関して略対称位置となるクランク軸方向の燃焼室周辺領域にそれぞれ第2、第3の点火栓12、13をそれぞれ配置し、第1から第3の点火栓11〜13を略同時期に点火させるよう構成した内燃機関において、燃焼室8の吸気側の領域に、燃焼室天井面8aもしくはピストン7の冠面に設けたスキッシュ部6とこれに対向するピストン冠面もしくは燃焼室天井面8aとで形成されるスキッシュエリア6cを備え、スキッシュ部6cは、燃焼室中央側の端部に、隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体するのと略同時または合体する以前に各点火栓11〜13から発した火炎と衝突する部分6bを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、火花点火式内燃機関の燃焼室形状に関し、特に、ノッキングの発生を抑制するための形状に関する。
従来から、燃焼室内のガス流動を強めることで燃焼速度を高めて、燃焼効率の向上を図る技術が知られている。
ところが、燃焼速度を高めると、比較的低温となる吸気側の燃焼室周縁部において、未燃混合気が火炎伝播前に圧縮自己着火してノッキングを発生するおそれがある。
この問題を解決するために、特許文献1では、燃焼室内にタンブル流動を生成することで燃焼室全体の燃焼速度を高めるとともに、膨張行程初期に速やかに逆スキッシュ流を生成させてエンドガスゾーンの燃焼速度を高め、エンドガスゾーンの未燃混合気の圧縮自己着火を防止している。
特開2001−159315号公報
ところで、燃焼速度を高める手段としては、複数の点火栓を設ける、いわゆる多点点火が知られている。
特許文献1では、点火栓を2つ備えるエンジンにも適用可能である旨記載されているが、出願人らの研究によれば、点火栓の数を増やして燃焼速度を高めると燃焼室内の圧力上昇が急峻になるため、エンドガスゾーンでの未燃混合気の圧縮も早くなって圧縮自己着火しやすくなり、ノック限界が低くなることがわかった。
そこで、本発明では、多点点火式の内燃機関において、燃焼速度を高めながらもノッキングの発生を抑制することを目的とする。
本発明の内燃機関の燃焼室は、燃焼室に吸気弁と排気弁とをそれぞれ複数配置し、前記吸気弁および排気弁に包囲された燃焼室中央領域に第1の点火栓を設けると共に、前記第1の点火栓に関して略対称位置となるクランク軸方向の燃焼室周辺領域にそれぞれ第2、第3の点火栓を配置し、前記第1から第3の点火栓を略同時期に点火させるよう構成した内燃機関において、前記3つの点火栓の中心電極を通る線に対して吸気弁を配置した側を吸気側、と定義したときに、前記吸気側の領域に、前記燃焼室もしくはピストンに設けたスキッシュ部とこれに対向するピストン冠面もしくは燃焼室天井面とで形成されるスキッシュエリアを備え、前記スキッシュ部は、燃焼室中央側の端部に、隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体するのと略同時または合体する以前に各点火栓から発した火炎と衝突する部分を有する。
本発明によれば、吸気側のエンドガスゾーンにある未燃混合気は、ピストンが上死点に近づいたときにスキッシュ流によって燃焼室中央方向に押し出される。また、各点火栓から発した火炎が隣り合う点火栓から発した火炎と合体するのと略同時またはそれ以前にスキッシュ部の中央側端部と衝突する程度の広範囲にわたってスキッシュエリアを設けたので、隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体することによって燃焼圧が急激に増大したときに、エンドガスゾーンに未燃混合気はほとんど存在しない。したがって、局所的に圧縮されて自己着火することもない。また、3つの点火栓を略同時に点火することによって燃焼速度が高くなるので、ピストンが下降してスキッシュエリアがピストン軸方向に拡がり、エンドガスゾーンに未燃混合気が流入する前に燃焼期間を終了させることができる。
これらにより、燃焼速度を高めつつノッキングの発生を抑制することができる。
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は第1実施形態を適用可能なエンジンの概略構成図であり、図2は図1のA−A矢視図である。1は複数の気筒を主軸方向に配設した気筒列を有する多気筒内燃機関の本体、2はその吸気通路、2aおよび2bは吸入ポート部、3は吸気弁、4は排気通路、4a及び4bは排気ポート部、5は排気弁、6はスキッシュ部、7はピストン、8は燃焼室、9〜11は点火栓である。
エンジン1は、吸気弁3、排気弁5を気筒ごとにそれぞれ2本ずつ備える4弁式であり、吸気通路4は2つの吸入ポート部2a、2bに分岐し、それぞれ吸気弁3により開閉される。また、2つの排気ポート部4a、4bが合流して排気通路4となっており、排気ポート部4a、4bはそれぞれ排気弁5により開閉される。
図2に前記3個の点火栓9〜11の配置の詳細を示す。3個の点火栓のうち、中央に位置する第1の点火栓9は、前記都合4個の吸気弁3又は排気弁5に包囲された燃焼室8の中央領域に位置する。これに対して、第2、第3の点火栓10、11は、前記第1の点火栓9に関し略対称位置となる吸気弁3及び排気弁5の両側方の燃焼室8の周辺領域に位置する。すなわち、第2、第3の点火栓10、11は第1の点火栓9に関して略対称位置となるクランク軸方向の燃焼室周辺領域に配置される(クランク軸は線Gと略平行になっている)。ここで、第1の点火栓9の中心電極9gと第2の点火栓10の中心電極10gとの間隔及び第1の点火栓9の中心電極9gと第3の点火栓11の中心電極11gとの間隔は略同等であり、その距離をdとする。なお、シリンダヘッド1a側の燃焼室形状は、各点火栓9〜11のそれぞれの中心電極部9g〜11gを通る線の付近を稜線とするいわゆるペントルーフ形である。
スキッシュ部6は、詳細については後述するが、ピストン7が上死点に位置するときに、その下面6aがピストン7の頂部の対応する領域と所定のほぼ均等な間隔をもって近接することによってスキッシュエリア6cを形成するように、燃焼室天井面8aから突出するように形成する。
上記のような構成において、排気行程中に、吸気通路2に臨むように設けた図示しない燃料噴射弁から吸入ポート2a、2bに向けて燃料噴射し、圧縮行程においてピストン7が上死点付近まで上昇したときに3つの点火栓9〜11を略同時に点火させるものとする。
ここで、スキッシュ部6の形状について詳細に説明する。図1中の破線で示した円は燃焼火炎が隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体するまで、すなわち半径がd/2になるまで発達したときの火炎面を表している。また、図2中の実線Gは、3つの中心電極9g〜11gを通る直線を表している。
スキッシュ部6は、吸入ポート部2a、2bの開口部分を除き、直線Gに最も近い部分である傾斜面6bと中心電極9g〜11gとの最短距離が略d/2以下となるように形成する。なお、傾斜面6bは、図1に示した断面図において、中心電極9g〜11gを中心として描いた半径d/2の円と重なるように円弧状に形成してもよい。
次に、中心電極9g〜11gと傾斜面6bとの間隔を略d/2としたことについて説明する。点火開始とともに、3つの中心電極9g〜11gから発した燃焼火炎は放射状に拡がる。そして所定時間経過後には、隣り合う中心電極から発した燃焼火炎の火炎面が合体する。隣り合う火炎面が合体することにより燃焼圧は高まり、燃焼圧の高まった燃焼火炎が燃焼室8周縁部に向けて拡がることで未燃混合気をより強く圧縮し始める。このときエンドガスゾーンに未燃混合気が存在すると、局所的に圧縮されることによって自己着火し易くなる。
そこで、スキッシュ部6を、吸入ポート部2a、2bの開口部分を除き、直線Gに最も近い部分である傾斜面6bと中心電極9g〜11gとの最短距離が略d/2以下となるように形成することによって、隣り合う中心電極から発した燃焼火炎同士が合体した後の燃焼火炎がエンドガスゾーンへ進入し難くし、また、未燃混合気が2つの吸入ポート部2a、2bの開口部付近の領域に分割されて局所的に圧縮され難くし、結果としてノッキングの発生を抑制する。
上記のようにノッキングの発生を抑制が可能になると、点火時期をより進角させることができる。図5は、本実施形態と従来の3点点火と一点点火についてノック強度と点火時期との関係を表す図である。図中の波線は許容し得るノック強度を表すトレースラインであり、トレースライン上のノック強度となるときの点火時期をノック限界点火時期という。図に示すように、従来の3点点火のノック限界点火時期IT1は1点点火のノック限界点火時期IT2に比べて遅角側になる。これは、前述したように燃焼速度が高すぎるためにエンドガスゾーンの未燃混合気が急激に圧縮され、却って自己着火しやすくなるためである。これらに比べて、スキッシュ部6を上記のように形成した本実施形態の3点点火では、ノッキングの発生が抑制されるため、ノック限界点火時期IT3が一点点火のノック限界点火時期IT2よりも進角側になる。すなわち、点火時期をより進角させることが可能となる。
点火時期はエンジン1の出力(発生トルク)と図6に示すような関係がある。図6は縦軸にエンジン1の発生トルク、横軸に点火時期をとり、図5と同様に従来の3点点火、1点点火、本実施形態の3点点火について表した図である。図に示すように、点火時期が同等の場合は、3点点火の方が1点点火よりも発生するトルクが高くなる。これは3点点火の方が燃焼速度が高いために等容度の高い燃焼が可能となるからである。しかしながら、従来の3点点火ではノック限界点火時期IT1が1点点火よりも遅角側であるため、3点点火にすることによる効果が小さかった。ところが、本実施形態ではノック限界点火時期IT3が1点点火よりもさらに進角側なので、従来の3点点火よりもさらに発生トルクの向上を図ることが可能になる。
以上により本実施形態では、スキッシュ部6の燃焼室中央側の端部である傾斜面6bが、隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体するのと略同時に、各点火栓11〜13から発した火炎と衝突するように、すなわち、吸入ポート部2a、2bの開口部分を除き、直線Gに最も近い部分である傾斜面6bと中心電極9g〜11gとの最短距離が略d/2以下となるようにスキッシュ部6を形成したので、隣り合う中心電極から発した燃焼火炎同士が合体した後の燃焼火炎がエンドガスゾーンへ進入し難く、また、未燃混合気が2つの吸入ポート部2a、2bの開口部付近の領域に分割されて局所的に圧縮され難くなり、結果としてノッキングの発生を抑制することができる。
そして、ノッキングの発生が抑制されることにより点火時期の進角が可能となり、エンジン1の出力向上を図ることができる。また、ノッキングが発生し難くなることにより、エンジン1の圧縮比を高めることが可能となるので、出力を更に向上させ、かつ燃費性能も向上させることができる。
なお、図1ではピストン7の頂部が平坦であるが、スキッシュ部6の下面6aとの間でスキッシュエリア6cを形成するのであればこれに限られるわけではなく、例えば、ペントルーフ形の天井面8aに合わせて中央部分が盛りあがった形状であっても構わない。
第2実施形態について説明する。
図3及び図4はそれぞれ図1及び図2と同様にエンジンの概略構成図及びA−A矢視図を表す。なお、図4の斜線領域は、後述するピストン7頂部の盛り上がった部分を燃焼室天井面8aに投影したものである。
本実施形態は、スキッシュ部6をピストン7の頂部の吸気側部分を盛り上げることにより形成する。
ここで、ピストン7頂部の形状について説明する。中心電極9g〜11gを通る線を線G、線Gに平行かつ線Gからの距離がd/2の線を線Dと定義すると、ピストン7の吸気側端部(図3中のピストン7左端)から線Dまでの領域は、ピストン7が上死点位置のときにピストン7頂部と燃焼室天井面8aとの隙間がほとんどなくなる程度に近接するように、燃焼室天井面8aの傾斜に合わせて盛り上がり、スキッシュ部6を形成する。そして、線Dからピストン7の略中央部までの領域は、ピストン7が上死点位置のときに、線Gを中心軸とする半径d/2の円筒面を含むような半円筒型の凹形状となっている。ピストン7頂部の略中央部から排気側端部(図3中右端)までは、前記半円筒型の凹形状と滑らかに接続し、かつ前記接続部から排気側端部に向けて徐々に盛り上がっている。なお、略中央部から排気側端部までは、第1実施形態と同様に平坦であっても構わない。
上記のような構成にすることにより、第1実施形態と同様に、各点火栓9〜11から発した燃焼火炎が、合体した後エンドガスゾーンに侵入し難くなる。また、第1実施形態とは異なり、吸入ポート部2a、2bの開口部分もスキッシュエリア6cとなっているので、圧縮上死点付近ではエンドガスゾーンに未燃混合気がほとんどなくなる。これらにより、ノッキングの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態では3つの点火栓9〜11を略同時に点火させることで燃焼速度が著しく高くなっており、ピストン7が上死点近傍にある間に燃焼期間が終了する。このため、ピストン7が上死点通過後に下降し始めて、燃焼室天井面8aとピストン7頂部との間隔が拡がったときには、燃焼室内には未燃混合気がほとんどなくなっており、圧縮自己着火が起こりえない。
以上のように、本実施形態では第1実施形態と同様にノッキングを発生し難くすることができるので、点火時期の進角や圧縮比の増大等により、エンジン1の出力向上や燃費性能の向上を図ることができる。
また、ピストン7の頂部に線Gを中心軸とする半径d/2の円筒面を含むような半円筒型の凹形状を設けたので、隣り合う点火栓から発した燃焼火炎が合体するまでの、燃焼期間の初期から中期にかけて、燃焼火炎がピストン7頂部に衝突することを防止できる。これによりピストン頂部での冷却損失を低減することができる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
第1実施形態を適用するエンジンの概略構成図である。 図1のA−A矢視図である。 第2実施形態を適用するエンジンの概略構成図である。 図3のA−A矢視図である。 ノック強度と点火時期との関係を表す図である。 エンジンの発生トルクと点火時期との関係を表す図である。
符号の説明
1 エンジン本体
2 吸気通路
3 吸気弁
4 排気通路
5 排気弁
6 スキッシュ部
7 ピストン
8 燃焼室
9 第1の点火栓
10 第2の点火栓
11 第3の点火栓

Claims (4)

  1. 燃焼室に吸気弁と排気弁とをそれぞれ複数配置し、前記吸気弁および排気弁に包囲された燃焼室中央領域に第1の点火栓を設けると共に、前記第1の点火栓に関して略対称位置となるクランク軸方向の燃焼室周辺領域にそれぞれ第2、第3の点火栓を配置し、前記第1から第3の点火栓を略同時期に点火させるよう構成した内燃機関において、
    前記3つの点火栓の中心電極を通る線に対して吸気弁を配置した側を吸気側、と定義したときに、
    前記吸気側の領域に、前記燃焼室もしくはピストンに設けたスキッシュ部とこれに対向するピストン冠面もしくは燃焼室天井面とで形成されるスキッシュエリアを備え、
    前記スキッシュ部は、燃焼室中央側の端部に、隣り合う点火栓から発した火炎同士が合体するのと略同時または合体する以前に各点火栓から発した火炎と衝突する部分を有することを特徴とする内燃機関。
  2. 前記スキッシュエリアは、燃焼室天井面からピストン軸線方向に突出したスキッシュ部と、ピストン冠面の前記スキッシュ部に対向する部分とで形成することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記スキッシュエリアは、ピストン冠面をピストン軸線方向に突出させて形成したスキッシュ部と、燃焼室天井面および吸気弁の前記スキッシュ部に対向する部分とで形成することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  4. 前記第1の点火栓と第2、第3の点火栓との間隔をそれぞれdと定義したときに、
    前記スキッシュエリアの中央側の端部を結んだ線と前記各点火栓の中心電極部を通る線との距離が略d/2以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関。
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