JP2007170369A - 筒内噴射式火花点火内燃機関 - Google Patents

筒内噴射式火花点火内燃機関 Download PDF

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Abstract

【課題】必要吸気量に係わらずに、点火時期において気筒内にタンブル流による乱れを存在させて急速燃焼を実施可能とすると共に熱効率の悪化を抑制することができる筒内噴射式火花点火内燃機関を提供する。
【解決手段】均質燃焼運転領域において、シリンダボア内の排気弁側を下降して吸気弁側を上昇するように気筒内を旋回するタンブル流が、燃料噴射弁により気筒内へ直接的に噴射された燃料によって強められる筒内噴射式火花点火内燃機関において、圧縮行程末期の均質燃焼点火時期においてシリンダヘッドとピストン3とにより形成される気筒内隙間が、点火プラグ2近傍の狭い第一部分S1と、第一部分より広い第二部分S2とを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、筒内噴射式火花点火内燃機関に関する。
気筒内に均質混合気を形成し、この均質混合気を圧縮行程末期の点火時期において着火燃焼させる均質燃焼において、気筒内へ供給された吸気により気筒内にタンブル流を形成し、このタンブル流を圧縮行程末期の点火時期まで持続させることにより、点火時期において気筒内にタンブル流による乱れを存在させ、この乱れによって均質混合気の燃焼速度を高めれば良好な均質燃焼が実現される。
タンブル流を圧縮行程末期の点火時期まで持続させるために、吸気ポート内に吸気流制御弁を配置し、この吸気流制御弁によって吸気を吸気ポート上壁に沿わせて気筒内へ供給することにより、気筒内に強いタンブル流を形成する筒内噴射式火花点火内燃機関が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−180247 特開2002−227651
前述の筒内噴射式火花点火内燃機関において、吸気流制御弁により吸気を吸気ポート上壁に沿わせて気筒内に供給する時には、吸気流制御弁により吸気ポートが絞られることになる。それにより、必要吸気量が比較的少ない時においては、特に問題なく強いタンブル流を気筒内に形成することができるが、必要吸気量が比較的多くなる時においては、吸気流制御弁により吸気ポートを絞ると吸気不足が発生することがあるために、吸気流制御弁によって強いタンブル流を気筒内に形成することはできない。また、点火時期において気筒内に乱れを存在させて、単に急速燃焼を実施させると、非常に短時間で燃焼が完了して気筒内温度が過剰に高められることがあり、この時には気筒内からの放熱量が多くなって熱効率が悪化する。
従って、本発明の目的は、必要吸気量に係わらずに、点火時期において気筒内にタンブル流による乱れを存在させて急速燃焼を実施可能とすると共に熱効率の悪化を抑制することができる筒内噴射式火花点火内燃機関を提供することである。
本発明による請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、均質燃焼運転領域において、シリンダボア内の排気弁側を下降してシリンダボア内の吸気弁側を上昇するように気筒内を旋回するタンブル流が、燃料噴射弁により気筒内へ直接的に噴射された燃料によって強められる筒内噴射式火花点火内燃機関において、圧縮行程末期の均質燃焼点火時期においてシリンダヘッドとピストンとにより形成される気筒内隙間が、点火プラグ近傍の狭い第一部分と、前記第一部分より広い第二部分とを有することを特徴とする。
本発明による請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、前記点火プラグは気筒上部略中心に配置され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの中央部により前記第一部分が形成され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの周囲部により前記第二部分が形成されることを特徴とする。
本発明による請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、前記点火プラグは気筒上部の吸気弁側に配置され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの吸気弁側により前記第一部分が形成され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの排気弁側により前記第二部分が形成され、前記ピストンの排気弁側の頂面には、前記タンブル流の減衰を抑制するためのキャビティが形成されていることを特徴とする。
本発明による請求項4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、もう一つの点火プラグが気筒上部における前記燃料噴射弁より排気弁側に配置され、成層燃焼運転領域においては、前記燃料噴射弁により圧縮行程後半に噴射された燃料によって気筒内の一部に可燃混合気を形成して、前記もう一つの点火プラグにより前記可燃混合気を着火燃焼させることを特徴とする。
本発明による請求項5に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、請求項3又は4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、前記キャビティは対称面に対して略対称であり、前記点火プラグは前記対称面近傍に位置し、前記ピストンの頂面の前記キャビティの点火プラグ側境界は前記点火プラグ側に凹形状とされることを特徴とする。
本発明による請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、均質燃焼運転領域において、シリンダボア内の排気弁側を下降してシリンダボア内の吸気弁側を上昇するように気筒内を旋回するタンブル流は、燃料噴射弁により気筒内へ直接的に噴射された燃料によって強められるために、圧縮行程末期の均質燃焼点火時期まで持続して気筒内に乱れを存在させる。この均質燃焼点火時期において、シリンダヘッドとピストンとにより形成される気筒内隙間が点火プラグ近傍において広くされていると、乱れによる急速燃焼によって燃焼が非常に短時間で終了し、気筒内温度が過剰に高められて熱効率が悪化することがあるが、本筒内噴射式火花点火内燃機関では、気筒内隙間の点火プラグ近傍の第一部分は狭くされているために、乱れは存在しても初期の燃焼速度はそれほど速くならず、その火炎が第一部分より広い第二部分へ伝播した時に燃焼速度が速くなるために、従来に比較すれば、燃焼時間の短い良好な燃焼でありながら気筒内温度は従来程度までしか高められず、熱効率が悪化することは抑制される。
本発明による請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、燃焼は、気筒内中央の第一部分から周囲の第二部分へ伝播され、燃焼圧力がピストンにバランス良く作用する。
本発明による請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、気筒内の排気弁側を気筒内隙間の第二部分とすることにより、ピストン頂面の排気弁側にはキャビティを形成してタンブル流の減衰を抑制することができる。
本発明による請求項4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、もう一つの点火プラグを気筒上部における燃料噴射弁より排気弁側に配置することにより、燃料噴射弁の圧縮行程後半での燃料噴射によって気筒内の一部に形成される可燃混合気を成層燃焼点火時期においてもう一つの点火プラグに接触させることが可能であり、均質燃焼運転領域での均質燃焼だけでなく、成層燃焼運転領域を設けて成層燃焼を実施することができる。
本発明による請求項5に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関によれば、請求項3又は4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関において、キャビティは対称面に対して略対称であり、点火プラグはキャビティの対称面近傍に位置し、ピストンの頂面のキャビティの点火プラグ側境界は、点火プラグ側に凹形状とされている。それにより、点火プラグから点火プラグ側境界の中央部までの火炎伝播距離と、点火プラグ側境界の両側部までの火炎伝播距離とをほぼ等しくすることができ、気筒内の吸気弁側の気筒内隙間である第一部分の燃焼に際して、点火プラグからの火炎を、点火プラグ側境界の中央部と両側部とでほぼ同時に第二部分としてのキャビティ内へ伝播させることができ、第二部分の燃焼速度をさらに速めることができる。
図1及び図2は本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第一実施形態を示す概略縦断面図である。図1は吸気行程末期を示し、図2は圧縮行程末期の点火時期を示している。これらの図において、1は気筒上部略中心に配置されて気筒内へ直接的に燃料を噴射するための燃料噴射弁であり、2も気筒上部略中心に配置された点火プラグである。燃料噴射弁1は、点火プラグ2より排気弁側に位置している。図示されていないが、図1及び2において、気筒上部の右側には二つの吸気弁が配置されており、左側には二つの排気弁が配置されている。
本筒内噴射式火花点火内燃機関は、気筒内に理論空燃比よりリーンな均質混合気を形成し、この混合気を点火プラグ2により着火燃焼させる均質燃焼を実施するものである。高出力が必要な高回転高負荷時等においては、理論空燃比又はリッチ空燃比での均質燃焼を実施するようにしても良い。特に、リーン空燃比での均質燃焼は、点火時期において気筒内に乱れを存在させて燃焼速度を速めないと、所望の機関出力が得られない。それにより、吸気行程において気筒内に供給される吸気によってシリンダボア内の排気弁側を下降して吸気弁側を上昇するタンブル流Tを気筒内に形成し、このタンブル流Tを圧縮行程末期の点火時期まで持続させて点火時期において気筒内に乱れを存在させることが好ましい。
しかしながら、シリンダヘッドを厚くして吸気ポートの形状配置を工夫したり、吸気ポート内に吸気流制御弁を設ける等しない限り、一般的に気筒内に形成されるタンブル流は、それほど強いものではなく、タンブル流は圧縮行程中の減衰により点火時期までには容易に消滅し、点火時期においてタンブル流により気筒内に乱れを存在させることはできない。
それにより、本実施形態においては、吸気行程において気筒内に形成されたそれほど強くないタンブル流Tがシリンダボア内の排気弁側に沿って下降する際に、吸気行程末期において燃料噴射弁1によりシリンダボアの排気弁側へ向けて噴射された燃料Fの貫徹力を利用して強めるようにしている。こうして強められたタンブル流は、圧縮行程末期の点火時期まで良好に持続して気筒内に乱れを存在させることができる。
このように気筒内に乱れを存在させて均質混合気の燃焼速度を単に速くすると、図3に点線で示すように、燃焼時間が非常に短くなると共に気筒内の温度が過剰に上昇し、特に1サイクルの時間が長い低回転時においては、気筒内からの放熱量が多くなって熱効率が悪化してしまう。図3の一点鎖線は気筒内に殆ど乱れを存在させない場合であり、気筒内の温度はそれほど高くならないが、燃焼時間が長い緩慢な燃焼であるために、必要な機関出力を得ることが難しい。
これらに対して、本実施形態では、ピストン3の周囲部を凹ませており、圧縮行程末期の点火時期においてシリンダヘッドとピストン3とにより形成される気筒内隙間は、シリンダヘッド及びピストン3のそれぞれの中央部により形成される比較的狭い第一部分S1と、シリンダヘッド及びピストン3のそれぞれの周囲部により形成される比較的広い第二部分S2とを有するようになる。
第一部分S1には、点火プラグ2が位置しており、それにより、先ずは、第一部分S1において均質混合気の燃焼が開始される。第一部分S1は狭い隙間であるために、乱れが存在しているが、それほど燃焼速度は速くならない。次いで、この燃焼の火炎が第二部分S2へ伝播すると、第二部分S2は広い隙間であるために、存在する乱れによって急速燃焼が起こる。こうして、図3に実線で示すように、第一部分S1での燃焼は緩慢とされるが、第二部分S2での燃焼は急激とされ、結果として、燃焼時間は、気筒内に殆ど乱れを存在させない場合より短くなって必要な機関出力を得ることができ、また、気筒内の温度は、気筒内に殆ど乱れを存在させない場合程度にしか上昇せず、熱効率の悪化も抑制することができる。
図4は本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第二実施形態を示す概略縦断面図であり、圧縮行程末期の点火時期を示している。第一実施形態との違いについてのみ説明する。本実施形態においては、点火プラグ2’は気筒上部の吸気弁側に配置されており、また、ピストン3’の頂面の排気弁側には、キャビティ3a’が形成されている。
それにより、圧縮行程末期の点火時期においてシリンダヘッドとピストン3とにより形成される気筒内隙間は、シリンダヘッド及びピストン3のそれぞれの吸気弁側により形成される比較的狭い第一部分S1’と、シリンダヘッド及びピストン3のそれぞれの排気弁側により形成される比較的広い第二部分S2’とを有するようになる。燃料噴射弁1は、第一実施形態と同様に、吸気行程末期に燃料を噴射し、気筒内に形成されているタンブル流を強めて圧縮行程末期の点火時期において気筒内に乱れを存在させる。
第一部分S1’には、点火プラグ2’が位置しており、それにより、先ずは、第一部分S1’において均質混合気の燃焼が開始される。第一部分S1’は狭い隙間であるために、乱れが存在しているが、それほど燃焼速度は速くならない。次いで、この燃焼の火炎が第二部分S2’へ伝播すると、第二部分S2’は広い隙間であるために、存在する乱れによって急速燃焼が起こる。こうして、第一実施形態と同様に、第一部分S1’での燃焼は緩慢とされるが、第二部分S2’での燃焼は急激とされ、結果として、燃焼時間は、気筒内に殆ど乱れを存在させない場合より短くなって必要な機関出力を得ることができ、また、気筒内の温度は、気筒内に殆ど乱れを存在させない場合程度にしか上昇せず、熱効率の悪化も抑制することができる。
図1及び2に示す第一実施形態においては、気筒中央部(第一部分S1)から気筒周囲部(第二部分S2)へ燃焼が伝播するために、燃焼圧力がピストン3にバランス良く作用する。一方、図4に示す第二実施形態においては、ピストン3’の頂面の排気弁側には、部分円弧形状断面のキャビティ3a’が形成されているために、タンブル流はキャビティ3a’に沿って旋回して減衰が抑制され、噴射燃料Fにより強められたタンブル流を圧縮行程末期の点火時期まで持続させ易くなる。
第一及び第二実施形態は、理論空燃比よりリーンな空燃比での均質燃焼を実施するものであるが、これは本発明を限定するものではなく、理論空燃比又はリッチ空燃比での均質燃焼を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関においても、タンブル流を強めて点火時期まで持続させることにより乱れを存在させて燃焼速度を速めると共に熱効率を悪化させないようにすることは有効である。
また、特に低負荷時のように高い機関出力が必要でない時には、均質燃焼ではなく、点火プラグ近傍だけに可燃混合気を形成して、これを着火燃焼させる成層燃焼を実施した方が燃料消費を低減することができる。図5は、均質燃焼運転領域の他に成層燃焼運転領域を設けて成層燃焼を実施するための第三実施形態を示す概略縦断面図であり、圧縮行程後半を示している。第二実施形態との違いについてのみ説明する。
本実施形態において、気筒上部略中心における燃料噴射弁1の排気弁側には、もう一つの点火プラグ4が配置されている。この点火プラグ4は、図5に示すように、気筒内へ比較的大きく突出しており、それにより、タンブル流を強めるために前述のように噴射方向が設定された燃料噴射弁1からの燃料噴霧は、部分的に点火プラグ4の点火ギャップを通過するようになっている。こうして点火プラグ4を気筒内へ突出させても、ピストン頂面に形成されたキャビティ3a’によって、圧縮上死点でもピストン3’が点火プラグ4に衝突することはない。
本実施形態において、均質燃焼運転領域では、第二実施形態において説明したように均質燃焼を実施する。また、成層燃焼運転領域においては、吸気行程末期の燃料噴射は行われないためにタンブル流は強められず、タンブル流は圧縮行程後半までに消滅し、圧縮行程後半には気筒内には乱れは存在しない。燃料噴射弁1は、この圧縮行程後半に燃料Fを噴射するようになっており、この噴射燃料は気筒内の吸気との摩擦によって気化して、点火プラグ4の点火ギャップに接触する一塊の可燃混合気となるために、これを成層燃焼点火時期において点火プラグ4により着火燃焼させて良好な成層燃焼を実現することができる。また、ピストン頂面に形成されたキャビティ3a’を利用して噴射燃料を点火プラグ4の近傍に集合させて成層燃焼を実施するようにしても良い。
図6は、図4及び5に示す第二及び第三実施形態のピストンの平面図である。点火プラグ2’は、気筒上部周囲において、二つの排気弁の間及び二つの吸気弁の間を通る対称面P近傍(対称面P上も含む)に位置している。ピストン3’の頂面の排気弁側に形成されたキャビティは、対称面Pに対して略対称であり、対称面と平行なキャビティの断面形状は、タンブル流の減衰を抑制するように部分円弧形状とされている。キャビティの平面視形状は、一点鎖線で示すような略直線状の点火プラグ側境界を有する一般的な略半円形状、又は、二点鎖線で示すような点火プラグ側に凸形状の点火プラグ側境界を有する形状とされて良い。
これらの場合において、第一部分S1’の燃焼に際して、点火プラグ2’の点火ギャップから放射状に伝播する火炎は、先ず、キャビティの点火プラグ側境界における最も火炎伝播距離の短い中央部から第二部分S2’としてのキャビティ内へ伝播し、次いで、火炎伝播距離の長い点火プラグ側境界の両側部からもキャビティ内へ伝播する。こうして、キャビティ内での急速燃焼を実現することができる。
本実施形態において、ピストン3’の頂面の排気弁側に形成されたキャビティ3a’の点火プラグ側境界は、実線で示すように、点火プラグ側に凹形状とされる。それにより、第一部分S1’の燃焼に際して、点火プラグ2’の点火ギャップから放射状に伝播する火炎は、点火プラグ側境界の中央部及び両側部において火炎伝播距離がほぼ等しくなるために、点火プラグ側境界の中央部及び両側部からほぼ同時にキャビティ3a’内へ伝播し、キャビティ内での急速燃焼をさらに速めて第二部分S2’の燃焼時間をさらに短縮することができる。
また、図6示すように、点火プラグ側境界を、凹形状のうちの一形状として、点火時期における点火プラグ2’の点火ギャップから等距離Rの円弧形状とすれば、第一部分S1’の燃焼に際して、点火プラグ2’の点火ギャップから放射状に伝播する火炎は、点火プラグ側境界の各部への火炎伝播距離が等しくなるために、点火プラグ側境界の各部から同時にキャビティ3a’内へ伝播し、キャビティ内での急速燃焼をさらに速めて第二部分S2’の燃焼時間をさらに短縮することができる。
前述した三つの実施形態において、燃料噴射弁1から噴射される燃料噴霧の形状は、任意に設定可能であり、例えば、中実又は中空円錐形状、又は、中実柱形状としても良い。また、円弧状スリット噴孔や複数の直線スリット噴孔の組み合わせにより、比較的厚さの薄い円弧状断面又は折れ線状断面の燃料噴霧としても良い。いずれにしても燃料噴霧が比較的大きな貫徹力を有して、気筒内のタンブル流を加速させるようになっていれば良い。
燃料噴射弁1は、図1に示すように、スリット状の噴孔を有して比較的厚さの薄い略扇形状に燃料を噴射するものでも良い。この場合において、燃料噴霧Fの厚さ中心平面が、タンブル流Tと平行に気筒中心軸線を通る縦平面(図1の断面上の平面)とほぼ一致するようにすれば、燃料Fは、当初、タンブル流Tと共に気筒内を旋回する際に、主に二つの吸気弁の間の空間内を移動して、開弁中の吸気弁に付着し難くなる。それにより、吸気弁へのデポジットの堆積を抑制することができる。
ところで、点火プラグ2、2’、及び、4は、中心電極と、L字形の板状電極とを有している。板状電極の幅方向がタンブル流と略平行となるように点火プラグを配置することが好ましく、それにより、板状電極の幅方向がタンブル流Tに対向する場合のように、タンブル流が板状電極に衝突して減衰することは抑制される。この点火プラグ配置により、板状電極の厚さ方向がタンブル流Tに対向することとなるが、板状電極の厚さは薄いためにタンブル流Tを殆ど減衰させることはない。点火プラグによっては、互いに対向する二つの板状電極を有する場合があるが、このような場合にも、二つの板状電極の厚さ方向をタンブル流Tに対向させ、幅方向をタンブル流と略平行にすることが好ましい。
燃料噴射弁1は、所望空燃比の均質燃焼を実施するために、必要量の燃料を吸気行程末期(例えば、燃料噴射終了クランク角度を吸気下死点近傍とするように燃料噴射量に応じて燃料噴射開始クランク角度を設定するか、又は、燃料噴射量に関係なく吸気行程後半に燃料噴射開始クランク角度を設定する。)に噴射するようになっている。こうして、必要燃料量が多くなるほど、タンブル流Tがより強められることとなる。
もし必要ならば、必要燃料量が多い時には、一部の燃料を吸気行程中期又は初期に噴射して(複数回に分けて噴射しても良い)、吸気行程末期に噴射される燃料量を少なく調節し、タンブル流Tを強める程度を制御するようにしても良い。
本実施形態の筒内噴射式火花点火内燃機関は、気筒内へ直接的に噴射する燃料により均質燃焼を実施するものであるために、必要量の燃料を確実に気筒内へ供給することができ、吸気ポートへ燃料を噴射する場合のように吸気ポート壁面への燃料付着等を考慮して必要量以上の燃料を噴射しなくても良くなっている。
本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第一実施形態を示す吸気行程末期の概略縦断面図である。 本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第一実施形態を示す圧縮行程末期の概略縦断面図である。 クランク角度に対する熱発生率を示すグラフである。 本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第二実施形態を示す圧縮行程末期の概略縦断面図である。 本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の第三実施形態を示す圧縮行程後半の概略縦断面図である。 図4及び図5の筒内噴射式火花点火内燃機関のピストンの平面図である。
符号の説明
1 燃料噴射弁
2、2’ 点火プラグ
3 ピストン
4 もう一つの点火プラグ
T タンブル流
F 噴射燃料

Claims (5)

  1. 均質燃焼運転領域において、シリンダボア内の排気弁側を下降してシリンダボア内の吸気弁側を上昇するように気筒内を旋回するタンブル流が、燃料噴射弁により気筒内へ直接的に噴射された燃料によって強められる筒内噴射式火花点火内燃機関において、圧縮行程末期の均質燃焼点火時期においてシリンダヘッドとピストンとにより形成される気筒内隙間が、点火プラグ近傍の狭い第一部分と、前記第一部分より広い第二部分とを有することを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。
  2. 前記点火プラグは気筒上部略中心に配置され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの中央部により前記第一部分が形成され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの周囲部により前記第二部分が形成されることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
  3. 前記点火プラグは気筒上部の吸気弁側に配置され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの吸気弁側により前記第一部分が形成され、前記シリンダヘッド及び前記ピストンの排気弁側により前記第二部分が形成され、前記ピストンの排気弁側の頂面には、前記タンブル流の減衰を抑制するためのキャビティが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
  4. もう一つの点火プラグが気筒上部における前記燃料噴射弁より排気弁側に配置され、成層燃焼運転領域においては、前記燃料噴射弁により圧縮行程後半に噴射された燃料によって気筒内の一部に可燃混合気を形成して、前記もう一つの点火プラグにより前記可燃混合気を着火燃焼させることを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
  5. 前記キャビティは対称面に対して略対称であり、前記点火プラグは前記対称面近傍に位置し、前記ピストンの頂面の前記キャビティの点火プラグ側境界は前記点火プラグ側に凹形状とされることを特徴とする請求項3又は4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
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