JP2013113110A - ピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】 ピストン頭頂部にキャビティが形成されたピストンにおいて、キャビティの側縁部への応力集中を抑制する。
【解決手段】 ピストン頭頂部21の頂面27にキャビティ50が凹設された内燃機関2のピストン1であって、キャビティは、頂面の吸気ポート7に対応する側から排気ポート8に対応する側へと延在し、ピストン頭頂部の頂面と相反する裏面28であって、キャビティの排気ポートに対応する側の側縁部から排気ポートに対応する側に偏倚した部分に、頂面側へと窪み、ピストン頭頂部の肉厚を当該ピストンの軸線方向に薄くする第1凹部67を局部的に形成した。
【選択図】 図7

Description

本発明は、内燃機関のピストンに係り、詳しくは筒内噴射内燃機関において使用される頭頂部にキャビティを有するピストンに関する。
燃料噴射装置を用いて気筒内に直接に燃料を噴射する筒内噴射内燃機関(直噴内燃機関)において、ピストン頭頂部の頂面(冠面)にキャビティを凹設し、燃料をキャビティに向けて噴射することによって、ピストンの熱によって燃料を気化させると共に、キャビティの縁壁によって可燃混合気の進行方向をガイドし、点火プラグ近傍に導くようにしたピストンがある(例えば、特許文献1)。
特開2000−282871号公報
特許文献1に係るピストンでは、ピストン頭頂部の頂面と相反する裏面が平坦に形成され、頂面にキャビティが凹設されているため、キャビティが形成された部分は、ピストン頭頂部の他の部分に比べて肉厚が薄くなっている。また、キャビティの縁壁(側縁部)は、可燃混合気の進行方向を点火プラグ側へと変化させるべく、ピストンの軸線方向に沿って立ち上がっているため、肉厚が急激に変化している。そのため、ピストン頭頂部に爆発圧力が加わる際には、肉厚の変化が大きく、かつ薄肉となったキャビティの側縁内方部に応力が集中し易くなる。
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、ピストン頭頂部にキャビティが形成されたピストンにおいて、キャビティの側縁部への応力集中を抑制することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ピストン頭頂部(21)の頂面(27)にキャビティ(50)が凹設された内燃機関(2)のピストン(1)であって、前記キャビティは、前記頂面の吸気ポート(7)に対応する側から排気ポート(8)に対応する側へと延在し、前記ピストン頭頂部の前記頂面と相反する裏面(28)であって、前記キャビティの前記排気ポートに対応する側の側縁部から前記排気ポートに対応する側に偏倚した部分に、前記頂面側へと窪み、前記ピストン頭頂部の肉厚を当該ピストンの軸線方向に薄くする第1凹部(67)が局部的に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1凹部がキャビティ側縁外方の肉厚を薄くするため、キャビティ側縁内方の薄肉部への応力集中を緩和することができる。ピストン頭頂部にキャビティを凹設することによって、その側縁内方は薄肉となる一方で側縁外方は厚肉となり、側縁境界において肉厚が大きく変化することになる。そのため、爆発圧力がピストン頭頂部に加わる際には、キャビティ側縁内方の薄肉部に応力が集中し易くなる。しかし、第1凹部によって肉厚が薄い部分を形成することで、第1凹部にも応力が加わり易くなる、すなわち第1凹部へと応力が分散されるため、キャビティ側縁内方の薄肉部への応力集中を緩和することができる。
本発明の他の側面は、前記キャビティは、底面(52)と、前記底面の前記排気ポートに対応する側の側縁部に延設された縁壁(57)とを有し、前記第1凹部が、前記縁壁の側面よりも前記排気ポートに対応する側に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、キャビティの側縁の縁壁部分でピストン頭頂部の肉厚が大きく変化し、縁壁近傍の底面部分に応力集中が発生し易くなるため、縁壁の外方(吸気ポート側)に第1凹部を設けることで、縁壁近傍の底面部分への応力集中を緩和することができる。
本発明の他の側面は、前記底面は、平坦な面から構成され、前記縁壁は、前記キャビティの開口端に連続する平坦な側面を有する先端部(62)と、前記先端部と前記底面との間に設けられた少なくとも1つの平坦な側面を有する基端部(61)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、縁壁の先端部が平坦となっているため、キャビティに向けて噴射された燃料が縁壁において捕集され難く、キャビティへの未燃燃料やカーボンの滞留、付着を抑制することができる。
本発明の他の側面は、当該ピストンが前記内燃機関に組み付けられた状態において、前記縁壁の前記先端部は、水平面と平行、或いはその開口端側がその基端側よりも下方となるように水平面に対して傾斜して配置されることを特徴とする。
この構成によれば、キャビティ内に滞留した未燃燃料やカーボンは、重力によって縁壁を越えてキャビティ外へと離脱することができるため、キャビティへの未燃燃料やカーボンの滞留、付着を抑制することができる。
本発明の他の側面は、前記ピストン頭頂部の前記裏面であって、前記キャビティの前記排気ポートに対応する側の側縁部から前記吸気ポートに対応する側に偏倚した部分に、前記頂面側へと窪み、前記ピストン頭頂部の肉厚を当該ピストンの軸線方向に薄くする第2凹部(81)が局部的に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、爆発圧力がピストン頭頂部に加わる際に、応力集中が発生し易いキャビティ側縁内方の薄肉部を、第1凹部と共に挟むように第2凹部を形成したため、第2凹部へも応力が分散され、キャビティ側縁内方の薄肉部への応力集中を緩和することができる。
以上の構成によれば、ピストン頭頂部にキャビティが形成されたピストンにおいて、キャビティの側縁部への応力集中を抑制することができる。
ピストンが組み付けられたエンジンを示す断面図であって、ピストンが任意の第1位置にある状態を示す図 ピストンを排気側から見た側面図 ピストンを右方から見た側面図 図3のIV−IV断面図 ピストンの平面図 ピストン頭頂部を示す斜視図 図5のVII−VII断面図 図6のVIII−VIII断面図 ピストン頭頂部の肉厚を示すグラフ ピストンが組み付けられたエンジンを示す断面図であって、ピストンが任意の第2位置にある状態を示す図 ピストンが第1位置にあるときの燃料噴射状態を示す模式図 ピストンが第2位置にあるときの燃料噴射状態を示す模式図 変形実施形態に係るピストンを示す断面図
以下、図面を参照して、本発明を4バルブのガソリン直噴エンジンのピストンに適用した実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、ピストン1がエンジン2に組み付けられた状態を基準として各方向を定める。
図1に示すように、エンジン2は、シリンダブロック3と、シリンダブロック3の上端面に締結されたシリンダヘッド4とを有している。シリンダブロック3には、シリンダブロック3の上端面に開口する複数のシリンダ(気筒)5が列設されている。シリンダ5を基準として、シリンダ軸線方向を上下方向、シリンダ列方向を左右方向として定める。
シリンダヘッド4の下端面には、シリンダ5と連続する燃焼室凹部6が凹設されている。燃焼室凹部6は、略円錐面状に形成され、2つの吸気ポート7と、2つの排気ポート8とが開口している。燃焼室凹部6において、上下方向及び左右方向に直交する方向の一側に2つの吸気ポート7が配置され、他側に2つの排気ポート8が配置されている。上下方向及び左右方向に直交する方向の一側を吸気側、他側を排気側とする。2つの吸気ポート7は、燃焼室凹部6の吸気側部分において互いに左右対称となる位置に配置されており、2つの排気ポート8は、燃焼室凹部6の排気側部分において互いに左右対称となる位置に配置されている。吸気ポート7及び排気ポート8には、ポペットバルブである吸気バルブ及び排気バルブ(いずれも図示しない)が設けられている。
燃焼室凹部6の中央部には、シリンダヘッド4の上面へと貫通する点火プラグ孔11が形成され、点火プラグ孔11には、点火プラグ12が挿入されている。点火プラグ12は、その先端に設けられた接地電極13が点火プラグ孔11から下方に突出する形で配置されている。燃焼室凹部6の吸気側部分であって、2つの吸気ポート7の間の部分には、シリンダヘッド4の側面へと貫通する噴射ノズル孔14が形成されている。噴射ノズル孔14には、燃料噴射ノズル15が挿入されている。燃料噴射ノズル15は、その軸線が、上方から見てシリンダ5の径方向と一致し、かつ吸気側から排気側へと延在するようにシリンダヘッド4に配置されている。また、燃料噴射ノズル15は、その軸線が、左右方向から見て上下方向に対して傾斜し、シリンダ5内においてシリンダ5の軸線と交差するようにシリンダヘッド4に配置されている。
シリンダ5内には、ピストン1が上下動自在に配置されている。図1〜図5に示すように、ピストン1は、左右対称形をなし、円板状のピストン頭頂部(クラウン部)21と、ピストン頭頂部21の周縁部の吸気側部分及び排気側部分から下方へと突設された一対のスカート部22と、各スカート部22の対応する側縁同士を互いに連結する一対の連結壁部23とを有している。ピストン1の軸線であるピストン軸線Aは上下方向と一致している。
ピストン頭頂部21は、円板状の天板25と、天板25の周縁部から下方へと突出すると共に、周縁部に沿って延設された円筒壁26とを有している。天板25の上方を向く面を頂面27とし、頂面27と相反する下方を向く面を裏面28とする。円筒壁26の外周面には、周方向に延在する第1環状溝31、第2環状溝32及び第3環状溝33が上から順に形成されている。第3環状溝33の吸気側部分及び排気側部分のそれぞれには、第3環状溝33の底面と円筒壁26の内周面とを連通する第1オイル孔34が複数形成されている。また、第3環状溝33の左側部分及び右側部分のそれぞれには、第3環状溝33の底面と円筒壁26の下端面とを連通する第2オイル孔35が形成されている。第1環状溝31及び第2環状溝32にはコンプレッションリングが、第3環状溝33にはオイルリングが、それぞれ嵌め付けられる。
各スカート部22は、円筒壁26の吸気側部分及び排気側部分から下方へと突設されている。各スカート部22は、円筒壁26の下端に沿って周方向に延在し、その外面は円筒壁26の外周面に連続した円周面となっている。各スカート部22の外面には、オイル保持孔37が表面に形成された樹脂被膜38が形成されている。樹脂被膜38は、シリンダ5の内周面との摩擦抵抗を低減する機能を奏する。
各連結壁部23は、天板25の裏面28から下方に向けて突設されている。各連結壁部23は、各スカート部22の左端縁同士、右端縁同士を連結するように、吸気側から排気側へと延在し、互いに所定の距離をおいて平行となっている。各連結壁部23には、互いに同軸となるピストンボス39が形成されている。各ピストンボス39には、ピストン1をピストンロッド(図示しない)に回転可能に連結するピストンピン(図示しない)が挿入される。
図3及び図6〜図8に示すように、ピストン1の頂面27は、中央部(ピストン軸線A側)が周縁部に対して上方へと突出した形状に形成されている。中央部において、上方へと最も突出した部分である最突出部41は、左右方向に所定の範囲で延在している。
頂面27の吸気側部分の左側及び右側には、吸気バルブリセス42がそれぞれ凹設されている。吸気バルブリセス42は、吸気バルブが開く際に、吸気バルブとの干渉を避けるために形成された凹部である。各吸気バルブリセス42は、互いに左右対称形をなし、それぞれ略半円状に形成され、その弧の部分が頂面27の周縁側を向くように配置されている。各吸気バルブリセス42は、弧の部分が最も深く凹んでおり、ピストン軸線A側に進むにつれて深さが徐々に浅くなる傾斜面を形成している。各吸気バルブリセス42の弧の部分は、吸気側に位置する部分が最も深さが深く凹んでいる。
頂面27の排気側部分の左側及び右側には、排気バルブリセス43がそれぞれ凹設されている。排気バルブリセス43は、排気バルブが開く際に、排気バルブとの干渉を避けるために形成された凹部である。各排気バルブリセス43は、互いに左右対称形をなし、それぞれ略半円状に形成され、その弧の部分が頂面27の周縁側を向くように配置されている。各排気バルブリセス43は、弧の部分が最も深く凹んでおり、ピストン軸線A側に進むにつれて深さが徐々に浅くなる傾斜面を形成している。各排気バルブリセス43の弧の部分は、排気側に位置する部分が最も深さが深く凹んでいる。
本実施形態では、排気バルブリセス43は吸気バルブリセス42に比べて径が小さく形成されており、左右の排気バルブリセス43間の距離は、左右の吸気バルブリセス42間の距離よりも大きくなっている。
吸気バルブリセス42の弧部の排気側部分の外側には、上方へと突出する吸気側ガイド壁45が弧に沿って延設されている。また、排気バルブリセス43の弧部の外側には、上方へと突出する排気側ガイド壁46が弧部に沿って延設されている。吸気側ガイド壁45の排気側と、排気側ガイド壁46の吸気側とは、上方へと突出すると共に、ピストン1の周方向に延在する連結ガイド壁47によって連続している。各排気側ガイド壁46の互いに近接した端部同士は、左右方向に延在する排気側凸壁48によって連続している。
頂面27の吸気側部分であって、左右方向における中央部には、周縁部から中央部へと頂面27の径方向に延在するキャビティ50が凹設されている。キャビティ50は、ピストン軸線Aと直交する平面と概ね平行となる底面52を有している。図5に示すように、上方から見てキャビティ50の延在方向における中間部には、各吸気バルブリセス42の端部が食い込むように重なって配置されており、各吸気バルブリセス42が重なった部分は、底面52よりも深く凹んでいる。上述したように、頂面27は中央部(ピストン軸線A側)が上方へと突出しているため、図7に示すようにキャビティ50は中央部側へ進むほど頂面27の外形からの深さが深くなっている。
図5に示すように、キャビティ50の吸気側部分(吸気バルブリセス42が重なった部分よりも吸気側)53は、上方から見て底面52が扇形を呈し、弧の部分が頂面27の周縁近傍まで延在している。吸気側部分53の弧の部分には、底面52から上方へと延びる吸気側壁54が延設されている。
キャビティ50の排気側部分(吸気バルブリセス42が重なった部分よりも排気側)56は、底面52が略長方形を呈し、その排気側の側辺が左右方向と平行に延在するように配置されている。排気側部分56の縁部には、左右方向に延在する排気側縁壁57と、排気側縁壁57の左右側部に連続し、吸気側へと延在する左側縁壁58及び右側縁壁59とが設けられている。各縁壁57〜59は、それぞれキャビティ50の開口端(上端)側が広がるように、上下方向に対して傾斜している。すなわち、排気側縁壁57は上方へと進むにつれて排気側に進むように傾斜し、左側縁壁58は上方へと進むにつれて左側に進むように傾斜し、右側縁壁59は上方へと進むにつれて右側に進むように傾斜している。左側縁壁58及び右側縁壁59は、吸気側に進むにつれて上下方向における高さが低くなっている。これにより、キャビティ50の排気側部分56の開口端部は、排気側に進むほど左右方向に幅が広がった形状となっている。
図7に示すように、排気側縁壁57は、底面52に連続する基端側面61と、基端側面61の上端に連続すると共に頂面27の最突出部41に連続する先端側面62とを有している。基端側面61及び先端側面62は、平坦な平面である。底面52と基端側面61とは曲面部を介して滑らかに連続し、基端側面61と先端側面62とは曲面部を介して滑らかに連続している。基端側面61の底面52に対する角度をθ1とし、先端側面62の底面52に対する角度をθ2とすると、θ2>θ1となっている。また、θ2<90であることが好ましい。先端側面62は、ピストン1がエンジン2に組み付けられ、エンジン2が車体に組み付けられた状態において、水平面と平行、或いは開口端側が基端側よりも下方となるように水平面に対して傾斜して配置されている。
排気側縁壁57と左右の縁壁58、59とは、滑らかな曲面64を介して、角稜を形成しないように連続している。頂面27の周縁部であって、吸気側ガイド壁45、排気側ガイド壁46、連結ガイド壁47、排気側凸壁48及びキャビティ50の吸気側部分53の径方向外方側には、ピストン軸線Aと直交する平面に形成された環状平面部65が形成されている。図3及び図7に示すように、頂面27の中央部(最突出部41)は、環状平面部65よりも上方に突出している。頂面27の最突出部41から排気側の部分は、最突出部41から排気側凸壁48の基部及び排気バルブリセス43へとかけて滑らかな面を形成している。頂面27の最突出部41から排気側の部分を滑らかな面とすることによって、タンブル流を阻害しないようにしている。
図7に示すように、天板25の裏面28は、概ね頂面27の外形(プロフィール)に沿うように形成されており、排気側の部分は、キャビティ50が頂面27側に配置された吸気側の部分よりも上方へと凹んだ形状となっている。すなわち、キャビティ50が形成されていない部分の肉厚が、キャビティ50が形成された部分と比べて厚くならないようになっている。また、裏面28の排気側縁壁57よりも排気側に偏倚した部分(最突出部41に対応する部分)には、上方へと窪んだ第1凹部67が局部的に形成されている。天板25は、第1凹部67が形成された部分において、上下方向における肉厚が他の部分に比べて局部的に薄くなっている。図4に示すように、第1凹部67は、左右の連結壁部23の間において左右方向に延在して形成されている。
図9は、天板25の吸気側から排気側にかけての上下方向(ピストン軸線A方向)における肉厚を示している。天板25の肉厚は、中央部、すなわち排気側縁壁57が配置された部分において最も厚く、中央部の吸気側部分はキャビティ50の存在によって薄肉となっており、中央部の排気側部分は第1凹部67によって薄肉となっている。天板25の第1凹部67よりも排気側の部分は、第1凹部67が配置された部分よりも肉厚が大きくなり、その後排気側に進むにつれて肉厚が概ね一定となっている。
以上のように構成したピストン1の作用効果について説明する。通常、ピストン頭頂部21にキャビティ50を形成すると、キャビティ50が設けられた部分の肉厚が薄くなり、キャビティ50の縁壁57〜59が設けられた部分で肉厚が急激に厚くなるため、キャビティ50の底面52の縁壁57〜59近傍の部分に、爆発圧力を受けた際の応力が集中し易くなる。本実施形態に係るピストン1では、天板25において上下方向の肉厚が厚くなる排気側縁壁57よりも排気側の裏面28に第1凹部67を形成して肉厚を局部的に薄くしたため、爆発圧力が頂面27に加わる際に、第1凹部67に応力が加わり易くなり、キャビティ50の底面52の排気側縁壁57近傍に応力が集中し難くなる。すなわち、第1凹部67に応力を分散させることによって、底面52の排気側縁壁57近傍への応力集中を抑制する。天板25の裏面28には、一対の連結壁部23が吸気側から排気側へと互いに平行となるように延設されているため、これらの連結壁部23間の部分に第1凹部67を設けることで天板25の肉厚を効果的に薄くすることができる。
また、ピストン1では、排気側縁壁57の基端側面61及び先端側面62が平坦面から形成されているため、燃料噴射ノズル15から噴射される燃料が付着、滞留し難くなっている。また、ピストン1がエンジン2に組み付けられ、エンジン2が車体に組み付けられた状態において、先端側面62が水平面と平行、或いは開口端側が基端側よりも下方となるように水平面に対して傾斜して配置されているため、排気側縁壁57は下方に向けて凹んだ凹部を形成しない。そのため、底面52及び排気側縁壁57に付着した未燃燃料やカーボンは、キャビティ50から排気側へ重力によって離脱することができる。これにより、頂面27上のカーボンデポジット量が抑制され、燃焼が安定な状態に維持される。
図1は、ピストンが所定の第1位置に位置する状態を示し、図10は、図1の状態からピストン1が上死点側に移動した第2位置に位置する状態を示す。図1及び図10は、圧縮行程における燃料噴射期間中のピストン1の移動を示している。図11は、図1に示すピストン位置での燃料の噴射状態を示し、図12は、図10に示すピストン位置での燃料の噴射状態を示している。
図1及び図11に示すように、燃料噴射ノズル15の先端は、概ねキャビティ50の排気側縁壁57の方を向いている。キャビティ50の左側縁壁58及び右側縁壁59、曲面64は、キャビティ50内に噴射される燃料流であって左右側に傾斜した燃料流71を左右方向において中央側(ピストン軸線A側)である排気側縁壁57へと導くように設定されている。排気側縁壁57は、排気側縁壁57へと導かれた燃料流71、72を上方の点火プラグ12の接地電極13側に導くように設定されている。排気側凸壁48は、燃料噴射ノズル15から噴射される燃料のうち、ピストン軸線A側へと噴射され、排気側縁壁57の上方を越える燃料流73を上方へと導き、燃料流73をシリンダ5の内壁に直接に接触させないように設定されている。吸気側ガイド壁45、連結ガイド壁47及び排気側ガイド壁46は、燃料噴射ノズル15から噴射される燃料のうち、キャビティ50の左右外方であって、吸気バルブリセス42上に噴射された燃料流74を左右方向における中央側かつ排気側の上方へと導き、燃料流74をシリンダ5の内壁に直接に接触させないように設定されている。
図10及び図12に示すように、ピストン1が第2位置にある場合には、第1位置においてはキャビティ50内に進入しなかった燃料流73が排気側縁壁57へと噴射される。そして、燃料流74は、排気側縁壁57によって、上方の点火プラグ12の接地電極13側に導かれる。また、燃料流74がキャビティ50の底面52の吸気側部分53に噴射され、吸気バルブリセス42へと導かれる。燃料流74は、第1位置の場合と同様に、吸気側ガイド壁45、連結ガイド壁47及び排気側ガイド壁46によって、左右方向における中央側かつ排気側の上方へと導かれる。燃料流71、72は、第1位置の場合と同様である。
図13に、上記実施形態を一部変形実施したピストン80を示す。ピストン80は、第2凹部81を有する点のみが上記実施形態のピストン1と相違し、他の構成は同様である。排気側縁壁57よりも吸気側に偏倚した部分に対応する天板25の裏面28には、上方へと窪んだ第2凹部81が局部的に形成されている。天板25は、第2凹部81が形成された部分において、上下方向における肉厚が他の部分に比べて局部的に薄くなっている。図4に示すように、第2凹部81は、左右の連結壁部23の間において左右方向に延在して形成されている。
第2凹部81を形成し、排気側縁壁57より吸気側の部分を薄肉にしたことによって、爆発圧力が頂面27に加わる際に、第1凹部67に加えて第2凹部81にも応力が分散され、キャビティ50の底面52の排気側縁壁57近傍への応力集中が抑制される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第1凹部67及び第2凹部81の大きさ、深さ、形状及び曲率は、ピストン頂部の剛性を調整するべく、適宜変更してよい。実施形態では、排気側縁壁57の基端側面61を1つの平面から構成したが、2つ以上の平面からなる多段階の傾斜面としてもよい。
1、80…ピストン、2…エンジン、4…シリンダヘッド、5…シリンダ、21…ピストン頭頂部、22…スカート部、23…連結壁部、25…天板、27…頂面、28…裏面、41…最突出部、42…吸気バルブリセス、43…排気バルブリセス、45…吸気側ガイド壁、46…排気側ガイド壁、47…連結ガイド壁、48…排気側凸壁、50…キャビティ、52…底面、53…吸気側部分、56…排気側部分、57…排気側縁壁、58…左側縁壁、59…右側縁壁、61…基端側面、62…先端側面、64…曲面、67…第1凹部、81…第2凹部、A…ピストン軸線

Claims (5)

  1. ピストン頭頂部の頂面にキャビティが凹設された内燃機関のピストンであって、
    前記キャビティは、前記頂面の吸気ポートに対応する側から排気ポートに対応する側へと延在し、
    前記ピストン頭頂部の前記頂面と相反する裏面であって、前記キャビティの前記排気ポートに対応する側の側縁部から前記排気ポートに対応する側に偏倚した部分に、前記頂面側へと窪み、前記ピストン頭頂部の肉厚を当該ピストンの軸線方向に薄くする第1凹部が局部的に形成されていることを特徴とするピストン。
  2. 前記キャビティは、底面と、前記底面の前記排気ポートに対応する側の側縁部に延設された縁壁とを有し、
    前記第1凹部が、前記縁壁の側面よりも前記排気ポート側に対応する側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピストン。
  3. 前記底面は、平坦な面から構成され、
    前記縁壁は、前記キャビティの開口端に連続する平坦な側面を有する先端部と、前記先端部と前記底面との間に設けられた少なくとも1つの平坦な側面を有する基端部とを有することを特徴とする請求項2に記載のピストン。
  4. 当該ピストンが前記内燃機関に組み付けられた状態において、前記縁壁の前記先端部は、水平面と平行、或いはその開口端側がその基端側よりも下方となるように水平面に対して傾斜して配置されることを特徴とする請求項3に記載のピストン。
  5. 前記ピストン頭頂部の前記裏面であって、前記キャビティの前記排気ポートに対応する側の側縁部から前記吸気ポートに対応する側に偏倚した部分に、前記頂面側へと窪み、前記ピストン頭頂部の肉厚を当該ピストンの軸線方向に薄くする第2凹部が局部的に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載のピストン。
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