JP2007326808A - 口腔衛生用可食性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】唾液分泌促進能を有し、虫歯菌等の増殖を抑制し、口溶けが良好で、これにより摂食が非常にたやすく、嗜好性に優れた口腔衛生用可食性フィルムを提供すること。
【解決手段】γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種と水溶性高分子から可食性フィルムを形成し、このフィルムに、有機酸及び/又はその塩と、リゾチームを含有させることにより、若年層から高齢者層までの広い層の使用に適合し、唾液分泌促進能を有し、口溶けが良好で、これにより摂食が非常にたやすく、かつ、虫歯菌等の増殖を抑制することにより口腔内の雑菌の生育を防止して、口腔内を衛生環境に維持し、しかも嗜好性にも優れた、口腔衛生用可食性フィルムを形成することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、唾液分泌促進能を有し、虫歯菌の増殖を抑制し、口溶けが良好で、これにより摂食が非常にたやすく、嗜好性に優れた口腔衛生用可食性フィルムに関する。
唾液には、口の乾燥を防ぐだけではなく、その中には、リゾチーム、ラクトペルオキシダ−ゼ、ラクトフェリン、分泌型免疫グロブリンAといった抗菌物質が存在し、雑菌の増殖を防ぎ、口腔内を衛生的に保つ働きがある。もし、何かの原因で唾液分泌が低下すると口腔内の細菌が増え、口臭の原因になったり、ミュータンス菌の増加により虫歯の原因になる。更に、抵抗力が低下している人や高齢者が、誤って肺に唾液を吸引した場合には、唾液中の細菌による肺炎の発症等の懸念材料ともなりうる。また、近年、若い年齢層でもドライマウスと呼ばれる、いわゆる唾液の分泌不足の人が増えてきており、社会的な問題ともなり、改善法が切望されている。口腔内の乾燥に対する治療としては、ゼリー状の保湿効果を有する軟膏を口腔内に塗るなどの方法があるが、根本的に唾液分泌を促進するものではない。
唾液分泌を促進しドライマウスを軽減する方法としては、昆布や梅干を舐める等が一般的に行われているが、「手軽さ」「携帯性」「嗜好性」等に限界があるのは否めない。有機酸を「唾液分泌作用を有する成分」とし、これを含有したチューインガム、ブレスフィルム、練り歯磨きまたは、トローチ剤が知られている。もともと、唾液の分泌量の少ない人がトローチを舐めることやチューインガムを噛むのは容易ではない。またブレスフィルムは、手ごろに摂食することは容易ではあるが、従来のものでは溶解性が充分ではなく高齢者が摂食するには問題がある。
昨今、ポリグルタミン酸又はその塩を、唾液分泌促進剤として用いる方法が開示されている(WO2005/049050A1)。このものは、γ−ポリグルタミン酸、或いは、水溶性にしたγ−ポリグルタミン酸塩を、口腔用組成物として使用するもので、該口腔用組成物としては、粘稠剤等を用いて、ペースト状組成物としたり、粘結剤等を用いて錠剤としたり、或いはチューインガムやキャンディーのような食品組成物に配合して用いるものが示されている。γ−ポリグルタミン酸は、納豆菌が生産する高分子で、納豆の「粘り」の主成分であり、上記のような、唾液分泌促進作用の効果の他に、保湿効果が知られており、湿潤剤として用いることが知られている(特開昭59−209635号公報)。また、ポリグルタミン酸、或いは、その塩を、医薬品や、食品等に用いる可食性カプセルを製造するための素材として用いることが知られている(WO03/049771A1)。
一方で、近年、口腔内の清涼感や芳香、或いは口腔内における抗菌のために、口腔内に用いる可食性フィルムが各種知られている。例えば、特開平5−236885号公報には、カラギーナン、ペクチン、プルラン等の多糖類と、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の多糖類と、香料、甘味料、酸味料等からなるフィルムを、口臭予防、気分転換のための芳香清涼食品として用いることが、特表2002−525306号公報には、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロースのような水溶性ポリマーと抗菌有効量のエッセンシャルオイルからなる可食性フィルムを、歯苔、歯肉炎及び口臭を起こす苔生成微生物を死滅させる口腔用消耗性フィルムとして用いることが、特開2002−330708号公報には、生薬、生薬エキスのような抗菌活性を有する可食成分と、ヒドロキシプロピル化デンプンのような可食性フィルム形成性有機高分子成分とからなる可食性フィルムを、口内清掃剤等に用いることが開示されている。
また、特開2003−213038号公報には、ヒドロキシアルキル化デンプン、コハク酸デンプン等の化工デンプンを含有するデンプン成分と、口腔用の活性剤、可塑剤等からなる急速に溶解又は崩壊するフィルムを、口腔フィルム等に用いることが、特開2004−222663号公報には、フィルム表面又は内部に、酸味料、アミノ酸、ビタミン類などのサプリメント成分を含む、水溶性ポリマーを含むフィルムを、口腔内用可食性フィルムに用いることが、特開2005−21124号公報には、食品素材等を配合してなる、α−化デンプンやプルラン、酵素変性デンプン及び可塑剤等からなるフィルムを、口腔用フィルム製剤に用いることが、特表2006−515332号公報には、低粘度のセルロース系フィルム形成剤と高粘度セルロース系フィルム形成剤とを含むフィルムを、口腔状態を治療するための口腔内用食用フィルムとして用いることが開示されている。
上記のように、近年、口腔内等に用いる可食性フィルムは、各種のものが知られている。該可溶性フィルムは、一般に、皮膜形成剤、可塑剤などを水に溶解し、膜状に広げ、乾燥後、適当な大きさにカット後容器に入れて製品化されているもので、口中清涼、サプリメント或いは口内の抗菌等の目的で用いられるものである。しかし、従来、各種の口腔内用可食性フィルム組成物が開発されていても、若年層から高齢者層までの広い層の使用に適合し、しかも、嗜好性に優れ、口腔内の清涼感や芳香、或いは口腔内における抗菌機能を発揮して、安全で、効果的に口内の衛生を保つ口腔衛生可食性フィルムは開発されていない。
特開昭59−209635号公報。 特開平5−236885号公報。 特表2002−525306号公報。 特開2002−330708号公報。 特開2003−213038号公報。 特開2004−222663号公報。 特開2005−21124号公報。 特表2006−515332号公報。 WO03/049771A1。 WO2005/049050A1。
本発明の課題は、若年層から高齢者層までの広い層の使用に適合し、唾液分泌促進能を有し、虫歯菌等の増殖を抑制し、口溶けが良好で、これにより摂食が非常にたやすく、嗜好性に優れた口腔衛生用可食性フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種と水溶性高分子から可食性フィルムを形成し、このフィルムに、有機酸及び/又はその塩と、リゾチームを含有させることにより、若年層から高齢者層までの広い層の使用に適合し、唾液分泌促進能を有し、口溶けが良好で、これにより摂食が非常にたやすく、かつ、虫歯菌等の増殖を抑制することにより口腔内の雑菌の生育を防止して、口腔内を衛生環境に維持し、しかも嗜好性にも優れた、口腔衛生用可食性フィルムを形成することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による口腔衛生用可食性フィルムは、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩を含有することから口溶けに優れ、水なしでも口腔内でスムーズに溶け、若年層から高齢者層まで無理なく摂取することができる。また、有機酸の唾液分泌促進効果により、ドライマウスを防ぎ、更に、これにリゾチームを添加することにより、口腔内における抗菌機能を発揮して、虫歯菌(Streptococcus mutans)等の口腔内の雑菌の生育を抑制させ、口腔内の衛生環境を維持し、安全で、効果的に口内の衛生を保つ。また、本発明による口腔衛生用可食性フィルムは、有機酸のさわやかな香味により、口腔内の清涼感や芳香を維持することができ、嗜好性にも優れた、口腔衛生用可食性フィルムを提供することができる。
本発明の口腔衛生用可食性フィルムにおいて、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩は、水溶性高分子100重量部(乾物換算)あたり、3〜25重量部(乾物換算)含まれることが好ましく、有機酸及び/又はその塩の含有量は、可食性フィルム当たり、0.5〜6重量%(乾物換算)であることが好ましい。また、リゾチームの含有量は、可食性フィルム当たり、1〜10重量%(乾物換算)であることが好ましい。
本発明において、口腔衛生用可食性フィルムの形成に用いられる水溶性高分子としては、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種の水溶性高分子を用いることができ、該水溶性高分子としては、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプンの酸化低分子化物、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、難消化性デキストリン、カラギーナン、プルラン、ゼラチン、からなる群より選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。特に、好ましい水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンのようなエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物のようなエーテル化デンプンの酸化低分子化物を挙げることができる。
本発明において、口腔衛生用可食性フィルムに含有させる有機酸としては、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなる群より選ばれた少なくとも一種であることが、好ましい。本発明において、可溶性フィルムの厚さは、20μm〜200μmであることが好ましい。
すなわち具体的には本発明は、(1)γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種と水溶性高分子から形成されるフィルムに、有機酸及び/又はその塩と、リゾチームを含有させた口腔衛生用可食性フィルムや、(2)γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩が、水溶性高分子100重量部(乾物換算)あたり、3〜25重量部(乾物換算)含まれることを特徴とする上記(1)記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(3)水溶性高分子が、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(4)水溶性高分子が、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプンの酸化低分子化物、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、難消化性デキストリン、カラギーナン、プルラン、ゼラチン、からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(3)記載の口腔衛生用可食性フィルムからなる。
また本発明は、(5)水溶性高分子としてのエーテル化デンプンがヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンであり、エーテル化デンプンの酸化低分子化物がヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物であることを特徴とする上記(4)記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(6)有機酸が、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(7)有機酸及び/又はその塩の含有量が、可食性フィルム当たり、0.5〜6重量%(乾物換算)であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(8)リゾチームの含有量が、可食性フィルム当たり、1〜10重量%(乾物換算)であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルムや、(9)可溶性フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルムからなる。
本発明により、口溶けに優れ、水なしでも口腔内でスムーズに溶け、若年層から高齢者層まで無理なく摂取することができる口腔衛生用可食性フィルムを提供することができ、本発明の口腔衛生用可食性フィルムの唾液分泌促進効果により、ドライマウスを防ぎ、更に、該フィルムの口腔内における抗菌機能により、虫歯菌(Streptococcus mutans)等の口腔内の雑菌の生育を抑制させ、口腔内の衛生環境を、安全で、効果的に保つことができる。また、本発明による口腔衛生用可食性フィルムは、有機酸のさわやかな香味により、口腔内の清涼感や芳香を維持することができ、本発明により、嗜好性にも優れた、口腔衛生用可食性フィルムを提供することができる。本発明の口腔衛生用可食性フィルムは、口どけに優れたフィルムであり、唾液分泌や口腔内の細菌の生育抑制効果のある有機酸やリゾチームの口腔内でのリリースがスムーズであるので、いろいろな場面で手軽に摂取することができる。更に、これらのフィルムは、軽く、持ち運びが容易で、例えばコンパクトなプラスチック容器等に入れて、容易に携帯することができる。
本発明の口腔衛生用可食性フィルムは、(1)γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種と水溶性高分子から形成される基本可溶性フィルムに、(2)有機酸及び/又はその塩と、(3)リゾチームを含有させた口腔衛生用可食性フィルムからなる。
(γ−ポリグルタミン酸含有可溶性フィルム)
本発明に使用する可溶性フィルムは、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩と水溶性高分子とを含有してなるフィルムで、場合によっては可塑剤を含有し、更に任意成分として、例えば、香料、ビタミン、ハーブ抽出物、無機質、等の成分を含有させてフィルム又は、シート状に加工したものである。γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩は、水溶性高分子100部(乾物換算)に対し、おおむね3〜25部(乾物換算)が好ましい。3部以下では、溶解性が充分ではなく、25部以上では、耐湿性に乏しくなる傾向にある。
(γ−ポリグルタミン酸)
本発明においてフィルムの形成に用いられるγ−ポリグルタミン酸は、グルタミン酸がγ結合により結合したもので、分子量は100万程度であり、発酵法により生産される。構成要素のグルタミン酸は、D体とL体の混合物が一般的である。D体のみを主成分としたγ−ポリグルタミン酸も使用可能である。また、その塩として、Na、K、Ca、Mg、アミン等の塩やFe、Al等が結合したγ−ポリグルタミン酸塩も含む。
本発明においてフィルムの形成に用いられる水溶性高分子としては、ゼラチン、カラギーナン、微小繊維状セルロース、ローカストビーンガム、加工デンプン、デキストリン、難消化性デキストリン、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸及びその塩、寒天、高アミローデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、ペクチン、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質、乳漿タンパク質、カゼインなどが挙げられ、該水溶性高分子及びそれらの混合物等からなる群から選択したものを用いることができる。好ましい水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンの酸化処理による低分子化物、デキストリン、難消化性デキストリン、セルロース類等が挙げられる。
(可塑剤)
本発明の口腔衛生用可食性フィルムにおいては、該フィルムの形成に、任意成分として、可塑剤を用いることができる。本発明における可塑剤は、フィルムを軟化させる機能を有するもので、例えば、グリセリン、糖アルコール、単糖類、オリゴ糖などの一種又は二種以上を使用することができる。
(有機酸)
本発明の口腔衛生用可食性フィルムにおいて含有させる有機酸及び/又はその塩は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸等から選ばれる。また、その塩としては、Na、K、Ca、Mg、アミン等の塩やFe、Al等が結合したキレート物質も含む。有機酸及び/又はその塩の含有量は、0.5〜6重量%(乾物換算)が望ましい。0.5重量%以下では、唾液分泌能が充分ではなく、6重量%以上では、酸味が出すぎるか、フィルムがもろくなくなる傾向にある。
(リゾチーム)
本発明において、使用するリゾチームとしては、一般に使用できる塩化リゾチーム、卵白リゾチームが使用できる。食品レベルでは、卵白リゾチームを使うのが好ましい。リゾチームの添加量は、フィルム中に、1〜10重量%(乾物換算)が望ましい。
(任意配合成分)
本発明の口腔衛生用可食性フィルムにおいては、必須成分である、γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩、水溶性高分子、有機酸及び/又はその塩、及びリゾチーム以外に、任意添加成分として、必要に応じて栄養剤、各種植物エキス、ハーブ成分、ビタミン類、ミネラル類、海洋深層水由来成分、抗菌剤、抗炎症剤、抗う触剤、口臭防止剤、抗アレルギー剤、鎮咳剤、カテキン、ポリフェノール、酵素類、香料、染料、乳化剤、風味剤、芳香剤、着色剤、油脂、などを適時配合することができる。
(フィルムの調製)
本発明の可食性フィルムは、(A)γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩を含有し、水溶性高分子及び必要により可塑剤からなる可溶性フィルム基材に、(B)有機酸及び/又はその塩、及び(C)リゾチームを含有させ、必要に応じてその他の任意成分を含有させ、常法により、フィルム形状に調製したものである。例えば、(1)原液の調整、(2)塗工、(3)乾燥、(4)熟成、(5)カットの工程により、容易に調製することができる。以下に、これらの工程について、説明する。
(1)原液の調整:γ−ポリグルタミン酸と水溶性高分子を、室温で1.5〜6.5倍量程度の水に分散させた後、必要に応じて、加熱し水溶性高分子を溶解・懸濁する。これに有機酸及びリゾチーム、さらに、必要に応じて、可塑剤、上記任意成分を溶解又は分散して、原液を得る。
(2)塗工:上記原液の温度を50〜60℃に保ちつつ、粘度が2,000〜5,000mPa・s程度になるように固形分濃度を調整してから(通常12〜45重量%程度)、アプリケーターを使って、合成樹脂シート上に、膜厚を調整して塗工する。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエステル樹脂系シート等を使用することができる。
(3)乾燥:70〜110℃程度の熱風で乾燥し、乾燥フィルムを得る。乾燥したフィルムの厚さは、通常、20μm〜200μm程度とするのが、耐乾燥性、触感、水溶解性等の点から適当である。また、フィルムの水分含量は、通常、5〜15重量%程度とするのが、触感、保存性等の点から適当である。
(4)熟成:得られたフィルムを、温度25℃、相対湿度45%の調湿した部屋に、24時間静置して、フィルムの水分含量等を安定化する。
(5)カット:熟成したフィルムを、合成樹脂シートから剥離し、適宜、カットして、製品化する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[材料及び評価]
実施例の各例におけるフィルムは、前記調製方法に従って、縦3.3cm、横2.3cm、厚さ40μmのフィルムを調製した。得られたフィルムの口どけ性、唾液分泌性、溶菌性及び耐湿性(耐ブロッキング性)などの各性能試験は、次の方法により行った。
(口どけ性):フィルム1枚を、舌の上にのせ、溶かしたとき、どの程度スムーズに溶けるかを、試験群内で相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
(唾液分泌性):フィルム1枚を、舌の上にのせ、溶かし、唾液分泌性を試験群内で相対評価した。評点の大きい方が優れていることを表す。
(溶菌効果):フィルム2枚をイオン交換水2mLに溶かし、その溶液0.15mLとMicrococcus lysodeikticus懸濁液(0.015W/V%)0.1mLを混合し、グラム陽性菌である Micrococcus lysodeikticusに対する溶菌効果を肉眼評価した。
(耐湿性:耐ブロッキング性):フィルム24枚をケースに入れ、30℃、相対湿度75%で、3日間保存し、フィルム同士のくっつき(ブロッキング)を観察した。得点の大きいものが耐ブロッキング性に優れていることを表す。
[実施例1]
水溶性高分子として加工デンプン、カラギーナンを、可塑剤としてグリセリンを使い、γ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約50万〜200万:純度71%、水分2.7%)を添加し常法により、可溶性フィルムを調製し、口溶け性、耐ブロッキング性、を評価をした。フィルム組成、及び結果を表1に示す。参考例として、γ−ポリグルタミン酸Naの代わりにソルビトールを添加したものを調製し比較した。加工デンプンとしてヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s:水分12%)、ヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物(20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)500mPa・s:水分14%)使用した。κ−カラギーナン(水分:5%)はCPケルコ社製のものを使用した。最終水分含量10重量%、厚さ40μmのフィルムを調製し、性能試験に供した。また、表中の数値は、重量部を示す。
Figure 2007326808
表1に示される通り、口どけについては、No.4〜7のフィルムで、すべて効果が見られた。ただし、γ−ポリグルタミン酸を多く入れると耐ブロッキング性が低下する傾向にある。
[実施例2]
水溶性高分子として加工デンプン、カラギーナンを、可塑剤としてグリセリンを使い、γ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約50万〜200万:純度71%、水分2.7%)、各種有機酸を添加し、常法により、可溶性フィルムを調製し、口溶け性、唾液分泌性、耐ブロッキング性、を評価をした。フィルム組成は、及び結果を表2に示す。加工デンプンとしてヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s:水分12%)、ヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物(20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)500mPa・s:水分14%)使用した。κ−カラギーナン(水分5%)はCPケルコ社製のものを使用した。最終水分含量10重量%、厚さ40μmのフィルムを調製し、性能試験に供した。また、表中の数値は、重量部を示す。
Figure 2007326808
有機酸の添加により、唾液分泌性が優れてくるが、最終フィルムの5%以上になると耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
[実施例3]
水溶性高分子として加工デンプン、カラギーナンを、可塑剤としてグリセリンを使い、更にγ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約50万〜200万:純度71%、水分2.7%)、各種有機酸及び卵白リゾチームを添加し、常法により、可溶性フィルムを調製し、口どけ性、唾液分泌性、溶菌性、耐ブロッキング性、を評価をした。フィルム組成は、及び結果を表3に示す。加工デンプンとしてヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s:水分12%)、ヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物(20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)500mPa・s:水分14%)を使用した。κ−カラギーナン(水分5%)は、CPケルコ社製のものを使用した。また、卵白リゾチームは、太陽化学社製ものを使用した。最終水分含量10重量%、厚さ40μmのフィルムを調製し、性能試験に供した。また、表中の数値は、重量部を示す。
Figure 2007326808
表3に示すように卵白リゾチームの添加により、グラム陽性菌の溶菌性は上がってくるが、入れすぎると、割れやすくなる傾向にある。
[実施例4]
水溶性高分子としてプルラン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCと略す)及びゼラチンを使用し、γ−ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約50万〜200万:純度71%、水分2.7%)、各種有機酸及び卵白リゾチームを添加し、常法により、可溶性フィルムを調製し、口どけ性、唾液分泌性、溶菌性、耐ブロッキング性、を評価をした。フィルム組成及び結果を表4に示す。なおプルランは、林原社製のものを、HPCは、ハーキュリーズ社製のものを、ゼラチンは新田ゼラチン社製のものを、κ−カラギーナンは、CPケルコ社製のものを使用した。最終水分含量10重量%、厚さ40μmのフィルムを調製し、性能試験に供した。また、表中の数値は、重量部を示す。
Figure 2007326808
水溶性高分子として、プルラン、HPC、ゼラチンを使った場合、実施例3とほぼ同様な傾向が見られた。

Claims (9)

  1. γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩からなる群より選ばれた少なくとも一種と水溶性高分子から形成されるフィルムに、有機酸及び/又はその塩と、リゾチームを含有させた口腔衛生用可食性フィルム。
  2. γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩が、水溶性高分子100重量部(乾物換算)あたり、3〜25重量部(乾物換算)含まれることを特徴とする請求項1記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  3. 水溶性高分子が、デンプン類、加工デンプン類、多糖類、蛋白質、ペプチド、セルロース誘導体、及び合成高分子からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  4. 水溶性高分子が、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプンの酸化低分子化物、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、難消化性デキストリン、カラギーナン、プルラン、ゼラチン、からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項3記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  5. 水溶性高分子としてのエーテル化デンプンがヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンであり、エーテル化デンプンの酸化低分子化物がヒドロキシプロピル化タピオカデンプンの酸化物であることを特徴とする請求項4記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  6. 有機酸が、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、及び乳酸からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  7. 有機酸及び/又はその塩の含有量が、可食性フィルム当たり、0.5〜6重量%(乾物換算)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  8. リゾチームの含有量が、可食性フィルム当たり、1〜10重量%(乾物換算)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルム。
  9. 可溶性フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の口腔衛生用可食性フィルム。
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