JP2007318912A - 電気接続構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】スライドシート下のスペースを有効活用することができる電気接続構造を提供する。
【解決手段】電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置の余長吸収機構40のケース44は、ワイヤハーネス30の中間部が延出する開口部43を有する。この中間部を内部空間47において係止固定する係止部材45は、孔部46及び開口部43の近傍に配置されている。ケース44は、中間部とともにバネ41及び円形ガイド42を収納する。ワイヤハーネス30は、係止部材45からバネ41及び円形ガイド42を囲むように巻回された状態で開口部43から外部に延出自在に配される。バネ41は、直線状から円弧状に弾性変形し、ワイヤハーネス30をケース44の内壁面44b側に押圧するように付勢されている。
【選択図】図2
【解決手段】電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置の余長吸収機構40のケース44は、ワイヤハーネス30の中間部が延出する開口部43を有する。この中間部を内部空間47において係止固定する係止部材45は、孔部46及び開口部43の近傍に配置されている。ケース44は、中間部とともにバネ41及び円形ガイド42を収納する。ワイヤハーネス30は、係止部材45からバネ41及び円形ガイド42を囲むように巻回された状態で開口部43から外部に延出自在に配される。バネ41は、直線状から円弧状に弾性変形し、ワイヤハーネス30をケース44の内壁面44b側に押圧するように付勢されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、車体本体側とスライドシートに搭載された各種の電装部品側とを電気的に接続する電気接続構造に関する。
従来より、例えば車体側に設置された電源装置と、スライドシートに設置された背もたれ部などのリクライニング調整を行うモータなどの電装部品とを電気的に接続する電気接続構造を実現するスライドシート用給電装置が知られている。このようなスライドシート用給電装置は、主に電源装置に接続された固定部とスライドシートに接続された可動部とが、保護部材によって覆われたワイヤハーネスにより接続された構造からなり、例えば次のように構成されている。
すなわち、従来のスライドシート用給電装置は、フロア側の固定部とスライドシート下面側の支持部との間にワイヤハーネスを配設し、スライドシートのスライド移動に伴って移動するワイヤハーネスを摺動可能に挿通する開口部と、フロア側の固定部でワイヤハーネスが貫通する孔部とを有するカバー部材によりワイヤハーネスを覆い、このカバー部材の内部でワイヤハーネスが揺動可能として構成される。このように、開口部にワイヤハーネスを挿通することで、スライドシートのスライド移動量が大きい場合であってもワイヤハーネスの露出部分を隠蔽することができ、スライドシートの下部に保護部材とともにワイヤハーネスを露出させることはなく、車内空間の意匠性を向上させることができる構成とされている(例えば、特許文献1参照。)。
また、従来の他のスライドシート用給電装置は、ハーネス収容部を有するケースと、ケースに沿って進退する可動体と、可動体に一端部を支持しケースに他端部を支持してハーネス収容部内で屈曲するワイヤハーネスとからなるスライドシート用給電装置であり、ケースに可動体を挿通するスリット部を形成し、スリット部に対向してケース底部との間で異物侵入空間を形成し、この異物侵入空間を仕切壁を介してハーネス収容部から隔離した構造を備えている。このように、仕切板を介してハーネス収容部を異物侵入空間から隔離することで、ハーネス収容部へのジュースや砂などの異物の進入を防止することができる構成とされている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、上述した従来のスライドシート用給電装置では、ワイヤハーネスが保護部材とともに貫通した状態で移動する開口部を、スライドシート下のフロアに対しスライドシートのスライド移動方向にわたって形成する必要があるため、フロアへの開口部形成加工工程が必要であり、自動車の製造工程における工程数の削減が困難であるという問題がある。
また、自動車の製造工程においては、スライドシート用給電装置をフロアに組み付けた後にスライドシートをフロア上に設置し、そのうえでスライドシートの裏側などに設置された電装部品とフロアに組み付けられたスライドシート用給電装置とを、保護部材に覆われたワイヤハーネスが開口部を貫通した状態となるようにして接続しなければならず、作業工程が複雑化して製造コストが増加してしまうという問題がある。
さらに、従来のスライドシート用給電装置では、スライドシート下のフロアにスライドシート用給電装置を組み付けるとともに、保護部材に覆われたワイヤハーネスがスライドシート下の空間に露出した状態で相当量移動するような構造からなるため、スライドシート下のフロア上などに車載機器などの各種補機を設置することが困難であり、車内空間の有効利用が図り難いという問題がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、部品点数が少なく小型化が可能で容易に設置しコスト削減を図ることができるとともに、空間の有効利用を図りつつ確実に車体本体側とスライドシート側とを電気的に接続することができる電気接続構造を提供することを目的とする。
本発明に係る電気接続構造は、車体本体に設置された固定部と、前記車体本体に対してスライド可能なスライドシートに設置された可動部と、一端が前記固定部に固定され他端が前記可動部に固定され且つこれらの中間部が撓んだ状態で配されて前記車体本体側と前記スライドシート側とを電気的に接続するワイヤハーネスとを備えた電気接続構造であって、前記固定部側及び前記可動部側のいずれか一方に、前記ワイヤハーネスの前記中間部の余長を吸収する余長吸収機構が設置され、前記余長吸収機構は、前記中間部を収容するとともに、前記スライドシートのスライド移動方向と交差する端部に第1開口部及び第2開口部が形成されたケースと、前記ケース内の前記第1開口部近傍に一端が固定され、直線状と円弧状とに弾性変形可能であるとともに、直線状に付勢されている板状のバネ部材と、前記ケース内に設置され、前記中間部が摺接されることにより前記ケース内でのその曲がり量を規制する凸曲面状の外周面が形成された固定ガイド部材とを有するガイド手段とを備え、前記中間部は、前記余長吸収機構が設置されている側から前記第1開口部を通って前記バネ部材に沿って前記ケース内に配され、前記固定ガイド部材に摺接したうえで前記余長吸収機構が設置されていない側に前記第2開口部を通って外部に導出あるいは外部から導入されるように配されて、前記バネ部材によって直線状に付勢された状態で前記ケース内に収容されていることを特徴とする。
また、余長吸収機構は、ケース内に配された中間部を第1開口部近傍で係止固定する係止部材をさらに備える。この余長吸収機構のケースは、第1及び第2開口部をスライド移動方向と交差する方向のうち、いずれか一方側の端部に有する。また、余長吸収機構のケースは、中間部及びガイド手段を内部に収容する角丸矩形状の内部空間を有し、この内部空間における固定ガイド部材の外周面と対向配置された内壁面は、外周面と対応する凹曲面状に形成されており、ガイド手段のバネ部材は、第1開口部近傍で固定された一端から先端にかけて内部空間の内壁面に沿って直線状に延びるように配置され、ガイド手段の固定ガイド部材は、内部空間内におけるバネ部材の一端固定位置の第1開口部とスライド移動方向と平行な方向に反対側に配置され、且つ交差する方向に第1開口部よりも第2開口部側に偏った位置に外周面が位置するように配置されている。
そして、ガイド手段のバネ部材は、スライドシートのスライド移動に伴って摺接する中間部の押圧力によって、先端側から固定ガイド部材の外周面に向かって近づくように円弧状に弾性変形するとともに、復元力によって前記中間部を内壁面側に押圧しつつ固定された一端側から内壁面に沿って直線状に戻り変形するように付勢されている。ここで、ワイヤハーネスは、例えば複数の電線を束ねてこれらを保護部材により覆った構造からなる。また、保護部材は、コルゲートチューブである。なお、固定ガイド部材は、ワイヤハーネスと摺接する外周面が、ワイヤハーネスが有する最小曲率半径よりも大きな曲率半径の凸曲面によって形成されている。
本発明によれば、ワイヤハーネスの中間部における余長は、固定部側及び可動部側のいずれか一方に設置されたケースと、バネ部材及び固定ガイド部材からなるガイド手段とを有する余長吸収機構によって吸収されつつ収納される。このため、フロアに対してスライドシートのスライド移動方向にわたって長孔状の開口部を形成しワイヤハーネスを挿通させることは不要となるとともに、スライドシートをフロア上に設置した後でも車体本体側とスライドシート側とを容易に電気的に接続することが可能となる。これにより、少ない部品点数で小型化を実現し省スペースで容易に設置することができるとともに、確実に車体本体側とスライドシート側とを電気的に接続することが可能となる。
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電気接続構造について説明する。
図1は、自動車内における本実施形態に係る電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置を示す説明図である。また、図2は、同給電装置の構成を示す一部平面図である。また、図3は、同給電装置の余長吸収機構を切り欠いて示す平面図である。また、図4は、同給電装置の図3におけるA−A’断面図である。さらに、図5は、同給電装置の余長吸収機構を切り欠いて示す他の平面図である。なお、自動車の進行方向に向かって左右方向をLR方向とするとともに、左方向をL方向、右方向をR方向として説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置は、自動車のフロア1に設置された固定部である車体側固定部10と、このフロア1に対して例えば自動車の前後方向(図中矢印Aで示す方向、以下「A方向」という)にスライド可能なスライドシート2のシート裏スペースに設置された可動部であるシート側固定部20と、一端が車体側固定部10に接続され他端がシート側固定部20に接続され且つこれらの中間部が撓んだ状態で配されて車体側固定部10とシート側固定部20とを電気的に接続するワイヤハーネス30と、例えばシート側固定部20側に設けられてワイヤハーネス30の中間部の撓んだ部分(すなわち、余長部分)を吸収して収納する余長吸収機構40とを備えて構成されている。なお、このスライドシート用給電装置では、シート側固定部20及び余長吸収機構40がスライドシート2のシート裏スペースに設置されているため、シート下スペースには、例えばオーディオ装置などの自動車搭載機器3を設置することができる。
図1〜図5に示すように、余長吸収機構40は、ワイヤハーネス30の中間部を収容するとともに、スライドシート2のスライド移動方向と交差する端部44cに第1開口部である孔部46(図2及び図3参照、以下同じ)及び第2開口部である開口部43(図2、図3及び図5参照、以下同じ)が形成されたケース44を備える。また、余長吸収機構40は、このケース44内の孔部46近傍に一端が固定され、直線状と円弧状とに弾性変形可能であるとともに、直線状に付勢されている板状のバネ部材であるバネ41(図2〜図5参照、以下同じ)と、ケース44内に設置され、ワイヤハーネス30の中間部が摺接されることによりケース44内でのその曲がり量を規制する凸曲面状の外周面42aが形成された固定ガイド部材である円形ガイド42(図2〜図5参照、以下同じ)とを有するガイド手段を備える。なお、ガイド手段のバネ41は、接触する部分のワイヤハーネス30の中間部が直線状態をなすべく押圧するように付勢されている。
ケース44は、例えばスライドシート2のスライド移動方向(すなわち、上記A方向)と交差する端部44cにおいて、スライド移動方向と交差する方向のうち、一方側の端部(ここではR方向端部側)に孔部46及び開口部43を有する。また、ケース44は、ワイヤハーネス30の中間部と、バネ41及び円形ガイド42からなるガイド手段とを内部に収容する角丸矩形状の内部空間47(図2〜図5参照、以下同じ)を有する。この内部空間47は、直線状の内壁面44bと凹曲面状の内壁面44aとを備えて構成されている。
ガイド手段のバネ41は、具体的には、例えば板状の金属母材を加工してなり、ケース44の内部空間47内で固定された一端となるその基端部が、例えば円形ガイド42と一体的に接続された状態で、且つ可動自在なその先端部が、円弧状に変形する際の変形方向に曲げられたうえで内壁面44bに沿って直線状態に配設されている。このバネ41は、例えばスライドシート2のスライド移動に伴って摺接するワイヤハーネス30の中間部の押圧力によって、先端部側が円形ガイド42の外周面42aに向かって近づくように円弧状に弾性変形する。また、バネ41は、自己復元力によってワイヤハーネス30の中間部を内壁面44b側に押圧しつつ固定された基端部側から内壁面44bに沿って直線状に戻り変形するように付勢されている。なお、上述したように、バネ41の先端部が曲げられていることによって、ワイヤハーネス30と摺接してバネ41がそれぞれ直線状と円弧状とに変形する際に、ワイヤハーネス30との引っ掛かりなどを防止してスムーズに変形することが可能となる。
また、ガイド手段の円形ガイド42は、例えばケース44と一体的に形成された円筒(あるいは円柱)状の樹脂成形部材からなり、ケース44の内部空間47における厚さ方向高さとほぼ等しい高さを有している。この円形ガイド42は、その外周面42aにおけるワイヤハーネス30と摺接する部分が、ワイヤハーネス30が有する最小曲率半径よりも大きな曲率半径の凸曲面を備えるように形成されている。円形ガイド42は、内部空間47内において、バネ41の基端部固定位置の孔部46とA方向と平行な方向に反対側に配置され、且つLR方向に孔部46よりも開口部43側に偏った位置に外周面42aが位置するように配置されている。
ケース44は、例えばLR方向に長手方向を有する箱形形状の樹脂成形部材からなり、少なくとも内部空間47における開口部43の直近位置でワイヤハーネス30と円形ガイド42とが摺接する部分と対向配置された内壁面44a(図3及び図5参照、以下同じ)は、円形ガイド42の外周面42aと合致するような凹曲面を有するように形成されている。なお、図示は省略するが、ケース44の開口部43は、例えば車体側固定部10と余長吸収機構40とを結ぶワイヤハーネス30が、スライドシート2のスライド移動面となす角度において、ストレスなく延出することができるように所定の傾斜をもって形成されていても良い。また、開口部43から円形ガイド42へ続くケース44内の内部空間47には、開口部43から円形ガイド42の外周円への接線方向へ続く突条からなり、ワイヤハーネス30の中間部を延出方向に案内するガイド壁48(図2〜図5参照、以下同じ)が形成されている。
そして、このように構成された余長吸収機構40では、ワイヤハーネス30は、余長吸収機構40が設置されたシート側固定部20側から孔部46を通ってケース44の内部に導かれ、その中間部がバネ41の基端部側から先端部側を内壁面44bに沿って通り、さらに円形ガイド42の外周面42aと摺接しつつ内壁面42aとの間を通ってバネ41及び円形ガイド42全体を囲むように巻回された状態となる。そして、ワイヤハーネス30の中間部は、余長吸収機構40が設置されていない車体側固定部10側に開口部43を通って外部に導出あるいは外部から導入されるように配されて、バネ41によって直線状に付勢された状態でケース44内に収納されている。
したがって、ワイヤハーネス30の中間部は、ケース44の内部空間47における開口部43の近傍位置で円形ガイド42の外周面42a(あるいは内壁面44a)によって曲がり量が規制されたうえで、開口部43を通って外部に延出自在となるように収納されている。なお、ワイヤハーネス30の中間部がケース44の内部空間47内に戻る場合には、円形ガイド42の外周面42aと対向配置されたケース44の内壁面44a(あるいは外周面42a)によってその曲がり量が規制される。
すなわち、このように構成された余長吸収機構40では、車体側固定部10とシート側固定部20とが最も近づいている場合は、図3に示すように、ケース44の内部空間47において、例えば孔部46から内部に導入されたワイヤハーネス30の中間部が、後述する係止部材45によって固定されたうえで、バネ41とケース44の内壁面44bとの間を通ってこの内壁面44bに沿って配され、さらに円形ガイド42の外周面42aとケース44の内壁面44aとの間を通って開口部43から導出されるように配されている。
また、車体側固定部10とシート側固定部20とが最も離れている場合は、図5に示すように、ケース44の内部空間47において、ワイヤハーネス30の中間部が、円形ガイド42の外周端面42aに沿って円弧状に弾性変形したバネ41と円形ガイド42との外周側を通って開口部43から導出されるように配される。この場合、ワイヤハーネス30の中間部には、バネ41の自己復元力によるケース44の内壁面44b側へ押し戻されるような応力(引張り力)が与えられている。すなわち、上述したようにワイヤハーネス30の中間部は、バネ41によって内壁面44b側へ押圧されるように付勢されている。このように、この余長吸収機構40によれば、スライドシート2のA方向へのスライド移動量に応じて、ケース44の開口部43からストレスなく適宜必要量のワイヤハーネス30を自在に延出することができる。
なお、本例の余長吸収機構40は、上述したようにケース44内に収容されたワイヤハーネス30の中間部を、孔部46近傍でケース44内で動かないように係止固定する係止部材45(図2及び図3参照、以下同じ)をさらに備えて構成されている。この係止部材45には、ワイヤハーネス30を挟むことができる図示しないスリットや凹部が形成されている。また、開口部43及び孔部46は、ケース44の内部空間47に連通し互いに隣接する位置に設けられている。
この余長吸収機構40では、上述したようにワイヤハーネス30を外部に露出させる開口部43及び孔部46が互いに近傍位置に形成されているため、車体側固定部10とシート側固定部20とをA方向に沿って直線状に設置することができる。また、この余長吸収機構40とシート側固定部20とは、スライドシート2のシート幅に対して、例えばR方向に偏った位置に設置されており、スライドシート2のスライド動作に追従して移動する構造を備えている。これにより、本実施形態に係る電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置を用いれば、スライドシート2のシート裏スペースに空き空間を確保することができ、本来デッドスペースとなるところを自動車搭載機器3などを設置して有効に利用することが可能となる。
なお、シート側固定部20は、余長吸収機構40の係止部材45及び孔部46を介して露出されたワイヤハーネス30と接続されており、さらにスライドシート2に備えられた座面チルト調整用の駆動モータ50やスライド調整用の駆動モータ51などの各種電装部品とコネクタ52を介して接続されている。
一方、ワイヤハーネス30は、例えば図3に示すように、複数の電線31を束ねてこれらを保護部材としてのコルゲート材からなる蛇腹状のコルゲートチューブ32により覆った構造からなり、屈曲自在に構成されている。このワイヤハーネス30の長さは、例えば一端が車体側固定部10に接続された状態で、その中間部が余長吸収機構40に収納され、さらにスライドシート2の最前部と最後部とのそれぞれの位置におけるシート側固定部20に対して十分届く長さに予め設定されている。
また、図1及び図2に示すように、スライドシート2は、フロア1に敷設されたL方向側、R方向側それぞれのシートレール4及びシートレール5上をA方向にスライド自在に支持された状態で設置されている。このスライドシート2には、上述したように各駆動モータ50,51やその他の図示しない電装部品が、スライドシート2内の任意の位置に搭載されている。
次に、このように構成された電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置の動作について説明する。なお、ここでは余長吸収機構40と車体側固定部10との間のワイヤハーネス30の中間部を延出部分30aとし、余長吸収機構40内に収納されたワイヤハーネス30の中間部を余長部分30bとし、さらにスライドシート2のスライド移動によってワイヤハーネス30に加わる引張り力をT1として説明する。
このスライドシート用給電装置では、前提としてスライドシート2がA方向にスライド移動すると、余長吸収機構40と車体側固定部10との間の距離L(図示せず)が変化する。まず、余長吸収機構40と車体側固定部10との距離Lが最小であるとき(すなわち、スライドシート2が移動範囲における最前部に位置しているとき)は、図3に示すように、ワイヤハーネス30に対して引張り力T1は加わらず、バネ41は自己復元力によって平板状の状態となる。このとき、ケース44の内部空間47におけるバネ41及び円形ガイド42を巻回するワイヤハーネス30の余長部分30bは内壁面44a,44bに沿うような状態で最長となり、延出部分30aは最短となる。
そして、この状態からスライドシート2がスライド移動すると、ワイヤハーネス30には引張り力T1が加わる。図5に示すように、そのままスライドシート2がスライド移動を続けると、ワイヤハーネス30は図中矢印Pで示す方向に引き出され、余長吸収機構40と車体側固定部10との間の距離Lが最大であるとき(すなわち、スライドシート2が移動範囲における最後部に位置しているとき)は、ワイヤハーネス30に対して最大引張り力T1が加わり、バネ41はワイヤハーネス30を直線状に押圧するように付勢されているが弾性変形によって円弧状の状態となる。このとき、ケース44の内部空間47におけるバネ41及び円形ガイド42を巻回するワイヤハーネス30の余長部分30bは、バネ41及び円形ガイド42をそれぞれ囲むような状態で最短となり、反対に延出部分30aは最長となる。
したがって、このように構成された電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置では、自動車の車体(フロア1)とスライドシート2との間に配されたワイヤハーネス30の余長吸収は、バネ41及び円形ガイド42を内在させる箱形のケース44を備えた余長吸収機構40において、バネ41の変形によるワイヤハーネス30の中間部のLR方向への移動によって行われる。このため、スライドシート2に固定(設置)される余長吸収機構40の形状をLR方向に長手方向を有する箱形形状とすることができる。
これにより、本実施形態の電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置によれば、従来のスライドシート用給電装置のように、スライドシート2の前後方向(A方向)にわたって形成される開口部を備える必要がなく、スライドシート2のLR方向のいずれか一方側のシート裏スペースに余長吸収機構40を納めてスライドシート用給電装置を構成することができる。この結果、例えば自動車の製造工程にてスライドシート2をフロア1に搭載した後であっても、スライドシート用給電装置を容易にフロア1又はスライドシート2に設置し、フロア側とスライドシートが備える各電装部品側とをワイヤハーネス30によって電気的に接続することができる。
また、スライドシート用給電装置の余長吸収機構40を車体側固定部10あるいはシート側固定部20とともにフロア1又はスライドシート2に直接設置することができるため、スライドシート2下には、オーディオ装置などの自動車搭載機器3を収納するスペースを確保することができ、車内の搭載機器のレイアウトの自由度を向上させることができるとともに、車内空間の有効利用を図ることが可能となる。
また、余長吸収機構40のケース44における開口部43の近傍位置に、ワイヤハーネス30の最小曲率半径よりも曲率半径の大きな凸曲面によって形成された外周面42aを備える円形ガイド42及び凹曲面の内壁面44aが配されているため、ケース44の内部空間47内をLR方向に移動するワイヤハーネス30の中間部の動きを、スライドシート2のスライド方向であるA方向に移動する動きに簡易な構成によって変換することができる。
また、開口部43は、ワイヤハーネス30がスライドシート2のスライド移動面となす角度において、ストレスなく延出することができるように所定の傾斜をもって形成されているため、例えばスライドシート2に設置される余長吸収機構40からスライドシート2よりも低い位置のフロア1に設置される車体側固定部10に対して、円滑にワイヤハーネス30をガイドすることができる。さらに、余長吸収機構40のケース44における開口部43から円形ガイド42へ続く内部空間47には、ガイド壁48が形成されているため、スライドシート2のスライド方向であるA方向にワイヤハーネス30の延出をスムーズに行うことができる。
また、ワイヤハーネス30がコルゲートチューブ32によって覆われており、さらにワイヤハーネス30(厳密にはコルゲートチューブ32)と摺接する円形ガイド42の外周面42aが、ワイヤハーネス30の最小曲率半径よりも曲率半径の大きな凸曲面によって構成され、この外周端面42aと対向するケース44の内壁面44aが凹曲面によって構成されているため、コルゲートチューブ32及びこの内部に備えられた複数の電線31により構成されるワイヤハーネス30の変形による損傷を確実に防止することができる。なお、スライドシート2のスライド移動方向はA方向に限られるものではなく、本実施形態に係る電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置は、種々のスライド形態に対しても適用可能である。
図6は、同給電装置の余長吸収機構の他の例を切り欠いて示す平面図である。なお、以降において、既に説明した部分と同一の箇所には同一の符号を附して説明を省略する。図6に示すように、余長吸収機構40Aは、ガイド手段としてバネ41及び円形ガイド42を有し、ワイヤハーネス30の中間部がこれらを巻回する状態でケース44の内部空間47内に収納されている点は上記余長吸収機構40と同一である。しかし、バネ41の固定された基端部が、円形ガイド42と一体的に接続されたものではなく、係止部材46と一体的に接続されている点が相違している。このように構成しても上記余長吸収機構40と同様の効果を有することができる。
図7は、自動車内における本実施形態に係る電気接続構造を適用した他のスライドシート用給電装置を示す説明図である。また、図8は、同給電装置の構成を示す一部平面図である。上述したスライドシート用給電装置では、ワイヤハーネス30の余長吸収機構40,40Aがスライドシート2に設置されたシート側固定部20側に設置されているが、図7及び図8に示すように、余長吸収機構40Bをシート側固定部20側ではなく、フロア1の車体側固定部10側に備えるようにしても良い。この余長吸収機構40Bでは、ケース44に形成されたワイヤハーネス30の中間部の他端側を露出させる孔部46が、フロア1方向に開口するように形成されており、この孔部46を通ったワイヤハーネス30は、車体側固定部10に接続されている。
以上述べたように、本発明に係る電気接続構造によれば、フロア1又はスライドシート2の任意の位置に余長吸収機構やワイヤハーネスを配することができ、車内空間のレイアウトを自由に行うことが可能となる。また、簡単な構成で余長吸収機構を実現することができるため、部品点数を少なくして機構全体の小型化を実現しコスト削減を図ることができる。
なお、上述した本実施形態の電気接続構造を適用したスライドシート用給電装置は、自動車のフロア1とスライドシート2との間を車体側固定部10及びシート側固定部20をそれぞれ介して電気的に接続するものとして適用した場合について説明したが、その他、列車や航空機などの移動体、あるいは各種アトラクションなどを有する施設などにおいて、車体側固定部10とシート側固定部20とを電気的に接続する場合においても適用することが可能である。
1…フロア、2…スライドシート、3…自動車搭載機器、4,5…シートレール、10…車体側固定部、20…シート側固定部、30…ワイヤハーネス、31…電線、32…コルゲートチューブ、40,40A,40B…余長吸収機構、41…バネ、42…円形ガイド、43…開口部、44…ケース、45…係止部材、46…孔部、47…内部空間、48…ガイド壁。
Claims (8)
- 車体本体に設置された固定部と、前記車体本体に対してスライド可能なスライドシートに設置された可動部と、一端が前記固定部に固定され他端が前記可動部に固定され且つこれらの中間部が撓んだ状態で配されて前記車体本体側と前記スライドシート側とを電気的に接続するワイヤハーネスとを備えた電気接続構造であって、
前記固定部側及び前記可動部側のいずれか一方に、前記ワイヤハーネスの前記中間部の余長を吸収する余長吸収機構が設置され、
前記余長吸収機構は、
前記中間部を収容するとともに、前記スライドシートのスライド移動方向と交差する端部に第1開口部及び第2開口部が形成されたケースと、
前記ケース内の前記第1開口部近傍に一端が固定され、直線状と円弧状とに弾性変形可能であるとともに、直線状に付勢されている板状のバネ部材と、前記ケース内に設置され、前記中間部が摺接されることにより前記ケース内でのその曲がり量を規制する凸曲面状の外周面が形成された固定ガイド部材とを有するガイド手段とを備え、
前記中間部は、前記余長吸収機構が設置されている側から前記第1開口部を通って前記バネ部材に沿って前記ケース内に配され、前記固定ガイド部材に摺接したうえで前記余長吸収機構が設置されていない側に前記第2開口部を通って外部に導出あるいは外部から導入されるように配されて、前記バネ部材によって直線状に付勢された状態で前記ケースに収納されている
ことを特徴とする電気接続構造。 - 前記余長吸収機構は、前記ケース内に配された前記中間部を前記第1開口部近傍で係止固定する係止部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の電気接続構造。
- 前記余長吸収機構の前記ケースは、前記第1及び第2開口部を前記スライド移動方向と交差する方向のうち、いずれか一方側の前記端部に有することを特徴とする請求項1又は2記載の電気接続構造。
- 前記余長吸収機構の前記ケースは、前記中間部及び前記ガイド手段を内部に収容する角丸矩形状の内部空間を有し、この内部空間における前記固定ガイド部材の前記外周面と対向配置された内壁面は、前記外周面と対応する凹曲面状に形成されており、
前記ガイド手段の前記バネ部材は、前記第1開口部近傍で固定された一端から先端にかけて前記内部空間の内壁面に沿って直線状に延びるように配置され、
前記ガイド手段の前記固定ガイド部材は、前記内部空間内における前記バネ部材の一端固定位置の前記第1開口部と前記スライド移動方向と平行な方向に反対側に配置され、且つ前記交差する方向に前記第1開口部よりも前記第2開口部側に偏った位置に前記外周面が位置するように配置されていることを特徴とする請求項3記載の電気接続構造。 - 前記ガイド手段の前記バネ部材は、前記スライドシートのスライド移動に伴って摺接する前記中間部の押圧力によって、先端側から前記固定ガイド部材の前記外周面に向かって近づくように円弧状に弾性変形するとともに、復元力によって前記中間部を前記内壁面側に押圧しつつ固定された一端側から前記内壁面に沿って直線状に戻り変形するように付勢されていることを特徴とする請求項4記載の電気接続構造。
- 前記ワイヤハーネスは、複数の電線を束ねてこれらを保護部材により覆った構造からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の電気接続構造。
- 前記保護部材は、コルゲートチューブであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の電気接続構造。
- 前記固定ガイド部材は、前記ワイヤハーネスと摺接する外周面が、前記ワイヤハーネスが有する最小曲率半径よりも大きな曲率半径の凸曲面によって形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の電気接続構造。
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