JP2007314901A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリアクリロニトリル系などの前駆体繊維を二重構造のない均一な耐炎化進行度の耐炎化繊維とすることで、この後の工程である炭素化工程の高温焼成、高延伸焼成においても毛羽、糸傷み、糸切れなどが発生しない、高品質、高品位の炭素繊維を得ることが可能な炭素繊維の製造の製造方法を提供する。
【解決手段】総繊度が8000〜45000デシテックスの前駆体繊維束を、0.10〜0.23g/デシテックスの張力で、溝ピッチが5〜10mmである複数の溝付きローラに、連続する2つの溝付きローラ間での通過時間が3分以下となるように、連続的に通過せしめて耐炎化処理し、次いで炭素化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】総繊度が8000〜45000デシテックスの前駆体繊維束を、0.10〜0.23g/デシテックスの張力で、溝ピッチが5〜10mmである複数の溝付きローラに、連続する2つの溝付きローラ間での通過時間が3分以下となるように、連続的に通過せしめて耐炎化処理し、次いで炭素化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、炭素繊維の製造方法に関し、さらに詳しくは、耐炎化工程において二重構造を生じにくい、すなわち、熱処理する前駆体繊維束を構成する個々の単繊維の断面中心方向に焼け斑の少ない耐炎化繊維とすることで後続する炭素化工程の高延伸焼成においても毛羽、糸傷み、糸切れなどが発生しにくいため、高品質、高品位の炭素繊維を得ることができる炭素繊維の製造方法に関する。
炭素繊維前駆体繊維束から耐炎化繊維を経て炭素繊維を得る一般的な炭素繊維の製造方法は、数千〜数万本の炭素繊維前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中にて加熱処理して耐炎化繊維とする耐炎化工程と、300〜2500℃の不活性雰囲気にて前記耐炎化繊維を加熱処理して炭素繊維にする炭素化工程からなる。
高品質かつ、高品位な炭素繊維を得るためには、特に耐炎化工程において、続く炭素化工程に耐え得る熱的に安定な焼け斑のない耐炎化構造を形成させることが重要である。この構造形成に非常に重要な役割を果たすのが酸素であるが、酸素は単繊維の断面中心方向へ時間とともに拡散していく。
炭素繊維は今日、その用途拡大のために、さらなる低コスト化、高性能化が要求されており、そのために、主に低コスト化を目指した糸条の太物化、高温高速焼成や、主に高性能化を目指した高延伸焼成といった方向の生産条件が要求されている。このような生産条件は、繊維束内への酸素の拡散という点ではそれぞれ、拡散パスの長大化、拡散可能時間の短縮、拡散スペースの縮小により不利な方向となるため、繊維束は耐炎化が十分に進行していない、すなわち、焼け斑がある単繊維を発生したり、同一単繊維内においても表面層のみに酸素が拡散され、表面層のみが十分に酸化され、内層は十分に酸化されていない場合がある。このような構造を、単繊維断面において内層と外層での構造差、すなわち、内外構造差を有することから断面二重構造と呼ぶが、このような構造を有する耐炎化繊維は、酸化が足りない部分の耐熱性が低いために炭素化工程において高温処理、高延伸処理に耐えることができず、毛羽、糸切れが発生しやすくなり、十分な品質、品位を有する炭素繊維を製造することが困難となることがある。
このため、これまで、このような構造斑を生じさせないための数々の検討がなされてきた。例えば、活性雰囲気中250℃以上で、かつ、断面二重構造の生じる温度T0からの温度のずれが+10℃以下の温度T1で延伸した後、さらにT1以上の温度T2で延伸する方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。断面二重構造は、耐炎化温度を高く設定することで生成しやすくなるため、断面二重構造が生成しにくい温度に設定することは断面二重構造の生成を回避する一つの手段であり好ましく利用される。しかし、近年の炭素繊維製造技術は太物化、高温高速焼成、高延伸焼成のように厳しい条件が要求されており、耐炎化温度の調整によって断面二重構造生成を抑制できたとしても太物化、高温高速焼成、高延伸焼成の条件のもとでは耐炎化反応自体が十分に進行せず、後の炭素化工程の高温処理に耐えることができないといった問題が生じていた。
また、例えば、別の構造斑改善技術として、繊維束の総繊度、各ローラ対におけるローラ間距離で規定した範囲内の溝ピッチを有する溝付きローラ対に糸掛けして焼成することで耐炎化工程における生産性を一層向上せしめ、また、毛羽、単繊維切れ、および焼け斑を防止する技術が提示されている(例えば、特許文献2参照)。断面二重構造は、溝ピッチが狭い時に生成しやすくなるため、断面二重構造が生成しにくい広いピッチにすることは断面二重構造生成を回避する一つの手段であり好ましく利用される。しかし、前記したような近年の炭素繊維製造条件の下では、用いるローラにおける溝ピッチの調整だけでは断面二重構造生成を抑制できないようになっているのが実状である。
特開昭57−16911号公報
特開昭58−214532号公報
本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解決しようとするものであり、ポリアクリロニトリル系(以下、「PAN系」と呼称することがある)繊維などの前駆体繊維を断面二重構造のない均一な耐炎化進行度の耐炎化繊維とすることで、この後の工程である炭素化工程の高温焼成、高延伸焼成においても毛羽、糸傷み、糸切れなどが発生しない、高品質、高品位の炭素繊維を得ることが可能な炭素繊維の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)総繊度が8000〜45000デシテックスの前駆体繊維束を、0.10〜0.23g/デシテックスの張力で、溝ピッチが5〜10mmである複数の溝付きローラに、連続する2つの溝付きローラ間での通過時間が3分以下となるように、連続的に通過せしめて耐炎化処理し、次いで炭素化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
(2)前記溝付きローラ上における前駆体繊維束は、その断面の幅wと厚みdとの比w/dが10以上である前記(1)に記載の炭素繊維の製造方法。
(3)耐炎化処理中の繊維束には、0.1〜0.5T/mの仮撚りが与えられてなる前記(1)または(2)に記載の炭素繊維の製造方法。
(4)耐炎化処理中の繊維束を溝付きローラに通過せしめるに際して、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを0.1°〜1°とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法、である。
(1)総繊度が8000〜45000デシテックスの前駆体繊維束を、0.10〜0.23g/デシテックスの張力で、溝ピッチが5〜10mmである複数の溝付きローラに、連続する2つの溝付きローラ間での通過時間が3分以下となるように、連続的に通過せしめて耐炎化処理し、次いで炭素化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
(2)前記溝付きローラ上における前駆体繊維束は、その断面の幅wと厚みdとの比w/dが10以上である前記(1)に記載の炭素繊維の製造方法。
(3)耐炎化処理中の繊維束には、0.1〜0.5T/mの仮撚りが与えられてなる前記(1)または(2)に記載の炭素繊維の製造方法。
(4)耐炎化処理中の繊維束を溝付きローラに通過せしめるに際して、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを0.1°〜1°とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法、である。
本発明の製造方法によれば、PAN系などの前駆体繊維を耐炎化処理するに際し、断面二重構造の生成が抑制された均一な耐炎化進行度の耐炎化繊維を得ることができ、後の炭素化工程の高延伸焼成においても毛羽、糸傷み、糸切れなどが発生しにくいため、高品質、高品位の炭素繊維を得ることができる。
本発明で用いる前駆体繊維束としては、PAN系の繊維によるものが好ましいが、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、セルロース系などの繊維による炭素繊維前駆体繊維束であってもよい。
PAN系の前駆体繊維束は、アクリル系重合体を繊維化してなるものであり、アクリル系重合体としては、アクリロニトリルが100モル%重合してなるものであっても、アクリロニトリルを90モル%以上と共重合成分を10モル%以下とを共重合してなるものであっても良い。共重合成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム金属塩、アクリルアミド、アクリル酸メチルなどが好ましく、中でもイタコン酸がより好ましく用いられる。
本発明で用いる前駆体繊維束は、その総繊度が8000〜45000デシテックス、好ましくは10000〜30000デシテックス、より好ましくは11000〜25000デシテックスのものを用いる。本発明は総繊度が大きい時により効果を発揮する。用いる前駆体繊維の総繊度があまりに小さいと、目標の品質、品位が得られるが、本発明における技術を駆使しなくても焼け斑は発生しにくいので、本発明における技術を使うと逆に高コストとなり、経済的ではない。また、総繊度があまりに大きいと、本発明における技術をもってしても、耐炎化工程において繊維束内の単繊維間距離が狭まった状態で熱処理されるため、酸素拡散パスが遮られて酸素が繊維束内に入っていかず、焼け斑を発生したり、繊維束内で発生した反応熱が繊維束外部に放出されずに内部に蓄積され、それが大きくなることで糸切れを起こしたりする。また、焼け斑により耐熱性が低い部分は熱により軟化することで単繊維同士が融着したりするために、得られる炭素繊維の強度発現性が低下し、また繊維束間での炭素繊維の強度のバラツキが大きくなる。
本発明で用いる前駆体繊維束を構成する単繊維の繊度やフィラメント数に、特に指定はないが、通常、単繊維繊度0.3〜1.0デシテックス、フィラメント数10000〜30000程度のものを使用する。
図1は、本発明で用いられる耐炎化処理における工程の一例を示す概略工程図であり、図2〜4はそれぞれ、上記耐炎化工程で用いられる溝付きローラの一例を示す断面図であり、さらに、図5は、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを説明する概略図である。
本発明において、耐炎化処理は、炉内を酸化性雰囲気で満たした耐炎化炉を用いて行う。酸化性雰囲気としては空気を用いるのが一般的である。酸化性雰囲気を加熱するには、対流加熱方式を採用するのが良い。図1に示すように、耐炎化炉には、複数の溝付きローラ2a、2b、2c・・・が設けられており、その溝付きローラに繊維束を図1に示すようにジグザグ状に連続的に通過せしめて耐炎化処理する。溝付きローラには、同時に併走させる繊維束の本数以上の数の溝が形成されている。また、溝付きローラ2a、2b、2c・・・は、図1では耐炎化炉の外側に設置しているが、耐炎化炉の内側に設置してもよい。
耐炎化処理中の繊維束に負荷される張力、いわゆる耐炎化張力は0.10〜0.23g/デシテックスの範囲とする。耐炎化張力は、耐炎化工程の長手方向、即ち、耐炎化炉の入側から出側方向に、複数段のパス毎の張力を測定していくといろいろな分布を示すが、これらの分布の中において最大の値を耐炎化張力とする。耐炎化張力が小さすぎると、繊維束の収束性が低くなり、単繊維間間隔が確保される方向となるため、繊維束の蓄熱の影響が少なくなり糸切れ、単繊維同士の融着がなくなる点で好ましいが、溝付きローラ上での繊維束が隣の溝に溝飛びし、繊維束がたるむことによりローラ間で隣の繊維束と絡み合って糸切れ、巻き付きが発生し操業性が低下する。一方、耐炎化張力が大きすぎると、繊維束の収束性が高いため、単繊維間間隔が狭まり、繊維束が密な状態で熱処理されるため、酸素が繊維束内に入っていかず、焼け斑を起こすばかりか、蓄熱が大きくなり、糸切れを起こす場合や、単繊維同士の融着が生じる。
また、溝付きローラとしては、溝ピッチが5〜10mmのものを用いる。本発明でいう溝ピッチとは、隣り合う繊維束が走行する溝々の中央間の距離を指す。この溝ピッチが小さすぎると、耐炎化工程において繊維束が密な状態、すなわち、繊維束間の隙間が小さくなるため、風の流れが悪くなり焼け斑を起こしたり、除熱が効率的に行われずに蓄熱を起こす領域が発生し、糸切れを起こしたり、単繊維同士の融着が生じたりするようになる。さらには、得られる炭素繊維の強度発現性が低下し、また繊維束間での炭素繊維の強度のバラツキが大きくなる。また、ローラ間における繊維束の撓みとこれにもとづく繊維束相互の絡み合いが発生し、毛羽、巻き付きが発生するようになることがある。一方、溝ピッチが大きすぎると、繊維束の蓄熱の影響が少なくなるために、繊維束間の密度のバラツキや融着が小さくなり、得られる炭素繊維の強度発現性はよくなる。しかしながら、溝ロールの溝の数が少なくなるために、該溝付きロールによって耐炎化炉に導入しうる炭素繊維前駆体繊維束の量が小さくなるので生産性が低下するようになる。なお、溝付きローラにおける溝ピッチは、各ローラにおいて必ずしも同一である必要はない。
本発明で用いる溝付きローラにおける溝の断面形状は、図2に示すような平底型(矩形型)、図3に示すようなV字型、図4に示すような丸底型(U字型)のいずれでもよい。
このように設置された溝付きローラ群において、連続する2つの溝付きローラの間での繊維束の通過時間を3分以下、好ましくは2分以下とする。連続するローラ間、すなわち、耐炎化炉内の空中を走行している間は、同一繊維束内の単繊維の位置関係は余り変わらない。連続する2つの溝付きローラの間での繊維束の通過時間を短くすることで、繊維束内の単繊維の位置が同じ状態で熱処理される時間が短くなる。すなわち、繊維束内の単繊維の位置の入れ替わりのサイクルを短くすることができ、均一に熱処理を行うことができるのである。連続する2つの溝付きローラの間での繊維束の通過時間が長すぎると、繊維束内の単繊維の位置関係が同じ状態で熱処理される時間が長くなるために繊維束の内側の単繊維は焼け斑を起こし、単繊維同士の融着が生じたりするようになる。かかる通過時間があまり短くなりすぎると、トータルの熱処理時間を維持するためにローラ数を増やす必要があるため、トータル必要熱処理量、耐炎化炉のローラ数などを考慮しながらローラ間の通過時間を決定することが重要であり、かかる観点から、好ましくは0.5分以上とするのが良い。なお、連続する2つの溝付きローラ間の通過時間とは、繊維束の走行方向に連続する2つの溝付きローラにおいて、上流側の溝付きローラから繊維束が離れる時点から下流側の溝付きローラに繊維束が接触するまでの時間のことをいう。
本発明において、繊維束を通過させる溝付きローラの数には特に制限はなく、繊維束の太さ、繊維束の走行速度、耐炎化処理の温度などの条件に合わせて適宜決定する。繊維束が溝付きローラ上を通過する際に、同一繊維束内で単繊維の位置関係が変更されるが、繊維束を通過させる溝付きローラの数が少なくなると、同一繊維束内の単繊維の位置変更が少なくなるため、繊維束に均一に熱処理を行ったとしても、繊維束内外の単繊維の耐炎化進行度に差が生じ、結果として焼け斑を起こし、炭素繊維の機械的特性の発現性が低下する。また、耐炎化炉内での繊維束の通過回数が少なくなるため、耐炎化処理での熱処理量を維持するために耐炎化炉の長さを長くしたり、繊維束の走行速度を小さくしたり、耐炎化処理の温度を高くしたりする必要が生じて高コストとなるし、一方、繊維束を通過させる溝付きローラの数が多くなりすぎると、ローラ上での同一繊維束内の単繊維の位置変更が多くなるので、均一に熱処理が行われる点では良いが、耐炎化炉を作製するに要する費用が高くなり、結局、高コストとなる。
また、耐炎化処理中の繊維束に対して仮撚りを入れると、耐炎化炉内を走行している間にも繊維束内の単繊維位置の動きが出てよい。ここでいう仮撚りとは、ローラ間の空中を走行するときに導入される撚りのことで、ローラでのターン毎に正、負の撚り混入を繰り返すため最終の耐炎化繊維束には撚りは実質的に発生しないものである。この時の正、負とは、仮撚りの方向のことであり、繊維束の進行方向から見て右周りを正とした場合、左周りを負、あるいは、左周りを正とした場合、右周りが負となる。仮撚りとしては、耐炎化処理中の繊維束が連続するローラ間を1回通過する際に撚り数0.1〜0.5T/mで付与されることが好ましい。繊維束をこのような仮撚り範囲に維持することで、特に溝付きローラに入ろうとする繊維束において同一繊維束内の単繊維の位置変更がなされ、繊維束中の各単繊維が均一に熱処理を受けることができるため、全体として焼け斑が減少した耐炎化繊維とすることができる。よって、毛羽、糸切れおよびローラ巻き付きなどのトラブルが軽減し、安定操業のもとで高品位の耐炎化繊維を製造することができる。かかる作用効果は、原料とする前駆体繊維束が実質的に無撚り状態であるとき、特に顕著である。この仮撚りと、ローラ間通過時間を短くすることを組み合わせることで繊維束内の単繊維位置の移動をさらに効率的に行うことができる。
繊維束に仮撚りを付与するためには、耐炎化処理中の繊維束を溝付きローラに通過せしめるに際して、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを0.1°〜1°にすることで好適に実現することができる。以下、進入角θについて図面を参照しながら、具体的に説明する。図5に示す場合において、繊維束1は、溝付きローラ2aから溝付きローラ2bに向かって進んでいる。ここで、溝付きローラ2bに対する繊維束1の進入角θとは、繊維束1の進入方向と溝付きローラ2bの回転軸とを含む平面内において、繊維束1の進入方向と、溝付きローラ2bの回転軸の垂線とがなす角をいう。
次に、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを前記のように設定した場合の作動および作用について述べる。上述したように、溝付きローラに対する繊維束の進入角θが所定値となるように、各溝付きローラを配置すると、まず図5に示すように、繊維束1が溝付きローラ2aから2bに向って進入角θで走行する。溝付きローラ2bでは繊維束の進行方向からみて溝Bの右側側壁と接触しながら走行し、その際,繊維束1には回転する力が働き、前記溝付きローラ2aと2bとの間を走行する繊維束1に正の仮撚りが生ずる。次に、仮撚りが入った繊維束は、図1に示すように溝付きローラ2bから2cへ逆方向に戻る際に、溝付きローラ2bと溝付きローラ2cの回転軸同士が平行である場合には、図5のように真上から見た際に同じ位置を−θ方向に走行するが、この時、負の仮撚りが生じるため、一往復した際には撚りは発生しないことになる。また、同一θ方向を連続して繰り返しても構わないが、繰り返しすぎると、繊維束の単繊維間間隔が十分に確保されず、酸素が供給されにくくなり、焼け斑を起こす可能性があるため、θの連続的繰り返しは3回以下とするのが良い。耐炎化工程から出る際には、繊維束には実質的に撚りが無くなっている、具体的には撚数として0.1T/m未満、好ましくは0.05T/m以下、より好ましくは0.01T/m以下であるようにする。溝付きローラに対する繊維束の進入角θを大きくしすぎると、溝側壁との摩擦力が大きくなりすぎ、さらには繊維束がローラ溝に進入する際に溝の肩部エッジと摩擦することがあるために毛羽が発生しやすくなる。また、張力によっては繊維束が隣接繊維束の溝に移ってしまうことも懸念される。一方、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを小さくしすぎると、繊維束の溝壁部への接触が小さくなり、仮撚り現象が発現しなくなる。
溝付きローラ上を通過する繊維束は、図2に示すように、溝付きローラ上において、幅Wと厚みdを持つが、この幅Wと厚みdとの比w/dは10以上であることが好ましい。なお、図2では、ローラの溝の断面形状は、平底型である。このw/dの値は、耐炎化処理終了直前、すなわち、耐炎化工程の中で耐炎化繊維束が最後に通過する溝付きローラ上における繊維束が少なくとも満たしていればよいが、もちろん全てのローラー上における繊維束が満たしていればより好ましい。上記範囲のw/dにすることにより、耐炎化工程において効率よく除熱されて、酸化反応発熱の繊維束内への蓄熱が抑えられる。また、単繊維同士は酸素が拡散できる距離を保った状態で熱処理を受けるため、酸素は十分に繊維束内に拡散し、二重構造の生成を抑えることができる。この二重構造生成をさらに抑制できる範囲としては、w/dが15以上、さらには20以上が特に好ましい。w/dが小さすぎると、耐炎化工程において繊維束が密な状態で熱処理されるため、酸素が繊維束内に入っていかず、焼け斑を起こすばかりか、蓄熱が大きくなり、糸切れを起こしたり、繊維同士の融着が生じたりする。一方、w/dが、大きくなりすぎると、溝ピッチが大きくなり、溝ロールの溝の数が少なくなるために、該溝付きロールによって耐炎化炉に導入しうる炭素繊維前駆体繊維束の量が小さくなるので生産性が低下してしまうことがあるため、一般的には30以下とする。
総耐炎化時間としては、特に制限はないが、80〜160分が好ましい。総耐炎化時間が短い場合には酸素が繊維内へ拡散していくための時間が十分ではないため、同一繊維束内の各単繊維は表面層のみが耐炎化された二重構造が顕著となる。このような構造を有する耐炎化繊維は、炭素化工程において、毛羽、糸切れが発生し、十分な品質、品位を有する炭素繊維を製造することが困難となる。一方、総耐炎化時間が長くなりすぎると、酸素が繊維束内に十分に拡散し、繊維の断面方向に均一な構造の耐炎化繊維となり、続く炭素化工程においても毛羽、糸切れは発生せず、操業性も高くなり好ましいが、高耐熱性の6員環が連なったラダー状の分子構造と酸素による高架橋密度の分子構造が発達し、剛直な分子構造となりすぎて逆に品質が低下する可能性があるので、品質低下のない範囲に耐炎化時間を設定することが重要である。よって、トータルの必要耐炎化時間としては、繊維束、単繊維の太さなどに応じて決めることが重要である。
本発明では、耐炎化処理における最高温度は特に規定しないが、低い方がよく245℃以下であることが好ましい。耐炎化処理における最高温度が高すぎると、耐炎化工程において、酸素が単繊維の内部に拡散する前に単繊維の外層部分が先に耐炎化され、酸素が拡散しにくい構造となるため、二重構造が発生し易くなり、後の炭素化工程の高延伸焼成において、毛羽、糸傷み、糸切れなどが発生し、高品質、高品位の炭素繊維を得ることができにくくなる。一方、耐炎化最高温度が200℃未満になると、外層だけが先に耐炎化されることはなく、酸素が単繊維内部に拡散していくことができるため、二重構造は生じにくいが、この温度領域では耐炎化時間を極端に長くしたとしても耐炎化反応である環化、酸化反応自体が起こりにくくなるため、後の炭素化工程といった高温処理に耐えうる耐熱性を付与することができなくなる。よって、好ましい耐炎化温度範囲としては200〜245℃である。
耐炎化工程の後の工程としての不活性雰囲気中での炭素化工程は、前炭素化工程と後炭素化工程に分けることができ、本発明における前炭素化工程の最高温度としては、600〜800℃、後炭素化工程の最高温度としては、1000〜2000℃が好ましい。また、本発明の効果が顕著に現れるのは、高延伸倍率にて炭素化するときであるので、好ましい延伸倍率としては、前炭素化工程においては、1.0〜1.1、後炭素化工程においては、0.950〜0.980が好ましい。延伸倍率が大きくなりすぎると、高品質な炭素繊維を得ることはできるが、本発明の技術を駆使したとしても、毛羽、糸傷み、糸切れが発生しやすくなる。一方、延伸倍率を小さくしすぎると、品質が十分に得られないどころか、本技術を駆使しなくても毛羽、糸傷み、糸切れは発生しにくいため、本技術を駆使すると高コストなり経済的ではない。なお、不活性雰囲気としては、経済性の観点から、窒素を用いるのが一般的である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本実施例で用いた特性は、次のようにして測定した。
[断面二重構造の程度]
耐炎化処理が進んでいない繊維構造は、蟻酸に溶解し易いことを利用して、次のようにして断面二重構造の程度を求めた。
耐炎化処理が進んでいない繊維構造は、蟻酸に溶解し易いことを利用して、次のようにして断面二重構造の程度を求めた。
すなわち、重量が約2.5gの耐炎化繊維束を、約100mlのギ酸が入った三角フラスコ中に投入し、これを25℃で100分間、振とうさせて、その後、引き出した繊維束を純水中で約60分間洗浄させ、80℃の温水中でさらに約180分間洗浄させた後、120℃の乾燥機中で一晩乾燥させた。そのようにして処理された耐炎化繊維束の断面を走査型電子顕微鏡を用いて下記の条件で観察した。この時に観察視野中に存在する全単繊維数と中空部分が有る単繊維数を目視で計数し、中空部分が有る単繊維の全単繊維数に対する割合を百分率として算出し、断面二重構造の程度とした。なお、本実施例では、走査型電子顕微鏡として、日立製作所製S−4000を用いた。
測定倍率 :1000倍
観察視野数 :5箇所
[耐炎化工程の張力]
耐炎化張力は張力計を用いて測定する。耐炎化工程は長手方向に張力変動するため最大の値を耐炎化工程の張力とした耐炎化張力は、耐炎化工程の長手方向、即ち、耐炎化炉の入側から出側方向に複数段のパスの張力を測定していくといろいろな分布を示すが、これらの分布の中において最大の値を耐炎化張力とする。なお、本実施例では、張力計として、SHIMPO(日本電産シンポ(株))製MODEL:DTMB-5Bの張力計を用いた。
観察視野数 :5箇所
[耐炎化工程の張力]
耐炎化張力は張力計を用いて測定する。耐炎化工程は長手方向に張力変動するため最大の値を耐炎化工程の張力とした耐炎化張力は、耐炎化工程の長手方向、即ち、耐炎化炉の入側から出側方向に複数段のパスの張力を測定していくといろいろな分布を示すが、これらの分布の中において最大の値を耐炎化張力とする。なお、本実施例では、張力計として、SHIMPO(日本電産シンポ(株))製MODEL:DTMB-5Bの張力計を用いた。
[耐炎化繊維束の幅Wと厚みdの比w/d]
耐炎化処理の終了した耐炎化繊維束を50m採取し、その耐炎化繊維束を実際の耐炎化炉に使用される1つの溝付ローラに糸掛けし、製造中の耐炎化張力になるように荷重をかける。図2に示すように、溝の中に繊維束が掛かった状態の溝の頂部から繊維束の溝底部からの距離が最高になる表面までの距離w1と元々の溝の深さw2の差を繊維束の厚みd(=w2−w1)とし、溝内における繊維束の幅が最大となる箇所での幅をwとし、wをdで割ってw/dを算出する。なお、w1、w2、wは定規にて目視で計測する。
耐炎化処理の終了した耐炎化繊維束を50m採取し、その耐炎化繊維束を実際の耐炎化炉に使用される1つの溝付ローラに糸掛けし、製造中の耐炎化張力になるように荷重をかける。図2に示すように、溝の中に繊維束が掛かった状態の溝の頂部から繊維束の溝底部からの距離が最高になる表面までの距離w1と元々の溝の深さw2の差を繊維束の厚みd(=w2−w1)とし、溝内における繊維束の幅が最大となる箇所での幅をwとし、wをdで割ってw/dを算出する。なお、w1、w2、wは定規にて目視で計測する。
[炭素繊維束の強度]
日本工業規格(JIS)-R-7601」(改訂年1986年3月1日)「樹脂含浸ストランド試験法に記載された手法により、求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、”BAKELITE”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の強度とする。
日本工業規格(JIS)-R-7601」(改訂年1986年3月1日)「樹脂含浸ストランド試験法に記載された手法により、求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、”BAKELITE”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の強度とする。
(実施例1)
耐炎化炉内の最高温度が240℃である空気で満たした耐炎化炉内に、単繊維繊度0.74デシテックス、フィラメント数24000本、総繊度17800デシテックス(dtex)の無撚のアクリル系前駆体繊維束を、0.17g/デシテックス(dtex)の耐炎化張力で、連続する溝付きローラ間の溝ピッチが7.5mmの溝付きローラに、連続する2つのローラ間の通過時間が全て3分となるようにジグザグ状に通して、総耐炎化時間が130分となるように耐炎化処理を行って無撚の耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは15、仮撚り数は0.2T/m、進入角θは0.3°であった。得られた耐炎化繊維について断面二重構造の有無を確認したところ、中空部分が全くない、すなわち断面二重構造の程度が0%である均一な構造の耐炎化繊維束であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1450℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.87GPaであった。
耐炎化炉内の最高温度が240℃である空気で満たした耐炎化炉内に、単繊維繊度0.74デシテックス、フィラメント数24000本、総繊度17800デシテックス(dtex)の無撚のアクリル系前駆体繊維束を、0.17g/デシテックス(dtex)の耐炎化張力で、連続する溝付きローラ間の溝ピッチが7.5mmの溝付きローラに、連続する2つのローラ間の通過時間が全て3分となるようにジグザグ状に通して、総耐炎化時間が130分となるように耐炎化処理を行って無撚の耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは15、仮撚り数は0.2T/m、進入角θは0.3°であった。得られた耐炎化繊維について断面二重構造の有無を確認したところ、中空部分が全くない、すなわち断面二重構造の程度が0%である均一な構造の耐炎化繊維束であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1450℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.87GPaであった。
(実施例2)
単繊維繊度1.11デシテックス、フィラメント数24000本、総繊度26600デシテックス(dtex)のアクリル系前駆体繊維束を用いるよう変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは13であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1350℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.69GPaであった。
単繊維繊度1.11デシテックス、フィラメント数24000本、総繊度26600デシテックス(dtex)のアクリル系前駆体繊維束を用いるよう変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは13であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1350℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.69GPaであった。
(実施例3)
耐炎化張力を0.21g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1400℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.91GPaであった。
耐炎化張力を0.21g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1400℃の窒素中、延伸倍率0.960として後炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.91GPaであった。
(実施例4)
耐炎化張力を0.12g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同じとした。この時の耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、この耐炎化繊維を1350℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1350℃の窒素中、延伸倍率0.960として、炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.74GPaであった。
耐炎化張力を0.12g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同じとした。この時の耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、この耐炎化繊維を1350℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1350℃の窒素中、延伸倍率0.960として、炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.74GPaであった。
(実施例5)
溝付きローラを6.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは13であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.67GPaであった。
溝付きローラを6.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは13であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.67GPaであった。
(実施例6)
溝付きローラを9.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは17であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1400℃の窒素中、延伸倍率0.960として炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.79GPaであった。
溝付きローラを9.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束を得た。この時のw/dは17であった。得られた耐炎化繊維束は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、得られた耐炎化繊維束を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1400℃の窒素中、延伸倍率0.960として炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.79GPaであった。
(実施例7)
連続する2つの溝付きローラ間の通過時間が1.5分となるように変更した以外は、実施例1と同じとした。この時の耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、この耐炎化繊維を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1500℃の窒素中、延伸倍率0.960として炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.87GPaであった。
連続する2つの溝付きローラ間の通過時間が1.5分となるように変更した以外は、実施例1と同じとした。この時の耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。その後、この耐炎化繊維を650℃の窒素中、延伸倍率1.05として前炭素化処理してから、1500℃の窒素中、延伸倍率0.960として炭素化処理を行って炭素繊維束を得た。この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.87GPaであった。
(実施例8)
連続する2つのローラ間の通過時間が2.5分となるようにジグザグ状に通して耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.89GPaであった。
(実施例9)
耐炎化処理中の繊維束に0.3T/m、溝付きローラに対する進入角θを0.5°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.91GPaであった。
(実施例10)
耐炎化処理中の繊維束に0.4T/m、溝付きローラに対する進入角θを0.7°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.89GPaであった。
(実施例11)
耐炎化処理中の繊維束に0.7T/m、溝付きローラに対する進入角θを1.3°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが若干見られたが、品位に問題はなかった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.65GPaであった。
(実施例12)
耐炎化処理中の繊維束に0T/m、溝付きローラに対する進入角θを0°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が3%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.60GPaであった。
(比較例1)
単繊維繊度1.11デシテックス、フィラメント数48000本、総繊度を53300デシテックス(dtex)のアクリル系前駆体繊維束を用いるよう変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは7であった。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が36%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.36GPaであった。
(比較例2)
耐炎化張力を0.07g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約20%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.40GPaであった。
連続する2つのローラ間の通過時間が2.5分となるようにジグザグ状に通して耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.89GPaであった。
(実施例9)
耐炎化処理中の繊維束に0.3T/m、溝付きローラに対する進入角θを0.5°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.91GPaであった。
(実施例10)
耐炎化処理中の繊維束に0.4T/m、溝付きローラに対する進入角θを0.7°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.89GPaであった。
(実施例11)
耐炎化処理中の繊維束に0.7T/m、溝付きローラに対する進入角θを1.3°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が0%である均一な構造であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが若干見られたが、品位に問題はなかった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.65GPaであった。
(実施例12)
耐炎化処理中の繊維束に0T/m、溝付きローラに対する進入角θを0°とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が3%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れはまったく見られず高品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.60GPaであった。
(比較例1)
単繊維繊度1.11デシテックス、フィラメント数48000本、総繊度を53300デシテックス(dtex)のアクリル系前駆体繊維束を用いるよう変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは7であった。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が36%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.36GPaであった。
(比較例2)
耐炎化張力を0.07g/デシテックス(dtex)と変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約20%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.40GPaであった。
(比較例3)
溝付きローラを4.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは8であった。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約48%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.13GPaであった。
溝付きローラを4.0mm幅の溝ピッチを有するものに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。この時のw/dは8であった。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約48%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.13GPaであった。
(比較例4)
連続する2つのローラ間の通過時間が7分となるように変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約19%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.37GPaであった。
連続する2つのローラ間の通過時間が7分となるように変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約19%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.37GPaであった。
(比較例5)
連続する2つのローラ間の通過時間が4.5分となるように変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約14%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.42GPaであった。
連続する2つのローラ間の通過時間が4.5分となるように変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。得られた耐炎化繊維は断面二重構造の程度が約14%であった。また、この時の炭素化処理途中の走行糸の状態を観察すると、毛羽、糸傷み、糸切れが存在し、低品位であった。また、得られた炭素繊維束の強度を測定したところ、5.42GPaであった。
本実施例などでの主要な条件および特性を表1にまとめた。
1:繊維束
2a、2b、2c:溝付きローラ
2a、2b、2c:溝付きローラ
Claims (4)
- 総繊度が8000〜45000デシテックスの前駆体繊維束を、0.10〜0.23g/デシテックスの張力で、溝ピッチが5〜10mmである複数の溝付きローラに、連続する2つの溝付きローラ間での通過時間が3分以下となるように、連続的に通過せしめて耐炎化処理し、次いで炭素化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
- 前記溝付きローラ上における前駆体繊維束は、その断面の幅wと厚みdとの比w/dが10以上である請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
- 耐炎化処理中の繊維束には、0.1〜0.5T/mの仮撚りが与えられてなる請求項1または2に記載の炭素繊維の製造方法。
- 耐炎化処理中の繊維束を溝付きローラに通過せしめるに際して、溝付きローラに対する繊維束の進入角θを0.1°〜1°とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
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