JP2007314582A - p21をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含有する、癌および再狭窄を治療する組成物 - Google Patents

p21をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含有する、癌および再狭窄を治療する組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】癌および再狭窄を治療する組成物を提供する。
【解決手段】治療が必要な癌患者をインビボで処置するための組成物であって、(i)治療に有効な量の、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクター;および(ii)医薬担体を含有し、該発現ベクターが、免疫療法剤、遺伝子治療剤、サイトカインまたはプロドラッグ変換酵素をコードする第二遺伝子をさらに含み;該第二遺伝子が、該p21をコードする遺伝子と同じ読み枠にある組成物を提供することによって上記課題が解決された。
【選択図】なし

Description

本発明は、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクターと医薬担体とを含有する組成物に関し、この組成物を投与することにより、in vivoで再狭窄および癌を治療および予防する方法を提供する。
細胞増殖と関係のある異常性を有する変異体イースト菌株の研究により、細胞周期調節タンパク質の同定は非常に容易になった。イーストにおいて規定されている遺伝子産生物の中で、Far 1(1)の哺乳類相同体、p21はサイクリン依存キナーゼの活性を変化させ、かつ細胞周期プログレッションおよび配列と関連づけられている(2〜13)。
WAF1、CIP1またはSDI1としても公知のp21は(11、12、14、15)、p53腫瘍サプレッサー遺伝子の下流ターゲットであり、悪性トランスフォーメーションと間接的な関係があった(15〜18)。DNAダメージへの応答におけるp53の誘発により、G1チェックポイントは静止するが(16〜19)、そのときDNA修復はS相におけるDNA複製の前に達成されている。p53の下流エフェクターとしての想像される役割と矛盾がなく、p21は増殖性細胞核抗原(PCNA)依存DNA複製を抑制するがin vitroにおけるDNA修復は抑制しないことがわかっている(20)。
Zhangらは、in vitroにおいてp21の研究をしている(Genes & Development(1994)8:1750)。p21がキナーゼ阻害剤として作用するので、これまでは正常細胞が活性サイクリンキナーゼを実質的に全く含有しないことが予想されていた。p21含有サイクリンキナーゼが活性および不活性の両状態において存在することを示すことにより、Zhangらは、p21が正常細胞における細胞周期プログレッションをコントロールするのに含まれると説明している。
Zhangらは、種々の腫瘍ウイルス腫瘍性タンパク質でトランスホームした線維芽細胞において、サイクリンキナーゼは二成分状態で存在し[サイクリン/CDK];その一方、正常な線維芽細胞においては、p21を含有する第四級複合体に複数のサイクリンキナーゼが存在することを見いだした[サイクリン/CDK/増殖性細胞核抗原(PCNA)/p21]。活性な複合体は、シングルp21分子を含有する。対照的に、不活性な複合体は複数のp21サブユニットを有している。
化学量論におけるp21の変化は、in vitroにおける複合体の活性から不活性への変換を説明するには十分であるが、Zhangらは「p21とサイクリンキナーゼとの結合は、in vivoにおける他の調節機序と絡み合っているに違いない」と確信している。Zhangらは「p21の非抑制レベルと結合することにより、in vivoにおいてこれらのCDK改質酵素にどのような影響があったのかは知られていない」と示している。
国際公開第94/09135号公報には、サイクリン複合体のサブユニット成分の検出を含む、細胞のトランスフォーメーションを診断するための方法および診断キットが記載されている。特に、該方法はサイクリン、PCNA、CDKsおよびp21、p19およびp16などの低分子量ポリペプチドの相互作用と関係する。
in vitroにおけるサイクリンキナーゼ抑制活性が明らかであるにも関わらず、腫瘍形成におけるp21の役割およびin vivoにおける悪性表現型を逆転するその能力はこれまで規定されていなかった。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
Chang & Herskowitz,Cell 63,999 (1990).
したがって、本発明の目的の一つは癌(腫瘍形成)をin vivoで治療および予防する方法を提供することである。
本発明の第二の目的は、再狭窄をin vivoで治療および予防する方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、末期分化(terminal differentiation)を誘発することにより細胞における抗腫瘍効果を誘発する方法を提供することである。この方法は、腫瘍の免疫認識を潜在的に容易にし得る細胞表面タンパク質の発現を変化させるのに、または二次的に細胞成長を阻害し得る因子の分泌を引き起こすのに有用である。
本発明により、腫瘍細胞成長および再狭窄におけるp21サイクリン依存キナーゼ阻害剤の役割が決定された。p21はp53により誘発され(6,7,15〜18)、したがってp53腫瘍抑制の下流エフェクターとして関係付けられていた(23)。本発明者らは、p21発現はこれらの腫瘍および再狭窄抑制効果をin vivoで生ずるのに十分であることを最初に直接的に示した。
p21発現により、分化に関連して、p21が接着分子等の遺伝子発現に直接影響を与え得るメカニズムをNF−κBが提供することにより、転写活性が容易になることを見いだした。腫瘍成長および再狭窄の抑制並びに分化した表現型の誘発は、遺伝子発現のパターンの変化から生じ、NF−kBにより一部分媒介されており、これは、末期分化および成長静止に到るp21誘発転写制御に起因する。末期分化の誘発により抗腫瘍効果を誘発するこれまでの試みは、細胞毒性薬剤またはホルモンの使用を含むものであり(25〜28)、この効果を達成するのに変化しやすい成功を有するものであった。
本発明は、治療が必要な癌患者をin vivoで処置するための組成物に関し、この組成物は、(i)治療に有効な量の、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクター;および(ii)医薬担体を含有し、ここで、該発現ベクターは、免疫療法剤、遺伝子治療剤、サイトカインまたはプロドラッグ変換酵素をコードする第二遺伝子をさらに含み;そして、ここで、該第二遺伝子は、該p21をコードする遺伝子と同じ読み枠にある。
本発明はまた、治療が必要な再狭窄患者をin vivoで処置するための組成物に関し、この組成物は、(i)治療に有効な量の、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクター;および(ii)医薬担体を含有し、ここで、該発現ベクターは、免疫療法剤、遺伝子治療剤、サイトカインまたはプロドラッグ変換酵素をコードする第二遺伝子をさらに含み;そして、ここで、該第二遺伝子は、該p21をコードする遺伝子と同じ読み枠にある。
本発明はまた、治療が必要な再狭窄患者をin vivoで処置するための組成物に関し、この組成物は、治療に有効な量の、プロドラッグ転換酵素をコードする遺伝子に融合させたp21をコードする遺伝子を含む発現ベクターを含む。
好ましくは、前記プロドラッグ変換酵素は、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼまたはβ−グルクロジナーゼである。
好ましくは、前記組成物は、医薬上許容できる担体をさらに含む。
好ましくは、前記発現ベクターは、ウイルスベクターである。
本発明はまた、治療が必要な再狭窄患者をin vivoで処置するための組成物に関し、この組成物は、治療に有効な量の、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクターを含み、ここで、該p21をコードする遺伝子は、プロドラッグ変換酵素をコードする遺伝子に融合している。
好ましくは、前記プロドラッグ変換酵素は、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼまたはβ−グルクロジナーゼである。
好ましくは、前記組成物は、医薬上許容できる担体をさらに含む。
好ましくは、前記発現ベクターは、真核生物ベクターまたはウイルスベクターである。
好ましくは、前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。
p21遺伝子は、細胞周期プログレッションに影響を与えるサイクリン依存キナーゼ阻害剤をコードするが、腫瘍成長を変えることにおけるこの遺伝子産生物の役割はこれまで確立されていなかった。本発明により、in vivoにおける悪性細胞の成長は、p21の発現により抑制されることが見いだされた。p21の発現により、G0/G1における細胞の蓄積は、形態変化およびおよび細胞分化となる。
本発明は、治療が必要な患者に、(i)p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクター;および(ii)医薬的に許容できる担体を含有する組成物の腫瘍抑制量を投与することを含む、癌または再狭窄の治療方法を提供する。
Xiong et al,Nature 366:701(1993)に記載のp21をコードするcDNAは、本明細書に含まれるものとする。
本発明に有用な適当な発現ベクターとしては、真核生物またはウイルスベクターがあげられる。有用な真核生物ベクターとしては、pRcRSVおよびpRcCMVまたは他のRSV、CMVまたは細胞増強剤および種々のポリアテニレート配列を有するp21の発現を推進するプロモーターがあげられる。ウイルスベクターを使用するのが好ましい。
ウイルスベクター系は、不完全遺伝子を含有する哺乳類に遺伝子をトランスファーするのに非常に効率的として示されてきた。例えば、本明細書に含まれる、Crystal Am.J.Med.92(6A):44S−52S(1992); Lemarchand et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89(14):6482−6486(1992)を参照のこと。複製およびトランスホーム能力を付与したレトロウイルスを使用するのが好ましい。
本発明に有用なp21を発現する適当なウイルスベクターとしては、(本明細書に含まれる)Davidson et al.,Nature Gen.3:219(1993)に記載されているアデノウイルスベクター、pAd−BglIIと組み合わせたAd5−360が挙げられる。アデノウイルスベクターを使用するのが好ましい。
好ましいアデノウイルスベクターとしては:(本明細書に含まれる)Davidson et al.,Nature Gen.3:219(1993)に記載されているADV;またはタイプ7001、またはタイプ1または12を含む他のアデノウイルスタイプ(Ranheim et al.,J. Virol.67:2159(1993); Green et al.,Ann.Rev.Biochem.39:701(1970)に記載されている)があげられる。
本明細書に含まれる、Sambrook,Fritsch,and Maniatis,“Molecular Cloning,A Laboratory
Manual”(2nd ed):pp.E.55.(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)に記載されているような従来の組換え技術を使用して、p21をこれらの発現ベクターに挿入し、細胞トランスフェクションに使用することができる。また、Davidson et al.,1993,Nature Gen.3:219−223またはLemarchand et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89(14):6482−6486(1992)に記載されている相同組換え技術を使用して発現ベクターを調製することができる。
本発明の発現ベクターは、さらにプロモーター等の調節要素および抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーを含有することができる。
ウイルスベクターがin vivoで摂取されて組み込まれ、挿入された作成物(construct)を含むウイルスDNAを発現することは詳しく確立されている。例えば、本発明に含まれる、Yoshimura et al.J.Biol.Chem.268(4):2300−2303(1993);Crystal Am.J.Med.92(6A):445−525(1992); Lemarchand et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89(14):6482−6486(1992)を参照のこと。
別の態様において、発現ベクターの他にも他の送達システムを使用してp21タンパク質を送達できることもまた理解される。主に、リポソームおよびDNA接合体の使用を含むこれらの技術は、上述した発現ベクターにより提供されるものと同様の送達率を提供することが期待されている。すなわち、発現ベクターを介してp21遺伝子を発現するよりも、ビヒクルにp21の治療量を混合することも可能なのである。
第二の別の態様において、p21を融合タンパク質として発現することができる。この態様において、p21をコードする遺伝子は、免疫療法剤、遺伝子治療剤(HLA−B7等)、タンパク質(サイトカイン、好ましくはGM−CSF、IL−2および/またはIL−12等)、プロドラッグ変換酵素(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼおよびβ−グルクロジナーゼ)またはシス−プラチナ等の抗癌剤をコードする遺伝子に融合する。
融合遺伝子は、本明細書に含まれる、Sambrook et al,“Molecular Cloning,A Laboratory Manuarl”(2nd ed):Cold Spring Harbor Laboratory Press,特に、17章に記載されているものから産生されるタンパク質である。
チミジンキナーゼは、本明細書に含まれるAU 8776075に記載されているようにして得ることができる。β−グルクロニダーゼおよびそれらの融合タンパク質は、本明細書に含まれる米国特許第5,268,463号および第4,888,280号公報に記載されている。シトシンデアミナーゼおよびそれらの融合タンパク質は、本明細書に含まれる国際公開第9428143号公報に記載されている。
また、ウイルスベクターとリポソームとの複合治療は、非常に見込みがあり、本発明における使用が予想される。Yoshimura et al.,J.Biol.Chem.,268(4):2300−2303(1993)は、本明細書に含まれる。
リポソームは、非常に効率的に病気の組織へ活性剤を送達することが知られている。例えば、医薬的または他の生物学的に活性な薬剤を効率的にリポソームに組み込ませて細胞に送達する。このように、本発明の作成物を適当にリポソームに形成して、選択した組織に送達することもできる。例えば商標名LIPOFECTIN(Life Technologies.Inc.,Bethesda,Md.)で入手できるカチオン性脂質から製造されるリポソームが好ましい。リポソームベースの治療について特に興味深いのは、系または代謝から通過する前は、リポソームは比較的安定で、比較的寿命が長いという事実である。さらに、リポソームは主要な免疫応答を生じることはない。
したがって、本発明の一観点において、p21をコードする遺伝子を含有するベクターをリポソームに組み入れて、特定の組織へ作成物を送達するのに使用する。リポソームは、作成物が細胞をトランスフェクトし、該細胞により発現され、最終的にはp21タンパク質を産生する手助けをするであろう。
本発明の組成物は、治療上効果的な量のp21発現ベクターおよび医薬上許容できる担体である。ウイルスベクターを投与するために、適当な担体、賦形剤、および他の薬剤を製剤に混合してp21の発現を向上させることができる。
多くの適当な製剤を、全ての薬品化学者に公知の処方集に見いだすことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition(1975),Mack Publishing
Company,Easton,Pa.18042(Chapter 87:
Blaug,Seymour)。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト、軟膏剤、ゼリー、ワックス、脂質、無水吸収塩基(anhydrous absorption bases)、水中油滴型または油中水滴型エマルション、エマルションカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含有する半固体混合物があげられる。
ウイルス粒子が製剤中で失活し、該製剤が生理学的に相溶性である場合、前述した任意の製剤がウイルスベクターによる治療に適当である。
投与されるp21の量は、患者の大きさおよび癌の進行に対する状態に依存する。従来技術を使用してベクターの制御要素を変更したり、投与されるウイルスベクター力価の量を変えることにより、p21発現量を患者の要求にあわせて調節することができる。一般的には、治療する細胞当たりおよそ50ウイルスベクターを送達するのが望ましい。アデノウイルスについては、製剤は一般的に1mL当たり1010ウイルス感染ユニットのオーダーで含有する。レトロウイルスについては、わずかにことなる力価を適用できる。本明細書に含まれる、Woo et al.,Enzyme 38:207−213(1987)を参照のこと。適当な投与量レベルを決定するのに、本明細書に含まれる、Kay et al.,Hum.Gene Ther.3:641−647(1992);Liu
et al.,Somat.Cell Molec.Genet.18:89−96(1992); and Ledley et al.,Hum.Gene Ther.2:331−358(1991)をさらに参考にできる。
発現ベクターを投与するために調製される特定の製剤に依存して、本発明の組成物の投与は種々の方法により達成することができる。本発明の組成物は発現ベクター(または発現ベクターを含有するリポソーム)を、本明細書に含まれる米国特許第5,328,470号明細書に記載されているように、腫瘍に直接投与するのが好ましい。
乳房、腎臓、メラノーマ、前立腺、グリア芽腫、ヘプトカルシノーマ(heptocarcinoma)、大腸および肉腫癌タイプを本発明により治療することができる。これらのタイプの癌を診断およびモニターすることは当該技術分野において周知である。
血管形成由来の動脈外傷としては、再狭窄に到り得る一連の増殖性(proliferative)、血管作動性および炎症応答があげられる。この方法をin vivoで刺激する数種の因子がこれまでに規定されてきたが、応答を制限する特定の細胞遺伝子産生物の役割はよく理解されていない。本発明者らは、p21がバルーンカテーテル外傷への増殖性応答を限定するように作用することを見いだした。血管内皮および平滑筋細胞成長を、p21 CKIがサイクリン依存キナーゼおよび細胞周期のG1相の進行を抑制する能力により静止させた。再狭窄は、本明細書に含まれる、Epstein et al.,JACC 23(6):1278(1994)and Landau et al.,Medical Progress 330(14):981(1994)に記載されているように診断およびモニターすることができる臨床的な状態である。
本発明の組成物を使用して全ての哺乳類、特にヒトを治療することができる。
本発明の組成物は、免疫療法剤、遺伝子治療剤(HLA−B7等)、タンパク質(サイトカイン、好ましくはGM−CSF、IL−2および/またはIL−12)等、プロドラッグ変換酵素(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼおよびβ−グルクロジナーゼ等)およびシス−プラチナ等の抗癌剤と組み合わせて投与することができる。また、本発明の組成物は、上述の免疫療法剤、遺伝子治療剤、タンパク質、プロドラッグ変換酵素および抗癌剤をコードする遺伝子を含有する発現ベクターと組み合わせて投与することもできる。また、該組成物は養子細胞移入治療中に投与することもできる。
これまで本発明について一般的に記載してきたが、具体的なものとして与えたある特定の実施例を参照することによりさらに本発明を理解できる。特に規定しない限り、本発明を限定するものではない。
(実施例1:in vivoで再狭窄を治療するためのp21サイクリン依存キナーゼの使用)
本研究において、in vitroにおける内皮および平滑筋細胞およびin
vivoにおける動脈バルーン外傷のブタモデルにおいてp21発現が与える影響を分析した。
(細胞培養およびトランスフェクション)
発達の第一段階にある(primary)ブタ血管内皮および平滑筋細胞を、6月齢の国産のヨークシャーブタの大動脈からとり出し、第2と第5継代(passage)の間のものを使用した。内皮および平滑筋細胞を、10%FBSと混合した培地199で70%集密まで増殖させた。DMEMおよび2%FCS中で1時間、細胞をADV−p21またはADV−△E1(MOI300/cell)に感染させ、普通培地を1時間後に添加した。コントロール細胞は感染させないままであり、10%FBSと混合したM199中で保有した。24時間後、1ウェルあたり6×104cellで6枚のウェルに細胞を分けた。細胞を0、2、5、7および10日で収集し、血球計数器で測定した。細胞生存力をトリパンブルーエクスクルージョンにより評価した。
(細胞周期分析)
上述したように、細胞を、MOI300/cellにおいてADV−△E
1またはADV−p21ベクターに感染させ、収集し、PBSで2回洗浄し、70%エタノール(EtOH)中(King et al.,Cell 79,563−571(1994))、4℃において30分間固定した。その細胞を、PBS1mL中、37℃において30分間、1Uのデオキシリボヌクレアーゼ−フリーリボヌクレアーゼで処理し、0.05mg/mLのヨウ化プロピジウム(PBS中で10×ストックとして調製したもの)に再懸濁した。細胞を、FACScanモデル(Becton Dickinson)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。蛍光測定を集積してDNA含有量の分布曲線を作成した。細片のため蛍光発生は分析前に減じた。
(アデノウイルスベクター)
組換えアデノウイルスベクター、ADV−p21を、サブゲノム360 DNA、E3領域において欠失しているAd5誘導体とp21発現プラスミド、pAd−p21との間で相同組換えにより構成した。つまり、p21の発現を制御するラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)を使用して、p21発現ベクターのHind III−XbaI フラグメントをpAd−Bgl IIのBgl
IIサイトに導入することにより、pAd−p21プラスミドを調製した(Heichman & Roberts, Cell 79,557−562(1994))。これらの複製欠損E1A、E1B欠失ウイルスの構造を、サザンブロッティングにより確認した。組換えウイルスは全て、上述したように293 cellで増殖させ、精製した(Davidson et al,1993,Nature Gen.3:219−223)。塩化セシウム精製ウイルスをPBSに対して透析し、13%グリセロール−PBS溶液中で貯蔵用に希釈し、最終濃度1〜3×1012ウイルス粒子/mL(0.8〜5×1010pfu/mL)を得た。全てのストックを0.45μmフィルターで滅菌し、3T3細胞上、MOI10で、感染により複製成分アデノウイルスの存在について評価した。これらの実験で使用したストックは、複製成分ウイルスを全く生じなかった。
(ブタ動脈外傷)
麻酔および挿管後、国産ヨークシャーブタ(12〜15kg)に腸骨大腿骨動脈の無菌外科曝露(sterile surgical exposure)を行い、二重バルーンカテーテル(C.R.Bard,Inc.)を腸骨大腿骨動脈に挿入した。近位のバルーンを500mmHg圧までふくらませて、5分間、オンライン圧力変換器により測定した。外傷から1、7および21日後に動物を犠牲にした。
(in vivo遺伝子トランスファー)
上述したように、二重バルーンカテーテルを使用してヨークシャーブタの腸骨大腿骨動脈において直接遺伝子トランスファーを行った(Nabel et al.,1990,Science 249:1285−1288)。各動物において、両腸骨大腿骨動脈を力価1×1010pfu/mLにおいて同じベクターで感染させ、各動物に0.7mLを使用した(最終投与量7×109pfu)(Ohno et al,1994,Science 265:781−784; Chang et al,1995,Science 267:518−522)。
ADV−p21(n=28 動脈)またはADV−△E1(n=28 動脈)ベクターに感染させた血管セグメントを7または21日後に切除した。内膜細胞増殖を評価するために、7日で犠牲にした動物に、死の1時間前に5−ブロモ−2’−デオキシシトシン(BrdC)(Sigma,St.Louis,MO)を全投与量25mg/kgで静脈内注入した。各動脈は、記載されているようにして同じ方法で処理した(Ohno et al,1994,Science 265:781−784)。NIHガイドラインに従い、動物実験はすべて、動物の使用および保護に関するミシガン大学委員会の認可を得て行った。
(RT−PCR分析)
トリゾール試薬(GIBCO/BRL)を使用し、製造業者の手順にしたがって全RNAを調製した。つまり、動脈サンプルをトリゾール試薬中でホモジナイズした。RNAをエタノール(EtOH)中で沈殿させて、冷やした75%EtOHで3回洗浄し、乾燥およびリボヌクレアーゼフリーTE緩衝液中に再懸濁した。逆転写酵素(RT)が存在する場合としない場合とで、プライマー:5’−GAG ACA CCA CTG GAG GGT GAC TTC G−3’
(センス);5’−GGG CAA ACA ACA GAT GGC TGG CAA C−3’(アンチセンス)と共にp21遺伝子についてPCRを行った(Muller et al,1994,Circ.Res.75:1039−1049)。アンチセンスプライマーは、内因性ブタp21RNAではなく組換えp21RNAに特異的であった。
(細胞増殖および形態測定)
細胞増殖の測定を、BrdCに対するモノクローナル抗体を用いてバルーン外傷およびアデノウイルス感染後7日で行った。動脈切片を固定、包埋および切断し、モノクローナル抗−5−ブロモ−2’−デオキシシチジン抗体を使用して免疫組織化学を行い(Ohno et al.1994,Science 265:781−784)、増殖性細胞の核をラベルした。各動脈について、内膜のラベルした核およびラベルしていない核の数を、顕微鏡ベースのビデオイメージ分析システム(Image One System,Universal Imaging Cororation,Westchester,PA)を使用して測定した。増殖指数を、全細胞数に対するラベルした細胞の比として計算した。
内膜および内側の横断面積を、イメージ分析システムを使用して動脈外傷およびアデノウイルス感染の2cm領域にわたる各動脈からの4つの切片について測定した(Ohno et al,1994,Science 265: 781−784)。各動脈について培地に対する内膜(I/M)面積比を、4つの切片の平均I/M面積比として測定した。
(免疫組織化学)
記載された方法(Ohno et al,1994,Science 265:781−784; Muller et al,1994,Circ.Res.75:1039−1049)を使用して、BrdC、平滑筋α−アクチンおよびp21に対する抗体について免疫組織化学的研究を行った。以下の発達の第一段階にある(primary)抗体を使用した:モノクローナルマウス抗−BrdC抗体、1:1000希釈(Amersham Life Sciences);モノクローナルマウス抗−平滑筋αアクチン抗体、1:1500希釈(Boehringer Mannheim Biochemical);およびポリクローナルマウス抗−ヒトp21抗体、1:1500希釈(Santa Cruz)。動脈片を染色しない、精製したマウスIgG2b抗体、1:100希釈(Promega)を使用してコントロール実験を行った。スライドをストレプトアビジン−西洋わさびペルオキシダーゼ複合体(Vector Laboratories)またはベクタステインABC−アルカリホスファターゼ試薬(Vector Laboratories)のいずれかにより展開し、メチルグリーンで対比染色した。
(統計学的分析)
ADV−p21およびADV−△E1動脈間の内膜BrdCラベル指数およびI/M面積比を、2つの尾状、不対のt−試験により比較した。0.05レベルにおいて仮説が拒否され得ないとき、統計学的に有意であった。
(結果)
(p21の発現が血管細胞増殖を抑制し、かつin vitroにおける細胞周期静止を誘発する)
p21が血管細胞成長および細胞周期分布に与える影響を検討するために、静止状態のブタ血管内皮および平滑筋細胞に、in vitroでアデノウイルスベクター、ADV−p21すなわちE1欠失を含有するコントロールベクター、ADV−△E1を感染させ、10%FBS中でインキュベーションにより刺激して増殖させた。未感染またはADV−△E1感染細胞を血清に曝露することにより、内皮および平滑筋細胞の増殖が早くなった。対照的に、血管内皮および平滑筋細胞におけるp21の発現は、>90%で細胞増殖が抑制された;これらの細胞は、トリパンブルーエクスクルージョンにより評価されたように、なお生存可能であった(>95%)。血管内皮および平滑筋細胞におけるp21の発現はまた、ヨウ化プロピジウム染色により評価されたように、G0/G1において細胞を集積させた。これらのデータから、細胞は、p21が引き起こす細胞死よりもp21発現による細胞周期において抑制されることが示唆される。
(p21はin vivoにおけるバルーン外傷動脈において誘発される)
p21がin vivoで血管細胞成長を調節する能力を検討するために、まず、p21発現が外傷動脈において誘発されるかどうかを測定した。ブタ腸骨大腿骨動脈を、傷つけないかまたはバルーン血管形成により傷つけて、p21発現後、1、7および21日に外傷セグメントを分析し、p21抗体により免疫組織化学により評価した。この動脈外傷のブタモデルは、3週間で内膜肥厚となった(Ohno et al,1994,Science 265:781−784)。外傷の特徴は、動脈に傷をつけてから最初の7日間は平滑筋細胞増殖が早く、次の2週間で細胞外基質の生成のため内膜が拡大することである。通常の、傷をつけていないブタ動脈はp21を全く発現しなかった。動脈に傷をつけて1日後、p21タンパク質は内膜に存在していなかった;しかしながら、7日で、内膜平滑筋細胞のおよそ50%にp21タンパク質が存在した。21日で、p21発現は内弾性薄膜の隣の、内膜の低領域に存在するが、その領域では細胞増殖は存在しなかった(Ohno et al,1994,Science 265:781−784)。実際、p21発現は一般的に平滑筋細胞増殖と逆の相関関係を有した。これらの知見から、p21発現は外傷動脈における血管細胞増殖の静止と関連することが示唆される。
(外傷動脈におけるp21発現は内膜肥厚化の発達を制限する)
p21がin vivoで血管細胞成長に直接与える影響を評価するために、p21ベクターを、外傷直後のブタ動脈に導入した。国産ブタの右および左の腸骨大腿骨動脈をバルーン外傷させ、二重バルーンカテーテルを用いて、ADV−p21またはADV−△E1で感染させた(全投与量、1×1010pfu/mL、0.7×1010pfu)。in vivoにおけるADV−p21の遺伝子移入を、外傷を与えたブタ動脈において、感染して7日後にRT−PCR分析により実験した。p21RNAを、感染させた左および右腸骨大腿骨動脈においてRT−PCRにより検出したが、同じ動物からの未感染の頸動脈およびADV−△E1未感染および感染させた動脈においては検出されなかった。
次に、p21発現がin vivoにおける内膜細胞成長に与える影響を、遺伝子移入から7日後にBrdCの内膜細胞への導入量を測定し、3週間でI/M面積比を測定することにより2月評価した。遺伝子移入から7日後、ADV−△E1動脈と比較して、ADV−p21感染動脈において内膜BrdC導入が35%減少した(5.3±0.9% vs.8.1±0.4%,p=0.035)。これらのBrdCラベル内膜細胞を、平滑筋αアクチンに対するモノクローナル抗体で共染色(costain)したが、これは内膜平滑筋細胞増殖の抑制はADV−p21動物に存在することを示唆している。ADV−△E1動脈と比較して、ADV−p21感染動脈においてI/M面積比が有意に37%減少した(0.37±0.06 vs.0.59±0.06,p=0.015)。これらの結果から、バルーン外傷時のADV−p21による動脈感染により、内膜平滑筋細胞の増殖が抑制され、かつネオ内膜(neointima)の発達を有意に制限することが示唆される。
(実施例2:p21サイクリン依存キナーゼ阻害剤を使用してin vivoでの腫瘍形成能を抑制する)
この研究において、p21発現がin vitroおよびin vivoでのマウスモデルにおける腫瘍成長に与える影響を分析した。
(細胞周期分析)
細胞を、MOI200〜300においてADV−△E1またはADV−p21ベクターに感染させるか、またはDNA/リポソーム複合体によりp21発現ベクターでトランスフェクトした。上述したように、細胞を感染、収集し、PBSで2回洗浄し、70%EtOH中、4℃において30分間固定した。その細胞を、PBS1mL中、37℃において30分間、1Uのデオキシリボヌクレアーゼ−フリーリボヌクレアーゼで処理し、最終的に、0.05mg/mLのヨウ化プロピジウム(PBS中で10×ストックとして調製したもの)に再懸濁し、細胞を、FACScanモデル(Becton Dickinson)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。蛍光測定を集積してDNA含有量の分布曲線を作成した。細片のため蛍光発生は分析前に減じた。
(p21のウェスタンブロット検出)
3〜5×106cellを示した時間において収集し、1mLの50mMトリス−HCl(pH6.8)、100mM DTT、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、10%グリセロールで溶解し、5分間煮沸した。最終的に、サンプルを10,000rpmにおいて5分間回転させ、上澄みを捕集した。20μLを15%SDS−PAGEに装入し、ニトロセルロース膜にブロットした。抗ウサギ西洋わさびペルオキシダーゼ二次抗体および二次(subsequent)ECL化学発光検出器(Amersham)と共に抗タンパク質ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz)を使用してp21タンパク質を目に見えるようにした。
(p21の遺伝子移入)
10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改質イーグル培地(DMEM)において細胞を維持した。組換えアデノウイルスベクター、ADV−p21を、サブ360ゲノムDNA、E3領域において欠失しているAd5誘導体と、p21発現プラスミド、pAd−p21との間で相同組換えにより構成した。これらの組換えアデノウイルスベクターは、欠失したE1AおよびE1B領域に配列を有し、このウイルスに非許容細胞を複製およびトランスホームする能力を付与する。つまり、D.Beach博士およびG.Hannon博士から親切にも提供された、pRc/CMV−p21由来のNru IおよびDra III フラグメント(Xiong et al,Nature 366,701(1993);
Serano et al,Nature 366,704(1993))を、Ad5ゲノムの左手側の配列は有するが、E1AおよびE1Bは有しない、pAd−Bgl IIのBgl IIサイト(Davidson et al,NatureGenet.3,219(1994))に導入することにより、pAd−p21プラスミドを調製した。上述したようにしてウイルスを調製した(Ohno et al,Science 265,781(1994))。これらのウイルスの構造は、サザンブロッティングにより確認した。組換えウイルスは全て293細胞で増殖させ、記載されているようにして精製した(Davidson et al,Nature Genet.3,219(1994))。塩化セシウム精製ウイルスをPBSに対して透析し、13%グリセロール−PBS溶液中で貯蔵用に希釈し、最終濃度1〜3×1012ウイルス粒子/mL(0.8〜5×1010pfu/mL)を得た。ストックは全て0.45μmフィルターで滅菌し、3T3細胞上、MOI10で、感染により複製成分アデノウイルスの存在について評価した。これらの実験で使用したストックは、複製成分ウイルスを全く生じなかった。
pRc/CMV−p21由来のp21 cDNAをpRC/RSV(Invitrogen)に導入することにより真核生物発現プラスミド、pRC/RSV
p21を調製し、カルシウムホスフェートトランスフェクションを使用することにより293細胞のトランスフェクトを行った(Perkins et al,提出原稿)。
(バイスタンダー(bystander)アッセイ)
Dr.K.Murazkoにより親切にも提供された、U373ヒトグリア芽腫細胞を、ADV−p21で感染させた(MOI200)。1日後、細胞をトリプシン処理し、計測し、示した数の未感染のU373細胞と共に混合した。混合した集合それぞれについて10,000cellを96ウェルディスクに置いた。5日後、MTTアッセイ(Mosman,J.Immunol.Methods 65,55(1983))を行って、これらの細胞集団の増殖率を測定した。
(悪性細胞におけるp21の遺伝子移入および細胞周期プログレッションに与える影響)
p21が細胞周期分布に与える影響を、アデノウイルスベクター、ADV−p21、または組換えp21を有しない同様のE1欠失ウイルス、ADV−△E1で感染させることにより腫瘍細胞系において検討した。アデノウイルスベクターにおけるp21の発現は、CMVエンハンサー/プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化配列により調節した。典型的な悪性腫瘍細胞系、B16BL6メラノーマ内でのp21の発現により、細胞周期のG0/G1相における細胞の集積となり、これは、G1/S境界において優勢的に静止することを示唆している(図1A)。組換えp21発現を、マウス(Renca)またはヒト(293)腎細胞癌ライン、およびマウス(B16BL6)メラノーマ細胞系において、ウェスタンブロット分析を使用することにより確認した。アデノウイルスベクター由来の容易に検出できるタンパク質発現は、遺伝子を導入後、〜1日で達成された(図1B、レーン4、5、13、14vs.1〜3、10〜12)。また、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー/プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位により調節した真核生物発現プラスミドは、293細胞に匹敵する発現を示した(図1B、レーン7、9 vs.6、8)。どちらの場合も、細胞分裂の抑制と相関関係がある組換えタンパク質および同じ調節要素を有する他のベクターの発現は、本明細書において記載したp21の効果を示さなかった。
(p21の分化および形態学的影響)
細胞成長に与えるp21の影響をin vitroで検討したとき、ADV−p21に感染した腫瘍細胞は、細胞質比に対して核が増加したり、接着および成長静止が増加したような、分化した表現型と矛盾のない形態学的変化を示した(図2、図3Aおよび図3B)。ヒトメラノーマ細胞、UM−316は、核凝縮およびADV−p21に感染後の電子顕微鏡によるメラノソーム形成において4倍よりも多く増加した(図2、p≦0.005、Wilcoxon rank sum test)。これらの細胞において、メラニン生成における〜5倍の増加は、細胞およびin vitroでの上澄み画分において、遺伝子を移入後2日内に観察された(図3Aおよび図3B)。
2、3の系において、長期の細胞培養後の末期分化の結果として細胞死が観察されたが、DNA断片化のパターン(図4)、ヨウ化プロピジウム染色またはTdT免疫染色により決定されるようにアポトーシスの形跡は全くなかった。また、未感染および感染した細胞の混合物は、バイスタンダー効果がないことがわかったが(図4)、これはレシピエント細胞における遺伝子移入および発現が必要とされており、かつp21の効率的な感染が樹立腫瘍の成長を撲滅するのに必要とされることを示唆している。
(in vivoにおける腫瘍細胞成長の抑制)
p21がin vivoで悪性細胞に与える影響を評価するために、Renca細胞をADV−p21、ADV−△E1コントロールに感染させ、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)と共にインキュベートし、レシピエントマウスに接種した。p21発現は、2×105cellを接種した全ての動物において腫瘍の成長を完全に抑制した(図5のA、B)。p21の発現が感染した細胞の免疫原性を変化させ、その結果、免疫機構を通して作動することが可能であるため、CD−1 nu/nu免疫不完全マウスにおいて同様の研究は行わなかった。腫瘍成長の同様の抑制がこれらの動物において観察され(図5のC、D)、これは細胞増殖に直接影響を与えることと矛盾がない。
ADV−p21が樹立腫瘍の成長を変化し得るかどうかを検討するために、Renca腫瘍小結節(〜0.5cm)を、PBS、ADV−△E1またはADV−p21のいずれかと共に注入した。ヒト胎盤アルカリホスファターゼレポーターをコードするアデノウイルスベクターの樹立腫瘍への直接移入により、毎日5回繰り返す109PFUの注入後、定量的な形態計測により確立された細胞の95%まで感染を引き起した。この処置もまた腫瘍成長を抑制し、注入を繰り返して行うとき(毎日5回、1週間後に繰り返した)、生存および予め検出し得る小結節と共にマウスに肉眼でみえる腫瘍を検出する能力がないことにより決定した長期間の治療(>40日)に到り得る。いずれの場合も、これらの結果は統計学的に有意であった。
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これまで十分に本発明を説明してきたが、本件明細書に記載した本発明の趣旨または範囲から離れずに多くの変更および修飾が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
悪性細胞系における細胞周期分析およびp21発現を示すグラフである。 アデノウイルスおよび真核生物発現ベクターにより形質導入したRenca細胞系のウェスタンブロットを示す電気泳動ゲルの写真である。 ADV p21をRenca腫瘍細胞に導入し、接種後の腫瘍成長の抑制を示すグラフである。腫瘍の存在(A、C)と腫瘍の直径(B、D)の評価を行った。 ADV p21を樹立(established)Renca腫瘍細胞にin vivo導入した場合に腫瘍成長を抑制する影響を示すグラフである。腫瘍直径は、ノギスを使用して垂直方向の大きさを2カ所測定した。 ADV p21を樹立(established)Renca腫瘍細胞にin vivo導入した場合に腫瘍成長を抑制する影響を示すグラフである。腫瘍直径は、ノギスを使用して垂直方向の大きさを2カ所測定した。 悪性細胞成長および分化に与えるp21のin vitroの影響を示す写真である。示した処置を行って5日後の細胞を位相差顕微鏡により観察した。倍率(20×)。 ADV p21またはコントロールベクターで処理した樹立腫瘍を有するマウスの生存率を示すグラフである。BALB/cマウス(A、B)またはnu/nu CD−1マウス(C、D)に、MOI300で、PBS(白四角、黒四角)、ADV−p21(白菱形、黒菱形)、ADV−△E1(白三角、黒三角)でin vitroでインキュベートしたRenca細胞を注入した。
(配列表)
SEQUENCE LISTING
<110> THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN.
<120> A pharmaceutical composition for treating a cancer or restenosis,
comprising an expression vector containing a gene encoding p21.
<130>
<160> 2
<170> PatentIn Ver. 2.1
<210> 1
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Primer
<300>
<400> 1
gagacaccac tggagggtga cttcg 25

<210> 2
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Primer
<400> 2
gggcaaacaa cagatggctg gcaac 25

Claims (1)

  1. 治療が必要な癌患者をin vivoで処置するための組成物であって、
    (i)治療に有効な量の、p21をコードする遺伝子を含有する発現ベクター;および
    (ii)医薬担体
    を含有し、ここで、該発現ベクターが、免疫療法剤、遺伝子治療剤、サイトカインまたはプロドラッグ変換酵素をコードする第二遺伝子をさらに含み;
    そして、ここで、該第二遺伝子が、該p21をコードする遺伝子と同じ読み枠にある、組成物。
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