JP2007308457A - 2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩の製造方法 - Google Patents

2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】メチルマグネシウムクロリドを用いて、工業的規模で高純度かつ高収率に2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩を製造する方法を提供する。
【解決手段】2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとを反応させて2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を製造する方法であって、前記2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとの反応における反応温度が50℃以下に制御されながら行われることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、フォトレジスト原料である2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートの合成中間体等として有用な、2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩の製造方法に関する。
2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、特に2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートを酸解離性モノマーとして共重合された樹脂は、高いドライエッチング耐性、高解像性、基板への良好な接着性等、優れた性能を有するフォトレジスト材料として知られている。2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートの製造方法としては、2−アダマンタノンを出発原料として、2位をアルキル化剤でアルキル化して加水分解した後、メタクリル酸の無水物あるいはハロゲン化物と反応させる方法が一般的に行われている。アルキル化には、主にメチルマグネシウムブロミドを用いたグリニャール反応が用いられており、例えば特許文献1の実施例には、テトラヒドロフラン(以下単にTHFともいう。)溶媒下、2−アダマンタノンにエチルマグネシウムブロミドを反応させて2−エチル−2−アダマンタノールのマグネシウムブロミド塩とした後、加水分解することによって、2−エチル−2−アダマンタノールを合成する方法が開示されている。また、特許文献2の実施例には、同様にメチルマグネシウムブロミドを用いて2−メチル−2−アダマンタノールを合成する方法が開示されている。
特開2001−213826号公報 特開2001−322950号公報
一般的に、グリニャール試薬としては、アルキルマグネシウムブロミドの他、アルキルマグネシウムクロリドも有用であることが広く知られている。しかしながらメチル化剤としてのグリニャール試薬としては、メチルマグネシウムブロミドの使用が一般的であり、メチルマグネシウムクロリドの使用は、一般的ではなかった。その理由としては、メチルマグネシウムクロリドを製造するためには、常温でガスであるメチルクロリドをマグネシウムと反応させなければならず、液体として扱えるメチルブロミドを原料として使用する場合と比較して、取り扱いや保管が行いにくいという点があげられる。
ただその一方で、メチルマグネシウムクロリドは反応性が高く、またメチルマグネシウムブロミドよりも比較的安価に原料を入手することができることから、工業的規模での合成に適した試薬であるといえる。
さらにメチルマグネシウムブロミドの原料となる臭化メチルは、オゾン層破壊物質に指定されていることから、今後生産、消費が制限されていくことが予想されるため、環境保護の観点からも工業的な大規模な生産を行う場合には特にその使用を回避することが望ましいといえる。
これらの理由から今後将来的には、メチルマグネシウムクロリドの使用が求められるが、メチルマグネシウムクロリドは、同ブロミドと比較して溶媒に対する溶解度、ケトンに対する反応性、保存安定性、溶液粘度など工業的に実際に採用する上で極めて重要な性質が異なる点が多いにもかかわらず、上記の理由から検討が実施されていないのが実情であった。公知文献においてもメチルマグネシウムハライドとの概念的で包括的な記載はされているものの、メチルマグネシウムクロリドそのものを用いた十分な検討結果は記載されておらず、その最適な使用の形態は明らかになっていなかった。
例えば、2−アルキル−2−アダマンタノールの合成においては、特許文献1のように、明細書中にグリニャール試薬の例示化合物としてのアルキルマグネシウムクロリドの記載はあるものの、具体的な実験条件については何ら検討されていない。特にグリニャール試薬を用いた2−アルキル−2−アダマンタノールの合成においては、2−アダマンタノンの嵩高さのために、目的の2−アルキル−2−アダマンタノールの他に、アダマンタノンが還元された2−アダマンタノールが生成することが知られており、この副生を抑制するための反応条件の設定が重要となる。しかしながら、マグネシウムクロリドに関しては詳細な実験を元にした反応条件が記載されていない上に、メチルマグネシウムブロミドと性質が異なるため、従来技術であるメチルマグネシウムブロミドの技術をそのまま適用すると反応条件によっては、2−アダマンタノールが多量に副生してしまうことが本発明者の研究によって明らかとなった。よって、工業的な製造のためには副反応を抑え、高収率で2−アルキル−2−アダマンタノールを得るための条件の検討が必要であった。
そこで、本発明は、メチルマグネシウムクロリドを用いて、工業的規模で高純度かつ高収率に2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の反応温度以下に制御することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の第一の態様は、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとを反応させて2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を製造する方法であって、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとの反応における反応温度が50℃以下に制御されながら行われることを特徴とする2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
この発明によれば、副反応を効果的に抑え、高純度かつ高収率に2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を製造する方法を提供することができる。
この態様において、反応温度は40℃以下であることがより好ましく、さらには30℃以下であることがより好ましい。
本発明の第二の態様は、請求項1〜3のいずれかの製造方法で得られた2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を水と接触させることを特徴とする2−メチル−2−アダマンタノールの製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
この発明によれば、副反応を効果的に抑え、高純度かつ高収率に2−メチル−2−アダマンタノールを製造する方法を提供することができる。
本発明の製造方法は、グリニャール試薬としてメチルマグネシウムクロリドを使用しており、メチルマグネシウムブロミドを使用する製造方法と比較して、反応性が高く、また原料を安価で入手できる点、さらに今後は、工業的規模での生産においては特に環境負荷の小さな製造法(例えば温暖化ガスの放出が少ない方法)を選択することが望まれる事から、優れていると言える。また、反応温度を特定の範囲とすることによって副反応を抑えることができ、高純度かつ高収率で生産することができる。
本発明のこのような作用および利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
本発明は、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドを原料として2−メチル−2−アダマンタノールおよびそのマグネシウムクロリド塩を製造する方法に関するものであり、反応温度を制御することを特徴とするものである。以下本発明について詳細に説明する。
一つ目の原料である2−アダマンタノンは、市販品として広く入手可能であり、また、アダマンタンやアダマンタノールを硫酸等によって酸化することによって製造することもできる(例えば特開平11−189564号公報、特開2002−145820号公報等)。
他方の原料のグリニャール試薬であるメチルマグネシウムクロリドは市販品として溶液の状態で購入することができ、それを適当な濃度に希釈して使用することもできるが、グリニャール試薬の調製法は広く知られており、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライムなどの非プロトン性の極性溶媒下、メチルクロリドと金属マグネシウムとを反応させることによって、容易に合成することができる。これをそのまま、あるいは必要に応じて精製を行ったものを本発明の原料として使用することができる。
2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとの反応は、溶媒中で混合されることによって速やかに進行する。
各原料の添加順序に制限はなく、反応容器中で予め溶媒に溶解させておいた2−アダマンタノンにメチルマグネシウムクロリドの溶液を添加してもよいし、逆に、反応容器中で予め溶媒に溶解させておいたメチルマグネシウムクロリドに、粉末あるいは溶液状態の2−アダマンタノンを添加してもよい。また、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとを同時に反応容器に添加しながら反応させてもよい。2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドの添加比率は、通常、2−アダマンタノン1モルに対してメチルマグネシウムクロリド1.0〜3.0モル、好ましくは1.0〜2.0モルである。メチルマグネシウムクロリドの量が少なすぎると、仕込んだ2−アダマンタノンが未反応で残留してしまうので好ましくなく、また多すぎると無駄にメチルマグネシウムクロリドが残留するため経済的に好ましくない上に、クエンチの際に水と激しく反応して危険である。
反応に使用される溶媒としては、通常のグリニャール反応の溶媒として使用される一般的な溶媒を使用することができ、具体的には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族エーテル類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの脂環式エーテル類、ジフェニルエーテルなどの芳香族エーテル類が好ましく用いられる。これらは単独で用いても、2種以上の混合溶媒であってもよく、また反応系に添加される各原料が異なった溶媒に溶解されていてもよい。溶解性や安全性、コスト等のバランスの観点からはテトラヒドロフランが最も好ましく用いられる。
本発明においては、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとを反応させる際の反応温度は、溶媒の種類に関わらず50℃以下に制御される。
従来、2−アダマンタノンとメチルマグネシウムブロミドの反応は、特開2001−32950号公報に記載のように−20℃〜100℃といったように幅広い温度範囲を設定するだけで、厳密な温度制御は要求されていなかった。また、本発明のように、メチルマグネシウムブロミドと比べて反応性の点で有利なメチルマグネシウムクロリドを2−アダマンタノンに適用する使用する場合、通常できるならば高い反応速度が得られる高い温度領域で反応を行うのが効率的であると考えられていた。ところが、メチルマグネシウムクロリドは反応性が高く、高い温度領域で反応を行うと逆に目的物の純度、収率が下がるという問題が本発明者らの研究で明らかとなった。
具体的には、従来、グリニャール試薬を用いた2−アルキル−2−アダマンタノールの合成においては、2−アダマンタノンの嵩高さのために、目的の2−アルキル−2−アダマンタノールの他に、アダマンタノンが還元された2−アダマンタノールが生成することは知られていた。しかしながら、メチルマグネシウムクロリドを用いた場合には、予想外に高温領域で2−アダマンタノールが生成しやすい事が判明し、ある特定の温度範囲で反応させないと、2−アダマンタノールが大量に生成して収率が大幅に下がってしまうという問題が生じることが明らかとなった。
これらの問題点を鑑み、条件を検討した結果、特に2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとの反応においては、反応温度を50℃以下に制御することで、副生成物である2−アダマンタノールの生成を効果的に抑え、高純度、高収率に2−アルキル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩が得られることを見出した。より副反応を抑え、高純度に目的物を得るためには、反応温度は40℃以下、さらには35℃以下、さらに好ましくは30℃以下であることが好ましい。また、逆に、低温では反応が遅くなりすぎるため、工業的規模で効率的に製造する観点からは、0℃以上、好ましくは10℃以上であることが好ましい。
反応温度を特定温度に制御する方法としては、特に制限はなく、通常の温度制御装置を用いることで実施することができる。例えばジャケット式反応器に温度のコントロールされた熱媒を循環させる方法が採用できる。また、反応熱により系内の温度が上昇する場合には、ジャケットに冷媒を循環させる方法、または、反応器内に冷却管を通して、これに冷媒を循環させる方法などが採用される。
反応完了後、得られた2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩は、そのまま次反応の原料とすることが可能であり、例えば(メタ)アクリル酸ハライド、もしくは(メタ)アクリル酸無水物と反応させて、2−メチルアダマンチル−2−(メタ)アクリレートとすることが可能である。また、反応完了後、反応溶液中に用いたメチルマグネシウムクロリドよりも過剰量の水を添加し、生成した2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩をクエンチすることによって、2−メチル−2−アダマンタノールを高収率に得ることもできる。具体的には、収率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。ここでいう過剰量の水とは、反応に用いたメチルマグネシウムクロリドに対して、通常、2倍モル以上であり、好ましくは、5モル以上であり、より好ましくは、10倍モル以上である。少なすぎるとクエンチしきれないメチルマグネシウムクロリドが残存するので取り扱いに注意を要する。
クエンチ後、沈殿物を濾過によって除いた後、さらに蒸留、抽出、あるいは水と共沸する溶媒を添加してその溶媒を留去することなどによって、残存している水を分離することができる。なお、抽出によって残存している水を分離する場合には、飽和塩化アンモニウム水溶液のような塩の水溶液を用いて水を除去するのが好ましい。
こうして得た2−メチル−2−アダマンタノール溶液は、溶媒を留去することによって、あるいは必要に応じてその後適当な溶媒から再結晶することによって、純品として単離することができるが、本発明によればほぼ定量的に2−メチル−2−アダマンタノールを得ることができるため、例えば2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の合成中間体として次反応の原料とされる場合には、溶液のまま次反応に供することもできる。2−メチル−2−アダマンタノールを純品として単離した場合、通常、90%以上、好ましくは、95%以上、より好ましくは99%以上の高い純度を得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す実施例の形態に限定されるものではない。
(実施例1)
窒素を流通させた200mL3つ口フラスコに、2−アダマンタノン6.84g(45.5mol)、THF20mLを入れ攪拌溶解した。ここへ3.0mol/Lの濃度のメチルマグネシウムクロリドのTHF溶液17.7mL(53.2mmol)を、内温が40℃以下になるよう保ちながら滴下し、その後25℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液50mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで4回抽出した。抽出液を合わせて溶媒を留去した。得られた白色結晶は目的の2−メチル−2−アダマンタノールであり、収量は7.00g(42.2mmol;収率92.7%)であった。
(実施例2)
メチルマグネシウムクロリドのTHF溶液滴下時の内温を25℃とした以外は、実施例1と同様な操作で反応を行った。その結果、得られた白色結晶は目的の2−メチル−2−アダマンタノールであり、収量は7.05g(42.5mmol;収率93.4%)であった。
(実施例3)
メチルマグネシウムクロリドのTHF溶液滴下時の内温を10℃とした以外は、実施例1と同様な操作で反応を行った。その結果、得られた白色結晶は目的の2−メチル−2−アダマンタノールであり、収量は6.75g(40.7mmol;収率89.4%)であった。
(比較例1)
メチルマグネシウムクロリドのTHF溶液滴下時の内温をTHF還流温度(66℃)としたこと以外は実施例1と同様な操作で反応を行った。その結果、目的物である2−メチル−2−アダマンタノールの収率は60.2%にとどまり、その他に副生物として2−アダマンタノールがガスクロマトグラフィーの面積比で26%生成していることが判明した。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (4)

  1. 2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとを反応させて2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を製造する方法であって、前記2−アダマンタノンとメチルマグネシウムクロリドとの反応における反応温度が50℃以下に制御されながら行われることを特徴とする2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩の製造方法。
  2. 前記反応温度が40℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記反応温度が30℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかの製造方法で得られた2−メチル−2−アダマンタノールのマグネシウムクロリド塩を水と接触させることを特徴とする2−メチル−2−アダマンタノールの製造方法。
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