JP2007305572A - 高分子電解質膜、その製造方法および燃料電池 - Google Patents

高分子電解質膜、その製造方法および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な製造方法により得られ、高水準のプロトン伝導性と吸水寸法安定性とを有する高分子電解質膜およびその製造方法を提供する。さらに、当該高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】[1]下記(a)および(b)の工程を有する製造方法にて得られる高分子電解質膜。
(a)カチオン交換基の塩置換率が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質膜を製造する工程
(b)上記(a)で得られた高分子電解質膜の、カチオン交換基の塩置換率を5%未満に低減する工程
[2]上記[1]の高分子電解質膜を用いてなる燃料電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、高水準のプロトン伝導性と吸水寸法安定性を両立できる高分子電解質膜に関する。さらに該高分子電解質膜の製造方法、およびその用途に関する。
近年、住宅や自動車の動力などのエネルギーデバイスとして、固体高分子型燃料電池が注目されている。固体高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜は、高いプロトン伝導性に加えて、化学的、熱的、電気化学的および機械的に耐久性が高いことに加え、廉価であるといった観点から、炭化水素系高分子電解質膜の開発が近年活発化してきている。
該炭化水素系高分子電解質膜としては、芳香族ポリエーテルにスルホン酸基を導入した高分子電解質が有望視されており、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン(例えば、特許文献1参照)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(例えば、特許文献2参照)、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン(例えば、非特許文献1参照)、スルホン化ポリエーテルスルホン(例えば、特許文献3参照)等の炭化水素系高分子電解質からなる高分子電解質膜が提案されており、高分子中に導入されるスルホン酸基量を増加させる、すなわち高分子電解質膜のイオン交換容量を上げることで、実用的なプロトン伝導度を得ている。しかしながら、このような手段で得られる高分子電解質膜は吸水し易くなり、そのため燃料電池の作動/停止に伴う、吸湿、乾燥に伴う寸法変化(面内寸法変化率)が大きくなることから燃料電池の安定的作動には不利になる傾向であった。このように、実用的なプロトン伝導度を維持したまま、燃料電池の高耐久性に寄与する吸水による寸法安定性(以下、「吸水寸法安定性」という)を向上させるのは通常困難であった。
なお、プロトン伝導度を向上させた高分子電解質膜としては、例えば特許文献4に、高分子電解質を溶媒に溶解あるいは分散した溶液に、該高分子電解質のプロトン伝導成分と、酸―塩基相互作用可能な添加剤として臭化リチウムまたはトリエチルアミンを加えたドープ液から得られる高分子電解質膜、およびその製造方法が提案されている。
特表平11−502249号公報(特許請求の範囲) 特表2002−524631号公報(実施例) 特開2003−100317号公報(特許請求の範囲) 特開2005−171025号公報(実施例) Journal of Membrane Science,83,211,(1993)
上記特許文献4に記載の製造方法は、吸水寸法安定性を向上することに関し何ら開示されていないばかりか、そのプロトン伝導性向上効果として必ずしも十分とはいえなかった。また、製膜に使用する高分子電解質ドープ液が、酸−塩基相互作用(中和)する際に発生した酸を含み、当該ドープ液から溶媒を乾燥除去する際に揮発して、乾燥装置を腐食してしまうなどの問題も含んでいた。
本発明の目的は、吸水寸法安定性とプロトン伝導性を高水準で両立する高分子電解質膜を提供することにある。さらには、実用的なプロトン伝導度を発現するイオン交換容量を有する高分子電解質を用いたとしても、高度の吸水寸法安定性を有する高分子電解質膜を簡便な手段で製造する製造方法、当該製造方法により得られる高分子電解質膜、また当該高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記の事情に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の[1]を提供する。
[1]下記(a)および(b)の工程を有する製造方法にて得られる高分子電解質膜
(a)カチオン交換基の塩置換率が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質膜を製造する工程
(b)上記(a)で得られた高分子電解質膜の、カチオン交換基の塩置換率を5%未満に低減する工程
ここで、「塩置換率」とは、高分子電解質膜を構成する高分子電解質中のカチオン交換基の中で、水素イオン以外のカチオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、4級アンモニウムイオン等)がイオン結合されている基の、上記カチオン交換基の総数に対する割合を示すものである。
上記(a)の工程において高分子電解質膜を製膜する方法としては、より簡便である観点から、下記の[2]が好ましい。
[2]上記(a)が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質を溶液キャスト法により製膜して高分子電解質膜を製造する工程である、上記[1]の高分子電解質膜
また、上記(a)において、カチオン交換基の塩置換率を5%乃至95%の範囲にするカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンであると好ましく、アルカリ金属イオンであると特に好ましい。すなわち、下記の[3]、[4]を提供する。
[3]上記(a)で得られる高分子電解質膜が、カチオン交換基がアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンにて塩置換された高分子電解質からなる高分子電解質膜である、上記[1]〜[3]のいずれかの高分子電解質膜
[4]上記(a)で得られる高分子電解質膜が、カチオン交換基がアルカリ金属イオンを含むカチオンにて塩置換された高分子電解質からなる高分子電解質膜である、上記[1]〜[3]のいずれかの高分子電解質膜
上記高分子電解質としては、耐熱性に優れる電解質膜が得られるといった観点から芳香族系高分子であると好ましく、下記[5]を提供する。
[5]上記高分子電解質を構成する高分子電解質が、芳香族系高分子である上記[1]〜[4]のいずれかの高分子電解質膜
該芳香族系高分子の中でも、下記の構造単位を含むと好ましい。
[6]上記高分子電解質を構成する高分子電解質が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する、上記[1]〜[5]のいずれかの高分子電解質膜
Figure 2007305572
[式中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、該2価の芳香族基は、少なくとも1つのカチオン交換基が直接芳香環に結合している。X1は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。]
さらに、本発明に適用する高分子電解質としては、下記[7]に示すブロック共重合体であると、プロトン伝導性と耐水性が、より高水準のものが得られ、バランスに優れるため好ましい。
[7]上記高分子電解質を構成する高分子電解質が、カチオン交換基を有するブロックと、実質的にイオン交換基を有さないブロックとからなるブロック共重合体である、上記[1]〜[6]のいずれかの高分子電解質膜
上記[7]に係る好適なカチオン交換基を有するブロックを含む、ブロック共重合体として、下記[8]、[9]を提供する。
[8]上記ブロック共重合体が、下記一般式(2)で表されるカチオン交換基を有するブロックを含むブロック共重合体である、上記[7]の高分子電解質膜
Figure 2007305572
[式中、dは2以上の整数を示す。Ar11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、X11は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr11、X11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。当該ブロックの中で少なくとも(0.5×d)個以上のカチオン交換基を有し、全てのカチオン交換基は該2価の芳香族基にある芳香環に結合している。]
[9]上記ブロック共重合体が、下記一般式(3a)および/または(3b)で表されるカチオン交換基を有するブロックを含むブロック共重合体である、上記[7]の高分子電解質膜
Figure 2007305572
[式中、p、qはそれぞれ独立に1または2であり、dは上記と同義である。X12は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を表し、複数あるX12はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、J1はカチオン交換基を表し、複数あるR1、J1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
また、上記いずれかに記載の高分子電解質において、好適なカチオン交換基として下記[10]を挙げることができる。
[10]上記カチオン交換基がスルホン酸基である、上記[1]〜[9]のいずれかの高分子電解質膜
さらに、上記イオン交換基を実質的に有さないブロックの好適な例として、下記[11]、[12]を提供する。
[11]上記ブロック共重合体が、イオン交換基を実質的に有さないブロックとして下記一般式(5)で表されるブロックを含むブロック共重合体である、上記[7]〜[10]のいずれかの高分子電解質膜
Figure 2007305572
[式中、eは2以上の整数を表す。Ar22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を置換基として有していてもよい2価の芳香族基を示し、X22は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr22、X22はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
[12]上記ブロック共重合体が、イオン交換基を実質的に有さないブロックとして下記一般式(6)でブロックを含むブロック共重合体である、上記[7]〜[10]のいずれかの高分子電解質膜
Figure 2007305572
[式中、a、b、cは互いに独立に0か1を表し、nは正の整数を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基で置換されていてもよい。X、X’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Y、Y’は、互いに独立にオキシ基またはチオキシ基を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、X,X’、Y、Y’が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。]
さらに本発明は、上記いずれかに記載の高分子電解質膜を用いた、下記[13]および[14]を提供する。
[13]上記いずれかに記載の高分子電解質膜を用いる、膜―電極接合体
[14]上記[13]の膜−電極接合体を用いてなる燃料電池
また、本発明は上記[1]に係る製造方法として、下記[15]を提供する。
[15]下記(a)および(b)の工程を有する、高分子電解質膜の製造方法。
(a)カチオン交換基の塩置換率が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質膜を製造する工程
(b)上記(a)で得られた高分子電解質膜の、カチオン交換基の塩置換率を5%未満に低減する工程
本発明によれば、高水準の吸水寸法安定性とプロトン伝導性とを有する高分子電解質膜を得ることができる。それ故、本発明の高分子電解質膜は、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として好適に使用することができ、工業的に極めて有用である。
本発明の高分子電解質膜は、上記の(a)および(b)の工程を含む製造方法にて得られるものである。
ここで、上記高分子電解質膜を構成する高分子電解質としては、カチオン交換基をプロトン伝導性基として有するものであり、かかる高分子電解質の代表例としては、例えば、
(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる炭化水素系高分子にカチオン交換基を導入した高分子電解質
(B)主鎖が芳香環を有する高分子にカチオン交換基を導入した高分子電解質
(C)主鎖が、脂肪族炭化水素とシロキサン基、フォスファゼン基などの無機の単位構造からなる重合体に、カチオン交換基を導入した高分子電解質
(D)上記(A)〜(C)のカチオン交換基導入前の高分子を構成する繰り返し単位から選ばれるいずれか2種以上の繰り返し単位からなる共重合体に、カチオン交換基を導入した高分子電解質
等が挙げられ、これらはいずれも用いることができる。
上記の例示の中でも、耐熱性やリサイクルの容易さの観点から、上記(B)すなわち芳香族系高分子電解質を含むことが望ましい。当該芳香族系高分子電解質としては、高分子鎖の主鎖に芳香族環を有し、側鎖および/または主鎖にカチオン交換基を有する高分子化合物が挙げられる。芳香族系高分子電解質は、溶媒に可溶なものが通常使用され、これらは公知の溶液キャスト法にて、容易に膜化することが可能であり、好ましい。
これらの芳香族系高分子電解質のカチオン交換基は、高分子の主鎖を構成している芳香族環に直接置換していても、主鎖を構成している芳香族環に連結基を介して結合していても、または、それらの組み合わせであってもよい。
「主鎖が芳香環を有する高分子」とは、該高分子を構成する分子鎖の中で最長のものを主鎖とみたとき、この主鎖が主として2価の芳香族基からなるものである。例えば、主鎖がポリアリーレンのように、芳香環同士が直接連結されているものや、芳香環が2価の基を介して連結し主鎖を構成しているものを意味する。該2価の基としては、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミド基(-C(=O)NH-または-NHC(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-または-OC(=O)-)、炭酸エステル基(-OC(=O)-O-)、炭素数1〜4程度のアルキレン基、炭素数2〜4程度のアルケニル基、炭素数2〜4程度のアルキニル基等が挙げられ、直接結合、オキシ基、チオキシ基、スルホニル基またはカルボニル基が好ましい。また前記芳香環を有する基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アトラセニレン基、フルオレン基、ビフェニリレン基等の2価の芳香族基、ピリジンジイル基、フランジイル基、チオフェニレン基、イミダゾリル基、インドールジイル基、キノキサリンジイル基等の2価の芳香族複素環基等が挙げられる。
中でも該芳香族系高分子電解質としては、下記一般式(1)に示す構造単位を含むものであると好ましい。
Figure 2007305572
[式中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、該2価の芳香族基は、少なくとも1つのカチオン交換基が直接芳香環に結合している。X1は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。]
上記一般式(1)におけるAr1は、上記に例示される2価の芳香族基であり、特にフェニレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基が好ましい。
また、該2価の芳香族基は、上記のカチオン交換基以外に、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記のようなアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が挙げられる。
かかる芳香族系高分子の代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリ((4-フェノキシベンゾイル)-1,4-フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の重合体のそれぞれにカチオン交換性基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 18, 1969 (1974))等を挙げることができる。
芳香族系高分子の中でも、高分子電解質膜を得たとき、高機械強度の膜を得るという観点から、カチオン交換基が導入された繰り返し単位と、イオン交換基が実質的に導入されていない繰り返し単位とをそれぞれ一つ以上有する共重合体が好ましい。かかる共重合体としては、交互共重合体やランダム共重合体(例えば、特開平11−116679号公報参照)、カチオン交換基が導入されたブロックと、イオン交換基(カチオン交換基またはアニオン交換基)が実質的に導入されていないブロックとをそれぞれ一つ以上有するブロック共重合体が例示される。
中でも上記ブロック共重合体は、カチオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有さないブロックが、それぞれ高分子電解質膜中でドメインを形成し、好適な相分離膜を得ることが可能であり好ましい。
このようなブロック共重合体の具体的な例としては、特開2001−250567号公報に記載のスルホン化された芳香族ポリマーブロックを有するブロック共重合体、特開2003−31232号公報、特開2004−359925号公報、特開2005−232439号公報、特開2003−113136号公報等の特許文献に記載の、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンを主鎖構造とし、スルホン酸基を有するブロックを有するブロック共重合体を挙げることができる。
ここで、上記に示す好適な高分子電解質である、カチオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有さないブロックとを併せ持つブロック共重合体について詳細を説明する。
まず、カチオン交換基を有するブロックとしては、上記一般式(1)で表される構造単位が複数連結されている構造を含むブロックであると好ましく、すなわち、該ブロックにおいて構造単位1つ当たりのカチオン交換基数で表して、0.5個以上有するものが好ましい。
Figure 2007305572
[式中、dは2以上の整数を示す。Ar11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、X11は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr11、X11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。当該ブロックの中で少なくとも(0.5×d)個以上のカチオン交換基を有し、全てのカチオン交換基は該2価の芳香族基にある芳香環に結合している。]
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、アダマンチル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換し、その総炭素数が1〜20のアルキル基等が挙げられる。
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換し、その総炭素数が1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等のアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換し、その総炭素数が6〜20のアリール基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、ビフェニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換し、その総炭素数が6〜20のアリールオキシ基等が挙げられる。
ここで、dは当該ブロックの重合度を表す2以上の整数である。dは5以上であると好ましく、5〜1000の範囲がより好ましく、さらに好ましくは10〜1000であり、特に好ましくは20〜500である。dの値が5以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、より高度のプロトン伝導度となるため好ましい。一方、dの値が1000以下であれば、該ブロックの製造がより容易となるので好ましい。
上記一般式(2)で表されるブロックの好適な例としては、下記一般式(3a)および/または(3b)で表されるブロックであると好ましい。
Figure 2007305572
[式中、p、qはそれぞれ独立に1または2であり、dは上記と同義である。X12は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を表し、複数あるX12はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、J1はカチオン交換基を表し、複数あるR1、J1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
上記のようなイオン交換基を有するブロックを有すると、高水準のプロトン伝導性と吸水寸法安定性に加え、膜強度がより向上するため好ましい。
また、R1は上記のとおり水素原子または置換基を表すが、とりわけ好ましくは水素原子であり、実質的に一般式(3a)で示されるフェニレン基、一般式(3b)で示されるナフチレン基が、カチオン交換基以外の置換基を有さないものが好ましい。
上記一般式(3a)で表されるブロックの具体例としては、カチオン交換基をスルホン酸基で例示すると、下記の3a−1〜3a−27から選ばれる構造単位がd個連結してなるブロックを挙げることができる。ここで、dは一般式(2)と同義である。
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572

これらのブロックは、例えば特開2004−190002号公報等に準拠して製造できる。
また、上記一般式(3b)で表されるブロックの具体例としては、カチオン交換基をスルホン酸基で例示すると、下記の3b−1〜3b−28から選ばれる構造単位がd個連結してなるブロックを挙げることができる。ここで、dは一般式(2)と同義である。
Figure 2007305572
Figure 2007305572
さらに、上記の一般式(3a)で表されるブロックを構成する構造単位、一般式(3b)で表されるブロックを構成する構造単位を併せ持つブロックでもよく、それらがd個連結してなるブロックであればよい。
また、カチオン交換基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、ホスホン酸基(-PO3H2)、スルホニルイミド基(-SO2-NH-SO2-)が例示され、これらを併せ持つものでもよい。中でも強酸基であるスルホン酸基をカチオン交換基として含むと、特に好ましい。
次に、上記イオン交換基を実質的に有さないブロックについて説明する。
ここで、「イオン交換基を実質的に有さない」ブロックとは、当該ブロックを構成する構造単位1個当たり、イオン交換基が0.1個以下であるブロックを意味し、0.05個以下であるとさらに好ましく、0個(すなわち、イオン交換基が皆無)であると特に好ましい。
当該ブロックの中でも、とりわけ好ましくは、下記一般式(5)で表されるブロックである。
Figure 2007305572
[式中、eは2以上の整数を表す。Ar22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を置換基として有していてもよい2価の芳香族基を示し、X22は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr22、X22はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
ここで、一般式(5)の芳香族基Ar22の置換基であるアルキル基、アルコキシ基、アリール基およびアリールオキシ基の具体的な例示は、上記一般式(1)と同等である。
また、eは当該ブロックの重合度を表す整数である。eは5以上であると好ましく、5〜1000の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜1000であり、特に好ましくは20〜500である。eの値が5以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、膜強度に優れるものが得られるため好ましい。一方、eの値が1000以下であれば、該ブロックの製造がより容易であるので好ましい。
特に、上記イオン交換基を実質的に有さないブロックとしては、下記一般式(6)で表されるブロックであると、好適である。
Figure 2007305572
[式中、a、b、cは互いに独立に0か1を表し、nは正の整数を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基で置換されていてもよい。X、X’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Y、Y’は、互いに独立にオキシ基またはチオキシ基を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、X、X’、Y、Y’が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。]
ここで、nは当該ブロックに係る重合度を表す正の整数である。nは5以上の整数であると好ましく、5〜1000の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜1000であり、特に好ましくは20〜500である。nの値が5以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、膜強度に優れるものが得られるため好ましい。一方、nの値が1000以下であれば、該ブロックの製造がより容易であるので好ましい。
上記一般式(6)で表されるブロックの好適な代表例としては、下記のブロックが挙げられる。
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
Figure 2007305572
上記高分子電解質は、その構造などにより最適分子量範囲を適宜求めることができるが、一般的にはGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、1000〜1000000が好ましい。当該数平均分子量の下限としては5000以上、とりわけ10000以上が好ましく、一方、上限としては500000以下、とりわけ300000以下が好ましい。
該数平均分子量が1000以上であると、実用的な膜強度を有する高分子電解質膜が得られるため好ましく、1000000以下であると、溶媒に対する溶解性が良好となり、上記の好適な製膜法である溶液キャスト法にて容易に膜化できるため、好ましい。また、数平均分子量が上記の範囲であると、該溶液キャスト法にて使用する高分子電解質溶液に係る溶液粘度も、操作上、実用的な範囲のものが得られることから好ましい。
次に、上記[1]の(a)について説明する。
高分子電解質の塩置換率を5%乃至95%にするには、予め使用する高分子電解質のカチオン交換基の総数を求めておき、その総数に対して5〜95当量%の塩置換剤を接触させる。つまり、該高分子電解質のカチオン交換基の5〜95%を、塩置換剤から供給される水素イオン以外のカチオンでイオン交換させることで達成しうる。本発明者が検討したところ、塩置換率を前記の範囲に制御することで、高水準のプロトン伝導性と吸水寸法安定性を有するプロトン伝導膜が得られることを見出した。すなわち、上記(a)において塩置換率が5%を下回ると、吸水寸法安定性が著しく低下し、一方、塩置換率が95%を超えるとプロトン伝導性が著しく低下し、いずれの場合も好ましくない。
ここで、「塩置換剤」とは、通常カチオン交換基が遊離酸の基である場合、そのイオン結合している水素イオンと、イオン交換しうるカチオンを供給できる化合物である。
通常、該カチオンは、水素イオン以外の、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオンまたは4級アンモニウムイオンであり、それらの水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、フッ化塩、塩化塩または臭化塩等が塩置換剤として使用できるが、水酸化物が特に好ましい。塩置換剤として、水素イオン以外のカチオンの水酸化物を用いると、上記イオン交換で副生するのが水であることから、上記特許文献4のように酸を副生する製造方法と比して、耐酸性設備を必要としないという利点がある。
まず、高分子電解質を大過剰の酸にて処理することで、該高分子電解質における実質的に全てのカチオン交換基を遊離酸の基に変換する。処理後の高分子電解質を、滴定法等を用いて、イオン交換容量を求めることで、該高分子電解質の単位重量当たりのカチオン交換基当量を求める。
続いて、求められたカチオン交換基当量に対して、塩置換剤のカチオンが5〜95当量%となるように、塩置換剤と高分子電解質を接触させる。
通常、予め大過剰の酸にて処理され、カチオン交換基のほとんどを遊離酸の基とした高分子電解質を、水、有機溶剤あるいは水/有機溶媒混合溶媒に溶解または分散させ、その溶解液または分散液に塩置換剤を投入することで、該高分子電解質のカチオン交換基をイオン交換させることができる。
また、この方法は、塩置換剤を予め、水または有機溶剤に溶解または分散させた後、その塩置換剤溶液に上記高分子電解質を投入することによっても、達成することができる。
このように、水または有機溶剤を、イオン交換反応に係る反応媒体として使用することで、該イオン交換反応を容易に行うことが可能であるが、使用する高分子電解質、塩置換剤の少なくともどちらかが、使用する反応媒体(水、有機溶剤あるいは水/有機溶媒混合溶媒)に可溶であると、該イオン交換反応が円滑に進行するため、好ましい。
また、高分子電解質の製造終了後に、塩置換率が95%を越える高分子電解質が得られる場合は、当該高分子電解質の酸処理を調節することにより、塩置換率5%乃至95%の高分子電解質を得ることもできる。なお、適用した高分子電解質にあるカチオン基のイオン交換能が低い場合(例えば、カチオン交換基がホスホン酸基である場合)、水素イオン以外のカチオンの塩化物等を塩置換剤に用いると、塩置換剤の使用当量数に対して、所望の塩置換率の高分子電解質が得にくいことがある。この場合は、所望の塩置換率が得られる塩置換剤使用量から徐々に使用量を上げていって得られる高分子電解質の塩置換率を求め、所望の塩置換率が得られる多価カチオン塩置換剤当量数を求める予備実験を行えばよいが、高分子電解質のカチオン交換基が好適なスルホン酸基である場合、または塩置換剤として好適な水酸化物を用いる場合は、使用した塩置換剤の当量数から容易に、所望の塩置換率を有する高分子電解質が得られる。
上記のようにして得られた塩置換率5%乃至95%の高分子電解質(カチオン交換基の5%乃至95%を水素イオン以外のカチオンにイオン交換した高分子電解質)を公知の製膜方法を用いて膜にする。製膜方法は特に限定されるものではないが、上述のように、溶液キャスト法が、操作が簡便であり特に好ましい。
該溶液キャスト法とは、上記のようにして得られた塩置換率5%乃至95%の高分子電解質を適当な溶媒に溶解した高分子電解質溶液を調整し、該高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗布し、溶媒を除去して製膜する方法である。
溶液キャスト法に用いる溶媒は、上記高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがポリマーの溶解性が高く好ましい。
なお、高分子電解質溶液中の高分子電解質濃度は、適用した高分子電解質の分子量にもよるが、通常5〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。5重量%以上では、実用的な膜厚の高分子電解質膜膜を得ることができるため好ましく、40重量%以下であれば、得られる高分子電解質溶液の溶液粘度が低く、より平滑な表面を有する高分子電解質膜が得られるので好ましい。
このようにして得られる高分子電解質膜の膜厚は特に制限はないが、当該高分子電解質にあるカチオン交換基の実質的に全てが遊離酸の基であるときの膜厚で表して5〜200μmが好ましい。さらに好ましくは8〜60μm、特に好ましくは15〜50μmである。実用に耐えるフィルムの強度を得るには5μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには200μmより薄い方が好ましい。膜厚は前記高分子電解質溶液の高分子電解質濃度あるいは基材上への塗布厚により所望の膜厚を制御することができ、その際にはカチオン交換基の塩置換率がほぼ0%であるときの高分子電解質膜の膜厚を勘案して溶液キャスト法で得られる塩置換された高分子電解質膜の膜厚を制御する。
また、溶液キャスト法に用いる支持基材は、使用する高分子電解質溶液により、膨潤あるいは溶解することなく、かつ製膜後に得られる高分子電解質膜が剥離し得るものであるならば特に制限は無く、例えばガラス、ステンレス材、ステンレスベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が好適に用いられる。該基材表面は必要に応じ離型処理、鏡面処理、エンボス処理、或いは艶消し処理等を施してもよい。
支持基材上に製膜した高分子電解質膜は、そのまま後の(b)に供することもできるが、通常、該支持基材から剥離して用いる。
上記(a)における別の形態としては、先に高分子電解質中のカチオン交換基のほとんどを遊離酸の基にした高分子電解質(塩置換率がほぼ0%である高分子電解質膜)を製膜しておいてから、この高分子電解質膜を、塩置換剤を水、有機溶媒または水/有機溶媒混合溶媒に分散または溶解させた塩置換剤溶液に浸漬することにより、該高分子電解質膜中のカチオン交換基にイオン結合している水素イオンを、水素イオン以外のカチオンにイオン交換させる方法である。ここで、該製膜に関しては、上記に示す溶液キャスト法が好適である。また、使用される塩置換剤は、上記の例示と同等であるが、イオン交換反応に係る反応媒体(水、有機溶媒または水/有機溶媒混合溶媒)に可溶であるものが好ましい。
以上、上記(a)に係る2つの形態を説明したが、先に説明した予め塩置換率を5%乃至95%の高分子電解質を得ておいてから、当該高分子電解質を溶液キャスト法により高分子電解質膜に転化する方法が好ましい。定かではないが、本発明により得られる高分子電解質膜はプロトン伝導に寄与する伝導経路が、高プロトン伝導性を発現するように高分子電界質分子が配向するように形成されていると推定され、塩置換された高分子電解質を溶液キャスト法により膜化させると、このような配向がより形成しやすく、よりプロトン伝導性に優れた高分子電解質膜が得られると考えられる。
上記に示した高分子電解質あるいは高分子電解質膜をイオン交換反応させる反応条件は、使用する高分子電解質(膜)、塩置換剤および反応媒体によって適宜最適化することが可能である。中でも好ましい反応時間は、0.1〜100時間であり、0.5〜50時間がより好ましく、1〜30時間がさらに好ましい。反応温度は通常、室温程度で十分である。
上記イオン交換反応における反応媒体としては、水または水を主成分とする水/有機溶媒混合溶媒が好ましく、とりわけ水が好ましい。
さらに、上記カチオン交換基にイオン結合している水素イオンとイオン交換するカチオンとしては、上記の例示のものが使用可能であるが、とりわけアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンであると好ましく、アルカリ金属イオンであると特に好ましい。
アルカリ金属イオンを供給する塩置換剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、臭化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等が挙げられ、水酸化物である水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
アルカリ土類金属イオンを供給する塩置換剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、臭化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム等が挙げられ、水酸化物である水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムが好ましい。
上記に例示する塩置換剤の中でも、アルカリ金属イオンを供給する塩置換剤は、好適な反応媒体である水に溶解しやすいことから、イオン交換反応を円滑に進行させることが可能となるばかりか、本発明の製造方法によって得られる高分子電解質膜の吸水寸法安定性に係る向上効果が高いため好ましい。それゆえ、とりわけ好ましい塩置換剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、これらは上述のとおり、イオン交換反応によって副生する副生物が水であるため、イオン交換後の後処理を容易にする。特に、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムは工業的に安価であるという利点もある。
以上のようにして、塩置換率5%乃至95%の高分子電解質膜を得ることができるが、該塩置換率の下限は10%以上であると好ましく、15%以上であるとさらに好ましく、20%以上であると特に好ましい。一方、該塩置換率の上限は、90%以下であると好ましく、80%以下であるとさらに好ましく、75%以下であると特に好ましい。従って、塩置換率の好ましい範囲としては10%乃至90%であり、15%乃至80%であるとさらに好ましく、20%乃至75%であると特に好ましい。
塩置換率が上記の範囲であると、より高水準の吸水寸法安定性とプロトン伝導度を両立することが可能となる。
なお、本発明の(a)に係る溶液キャスト法による製膜を行う際に、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用することもできる。
また、高分子電解質を製造する際、あるいは高分子電解質を製膜加工する際に、当該高分子電解質を架橋せしめることにより、架橋膜を得ることもできる。
上記(a)に示す工程を得た後、(b)塩置換率が5〜95%である高分子電解質膜を、塩置換率が5%未満の高分子電解質膜に変換する工程を行う。
ここで、(b)に示す工程によって得られる高分子電解質膜の塩置換率は、3%以下であると好ましく、1%以下であると、さらに好ましい。とりわけ好ましくは、塩置換率が0%、すなわち実質的に全てのカチオン交換基を遊離酸の基に変換することが好ましい。
上記(b)に係る手段としては、簡便であるといった観点から、上記(a)で得られた塩置換率5%乃至95%の高分子電解質膜を酸水溶液に浸漬する方法や、酸水溶液をスプレー噴霧する方法が好ましく、浸漬する方法が、より簡便であり再現性にも優れることから特に好ましい。
また、高分子電解質膜を酸水溶液に浸漬する方法やスプレー噴霧する方法において、塩置換率5%乃至95%の高分子電解質膜が上記支持基材上に定着したものを酸水溶液に浸漬あるいはスプレー噴霧し、塩置換率を5%未満にしてから、該支持基材から剥離する方法でもよい。
上記(b)に使用する酸水溶液は、使用する高分子電解質の塩置換率を変換できるものであれば、特に限定されるものではないが、通常、酸としては塩酸、硫酸、硝酸などの強酸が好適であり、酸濃度としては、0.01〜10規定、好ましくは0.1〜5規定であると好ましい。
さらに、使用する酸水溶液量としては、使用する高分子電解質膜のカチオン交換基当量に対して大過剰になるようにすると、得られる高分子電解質膜の塩置換率をより低減化できるので好ましい。これは、通常高分子電解質膜のカチオン交換基におけるカチオン選択比が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンに対して、水素イオンの方が低いため、大過剰の水素イオンによりイオン交換平衡をずらす必要があるためである。
このように、上記の(a)、(b)で示す工程を経て、本発明の高分子電解質膜は得られるものであるが、(a)と(b)の間、または(a)と(b)を経た後に、乾燥工程や水洗等の洗浄工程を行ってもよい。
このようにして得られた高分子電解質膜は、後述する燃料電池用の高分子電解質膜として、プロトン伝導性および吸水寸法安定性を高水準に両立することができる。
次に、上記のようにして得られた高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池(以下、「燃料電池」と略すことがある)について説明する。
本発明の燃料電池は、上記高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質膜と接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
上記のようにして得られた燃料電池は、高分子電解質膜自体が、高水準のプロトン伝導度と吸水寸法安定性を有するため、発電性能に優れ、電池の作動/停止に伴う安定性に優れるものであり、実用的な燃料電池を提供できる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[電解質膜の評価方法]
(1)イオン交換容量(IEC)、塩置換率
滴定法により算出した。
また、後述する実施例、比較例において、塩置換剤溶液で処理した塩置換高分子電解質膜のIECと、該塩置換高分子電解質膜を酸処理して、カチオン交換基のほぼ全てを遊離酸の基に変換した高分子電解質膜のIECを、それぞれ測定し、その差分から塩置換率を求めた。
(2)吸水率
カチオン交換基のほぼ全てを遊離酸の基とした高分子電解質膜を、100℃の脱イオン水に2時間浸漬した後の高分子電解質膜の乾燥時に対する重量増加量を、乾燥時の重量に対する百分率として求めた。
(3)プロトン伝導度の測定
新実験化学講座19 高分子化学(II)992p(日本化学会編、丸善)に記載の方法で膜抵抗を測定した。
ただし、使用したセルはカーボン製であり、また白金黒付白金電極は使用せず、セルに直接インピーダンス測定装置の端子を接続した。まずセルに高分子電解質膜をセットして抵抗値を測定し、その後高分子電解質膜を除いて再度抵抗値を測定して、両者の差から膜抵抗を算出した。高分子電解質膜の両側に接触させる溶液には、1mol/Lの希硫酸を用いた。希硫酸浸漬時の膜厚と抵抗値からプロトン伝導度を算出した。
(4)面内寸法変化率の測定
高分子電解質膜を23℃、50%RH下で6時間以上乾燥させたときの面内寸法Aと80℃の熱水に漬けた時の面内寸法Bを用いて以下の式から面内寸法変化率を求めた。
面内寸法変化率=(B−A)/A
合成例1(高分子電解質膜の製造例)
窒素雰囲気下、蒸留管を付けたフラスコに、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン88.3g(352.9mmol)、炭酸カリウム53.6g(388.1mmol)、ジメチルスルホキシド693mL、トルエン139mLを加えて攪拌した。次いで、135℃まで昇温し同温度にて3時間保温することにより、系内の水分をトルエンと共に共沸除去した。放冷後、4、4’−ジフルオロジフェニルスルホン84.9g(333.9mmol)を加え、135℃まで昇温し、同温度で7時間反応させた。これを反応溶液1とする。
窒素雰囲気下、蒸留管をつけたフラスコに、ヒドロキノンスルホン酸カリウム36.0g(157.7mmol)、炭酸カリウム22.9g(165.6mmol)、ジメチルスルホキシド491ml、トルエン98mlを加えて攪拌した。放冷後、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム86.7g(176.6mmol)を加え、135℃まで昇温し、同温度で7時間反応させた。これを反応溶液2とする。
上記の反応溶液1と反応溶液2を、ジメチルスルホキシド30mlで希釈しながら混合し、この混合溶液を、130℃で1時間、140℃で8時間加熱した。
放冷後、反応混合物を大量の4規定塩酸水溶液へ滴下し、生成した沈殿物を濾過回収した。次いで洗液が中性になるまで水で洗浄濾過を繰り返した。
大過剰の熱水で2時間処理することを2回繰り返した後、減圧乾燥することにより高分子電解質1を得た。
得られた高分子電解質1を24重量%の濃度となるように1−メチル−2−ピロリドンに溶解し、この高分子電解質1溶液をガラス板上に流延塗付し、80℃で常圧乾燥した。次いで、1規定塩酸水溶液に2時間浸漬した後、流水で2時間洗浄することにより高分子電解質膜Aを得た。該高分子電解質膜は、実質的に全てのスルホン酸基が遊離酸の基である(塩置換率ほぼ0%)。
合成例2
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、ジメチルスルホキシド600ml、トルエン200mL、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム26.5g(106.3mmol)、末端クロロ型であるポリエーテルスルホン(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.4×104、Mw=1.2×105)10.0g、2,2’−ビピリジル43.8g(280.2mmol)を入れて攪拌した。その後、該フラスコを加熱バスに入れ、バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、60℃まで冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)73.4g(266.9mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で5時間攪拌した。放冷後、反応液を大量の6mol/Lの塩酸に注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6規定塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液が中性になるまで水洗を行い、減圧乾燥することにより高分子電解質2を得た。
実施例1
合成例1で得られた高分子電解質膜A3.0gを、0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液(塩置換剤溶液)を6.7mLに加えた水溶液に2時間浸漬させた後、イオン交換水で洗浄し、一晩室温で乾燥させた。得られた電解質膜を24重量%の濃度となるようにジメチルスルホキシドに溶解後、ガラス板上にガラス板上に流延塗付し、80℃で常圧乾燥した。次いで、1mol/L塩酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄することにより高分子電解質膜を得た。該膜の酸処理前後のイオン交換容量、吸水率及びプロトン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
実施例2
実施例1の塩置換剤溶液である0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の添加量を、12.2mLに変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例3
実施例1の塩置換剤溶液である0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の添加量を、24.3mLに変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例4
実施例1の塩置換剤溶液である0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の添加量を、36.5mLに変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例5
実施例1の塩置換剤溶液である0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の添加量を、43.2mLに変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1に示す。
比較例1
合成例1で得られた高分子電解質膜を、そのまま1mol/L塩酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄することにより高分子電解質膜を得た。該膜の酸処理前後のイオン交換容量、吸水率及びプロトン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
比較例2
実施例1の塩置換剤溶液である0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の添加量を、50mLに変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2007305572

表1より、本発明の製造方法によれば、6.0×10-2S/cm以上のプロトン伝導度を有することに加え、著しく低い面内寸法変化率を有する、すなわち高度の吸水寸法安定性を有する高分子電解質膜が得られることが判明した。
実施例6
合成例2で得られた高分子電解質2を3.0g秤取し、132mgの水酸化ナトリウム(高分子電解質2のカチオン交換基に対して0.5当量)を溶かした水溶液に一晩浸漬させた。得られた高分子電解質を5時間水洗し、乾燥させた後に、10重量%の濃度でDMSOに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、70℃で常圧乾燥した。次いで、1mol/L塩酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄することにより高分子電解質膜を得た。該膜の酸処理前後のイオン交換容量、吸水率及びプロトン伝導度を測定した。得られた結果を表2に示す。
比較例3
合成例2で得られた高分子電解質2を3.0g秤取し、3gの水酸化ナトリウム(高分子電解質2のカチオン交換基に対して大過剰)を溶かした水溶液に一晩浸漬させた。得られた高分子電解質を5時間水洗し、乾燥させた後に、10重量%の濃度でDMSOに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、70℃で常圧乾燥した。次いで、1mol/L塩酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄することにより高分子電解質膜を得た。該膜の酸処理前後のイオン交換容量、吸水率及びプロトン伝導度を測定した。得られた結果を表2に示す。
Figure 2007305572

表2より、高分子電解質種を変更しても本発明の目的とする効果である、高いプロトン伝導度と低い面内寸法変化率を両立した高分子電解質膜が得られることが判明した。

Claims (15)

  1. 下記(a)および(b)の工程を有する製造方法にて得られる高分子電解質膜。
    (a)カチオン交換基の塩置換率が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質膜を製造する工程
    (b)上記(a)で得られた高分子電解質膜の、カチオン交換基の塩置換率を5%未満に低減する工程
  2. 上記(a)が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質を溶液キャスト法により製膜して高分子電解質膜を製造する工程である、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 上記(a)で得られる高分子電解質膜が、カチオン交換基がアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンにて塩置換された高分子電解質からなる高分子電解質膜である、請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
  4. 上記(a)で得られる高分子電解質膜が、カチオン交換基がアルカリ金属イオンを含むカチオンにて塩置換された高分子電解質からなる高分子電解質膜である、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質膜。
  5. 上記高分子電解質膜を構成する高分子電解質が芳香族系高分子である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質膜。
  6. 上記高分子電解質膜を構成する高分子電解質が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜。
    Figure 2007305572
    [式中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、該2価の芳香族基は、少なくとも1つのカチオン交換基が直接芳香環に結合している。X1は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。]
  7. 上記高分子電解質膜を構成する高分子電解質が、カチオン交換基を有するブロックと、実質的にイオン交換基を有さないブロックとを含むブロック共重合体である、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜。
  8. 上記ブロック共重合体が、下記一般式(2)で表されるカチオン交換基を有するブロックを含むブロック共重合体である、請求項7に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2007305572
    [式中、dは2以上の整数を示す。Ar11は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、X11は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr11、X11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。当該ブロックの中で少なくとも(0.5×d)個以上のカチオン交換基を有し、全てのカチオン交換基は該2価の芳香族基にある芳香環に結合している。]
  9. 上記ブロック共重合体が、下記一般式(3a)および/または(3b)で表されるカチオン交換基を有するブロックを含むブロック共重合体である請求項7に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2007305572
    [式中、p、qはそれぞれ独立に1または2であり、dは上記と同義である。X12は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を表し、複数あるX12はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、J1はカチオン交換基を表し、複数あるR1、J1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
  10. 上記カチオン交換基がスルホン酸基である、請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質膜。
  11. 上記ブロック共重合体が、イオン交換基を実質的に有さないブロックとして下記一般式(5)で表されるブロックを含むブロック共重合体である、請求項7〜10のいずれかに記載の高分子電解質膜。
    Figure 2007305572
    [式中、eは2以上の整数を表す。Ar22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基を置換基として有していてもよい2価の芳香族基を示し、X22は、直接結合、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基またはスルホニル基を示し、複数あるAr22、X22はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
  12. 上記ブロック共重合体が、イオン交換基を実質的に有さないブロックとして下記一般式(6)でブロックを含むブロック共重合体である、請求項7〜10のいずれかに記載の高分子電解質膜。
    Figure 2007305572
    [式中、a、b、cは互いに独立に0か1を表し、nは正の整数を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基で置換されていてもよい。X、X’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Y、Y’は、互いに独立にオキシ基またはチオキシ基を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、X,X’、Y、Y’が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。]
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載の高分子電解質膜の両面に触媒層を形成して得られる、膜―電極接合体。
  14. 請求項12記載の膜−電極接合体を用いてなる燃料電池。
  15. 下記(a)および(b)の工程を有する、高分子電解質膜の製造方法。
    (a)カチオン交換基の塩置換率が、5%乃至95%の範囲である高分子電解質膜を製造する工程
    (b)上記(a)で得られた高分子電解質膜の、カチオン交換基の塩置換率を5%未満に低減する工程
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