JP2007304357A - ポリイミド無端ベルトおよびその製造方法、ポリイミド無端ベルトを備えた画像形成装置 - Google Patents

ポリイミド無端ベルトおよびその製造方法、ポリイミド無端ベルトを備えた画像形成装置 Download PDF

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宮本  剛
Katsumi Nukada
克己 額田
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誠一 加藤
Shoichi Morita
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Abstract

【課題】酸性化合物であるポリアミック酸と接触することにより導電剤粒子表面状態が変化し(いわゆる、酸ショック)、導電剤が凝集してしまうことを防止することによって、得られたポリイミド無端ベルトの電気抵抗値のばらつきを抑制可能とするポリイミド無端ベルトおよびこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電剤を含有するポリイミド樹脂からなり、22℃55%RHの条件下において、100Vの電圧を印加してから30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値と10秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(logΩ/□)以下であるポリイミド無端ベルトである。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルト及びその製造方法、並びに、当該ポリイミド無端ベルトを具備する画像形成装置に関する。
電子写真装置では、まず、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像として形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いで、このトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち、中間転写・定着方式が開示されている(例えば、特許文献4参照)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
ここで、中間転写方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要求から、中間転写・定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性とを併有するポリイミド樹脂が適している。
ポリイミド材料に導電性を付与させる目的に、導電性を有するカーボンブラック微粒子をポリイミド樹脂中に分散させることが行われている。カーボンブラックの分散性を上げることでポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制できることが、よく知られている。このカーボンブラック分散性を向上させて、成形されるポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制することを目的に、カーボンブラックを有機極性溶媒中に分散させた分散液中でテトラカルボン酸無水物とジアミン化合物とを反応させて、ポリアミック酸を重合させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液作製方法、並びに当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている(例えば、特許文献5〜8を参照)。
上述したポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。イミド化反応においては一般に250℃〜350℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点で問題があった。また、ポリアミック酸の脱水に伴い、塗膜表面ならびに塗膜中のボイドの発生や、脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により膜厚の均一性がとれないことや、抵抗値のばらつきが生じるなど膜品質の上でも問題があった。
この問題に対して、溶媒可溶性のポリイミド材料の使用が提案されている。可溶性ポリイミドは、分子中に屈曲性をもった構造を導入することで、剛直なイミド構造を有するにもかかわらず溶媒への溶解性が付与されている。そのため、可溶性ポリイミド材料は、基材に塗工して溶剤を乾燥させるだけで、ポリイミド膜を形成することができるため、上記問題点が解決できる。
しかしながら、可溶性ポリイミドはその分子構造に起因し、一般には強度が小さく、伸び、破断などを起こしやく、ベルトとして使用するには不適なものであった。
また、ポリアミック酸のイミド化を促進させるため、3級アミン等を共存させて加熱する方法が開示されている(例えば、特許文献9〜12参照)。しかしながら、かかる3級アミン類は一般に不快な臭気、人体に対する健康上の悪影響があり、3級アミン類を含むポリアミック酸組成物を取り扱う場合、作業者の安全性が問題となる。また、かかる3級アミンは、乾燥工程・焼成工程の際に揮発してしまうため,環境負荷の点から問題がある。
一方、オキシカルボン酸類として、カルボン酸誘導体をイミド化反応触媒として使用することが知られている。当該例によると、ポリイミドワニス中に混合させた例として、液晶配向膜用途が挙げられる(例えば、特許文献13参照)。液晶配向剤はガラス基板上に形成されるポリイミド膜であり、その機能として液晶分子の配向を目的としており、自己支持性を発現するポリイミド膜自体の強度は要求されず、また、導電性の付与を必要としないため、ポリアミック酸と、溶媒と、オキシカルボン類とからなる単純系で成り立っている。
また、熱可塑性樹脂表面にポリイミド膜を形成する積層フィルム用途として、種々の例が挙げられる(例えば、特許文献14〜16参照)。しかしながら、これらの例では、ポリイミド膜は難燃性付与を目的としているため、ポリイミド膜厚は総膜厚の5%以下とすることが好適とされており、フィルム強度は架橋された基材熱可塑性樹脂で保持しており、ポリイミド材料の強度はほとんど期待できない。また、オキシカルボン酸類の使用量としては、ポリイミド材料に対して10%以上と高いもので、ポリイミド成形品の強度と自己支持性を要求する本発明とは本質的に異なるものである。
また、ポリイミド樹脂ベルトに良好な導電性を付与するためには、導電性フィラーであるカーボンブラックの凝集を抑える必要がある。
上記カーボンブラックの凝集を抑える方法として、カーボンブラックを高分子分散剤の存在下で有機極性溶媒中に分散させて作製した分散液中に、ポリアミド酸を混合させて得られる半導電性ポリアミド酸溶液、あるいは前記分散液中でポリアミド酸中を重合させることによって得られる半導電性ポリアミド酸溶液を用い、かかるポリアミド酸溶液中のアミド酸に対して所定量の無水酢酸を添加して脱水閉環反応を行う方法が考えられる。かかるカーボンブラックの凝集を抑える方法を半導電性ポリイミドベルト製造に応用した方法が、金属製円筒状金型内に半導電性ポリアミド酸溶液を塗布した際の塗膜を比較的短時間でゲル化させる半導体製シームレスベルトの製造方法として提案されている(例えば、特許文献17,18を参照)。
しかるにかかる製造方法によると加熱時の無水酢酸の揮発が溶媒の揮発に先立ち始まるため、反応に最低限必要な無水酢酸量に対して過剰量対添加しなければならない問題点があった。そのため、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液中に過剰の無水酢酸を添加することで酸ショックが発生してカーボンブラックの凝集を引き起こし得られるシームレスベルトの品質を低下させることがあった。
また、本発明者は、先にポリイミド無端ベルトの製造に際して、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物の、類、配合量の最適化と製造工程条件の最適化を行うことで、低い焼成温度でも、自己支持性の高く力学強度に優れたポリイミド無端ベルトを製造しえることを見出した。しかしながら、当該水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物を使用したポリイミド無端ベルトに関して、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物の添加は導電材料として用いているカーボンブラックの粒子表面状態を変化させてカーボンブラック粒子の凝集を引き起こす可能性があることが判明した。かかるカーボンブラックの凝集によって、ポリイミド無端ベルトの電気特性の経時的な低下が発生することが生じる。かかる経時的な電気特性の低下は、当該ポリイミド無端ベルトを中間転写体として用いる画像形成装置の複写画質の低下を引き起こしかねず、問題となる可能性がある。
また、上述したように、ポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に過熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。したがって、ポリイミド成型において、ポリアミック酸溶液の塗工に欠陥が生じた場合、工程は成形品の品質が低下してしまうことが問題となっている。特にフィルム状の成型品を製造する際には塗工液の粘度が不足している場合のタレや流れが起こり、成型品の面内厚さムラが生じてしまう。また逆に塗液の粘度が設定よりも高い場合、塗工時に塗液の展開を起こしにくくなってしまい、塗工面の一部が厚膜化して熱処理時にボイドとなることもある。以上の点より本発明に係る円筒状金型上に形成するベルト状成型品に限らず、フィルム状成型品を製造する際には塗液の粘度を所定の範囲に保つことは極めて重要な問題となっている。
一方、ポリイミド成形品に導電性を付与する方法として、導電剤を混合する方法が一般に行われている。かかる導電材料としてはカーボンブラック粉末をポリイミド中に分散混合する方法が広く行われている(例えば、特許文献19を参照)。
カーボンブラック粉末を分散混合する方法は、安価・簡便である長所はあるものの、カーボンブラック粉末が一定濃度以上で凝集を引き起こし導電性が急激に増大するため、抵抗値の調整が困難となる問題点がある。
これに対して、導電材料にポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子を使用した場合、ポリイミドワニスに均一に溶解または分散しやすいため、成型品を所定の抵抗値に調整することが容易となり、かつ、均一な抵抗値が得られるという長所がある。
導電材料として、ポリチオフェンを用いた例としては、例えば特許文献20,21などが開示されている。特許文献20は、基板と、ポリチオフェン系材料を含むコーティングからなる外層とを有する電子写真構成要素が提案されている。特許文献21には、ポリチオフェンをマトリックス樹脂中に含むシームレスベルトの例が開示されている。
しかしながら、ポリチオフェンを導電性材料として用いる場合、ポリチオフェンの繰り返し分子構造が極めて剛直であるために、熱によって溶融することができず、多くの溶剤に不溶または難溶であるため、その成型時には一般に媒体中に分散してなされることが多い。マトリックス中に分散して製造された成形品においては、導電材料が分散されている構造となっているため、例え導電性高分子を導電材料として用いても、先のカーボンブラック分散系で見られた抵抗値の不安定化を引き起こす問題があった。また、ポリチオフェンの分散処理を行う際には、分子構造上の大部分に存在するπ電子共役系の相互作用の効果で、分散粒子間で凝集しやすく、成形品中で微細に分散することが困難である。
一方、ポリイミド樹脂中に導電材料としてポリアニリンを添加して導電性を付与する方法として、特許文献22,23,24などが開示されている。
上記ポリアニリンは、その分子構造が、溶媒可溶なEmeraldineBase(EB:青色)、EBの酸化体であるPernigranilineBlue(PB:紫色)、EBの還元体であるLeucoemeraldineBase(LB:黄色)、ならびにEBをドーパントによってプロトン化し高い導電性を発現するEmeraldineSalt(ES:緑色)の4種類が知られている。一般にこれらの4種類の構造間での変化に対してエネルギー障壁が小さいため、分子構造が比較的相互に変化し易い傾向がある。このため、1つのポリマー鎖の中でもいくつかが混在しており、例えば、溶媒可溶性のEB構造と、溶媒不溶のPB構造が混在する場合もあり、結果として、ポリアニリン樹脂が不溶化してしまうことがある。先に列挙した導電材料としてポリアニリンを用いる例では、ポリアニリンを良溶媒中で溶解(一部分散)をして使用しているが、実際不溶化したポリアニリン樹脂は製膜時に凝集物として膜中の欠陥となってしまう。この課題に対して、ポリアニリン樹脂に対して高い機械力を加え粉砕を行うことも手段も考えられるが、その場合にもポリアニリン粒子の表面が一部溶解し、他の粒子と結着してしまい、かえって凝集物を生じてしまう場合がある。
また、上記ポリアニリン樹脂は、導電性を発現するためπ電子共役系がポリマー鎖上に長く分布しているためにポリマー鎖の屈曲性が少なく、各種溶媒に対する溶解性が極めて小さい樹脂であり、ポリアニリン樹脂粉末は、粉末粒子間の凝集力が強く、極めて分散しくい特徴をもっている。そのため、特許文献22,23,24などの導電材料にポリアニリンを用いた例では、ポリアミック酸溶液とポリアニリン樹脂の溶解/または分散液とを混合する際に、溶液中に溶解していたポリアニリンは、析出してしまい、また、分散体として存在しているポリアニリン粒子は、酸性化合物であるポリアミック酸によって急激に影響を受けてしまい(所謂、酸ショック)、凝集物となってしまうという問題があった。すなわち、ポリアミック酸とポリアニリンとから得られるポリアミック酸組成物中でポリアニリンは安定に溶解することができず、また、微細な分散状態で存在すること困難である。したがって、上述のポリアミック酸組成物から得られるポリイミド成形体中では、導電性をもつポリアニリンが微細な大きさで均一に分布していないため。得られたポリイミド成形体は安定な導電性を得ることができなかった。
特開平5−200904号公報 特開平6−228335号公報 特開平6−149083号公報 特開平6−258960号公報 特開2002−148951号公報 特開2002−148951号公報 特開2002−148957号公報 特開2002−292656号公報 特開平6−207014号公報 特開2002−127165号公報 特開2002−283366号公報 特開平7−138479号公報 特開2004−284164号公報 特開2003−200545号公報 特開2003−080651号公報 特開2002−192674号公報 特開2004−284166号公報 特開2004−287005号公報 特開昭63−11263号公報 特開2001−33994号公報 特開2004−101548号公報 特開平8−259709号公報 特開平9−176329号公報 特開平2000−226765号公報
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、酸性化合物であるポリアミック酸と接触することにより導電剤粒子表面状態が変化し(いわゆる、酸ショック)、導電剤が凝集してしまうことを防止することによって、得られたポリイミド無端ベルトの電気抵抗値のばらつきを抑制可能とするポリイミド無端ベルトおよびこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
本発明は、以下の特徴を有する。
<1>導電剤を含有するポリイミド樹脂からなり、22℃55%RHの条件下において、100Vの電圧を印加してから30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値と10秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(logΩ/□)以下であるポリイミド無端ベルト。
<2>像担持体と、前記像担持体表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を中間転写ベルト上に一次転写する一次転写手段と、前記中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写手段と、を備え、前記中間転写ベルトが導電剤を含有するポリイミド樹脂からなり、22℃55%RHの条件下において、100Vの電圧を印加してから30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値と10秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(logΩ/□)以下であるポリイミド無端ベルトである画像形成装置。
<3>有機極性溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、前記分散剤溶液に導電剤を溶解または分散させて導電剤溶液を調製する工程と、前記導電剤溶液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を合成し、導電剤を含有させたポリアミック酸組成物を製造する工程と、前記ポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
<4>有機極性溶媒にポリアミック酸を溶解させて第1のポリアミック酸組成物を得る工程と、前記第1のポリアミック酸組成物に分散剤を溶解させて第2のポリアミック酸組成物を得る工程と、前記第2のポリアミック酸組成物に導電剤を分散させて第3のポリアミック酸組成物を得る工程と、前記第3のポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、前記円筒状基材上に塗布された前記第3のポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
<5>溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、前記分散剤溶液に導電剤を溶解または分散させて導電剤溶液を調製する工程と、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させたポリアミック酸組成物を前記導電剤溶液とは別に調製する工程と、前記導電剤溶液と前記ポリアミック酸組成物とを混合させて混合物を得る工程と、前記混合物から前記溶媒を除去して導電剤を含有させたポリアミック酸組成物を製造する工程と、前記ポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
本発明は、酸性化合物であるポリアミック酸と直接接触することによって、導電剤粒子の表面状態が変化(いわゆる、酸ショック)することを防止することができ、これにより、ポリインド樹脂中で導電剤が凝集してしまうおそれがない。その結果、得られたポリイミド無端ベルトの電気抵抗値は、ばらつきが極めて少なく、表面抵抗率の電気依存性も向上する。また、本発明のポリイミド無端ベルトを搭載した画像形成装置は、高品質の転写画質を安定して得ることができる。
本発明の実施の形態について以下説明する。
第1の実施の形態:
(ポリイミド樹脂)
本発明に係るポリイミド樹脂は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を有機極性溶媒中に溶解させたポリアミック酸溶液を、金型表面に塗布した後、乾燥処理にて溶媒分を適宜除去して、その後、焼成処理を行い、ポリアミック酸の脱水閉環反応を行い得る。
[ポリアミック酸組成物]
本発明のポリアミック酸組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸」ということがある)と、(B)水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物(以下、「芳香族カルボン酸化合物」ということがある)、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物(以下、「フェノール化合物」ということがある)、かからなる群の少なくとも1種類以上と、(C)導電剤と、(D)分散剤を含有する。なお、ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
なお、下記一般式(1)中の「R1」は4価の有機基であるが、具体的には、後に例示されているテトラカルボン酸(二無水物)から4つのカルボキシル基を除いた残基が挙げられる。また、下記一般式(1)中の「R2」は2価の有機基であるが、具体的には、後に例示されているジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた残基が挙げられる。また、後述する一般式(2)中の「R3」「R4」もそれぞれ、「R1」「R2」と同様である。
Figure 2007304357
芳香族カルボン酸化合物およびフェノール化合物はイミド化反応を行う温度では揮発することがない。従って、従来のイミド化触媒よりも少量で、イミド化を行うための焼成温度低減や焼成時間短縮の実現が可能となる。その結果、本発明のポリアミック酸組成物を用いて作製した無端ベルトは、従来のものに比べてイミド化反応による膜品質(膜厚均一性等)の低下が防がれ、十分な強度といった良好な機械特性有することになる。また、分散剤を併用することで、芳香族カルボン酸およびフェノール化合物などの酸性物質添加による酸ショックの影響を抑制して、導電剤の分散性に影響を与えることがないため、効率よく当該導電剤の機能を発現させることができる。
本発明のポリアミック酸組成物は、下記構成物等の条件に従えば、種々の方法により作製することができるが、以下のポリアミック酸組成物の製造工程工程(A)また(B)にて製造されることが好ましい。
−導電剤分散ポリアミック酸組成物の製造工程(A)−
有機極性溶媒中にポリアミック酸が溶解したポリアミック酸溶液に、分散剤を溶解させた後、次いで、導電性をもつ粒子を分散させて得られた分散液に、さらに芳香族カルボン酸化合物、および、フェノール化合物、の少なくとも1種類以上とを、溶解してポリアミック酸組成物を得るポリアミック酸組成物の製造方法。
−導電剤ポリアミック酸組成物の製造工程(B)−
分散剤を溶解させた有機極性溶媒に、導電性をもつ粒子を分散させた後、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを、溶解させてポリアミック酸を重合した分散液に、さらに芳香族カルボン酸化合物、および、フェノール化合物、の少なくとも1種類以上と、溶解してポリアミック酸組成物を得るポリアミック酸組成物の製造方法。
また、他の導電剤分散ポリアミック組成物の製造方法(B’)は、例えば、有機極性溶媒中100部に対して、非イオン系高分子0.02〜0.8部を溶解させた後、カーボンブラック2〜16部を分散させてカーボンブラック分散液を調製する。そののち、当該カーボンブラック分散液に、ポリアミック酸として10〜40部相当のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、重合してカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する。
以下、各構成物等について、詳細に説明する。
(ポリアミック酸)
既述のポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
また、ポリアミック酸は、その一部に下記一般式(2)で表されるポリイミド構造を含んでもよい。すなわち、ポリアミック酸は、その一部がイミド化されて、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体となっていてもよい。ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化しておくことで、イミド化の反応速度をより大きくし、そのエネルギーのさらなる低減を図ることができる。
Figure 2007304357
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(ジアミン化合物)
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等を挙げることができる。
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンが好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(有機極性溶媒)
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン;などを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸およびポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
(ポリアミック酸の固形分濃度)
かかるポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5〜50質量%が好ましく。さらに、特に10〜30質量%が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない。
また、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1〜100Pasが好ましく、その粘度となるような固形分濃度としては、上述の固形分濃度が望ましい。
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と並行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題がある。
(芳香族カルボン酸、フェノール)
分子内に水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物には、下記一般式(3)〜(5)で示される化合物が例示される。
かかる化合物は、ポリアミック酸組成物中に添加することで、乾燥・焼成工程時のポリアミック酸脱水閉環反応を促進する作用を及ぼす。その結果、ポリイミド成型加工時に、より低い温度、より短い時間でイミド化反応を行うことができるといった効果が得られる。
Figure 2007304357
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このうち、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−スルホニル安息香酸、3−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、4−ヒドロキシナフトエ酸、5−ヒドロキシナフトエ酸、4−アミノナフトエ酸、4−スルホニルナフトエ酸、等が好適に使用される。
また、分子内にアミノ基、スルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノールには、下記式(6)〜(8)で示される化合物が例示される。なお、フェノールとは、ベンゼン環、ナフタリン環その他の芳香族性の環に結合する水素原子が水酸基で置換された化合物の総称(化学大辞典)である。
かかる化合物は、ポリアミック酸組成物中に添加することで、乾燥・焼成工程時のポリアミック酸脱水閉環反応を促進する作用を及ぼす。その結果、ポリイミド成型加工時に、より低い温度、より短い時間でイミド化反応を行うことができるといった効果が得られる。
Figure 2007304357
Figure 2007304357
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このうち、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、3−ヒドロキシスルホン酸、4−ヒドロキシスルホン酸等が好適に使用される。これらは、単独または2週以上組み合わせて用いても良い。これらは、ポリアミック酸組成物の溶媒中に溶解させて用いられる。
分子内に水酸基、アミノ基、スルホニル基の少なくとも一つ以上有する芳香族カルボン酸化合物または分子内にアミノ基、スルホニル基の少なくとも一つ以上有するフェノール化合物の添加量はポリアミック酸100質量部に対して、0.01〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10質量%であり、より好ましくは、0.1〜5質量%である。20質量%を超える添加量であると、焼成後異物となって析出することがあり、ベルト品質が低下する。一方、0.01質量%未満の添加量であると、所定の効果を発現することができない。
(導電剤)
導電剤としては、導電性をもつカーボンブラックが好ましい。導電性をもつカーボンブラックの配合量は、ポリアミック酸組成物中、ポリアミック酸100質量部に対して、20〜40質量部配合されることが好ましい。20質量部未満または40質量部を超えるとであると所定の抵抗値を発現し難くなるためである。
しかしながら、所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、半導電性のカーボンブラック、または他の導電性もしくは半導電性微粉末も使用できる。カーボンブラックの種類としては、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等が例示される。また他の導電性粒子としては、特に制限はないが、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。
また、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子材料の添加も可能である。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。
なお、その他の導電剤の含有量も上記範囲とすることが好ましい。
これら導電剤はその使用目的により適宜選択される。例えば、透明なポリイミドベルトを得たい場合や表面グロスの高いベルトを得たい場合には金属酸化物を、環境変動の小さいポリイミドベルトを得たい場合には導電性高分子材料を、安価及び抵抗調整が容易であるという観点からはカーボンブラックを使用することが好ましい。本発明では、樹脂中への分散性がよいので、良好な分散安定性が得られ、ポリイミドベルトの抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきづらくなる電気抵抗の経時での安定性より、pH5以下の酸化処理カーボンブラックを好ましくは添加することが好ましい。
(酸化処理カーボンブラック)
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造することができる。この酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温下での空気酸化後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。
具体的には、酸化処理カーボンブラックは、コンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸化処理カーボンブラックは、ガスまたはオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、既述の酸化処理カーボンブラックに含まれるとみなす。
本発明の酸化処理カーボンブラックのpH値は、pH5.0以下であることが好ましく、pH4.5以下であることがより好ましく、pH4.0以下であることがさらに好ましい。
pH5.0以下の酸化処理カーボンは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基などの酸素含有官能基があるので、樹脂中への分散性がよいので、良好な分散安定性が得られ、ポリイミド無端ベルトの抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきづらくなる。
カーボンブラックの水性懸濁液を調製し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整することができる。
酸化処理カーボンブラックは、その揮発成分が1〜25%、好ましくは2〜20%、より好ましくは、3.5〜15%含まれていることが好適である。揮発分が1%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、結着樹脂への分散性が低下することがある。一方、25%より高い場合には、結着樹脂に分散させる際に、分解してしまう、或いは、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなるなどによって、得られる成形品の外観が悪くなるなどの問題が生じることがある。従って、揮発分を上記範囲とすることで、結着樹脂中への分散をより良好とすることができる。この揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに、出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基等)の割合により求めることが出来る。
酸化処理カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5:揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0:揮発分3.5%)等が挙げられる。
上記のような酸化処理カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べ、前述したように表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよいため、導電性微粉末としての添加量を高くすることが好ましい。これにより、ポリイミド無端ベルト中のカーボンブラックの量が多くなるため、上記電気抵抗値の面内バラツキを押えることができる等の酸化処理カーボンブラックを用いることの効果を最大限発揮することができる。
(カーボンブラックの分散方法)
カーボンブラックの分散方法としては公知の方法が適用でき、ポールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
上記導電剤分散ポリアミック酸組成物の製造工程(B)の場合には、この導電性微粒子分散液に、上述したテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を当量になるように添加して、ポリアミック酸オリゴマー製造時と同様に重合し、導電性微粒子分散ポリアミック酸組成物を得る。
カーボンブラックの分散時には、カーボンブラック粒子の分散安定性をさらに高めるために、分散剤、好ましくは非イオン系高分子を添加することが行われる。
(分散剤)
本発明のかかる分散剤としては、低分子量/高分子量または、カチオン系/アニオン系/非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用することもできる。低分子量の分散剤を使用した場合、カーボンブラック表面への分散剤吸着は均一に行うことは可能であるが、得られるポリイミド無端ベルトの表面に偏在してしまいベルト表面よりブリードアウトしてしまう問題がある。また、カチオン系、アニオン系などのイオン系分散剤を使用すると、ポリアミック酸組成物の経時的安定性を損ねてしまい、ポリイミド成形品の品質が低下する場合がある。以上の理由より、本発明においては、分散剤として非イオン系高分子を使用することが最も好ましい。
(非イオン系高分子)
本発明に用いられる非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが好ましい。
ポリアミック酸組成物中、非イオン系高分子の配合量は、ポリアミック酸100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましい。配合量が0.2質量部未満であると、カーボンブラックの凝集を生じ、得られるポリイミド無端ベルトの電気特性を損ねる場合がある。配合量が3質量部を超えると、高分子分散剤自身の凝集を生じてしまい、得られるポリイミド無端ベルトの強度低下、電気特性の低下などを引き起こす場合がある。
以上、本発明にかかるポリアミック酸組成物について説明したが,本発明はこれらの実施の態様のみについて限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で,当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
(体積抵抗率、表面抵抗率およびそれらの測定)
ここで、表面抵抗率は、円形電極(例えば、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用い、JIS K 6911(1995)に従って測定することができる。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図1は、円形電極の一例を示す概略平面の図1(a)及び概略断面の図1(b)からなる。図1に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと第二電圧印加電極Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極Bとの間に半導電性ベルト1を挟持し、第一電圧印加電極A’における円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ポリイミド無端ベルトの表面抵抗率の常用対数値ρvを算出することができる。なお、詳細の測定方法については実施例の欄にて後述する。また、後述する第2および第3の実施の形態でも同様に測定した。
また、導電剤を含む場合、ポリイミド無端ベルトの体積抵抗率の体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式中、tは、ポリイミド無端ベルトの厚さを示す。
式:ρv=19.6×(V/I)×t
[ポリイミド無端ベルトおよびその製造方法]
本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリアミック酸組成物を成形型に塗布した後、乾燥処理及び焼成処理を施して作製される無端ベルトである。
本発明のポリイミド無端ベルトは、焼成工程を経ることで、ポリアミック酸がポリイミドへ化学変化を起こす。ポリアミック酸からのポリイミドへの添加は、脱水閉環反応であるため、脱離する水分だけ樹脂分の重量が減少する。その結果、得られるポリイミド無端ベルトの組成は、ポリイミド樹脂100質量部に対して、導電性をもつカーボンブラック粒子20〜45質量部と、非イオン性高分子0.2〜3質量部と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基のすくなくとも1つ以上を有するフェノール化合物、の少なくとも1種類以上が0.01〜25質量部と、からなる組成比となる。
本発明のポリイミド無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いることができる。具体的には、本発明のポリイミド無端ベルトは、その転写方式が中間転写ベルト方式であることが好ましく、および/または無端ベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構を有する構成あれば、組み込まれる装置は特に限定されない。
例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置;感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置;各色毎の現像器を備えた複数の潜像担持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置;のいずれであってもよい。従って、本発明のポリイミド無端ベルトは、中間転写及び定着用として用いられるのみならず、中間転写ベルト、定着用ベルトとして用いることも可能である。上述の「中間転写及び定着用ベルト」とは、同一ベルト上において中間転写過程と定着過程を行うベルトである。
このポリイミドベルトは無端ベルトの形状を有する。本発明のポリイミド無端ベルトは、既述の本発明のポリアミック酸組成物を主体とするものである。
ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。
なお、「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
また、ポリイミド無端ベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から好ましくなく、薄すぎるとその靭性が小さすぎるため好ましくない。従って、ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下であることが望ましい。
導電剤を含む場合、ポリイミド無端ベルトの体積抵抗率は、10Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、10Ω・cm以上1012Ω・cm以下である。この体積抵抗率が1×10ΩCm未満である場合には、像担持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、前記体積抵抗率が1×1012Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナーの飛散や、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
次に、ポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について一例を示す。
(ポリイミド無端ベルトの製造方法)
上述のポリアミック酸組成物の製造方法(A)また(B)によって、得られたカーボンブラックが分散してポリアミック酸酸組成物を、そのまま、もしくは所定の抵抗値が発現するようにポリアミック酸溶液を添加して、カーボンブラック濃度を調整したポリアミック酸組成物を塗工液として用いてポリイミド無端ベルトが製造される。この塗工液を金型の内面もしくは外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒金型上への塗工液塗布の段階で、塗工液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
(乾燥工程)
次に、塗工液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の20質量%以上 好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥温度は、50〜200℃の温度範囲で乾燥を行う。
(焼成工程)
更に、この金型を150℃〜450℃で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。
なお、ポリアミック酸の脱水閉環反応のため、ポリアミック酸からポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の重量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対するカーボンブラック含有率が、ポリアミック酸樹脂成分に対するカーボンブラック含有率に比べ大きくなる。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
(ポリイミド無端ベルト)
本発明のポリアミック酸組成物用いて、上記プロセスにて製造された本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂と、導電性をもつカーボンブラック粒子と、非イオン性高分子と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、の少なくとも1種類以上と、からなることを特徴とする。
さらに、本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂分100質量部に対して、導電性をもつカーボンブラック粒子20〜45質量部と、非イオン性高分子0.2〜3質量部と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基のいずれか1以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基のいずれか1以上を有するフェノール化合物、のいずれか1種類以上が0.01〜25質量部と、からなる組成比であることを特徴とする。
また、本発明の他のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂中に、導電性を有するカーボンブラックと、分散剤である非イオン系高分子を含む、円筒型成形品である。また、さらに上記ポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂中の、導電性を有するカーボンブラックと、分散剤である非イオン系高分子との組成の質量比が、(ポリイミド樹脂)/(カーボンブラック)/(非イオン系高分子)=100質量部/20〜45質量部/0.2〜2質量部の関係を満たす組成である。
さらに、本発明のポリイミド無端ベルトは、電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であり、かつ、JIS−C5016による耐折性試験での耐折れ回数が2000回以上であることを特徴とする。
第2の実施の形態:
以下、本実施の形態を詳細に説明する。
(ポリアミック酸組成物の調製)
本発明に係るポリアミック酸組成物は、導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含み、次の単位工程を含む工程1〜工程5のいずれかの工程で調製されることを特徴とする。
[工程1]単位工程(1)、(2)を含む工程
単位工程(1):導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程。
単位工程(2):溶媒(A)を除去する工程。
さらに、上記工程1は、以下の単位工程(3)〜(6)を含む工程2から構成されてもよい。
[工程2]単位工程(3)〜(6)を含む工程
単位工程(3):導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程。
単位工程(4):ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程。
単位工程(5):導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程。
単位工程(6):溶媒(A)を除去する工程。
さらに、上記工程2は、以下の工程3〜5の態様から構成されてもよい。
[工程3]単位工程(7)〜(10)を含む工程で、単位工程(7)及び(8)を行った後に、単位工程(9)を行い、しかる後に単位工程(10)を行う。
単位工程(7):導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程。
単位工程(8):ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程。
単位工程(9):導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程。
単位工程(10):溶媒(A)を除去する工程。
[工程4]単位工程(11)〜(14)を含む工程で、単位工程(11)及び(12)を行った後に、単位工程(14)を行い、しかる後に単位工程(13)を行う。
単位工程(11):導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程。
単位工程(12):ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程。
単位工程(13):導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程。
単位工程(14):溶媒(A)を除去する工程。
[工程5]単位工程(15)〜(18)を含む工程で、単位工程(15)及び(16)を行った後に、単位工程(17)と、単位工程(18)の単位工程を交互に行う。
単位工程(15):導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程。
単位工程(16):ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程。
単位工程(17):導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程。
単位工程(18):溶媒(A)を除去する工程。
また、上記溶媒(A)を除去する工程において、溶媒(A)の除去を減圧しながら行ってもよい。
(導電性高分子)
本発明にかかる導電性高分子としては、高分子主鎖上または、その分枝上の少なくとも5個の原子上に移動したπ電子共役系を有する有機型電荷を有する。すなわち、本発明にかかる導電性高分子には、主鎖中にπ電子共役系をもつ単純導電性高分子、絶縁性高分子主鎖にπ電子共役系をもつ側鎖をグラフトした構造のグラフト型導電性高分子、高分子主鎖中にπ共役構造のブロックを導入したブロック型導電性高分子などが挙げられる。当該導電性高分子材料は少なくとも10−6S・cm以上の十分な導電性能を有する。
このような導電性を発現するπ電子共役系分子構造としては、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、などが挙げられる。これらは、その誘導体または混合物の形で使用される。
これらの導電性を発現するπ電子共役系分子構造としては、電気伝導性の安定性や、その材料としての取扱いの容易さから、ポリアニリンからなる単純導電性高分子が好適に使用される。
(ポリアニリン)
本発明で使用される主に導電材料としては、ポリアニリンが使用される。ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。
本発明のポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造できる。ポリアニリンはその酸化の状態によってロイコエメラルジン(またはロイコエマラルジン)(leucoemeraldine)、エメラルジン(またはエマラルジン)(emeraldine)及びパーニグルアニリン(pernigraniline)の構造をとることが知られている。この内、溶媒可溶本発明においてこの中でエメラルジン構造を持つポリアニリンがドーピングの時に一番高い電気伝導度を持ち、空気の中で安定なので一番有用である。
ポリアニリンの合成は、特開平3−28229号公報に詳細に記載されているように、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、上記プロトン酸にてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得ることができる。
ポリアニリンの添加量は発現させる導電度によって適宜調整される。塗工加工用ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸樹脂分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5〜40質量部、が好ましく、さらに、より好ましくは10〜30質量部である。ポリアニリンの添加量が5質量部未満であると所定の電気導電性を発現することができず、40質量部を超えると、成型されるポリイミド製無端ベルトのしなやかさが失われてしまい、ベルトとしての機能を有しなくなってしまうためである。
(溶媒(A))
本発明に係る溶媒(A)は、導電性高分子を溶解しない溶媒から選ばれる。
かかる溶媒(A)に含まれる化合物の双極子モーメントが3.2D以下の化合物から構成される。導電性高分子は、モルホロジーが大きいため、一旦凝集すると再分散が不可能になるため、後述する溶媒(A)を用いて分散させることが好ましい。
さらに、(i)双極子モーメントが1.0以下の炭化水素化合物、(ii)双極子モーメントが2.0以下のハロゲン化炭化水素化合物、(iii)双極子モーメントが2.0以下のアルコール化合物、(iv)双極子モーメントが2.0以下のエーテル化合物、(v)双極子モーメントが3.2以下のケトン化合物、の中から選ばれる化合物が用いられる。
(i)双極子モーメントが1.0以下の炭化水素化合物:
双極子モーメントが1.0以下の炭化水素化合物としては、プロパン(双極子モーメント0.00D:講談社刊溶剤ハンドブック:以下同)、ブタン(0.00D)ペンタン(0.00D)、2−メチルブタン(0.00D)、ヘプタン(0.00D)、ヘキサン(0.08D)、オクタン(0.00D)、デカン(0.00D)、1−ペンタン(0.47D)、ベンゼン(0.00D)、トルエン(0.37D)、o−キシレン(0.44D)、m−キシレン(0.34D)、p−キシレン(0.00D)、エチルベンゼン(0.58D)、クメン(0.65D)、メシチレン(0.07D)、ナフタレン(0.00D)、テトラリン(0.40D)、n−ブチルベンゼン(0.36D)、sec−ブチルベンゼン(0.37D)、tert−ブチルベンゼン(0.36D)、p−シメン(0.00D)、p−ジエチルベンゼン(0.24D)、スチレン(0.13D)、シクロペンタン(0.00D)、ビシクロヘキシル(0.40D)、シクロヘキセン(0.28D)、α−ピネン(0.36D)、ジペンテン(0.61D)、デカリン(0.00D)、などが挙げられる。
(ii)双極子モーメントが2.0以下のハロゲン化炭化水素化合物:
双極子モーメントが2.0以下のハロゲン化炭化水素化合物としては、塩化メチル(1.86D)、ジクロロメタン(1.14D)、クロロホルム(1.15D)、四塩化炭素(0.00D)、塩化エチル(1.86D)、1,1,1−トリクロロエタン(1.57D)、1,1,2−トリクロロエタン(1.55D)、1,1,1,2−テトラクロロエタン(1.20D)、1,1,2,2−テトラクロロエタン(1.71D)、ペンタクロロエタン(0.98D)、1,1−ジクロロエチレン(1.30D)、1,2−ジクロロエチレン(1.85D)、トリクロロエチレン(0.90D)、テトラクロロエチレン(0.00D)、塩化プロピル(1.97D)、1,2−ジクロロプロパン(1.85D)、塩化アリル(1.98D)、塩化ブチル(1.90D)、クロロベンゼン(1.54D)、m−ジクロロベンゼン(1.38D)、o−クロロトルエン(1.39D)、p−クロロトルエン(1.74D)、1−クロロナフタレン(1.33D)、1,2−ジブロモエタン(0.86D)、1,1,2,2−テトラブロモエタン(1.31D)、ブロモベンゼン(1.71D)、1−ブロモナフタレン(1.58D)、ヘキサフルオロベンゼン(0.33D)、などが挙げられる。
(iii)双極子モーメントが2.0以下のアルコール化合物:
双極子モーメントが2.0以下のアルコール化合物としては、メタノール(1.664D)、エタノール(1.68D)、1−プロパノール(1.657D)、2−プロパノール(1.68D)、1−ブタノール(1.68D)、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール(1.66D)、1−ペンタノール(1.80D)、イソペンチルアルコール(1.82D)、tert−ペンチルアルコール(1.70D)、ベンジルアルコール(1.66D)、シクロヘキサノール(1.90D)、などが挙げられる。
(iv)双極子モーメントが2.0以下のエーテル化合物:
双極子モーメントが2.0以下のエーテル化合物としては、 ジエチルエーテル(1.12D)、ジイソプロピルエーテル(1.22D)、ジブチルエーテル(1.22D)、アニソール(1.20D)、フェネトール(1.00D)、ジフェニルエーテル(1.05D)、フラン(1.70D)、テトラヒドロフラン(1.87D)、ジメトキシエタン(1.79D)、ジエチレングリコールジメチエーテル(1.97D)、などが挙げられる。
(v)双極子モーメントが3.2以下のケトン化合物:
双極子モーメントが3.2以下のケトン化合物としては、アセトン(2.69D)、メチルエチルケトン(2.76D)、2−ペンタノン(2.70D)、3−ペンタノン(2.70D)、2−ヘキサノン(2.66D)、2−ヘプタノン(2.59D)、4−へプタノン(2.70D)、ジイソブチルケトン(2.66D)、シクロヘキサノン(3.01D)、アセトフェノン(2.96D)、などが挙げられる。
(導電性高分子の分散)
本発明において、導電性高分子組成物は、導電性高分子を上記溶媒(A)に分散して製造される。かかる導電性高分子組成物中の、導電性高分子の配合量は、使用される溶媒(A)100質量部に対して、導電性高分子0.1〜30質量部の範囲で配合される。好ましくは、1〜20質量部、さらに好ましくは、5〜15質量部の範囲で配合される。導電性高分子の配合量が0.1質量部未満であると得られるポリイミド成形品中の導電性高分子配合量が少なくなってしまい期待される十分な導電性を発現できなくなる。また、配合量が30質量部を超えると、配合した導電性高分子が均一に溶解または分散することができず、得られる成形品の外観、電気的特性を低下させる。
(導電性高分子の分散方法)
本発明にかかる導電性高分子の分散には、導電性高分子からなる導電性高分子粒子を所定の分散媒中に添加して機械力を印加することで導電性高分子粒子を解砕して行われる。ポリアニリンの分散方法としては公知の方法が適用でき、ポールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
(導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒径)
本発明にかかる導電性高分子組成物中に含まれる導電性高分子は、溶媒(A)中に分散された状態で存在する。溶媒(A)中に溶解とは、導電性高分子鎖間に有機極性溶媒分子が浸透して広がり、導電性高分子と有機極性溶媒分子とが分子レベルで溶媒和した状態をいう。また、溶媒(A)中に分散とは、導電性高分子鎖間に有機極性溶媒分子が浸透せずに、分子間力によって導電性高分子からなる凝集構造を保持しながら、一定の粒径で溶媒(A)中に存在する状態をいう。
導電性高分子の粒径は、分散物に光を入光させて、分散粒子による入射光の散乱状態を測定することで算出される。光散乱現象の測定は、分散粒子のブラウン運動を散乱光にてモニターすること観察する動的光散乱方式、Mie散乱による現象を測定するレーザー回折/散乱式で測定されえるが、本発明においては、レーザー回折/散乱式にて導電性高分子粒子の粒径を規定する。
本発明において、導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μ以下が好適に使用される。以下導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、得られるポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまう。
(非イオン系高分子)
導電性高分子の分散時には、導電性高分子粒子の分散安定性をさらに高めるために、分散剤である非イオン系高分子を添加してもよい。
本発明に用いられる非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、導電性高分子の分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが好ましい。
導電性高分子組成物中の非イオン性高分子は、かかる導電性高分子100質量部に対して、0.2〜20質量部配合される。配合量が、0.2質量部未満であると、導電性高分子の分散安定性を保つことができず、得られるポリイミド無端ベルトの電気特性が低下しやすくなる。また、配合量が、20質量部を超えると、ポリアミック酸溶液中で非イオン性高分子同士の凝集が起こり、得られるポリイミド無端ベルトの外観品質の低下や、力学性能の劣化を招くからである。
(ドーパント)
本発明において、導電性高分子をドーピングして、導電性とするためのドーパントとしては、プロトン酸を好ましく用いることができる。このようなプロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フェニルフォスホン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸などの無機酸のほか、有機酸などを挙げることができる。
ドーパントとして好ましいプロトン酸は、ポリイミド成型時の熱処理によって、揮発・分解しない化合物が好ましい。
かかるプロトン酸としては、例えば、スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、が好適に用いられる。
このようなスルホン酸化合物としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。
有機カルボン酸化合物の具体例として、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、等を挙げることができる。
更に、本発明において、有機酸はポリマー酸であってもよい。このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、等を挙げることができる。
この内、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェニルフォスホン酸、が好適に用いられる。
これらは、導電性高分子の構成単位ユニットに対して、0.1〜5当量、より好ましくは、1〜3当量、添加される。
ポリアミック酸組成物製造工程において、ドーパントの添加時期は、特に制限されない。導電性高分子を有機溶媒(A)中に分散する前または後に添加しても、ポリアミック酸の重合後の何れに添加してもよい。所定量のドーパントを一括して添加しても、また2回以上数回に分けて添加してもよい。
(ポリアミック酸)
本発明に係るポリアミック酸組成物は、上記工程にて製造された導電性高分子組成物中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(ジアミン化合物)
本発明に係るポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ)
ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
(ポリアミック酸の固形分濃度)
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1〜100Pasが好ましく、その粘度となるような固形分濃度としては、溶媒(A)100部に対して10〜40質量%が好ましい。固形分濃度が10部未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、40部より高いと反応時に原料モノマーの不溶部が生じてしまい反応がほとんど進行し得ない。その結果、最終的に得られる成型体の強度が低下する。
(導電性高分子/ポリアミック酸の配合比率)
本発明に係るポリアミック酸組成物中の、ポリアミック酸成分に対する導電性高分子の配合比率は特に規定されるものではないが、本発明にかかるポリイミド無端ベルトを例とするポリイミド成形品に要求される抵抗値によって適宜調整される。本発明にかかるポリイミド無端ベルトを本発明にかかる電子写真装置に搭載する中間転写ベルトまたは、搬送ベルトとして使用する場合、ポリイミド無端ベルトの表面抵抗率の常用対数値が、8〜13の範囲で使用されるため、当該抵抗特性が安定に発現されるように、導電性高分子の種類、導電性高分子の配合量、ドーパント種類、ドーパント配合量などによって調整される。ポリアミック酸樹脂配合量を100質量部としたとき、導電性高分子配合量は、1〜40質量部の範囲で調整される。導電性高分子の配合量が、1質量部未満、または40重両部を越えてしまうと、所定の抵抗値に調整することが困難となってしまうためである。
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題が生じる。
(ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒径)
本発明にかかるポリアミック酸組成物中に含まれる導電性高分子は、溶媒中に溶解/または分散された状態で存在する。溶解・分散とは、導電性高分子組成物の場合と同様である。
本発明のポリアミック酸組成物において、分散している導電性高分子粒子の粒径は、先の導電性高分子組成物中における導電性高分子粒子の粒径と同様にして測定される。
本発明において、ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μ以下が好適に使用される。ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、得られるポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまう。
(合成溶媒)
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
(ポリアミック酸重合時の固形分濃度)
かかるポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5〜50質量%が好ましく。さらに、特に10〜30質量%が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない。
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題がある。
(溶剤(B))
本発明のポリアミック酸を溶解させるのに使用される溶媒(B)は、ポリアミック酸樹脂を溶解しえて、かつ、先の溶媒(A)と異なることを特徴とする。
上記溶媒(A)は、溶媒(B)に比べて非極性の溶媒であり、この溶媒(A)の存在下では上記ポリアミック酸樹脂が凝集するおそれがある。したがって、ポリアミック酸樹脂は予め以下に示す溶媒(B)に溶解させておき、ポリアミック酸樹脂が溶媒(A)と非接触となるようにする必要がある。また、上述したように、溶媒(A)を除去または除去することによって、導電剤およびポリアミック酸樹脂の凝集を抑制した安定な導電剤を含有させたポリアミック組成物を得ることができる。
さらに、かかる溶媒(B)は、双極子モーメントが3.5D以上の化合物から構成されることを特徴とする。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(双極子モーメント4.09D:講談社刊溶剤ハンドブック:以下同)、γ−ブチロラクトン(4.12D)、ジメチルスルホキシド(4.30D)、N,N−ジメチルホルムアミド(3.86D)、N,N−ジメチルアセトアミド(3.72D)、などを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましい。
先のポリアミック酸合成時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶媒(B)を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒(B)中に再溶解させる方法、溶媒(A)を徐々に除去しながら所定溶媒(B)を添加して組成を調製する方法のいずれかでもよい。
ポリアミック酸溶液の濃度は適宜調査されるものとして、好ましくは10〜50質量部の範囲で調整される。
以上、本発明にかかるポリアミック酸組成物について説明したが,本発明はこれらの実施の態様のみについて限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で,当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
(ポリイミド成形品並びにその製造方法)
本発明に係るポリイミド成形品は、ポリイミド樹脂中に、導電性を有する導電性高分子が分散してからなり、本発明に係るポリアミック酸組成物を金属などの一定形状からなる金型表面に塗布した後、乾燥製膜して所定の形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、からなる製造方法によって得られることを特徴とする。
(ポリイミド成形品中の導電性高分子ドメインの粒径)
本発明にかかるポリイミド成形品中に、含まれる導電性高分子は、ポリイミド樹脂マトリックス中に一部含まれるが、そのほとんどは、ポリイミドマトリックス中に一定の形状を保持したドメインとして分散している。溶解・分散とは、導電性高分子組成物の場合と同様である。
本発明のイミド成形品中に、分散している導電性高分子ドメインの粒径は、後述の方法にて測定される。
本発明において、ポリイミド成形品に分散してからなる導電性高分子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μm以下が好適に使用される。ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、ポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまうためである。
(ポリイミド成形品中の導電性高分子ドメイン粒子径の測定)
本発明にかかるそれぞれのポリイミド成形品から短冊片を切り出し、表面に金属蒸着を行った。エポキシ樹脂で金属蒸着処理した短冊片を包埋した。エポキシ樹脂を加熱・硬化した後、短冊片を、ダイヤモンドナイフを取り付けたミクロト―ム(Reichert社製ウルトラカットN)を用いて、0.1μm程度の厚さでスライスした。染色剤として、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸、ヨウ素などを用いて、電子線染色を行い、試料を作製した。
試料を透過型電子顕微鏡(FEI社製TecnaiG2)を用いて、加速電圧100kV、倍率12,000倍にてポリイミド成形品中に分散している導電性高分子粒子のドメインの観察を行った。ポリアニリンドメインは、ポリイミドマトリックス樹脂中に球状、楕円状、または不定形状で分布していることが確認された。
観察画像を、画像解析装置ImageProPlusを用いて解析処理を行い、導電性高分子粒子のドメインの平均サイズを算出した。
(ポリイミド無端ベルト)
本発明に係るポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂中に、導電性を有する導電性高分子が分散してからなる、円筒型成形品であり、本発明に係るポリアミック酸組成物を円筒型金型表面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、からなる製造方法によって得られることを特徴とする。
(ポリイミド無端ベルトの製造方法)
次に、本発明のポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について示す。
本発明に係るポリアミック酸組成物を金型の表面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。
また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し 平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
金型の表面とは、円筒型の金型の内面/外面のいずれも使用し得る。金型内面に塗工を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面が、金型面に接触するため、金型からの汚染が生じ、ポリイミド無端ベルトの特性が劣化することがある。一方、金型外面に塗工を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面に対する金型からの汚染は防止できるものの乾燥・焼成工程において雰囲気相に接触した状態で成形される。そのため、導電性高分子の酸化劣化、ドーパントの揮発などが生じることがある。そのため、円筒型金型の塗布面に対応した適当な工程条件を個別に講じる必要がある。
次に、ポリアミック酸組成物を塗布したこの円筒金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20質量%から60質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。
ポリアミック酸の脱水閉環反応のため、ポリアミック酸からポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の重量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対する導電性高分子含有率が、ポリアミック酸樹脂成分に対する導電性高分子含有率に比べて増加する。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
(乾燥工程)
次に、塗工液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。
乾燥温度は、50〜200℃の温度範囲で乾燥を行う。
(焼成工程)
更に、この金型を150℃〜450℃で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
第3の実施の形態:
以下、本実施の形態を詳細に説明する。
(導電性高分子組成物の調製)
本発明に係るポリアミック酸組成物は、次の手順で調製される。
(i)ポリアニリンなどの導電性高分子樹脂を溶媒に分散または溶解させて、導電性高分子組成物を調製する工程と、
(ii)(i)で調製した導電性高分子組成物中に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を所定量添加して、ポリアミック酸の重合反応を行い、ポリアミック組成物を得る工程と、により製造される。
導電性高分子樹脂の存在下で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を重合させたことにより得られるポリアミック酸は、ポリアニリン等の導電性高分子樹脂の分散性が極めて良好である。
(導電性高分子)
本発明にかかる導電性高分子としては、高分子主鎖上または、その分枝上の少なくとも5個の原子上に移動したπ電子共役系を有する有機型電荷を有する。すなわち、本発明にかかる導電性高分子には、主鎖中にπ電子共役系をもつ単純導電性高分子、絶縁性高分子主鎖にπ電子共役系をもつ側鎖をグラフトした構造のグラフト型導電性高分子、高分子主鎖中にπ共役構造のブロックを導入したブロック型導電性高分子などが挙げられる。当該導電性高分子材料は少なくとも10−6S・cm以上の十分な導電性能を有する。
このような導電性を発現するπ電子共役系分子構造としては、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、などが挙げられる。これらは、その誘導体または混合物の形で使用される。
これらの導電性を発現するπ電子共役系分子構造としては、電気伝導性の安定性や、その材料としての取扱いの容易さから、ポリアニリンからなる単純導電性高分子が好適に使用される。
(ポリアニリン)
本発明で使用される主に導電材料としては、ポリアニリンが使用される。ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。
本発明のポリアニリンはアニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造できる。ポリアニリンはその酸化の状態によってロイコエメラルジン(またはロイコエマラルジン)(leucoemeraldine)、エメラルジン(またはエマラルジン)(emeraldine)及びパーニグルアニリン(pernigraniline)の構造をとることが知られている。この内、溶媒可溶本発明においてこの中でエメラルジン構造を持つポリアニリンがドーピングの時に一番高い電気伝導度を持ち、空気の中で安定なので一番有用である。
ポリアニリンの合成は、特開平3−28229号公報に詳細に記載されているように、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、上記プロトン酸にてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得ることができる。
ポリアニリンの添加量は発現させる導電度によって適宜調整される。塗工加工用ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸樹脂分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5〜40質量部、が好ましく、さらに、より好ましくは10〜30質量部である。ポリアニリンの添加量が5質量部未満であると所定の電気導電性を発現することができず、40質量部を超えると、成型されるポリイミド製無端ベルトのしなやかさが失われてしまい、ベルトとしての機能を有しなくなってしまうためである。
(有機極性溶媒)
本発明に係るポリアミック酸組成物製造に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒:テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
本発明において、導電性高分子組成物は、導電性高分子を有機極性溶媒中に溶解/または分散して製造される。かかる導電性高分子組成物中の、導電性高分子の配合量は、使用される有機極性溶媒100質量部に対して、導電性高分子0.1〜30質量部の範囲で配合される。好ましくは、1〜20質量部、さらに好ましくは、5〜15質量部の範囲で配合される。導電性高分子の配合量は、0.1質量部未満であると得られるポリイミド成形品中の導電性高分子配合量が少なくなってしまい期待される十分な導電性を発現できなくなる。また、配合量が30質量部を超えると、配合した導電性高分子が均一に溶解または分散することができず、得られる成形品の外観、電気的特性を低下させる。
(導電性高分子の溶解方法)
ポリアニリンを後述の有機極性溶媒に所定量添加して、機械力を加えて攪拌して溶解させる。その際、溶媒を加熱することで、導電性高分子の溶解度を上げて、導電性高分子を溶解させてもよい。かかる温度は、使用する溶媒の沸点以下で行う。攪拌方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、が例示されるが、これらに限定されるものではない。
(導電性高分子の分散方法)
本発明にかかる導電性高分子の分散には、導電性高分子からなる導電性高分子粒子を所定の分散媒中に添加して機械力を印加することで導電性高分子粒子を解砕して行われる。ポリアニリンの分散方法としては公知の方法が適用でき、ポールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
(導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒径)
本発明にかかる導電性高分子組成物中に、含まれる導電性高分子は、有機極性溶媒中に溶解/または分散された状態で存在する。有機極性溶媒中に溶解とは、導電性高分子鎖間に有機極性溶媒分子が浸透して広がり、導電性高分子と有機極性溶媒分子とが分子レベルで溶媒和した状態をいう。また、有機極性溶媒中に分散とは、導電性高分子鎖間に有機極性溶媒分子が浸透せずに、分子間力によって導電性高分子からなる凝集構造を保持しながら、一定の粒径で有機極性溶媒中に存在する状態をいう。
導電性高分子が、完全に有機極性溶媒中に溶解している場合には、分散粒径は観察されないが、分散状態となることで分散粒径が観察される。本発明にかかる導電性高分子組成物において、導電性高分子は一部溶解、他は分散状態で存在するため、分散粒径が観察される。
導電性高分子の粒径は、分散物に光を入光させて、分散粒子による入射光の散乱状態を測定することで算出される。光散乱現象の測定は、分散粒子のブラウン運動を散乱光にてモニターすること観察する動的光散乱方式、Mie散乱による現象を測定するレーザー回折/散乱式で測定されえるが、本発明においては、レーザー回折/散乱式にて導電性高分子粒子の粒径を規定する。
本発明において、導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μm以下が好適に使用される。以下導電性高分子組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、得られるポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまう。
(非イオン系高分子)
導電性高分子の分散時には、導電性高分子粒子の分散安定性をさらに高めるために、非イオン系高分子を添加してもよい。
本発明に用いられる非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、導電性高分子の分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが好ましい。
導電性高分子組成物中の非イオン性高分子は、かかる導電性高分子100質量部に対して、0.2〜20質量部配合される。配合量が、0.2質量部未満であると、導電性高分子の分散安定性を保つことができず、得られるポリイミド無端ベルトの電気特性が低下しやすくなる。また、配合量が、20質量部を超えると、ポリアミック酸溶液中で非イオン性高分子同士の凝集が起こり、得られるポリイミド無端ベルトの外観品質の低下や、力学性能の劣化を招くからである。
(ドーパント)
本発明において、導電性高分子をドーピングして、導電性とするためのドーパントとしては、プロトン酸を好ましく用いることができる。このようなプロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フェニルフォスホン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸などの無機酸のほか、有機酸などを挙げることができる。
ドーパントとして好ましいプロトン酸は、ポリイミド成型時の熱処理によって、揮発・分解しない化合物が好ましい。
かかるプロトン酸としては、例えば、スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、が好適に用いられる。
このようなスルホン酸化合物としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。
有機カルボン酸化合物の具体例として、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、等を挙げることができる。
更に、本発明において、有機酸はポリマー酸であってもよい。このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、等を挙げることができる。
この内、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェニルフォスホン酸、が好適に用いられる。
これらは、導電性高分子の構成単位ユニットに対して、0.1〜5当量、より好ましくは、1〜3当量、添加される。
ポリアミック酸組成物製造工程において、ドーパントの添加時期は、特に制限されない。導電性高分子を有機極性溶媒中に溶解/または分散する前または後に添加しても、ポリアミック酸の重合後の何れに添加してもよい。所定量のドーパントを一括して添加しても、また2回以上数回に分けて添加してもよい。
(ポリアミック酸)
本発明に係るポリアミック酸組成物は、上記工程にて製造された導電性高分子組成物中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(ジアミン化合物)
本発明に係るポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ)
ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
(ポリイミド材料類縁材料)
本発明にかかるポリイミド成形品に使用されるポリイミド樹脂としては、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等、本発明にかかる用途に必要な機能を具備する限りにおいて、ポリイミド類縁材料を使用できる。かかるポリイミド類縁材料としては、イミド骨格を高分子主鎖構造中に含む高分子材料が使用できる。具体的には、樹脂原料にテトラカルボン酸に変えて、トリメリット酸を共重合させて高分子主鎖構造中に、アミド基とイミド基をあわせもたせたポリアミドイミド樹脂や、ポリアミック酸に対する反応条件を調整することでイミド化反応を部分的に行うことで、アミック酸残基を残したポリイミド−ポリアミック酸共重合体が例示される。ポリアミドイミド樹脂を使用する場合、先のテトラカルボン酸二無水物に変えて、無水トリメリット酸などのトリメロット酸誘導体を原料として使用する。一方、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体の場合は、先のテトラカルボン酸二無水物を使用する。
(ポリアミック酸の固形分濃度)
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1〜100Pasが好ましく、その粘度となるような固形分濃度としては、有機極性溶媒100部に対して10〜40質量%が好ましい。固形分濃度が10質量%部未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、40質量%より高いと反応時に原料モノマーの不溶部が生じてしまい反応がほとんど進行し得ない。その結果、最終的に得られる成型体の強度が低下する。
(導電性高分子/ポリアミック酸の配合比率)
本発明に係るポリアミック酸組成物中の、ポリアミック酸成分に対する導電性高分子の配合比率は特に規定されるものではないが、本発明にかかるポリイミド無端ベルトを例とするポリイミド成形品に要求される抵抗値によって適宜調整される。本発明にかかるポリイミド無端ベルトを本発明にかかる電子写真装置に搭載する中間転写ベルトまたは、搬送ベルトとして使用する場合、ポリイミド無端ベルトの表面抵抗率の常用対数値が、8〜13の範囲で使用されるため、当該抵抗特性が安定に発現されるように、導電性高分子の種類、導電性高分子の配合量、ドーパント種類、ドーパント配合量などによって調整される。ポリアミック酸樹脂配合量を100質量部としたとき、導電性高分子配合量は、1〜40質量部の範囲で調整される。導電性高分子の配合量が、1質量部未満、または40質量部を越えてしまうと、所定の抵抗値に調整することが困難となってしまうためである。
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題が生じる。
(ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒径)
本発明にかかるポリアミック酸組成物中に、含まれる導電性高分子は、有機極性溶媒中に溶解/または分散された状態で存在する。溶解・分散とは、導電性高分子組成物の場合と同様である。
本発明のポリアミック酸組成物において、分散している導電性高分子粒子の粒径は、先の導電性高分子組成物中における導電性高分子粒子の粒径と同様にして測定される。
本発明において、ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μm以下が好適に使用される。ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、得られるポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまう。
(ポリイミド成形品並びにその製造方法)
本発明に係るポリイミド成形品は、ポリイミド樹脂中に、導電性を有する導電性高分子が分散してからなり、本発明に係るポリアミック酸組成物を金属などの一定形状からなる金型表面に塗布した後、乾燥製膜して所定の形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、からなる製造方法によって得られることを特徴とする。
(ポリイミド成形品中の導電性高分子ドメインの粒径)
本発明にかかるポリイミド成形品中に、含まれる導電性高分子は、ポリイミド樹脂マトリックス中に一部含まれるが、そのほとんどは、ポリイミドマトリックス中に一定の形状を保持したドメインとして分散している。溶解・分散とは、導電性高分子組成物の場合と同様である。
本発明のイミド成形品中に、分散している導電性高分子ドメインの粒径は、後述の方法にて測定される。
本発明において、ポリイミド成形品に分散してからなる導電性高分子の粒子径は、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm、さらに好ましくは1μm以下が好適に使用される。ポリアミック酸組成物中の導電性高分子粒子の粒子径が、10μmを超えると、ポリイミド成形品中で導電性高分子が大きなドメイン構造を形成してしまい、電気特性、力学特性の低下を引き起こしてしまうためである。
(ポリイミド成形品中の導電性高分子ドメイン粒子径の測定)
本発明にかかるそれぞれのポリイミド成形品から短冊片を切り出し、表面に金属蒸着を行った。エポキシ樹脂で金属蒸着処理した短冊片を包埋した。エポキシ樹脂を加熱・硬化した後、短冊片をダイヤモンドナイフを取り付けたミクロト―ム(Reichert社製ウルトラカットN)を用いて、0.1μm程度の厚さでスライスした。染色剤として、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸、ヨウ素などを用いて、電子線染色を行い、試料を作製した。
試料を透過型電子顕微鏡(FEI社製TecnaiG2)を用いて、加速電圧100kV、倍率12,000倍にてポリイミド成形品中に分散している導電性高分子粒子のドメインの観察を行った。ポリアニリンドメインは、ポリイミドマトリックス樹脂中に球状、楕円状、または不定形状で分布していることが確認された。
観察画像を、画像解析装置ImageProPlusを用いて解析処理を行い、導電性高分子粒子のドメインの平均サイズを算出した。
(ポリイミド無端ベルト)
本発明に係るポリイミド無端ベルトは、ポリイミド樹脂中に、導電性を有する導電性高分子が分散してからなる、円筒型成形品であり、本発明に係るポリアミック酸組成物を円筒型金型表面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、からなる製造方法によって得られることを特徴とする。
(ポリイミド無端ベルトの製造方法)
次に、本発明のポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について示す。
本発明に係るポリアミック酸組成物を金型の表面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。
また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
金型の表面とは、円筒型の金型の内面/外面のいずれも使用しえる。金型内面に塗工を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面が、金型面に接触するため、金型からの汚染が生じ、ポリイミド無端ベルトの特性が劣化することがある。一方、金型外面に塗工を行うと、成形されるポリイミド無端ベルトの機能面であるベルト外面に対する金型からの汚染は防止できるものの乾燥・焼成工程において雰囲気相に接触した状態で成形される。そのため、導電性高分子の酸化劣化、ドーパントの揮発などが生じることがある。そのため、円筒型金型の塗布面に対応した適当な工程条件を個別に講じる必要がある。
次に、ポリアミック酸組成物を塗布したこの円筒金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20質量%から60質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。
乾燥終了後、この金型を所定温度で加熱し、イミド転化反応を十分に進行させることがよい。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなることがある。
ポリアミック酸の脱水閉環反応のため、ポリアミック酸からポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の重量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対する導電性高分子含有率が、ポリアミック酸樹脂成分に対する導電性高分子含有率に比べて増加する。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
(乾燥工程)
次に、塗工液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。
乾燥温度は、50〜200℃の温度範囲で乾燥を行う。
(焼成工程)
更に、この金型を150℃〜450℃で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
以上、本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、中間転写体方式の画像形成装置であれば、特に限定されるものではない。例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラーの画像形成装置や、感光体ドラム等の像担持体上に担持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等のいずれでもよい。
本発明の画像形成装置の第1の形態は、既述の本発明の半導電性ベルトを中間転写ベルトとして用い、感光体ドラム等の像担持体上に担持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置である。また、本発明の画像形成装置の第2の態様は、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置である。
一例として、本発明のポリイミド無端ベルト(すなわち、上述した第1、第2および第3の実施の形態で説明したポリイミド無端ベルト)を中間転写ベルトとして用いた、順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置の概略図を図2に示す。本発明の画像形成装置は、既述の本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写体および/または定着体として具備する。
図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略模試図である。図2に示す画像形成装置は、4つのトナーカートリッジ1、1対の定着ロール2、バックアップロール3、テンションロール4、2次転写ロール(2次転写手段)5、用紙経路6、用紙トレイ7、レーザー発生装置8、4つの感光体(像担持体)9、4つの1次転写ロール(1次転写手段)10、駆動ロール11、転写クリーナ12、4つの帯電ロール13、感光体クリーナ14、現像器15、中間転写ベルト16等を主用な構成部材として含んでなる。なお、図2に示す画像形成装置において、本発明の中間転写ベルトはトナー像の重ね合わせ手段およびトナー像の転写手段として機能する中間転写ベルト16として用いられる。
次に、図2に示す画像形成装置の構成について順次説明する。まず、感光体9の周囲には、反時計回りに帯電ロール13、現像器15、中間転写ベルト16を介して配置された1次転写ロール10、感光体クリーナ14が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器15に現像剤を補充するトナーカートリッジ1がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体9に対して、帯電ロール13と現像器15との間の感光体9表面に画像情報に応じたレーザー光を照射することができるレーザー発生装置8が設けられている。
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置内においてほぼ水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体9と1次転写ロール10とのニップ部を挿通するように中間転写ベルト16が設けられている。中間転写ベルト16は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール3、テンションロール4、および駆動ロール11により張架されている。なお、4つの1次転写ロールはバックアップロール3とテンションロール4との間に位置する。また、中間転写ベルト16を介して駆動ロール11の反対側には中間転写ベルト16の外周面をクリーニングする転写クリーナ12が駆動ロール11に対して圧接するように設けられている。
また、中間転写ベルト16を介してバックアップロール73の反対側には用紙トレイ7から用紙経路6を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト16の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール5が、バックアップロール3に対して圧接するように設けられている。バックアップロール3と駆動ロール11との間の中間転写ベルト16の外周面には、この外周面を除電するための除電ロール18が設けられている。
また、画像形成装置の底部には記録用紙をストックする用紙トレイ7が設けられ、用紙トレイ7から用紙経路6を経由して2次転写部を構成するバックアップロール3と2次転写ロール5との圧接部を通過するように供給することができる。この圧接部を通過した記録用紙はさらに1対の定着ロール2の圧接部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送可能であり、最終的に画像形成装置外へと排出することができる。
次に、図2の画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール13により反時計方向に回転する感光体9表面を一様に帯電した後に、レーザー発生装置8(露光装置)により帯電された感光体9表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器15から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール10と感光体9との圧接部に運ばれたトナー像を矢印A方向に回転する中間転写ベルト16の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体9は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナ14によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写体16の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール5により、用紙トレイ7から用紙経路6を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着部を構成する1対の定着ロール72の圧接部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
2次転写部を通過した中間転写ベルトは、矢印A方向に更に進み除電ロール18により外周面が除電された後、さらに、転写クリーナ12により外周面がクリーニングされた後に次のトナー像の転写に備える。
感光体9(像担持体)としては、従来公知のものを用いることができ、その感光層としては、有機系、アモルファスシリコン等公知のものを用いることができる。前期像担持体が円筒状の場合は、アルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型後、表面加工する等の公知の製法により得られる。またベルト状の前記像担持体を用いることも可能である。
帯電ロール13(帯電手段)としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などのそれ自体公知の帯電器が挙げられる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。前記帯電手段は、前記電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流をさらに重畳させて印加させてもかまわない。
レーザー発生装置8(露光手段)としては、特に制限はなく、例えば、前記電子写真感光体表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
現像器15(現像手段)としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。
1次転写ロール10(第一転写手段)としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、前記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
2次転写ロール5(第二転写手段)としては、接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、前記第一転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。転写ロール等の接触型転写帯電器により強く押圧するようにすると、画像の転写状態を良好な状態に維持させることができる。また、中間転写ベルト16を案内するローラの位置で転写ローラ等の接触型転写帯電器を押圧すると、中間転写ベルト16から被転写体(用紙)に対してトナー像を移転させる作用を良好な状態で行うことが可能になる。
光除電手段が好ましく設置でき、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
定着ロール2(定着手段)としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
クリーニング手段としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。
本発明の中間転写ベルトは、高速印刷可能な装置に関するものであり、装置内でトナー像を像担持体、中間転写ベルト、記録媒体へと転写し、印刷を行うため、各々の搬送速度が印刷の速度を決めている。本発明の中間転写ベルトは、これらの各部材の搬送速度が200mm/sec以上であっても、濃度ムラ、斑点状ディフェクトを低減でき、更に搬送速度が200mm/sec未満であっても良好に画像形成できる。
また、感光体9から中間転写ベルト16への一次転写が最終画像の品質を決定する上で重要な要素となっている。一次転写の転写効率や転写時点の像乱れがないことが要求され、転写電流値が高いことが望ましい。上記、中間転写ベルトの搬送速度が200mm/sec以上の場合、一次転写電流値は25μA以上であることが好ましく、30μA以上であることがより好ましい。
上述の構成のタンデム式の画像形成装置においても、高品質の転写画質を安定して得ることができる。
以上、本発明の半導電性ベルトを中間転写ベルトとして用いた態様の画像形成装置について説明したが、本発明の半導電性ベルトを用紙搬送ベルトとして用いた画像形成装置においても同様の効果が得られる。すなわち、ポリイミド無端ベルトを半導電性にした場合は、中間転写ベルトや定着ベルトとして用いるのが好適であるが、さらに導電剤(容易に導電性を高めることができるため金属酸化物が好適)を添加して導電性ベルトにした場合は用紙を搬送する搬送ベルトとしても使用できる。
本発明のさらなる理解のため、本発明の好ましい態様を以下に付記する。
(付記1−1)
ポリアミック酸と、導電性を有するカーボンブラックと、分散剤と、を含むポリアミック酸組成物。
(付記1−2)
上記ポリアミック酸組成物において、さらに水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、からなる群の少なくとも1種類以上と、を含むポリアミック酸組成物。
(付記1−3)
上記ポリアミック酸組成物において、上記分散剤は、非イオン系高分子であるポリアミック酸組成物。
(付記1−4)
下記一般式(1)で表されるポリアミック酸と、分散剤が溶解した有機極性溶媒中に、導電性をもつカーボンブラック粒子が分散されてなる分散液に、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、の少なくとも1種類以上と、溶解して得られることを特徴とするポリアミック酸組成物。
Figure 2007304357
(付記1−5)
前記分散剤が、非イオン系高分子からなることを特徴とする(付記1−4)に記載のポリアミック酸組成物。
(付記1−6)
前記芳香族カルボン酸化合物が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表されることを特徴とする(付記1−5)または(付記1−6)に記載のポリアミック酸組成物。
Figure 2007304357
Figure 2007304357
Figure 2007304357
(付記1−7)
前記フェノール化合物が、下記一般式(6)〜(8)のいずれかで表されることを特徴とする(付記1−5)または(付記1−6)に記載のポリアミック酸組成物。
Figure 2007304357
Figure 2007304357
Figure 2007304357
(付記1−8)
前記芳香族カルボン酸化合物または前記フェノール化合物の添加量が前記ポリアミック酸100質量部に対し、0.01〜20質量部であることを特徴とする(付記1−4)から(付記1−7)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物。
(付記1−9)
前記分散剤の添加量が、前記ポリアミック酸100質量部に対して0.2〜3質量部であることを特徴とする(付記1−4)から(付記1−8)のいずれか1つ記載のポリアミック酸組成物。
(付記1−10)
前記、カーボンブラック粒子の配合量が、前記ポリアミック酸100質量部に対して、20〜45質量部であることを特徴とする(付記1−4)から(付記1−8)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物。
(付記1−11)
上記一般式(1)で表されるポリアミック酸を有機極性溶媒中に溶解したポリアミック酸溶液に、分散剤を溶解させた後、次いで、導電性をもつ粒子を分散させて得られた分散液に、さらに水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、からなる群の少なくとも1種類以上とを、溶解して得られることを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記1−12)
分散剤を溶解させた有機極性溶媒に、導電性をもつ粒子を分散させた後、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを、溶解させて上記一般式(1)で表されるポリアミック酸を重合した分散液に、さらに水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、からなる群の少なくとも1種類以上と、溶解して得られることを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記1−13)
有機極性溶媒に、分散剤と、導電剤と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、からなる群の少なくとも1種類以上とを、この順で添加してゆき、適宜ポリアミック酸をこれらの間に添加することを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記1−14)
(付記1−4)から(付記1−10)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を成形型に塗布した後、乾燥処理及び焼成処理を施して作製されることを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
(付記1−15)
(付記1−4)から(付記1−10)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を成形型に塗布した後、乾燥処理及び焼成処理を施して作製されることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
(付記1−16)
ポリイミド樹脂分と、導電性をもつカーボンブラック粒子と、非イオン性高分子と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、の少なくとも1種類以上が0.01〜25質量部と、からなる組成比であることを特徴とする(付記1−15)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−17)
ポリイミド樹脂分100質量部に対して、導電性をもつカーボンブラック粒子20〜45質量部と、非イオン性高分子0.2〜3質量部と、水酸基、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有する芳香族カルボン酸化合物、および、アミノ基およびスルホニル基の少なくとも1つ以上を有するフェノール化合物、の少なくとも種類以上が0.01〜25質量部と、からなる組成比であることを特徴とする(付記1−15)または(付記1−16)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−18)
電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下である(付記1−15)から(付記1−17)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−19)
JIS−C5016による耐折性試験での耐折れ回数が2000回以上である(付記1−15)から(付記1−17)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−20)
(付記1−15)から(付記1−17)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルトを具備することを特徴とする画像形成装置。
(付記1−21)
ポリイミド樹脂中に、導電性を有するカーボンブラックと、非イオン系高分子を含む、円筒型成形品であることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
(付記1−22)
電圧印加10秒後の表面抵抗率の常用対数値と、30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(LogΩ/□)以下であることを特徴とする(付記1−21)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−23)
ポリイミド樹脂中の、導電性を有するカーボンブラックと、非イオン系高分子との組成の質量比が、(ポリイミド樹脂)/(カーボンブラック)/(非イオン系高分子)=100質量部/20〜45質量部/0.2〜2質量部の関係を満たす組成であることを特徴とする(付記1−21)または(付記1−22)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−24)
JIS−C5016による耐折性試験での耐折れ回数が2000回以上であることを特徴とする(付記1−21)から(付記1−23)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−25)
(i)有機極性溶媒中に、非イオン系高分子を溶解させた後、カーボンブラックを分散させてカーボンブラック分散液を調製する工程と、
(ii)当該カーボンブラック分散液に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、ポリアミック酸を重合して、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する工程と、
(iii)当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型外面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる製造方法によって得られたことを特徴とする(付記1−21)から(付記1−24)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−26)
(i)有機極性溶媒中100質量部に対して、非イオン系高分子0.02〜0.8質量部を溶解させた後、カーボンブラック2〜16質量部を分散させてカーボンブラック分散液を調製する工程と、
(ii)当該カーボンブラック分散液に、ポリアミック酸として10〜40質量部相当のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、重合してカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する工程と、
(iii)当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型外面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる製造方法によって得られたことを特徴とする付記1−21)から(付記1−25)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルト。
(付記1−27)
(i)有機極性溶媒中に、非イオン系高分子を溶解させた後、カーボンブラックを分散させてカーボンブラック分散液を調製する工程と、
(ii)当該カーボンブラック分散液に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、ポリアミック酸を重合してカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する工程と、
(iii)当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型外面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、
からなることを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
(付記1−28)
(i)有機極性溶媒中100質量部に対して、非イオン系高分子0.02〜0.8質量部を溶解させた後、カーボンブラック2〜16質量部を分散させてカーボンブラック分散液を調製する工程と、
(ii)当該カーボンブラック分散液に、ポリアミック酸として10〜40質量部相当のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、重合してカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造する工程と、
(iii)当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型外面に塗布した後、乾燥製膜してベルト形状に成形し、更に加熱してイミド転化する工程と、
からなることを特徴とする(付記1−27)に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
(付記1−29)
像担持体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する第一転写手段と、該中間転写ベルトに転写されたトナー像を被転写体に二次転写する第二転写手段と、を少なくとも備える画像形成装置であって、前記中間転写ベルトが、(付記1−21)から(付記1−28)のいずれか1つに記載のポリイミド無端ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
(付記2−1)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程と、
(2)溶媒(A)を除去する工程と、を含むことを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−2)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程と、
(2)ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程と、
(3)導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程と、
(4)溶媒(A)を除去する工程と、を含むことを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−3)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程と、
(2)ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程と、
(3)導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程と、
(4)溶媒(A)を除去する工程と、を含む工程において、
前記(1)及び(2)を行った後に、前記(3)を行い、しかる後に前記(4)を行う工程からなることを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−4)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程と、
(2)ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程と、
(3)導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程と、
(4)溶媒(A)を除去する工程と、を含む工程において、
前記(1)及び(2)を行った後に、前記(4)を行い、しかる後に前記(3)を行う工程からなることを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−5)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程と、
(2)ポリアミック酸樹脂を溶媒(A)と異なる溶媒(B)に溶解してポリアミック酸溶液を調製する工程と、
(3)導電性高分子分散液と、ポリアミック酸溶液とを混合する工程と、
(4)溶媒(A)を除去する工程と、を含む工程において、
前記(1)及び(2)を行った後に、前記(3)、(4)の工程を交互に行う工程からなることを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−6)
導電性高分子樹脂粉末と、ポリアミック酸樹脂とを含むポリアミック酸組成物の製造方法において、
(1)導電性高分子樹脂粉末を、導電性高分子を溶解しない溶媒(A)中で壊砕・分散処理して導電性高分子分散液を調製する工程の後、
(2)溶媒(A)を除去する工程と、を含むこと工程において、
溶媒(A)の除去を減圧しながら行うことを特徴とするポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−7)
前記溶媒(A)に含まれる化合物の双極子モーメントが3.2D以下の化合物から構成されることを特徴とする(付記2−1)から(付記2−6)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−8)
前記溶媒(A)に含まれる化合物が、
(i)双極子モーメントが1.0以下の炭化水素化合物
(ii)双極子モーメントが2.0以下のハロゲン化炭化水素化合物
(iii)双極子モーメントが2.0以下のアルコール化合物
(iv)双極子モーメントが2.0以下のエーテル化合物
(v)双極子モーメントが3.2以下のケトン化合物
から選ばれる化合物からなることを特徴とする(付記2−1)から(付記2−7)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−9)
前記溶媒(B)に含まれる化合物が、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドから選ばれる化合物を50質量部以上含有することを特徴とする(付記2−1)から(付記2−8)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−10)
前記、導電性高分子が、ポリアニリンであることを特徴とする(付記2−1)から(付記2−9)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−11)
前記導電性高分子組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記2−1)から(付記2−10)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記2−12)
前記(付記2−1)から(付記2−11)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物の製造方法によって製造されることを特徴としたポリアミック酸組成物。
(付記2−13)
前記、ポリアミック酸組成物が酸性化合物からなるドーパントを含むことを特徴とする(付記2−12)に記載のポリアミック酸組成物。
(付記2−14)
前記、ドーパントがドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェニルホスホン酸であることを特徴とする(付記2−12)または(付記2−13)に記載のポリアミック酸組成物。
(付記2−15)
前記ポリアミック酸組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記2−12)から(付記2−14)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物。
(付記2−16)
前記(付記2−12)から(付記2−15)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を、基材上に塗布する工程と、当該基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物に熱処理を行う工程とを含むことを特徴とするポリイミド成形品の製造方法。
(付記2−17)
前記(付記2−12)から(付記2−15)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を用いて、(付記2−16)記載の工程によって製造することを特徴とするポリイミド成形品。
(付記2−18)
前記ポリイミド成形品中に分散している導電性高分子のドメインの粒径が、10μm以下であることを特徴とする(付記1−17)に記載のポリイミド成形品。
(付記2−19)
前記(付記2−12)から(付記2−15)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を、円筒状基材上に塗布する工程と、当該円筒状基材上に塗布された前記用ポリアミック酸組成物に熱処理を行う工程とを含むことを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
(付記2−20)
前記(付記2−12)から(付記2−15)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を用いて、(付記2−19)記載の工程によって製造することを特徴とするポリイミド無端ベルト。
(付記2−21)
前記ポリイミド無端ベルト中に分散している導電性高分子のドメインの粒径が、10μm以下であることを特徴とする(付記2−20)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記2−22)
前記(付記2−20)または(付記2−21)にかかるポリイミド無端ベルトを搭載したことを特徴とする画像形成装置。
(付記3−1)
(i)有機極性溶媒中に、導電性高分子を溶解または分散させて導電性高分子組成物を調製する工程と、
(ii)当該導電性高分子組成物に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、ポリアミック酸を重合する工程を経て製造される、導電性高分子が溶解または分散したポリアミック酸の有機極性溶液からなることを特徴とするポリアミック酸組成物。
(付記3−2)
当該導電性高分子が、ポリアニリンからなることを特徴とする(付記3−1)に記載のポリアミック酸組成物。
(付記3−3)
当該ポリアミック酸組成物中に、酸性物質からなるドーパントを含有することを特徴とする(付記3−1)または(付記3−2)に記載のポリアミック酸組成物。
(付記3−4)
当該導電性高分子組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記3−1)から(付記3−3)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物。
(付記3−5)
当該ポリアミック酸組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記3−1)から(付記3−4)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物。
(付記3−6)
(i)有機極性溶媒中に、導電性高分子を溶解または分散させて導電性高分子組成物を調製する工程と、
(ii)当該導電性高分子組成物に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶解し、ポリアミック酸を重合する工程を経ること特徴としたポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記3−7)
当該導電性高分子組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記3−6)に記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記3−8)
当該ポリアミック酸組成物中に分散している導電性高分子粒子の、体積平均粒経が10μm以下であることを特徴とする(付記3−6)または(付記3−7)に記載のポリアミック酸組成物の製造方法。
(付記3−9)
(i)前記(付記3−1)から(付記3−3)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を金型表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
(ii)当該塗布膜を乾燥製膜する工程と、
(iii)更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる工程により製造されることを特徴とするポリイミド成形品。
(付記3−10)
当該ポリイミド成形品中に分散している導電性高分子のドメインの粒径が、10μm以下であることを特徴とする(付記3−9)に記載のポリイミド成形品。
(付記3−11)
(i)前記(付記3−1)から(付記3−5)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を金型表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
(ii)当該塗布膜を乾燥製膜する工程と、
(iii)更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる工程からなることを特徴とするポリイミド成形品の製造方法。
(付記3−12)
(i)前記(付記3−1)から(付記3−5)のいずれか1つに記載のポリアミック酸組成物を円筒型金型表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
(ii)当該塗布膜を乾燥製膜する工程と、
(iii)更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる工程により製造されることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
(付記2−13)
当該ポリイミド無端ベルト中に分散している導電性高分子のドメインの粒径が、10μm以下であることを特徴とする(付記2−12)に記載のポリイミド無端ベルト。
(付記2−14)
(i)前記(付記3−1)から(付記3−5)のいずれか1つに記載のポリアミック酸溶液を円筒型金型表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
(ii)当該塗布膜を乾燥製膜する工程と、
(iii)更に加熱してイミド転化する工程と、
からなる工程からなることを特徴とするポリイミド無端ベルトの製造方法。
(付記3−15)
像担持体に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する第一転写手段と、該中間転写ベルトに転写されたトナー像を被転写体に二次転写する第二転写手段と、を少なくとも備える画像形成装置であって、前記中間転写ベルトが、(付記3−12)または(付記3−13)に記載のポリイミド無端ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[導電剤としてカーボンブラック(CB)を用いた実施例および比較例]
<実施例1>CB分散ポリアミック酸溶液の製造
(合成例1 ポリアミック酸溶液の調製)
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン1977.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1.0モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。
(調製例1 ポリアミック酸組成物(A−1)の調製)
合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製Luvitec(R)K17)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラックの分散を行った。次いで、芳香族カルボン酸化合物として、4−ヒドロキシ安息香酸2.0gを加えて溶解させ、ポリアミック酸組成物(A−1)を得た。
<実施例2〜12>
固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA−1)を用いて、実施例1中の調製例1に倣って、ポリアミック酸溶液を製造した(表1,表2)。
<実施例13>
実施例11で製造したポリアミック酸溶液A−11 500gに、ポリアミック酸溶液PAA−1 300gを混合して、ポリアミック酸組成物A−13を得た(表2)。
<実施例14>
(合成例2 ポリアミック酸溶液の調製)
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン1609.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、1,4−ジアミノベンゼン108.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1.0モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量部%のポリアミック酸溶液(PAA−2)を得た。
(調製例2 ポリアミック酸組成物(A−14)の調製):
合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製Luvitec(R)K17)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラックの分散を行った。次いで、芳香族カルボン酸化合物として、4−ヒドロキシ安息香酸2.0gを加えて溶解させ、ポリアミック酸組成物(A−14)を得た。
<実施例15>
(合成例3 ポリアミック酸溶液の製造)
N−メチル−2−ピロリドン400.0g中に、非イオン性高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製Luvitec(R)K17)0.5gを溶解させた。次いで、導電材料として乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラックの分散を行った。
(調製例3 ポリアミック酸組成物(B−1)の調製)
得られたカーボンブラック分散液を、攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中に移し、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40.5g(0.2モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物59.5g(0.2モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、芳香族カルボン酸化合物として、4−ヒドロキシ安息香酸2.0gを加えて溶解させ、ポリアミック酸溶液B−1を得た(表3)。
<実施例16〜26>ポリアミック酸溶液の製造
実施例15に倣って、ポリアミック酸溶液を製造した(表3,表4)。
<実施例27>
実施例25で製造したポリアミック酸溶液B−25 500gに、ポリアミック酸溶液PAA−1 300gを混合して、ポリアミック酸組成物B−13を得た(表2)。
<実施例28>ポリアミック酸溶液の製造
ポリアミック酸原料を、4,4’−ジアミノベンゼン26.9gと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物73.1gとした以外は、実施例15に倣って、ポリアミック酸溶液B−14を製造した(表2)。
[ポリイミド無端ベルト]
<実施例29〜90>
実施例1で得られたポリアミック酸組成物A−1を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型外表面に均一に塗布した。
なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、金型をクリーンオーブンに入れ、300℃、約30分間焼成を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
得られたポリイミド無端ベルトの、ベルト外観、厚み、表面抵抗率、耐折性測定、のベルト特性を以下のように行った。また、得られたポリイミド無端ベルトを中間転写体として電子写真装置に組み込み、そのコピー画質の評価を行った。評価結果を表5から表10に示す。
<評価項目および評価基準>
以下の評価項目および評価基準は、上述および後述する実施例および比較例のすべてに適用した。
[ベルト外観]
得られたベルトの外観を、目視観察し、以下のように評価を行った。
「○」:まったくボイドの発生が見られず、膜の均一性に優れる。
「○〜△」:ボイドの発生がやや見られるが、実用には問題ない。
「△」:ボイドの発生が見られ、実用にはやや支障がある。
「×」:ボイドが多発し、実用できない。
[ベルト厚み測定]
得られたポリイミド無端ベルトから10cm四方の試験片をランダムに10箇所切りだし、フィルム厚み計(TECLOCK CORPORATION製:定圧厚さ測定器PG−02)を用いて、各試料について中央と四隅の5点の厚みを測定し、それらの平均をベルトの厚みとし、平均厚みのバラツキを評価した。
[表面抵抗率]
得られたそれぞれのポリイミドベルトを図1に示す円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加して、印加後30ミリ秒及び10秒の抵抗値を測定した。測定値から印加後30ミリ秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(30msec))及び10秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(10sec))を算出した。また、Δ=|ρs(30msec)−ρs(10sec)|を算出した。結果を表5から表10に示す。
[耐折性の測定]
得られたそれぞれのポリイミドベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
[コピー画質]
図2に示す構成の富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)を使用して、高温高湿(28℃85%RH)及び低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、以下の規準で濃度ムラ及び斑点ディフェクトを目視で評価した。その結果を表5から表10に示す。
(濃度ムラ)
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認できた。
(斑点ディフェクト)
◎:斑点ディフェクトが確認されない。
○:斑点ディフェクトが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:斑点ディフェクトがはっきりと確認できた。
<実施例30〜90>ポリイミド無端ベルトの製造
カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液A−1〜A−14ならびにB−1〜B−14を用いて、焼成温度を300℃、250℃、200℃、塗工面を金型外面、金型内面と様々に製造条件を変えて、実施例29と同様な工程をもってポリイミド無端ベルトC−2〜C−90を製造して、その特性を評価した。(表5から表10)。
<比較例1〜10>
実施例1中の合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を用いて、実施例1中の調製例1に倣って、各種カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造した(表11,表12)。
<比較例11〜33>
実施例29に倣って、各種カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を製造した(表13,表14)。
ポリイミド無端ベルトの製造:
カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液X−1〜X−10を用いて、焼成温度を300℃、250℃、200℃、塗工面を金型外面、金型内面と様々に製造条件を変えて、実施例29と同様な工程をもってポリイミド無端ベルトY−2〜Y−23を製造して、その特性を評価した。(表13,表14)。
Figure 2007304357
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なお、表1〜表14において「→」は『同左』の意味である。以下同様である。
本発明のカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、低い焼成温度でイミド化反応が行うこと可能であるために、低い焼成温度において高温焼成品と同等な品質のポリイミド無端ベルトの製造がし得ることが確認できた。
また、上記の結果より、良好な膜品質、力学的特性、電気的特性を兼備し、電子写真装置に搭載したときに良好なるコピー画質を得ることができるポリイミド無端ベルトは、本発明に係るもののみであった。
[導電剤としてカーボンブラックを用い組成比を変えた実施例および比較例]
<実施例91>
(調製例1:カーボンブラック分散液(A−1)の調製)
(組成)
NMP/CB/PVP=2000/200/10:計2210
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2000g中にポリビニル−2−ピロリドン(PVP)10gを添加して溶解させた。次いで、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%)200gを徐々に添加した。ポールミルにて室温下12時間分散処理することにより分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過しカーボン濃度10%のカーボン分散液(A−1)を得た。
<実施例92>
(調製例2:カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(B−1)の調製)
(組成)
NMP/CB/PVP/ポリアミック酸=500/50/2.5/200:計752.5
調製例1で得られたカーボンブラック分散液(A−1)552.5gを、1000ml容量のセパラブルフラスコに移し、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル81.00g(404.6ミリモル)を加え、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物119.00g(404.6ミリモル)を徐々に添加した。反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った後、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温まで冷却をした。溶液粘度30Pa・s(E型粘度計)のカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(B−1)を得た。
<実施例93>ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造
得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(B−1)を、外径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。
なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
なお、実施例91〜107および比較例34〜41、後述する実施例および比較例の評価項目およびその測定方法と評価基準は上述同様である。
<実施例94〜97>
実施例1に従って、カーボンブラック分散液を調製した(表15)。
<実施例98〜102>
実施例2に従って、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を調製した(表16)。
<実施例103〜107>
実施例3に従って、ポリイミド無端ベルトを製造して、その特性を評価した(表17)。
<比較例34〜35>
実施例91に従って、カーボンブラック分散液を調製した(表18)。
<比較例36〜37>
実施例2に従って、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を調製した(表19)。
<比較例38〜41>
実施例3に従って、ポリイミド無端ベルトを製造した。比較例40,41については、実施例で使用したカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液B−1,B−3を用いて、金型内面への塗工によってベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトについて、実施例91に習い、その特性を評価した(表20)。
Figure 2007304357
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表17,195より、ベルトとしての強度も高く、中間転写ベルトとして所定の抵抗値を備え、電子写真装置に搭載した際に、濃度ムラ、斑点ディフェクトとも低減されているのは、本発明に係るポリイミド無端ベルトだけであることがわかる。
[導電剤が導電性高分子を用い、2種の溶媒を用いた分散に関する実施例および比較例]
<実施例108> ポリアミック酸溶液の調整
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中に、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)とN−メチル−2−ピロリドン117.68gを注入した。十分攪拌・溶解した後、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.1モル)をN−メチル−2−ピロリドン80.08gに溶解させた溶液を10℃に保持したフラスコ内に徐々に滴下した。ジアミン溶液滴下後10〜15℃にて攪拌・重合を行った。反応溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿精製を行った。析出した白色ポリマーをろ別・乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させて20質量%ポリアミック酸溶液を得た。
<実施例109>ポリアニリン組成物の合成
10L−セパラブル・フラスコにイオン交換水6000g、35%塩酸400ml及びアニリン400g(4.295モル)を仕込み、攪拌を行ってアニリンを溶解させた。ビーカー容器に、氷水にて冷却しながら、イオン交換水1493gに98%濃硫酸434g(4.295モル)を添加・混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に加えた。
次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)をイオン交換2300gに溶解させた酸化剤水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に滴下した。滴下後、無色透明の溶液は、重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下後、更に1時間、攪拌を続けた。
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、硫酸にてドープされた導電性ポリアニリン430gを黒緑色の粉末として得た。
ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末350gを2Nアンモニア水4リットル中に加え、ホモミキサーにて回転数5000rpm にて5時間攪拌した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。粉末を濾別し、イオン交換水・アセトンにて洗浄して、室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドープされたポリアニリン粉末280gを得た。
<実施例110>
ポリアミック酸組成物(A−1)の製造(工程3)
溶媒(A)としてトルエン(双極子モーメント0.37D)800gを容器に入れ、さらに、分散剤として、ポリビニルピロリドン2.00g(K15:BASF社製)を添加・溶解させた。次いで、実施例2で得られたポリアニリン粉末200gを徐々に添加した。攪拌棒を用いてゆっくりと攪拌を行い、ポリアニリン粉末表面にトルエンを十分になじませた。得られたポリアニリン/トルエン混合液と、0.03mm径ZrOビーズ400gを湿式分散機(ナノ超分散機UAM2型:寿工業(株)製)に充填し、500rpmにて20分間分散処理を行った。処理後、ZrOビーズを除去してポリアニリン/トルエン分散液を得た。
得られたポリアニリン/トルエン分散液の一部を少量サンプリングしてトルエンにて適宜希釈して、ポリアニリン分散粒子の平均粒径を動的光散乱粒径分布測定装置(LB550:(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、50nmであった。また、希釈液の色調も青味を帯びておらず、ポリアニリンが溶解していないことを確認した。
次いで、合成例1で得られたポリアミック酸溶液500gに、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8.0gを添加・溶解した。次いで、先に製造したポリアニリン/トルエン分散液100.0gを攪拌しながら徐々に添加した。さらに、溶媒(B)としてNMP112gを追添加した。混合後、エバポレ―ターを用いて、水流アスピレーターで減圧下、40℃に加熱しながら溶媒の除去を行った。溶媒の揮発が、ほぼなくなった時点で、溶媒除去を終了した。
20μm孔のフィルターにてろ過を行い、ポリアミック酸組成物(A−1)を得た。
得られたポリアミック酸組成物(A−1)を少量アルミ皿上にサンプリングして、その重量を測定した後、アルミ皿をホットプレート上にて、250℃・1時間加熱して溶媒を乾燥させた。乾燥後、アルミ皿と残量物の重量を測定して、ポリアミック酸組成物(A−1)の固形分濃度を算出したところ、およそ20質量%であった。
得られたポリアミック酸組成物(A−1)中のポリアニリン粒子径は1000nmであった。また、調整後の粘度は30Pasであり、その後室温下にて1週間保管後28Pasと安定であった。
<実施例111>
ポリアミック酸組成物(A−2)の調整(工程4)
実施例110と同様にして、ポリアニリン/トルエン分散液を製造した。得られたポリアニリン/トルエン分散液100gをナス型フラスコに秤量した。ナス型フラスコ全体を、液体窒素にて冷却しながら、真空ポンプにて減圧して、溶媒を除去(フリーズドライ)した。
溶媒を除去後、ポリアニリン粉末を粉砕した。得られたポリアニリン微粉末を少量トルエンに添加・分散して平均粒径を測定したところ、2000nmであった。また、希釈液の色調も青味を帯びておらず、ポリアニリンが溶解していないことを確認した。
次いで、合成例1で得られたポリアミック酸溶液500gに、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8.0gを添加・溶解した。次いで、先に製造したポリアニリン微粉末20.0gを攪拌しながら徐々に添加・混合した後、20μm孔のフィルターにてろ過を行い、ポリアミック酸組成物(A−2)を得た。
<実施例112>
ポリアミック酸組成物(A−3)の製造(工程5)
実施例110と同様にして、ポリアニリン/トルエン分散液を製造した。
次いで、合成例1で得られたポリアミック酸溶液500gに、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8.0gと、溶媒(B)としてNMP112gを添加・溶解した。次いで、先に製造したポリアニリン/トルエン分散液50.0gを攪拌しながら徐々に添加した。混合後、エバポレ―ターを用いて、実施例3と同様に溶媒の除去を行った。その後、ポリアニリン/トルエン分散液を50.0g追添加して、さらに溶媒の除去を行った後、20μm孔のフィルターにてろ過を行い、ポリアミック酸組成物(A−3)を得た。
<実施例113〜116>
ポリアミック酸組成物(A−4)〜(A−7)の製造
実施例110,112に倣い、溶媒(A)、ドーパント配合量、ドーパント配合時、分散剤量、を変えてポリアミック酸組成物(A−4)〜(A−7)を得た。
<実施例117>
得られたポリアミック酸組成物(A−1)を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、金型をオーブンに入れ、300℃、約30分焼成を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド製無端ベルト(B−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルトの表面は平滑で均一であった。ポリイミド無端ベルトの厚み測定及び、表面抵抗値、体積抵抗値測定、引張り強度等の機械的特性を以下のように行った。
<実施例118〜128>
実施例117に倣い、ポリアミック酸組成物(A−2)〜(A−7)を用い、焼成温度を変えて、ポリイミド無端ベルト(B−2)〜(B−9)を得た。
<比較例42>
ポリアミック組成物(C−1)の調整
実施例108で得られたポリアミック酸溶液500.0gに、ポリビニルピロリドン0.2gを添加・溶解させた。次いで実施例2で得られたポリアニリン20gを添加して攪拌しながら溶解(一部分散)させた。ド−パントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8gを添加・溶解してポリアニリン溶液/分散液(C−1)を得た。
<比較例43>
ポリイミド無端ベルト(D−1)の製造
比較例42で製造したポリアミック酸組成物を用いて、実施例1117に倣ってポリイミド無端ベルトを製造した。
なお、評価項目として、実施例108〜125および比較例42,43および後述する実施例および比較例に関しては、以下の表面抵抗率の評価を加えている。なお、他の評価項目に関しては上述同様である。
(表面抵抗率)
得られたそれぞれのポリイミドベルトを図1に示す円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧10、100、1000V印加しての表面抵抗率の常用対数値(ρs(10V)、ρs(100V)、ρs(1000V))を算出した。
Figure 2007304357
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表21、22より、ポリアミック酸組成物中に導電性高分子粒子が微小に分散して、得られるポリイミド無端ベルトに微小なドメインを形成し,ベルトとしての強度も高く、中間転写ベルトとして所定の抵抗値を備え、電子写真装置に搭載した際に、濃度ムラ、斑点ディフェクトとも低減されているのは、本発明に係るポリイミド無端ベルトだけであることがわかる。
[導電剤が導電性高分子を用い、導電剤存在下でポリアミック酸を重合する方法に関する実施例および比較例]
<実施例126>
ポリアニリンの合成
10L−セパラブル・フラスコにイオン交換水6000g、35%塩酸400ml及びアニリン400g(4.295モル)を仕込み、攪拌を行ってアニリンを溶解させた。ビーカー容器に、氷水にて冷却しながら、イオン交換水1493gに98%濃硫酸434g(4.295モル)を添加・混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に加えた。
次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)をイオン交換2300gに溶解させた酸化剤水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に滴下した。滴下後、無色透明の溶液は、重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下後、更に1時間、攪拌を続けた。
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、硫酸にてドープされた導電性ポリアニリン430gを黒緑色の粉末として得た。
ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末350gを2N−アンモニア水4リットル中に加え、ホモミキサーにて回転数5000rpm にて5時間攪拌した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。粉末を濾別し、イオン交換水・アセトンにて洗浄して、室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドープされたポリアニリン粉末280gを得た。
<実施例127>
ポリアニリン組成物(A−1)の調整
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1000g中に、ポリビニル−2−ピロリドン(PVP)2gを添加して溶解させた後、実施例1で合成した40gを添加して攪拌しながら溶解(一部分散)させた。ド−パントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8gを添加・溶解してポリアニリン溶液/分散液(A−1)を得た。
なお、実施例126〜156および比較例45,46については、以下に示す留土足製を行った。
(導電性高分子組成物、ポリアミック酸組成物中の導電性高分子分散粒子の粒度測定)
導電性高分子組成物、及びポリアミック酸組成物中の導電性高分子分散粒子の粒度は、導電性高分子組成物、またはポリアミック酸組成物を使用している有機極性溶媒にて適宜希釈して、測定試料を作製した。作製した試料について、堀場製作所社製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−700を用いて、体積平均粒径の測定した。
<実施例128>
ポリアミック酸組成物(B−1)の調整
実施例127で得られたポリアニリン溶液/分散液中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル81.00g(404.6ミリモル)を加え、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物119.00g(404.6ミリモル)を徐々に添加した。反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った後、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温まで冷却をした。溶液粘度30Pa・s(E型粘度計)のポリアミック酸組成物(B−1)を得た。
<実施例129>
ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造
得られたポリアミック酸組成物(B−1)を、外径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。
なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
(膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルと膜厚とした。
<実施例130〜136>
実施例127に倣い、有機極性溶媒種類、分散剤の配合量、導電性高分子の配合量、ド―パントの種類、ドーパントの配合量を変えて、導電性高分子組成物(A−2)〜(A−8)を製造した(表23)。
<実施例137〜145>
実施例128に倣い、導電性高分子組成物種類、テトラカルボン酸二無水物の種類、テトラカルボン酸二無水物の配合量、ジアミン化合物の種類、ジアミン化合物の配合量、ド―パントの種類、ドーパントの配合量を変えて、ポリアミック酸組成物(B−2)〜(B−10)を製造した(表24)。
<実施例146〜156>
実施例129に倣い、ポリアミック酸組成物の種類、乾燥条件、焼成条件を変えて、ポリイミド無端ベルト(C−2)〜(C−12)を製造した(表25)。
<比較例44>
ポリアミック酸溶液(D−1)の調整
N−メチル−2−ピロリドン1000g中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル81.00g(404.6ミリモル)を加え、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物119.00g(404.6ミリモル)を徐々に添加した。反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った後、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温まで冷却をした。溶液粘度40Pa・s(E型粘度計)のポリアミック酸溶液(D−1)を得た。
<比較例45>
ポリアミック組成物(E−1)の調整
比較例44で得られたポリアミック酸溶液(D−1)に、ポリビニルピロリドン2gを添加・溶解させた。次いで実施例1で得られたポリアニリン40gを添加して攪拌しながら溶解(一部分散)させた。ド−パントとしてドデシルベンゼンスルホン酸8gを添加・溶解してポリアニリン溶液/分散液(E−1)を得た(表24)。
<比較例46>
ポリイミド無端ベルト(F−1)の製造
比較例45で製造したポリアミック酸組成物を用いて、実施例126に倣ってポリイミド無端ベルトを製造した(表25)。
Figure 2007304357
Figure 2007304357
Figure 2007304357
表24,25より、ポリアミック酸組成物中に導電性高分子粒子が微小に分散して、得られるポリイミド無端ベルトに微小なドメインを形成し,ベルトとしての強度も高く、中間転写ベルトとして所定の抵抗値を備え、電子写真装置に搭載した際に、濃度ムラ、斑点ディフェクトとも低減されているのは、本発明に係るポリイミド無端ベルトだけであることがわかる。
本発明の活用例として、耐熱性、高強度および導電性を必要とするベルト用途への適用、例えば、帯電防止部材、電磁波遮蔽部材へ適用することができ、また、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に用いられるベルトへの適用もある。
表面抵抗率および体積抵抗率の計測方法を説明する図である。 本発明を適用するタンデム式の画像形成装置の要部部分を説明する模試図である。
符号の説明
1 トナーカートリッジ、2 定着ロール、3 バックアップロール、4 テンションロール、5 2次転写ロール、6 用紙経路、7 用紙トレイ、8 レーザー発生装置、9 感光体、10 1次転写ロール、11 駆動ロール、12 転写クリーナ、13 帯電ロール、14 感光体クリ−ナ、15 現像器、16 中間転写体、18 除電ロール。

Claims (5)

  1. 導電剤を含有するポリイミド樹脂からなり、
    22℃55%RHの条件下において、100Vの電圧を印加してから30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値と10秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(logΩ/□)以下であるポリイミド無端ベルト。
  2. 像担持体と、
    前記像担持体表面を帯電する帯電手段と、
    前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
    前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を中間転写ベルト上に一次転写する一次転写手段と、
    前記中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写手段と、を備え、
    前記中間転写ベルトが導電剤を含有するポリイミド樹脂からなり、
    22℃55%RHの条件下において、100Vの電圧を印加してから30ミリ秒後の表面抵抗率の常用対数値と10秒後の表面抵抗率の常用対数値との差が、絶対値で0.2(logΩ/□)以下であるポリイミド無端ベルトである画像形成装置。
  3. 有機極性溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、
    前記分散剤溶液に導電剤を溶解または分散させて導電剤溶液を調製する工程と、
    前記導電剤溶液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を合成し、導電剤を含有させたポリアミック酸組成物を製造する工程と、
    前記ポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、
    前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、
    を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
  4. 有機極性溶媒にポリアミック酸を溶解させて第1のポリアミック酸組成物を得る工程と、
    前記第1のポリアミック酸組成物に分散剤を溶解させて第2のポリアミック酸組成物を得る工程と、
    前記第2のポリアミック酸組成物に導電剤を分散させて第3のポリアミック酸組成物を得る工程と、
    前記第3のポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、
    前記円筒状基材上に塗布された前記第3のポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、
    を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
  5. 溶媒に分散剤を溶解させて分散剤溶液を調製する工程と、
    前記分散剤溶液に導電剤を溶解または分散させて導電剤溶液を調製する工程と、
    ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させたポリアミック酸組成物を前記導電剤溶液とは別に調製する工程と、
    前記導電剤溶液と前記ポリアミック酸組成物とを混合させて混合物を得る工程と、
    前記混合物から前記溶媒を除去して導電剤を含有させたポリアミック酸組成物を製造する工程と、
    前記ポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、
    前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱処理する工程と、
    を順次行うポリイミド無端ベルトの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014066858A (ja) * 2012-09-26 2014-04-17 Tokai Rubber Ind Ltd 無端ベルト
JP2014149500A (ja) * 2013-02-04 2014-08-21 Fuji Xerox Co Ltd カーボンブラック分散ポリアミック酸組成物、無端ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置
CN112876681A (zh) * 2021-02-04 2021-06-01 武汉柔显科技股份有限公司 一种使用撞击流反应器制备聚酰亚胺前驱体及其薄膜的制备方法

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