JP2007303355A - 内燃機関のegr制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、内燃機関のEGR制御装置に関し、外部EGRと内部EGRを併用する内燃機関において、運転状態が様々に変化しても、EGRを目標値に迅速かつ安定的に収束させることを目的とする。
【解決手段】吸気弁と排気弁とが共に閉じた負のバルブオーバーラップの大きさを可変とすることで、内部EGR量を制御する。EGR量と相関する吸入空気量が目標値に一致するように、EGR弁の開度を制御して外部EGR量を調節することで、EGRをフィードバック制御する。負のバルブオーバーラップが大きい場合ほど、吸入空気量とその目標値との偏差をEGR弁開度にフィードバックする場合のフィードバックゲインを大きくする。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関のEGR制御装置に関する。
内燃機関において、NOx低減等の目的で、排気ガスの一部を再び気筒内に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を行う技術が知られている。EGRを行う方法の一つとして、吸気通路と排気通路とをEGR通路で結び、排気通路内の排気ガスを、このEGR通路を通して吸気通路に流入させる方法がある。この方法によるEGRは、後述する内部EGRと区別するため、外部EGRとも呼ばれる。外部EGRの量は、例えば、EGR通路に設けたEGR弁の開度によって調節される。
機関回転数、負荷等の運転条件によって、適切なEGR量やEGR率(ここでは単にEGR量という)は、変化する。EGR量が少なすぎると、NOx低減等のEGRの目的を十分に達成することができず、逆に、EGR量が多すぎると、弊害が生ずる。特に、ディーゼルエンジンの場合には、EGR量が多すぎると、酸素濃度の減少によってスモークやHCの排出量が増加するため、EGR量(EGR率)を高い精度で制御することが重要である。
特開2000−291493号公報には、EGR量を高精度に制御するべく、外部EGRフィードバック制御を行うEGR制御装置が開示されている。外部EGRが入ると、その分だけ、吸入空気量が少なくなる。つまり、吸入空気量と外部EGR量とは、相関を有している。同公報に開示された装置では、吸入空気量を目標値に一致させるべく、両者の偏差をEGR弁開度補正量にフィードバックすることで、外部EGR量を目標値に収束させるEGRフィードバック制御を行っている。同装置では、その際、吸気圧と排気圧との差圧が大きいほどEGR弁開度補正量を小さく算出し、その差圧が小さいほどEGR弁開度補正量を大きく算出することとしている。
EGR弁開度が同じでも、吸気圧と排気圧との差圧が大きいと多量の外部EGRガスが入るのに対し、吸気圧と排気圧との差圧が小さいと少量の外部EGRガスしか入らない。上記公報に開示された装置によれば、このことに配慮して適切なEGR弁開度補正量を算出することができるため、吸気圧と排気圧との差圧の大小にかかわらず、外部EGR量の制御性を良好に保つことができる。
特開2000−291493号公報 特開2003−161179号公報 特開2004−197596号公報 特開平5−133282号公報 特開2004−293392号公報
ところで、EGRには、前述した外部EGRのほかに、内部EGRがある。排気弁が閉じ終わる前に吸気弁が開くことで吸排気弁が共に開いているとき、つまり、バルブオーバーラップ時には、排気ガス(既燃ガス)が筒内および吸気ポート内に吸い戻されることがある。その吸い戻された排気ガスは、その後、ピストンの動きにより、新気と共に筒内に流入する。これが内部EGRである。内部EGR量は、バルブオーバーラップ期間が長いほど、多くなる。このため、可変バルブタイミング機構を備えた内燃機関では、バルブオーバーラップ期間を変更することで、内部EGR量を制御することができる。
従来、ディーゼルエンジンでは、可変バルブタイミング機構を搭載することが少なかったため、外部EGR装置を設けて、外部EGRを利用するのが一般的であった。これに対し、近年では、可変バルブタイミング機構を搭載したディーゼルエンジンの開発が進められている。
外部EGRの場合には、EGR通路の途中に設けたEGRクーラによってEGRガスを冷却して還流させることにより、内部EGRに比して、筒内温度をより低くすることができる。よって、NOxやスモークを更に有効に低減することができる。このため、可変バルブタイミング機構を搭載したディーゼルエンジンでも、可変バルブタイミング機構による内部EGRだけでなく、外部EGRを併用することが望ましい。
外部EGRと内部EGRとを併用する内燃機関の場合には、内部EGRガスが存在すると、新気と外部EGRガスとの混合ガスの筒内への流入量が、その分だけ少なくなる。このため、バルブタイミングの変更によって内部EGR量が変化すると、EGR弁開度の変化に対する外部EGR量の変化率も変わってしまう。また、バルブタイミングが変更されると、筒内に流入するガスの総量が変わるため、内部EGR量が変化しなくても、外部EGR量(外部EGRの入り易さ)が変化する。これらの事情の存在により、可変バルブタイミング機構を備えた内燃機関において外部EGRをフィードバック制御する場合には、次のような問題がある。
図11は、外部EGR量の相関値である吸入空気量が目標値に収束するように、EGR弁開度をフィードバック制御する場合の、吸入空気量の経時変化を示す図である。図11中の破線は、吸入空気量(外部EGR量相関値)が目標値に適正に収束している場合のグラフである。あるバルブタイミングのときに、図11中の破線のような適正な制御を行うことができたとしても、バルブタイミングが変更されると、上述した事情の存在により、吸入空気量が目標値に収束するまでに長時間を要したり、図11中の実線で示すように、吸入空気量が目標値へ収束せずに発散したりし易くなる。このように、可変バルブタイミング機構を備えた内燃機関においては、バルブタイミングの変更による内部EGR量の変化に起因して、外部EGR量の制御性が悪化し易い。その結果、目標とするEGR率が達成できず、NOx排出量が増大したり、スモークの排出を招いたりし易いという問題がある。
この発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、外部EGRと内部EGRを併用する内燃機関において、運転状態が様々に変化しても、EGRを目標値に迅速かつ安定的に収束させることのできる内燃機関のEGR制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関のEGR制御装置であって、
内燃機関の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記EGR通路を通って還流する外部EGRの量を可変とする外部EGR量可変手段と、
前記EGR通路を通らずに前記内燃機関の内部において生ずる内部EGRの量を可変とする内部EGR量可変手段と、
EGR量、EGR率、もしくはそれらと相関する量の、検出値または推定値と、その目標値との偏差をゼロにするべく、前記偏差をフィードバックして前記外部EGR量可変手段への制御信号を生成する外部EGRフィードバック制御手段と、
を備え、
前記外部EGRフィードバック制御手段は、外部EGR量と内部EGR量とを合わせた総EGR量のうちで内部EGR量が占める比率が高くなる運転条件であるほど、フィードバックゲインを大きくするゲイン設定手段を含むことを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記内部EGR量可変手段は、吸気弁および排気弁のバルブオーバーラップを正方向または負方向に大きくすることによって内部EGR量を増大させることのできる可変動弁機構を含み、
前記外部EGR量可変手段は、前記EGR通路に配置されたEGR弁および/または前記吸気通路に配置された吸気絞り弁を含むことを特徴とする。
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記ゲイン設定手段は、前記バルブオーバーラップが負方向または正方向に大きいほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段を含むことを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記内燃機関は、吸気弁および/または排気弁の開弁特性を可変とする可変動弁機構を備え、
前記ゲイン設定手段は、
吸気弁および/または排気弁の現在の開弁特性に基づいて、内部EGR量を推定する内部EGR量推定手段と、
吸気弁および/または排気弁の現在の開弁特性に基づいて、前記内燃機関の吸気系の流量係数を算出する流量係数算出手段と、
前記推定された内部EGR量が多いほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段と、
前記算出された流量係数が小さいほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段と、
を含むことを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記内燃機関は、筒内にスワールを生成させるためのスワール生成手段を備え、
前記ゲイン設定手段は、前記スワール生成手段により生成されるスワールが強い場合ほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段を含むことを特徴とする。
第1の発明によれば、内部EGR量可変手段および外部EGR量可変手段を備えた内燃機関において、EGR量、EGR率、もしくはそれらと相関する量の、検出値または推定値を目標値に一致させるべく、両者の偏差をフィードバックして外部EGR量可変手段の作動を制御するに際して、外部EGR量と内部EGR量とを合わせた総EGR量のうちで内部EGR量が占める比率が高くなる運転条件であるほど、フィードバックゲインを大きくすることができる。内部EGR量の比率が高くなるほど、外部EGR量の比率が低くなるので、外部EGR量可変手段の状態を同じ量だけ変化させたとしても、総EGR量の変化量は少なくなる。また、内部EGRの比率が高くなるほど、背圧が低下し、吸気圧との差圧が小さくなる傾向にあるので、外部EGRガスの流量が少なくなり易い。更に、外部EGRは、EGRガスの還流経路が長いため、内部EGRに比して、制御に対する応答性が元々悪い。これらの理由から、総EGR量に占める内部EGR量の比率が高くなるほど、外部EGR量可変手段によってEGRを制御する場合の応答性が悪くなり易いのが普通である。これに対し、第1の発明によれば、内部EGRの比率が高いほど、外部EGR量可変手段を制御するためのフィードバックゲインを大きくすることができるので、そのような応答性の悪化を確実に防止することができる。よって、内燃機関の運転状態にかかわらず、目標とする適切なEGR率になるように精度良く制御することができ、NOxの排出を有効に抑制することができるとともに、スモークの排出も回避することができる。
第2の発明によれば、可変動弁機構によって吸気弁および排気弁のバルブオーバーラップを正方向または負方向に大きくすることによって内部EGR量を増大させることができるので、内部EGR量を容易に調節することができるとともに、高い制御性が得られる。また、第2の発明によれば、EGR通路に配置されたEGR弁や吸気通路に配置された吸気絞り弁の開度を調節することで、外部EGR量を変えることができる。このため、外部EGR量を簡単な構成で容易に調節することができるとともに、高い制御性が得られる。
第3の発明によれば、バルブオーバーラップが負方向または正方向に大きいほど、フィードバックゲインを大きくすることができる。バルブオーバーラップが負方向または正方向に大きくなるほど、内部EGR量が増えるので、内部EGRの比率が高くなる。よって、第3の発明によれば、内部EGR量の比率が高くなるような運転状態のときに、外部EGR量可変手段を制御するためのフィードバックゲインを適切に大きくすることができる。このため、EGRの制御性の悪化を確実に防止することができる。
第4の発明によれば、吸気弁および/または排気弁の開弁特性に基づいて内部EGR量の推定値および吸気系の流量係数を算出し、その内部EGR量推定値が多いほど上記フィードバックゲインを大きくし、また、その流量係数が小さいほどフィードバックゲインを大きくすることができる。内部EGR量が多くなるほど、内部EGR量の比率は高まる。また、流量係数が小さいほど、新気および外部EGRガスの混合ガスの筒内への流入量が減少する一方で、内部EGR量はほとんど減少しないので、内部EGR量の比率が高くなる。よって、第4の発明によれば、内部EGR量の比率が高くなるような運転状態のときに、フィードバックゲインを適切に大きくすることができる。更に、第4の発明によれば、吸気弁および/または排気弁の開弁特性を基礎としてフィードバックゲインを適切に設定することができるので、例えば吸気弁の片弁早閉じによるスワール強化制御などの、吸気弁および/または排気弁の開弁特性の変更を利用する種々の制御を行う場合においても適切なフィードバックゲインを設定することができる。このため、EGRの制御性の悪化を確実に防止することができる。
第5の発明によれば、スワール生成手段により生成されるスワールが強い場合ほど、上記フィードバックゲインを大きくすることができる。生成されるスワールが強いほど、流量係数が小さくなり、新気および外部EGRガスの混合ガスの筒内への流入量が減少する一方で、内部EGR量はほとんど減少しないので、内部EGR量の比率が高くなる。第5の発明によれば、そのような場合に、フィードバックゲインを適切に大きくすることができるので、EGRの制御性の悪化を確実に防止することができる。
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、複数気筒(図1では4気筒)を有する4サイクルのディーゼル機関10を備えている。このディーゼル機関10は、車両に搭載され、その動力源とされているものとする。
以下、本実施形態では、本発明をディーゼル機関(圧縮着火内燃機関)の制御に適用した場合について説明するが、本発明は、ディーゼル機関の制御に限定されるものではなく、ガソリン機関(火花点火内燃機関)その他の各種の内燃機関の制御に適用することが可能である。
ディーゼル機関10の各気筒には、燃料を筒内に直接噴射するインジェクタ12が設置されている。各気筒のインジェクタ12は、共通のコモンレール14に接続されている。図示しない燃料タンク内の燃料は、サプライポンプ16によって所定の燃圧まで加圧されて、コモンレール14内に蓄えられ、コモンレール14から各インジェクタ12に供給される。
ディーゼル機関10の排気通路18は、排気マニホールド20により枝分かれして、各気筒の排気ポート22(図2参照)に接続されている。本実施形態のディーゼル機関10は、ターボ過給機24を備えている。排気通路18は、ターボ過給機24の排気タービンに接続されている。排気通路18の、ターボ過給機24より下流側には、排気ガスを浄化する後処理装置26が設けられている。後処理装置26としては、例えば、酸化触媒、NOx触媒、DPF(Diesel Particulate Filter)、DPNR(Diesel Particulate-NOx-Reduction system)等を用いることができる。
ディーゼル機関10の吸気通路28の入口付近には、エアクリーナ30が設けられている。エアクリーナ30を通って吸入された空気は、ターボ過給機24の吸気圧縮機で圧縮された後、インタークーラ32で冷却される。インタークーラ32を通過した吸入空気は、吸気マニホールド34により、各気筒の吸気ポート35(図2参照)に分配される。
吸気通路28の、インタークーラ32と吸気マニホールド34との間には、吸気絞り弁36が設置されている。また、吸気通路28の、エアクリーナ30の下流近傍には、吸入空気量を検出するエアフローメータ38が設置されている。
吸気通路28の吸気マニホールド34の近傍には、EGR(Exhaust Gas Recirculation)通路40の一端が接続されている。EGR通路40の他端は、排気通路18の排気マニホールド20近傍に接続されている。本システムでは、このEGR通路40を通して、排気ガス(既燃ガス)の一部を吸気通路28に還流させること、つまり外部EGRを行うことができる。以下、EGR通路40を通して吸気通路28に還流される排気ガスのことを「外部EGRガス」と称する。
EGR通路40の途中には、外部EGRガスを冷却するためのEGRクーラ42が設けられている。EGR通路40におけるEGRクーラ42の下流には、EGR弁44が設けられている。このEGR弁44の開度を変えることにより、EGR通路40を通る排気ガス量、すなわち外部EGR量を調整することができる。
吸気通路28の、吸気絞り弁36の下流側には、吸気圧を検出する吸気圧センサ46が設置されている。また、排気通路18の、ターボ過給機24より上流側には、背圧を検出する背圧センサ47が設置されている。本実施形態では、背圧センサ47によって背圧を実測するものとするが、背圧は、運転状態に基づく推定で求めるようにしてもよい。更に、本システムは、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ48を備えている。
そして、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50には、上述した各種のセンサおよびアクチュエータが接続されている。ECU50は、各センサの出力に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを駆動させることにより、ディーゼル機関10の運転状態を制御する。
図2は、図1に示すシステムにおけるディーゼル機関10の一つの気筒の断面を示す図である。以下、ディーゼル機関10について更に説明する。図2に示すように、ディーゼル機関10は、吸気弁52のバルブタイミング(開閉時期)を連続的または段階的に可変とする吸気可変動弁機構54を備えている。この吸気可変動弁機構54の具体的構成は特に限定されず、いかなるものであってもよい。例えば、吸気可変動弁機構54は、吸気弁52を駆動する吸気カム(図示せず)の位相を連続的に可変とする機械的な機構を用いるものであってもよいし、あるいは、任意のタイミングで開閉可能な電磁駆動弁や油圧駆動弁などを用いるものであってもよい。また、吸気可変動弁機構54は、吸気弁52の実バルブタイミングを検出するセンサを含んで構成されていてもよい。また、吸気可変動弁機構54は、吸気弁52の作用角やリフト量を更に変更可能なものであってもよい。
更に、ディーゼル機関10は、排気弁56のバルブタイミング(開閉時期)を連続的または段階的に可変とする排気可変動弁機構58を備えている。この排気可変動弁機構58の具体的構成は特に限定されず、いかなるものであってもよい。例えば、排気可変動弁機構58は、排気弁56を駆動する排気カム(図示せず)の位相を連続的に可変とする機械的な機構を用いるものであってもよいし、あるいは、任意のタイミングで開閉可能な電磁駆動弁や油圧駆動弁などを用いるものであってもよい。また、排気可変動弁機構58は、排気弁56の実バルブタイミングを検出するセンサを含んで構成されていてもよい。また、排気可変動弁機構58は、排気弁56の作用角やリフト量を更に変更可能なものであってもよい。
ディーゼル機関10のクランク軸60の近傍には、クランク軸60の回転角度(クランク角)を検出するクランク角センサ62が取り付けられている。上述した吸気可変動弁機構54、排気可変動弁機構58、クランク角センサ62は、ECU50に接続されている。
[実施の形態1の特徴]
(内部EGRの制御)
本実施形態のディーゼル機関10では、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58によって吸気弁52および排気弁56のバルブタイミングを変更することにより、内部EGR量を調節することができる。図3は、内部EGRを行う場合の吸気弁52および排気弁56のバルブタイミングを説明するための図である。図3中、太線は内部EGRを行う場合のバルブリフト線図であり、細線は内部EGRを行わない場合のバルブリフト線図である。
図3に示すように、内部EGRを行う場合には、内部EGRを行わない場合に比して、排気弁56の開弁位相を進角させて、排気弁56の閉じ時期が早くされるとともに、吸気弁52の開弁位相を遅角させて、吸気弁52の開時期を遅くされる。これにより、排気弁56が閉じた後、吸気弁52が開くまでの間に、吸気弁52および排気弁56が共に閉じている状態が生ずる。この状態を本明細書では「負のバルブオーバーラップ」と称する。負のバルブオーバーラップを生じさせると、筒内の既燃ガスが排気ポート22に流出しきらないうちに排気弁56が閉じられる。排気ポート22に排出されなかった既燃ガスは、そのまま筒内に残存するか、あるいは、吸気弁52の開弁に伴って一旦吸気ポート35に出た後ピストン64の下降によって新気と共に筒内に吸入される。負のバルブオーバーラップを生じさせた場合には、このようにして内部EGRを行うことができる。そして、負のバルブオーバーラップの期間を大きくするほど、内部EGR量を多くすることができる。
本実施形態では、ディーゼル機関10の運転状態と、その運転状態に応じた適切な内部EGR量が得られるような吸気弁52および排気弁56のバルブタイミングとの関係がマップ化されて、予めECU50に記憶されているものとする。そして、ECU50は、ディーゼル機関10の運転状態に応じ、そのマップに基づいて吸気弁52および排気弁56のバルブタイミング(負のバルブオーバーラップの大きさ)を制御することにより、内部EGR量をフィードフォワード制御するものとする。
なお、図3に示す例では、負のバルブオーバーラップ量の変更に伴って排気弁56の開時期および吸気弁52の閉じ時期も変化するようにしているが、排気弁56の開時期や吸気弁52の閉じ時期を変えずに負のバルブオーバーラップ量を変更するようにしてもよい。また、図3に示す例では、排気弁56の閉じ時期と吸気弁52の開時期との双方を変えることで負のバルブオーバーラップ量を変更するようにしているが、排気弁56の閉じ時期と吸気弁52の開時期との何れか一方の変更で負のバルブオーバーラップ量を変更するようにしてもよい。この場合には、ディーゼル機関10は、吸気可変動弁機構54と排気可変動弁機構58との何れか一方のみを備えるものであってもよい。更に、本発明では、吸気弁52および排気弁56が共に開いた状態となる通常のバルブオーバーラップ(正のバルブオーバーラップ)を設けるようにし、この正のバルブオーバーラップの大きさを変更することで内部EGR量を調節するようにしてもよい。
(外部EGRの制御)
内部EGRや外部EGRを生じさせると、それらのEGRガスが空気(新気)の一部に代わってディーゼル機関10の筒内に吸入される。換言すれば、内部EGRや外部EGRを生じさせると、その分だけ、筒内に吸入される空気(新気)の量が減少する。つまり、EGRを行っているときには、エアフローメータ38で検出される吸入空気量が、EGR量に応じた分だけ減少する。つまり、エアフローメータ38で検出される吸入空気量は、EGR量やEGR率と相関を有している。よって、エアフローメータ38で検出される吸入空気量が目標値に一致するようにEGR量を調節すれば、目標とするEGR率になるように制御することができる。
そこで、本実施形態では、EGR弁44をアクチュエータとして用いて吸入空気量をフィードバック制御することにより、実質的にEGR率をフィードバック制御することとしている。より詳しくは、ECU50には、運転状態と、その運転状態に応じた適切なEGR率を実現するための吸入空気量目標値との関係がマップ化されて予め記憶されている。そして、エアフローメータ38で検出される吸入空気量が、そのマップに従って定められる吸入空気量目標値に一致するように、EGR弁44の開度がフィードバック制御される。
図4は、ECU50が上記のEGRフィードバック制御のコントローラとして機能する場合の制御系の一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態の制御系は、PI制御を行うものである。より詳しくは、吸入空気量の目標値ydと、エアフローメータ38による検出値y(t)との偏差e(t)に比例ゲインKpを乗じて得られる比例項と、偏差e(t)の積分値に積分ゲインKiを乗じて得られる積分項とを足し合わせることにより、EGR弁開度補正量を算出する。そして、EGR弁44の開度が、運転状態に応じて設定される基本EGR弁開度を上記EGR弁開度補正量で補正した値となるように、EGR弁44の作動が制御される。
本実施形態は、上述したEGR制御系における比例ゲインKp(フィードバックゲイン)の設定方法に特徴を有している。本実施形態の作用・効果を理解し易くするため、まず、比較例の比例ゲインKpについて説明する。図5は、比較例の比例ゲインKpを説明するための図である。比較例の比例ゲインKpは、偏差e(t)に応じて設定される。すなわち、図5に示すように、比較例では、偏差e(t)の絶対値が大きいほど、比例ゲインKpが大きな値に設定される。また、比例ゲインKpには上限値が設定されており、偏差e(t)の絶対値が所定値以上になると、比例ゲインKpはそれ以上大きくならないようにされる。
仮に、ディーゼル機関10において、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58によって内部EGR量を制御する(変更する)ことがないとした場合には、比較例のような比例ゲインKpを用いることにより、図11の破線で示すように、吸入空気量を目標値に適切に収束させることができる。つまり、適切なEGR率に精度良く制御することができる。しかしながら、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58によって内部EGR量を制御する本実施形態のディーゼル機関10においては、比較例の比例ゲインKpを用いたとすると、次のような問題が発生する。
ディーゼル機関10では、前述したように、負のバルブオーバーラップ期間が大きくされると、内部EGR量が多くなる。内部EGR量が多くなると、その分だけ、新気と外部EGRガスとの混合ガスの筒内への流入量が少なくなる。つまり、吸入空気量および外部EGR量が少なくなる。そうすると、EGR弁44の開度を同じだけ変化させたとしても、外部EGRの総量自体が小さくなっているため、外部EGR量の変化量も小さくなり、よって、吸入空気量の変化量も小さくなる。
このようにして、内部EGR量が多くなるほど、EGR弁44の開度変化に対する吸入空気量の変化量が小さくなる。このため、EGR弁44をアクチュエータとして用いて、吸入空気量が目標値に一致するようにフィードバック制御する上で、比較例のように、内部EGR量の多少によらずに同じ比例ゲインKpを用いた場合には、内部EGR量が多くなるほど、吸入空気量に対するコントローラの感度が悪くなる。その結果、吸入空気量が目標値に収束するまでに長時間を要したり、更には、図11中の実線で示すように、吸入空気量が目標値へ収束せずに発散したりし易くなる。このような事態が生ずると、目標とする適切なEGR率が達成できなくなるため、NOx排出量が増大したり、スモークの排出を招いたりし易い。
そこで、本実施形態では、内部EGR量が変化した場合であっても適切なEGR制御を可能とするべく、比例ゲインKpを次のようにして設定することとした。図6は、本実施形態の比例ゲインKpを説明するための図である。本実施形態では、負のバルブオーバーラップが小さい場合(または無い場合)には、図5の場合と同様に、図6中の実線で示すようなマップに基づいて比例ゲインKpが設定される。そして、負のバルブオーバーラップが大きくなるほど、図6中の矢印で示すように、比例ゲインKpのマップの傾斜が急にされていき、例えば図6中の破線で示すようなマップに基づいて比例ゲインKpが設定される。このような図6に示すマップによれば、負のバルブオーバーラップが大きいほど、比例ゲインKpが大きな値に設定される。
前述したように、ディーゼル機関10では、負のバルブオーバーラップが大きいほど、内部EGR量が多くなる。よって、本実施形態では、内部EGR量が多いほど、比例ゲインKpが大きな値に設定されることになる。このため、内部EGR量が多くなって、EGR弁44の開度変化に対する吸入空気量の変化量が小さくなった場合であっても、EGR弁44をアクチュエータとして用いて吸入空気量をフィードバック制御するコントローラの感度が悪くなることがなく、適切な感度を維持することができる。よって、内部EGR量の多少にかかわらず、ディーゼル機関10のEGR率と相関する値である吸入空気量を目標値に迅速且つ安定的に収束させることができるので、目標とする適切なEGR率に精度良く制御することができる。
なお、図6では、比例ゲインKpの上限値については負のバルブオーバーラップにかかわらず一定としているが、比例ゲインKpの上限値についても、負のバルブオーバーラップに応じて大きくするようにしてもよい。また、本発明では、比例ゲインKpに上限値を設けないようにしてもよい。
[実施の形態1における具体的処理]
図7は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。なお、本ルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行されるものとする。
図7に示すルーチンによれば、まず、ディーゼル機関10の機関回転数NE、負荷等の運転状態がクランク角センサ62、アクセル開度センサ48等の各種センサ信号に基づいて検出される(ステップ100)。続いて、ステップ100で検出された現在の運転状態に基づいて、この運転状態に対応した適切なEGR率になるような目標吸入空気量が所定のマップに従って算出される(ステップ102)。更に、ステップ100で検出された現在の運転状態に基づいて、この運転状態に対応した基本EGR弁開度が所定のマップに従って算出される(ステップ104)。
次いで、エアフローメータ38の信号に基づいて、実吸入空気量が検出される(ステップ106)。そして、この実吸入空気量を上記ステップ102で算出された目標吸入空気量から減算することにより、吸入空気量偏差e(t)が算出される(ステップ108)。
続いて、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58の状態に基づいて、現在の負のバルブオーバーラップ量が検出される(ステップ110)。次いで、この負のバルブオーバーラップ量と、上記ステップ108で算出された吸入空気量偏差e(t)とに基づき、前述した図6に示すマップに従って、図4に示すEGR制御系で用いるための比例ゲインKpが算出される(ステップ112)。次いで、この算出された比例ゲインKpと、所定の積分ゲインKiと、吸入空気量偏差e(t)およびその積分値とに基づいて、EGR弁開度補正量が算出される(ステップ114)。そして、その算出されたEGR弁開度補正量を上記ステップ104で算出された基本EGR弁開度に足し合わせることにより補正後のEGR弁開度が算出され、その補正後のEGR弁開度にEGR弁44の実際の開度が一致するように、EGR弁44が制御される(ステップ116)。
以上説明した図7に示すルーチンによれば、EGR弁44をアクチュエータとする吸入空気量のフィードバック制御によってEGR率を制御する上で、負のバルブオーバーラップが大きいほど、つまり内部EGR量が多いほど、フィードバックゲイン(比例ゲインKp)を大きくすることができる。
内部EGR量が多い場合には、総EGR量に占める内部EGR量の比率が高くなり、外部EGR量の比率が低くなる。このため、EGR弁44の開度を同じだけ変更しても、総EGR量の変化量は少なくなる。また、内部EGRの比率が高くなるほど、背圧が低下し、吸気圧との差圧が小さくなる傾向にあるので、外部EGRガスの流量が少なくなり易い。更に、外部EGRは、EGRガスの還流経路が長いため、内部EGRに比して、制御に対する応答性が元々悪い。これらの理由から、総EGR量に占める内部EGR量の比率が高くなるほど、EGR弁44の開度を変更することでEGR量を制御する場合の応答性が悪くなり易いのが普通である。これに対し、実施の形態1の制御によれば、内部EGR量が多いほど、つまり内部EGRの比率が高いほど、EGR弁44の開度を制御するためのフィードバックゲイン(比例ゲインKp)を大きくすることができるので、そのような応答性の悪化を確実に防止することができる。すなわち、内部EGR量が多い場合であっても、EGR率の相関値である吸入空気量を目標値に迅速かつ安定的に収束させることができる。よって、運転状態にかかわらず、目標とする適切なEGR率になるように精度良く制御することができ、NOxの排出を有効に抑制することができるとともに、スモークの排出も回避することができる。
なお、上述した実施の形態1では、EGRフィードバック制御を図4に示すようなPI制御で行うこととしているが、その制御方式は、これに限定されるものではなく、例えばP制御、PI制御、PID制御等の他の制御方式であってもよい。また、上述した実施の形態1では、内部EGRの比率が高くなる場合ほど大きくするフィードバックゲインの対象を比例ゲインKpとしているが、この対象は比例ゲインKpに限定されるものではなく、積分ゲインKiや微分ゲインKdでもよく、あるいは2種以上のフィードバックゲインを対象としてもよい。
また、上述した実施の形態1では、EGR弁44の開度を調節することで外部EGR量を制御する場合について説明したが、外部EGR量の制御方法はこれに限定されるものではない。例えば、吸気絞り弁36の開度を調節して、背圧と吸気圧との差圧、つまりEGR通路40の入口と出口との差圧を変えることで、外部EGR量を制御するようにしてもよく、また、EGR弁44と吸気絞り弁36との双方を併用して外部EGR量を制御するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1のEGRフィードバック制御においては、エアフローメータ38で検出される実吸入空気量を目標値に一致させるように制御しているが、本発明におけるEGRフィードバック制御の方法はこれに限定されるものではなく、EGR量やEGR率あるいはそれらと相関する量の検出値または推定値を目標値に一致させるように制御する方法であれば、いかなる方法であってもよい。例えば、筒内に吸入されるガス中の酸素濃度(吸気O濃度)を基礎としてEGRフィードバック制御を行うようにしてもよい。吸気O濃度は、EGR率と相関を有している。そして、吸気O濃度は、吸入空気量、EGR弁開度、吸気圧(過給圧)、背圧等に基づいて推定することが可能である。そこで、それらの値に基づいて吸気O濃度の推定値を算出し、その推定値が、運転状態に応じた目標値に一致するようにEGR弁44の開度を制御することにより、吸気O濃度を基礎としたEGRフィードバック制御を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1では、内部EGR量についてはフィードフォワード制御を行うこととしているが、本発明では、内部EGR量についてもフィードバック制御を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1においては、EGR弁44が前記第1の発明における「外部EGR量可変手段」に、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58が前記第1の発明における「内部EGR量可変手段」に、補正後のEGR弁開度が前記第1の発明における「制御信号」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、図7に示すルーチンの処理を実行することにより前記第1の発明における「外部EGRフィードバック制御手段」が、上記ステップ110および112の処理を実行することにより前記第1および第3の発明における「ゲイン設定手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態2.
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略または簡略する。
[システム構成の説明]
実施の形態2のシステム構成は、実施の形態1と同様に、図1および図2に示すものであるとする。ただし、本実施形態のディーゼル機関10は、1気筒当たり二つの吸気弁52および吸気ポート35を備えているものとする。また、吸気可変動弁機構54は、一つの気筒の二つの吸気弁52のうちの一方の閉じ時期を変えることなく、他方の吸気弁52の閉じ時期を早くすることができるように構成されているものとする。
[実施の形態2の特徴]
図8および図9は、それぞれ、実施の形態2の比例ゲインKpを説明するための図である。内部EGR量が多いほど、実施の形態1で既述した理由により、EGRフィードバック制御のフィードバックゲイン(ここでは比例ゲインKp)を大きくする必要がある。ディーゼル機関10において、内部EGR量は、吸気弁52および排気弁56のバルブタイミングや、吸気圧、背圧等に基づいて推定することが可能である。そこで、本実施形態では、図8に示すマップのように、推定された内部EGR量が多い場合ほど、比例ゲインKpを大きな値に設定することとした。
(スワール強化制御)
1気筒当たり二つの吸気ポート35が設けられている場合には、一般に、一方の吸気ポート35から筒内に流入するガスが有するスワール成分が他方の吸気ポート35から流入するガスの流れによって相殺されてしまい、スワールが弱くなり易い。この場合に、上記他方の吸気ポート35の吸気弁52のみ閉じ時期を早くすると、その吸気弁52が閉じた後は、上記一方の吸気ポート35から筒内に流入するガスのスワール成分が相殺されずに生き残るので、スワールを強くすることができる。
本実施形態のシステムでは、強いスワールが必要な運転状態のときには、上記のことを利用して、スワールを強化する制御を行うこととした。つまり、本実施形態では、強いスワールが必要な所定の運転状態にある場合には、各気筒の二つの吸気弁52のうちの一方の閉じ時期はそのままで、他方の吸気弁52の閉じ時期を早くする制御を行うこととした。このことを本明細書では「片弁早閉じ」と言い、早く閉じる方の吸気弁52の閉じ時期を片弁閉じ時期と言う。片弁閉じ時期を早くするほど、スワールは強くなる。そこで、片弁早閉じを行う場合には、強いスワールが要求される場合ほど、片弁閉じ時期がより早くなるように制御される。
一般に、スワールを強めるほど、吸気系の流量係数が低下する、つまり、筒内に流入するガス量が減少することが知られている。一方、吸気系の流量係数が低下しても、内部EGR量はほとんど減少しない。このため、吸気系の流量係数が低下すると、新気と外部EGRガスとの混合ガスの筒内への流入量が減少する。よって、吸気系の流量係数が低下すると、内部EGR量がほとんど減少しない一方で外部EGR量が減少するので、総EGR量に占める内部EGR量の比率が高くなる。内部EGR量の比率が高くなるほど、実施の形態1で既述した通り、EGR制御の応答性が悪くなり易いので、フィードバックゲイン(比例ゲインKp)を大きくする必要がある。
ディーゼル機関10において、吸気系の流量係数は、吸気弁52および排気弁56のバルブタイミングに基づいて算出することが可能である。そこで、本実施形態では、図9に示すマップのように、吸気系の流量係数が小さい場合ほど、比例ゲインKpを大きな値に設定することとした。
[実施の形態2における具体的処理]
図10は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。なお、図10において、図7に示すステップと同一のステップには、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。図10に示すルーチンによれば、ステップ100から108までは実施の形態1と同様の処理が行われ、目標吸入空気量と実吸入空気量との差である吸入空気量偏差e(t)が算出される。
続いて、吸気可変動弁機構54および排気可変動弁機構58の状態に基づいて、吸気弁52および排気弁56の現在のバルブタイミングが検出される(ステップ120)。次いで、この現在のバルブタイミングと、吸気圧センサ46および背圧センサ47で検出された吸気圧および背圧等の情報とに基づいて、所定のマップに従って、現在の内部EGR量の推定値が算出される(ステップ122)。
更に、上記ステップ120で検出された現在のバルブタイミングに基づいて、吸気系の流量係数が算出される(ステップ124)。この流量係数の値は、バルブタイミングのほか、吸気ポート35の形状などによって決定されるものであり、周知の手法によって算出することができる。例えば、何点かのバルブタイミングの下で実験的に求められた流量係数を予めECU50に記憶しておき、その記憶されている値に対し、現在のバルブタイミングに応じた補正を施すことにより、現在のバルブタイミングにおける流量係数を算出することができる。
上記ステップ124において、流量係数は、例えば吸気弁52の作用角が小さいほど、小さく算出される。また、スワール強化制御が実行されている場合には、流量係数は、片弁閉じ時期が早いほど、小さく算出される。
続いて、上記ステップ122で算出された内部EGR量と、上記ステップ124で算出された流量係数とに基づいて、図4に示すEGR制御系で用いるための比例ゲインKpが算出される(ステップ126)。ここでは、図8および図9に示す傾向を反映するためのマップがECU50に予め記憶されているものとする。そして、それらのマップを参照することにより、流量係数は、内部EGR量が多いほど大きく、また、流量係数が小さいほど大きく、算出される。
次いで、上記ステップ126で算出された比例ゲインKpと、所定の積分ゲインKiと、吸入空気量偏差e(t)およびその積分値とに基づいて、図4に示す制御系により、EGR弁開度補正量が算出される(ステップ128)。そして、その算出されたEGR弁開度補正量を、ステップ104で算出された基本EGR弁開度に足し合わせることにより、補正後のEGR弁開度が算出され、その補正後のEGR弁開度にEGR弁44の実際の開度が一致するように、EGR弁44が制御される(ステップ130)。
以上説明した図10に示すルーチンによれば、EGR弁44をアクチュエータとする吸入空気量のフィードバック制御によってEGR率を制御する上で、吸気系の流量係数が小さいほど、フィードバックゲイン(ここでは比例ゲインKp)を大きくすることができる。このため、スワール強化制御が行われている場合には、片弁閉じ時期が早いほど、つまりスワールが強い場合ほど、フィードバックゲインを大きくすることができる。前述したように、スワールが強いほど、筒内に流入するガス量の減少によって内部EGR量の比率が高くなる結果、EGR弁44の開度を変更することでEGR量を制御する場合の応答性が悪くなり易いのが普通である。これに対し、実施の形態2の制御によれば、スワールが強いほど、EGR弁44の開度を制御するためのフィードバックゲインを大きくすることができるので、そのような応答性の悪化を確実に防止することができる。このため、スワール強化制御が行われている場合であっても、EGR率を目標値に迅速かつ安定的に収束させることができるので、NOxの排出を有効に抑制することができるとともに、スモークの排出も回避することができる。
また、ディーゼル機関10では、上記スワール強化制御以外にも、種々の目的で、吸気弁52や排気弁56の開時期や閉じ時期を早くしたり遅くしたりする制御が行われる場合がある。そのような場合にも、吸気弁52や排気弁56のバルブタイミングの変更に伴って、内部EGR量や吸気系の流量係数が変化する。内部EGR量や吸気系の流量係数が変化すれば、前述したのと同様の理由により、EGR率を適切に目標値に収束させるために必要なフィードバックゲインの値は変化する。図10に示すルーチンの処理によれば、内部EGR量と流量係数とに基づいてフィードバックゲイン(比例ゲインKp)を算出することとしているので、スワール強化制御の実行時に限らず、吸気弁52や排気弁56の開時期や閉じ時期が変更される他の任意の制御が行われている場合であっても、上記と同様の効果を得ることができる。このため、様々な運転状態に対応可能である。
また、本実施の形態2によれば、吸気弁52や排気弁56の開時期や閉じ時期が変更される他の種々の制御の各々に対して別々にフィードバックゲイン(比例ゲインKp)のマップを用意する必要はないので、マップが大きくなり過ぎることもない。また、図10に示すルーチンの処理で算出した内部EGR量や流量係数の値は、他の制御において利用することもできるので、無駄なく有効に活用することができる。また、他の制御において内部EGR量や流量係数の値が算出されている場合には、その値を本実施形態の制御で流用するようにしてもよく、そうすれば、本実施形態のルーチンでの内部EGR量や流量係数の算出処理を省略可能である。
なお、上述した実施の形態2においては、吸気弁52の片弁早閉じを行うことによってスワール強化制御を行うようにしているが、スワールを強化する手法はこれに限定されるものではない。例えば、吸気ポート35に設けたスワール制御弁(図示せず)の開度を変えることでスワールを強くしたり、吸気弁52のリフト量を変更可能な吸気可変動弁機構54を備えている場合には一方の吸気弁52のリフト量を小さくすることでスワールを強くしたりしてもよい。
また、上述した実施の形態2においては、ECU50が、上記ステップ120〜126の処理を実行することにより前記第1の発明における「ゲイン設定手段」が、上記ステップ122の処理を実行することにより前記第4の発明における「内部EGR量推定手段」が、上記ステップ124の処理を実行することにより前記第4の発明における「流量係数算出手段」が、上記ステップ126の処理を実行することにより前記第4の発明における「フィードバックゲインを大きくする手段」が、それぞれ実現されている。また、ECU50が、上記スワール強化制御を実行することにより前記第5の発明における「スワール生成手段」が、上記ステップ126の処理を実行することにより前記第5の発明における「フィードバックゲインを大きくする手段」が、それぞれ実現されている。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 図1に示すシステムにおけるディーゼル機関の一つの気筒の断面を示す図である。 内部EGRを行う場合の吸気弁および排気弁のバルブタイミングを説明するための図である。 ECUがEGRフィードバック制御のコントローラとして機能する場合の制御系の一例を示す図である。 比較例の比例ゲインKpを説明するための図である。 実施の形態1の比例ゲインKpを説明するための図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 実施の形態2の比例ゲインKpを説明するための図である。 実施の形態2の比例ゲインKpを説明するための図である。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 EGR弁開度をフィードバック制御する場合の、吸入空気量の経時変化を示す図である。
符号の説明
10 ディーゼル機関
12 インジェクタ
14 コモンレール
18 排気通路
20 排気マニホールド
22 排気ポート
24 ターボ過給機
26 後処理装置
28 吸気通路
34 吸気マニホールド
36 吸気絞り弁
38 エアフローメータ
40 EGR通路
44 EGR弁
46 吸気圧センサ
47 背圧センサ
48 アクセル開度センサ
50 ECU
52 吸気弁
54 吸気可変動弁機構
56 排気弁
58 排気可変動弁機構
62 クランク角センサ
64 ピストン

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
    前記EGR通路を通って還流する外部EGRの量を可変とする外部EGR量可変手段と、
    前記EGR通路を通らずに前記内燃機関の内部において生ずる内部EGRの量を可変とする内部EGR量可変手段と、
    EGR量、EGR率、もしくはそれらと相関する量の、検出値または推定値と、その目標値との偏差をゼロにするべく、前記偏差をフィードバックして前記外部EGR量可変手段への制御信号を生成する外部EGRフィードバック制御手段と、
    を備え、
    前記外部EGRフィードバック制御手段は、外部EGR量と内部EGR量とを合わせた総EGR量のうちで内部EGR量が占める比率が高くなる運転条件であるほど、フィードバックゲインを大きくするゲイン設定手段を含むことを特徴とする内燃機関のEGR制御装置。
  2. 前記内部EGR量可変手段は、吸気弁および排気弁のバルブオーバーラップを正方向または負方向に大きくすることによって内部EGR量を増大させることのできる可変動弁機構を含み、
    前記外部EGR量可変手段は、前記EGR通路に配置されたEGR弁および/または前記吸気通路に配置された吸気絞り弁を含むことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のEGR制御装置。
  3. 前記ゲイン設定手段は、前記バルブオーバーラップが負方向または正方向に大きいほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段を含むことを特徴とする請求項2記載の内燃機関のEGR制御装置。
  4. 前記内燃機関は、吸気弁および/または排気弁の開弁特性を可変とする可変動弁機構を備え、
    前記ゲイン設定手段は、
    吸気弁および/または排気弁の現在の開弁特性に基づいて、内部EGR量を推定する内部EGR量推定手段と、
    吸気弁および/または排気弁の現在の開弁特性に基づいて、前記内燃機関の吸気系の流量係数を算出する流量係数算出手段と、
    前記推定された内部EGR量が多いほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段と、
    前記算出された流量係数が小さいほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関のEGR制御装置。
  5. 前記内燃機関は、筒内にスワールを生成させるためのスワール生成手段を備え、
    前記ゲイン設定手段は、前記スワール生成手段により生成されるスワールが強い場合ほど、前記フィードバックゲインを大きくする手段を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関のEGR制御装置。
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