JP2007301587A - 異形管の曲げ加工方法およびその曲げ加工装置、並びにそれらを用いた曲げ加工製品 - Google Patents

異形管の曲げ加工方法およびその曲げ加工装置、並びにそれらを用いた曲げ加工製品 Download PDF

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Abstract

【課題】異形管を3次元的に連続曲げする場合であっても、形状凍結性に優れ、効率的に曲げ加工することができる異形管の曲げ加工方法および装置を提供する。
【解決手段】異形管を、支持手段で保持し上流側から押し出しながら、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う異形管の曲げ加工方法であって、支持手段では異形管の形状に応じて支持位置を制御し、下流側に設けられた可動ローラダイスで異形管をクランプし、当該可動ローラダイスの位置または/および移動速度を制御しつつ、可動ローラダイスの入り側であり異形管の外周に配置した加熱手段および冷却手段を用いて、異形管を局部的に加熱し、前記加熱部に曲げモーメントを付与した後、急冷する異形管の曲げ加工方法、およびその方法を適用できる曲げ加工装置である。
【選択図】図4

Description

本発明は、異形管の曲げ加工方法およびその曲げ加工装置に関し、さらに詳しくは断面形状が軸方向に変化することにより、軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少するテーパ丸管、テーパ角管、およびこれらの組み合わせからなるテーパ管を対象とし、曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げ加工ができる異形管の曲げ加工方法およびその曲げ加工方法を適用できる加工装置、さらにそれらを用いた曲げ加工製品に関するものである。
近年、自動車業界においては、地球環境への配慮とともに車体に対する安全性の要求が高まり、自動車部品の軽量化および高強度化に対する要請がますます厳しくなっており、燃費向上や衝突安全性の向上といった観点から、自動車用部品の開発が進められている。このような要請に対応するため、従来とは全く異なる強度レベルからなる高張力鋼板、例えば、引張強さが780MPa以上、さらに900MPa以上という高強度の素材が用いられるようになっている。
一方、これらの素材の高強度化とともに、従来の自動車用部品の構造を見直すことも行われている。例えば、特許文献1には、センターピラーを対象にして部品構造を見直す提案が示されている。具体的には、車体のセンターピラー部は、上端側が小径、下端側が大径であり、上端側から下端側へ向かい外周形状(断面)が漸次変化する細長の形状をなしていることから、通常のプレス品のスポット溶接による組み立て構造を、テーパ形状の異形管を用いた閉断面構造に変更することにしている。
従来から用いられていた開断面構造の部品を閉断面にすることにより、部品全体としての剛性や衝突特性が大幅に向上させることができる。さらに、特許文献1に開示される例によれば、通常のストレート管の形状に替えて、断面形状が長手軸方向に変化するテーパ形状の異形管を素材に用いることにより、部品の製造工程を簡略化できるとともに、剛性を高め必要な部品強度を確保できることから、自動車用部品の装着スペースや重量を減少させることができる。
ところで、上述の通り、製造工程上のメリットを有する異形管であっても、多様な自動車用部品に適用しようとすると、所定形状の異形管に曲げ加工を施すことが必要になる。このような異形管の曲げ加工技術の開発要求に対して、特許文献2には、テーパ管の如き棒状素材の曲げ加工方法として、素材と同一の半円形の溝を有し、この溝が周上除々に半径を変え、素材と接触する部分の半径が素材の半径と常に等しくなるように成形されたローラとダイスによって、テーパ形状の棒状素材を挟み、ローラを回転させながらダイスに沿わせて曲げ変形を行う方法が開示されている。
しかしながら、高張力鋼板を素材とした異形管を曲げ加工する場合には、スプリングバックが大きくなるため、加工製品の曲げ精度を確保することが難しくなる。このため、曲げ加工後のスプリングバック量の見込み違いによる金型の作り直しや、曲げ加工後の不良品の矯正作業など付加的な作業工程が必要になる場合がある。特に、曲げ方向が3次元的に異なる加工製品の矯正作業は、経験に基づく作業にならざるを得ず、作業者の個人技能に依存し極めて能率が悪くなる。
前述した自動車部品での軽量化および高強度化の要請に対応するため、最近では、引張強さが900MPaを超えて、1300〜1500MPa級の超ハイテンと呼ばれる部材も盛んに採用されるようになる。例えば、特許文献3では、特定の鋼組成を有する鋼板を、A点以上に加熱・保持後、最終の製品形状へのプレス成形を行う途中または成形後に金型内で、成形部材のMs点までの冷却速度が臨界冷却速度以上で、かつMs点から200 ℃までの平均冷却速度が25〜150 ℃/sの焼入れにより安定して高強度部材を得る熱間成形法を開示している。
しかしながら、特許文献3で開示される熱間成形法は、プレス成形部品を得る方法であるため、剛性や衝突特性を改善される閉断面の部品を製造するには、さらに溶接による組み立て工程が必要になる。また、テーパ形状の異形管を熱間成形で製造する場合には、閉断面構造の異形管を単にプレスで成形し冷却しても、外形面や断面形状が潰れ、良好な自動車部品の形状が得られない。
特開2001−321842号公報 特開昭49−94347号公報 特開2004−353026号公報
前述の通り、自動車用部品の構造見直しにともない、多様な自動車用部品に適用するために多岐にわたる曲げ形状からなる異形管の加工技術が要求されるようになる。一方、異形管の軽量化も考慮すれば、引張強さが900MPa以上の高強度部材を選定するのが望ましく、さらに1300MPa級以上の超ハイテン部材を選定するのがより望ましい。
かかる要請に対応すべく、冷間曲げ加工を適用して、引張強さが900MPa以上の高強度部材や、1300〜1500MPa級の超ハイテン部材で異形管を製造する場合には、被加工材の延性が乏しいことから、曲げ加工の可能範囲が極めて小さなものとなり、加工条件や部品寸法が著しく制限される。さらに、得られた製品部品には残留応力に起因する遅れ破壊やスプリングバックが生じ、加工不良が発生したり寸法精度が確保できないという問題が生じる。
また、熱間曲げ加工を適用して、引張強さが500〜700MPa程度の金属素管を出発材料として曲げ加工を行った後、熱処理によって強度を上げ、高強度の異形管を得ることが行われている。このような熱間曲げ加工では被加工材の送り速度や冷却速度の管理が必要になるが、実操業では充分な制御が困難であることから精度よく焼入を行うことができない。このため、不均一な歪み発生を防止することができず、曲げ形状にばらつきが発生するとともに、引張強さが900MPa以上の高強度部材では残留応力にともなう遅れ破壊も発生し、自動車用部品として不適となっていた。
すなわち、従来から、部品の剛性を高めるとともに装着スペースや重量を減少させるために、冷間曲げ加工または熱間曲げ加工により、引張強さが900MPa以上の高強度部材や、1300〜1500MPa級の超ハイテン部材に相当する異形管を対象として、曲げ加工部を有する自動車用部品の加工方法について提案がなされていない。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、異形管の熱間曲げ加工を適用して、自動車用部品の構造の多様化にともない、多岐にわたる曲げ形状が要求される場合(例えば、3次元的な曲げ加工)であっても、さらに高強度の異形管の曲げ加工が必要な場合(例えば、引張強さが900MPa以上、望ましくは1300〜1500MPa級)であっても、加工歩留まりや曲げ精度(遅れ破壊やスプリングバックの抑制)を確保することができるとともに、作業効率に優れた(例えば、金型の作り直しや矯正作業の削除、高能率)異形管の曲げ加工方法およびそれを適用できる曲げ加工装置を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の(1)〜(4)に記載の異形管の曲げ加工方法および異形管の曲げ加工装置、並びに(5)に記載の曲げ加工製品を要旨としている。
(1)軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管を、支持手段で保持し上流側から逐次または連続的に押し出しながら、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う異形管の曲げ加工方法であって、前記支持手段では前記異形管の形状に応じて支持位置を制御し、前記支持手段の下流側に設けられた可動ローラダイスで前記異形管をクランプし、当該可動ローラダイスの位置または/および移動速度を制御しつつ、前記可動ローラダイスの入り側であり前記異形管の外周に配置した加熱手段および冷却手段を用いて、前記異形管の一部分ないし全部分に亘り局部的に加熱し、前記加熱部に曲げモーメントを付与した後、急冷することを特徴とする異形管の曲げ加工方法である。
(2)軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管を保持する支持手段と、前記異形管を上流側から逐次または連続的に送り移動させる押し出し装置とを備え、前記押し出し装置による前記異形管の送り移動に合わせ、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う異形管の曲げ加工装置において、前記支持手段には前記異形管の形状に応じて支持位置を制御する手段を備え、前記支持手段の下流側に設けられて前記異形管をクランプし、当該クランプ位置または/およびその移動速度を制御する可動ローラダイスと、前記可動ローラダイスの入り側であり前記金属材の外周に配置されて前記異形管の一部分ないし全部分に亘り局部的に加熱する加熱手段と、前記可動ローラダイスの入り側であり前記異形管の外周に配置されて加熱部に曲げモーメントが付与された前記異形管を急冷する冷却手段を備えることを特徴とする異形管の曲げ加工装置である。
(3)上記(1)の異形管の曲げ加工方法、または上記(2)の異形管の曲げ加工装置にあっては、可動ローラダイスが上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することが望ましい。
同様に、加熱手段および冷却手段が上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することが望ましい。
(4)上記(1)の異形管の曲げ加工方法、または上記(2)の異形管の曲げ加工装置は、可動ローラダイスまたは/および前記支持手段が周方向への回転機構を有しており、異形管を押し出しながら捩り加工を付与することができる。
(5)上記(1)〜(4)の異形管の曲げ加工方法によって、または上記(1)〜(4)の異形管の曲げ加工装置を用いて加工熱処理された、引張強さが900Mpa以上であることを特徴とする曲げ加工製品である。
本発明の異形管の曲げ加工方法および曲げ加工装置によれば、多岐にわたる曲げ形状が要求され、曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げ加工する場合であっても、さらに高強度の異形管の曲げ加工が必要な場合であっても、均一な冷却を行うことにより、高強度であっても形状凍結性がよく所定の硬度分布を有する異形管を得ることができる。さらに、可動ローラダイスは回転可能に異形管をクランプして曲げ加工を行うことから、曲げ加工精度を確保することができるとともに、作業能率に優れた曲げ加工が可能になる。
本発明の異形管の曲げ加工方法の具体的な内容を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明が対象とする異形管の形状例を示す図であり、(a)は全長形状を、(b)は大周長側端部の形状を示している。図1に示す異形管1の形状例では、断面形状は矩形であり、この断面形状が軸方向に変化することにより、軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少するテーパ形状を構成する。本発明が対象とする異形管1は、断面形状は矩形に限定するものではなく、円形、または矩形に近似する形状であってもよく、テーパ丸管、テーパ角管、およびこれらの組み合わせからなるテーパ管とすることができる。
本発明の曲げ加工方法では、前記図1に示す異形管1に曲げ加工を施すことにより、例えば、自動車用部品としてブレーキペダルの他にも、シートフレームなどの車体補強部材、またはレンフォースなどの車体骨格部材として適用することができる。
図2は、本発明の異形管の曲げ加工方法を実施するための全体構成を模式的に示す図である。本発明の曲げ加工方法は、支持手段2で保持された被加工材である異形管1を上流側から逐次または連続的に押し出しながら、支持手段2の下流側で曲げ加工を行う方法である。
図2に示す全体構成では、異形管1を保持するための二対の支持手段2と、その上流側には異形管1を逐次または連続的に送り移動させる押し出し手段(図示せず)が配置され、一方、二対の支持手段2の下流側には異形管1をクランプし、当該クランプ位置または/および移動速度を制御させるための可動ローラダイス3が配置される。このとき、支持手段2では異形管1のテーパ形状に応じて支持位置が制御される。
そして、可動ローラダイス3の入り側には、異形管1の外周に配置されて局部的に加熱する手段として高周波加熱コイル4と、加熱部に曲げモーメントが付与された異形管1を急冷する冷却装置5が配置されている。
図2に示す全体構成では、A−A矢視に示すように、断面形状が矩形(角管)の異形管1を適用していることから、支持手段2として矩形ロールを採用しているが、これに限定されるものではなく、適用される異形管の断面形状が円形(丸管)の場合には、異形管の断面形状に合致する円形ロールを採用することができる。さらに、支持手段2として支持ブロックも採用できる。
図3は、支持手段として採用できる支持ブロックの形状を示す図であり、(a)はブロック出側正面図を、(b)はブロック側面図を示している。被加工材となる異形管が前記図1に示す形状例であって、長手方向に肉厚が一定であれば、支持手段2として図3に示すような支持ブロック2bを用いることができる。支持ブロック2bを異形管のテーパ角度に合わせた金型ブロックで構成し、異形管1の形状に応じて、油圧シリンダーまたはエアーシリンダー9などで押し付ける構造にすればよい。
また、前記図2に示す全体構成では、異形管1の曲げ加工端を小周長側端部で構成しているが、本発明ではこのセット状態に限定されるものではなく、加工端を大周長側端部で構成し、押し出し手段による押出側を小周長側端部で構成することができる。また、支持手段2としては、前記図2に示すように、二対の矩形ロール2で構成するのに限定されず、一対または二対を超える複数対で構成することができる。
本発明の曲げ加工方法では、異形管1の支持手段2として図2に示す矩形ロール、図3に示す支持ブロック、または円形ロールのいずれも採用することができるが、以下では説明の整合を図るため、異形管としてテーパ角管を用い、矩形ロールを採用した場合の実施形態とその作用を示す。しかし、矩形ロールに替えて円形ロールを採用する場合にも同様の作用が得られる。
図4は、本発明の曲げ加工方法における加工工程とその工程を行う装置構成を説明する図であり、(a)は曲げ加工開始時、(b)は曲げ加工時、および(c)は曲げ加工終了時における構成をそれぞれ示している。装置構成として、異形管1を保持する二対の矩形ロール2と、その下流側には可動ローラダイス3とが配置され、可動ローラダイス3の入り側には加熱装置4および冷却装置5が配置される。
図4(a)に示す曲げ加工開始時には、二対の矩形ロール2を通過した異形管1は可動ローラダイス3でクランプされ、加熱装置として異形管1の外周に配置した高周波加熱コイル4を用いて、異形管1を局部的に加熱される。局部的な加熱により異形管1の曲げ加工部の降伏点が低下し、変形抵抗が低下するので、可動ローラダイスによる異形管1の曲げ加工が容易となる。
図4に示す異形管1では、異形管1の先端部より曲げ加工を施す必要があるため、曲げ加工端にダミー材1aを取り付けている。ダミー材1aは異形管1の先端部、または後端部の両方または片方に取り付ければよく、ダミー材1aを取り付けることにより、異形管1の先端部または後端部の曲げ加工が可能になる。ダミー材1aとしては、非磁性材料を用いるのが望ましい。
なお、曲げ加工端に取り付けるダミー材に関し、クランプ形状を工夫することや、先端または後端部に加熱を行わない曲げ部分を構成することによって、ダミー材を省略することができる。
図4(b)に示す曲げ加工時に移行するのにともない、可動ローラダイス3の作用により曲げ加工が容易となった加熱部に曲げモーメントを付与し、異形管1に所定の曲げ加工を加えた後、冷却装置5から冷却媒体を噴射して急冷し、または、必要に応じて焼入を行う。
異形管1の曲げ加工に際しては、テーパ形状の異形管1の押し出しにともない被加工材の加熱面と高周波加熱コイル4との距離が変化するため、局部加熱される領域での温度が長手方向に亘り不均一となるおそれがある。これを防止するため、加熱面と高周波加熱コイル4との距離に応じて押し出し速度を変化させるか、また、異形管1の長手方向の肉厚が均一である場合には、後述する加熱装置4のチルド機構を援用して、加熱面と高周波加熱コイル4との距離を略一定になるように制御することもできる。
図5は、4分割した高周波コイルを用いて被加工材を加熱する場合の構成例を示す図である。テーパ形状の異形管1の押し出しにともない局部加熱される領域での温度が長手方向に亘り不均一となるのを防止するため、高周波加熱コイルの分割コイル4a、4b、4c、4dの一部または全部の出力を変化させたり、分割コイル4a、4b、4c、4dと異形管1との距離を変化させることができる。
前記図4(c)に示す曲げ加工完了時には、可動ローラダイス3による曲げ加工への作用をなくし、被加工材の加熱部への曲げモーメントの付与を解消する。支持手段2には異形管1の形状に応じて支持位置を制御する手段2aを備えられており、曲げ加工開始時〜曲げ加工終了時にいたる全行程において支持位置が制御され、油圧またはエアー圧などを用いて異形管1を支持する。また、可動ローラダイス3による異形管1のクランプも、制御手段3aを設け油圧またはエアー圧などの押付け力によって異形管1を保持する。
図6は、本発明の曲げ加工方法を行うための加熱装置および冷却装置の概略構成例を示す図である。加熱装置として、加熱部を形成すべき異形管の外周に異形管1の矩形断面に相似する環状の高周波加熱コイル4を配置して、異形管1の一部分ないし全部分に亘り局部的に塑性変形が可能となる温度に加熱した後、冷却装置5から冷却媒体を噴射して急冷を行う。さらに、必要に応じて、異形管1を焼入が可能な温度域に加熱した後、冷却速度を確保し焼入を行うことができる。
図6に示す実施形態では、加熱装置4と冷却装置5を一体として位置制御する構成例を示しているが、この一体で位置制御する構成に限定されるものではなく、それぞれが独立にシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構を有することにより、個別に位置制御する構成を採用することができ、この場合にはより高精度の製品を得ることが可能になる。
図6に示す加熱装置4および冷却装置5の構成を採用することにより、焼入をする場合には、異形管1を逐次または連続的にA変態点以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで加熱を行うことができ、さらに局部的な加熱部に可動ローラダイス3を用いて塑性変形させ、その直後に冷却媒体を噴射することにより、100℃/sec以上の冷却速度を確保することができる。
したがって、曲げ加工が施された異形管は、優れた形状凍結性および安定した品質を確保できる。例えば、低強度の金属素材を出発材料として曲げ加工を行った場合でも、均一焼入によって強度を上げ、引張強さ900MPa以上の異形管、さらに1300MPa級以上に相当する異形管を得ることができる。
本発明の曲げ加工方法では、加熱装置4により異形管1の一部分ないし全部分に亘り局部的に塑性変形が可能となる温度に加熱した後、または焼入が可能な温度域に加熱した後、冷却装置5から冷却媒体を噴射して急冷または焼入を行う。すなわち、図6に示す加熱装置4および冷却装置5を用いることにより、異形管の全長に亘る領域での熱処理に限定されず、必要に応じて加熱部および冷却部を一部の領域に限定することもできる。なお、異形管は形状の問題で不均一な冷却になる場合には、例えば水切り装置や冷却媒体の流量制御などを行えば、均一な冷却が可能である。
図7は、本発明の曲げ加工方法に適用できる可動ローラダイスの形状例を示す図であり、(a)は異形管の断面形状が矩形である場合に1対の矩形ロールで構成した形状を示し、(b)は異形管断面形状が矩形である場合に4ロールで構成した形状を示している。可動ローラダイス3のロール型式は、異形管1の断面形状に応じて設計することができる。さらに、前述の通り、異形管の断面形状が矩形である場合には、円形ロールを使用するのが望ましい。
本発明の曲げ加工方法は、可動ローラダイスが上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することが望ましい。これにより、異形管の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が二次元的に異なる連続曲げ(例えば、S字曲げ)の場合、さらに曲げ方向が三次元的に異なる連続曲げの場合であっても、効率的に曲げ加工することができる。
図8は、本発明が採用する可動ローラダイスの上下方向および左右方向へのシフト機構、並びに周方向への回転機構の構成例を説明する図である。被加工材である異形管1は、4ロールで構成される可動ローラダイス3によりクランプされる。上下方向へのシフト機構は駆動モータ6の作動により構成され、左右方向へのシフト機構は駆動モータ7の作動により構成される。また、周方向への回転機構は、駆動モータ8の作動により構成される。
図8では、可動ローラダイス3を上下方向および左右方向に傾斜させるチルト機構の構成を示していないが、本発明で採用するチルト機構は特に限定する構成を必要とするものではなく、慣用される構成であればよい。
図8に示す可動ローラダイス3には回転機構を設けているが、可動ローラダイス3に回転機構を設けない場合であっても、支持ロール2と送り機構に回転機構を設けることによって、可動ローラダイス3に回転機構を設けるのと同様の作動を行うことができる。本発明では、可動ローラダイス3に回転機構を設けるのと同時に、支持ロール2と送り機構に回転機構を設けることもできる。
本発明の曲げ加工方法では、加熱手段および冷却手段が上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有することができる。上記可動ローラダイスと加熱手段および冷却手段との動作を同調させることが可能となり、これらの同調により、さらに精度良く均一な曲げ加工が可能になる。
本発明の曲げ加工方法では、異形管1にねじり変形を付加するために、前記図8に示すように、その加工装置に可動ローラダイス3を周方向へ回転させる機構を設けることができる。これにより、異形管の曲げ加工に併せて、異形管にねじり変形を与えることができる。
本発明の異形管の曲げ加工方法および曲げ加工装置によれば、多岐にわたる曲げ形状が要求され、曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げを加工する場合であっても、さらに高強度の異形管の曲げ加工が必要な場合であっても、均一な冷却を行いことにより、高強度であっても形状凍結性がよく所定の硬度分布を有する異形管を得ることができる。
しかも、可動ローラダイスは回転可能に異形管をクランプして曲げ加工を行うことから、曲げ加工精度を確保することができるとともに、作業能率に優れた曲げ加工が可能になる。これにより、一層、高度化する自動車部品の曲げ加工技術として、広く適用することができる。
本発明が対象とする異形管の形状例を示す図であり、(a)は全長形状を、(b)は大周長側端部の形状を示している。 本発明の異形管の曲げ加工方法を実施するための全体構成を模式的に示す図である。 支持手段として採用できる支持ブロックの形状を示す図であり、(a)はブロック出側正面図を、(b)はブロック側面図を示している。 本発明の曲げ加工方法における加工工程とその工程を行う装置構成を説明する図であり、(a)は曲げ加工開始時、(b)は曲げ加工時、および(c)は曲げ加工終了時における構成をそれぞれ示している。 4分割した高周波コイルを用いて被加工材を加熱する場合の構成例を示す図である。 本発明の曲げ加工方法を行うための加熱装置および冷却装置の概略構成例を示す図である。 本発明の曲げ加工方法に適用できる可動ローラダイスの形状例を示す図であり、(a)は異形管の断面形状が矩形である場合に1対の矩形ロールで構成した形状を示し、(b)は異形管断面形状が矩形である場合に4ロールで構成した形状を示している。 本発明が採用する可動ローラダイスの上下方向および左右方向へのシフト機構、並びに周方向への回転機構の構成例を説明する図である。
符号の説明
1:異形管、 2:支持手段
3:可動ローラダイス、 4、加熱手段、加熱装置、高周波加熱コイル
5:冷却手段、冷却装置、 6、7、8:駆動モータ
9:油圧シリンダー、エアーシリンダー
1a:ダミー材、 2a、3a:制御手段
2b:支持ブロック
4a、4b、4c、4d:分割コイル

Claims (10)

  1. 軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管を、支持手段で保持し上流側から逐次または連続的に押し出しながら、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う異形管の曲げ加工方法であって、
    前記支持手段では前記異形管の形状に応じて支持位置を制御し、
    前記支持手段の下流側に設けられた可動ローラダイスで前記異形管をクランプし、当該可動ローラダイスの位置または/および移動速度を制御しつつ、
    前記可動ローラダイスの入り側であり前記異形管の外周に配置した加熱手段および冷却手段を用いて、前記異形管の一部分ないし全部分に亘り局部的に加熱し、前記加熱部に曲げモーメントを付与した後、急冷することを特徴とする異形管の曲げ加工方法。
  2. 前記可動ローラダイスが上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の異形管の曲げ加工方法。
  3. 前記加熱手段および冷却手段が上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の異形管の曲げ加工方法。
  4. 前記可動ローラダイスまたは/および前記支持手段が周方向への回転機構を有しており、前記異形管を押し出しながら捩り加工を付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異形管の曲げ加工方法。
  5. 軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管を保持する支持手段と、前記異形管を上流側から逐次または連続的に送り移動させる押し出し装置とを備え、前記押し出し装置による前記異形管の送り移動に合わせ、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う異形管の曲げ加工装置において、
    前記支持手段には前記異形管の形状に応じて支持位置を制御する手段を備え、
    前記支持手段の下流側に設けられて前記異形管をクランプし、当該クランプ位置または/およびその移動速度を制御する可動ローラダイスと、
    前記可動ローラダイスの入り側であり前記金属材の外周に配置されて前記異形管の一部分ないし全部分に亘り局部的に加熱する加熱手段と
    前記可動ローラダイスの入り側であり前記異形管の外周に配置されて加熱部に曲げモーメントが付与された前記異形管を急冷する冷却手段を備えることを特徴とする異形管の曲げ加工装置。
  6. 前記可動ローラダイスが上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を具備することを特徴とする請求項5に記載の異形管の曲げ加工装置。
  7. 前記加熱手段および冷却手段が上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、および左右方向に傾斜するチルト機構のうち少なくとも1以上の機構を具備することを特徴とする請求項5または6に記載の異形管の曲げ加工装置。
  8. 前記可動ローラダイスまたは/および前記支持手段が周方向への回転機構を具備することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の異形管の曲げ加工装置。
  9. 上記請求項1〜4のいずれかに記載の異形管の曲げ加工方法によって加工熱処理が施された、引張強さが900Mpa以上であることを特徴とする曲げ加工製品。
  10. 上記請求項5〜8のいずれかに記載の異形管の曲げ加工装置を用いて加工熱処理された、引張強さが900Mpa以上であることを特徴とする曲げ加工製品。
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