JP2007300914A - カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼbを細胞表層に提示する酵母 - Google Patents

カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼbを細胞表層に提示する酵母 Download PDF

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Abstract

【課題】安定かつ安価なCALBを提供する。
【解決手段】カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)を細胞表層に提示し、かつリパーゼ活性を示し得る酵母。酵母に提示されるCALBは、特定の塩基配列の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは該アミノ酸配列の特定部位のアミノ酸が置換されたポリペプチドを含む。酵母の細胞表層CALBは、熱安定性が高く、高いリパーゼ活性を有する。上記酵母を用いて乳酸およびアルコールから乳酸エステルを製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼBを細胞表層に提示する酵母に関する。
担子菌類酵母カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)は、2種類の異なるリパーゼを産生し、これらは、AおよびBの名称で区別されており、それぞれ省略した形でCALAおよびCALBと呼ばれている。これらの酵素は、極限状態に生育する微生物から極端な特性を持った新規酵素を発見する狙いで、南極で単離された菌が起源であり、実際にCALAもCALBも極めて独特の性質を示す(非特許文献1)。
CALBの結晶構造は、1994年にUppenbergらによって明らかにされている(非特許文献2)。他のリパーゼまたはエステラーゼとは相同性が低いが、典型的な加水分解酵素と同じファミリーに属し、活性部位においてSer-His-Aspの触媒トライアードを形成する。CALBは、317アミノ酸残基で構成され、分子量は33kDaであり、リパーゼの中では比較的コンパクトなタンパク質である。タンパク質のプロセッシングの過程において重要であるプレプロ領域は、18アミノ酸のシグナルペプチドおよび7アミノ酸のプロペプチドを含む配列からなると推測されている(非特許文献2)。
ほとんどのリパーゼは、基質認識の際に、「interfacial activation(界面活性)」と呼ばれる特有の現象を示す。この活性化現象は、鍋蓋に似ていることからリド(lid)と呼ばれる特定の部位による開閉の動きであり、リパーゼにとってしばしば不可欠である。CALAは、小さいながらも同様の現象を示すが、CALBは、リド部位を持たず、このような動きはほとんど示さない(非特許文献1)。その代わりに、リドに似たフレキシブルな部位がタンパク質の表面に存在し、基質認識の際に、わずかながら動くと推測されている。
また、微生物および動物由来の多くのリパーゼでは、触媒残基セリンの周囲に共通配列G−X−S−X−Gが保持されているが、CALBでは、G−X−S−X−Gは保存されず、最初のグリシンがスレオニンに置換した形で、T−W−S−Q−Gとなっている(非特許文献2)。
このように、一般的なリパーゼの中で、CALBは極めて珍しい構造や性質を示す。
CALBは他のリパーゼに比べて、未だ産業的にはあまり利用されていないが、最近の研究から、様々な化学反応に適用できることが分かってきたため、急速にその利用価値は拡大している。例えば、エステル結合の分解反応、エステル合成反応、エステル交換反応について、CALBを用いた多くの報告がある。例えば、エステル結合の分解反応では、リパーゼの高いエナンチオン選択性を利用して、医薬品の原料の合成などに用いられている(非特許文献3)。また、エステル合成反応では、有機溶媒中または高温条件下での反応のために、安定性が極めて高い固定化酵素が利用されている(非特許文献4〜6)。さらに、アシル基のドナーとして、アルコールに限らず、糖などを用いて、機能性食品や医薬品の開発にも適用されている(非特許文献4および7〜9)。エステル交換反応においても、CALBの2級アルコールに対する高い基質特異性を利用して、様々な反応に適用されている(非特許文献10および11)。あるいは、CALBの変異体が、ミカエル(Michael)付加やアルドール(Aldol)付加などの付加反応にも触媒作用を示すことが報告されている(非特許文献12および13)。さらに、オキシアニオンホールに対する変異体が、アルドラーゼ活性を示すことが報告されている。
CALBの触媒反応に関する現在までの報告のほとんどにおいて、Novozym435(Novo-Nordisk)を代表とする固定化リパーゼが利用されている(非特許文献3〜9および14〜16)。固定化酵素は、安定性が非常に高いために利用価値が大きい反面、特別な化学修飾により製造されているために、非常にコストが高いという問題点がある。
CALBの発現系については、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、メタノール資化酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)または酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyce cerevisiae)を用いた細胞外分泌系が報告され、熱安定性および酸化条件下での安定性または基質特異性が改変された変異体が取得されている(非特許文献11、17〜23)。
近年、大腸菌、ファージなどの種々の生物種を支持体としたディスプレイ法が、新規なタンパク質発現系として注目されている。目的のタンパク質を個々の細胞の表層や担体などの上に安定な形で提示させるディスプレイ法は、従来の細胞内発現や細胞外分泌系とは異なり、抽出や精製、濃縮といった煩雑な操作をすることなく、細胞や担体の回収という簡便な操作によって目的タンパク質の機能評価を行うことが可能である。
種々のタンパク質(酵素を含む)について、該タンパク質を細胞表層に提示した酵母が作出されている(例えば、特許文献1〜12)。目的とするタンパク質を酵母細胞表層に提示させることにより、タンパク質の取り扱いが容易になる。例えば、特許文献1には、リパーゼ遺伝子を酵母表面提示ベクターにクローニングして変異誘発PCRを行い、リパーゼ遺伝子変異を誘導し、形質転換体表面に発現した変異リパーゼの活性を測定することにより、高活性の変異リパーゼを迅速かつ簡便にスクリーニングする方法により、高リパーゼ活性を有するCALB変異体を作出した旨が記載されている。本発明者らも、細胞表層工学の手法を用いて、リパーゼの細胞表層提示に成功している(特許文献2および7、ならびに非特許文献24)。
特表2005−538711号公報 特開平11−290078号公報 特開2002−17368号公報 特開2002−176979号公報 特開2002−253267号公報 特開2003−235579号公報 特開2004−49014号公報 特開2004−305096号公報 特開2004−305097号公報 特開2005−58010号公報 特開2005−176605号公報 特開2005−245335号公報 O. Kirkら、Organic Process Research & Development, 2002年, 6巻, 446-451頁 J. Uppenbergら, Structure, 1994年, 15巻, 293-308頁 M. J. Homannら, Advanced Synthesis and Catalysis, 2001年, 343巻, 744-749頁 Y. Shimadaら, Journal of Bioscience and Bioengineering, 2001年, 92巻, 19-23頁 F. Secundoら, Biotechnology and Bioengineering, 2001年, 73巻, 157-163頁 Y. Meiら, Biomacromolecules, 2003年, 4巻, 70-74頁 M. P. Bousquetら, Biotechnology and Bioengineering, 1999年, 62巻, 225-234頁 S. Adachiら, Journal of Bioscience and Bioengineering, 2005年, 99巻, 87-94頁 G. Afachら, Bioscience Biotechnology Biochemistry, 2005年, 69巻, 833-835頁 D. Rotticciら, Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 1998年, 5巻, 267-272頁 A. O. Magnussonら, ChemBioChem, 2005年, 6巻, 1-6頁 P. Carlqvistら, ChemBioChem, 2005年, 6巻, 331-336頁 M. Svedendahlら, Journal of American Chemical Society, 2005年, 127巻, 17988-17989頁 L. Araceilら, Applied Microbiology Biotechnology, 2004年, 65巻, 373-376頁 N. Weberら, Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2004年, 52巻, 5347-5353頁 W. Duら, Biotechnology Applied Biochemistry, 2004年, 40巻, 187-190頁 J. C. Rotticci-Mulderら, Protein Expression & Purification, 2001年, 21巻, 386-392頁 S. A. Patkarら, Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 1997年, 3巻, 51-54頁 S. A. Patkarら, Chemistry and Physics of Lipids, 1998年, 93巻, 95-101頁 N. Zhangら, Protein Engineering, 2003年, 16巻, 599-605頁 W. C. Suenら, Protein Engineering, Design & Selection, 2004年, 17巻, 133-140頁 D. Rotticciら, ChemBioChem, 2001年, 2巻, 766-770頁 Z. Qianら, Journal of American Chemical Society, 2005年, 127巻, 13466-13467頁 S. Shiragaら, Appl. Environ. Microbiol., 2005年, 71巻, 4335-4338頁
本発明は、エステル結合の分解反応、エステル合成反応、エステル交換反応、様々なキラル化合物の不斉合成などに有用な触媒であるリパーゼとして、活性が高くかつ安価なCALBを提供することを目的とする。
本発明は、配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列からなるカンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)またはその変異体を細胞表層に提示する酵母を提供する。
1つの実施形態では、上記変異体は、
配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列において、
(1)−2位のリジン残基および/または−1位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(3)−2位のリジン残基および/または−1位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換され、かつ308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
さらなる実施形態では、上記変異体は、以下からなる群から選択される:
配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列において、
(1)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3)308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(4)308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(5)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(6)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(7)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;および
(8)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
本発明はさらに、乳酸エステルの製造方法を提供し、この方法は、
上記酵母の存在下で、アルコールおよび乳酸を反応させる工程
を含む。
1つの実施態様では、上記アルコールはエタノールである。
別の実施態様では、上記反応工程は、30〜60℃下で行われる。
本発明によれば、リパーゼとしての活性の高いCALBを細胞表層に提示する酵母が提供される。本発明の細胞表層CALB提示酵母は、熱安定性が高い。
(カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)を細胞表層に発現し得るDNAの構築)
本発明によるカンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)は、例えば、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する酵素あるいはその変異体であり得る。このCALBの成熟体は、例えば、配列表の配列番号2の1位のロイシンから317位のプロリン残基までの317アミノ酸のアミノ酸配列からなり、そしてプロペプチドは、−7位のアラニン残基から−1位のアルギニン残基までの7アミノ酸のアミノ酸配列からなる。細胞表層の提示のためには、プロペプチドおよび成熟体をコードする塩基配列を発現させ得るようにプラスミドに含めることが望ましい。
本発明によるCALBにおいて、特に、配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列からなるポリペプチドに言及する場合、このポリペプチドを「野生型CALB」ともいう。
CALBの詳細な性質は、非特許文献1に記載されている。配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する酵素は、非特許文献1に記載の特性、特にリパーゼ活性を有していれば、その起源は問わない。配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列および配列番号1に記載の塩基配列は、カンジダ・アンタークティカLF 058株由来のCALBの配列であり、この配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、CALBを有する生物から取得することができる。遺伝子の取得には、当業者が通常用いるPCRやハイブリダイズスクリーニングが用いられる。また、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来のCALBをコードする塩基配列を単離することができる。上記塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of JAPAN(DDBJ)、EMBL、Gene-BankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いて、ホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNAもしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、CALBをコードする塩基配列を種々の生物から単離することもできる。
リパーゼ活性を大きく低下させることのない限り、この酵素は、置換・欠失・付加などによって、上記アミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸が異なるように改変または変異されていてもよい。このような改変または変異は、天然に生じるものであっても、または人工的に行うもの(例えば、部位特異的変異誘発)であってもよい。リパーゼ活性に影響し得る改変として、酵母の内在性プロテアーゼ(例えば、KEX2プロテアーゼ)による作用部位(例えば、リジン−アルギニン部位)の改変が挙げられる。CALBのC末端部が欠失されないことが好ましい。上記のようなアミノ酸残基の置換に用いられる核酸は、CALBを発現させるための宿主のコドン使用頻度に合わせ、設計され得る。
細胞表層に提示されるCALBとして、野生型CALBの変異体もまた用いられる。このような変異体としては、例えば、野生型CALBのアミノ酸配列に対して、配列表の配列番号2の−2位(プロペプチドの6位)のリジン残基および/または−1位(プロペプチドの7位)のアルギニン残基が置換されているポリペプチドが挙げられる。このリジン−アルギニン部位の置換後のアミノ酸は、KEXプロテアーゼによる認識を低く抑え、かつアミノ酸の性質が大きく変わらないことが好ましい。例えば、−2位(プロペプチドの6位)のリジン残基は変更されず、−1位(プロペプチドの7位)のアルギニン残基がリジン残基に置換され得る。また、−2位(プロペプチドの6位)のリジン残基および−1位(プロペプチドの7位)のアルギニン残基がアラニン残基に置換され得る。
また、野生型CALBのアミノ酸配列に対して、配列表の配列番号2の308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基も置換され得る。308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基は、CALBのC末端部に位置するリジン−アルギニン部位である。上記と同様に、置換後のアミノ酸は、KEXプロテアーゼによる認識を低く抑え、かつアミノ酸の性質が大きく変わらないことが好ましい。例えば、309位のアルギニン残基がリジン残基に置換され得る。また、308位のリジン残基および309位のアルギニン残基がそれぞれアラニン残基に置換され得る。このC末端部に位置するリジン−アルギニン部位は、上記プロペプチドのリジン−アルギニン部位と組み合わせて改変され得る。
本発明においては、発現したCALBを細胞膜へ導くために、CALBは、分泌シグナルをN末端に結合した状態で発現される。分泌シグナル配列は、一般に細胞外(ペリプラズムも含む)に分泌されるタンパク質(分泌性タンパク質)のN末端に結合している、疎水性に富んだアミノ酸を多く含むアミノ酸配列であり、通常、分泌性タンパク質が細胞内から細胞膜を通過して細胞外へ分泌される際に除去される。発現したCALBを細胞膜へ導くことができる分泌シグナル配列であれば、どのような分泌シグナル配列でも用いられ得、起源は問わない。例えば、分泌シグナル配列としては、グルコアミラーゼの分泌シグナル配列、酵母のα−またはa−アグルチニンのシグナル配列、CALB自身の分泌シグナル配列(例えば、配列番号2の−25位のメチオニン残基から−8位のアラニン残基までの18アミノ酸からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド)などが好適に用いられる。細胞表層結合性タンパク質に融合している他のタンパク質の活性に影響を及ぼさないのであれば、分泌シグナル配列およびプロ配列の一部または全部がN末端に残ってもよい。
細胞表層にCALBを提示するための要素について説明する。細胞表層にCALBを提示するための要素としては、(a)細胞表層局在タンパク質のGPIアンカー付着認識シグナル配列、および、(b)細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインが挙げられる。上述したように、プロペプチドを含むCALBの形態で細胞表層に固定されることが望ましい。
用いられ得る細胞表層局在タンパク質としては、酵母の性凝集タンパク質であるα−またはa−アグルチニン(GPIアンカーとして使用)、FLO1タンパク質(FLO1タンパク質は、N末端側のアミノ酸長を種々改変して、GPIアンカーとして使用し得る:例えば、FLO42、FLO102、FLO146、FLO318、FLO428など;Appl. Microbiol. Biotech.,60巻,469-474頁,2002年:なお、FLO1326とは、全長FLO1タンパク質を表す)、FLOタンパク質(GPIアンカー機能を有さず、凝集性を利用するFLOshortまたはFLOlong;Appl. Environ. Microbiol.,4517-4522頁,2002年)、ペリプラズム局在タンパク質であるインベルターゼ(GPIアンカーを利用しない)などが挙げられる。
まず、(a)について説明する。GPIアンカーにより細胞表層に局在するタンパク質をコードする遺伝子は、N末端側から順に、分泌シグナル配列、細胞表層局在タンパク質(糖鎖結合タンパク質ドメイン)、およびGPIアンカー付着認識シグナル配列をそれぞれコードする遺伝子を有している。細胞内でこの遺伝子から発現された細胞表層局在タンパク質(糖鎖結合タンパク質)は、分泌シグナルにより細胞膜外へ導かれ、その際、GPIアンカー付着認識シグナル配列は、選択的に切断されたC末端部分を介して細胞膜のGPIアンカーと結合して細胞膜に固定される。その後、PI−PLCにより、GPIアンカーの根元付近で切断され、細胞壁に組み込まれて細胞表層に固定され、細胞表層に提示される。
ここで、GPIアンカーとは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)と呼ばれるエタノールアミンリン酸−6マンノースα1−2マンノースα1−6マンノースα1−4グルコサミンα1−6イノシトールリン脂質を基本構造とする糖脂質をいい、PI−PLCとは、ホスファチジルイノシトール依存性ホスホリパーゼCをいう。
GPIアンカー付着認識シグナル配列とは、GPIアンカーが細胞表層局在タンパク質と結合する際に認識される配列であり、通常、細胞表層局在タンパク質のC末端あるいはその近傍に位置する。GPIアンカー付着認識シグナル配列としては、例えば酵母のα−アグルチニンのC末端部分の配列が好適に用いられる。上記α−アグルチニンのC末端から320アミノ酸の配列のC末端側には、GPIアンカー付着認識シグナル配列が含まれる。よって、このC末端から320アミノ酸の配列をコードするDNA配列が特に有用である。
したがって、例えば、分泌シグナル配列をコードするDNA−細胞表層局在タンパク質をコードする構造遺伝子−GPIアンカー付着認識シグナルをコードするDNA配列を有する配列において、この細胞表層局在タンパク質をコードする構造遺伝子の全部または一部の配列を、CALBをコードするDNA配列に置換することにより、GPIアンカーを介してCALBを細胞表層に提示するための組換えDNAが得られる。細胞表層局在タンパク質がα−アグルチニンである場合、上記α−アグルチニンのC末端から320アミノ酸の配列をコードする配列を残すように、CALBをコードするDNAを導入することが好ましい。このようなDNAを酵母に導入して発現させることによって細胞表層に提示された目的のタンパク質は、そのC末端側が表層に固定されている。
次に、(b)について説明する。糖鎖結合タンパク質ドメインとは、複数の糖鎖を有し、この糖鎖が、細胞壁中の糖鎖と相互作用または絡み合うことによって、細胞表層に留まることのできるドメインをいう。例えば、レクチン、レクチン様タンパク質などの糖鎖結合部位などが挙げられる。代表的には、GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメイン、FLOタンパク質の凝集機能ドメインが挙げられる。GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメインとは、GPIアンカリングドメインよりもN末端側にあり、複数の糖鎖を有し、凝集に関与していると考えられているドメインをいう。
この細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)と目的の発現タンパク質CALBとを結合することにより、細胞表層に目的の発現タンパク質CALBが提示される。目的の発現タンパク質は、細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)のN末端側にも、C末端側にも結合させることができる。本発明においては、(1)分泌シグナル配列をコードするDNA−CALBをコードする遺伝子−細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)をコードする構造遺伝子;あるいは(2)分泌シグナル配列をコードするDNA−細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)をコードする構造遺伝子−CALBをコードする遺伝子、を作製することにより、細胞表層にCALBを提示するための組換えDNAが得られる。凝集機能ドメインを利用する場合、GPIアンカーは細胞表層の提示には関与しないので、組換えDNA中に、GPIアンカー付着認識シグナル配列をコードするDNA配列は、一部のみ存在してもよいが、存在しなくてもよい。また、凝集機能ドメインを用いる場合は、ドメインの長さを調節しやすいため(例えば、FLOshortまたはFLOlongのいずれかを選択できる)、より適切な長さでCALBを細胞表層に提示できる点で、ならびにCALBのN末端またはC末端のどちらの側でも結合させることが可能な点で、非常に有用である。
(a)および(b)のいずれにおいても、CALBは、上記要素に直接結合されていてもよいし、リンカーを介して結合されていてもよい。このようなリンカーの設計および作製は、当業者が適宜なし得ることである。
上記の各種塩基配列を含むDNAの合成および結合は、当業者が通常用い得る技術で行われ得る。結合は、適切な制限酵素、リンカーなどを用いて行うことができる。
上記CALBを細胞表層に発現し得るDNAは、プラスミドの形態であることが望ましい。DNAの取得の簡易化の点からは、大腸菌とのシャトルベクターであることが好ましい。プラスミドの形態のDNAの出発材料としては、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製開始点(Ori)とColE1の複製開始点とを有しており、酵母選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、TRP、LEU2など)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有することがさらに好ましい。また、CALB構造遺伝子を発現させるために、この遺伝子の発現を調節するオペレーター、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーなどのいわゆる調節配列をも含んでいることが望ましい。例えば、グリセルアルデヒド3’−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のプロモーターおよびターミネーターが挙げられる。このような出発材料のプラスミドの例としては、GAPDH(グリセルアルデヒド3’-リン酸デヒドロゲナーゼ)プロモーター配列およびGAPDHターミネーター配列を含むプラスミドpYGA2270またはpYE22m、あるいはUPR-ICL(イソクエン酸リアーゼ上流領域)配列とTerm-ICL(イソクエン酸リアーゼのターミネーター領域)配列とを含むプラスミドpWI3などが挙げられる。
例えば、プラスミドpYGA2270またはpYE22mのGAPDHプロモーター配列とGAPDHターミネーター配列との間、あるいはプラスミドpWI3のUPR-ICLの配列とTerm-ICLの配列との間に、CALBをコードするDNAを挿入すれば、酵母に導入するために使用されるプラスミドベクターが製造される。
ベクターpGA11(Uedaら、Ann. NY. Acad. Sci., 1998年, 864巻, 528-537頁)に、ベクターpICAS1(Muraiら、Appl. Environ. Microbiol., 1998年, 64巻, 4857-4861頁)由来の断片(この断片には、グルコアミラーゼ遺伝子の分泌シグナルをコードする配列、制限酵素SacII、BglII、NcoI、XhoIが認識できるマルチクローニング部位、さらにα−アグルチニンのC末端から320アミノ酸をコードする配列が含まれる)を連結することにより得られるプラスミドベクターpCASは、酵母細胞表層提示用カセットベクターとして好適に使用される。
上記プラスミドが導入された宿主細胞において、CALBが細胞表層に固定されていることを確認するために、タグ(例えば、FLAGタグ)を発現させるようにすることもできる。このようなタグは、CALBの構造遺伝子の塩基配列の下流に、リンカーを用いて連結し得る。このようなリンカーの設計は、当業者が通常用いる手順に基づいて実施できる。
上記で説明した方法に基づいて作製したプラスミドの一例を図1に示す。図1に示したプラスミドpCAS-FLAGR-CALBは、GAPDHプロモーターとGAPDHターミネーターとの間に、分泌シグナルをコードする塩基配列、プロペプチドを含むCALBをコードする塩基配列、FLAGタグをコードする塩基配列、およびα−アグルチニンのC末端から320アミノ酸をコードする塩基配列が、この順で挿入された、プラスミドである。
(CALBを細胞表層に提示する酵母の作製)
CALBを細胞表層に提示する酵母(以下、単に「表層提示酵母」ともいう)は、上記DNAを酵母細胞に導入することにより得られる。「DNAの導入」とは、細胞の中にDNAを導入し、発現させることを意味する。DNAの導入には、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクション、エレクトロポレーションなどの方法がある。酵母細胞への導入の場合、具体的には、例えば、酢酸リチウムを用いる方法、プロトプラスト法などがある。
導入されるDNAは、プラスミドの形態で、あるいは宿主の遺伝子に挿入して、または宿主の遺伝子と相同組換えを起こして染色体に取り込まれてもよい。
宿主の酵母としては、プラスミド発現のためのマーカーを有し、CALBを細胞表層に提示し得る株であれば、特に限定されない。以下の実施例では、Saccharomyces cerevisiae MT8-1株を用いているが、本株に限定されない。
DNAが導入された酵母は、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、TRP、LEU2など)で選択され得、CALB活性を測定することにより選択される。CALBが細胞表層に固定されていることを確認するには、上記のように、タグ(例えば、FLAGタグ)をコードする配列を予めプラスミド中に挿入し、抗タグ抗体(および必要に応じて蛍光標識抗体)を用いる免疫抗体法を用い得る。
上記DNAが導入された酵母は、細胞表層にCALBが提示され、かつリパーゼ活性を有する。この酵母は、細胞表層にCALBが活性型で提示されているので、該酵素をさらに精製することなく利用できる。
CALBを細胞表層に提示する酵母は、担体に固定化されていてもよい。連続反応あるいは回分式培養において、繰り返し使用できるからである。
固定化して連続反応を行う点においては、凝集性の酵母が宿主の酵母として好ましい。凝集性の酵母としては、Saccharomyces diastaticus ATCC60715、同ATCC60712、Saccharomyces cerevisiae IFO1953、同CG1945、同HF7Cが挙げられる。
担体とは、酵母を固定化することができる物質を意味し、好ましくは、水またはある特定の溶媒に対して不溶性の物質である。本発明に用いる担体の材質としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリアクリルアミド、ポリビニルフォルマール樹脂多孔質体、シリコンフォーム、セルロース多孔質体等の発泡体あるいは樹脂が好ましい。酵母の増殖および活性が低下したあるいは死滅した酵母の脱離等を考慮すると、多孔質の担体が好ましい。多孔質体の開口部の大きさは細胞によっても異なるが、酵母が十分に入り込めて、増殖できる大きさが適当であり、50μm〜1,000μmが好適であるが、これに限定されない。
また、担体の形状は問わない。担体の強度、培養効率等を考慮すると、球状あるいは立方体状で、大きさは、球状の場合、直径が2mm〜50mm、立方体状の場合、2mm〜50mm角が好ましい。
固定化とは、酵母が遊離の状態ではない状態を意味し、例えば、酵母が担体に結合あるいは付着または担体内部に取り込まれた状態等をいう。酵母の固定化には、例えば、担体結合法、架橋法および包括法等の公知の方法が適用できる。なかでも、凝集性の酵母の固定化には、担体結合法が最適である。担体結合法には、イオン交換性の樹脂に吸着させる化学的吸着法あるいは物理的吸着法が含まれる。
CALBを細胞表層に提示する凝集性酵母は、担体に固定化されているにもかかわらず、増殖可能であり、そして活性が低下すると自然に脱落していく性質を有しているため、担体に結合した酵母は、生菌数がほぼ一定に保たれ、活性が高いという特徴がある。この特徴を考慮すると、担体への結合は物理的吸着が最も好ましい。物理的吸着には特別な手段は必要ない。凝集性あるいは接着性の細胞と前記多孔質の担体とを単に混合して培養することにより、細胞が多孔質体の開口部に入りこみ、担体に付着する。
凝集性とは、液体中に浮遊または分散して存在する酵母等が、集合して塊(集合体)を作る性質を意味し、接着性とは、酵母同士が接着または結合し、集合体を形成する性質を意味する。
活性が低下したとは、酵母自体は死滅していないものの細胞全体の活性が弱まった状態、あるいは、たとえば凝集に関する活性が低下する、凝集に関する酵素をコードするDNAのレベルで活性が弱まる等の状態となり、凝集できなくなる状態をいう。
また、本発明においては、凝集性または接着性の酵母は、凝集または接着に関する遺伝子の導入により凝集性または接着性を付与された酵母であってもよい。
凝集または接着に関する遺伝子とは、凝集または接着に関与する物質、例えば、酵母におけるキチン、レクチンなどをコードする構造遺伝子が挙げられ、凝集性に関する遺伝子としては、FLO1[J. Watariら、Agric. Biol. Chem., 55:1547(1991), G.G. Stewartら、Can. J. Microbiol., 23:441(1977), I. Russellら、J. Inst. Brew., 86:120(1980), C.W. Lewisら、J. Inst. Brew., 82:158(1976)]、FLO5[I. Russellら、J. Inst. Brew., 85:95(1979)]、FLO8[I. Yamashitaら、Agric. Biol. Chem., 48:131(1984)]などの遺伝子が挙げられる。
これらの凝集または接着に関する遺伝子は、上記の出発材料のプラスミドに組み込まれて、酵母に導入され得る。
このようにして得られる固定化された酵母は、担体に付着した状態で、浮遊状態で培養されるか、カラム等に充填されて、いわゆるバイオリアクターとして用いることができる。連続的にあるいはバッチで繰り返し培養しても、活性が低下したあるいは死滅した細胞が脱離していくので、活性が落ちることはなく、有効に利用することができる。
(CALBを細胞表層に提示する酵母の用途)
カンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)は、水溶系および有機溶媒系の両方において高い活性や安定性を保ち、また、その基質特異性として高い立体選択性やエナンチオ選択性を有する。したがって、本発明の酵母は、様々なキラル化合物の不斉合成、エステル化合物の分解および合成反応、エステル交換反応、重合反応などの触媒として適用可能である。
CALB表層提示酵母は、脂肪酸の製造および脂肪酸エステルの製造、ならびに油脂のエステル交換において、例えば、特許文献2に記載のように、油脂との反応に好適に用いられ得る。
CALB表層提示酵母は、乳酸エステルの製造に好適に用いられ得る。乳酸エステルは、酵母の表層提示CALBの存在下で、アルコールと乳酸との反応を行うことにより得られる。反応させる乳酸は、D体もしくはL体、またはそれらの混合物であってもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールが好ましい。製造に用いるアルコールの量は、乳酸のモル数と同等であるか、またはそれ以下であってもよい。この反応により、用いたアルコールに依存した種類の乳酸エステルが得られる。乳酸エステルは、工業用溶剤および洗浄剤として用いることができる。
1つの実施態様では、上記アルコールはエタノールである。この場合、酵母の表層提示CALBは、乳酸とエタノールとの反応を媒介し、乳酸エチルを生成し得る。乳酸エチルは、生分解性プラスチックの原料として利用できる。
本発明の酵母によって表層発現されるCALBは、60℃付近でも活性を保持できる。したがって、反応において、約20℃〜約60℃において好ましく使用することができる。約30℃〜約60℃のような比較的高温での反応も可能である。例えば、以下の実施例に示すように、約50℃のような高温で、約100時間のような長時間にわたる反応に使用することも可能である。乳酸エステルの製造においては、アルコール条件下での乳酸および表層提示CALBの反応は、約30℃〜約60℃のような比較的高温で実施され得る。
反応のpHは、CALBの性質および反応させる基質を考慮して決定され得る。乳酸エステルの製造の場合、約4.0〜約8.0が好ましい。反応の進行とともにpHは低下するので、pHを一定の値あるいは特定の範囲に調節することが好ましい。
反応に使用される溶剤は、水系および非水系の有機溶媒のいずれでもよい。用いる反応に依存して決定し得る。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により限定されるものではない。
本実施例において使用した方法の手順を以下に説明するが、これらに制限されない。
(1.使用菌株)
本研究では以下の菌株を使用した:
大腸菌(Escherichia coli)DH5α[F-,ψ80dlac ZΔM15,Δ(lac ZYA-argF)U169, deoR, recA1, endA1, hsdR17(rk-mk+), phoA, supE44,λ-, thi-1, gyrA96, relA1]
酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MT8-1(MATa, ade, his3, leu2, trp1, ura3)。
(2.培地)
以下の培地は、一部を除いて全試薬を蒸留水に溶解した後、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)した。また、寒天培地の作製には2%(w/v)の寒天末(ナカライ特級)を用いた。
<LB(ルリア・ベルタニ:Luria-Bertani)培地>
1%(w/v)バクトトリプトン(DIFCO);0.5%(w/v)酵母エキス(DIFCO);1%(w/v)NaCl(ナカライ特級)を有する。オートクレーブ後60℃まで冷ました後、50mg/lアンピシリンナトリウム(明治製菓)を加えた。アンピシリンが添加されたLB培地を、以下「LBA」ともいう。
<YPD(酵母エキスペプトンデキストロース)培地>
1%(w/v)酵母エキス;1%(w/v)バクトペプトン(DIFCO);2%(w/v)D-(+)-グルコース(ナカライ特級)を有する。
<SD(合成ドロップアウト:Synthetic Dropout)培地>
0.67%(w/v)DIFCOTM Yeast nitrogen base w/o amino acids(DIFCO)および2%(w/v)グルコースを有する。トリブチリンや大豆油を含むプレートの作製は、SDC培地(2%(w/v)カザミノ酸(DIFCO)を含むSD培地である)と、乳化剤として、1%(w/v)胆汁末とを加えた後、オートクレーブした。60℃まで冷ましてから、0.2%トリブチリン(和光純薬)または0.2%大豆油(和光純薬)、50mg/lアンピシリンナトリウムを混合し、ソニケーションにより十分に溶解させ撹拌した後、ペトリ皿に均等に分注した。
生育させる株の栄養要求性に応じて次のように塩基およびアミノ酸を添加した:
20mg/l 硫酸アデニン脱水物(和光純薬)
20mg/l ウラシル(和光純薬)
100mg/l L-ロイシン(和光純薬)
20mg/l L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物(ナカライ)
20mg/l L-トリプトファン(ナカライ)。
<SOC培地>
2%(w/v)トリプトン;0.5%(w/v) 酵母エキス;10mM NaCl;2.5mM KCl;10mM MgSO4;10mM MgCl2;および20mM グルコースを有する。
(3.PCRによる遺伝子増幅)
本実施例では目的に応じて、以下のポリメラーゼを使い分けてPCRを行った。
(3−1.KOD Dash(登録商標)(TOYOBO)を用いたPCR)
反応液組成(50μlあたり)は、滅菌水37μl;10×バッファー(製造者の指示書による)5μl;2mM dNTPs 5μl;プライマー1(100pmol/μl)1μl;プライマー2(100pmol/μl)1μl;およびKOD Dash(登録商標)1μlである。
反応サイクルは、94℃ 2分;94℃ 30秒、(Tm−5)℃ 2秒、および74℃ 30秒/kbを30サイクル;74℃ 7分;ならびに4℃ ∞である。
KOD Dash(登録商標)は増幅効率が高いため、主にダイレクトコロニーPCRの際に使用した。ダイレクトコロニーPCRは、ベクターへのインサートDNAの挿入を確認するために行った。まず、上記反応液組成のポリメラーゼを除いた反応液を調製し、PCRチューブに50μlずつ分注した。ここに、コロニーをつついた滅菌済みの爪楊枝を浸して軽くかきまぜた。その後、各PCRチューブにポリメラーゼを加え、上記反応サイクルでPCRを行った。反応後、アガロース電気泳動を用いて、目的の増幅産物のバンドを確認した。
(3−2.KOD Plus(登録商標)(TOYOBO)を用いたPCR)
反応液組成(50μlあたり)は、滅菌水37μl;10×バッファー(製造者の指示書による)5μl;2mM dNTPs 5μl;25mM MgSO4 2μl;プライマー1(100pmol/μl)1μl;プライマー2(100pmol/μl)1μl;テンプレートDNA 1μl(1〜10ng);およびKOD Plus(登録商標)1μlである。
反応サイクルは、94℃ 2分;94℃ 15秒、(Tm−5)℃ 30秒、および68℃ 1分/kbを25サイクル;68℃ 7分;ならびに4℃ ∞である。
KOD Plus(登録商標)は正確性が高いため、インサートDNAを調製する場合に使用した。PCRによる目的の増幅産物が確認されない場合にはMgSO4の濃度を上げ、そしてPCR産物にスメアが確認される場合にはMgSO4の濃度を下げることで解決を進めた。
(4.PCR産物の精製)
インサートDNAやメガプライマーを調製する場合、PCR反応後、電気泳動で増幅産物のバンドを確認した後、Quantum Prep(登録商標)PCR Kleen Spin Column(BIO-RAD)を用いて精製した。精製はプロトコールに従った。
(5.制限酵素処理)
DNAの制限酵素処理は、以下のような反応液中で行った。反応液組成(20μlあたり)は、DNA 1〜2μg;10×バッファー2μl;制限酵素1μl;滅菌水(全体で20μlとする)であった。反応バッファーや反応温度は、個々の制限酵素に最適なものを選択し、処理を行った。反応時間は2時間以上で行った。反応バッファーは、以下の通りである:10×Highバッファー(TOYOBO)[10mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM DTT];10×Lowバッファー(TOYOBO)[50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、100mM NaCl、1mM DTT]。
(6.クイックチェンジ法による変異導入)
クイックチェンジ法は、ライゲーション操作を必要としない、非常に簡便な変異導入法である。これは、Stratagene社でもQuikChange(登録商標)II Site-Directed Mutagenesis Kitなどで、キット化されている。その方法は、3つの段階からなる。1段階目はプラスミド全体をテンプレートとしたポリメラーゼ反応、2段階目はDpnIによるテンプレートプラスミドの除去、および3段階目は大腸菌の形質転換である。
本実施例における部位特異的変異の導入は、一部を除いてすべてこの方法を利用した。ポリメラーゼは、正確性および長鎖のDNAの増幅に優れたPfu UltraTM High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いた。反応液組成(50μlあたり)は、滅菌水36μl;5×バッファー(製造者の指示書による)5μl;2mM dNTPs 5μl;プライマー1(100pmol/μl)1μl;プライマー2(100pmol/μl)1μl;テンプレートDNA 1μl(100ng);およびポリメラーゼ1μlであった。反応サイクルは、95℃ 2分;95℃ 50秒、55℃ 50秒、および72℃ 2分/kbを18サイクル;72℃ 7分;ならびに4℃ ∞であった。また、変異導入の際に用いるプライマーは以下の点に注意して設計した:(1)2つのプライマーを同じ長さにして、完全に相補的にする;(2)変異導入部位の両端は15塩基以上とし、テンプレートの配列と完全に一致させる;(3)プライマーの末端はGかCで終わらせる。
手順は以下の通りである:プラスミド全体をテンプレートとしてポリメラーゼ反応;反応産物(50μl)にDpnI 1μl(20units)を直接添加;37℃で終夜インキュベート;電気泳動によりプラスミドサイズのバンドを確認;2μlを直接Competent high DH5αへ導入(7.参照);約16時間後、シングルコロニーをLBA液体培地5mlに植菌;160分-1、37℃で終夜インキュベート;ミニプレップ(8.参照);塩基配列の決定(13.参照)により、変異導入を確認し、目的の変異が導入されたプラスミドを取得。
(7.大腸菌の形質転換)
大腸菌の形質転換は、塩化カルシウム法により行った。手順は以下の通りである:プラスミド溶液2μl(10ngを標準とする)にCompetent high DH5α(TOYOBO)50μlを添加;氷上に30分放置;42℃で1分間ヒートショック;氷上に3分放置;SOC培地300μlに添加;37℃で1時間放置;LBAプレートに適量を植菌;37℃で16時間放置;形質転換された大腸菌のコロニーを取得。
(8.大腸菌からのプラスミド抽出)
大腸菌からのプラスミド抽出(ミニプレップ)は、Quantum Prep(登録商標)Plasmid Miniprep Kit(Bio-Rad)を用いて製造者のプロトコルに従って行った。以下にその手順を示す:LB液体培地に100mg/mlアンピシリンナトリウム水溶液7μlを添加;LBAプレート上の大腸菌のシングルコロニーを植菌;160分-1、37℃で終夜インキュベート;3000rpmで室温にて10分間遠心分離;ペレットを再懸濁溶液200μl中に入れてボルテックス;パスツールピペットで懸濁液を1.5mlエッペンドルフチューブに移し替え;溶解溶液250μl中で転倒懸濁;中和溶液250μlを添加し、転倒懸濁;14000rpmで室温にて5分間遠心分離;上清をスピンフィルターに注入;Quantum Matrix 200μlを添加し、ピペッティングで混和;14000rpmで室温にて1分間遠心分離;洗浄緩衝液500μlを添加;14000rpmで室温にて1分間遠心分離;洗浄緩衝液500μlを添加;14000rpmで室温にて2分間遠心分離;スピンフィルターを新しい1.5mlエッペンドルフチューブに移動;TE(pH8.0)100μlを添加;14000rpmで室温にて1分間遠心分離;プラスミドDNAを取得。
(9.酵母の形質転換)
酵母の形質転換は、EZ-Yeast Transformation Kit(Q-BIO gene)を用いて製造者のプロトコルに従って行った。以下にその手順を示す:酵母をYPD10mlに植菌;300分-1、30℃で終夜インキュベート;1.5mlエッペンドルフチューブに500μlずつ移し替え;3000rpmで室温にて3分間遠心分離;ペレットをEZ Transformation solution 125μl中にピペッティングで混和;プラスミドDNA 2μgを添加し、ピペッティングで混和;キャリアDNA 5μlを添加し、ピペッティングで混和;ボルテックス;42℃にて30分間放置;適当量をSD寒天培地に植菌し、30℃にて2〜3日放置;形質転換された酵母のコロニーを取得。
(10.DNAのアガロース電気泳動)
アガロース2gを200mlのTAE溶液(Tris 48g;EDTA・2Na 174mg;酢酸 1.14ml;蒸留水(全体で1000mlとする))に入れ、電子レンジで沸騰させ溶かした後、型に流し入れ、冷やして1%アガロースゲルを作った。DNA溶液に6×Loading Dye(TOYOBO)を適量添加した。それをアガロースゲルにアプライし、ミニゲル泳動槽i-Mupid(コスモバイオ)を用い100Vで電気泳動を行った。泳動後のゲルを臭化エチジウム(EtBr)溶液で10分間染色した。その後、脱イオン水に移し替え、10分間脱色を行った。UVサンプル撮影画像サーバーシステムKYT-101(TOYOBO)を用い、ゲル内のDNAにUVを照射し、DNAを発色させた。必要に応じて、写真を撮影した。
(11.アガロース電気泳動を用いたDNAの精製)
アガロースゲル中の目的となるDNAが含まれる領域を、剃刀を用いて切り出した。そして、できる限り小さな断片にした。チューブにカラムGenEluteTM MINUS EtBr SPIN COLUMNS(SIGMA)をセットした後、100μlの蒸留水を添加し、15000rpmで5秒間遠心分離し、プレウォッシュした。新しいチューブにカラムを移し替えて、そこにアガロースゲル断片を入れた。15000rpmで10秒間遠心分離して、約50μlのDNA溶液を得た。
(12.ライゲーション反応)
PCR産物を制限酵素で処理して調製したインサートDNAは、Ligation high(TOYOBO)によって同じ制限酵素で処理したベクターDNAと連結させた。下に示した反応液中で、16℃で2時間以上反応させた。これを塩化カルシウム法によってDH5αに導入した。
反応液組成(20μlあたり)は、ベクターDNA 50ng;インサートDNA 50ng;Ligation high DNA溶液と等量;滅菌水(全体で20μlとする)であった。
(13.DNA塩基配列の決定)
DNAの塩基配列は、以下のようにして決定した。まず、Big Dye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Standard Kit(Applied Biosystems)を用いてターミネーター反応を起こした。反応液組成は、滅菌水(全体で20μlとする);5×バッファー(製造者の指示書による)2μl;Big Dye(登録商標)Terminator 3μl;プライマー(100pmol/μl)3.2μl;およびテンプレートDNA(200〜500ng)であった。反応サイクルは、96℃ 2分;96℃ 10秒、50℃ 5秒、および60℃ 4分を18サイクル;60℃ 2分;ならびに4℃ ∞であった。ターミネーター反応終了後、ABI PRISMTM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)によって解析した。
(14.蛍光抗体染色)
少量の培養液(OD600=2.5〜3.0を1mlに相当する量)を3000rpmで5分間遠心分離し、細胞を集めた。上清を捨て、1mlのPBS緩衝液(10×PBS緩衝液(ニッポンジーン))で洗浄した後、再び同条件で遠心分離した。上清を捨てた後、1mlの3.7%(w/v)ホルムアルデヒド/PBS緩衝液に懸濁し、室温にて1.5時間静置した。3000rpmで5分間遠心分離し、再び細胞を集めた。そして、1mlのPBS緩衝液での洗浄を3回行った。細胞を300μlの1%(w/v)仔ウシ血清アルブミン(ナカライ)/PBS緩衝液に再懸濁し、室温にて30分間静置した。ブロッキング終了後の溶液300μlに一次抗体FLAG抗体(SIGMA)を1μl添加した。軽く混合した後、室温にて1.5時間静置した。3000rpmで5分間遠心分離し、再び細胞を集めた。そして、1mlのPBS緩衝液で洗浄した後、300μlのPBS緩衝液に再懸濁した。その溶液に二次抗体Alexa FluorTM488-結合ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)を1μl添加した。軽く混合した後、室温にて1.5時間静置した。3000rpmで5分間遠心分離し、再び細胞を集めた。そして、1mlのPBS緩衝液で洗浄した後、30μlのPBS緩衝液に再懸濁した。蛍光フィルターU-MNIBA2(Olympus)を備えた顕微鏡IX71(Olympus)で、この懸濁液中の酵母細胞を観察した。
(15.活性測定)
酵母に発現させたリパーゼのリパーゼ活性およびエステラーゼ活性をいくつかの方法を用いて測定した。活性測定に用いるリパーゼ提示酵母は、10ml SDC-W液体培地で2日間培養した後、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した後、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で懸濁し、OD600=3.0に調整した。
(15−1.プレートアッセイによる活性の確認)
トリブチリンまたは大豆油を含むプレートアッセイに、直接コロニーを添加することで、酵母のコロニーの周辺に生じるハロの確認を行った。細胞表層に活性のあるリパーゼが発現されていれば、培地中の基質を分解するので、濁った色のプレートがくっきりと透明に変化する。プレート上のコロニーの周りの色の変化を見ることにより、酵素活性の有無を確認した。
(15−2.p−ニトロフェニルエステルを用いた活性測定)
以下に示す手順で、表層提示リパーゼのエステラーゼ活性を測定した:p−ニトロフェニルエステル2.5mMを調製;0.5% Triton X-100を含む0.05Mリン酸カリウム(pH 6.5)を添加;ソニケーションにより完全に乳化;30℃にて3分間プレインキュベート;基質溶液0.5mLに等量の酵素溶液(酵母)を加えて反応開始;30℃にて10分間インキュベート;アセトン1mL加えて反応停止;12000gで5分間遠心分離;上澄み200μlを96穴プレートに回収;λ405nmの吸光度を測定し、バックグランドとの差を取って活性値とした。
(15−3.蛍光基質フルオレセインジエステルを用いた活性測定)
蛍光基質フルオレセインジアセテートおよびフルオレセインジブチレートをそれぞれ2mgスクリュー管に計りとり、N,N-ジメチルホルアミドを500μl加えてピペッティングにより溶解させ、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)9.5mlに懸濁した。基質溶液と菌体溶液とを各100μlずつ96穴プレート中で混合し、Fluoroscan Ascent Fluorometer(Labsystems OY, Helsinki)で遊離フルオレセインの蛍光を測定した。
(16.ポリアクリルアミドゲル電気泳動)
サンプル16μlとSDS-PAGEサンプルバッファー(60mM Tris-HCl(pH6.8);25%(w/v)グリセロール;2%(w/v)SDS;14.4mMメルカプトエタノール;0.1%ブロモフェノールブルー;dH2O)4μlとを混合し、3分間煮沸した後、10%ポリアクリルアミドゲルにアプライした。電気泳動バッファー(25mM Tris;192mMグリシン;0.1%(w/v)SDS;蒸留水)を使用し、150Vで70分間電気泳動を行った。泳動後のゲルを蒸留水に浸して5分後に水を交換する操作を3回行って、脱塩した。その後、ゲルをSimplyBlueTM SafeStrain(Invitrogen)に浸し、室温で1時間揺らしながら染色した。最後に、100mlの蒸留水に約1時間浸し、ゲルを洗浄した。
なお、10%ポリアクリルアミドゲルの作製のために、以下の溶液を混ぜ合わせ、10%ランニングゲルおよび4%スタッキングゲルを作製した。10%ランニングゲル(12ml)の組成は、H2O 4.8ml;Solution I(1.5M Tris-HCl(pH8.8);0.4%(w/v)SDS;dH2O)3.0ml;30%ビスアクリルアミド4.0ml;10%SDS 120μl;10%過硫酸アンモニウム60μl;およびN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)5μlであり、4%スタッキングゲル(10ml)の組成は、H2O 6.5ml;Solution II(0.5M Tris-HCl(pH6.8);0.4%(w/v)SDS;dH2O)2.5ml;30%ビスアクリルアミド1.0ml;10%SDS 100μl;10%過硫酸アンモニウム75μl;およびN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)8μlであった。
(実施例1:プロペプチドを含むCALB表層提示用プラスミドの構築)
カンジダ・アンタークティカCBS 6678株由来のCALBをコードする遺伝子を、神戸大学大学院自然科学研究科から、Flo1pによる細胞表層提示用プラスミドpWIFS-pmCALBの形で譲り受けた。このプラスミドは、UPR-ICLプロモーター、Flo1pのN末端領域、マルチクローニングサイト、UPR-termに加えて、栄養要求性マーカーとしてTRP1、酵母の複製起点2μm、大腸菌複製起点ColE1、アンピシリン耐性AmprがあるカセットベクターpWIFSに、カンジダ・アンタークティカCBS 6678株由来のプロペプチドを含むCALBをコードする遺伝子を挿入したことにより作出されている。
(1−1.表層提示用プラスミドへのCALB遺伝子の導入)
プロペプチドを含むCALB遺伝子をクローニングするために、プライマーCALB-BglII-f1(配列番号3)およびCALB-XhoI-r1(配列番号4)を設計した。テンプレートDNAにpWIFS-pmCALB、プライマーにCALB-BglII-f1およびCALB-XhoI-r1を用いて、カンジダ・アンタークティカCBS 6678株由来のCALB遺伝子をPCRによりクローニングした。その生成物を、PCR Kleen Columnを用いて精製し、アガロース電気泳動で目的の位置にバンドが見られたことを確認した。
ベクターpICAS1(Muraiら、Appl. Environ. Microbiol., 1998年, 64巻, 4857-4861頁)を制限酵素EcoRIおよびKpnIで消化して、EcoRI−KpnI断片を得た。このEcoRI−KpnI断片には、グルコアミラーゼ遺伝子の分泌シグナルをコードする配列、制限酵素SacII、BglII、NcoI、XhoIが認識できるマルチクローニング部位、さらにα−アグルチニンのC末端から320アミノ酸をコードする配列が含まれる。この320アミノ酸コード配列中に、GPIアンカー付着認識シグナルをコードする塩基配列が含まれる。この断片を、EcoRIおよびKpnIで消化したベクターpGA11(Uedaら、Ann. NY. Acad. Sci., 1998年, 864巻, 528-537頁)に連結した。これにより、酵母細胞表層提示用カセットベクターpCASを得た。
pCASをBglIIおよびXhoIで処理し、そして同じくBglIIおよびXhoIで処理したCALB遺伝子クローニング産物と連結した。完成したプラスミドをpCAS-CALBと命名した。
(1−2.CALB遺伝子挿入の確認)
DNAシーケンサーを用いて、完成したプラスミドDNAのCALB遺伝子付近の塩基配列を読んだ。その結果、PCRで増幅した領域の塩基配列が正しく挿入されていることが分かった。
(1−3.リンカーの挿入)
グリシンおよびセリンで構成されるリンカー配列をコードする遺伝子として、合成オリゴヌクレオチドLinker18-F(配列番号5)およびLinker18-R(配列番号6)を設計した。pCAS-CALBを制限酵素XhoIと10×Highバッファーを用いて切断した。このベクターとリンカー配列をコードする合成オリゴヌクレオチドとをXhoIサイトで結合し、完成したプラスミドをpCAS-R-CALBと命名した。
(1−4.リンカー配列挿入の確認)
pCAS-R-CALBのCALBのC末端およびリンカー配列(アミノ酸配列を配列番号7に示す)のDNA塩基配列を、DNAシーケンサーを用いて読み取り、リンカー配列の挿入を確認した。
(1−5.FLAG配列の挿入)
CALBを表層に提示させた際の確認のために、タグとして一般的に用いられるFLAG配列を、クイックチェンジ法により挿入した。FLAG配列挿入のために、プライマーCALB-FLAG-f1(配列番号8)およびCALB-FLAG-r1(配列番号9)を設計した。テンプレートDNAにpCAS-R-CALB、プライマーにCALB-FLAG-f1およびCALB-FLAG-r1を用いたPCRにより、クイックチェンジを行い、FLAG配列を挿入した。完成したプラスミドをpCAS-FLAGR-CALBと命名した。このプラスミドの模式図を図1に示す。図1に示されるとおり、プロペプチドを含むCALBをコードする遺伝子を、表層提示用プラスミドに含めることができた。
(1−6.FLAG配列挿入の確認)
pCAS-FLAGR-CALBのCALBのC末端、リンカー配列、およびFLAG配列のDNA塩基配列を、DNAシーケンサーを用いて読み取り、FLAG配列の挿入を確認した。これにより、CALBのC末端、FLAG、およびリンカー配列の順で正しく挿入されていることが分かった。
(1−7.CALB配列の修正)
カンジダ・アンタークティカCBS 6678株由来のCALB配列は、データベース上で公開されているカンジダ・アンタークティカLF 058株由来のCALB配列とは遺伝子配列上やや異なっており、アミノ酸配列では以下に示す計7箇所の変異が導入されていた:A25T、A28T、S31T、G46Q、A89T、N97R、V286I。これらの変異が導入されたままのCALB配列を含むプラスミドを導入した酵母においては、リパーゼ活性は高くなかった。
そこで、これらの変異部位に変異を導入し、カンジダ・アンタークティカLF 058株由来のCALB配列に修正した。変異導入のために、プライマーCAL B-muta-F1(配列番号10)、CAL B-muta-F2(配列番号11)、CAL B-muta-F3(配列番号12)、およびCALB-G46Q-f(配列番号13)を設計した。上記の4つのプライマーを用いて、複数の部位に同時に変異を導入するクイックチェンジ法を行った。これにより、計7つのアミノ酸に対して変異を導入した。
(1−8.CALB配列修正の確認)
クイックチェンジ法により変異導入したCALBの塩基配列を、DNAシーケンサーを用いて決定した。この塩基配列は、配列表の配列番号1に記載の通りである。これにより、全ての部位のアミノ酸において、カンジダ・アンタークティカLF 058株由来CALB配列に正しく修正されていることを確認した。この修正されたCALBのアミノ酸配列は、配列番号2に記載の通りである(−7位のアラニンから317位のプロリンまでのアミノ酸配列)。以下、この修正されたアミノ酸配列を有するプロペプチドを含むCALBを「野生型CALB」という場合がある。
(実施例2:表層提示CALB変異体の作製)
(2−1.野生型CALBのC末端リジン−アルギニン部位の改変)
CALBのC末端付近には、酵母の内在型プロテアーゼであるKEX2プロテアーゼによって認識され得るリジン−アルギニンが続く部位が存在する。酵母サッカロマイセス・セレビシエにおいてCALBが細胞表層に発現されるまでの過程で、KEX2プロテアーゼによる切断を受けた場合、CALBは正しく提示されないと考えられる。
そのため、野生型CALBの308位のリジンおよび309位のアルギニンに対して、変異を導入した。この際、KEX2プロテアーゼによる認識を低く抑えつつ、アミノ酸の性質を大きく変えないために、309位のアルギニンをリジンに置換した変異体(「R309K」)を作製した。また、KEX2プロテアーゼによる認識を完全に抑えるために、308位のリジンおよび309位のアルギニンをそれぞれアラニンに置換した変異体(それぞれ「K308A」および「R309A」)も作製した。
変異導入のために、以下のプライマーを設計した。「R309K」変異体作製のためのプライマーとして、CALB-kex2K-f(配列番号14)およびCALB-kex2K-r(配列番号15)を、「K308A」変異体作製のためのプライマーとして、CALB-K308A-f(配列番号16)およびCALB-K308A-r(配列番号17)を、そして「R309A」変異体作製のためのプライマーとして、CALB-R309A-f(配列番号18)およびCALB-R309A-r(配列番号19)を作製した。上記の組み合わせの各プライマーを用いて、テンプレートDNAにpCAS-FLAGR-CALB、ポリメラーゼにPfu UltraTMを用いたクイックチェンジ法により、各変異体R309K、K308A、R309Aを作製した。
(2−2.野生型CALBのプロペプチドの改変)
CALBは、7アミノ酸で構成されるプロペプチドが成熟化に関連していると推測されている。プロペプチドのC末端のリジン−アルギニン部位の残基がKEX2型のプロテアーゼにより切断されて、CALBは正しくフォールディングされると考えられている。実際に、X線結晶構造解析による結果からも、成熟体CALBにはプロペプチドが欠損していることが分かる。しかし、7アミノ酸からなる非常に短いペプチドが、どのようにしてタンパク質の活性化に関わっているのかについては不明である。酵母サッカロマイセス・セレビシエでのCALBの発現の際には、プロペプチドのC末端のリジン−アルギニン部位の残基に対して、酵母の内在性プロテアーゼが作用するかどうかは明らかではなく、また、CALBの活性化にどのような影響を与えるかについても明らかではない。
このプロペプチドがCALBの活性化に与える影響を解明するために、野生型CALBのプロペプチドの6位(配列番号2の−2位)のリジンおよび7位(配列番号2の−1位)のアルギニンの改変を試みた。このために、7位のアルギニンをリジンに置換した変異体(「proR7K」)および6位のリジンをアラニンおよび7位のアルギニンをアラニンに置換した変異体(「proK6A/R7A」)を作製した。また、プロペプチドを欠損させた変異体(「Δpro」)も作製した。さらに、プロペプチドをリンカーペプチドに置換した変異体(「pro→Linker」)を作製した。
変異導入のために、以下のプライマーを設計した。「proR7K」変異体作製のためのプライマーとして、proCALB-R7K-f(配列番号20)およびproCALB-R7K-r(配列番号21)を、「proK6A/R7A」変異体作製のためのプライマーとして、proCALB-K6A/R7A-f(配列番号22)およびproCALB-K6A/R7A-r(配列番号23)を、「pro→Linker」変異体作製のためのプライマーとして、proCALB-Linker-F(配列番号24)およびproCALB-Linker-R(配列番号25)を、そして「Δpro」変異体作製のためのプライマーとして、mCALB-f1(配列番号26)およびmCALB-r1(配列番号27)を作製した。上記の組み合わせのプライマーを用いて、テンプレートDNAに野生型のpCAS-FLAGR-CALB、ポリメラーゼにPfu UltraTMを用いたクイックチェンジ法により、それぞれの変異体proR7K、proK6A/R7A、pro→Linker、Δproを作製した。また、テンプレートDNAとして、pCAS-FLAGR-CALBのCALB遺伝子としてR309K変異体を用いることで、二重に変異を導入したproR7K/R309K、proK6A/R7A/R309K、Δpro/R309Kを作製した。
(2−3.野生型CALBのC末端領域の欠損)
CALBのC末端付近に、リジン−アルギニンで続くKEX2プロテアーゼによる認識部位が存在するが、カンジダ・アンタークティカでは、成熟化の際にこの部位は切断されずに発現すると考えられている。そこで、酵母内在性のプロテアーゼによるCALBのC末端310位以降の8残基の欠損についての影響を調べた。
野生型CALBのC末端8残基を欠損する変異体(309アミノ酸からなる変異体:「ΔC-term」)を作製した。変異導入のために、プライマーdelCtermini-R309A-F1(配列番号28)およびdelCtermini-R309A-R1(配列番号29)を設計した。上記のプライマーを用いて、テンプレートDNAに野生型のpCAS-FLAGR-CALB、ポリメラーゼにPfu Ultra(登録商標)を用いたクイックチェンジ法により、C末端欠損の変異体ΔC-termを作製した。また、テンプレートDNAとして、proR7K、proK6A/R7A、またはΔproを用いることで、二重に変異を導入したproR7K/ΔC-term、proK6A/R7A/ΔC-term、およびΔpro/ΔC-termを作製した。
(2−4.CALB変異体の遺伝子配列の確認)
作製した全てのCALB変異体について、変異導入部位の周辺領域の塩基配列をDNAシーケンサーによって読み取り、正しく変異導入されていることを確認した。
(比較例1:Rhizopus oryzae由来リパーゼ(ROL)細胞表層提示プラスミドの調製)
コントロールとして、非特許文献24の記載に基づいて、Rhizopus oryzae由来リパーゼ(ROL)細胞表層提示プラスミドを調製した。本プラスミドは、野生型ROL(以下、「wtROL」ともいう。単に「ROL」とのみ表記する場合もある)を酵母細胞表層に提示させ得る。
(比較例2:コントロール細胞表層提示プラスミドの調製)
別のコントロールプラスミドとして、リパーゼを含まない細胞表層提示プラスミドpCAS−Cを調製した。細胞表層提示用カセットベクターpCASは、それ自体を酵母に導入してもフレームシフトにより細胞表層にα−アグルチニンは提示されない。そこで、pCASのマルチクローニングサイトにシトシンを一塩基導入してフレームを合わせるために、pCASを鋳型として、プライマー(配列番号30および配列番号31)を用いて、KOD Dash(登録商標)(TOYOBO)にてPCRを行った。得られたプラスミドpCAS−Cは、グルコアミラーゼ遺伝子の分泌シグナルをコードする配列、制限酵素SacII、BglII、NcoI、XhoIが認識できる21塩基対からなるマルチクローニング部位、さらにα−アグルチニンのC末端から320アミノ酸をコードする配列を含む。本プラスミドは、7アミノ酸からなるポリペプチドがN末端に付加されたα−アグルチニンのC末領域を酵母細胞表層に提示させ得る。
(比較例3:非表層提示プラスミドの調製)
さらに別のコントロールプラスミドとして、非表層提示プラスミドpMW1を調製した。pMW1は、T. Kanaiら、Appl. Microbiol. Biotechnol., 1996年, 44巻, 759-765頁の記載に基づいて調製した。簡単に述べると、pRS404(Stratagene)のAatII部位に、2μmDNAを含むpMT34(+3)(M. Tajimaら、Yeast, 1985年, 1巻, 67-77頁)の2.14kbpのEcoRI−EcoRIフラグメントを挿入し、pMW1を得た。
(実施例3:酵母への形質転換)
作製した全てのCALB表層発現用プラスミドDNAを酵母サッカロマイセス・セレビシエMT8-1株に形質転換し、CALB表層提示酵母を創製した。上記比較例1から3で調製したプラスミドも同様に、サッカロマイセス・セレビシエMT8-1株に形質転換し、それぞれ野生型ROL(wtROL)表層提示酵母、pCAS−C組換え酵母(リパーゼを含まない表層提示プラスミドを導入した酵母)、およびpMW1組換え酵母(非表層提示プラスミドを導入した酵母)を創製した。
(実施例4:免疫抗体染色によるCALB細胞表層提示の確認)
CALB表層発現用プラスミドが導入された酵母の細胞表層にCALBが発現および提示されていることを確認するために、免疫蛍光顕微鏡観察を行った。上記実施例3で創製した、野生型CALBを含むpCAS-FLAGR-CALBで形質転換した酵母サッカロマイセス・セレビシエMT8-1株の蛍光顕微鏡写真を図2の下側に示す。対応する位相差像を図2の上側に示す。これらの写真を合わせて検討したところ、CALB表層発現用プラスミドを導入した酵母では、細胞の表層部分に蛍光が観察された。したがって、CALB表層発現用プラスミドを酵母に導入すると、発現されるCALBが細胞表層に提示されることが示された。
(実施例5:表層提示CALBのリパーゼ活性の確認)
(5−1.ハロアッセイによるリパーゼ活性の確認)
表層提示CALBの活性の有無を確認するために、プレートを用いたハロアッセイによる評価を行った。まず、野生型CALB表層提示酵母(wtCALB)、野生型ROL表層提示酵母(wtROL)、pCAS−C組換え酵母、およびpMW1組換え酵母について、0.2%トリブチリンを添加したSDC培地(図3)および0.2%大豆油を添加したSDC培地(結果は示さず)で行った。野生型CALB表層提示酵母および野生型ROL表層提示酵母ではハロが形成されたが、pCAS−C組換え酵母、およびpMW1組換え酵母ではハロの形成がなかった。続いて、野生型CALB表層提示酵母、CALB変異体であるproR7K、proR7K/R309K、proK6A/R7A、proK6A/R7A/R309K表層提示酵母、およびpCAS−C組換え酵母を、0.2%トリブチリンを添加したSDC培地で試験した(図4)。野生型CALB(wt)およびすべてのCALB変異体の表層提示酵母において、ハロの検出が確認された。pCAS−Cでは、ハロは検出されなかった。
(5−2.酵母の生育段階に関わるリパーゼ活性の変化)
酵母の生育段階による、酵母細胞表層に提示されるCALBの発現量の変化を調べるために、生育時期ごとに活性を測定した。酵母を30℃でSDC-W液体培地中で生育させ、細胞密度をOD600で測定することにより、生育を確認した。活性測定に用いる基質として、炭素数4のアシル基の付いたp−ニトロフェニルエステルであるp−ニトロフェニルブチレートを選択した。図5は、野生型CALB表層提示酵母およびpCAS−Cの培養中の細胞増殖の経時変化を示し、そして図6は、野生型CALB表層提示酵母およびpCAS−Cの培養中のリパーゼ活性の経時変化を示す(ともに、菱形が野生型CALBを表し、四角がpCAS−Cを表す)。その結果、CALB表層提示酵母は、40時間前後で対数期から定常期に入ることが分かった(図5)。図5および図6を合わせて検討すると、CALB表層提示酵母のリパーゼ活性の値は、対数期後半から定常期以降にかけて、ほとんど大きな変化がないことが分かった。
(5−3.CALB変異体による活性の変化)
構築した種々のCALB変異体の活性を、p−ニトロフェニルブチレートおよびフルオレセインジエステルを用いて測定した。図7は、p−ニトロフェニルブチレートを用いて測定した野生型CALBおよびCALB変異体のリパーゼ活性を示し、そして図8は、フルオレセインジエステルを用いて測定した野生型CALBおよびCALB変異体のリパーゼ活性を示す。CALBのプロペプチドを欠損させた変異体またはリンカーペプチドに置換した変異体は、野生型に比べて活性が低かった。一方、プロペプチドのC末端リジン−アルギニン部位の残基の変異体では、やや活性が上昇していた。このように、プロペプチドがCALBの活性に非常に重要であることが分かった。
(実施例6:表層提示CALBの基質特異性の評価)
表層提示CALBの基質特異性を調べるために、基質として炭素数2から18までのアシル基を有するp−ニトロフェニルエステルを用いて活性測定を行った。中鎖長の基質に対して特異性が高いことが分かっている表層提示ROLと比較した。基質溶液中、OD600=5の酵素表層提示酵母を30℃にて5分間反応させた後、405nmでの吸光度を測定し、リパーゼ活性を求めた。この結果を図9に示す。図9では、各アシル鎖長において、左側のバーが野生型CALBを表し、右側のバーが野生型ROLを表す。図9から、野生型CALBは、野生型ROLに比較して短い鎖長(C2〜C6)を有する基質に対して反応性が高いことが分かった。
(実施例7:表層提示CALBの熱安定性の評価)
CALBは、一般的なリパーゼに比べて安定性が高いことが知られている。CALBの固定化酵素であるNovozyme435は、極めて安定性が高く、有機溶媒中においても高い活性を示す。有機溶媒中あるいは高温条件下での触媒反応(例えば、エステル合成反応)に用いる場合、リパーゼの安定性が極めて重要である。
そこで、表層提示CALBの熱安定性を調べるために、熱処理後の残存活性を測定した。表層提示ROLとの比較により、表層提示CALBの熱安定性を評価した。残存活性の測定には、基質としてp−ニトロフェニルブチレートを用いた。
まず、上記の方法の手順15−2の「p−ニトロフェニルエステルを用いた活性測定」に基づく基質溶液と酵素溶液(酵母)との反応の際に、0℃から100℃までの設定温度でそれぞれ30分間酵母を処理した直後に酵素活性を測定した。CALBおよびROLともに、30℃処理時の値を基準(活性100%)とする相対値で、残存活性として示した(図10:図中、菱形が表層提示野生型CALBを表し、四角が表層提示野生型ROLを表す)。その結果、表層提示野生型ROLでは、40℃を超えると急激に活性が低下し、50℃付近ではその活性はほとんど見られなくなった。一方、表層提示野生型CALBは、40℃を超えても表層提示野生型ROLほど急激に活性は失われず、60℃付近でも、半分近くの活性を保った。このように、表層提示野生型CALBは、通常のリパーゼよりも熱安定性が高いことが分かった。
次に、60℃での処理時間ごとの残存活性を測定し、安定性を評価した。各設定時間の間、60℃で処理した後の残存活性を、0分測定時の野生型CALBおよび野生型ROLのそれぞれの値を基準(活性100%)として、相対値で示した(図11:図中、菱形が表層提示野生型CALBを表し、四角が表層提示野生型ROLを表す)。野生型ROLは、数分で活性が失われたのに対して、野生型CALBは、20分近くまで半分以上の活性を保った。
(実施例8:表層提示CALBを用いた乳酸エチル合成)
凍結乾燥した野生型CALB表層提示酵母10mgを、水で飽和したヘプタン中にエタノール0.1Mおよび乳酸0.3Mを含む反応液2mlに添加し、250rpmで振盪しながら50℃にて100時間反応させた。なお、反応液は、反応を開始してから72時間後にモレキュラーシーブス3A(和光純薬工業株式会社)に供し、さらに反応を続けた。リパーゼを含まない表層提示プラスミドを導入した酵母であるpCAS−C組換え酵母をコントロールとして使用した。
反応終了後、反応液を以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した:
カラム:ODS−W 5C18−MS−II(ナカライテスク株式会社)
溶離液 A:0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液
B:メタノール
A:B=8:2(v/v)で使用
流速 1.0ml/分
温度 40℃
検出器UV 210nm
注入量:10μl。
図12は、上記HPLC分析の結果を示すクロマトグラムであり、横軸は、保持時間(分)を示す。図12は、野生型CALB表層提示酵母またはpCAS−C組換え酵母(図中「コントロール酵母」)を添加した乳酸およびエタノールの反応液におけるHPLC分析の結果を、乳酸エチル標品のピークと併せて示す。野生型CALB表層提示酵母を添加した反応液(図中「CALB提示酵母」)では、乳酸エチルの標品と同様のピークが観察されたが、pCAS−C組換え酵母を添加した反応液ではこのようなピークは得られなかった。
標品の検量線から算定したところ、野生型CALB表層提示酵母を用いて上記条件で合成された乳酸エチルの量は43.5mMであり、収率は43.5%であった。
本発明の酵母の表層提示CALBは、熱安定性が高く、高いリパーゼ活性を有する。また、表層提示CALBは、特別な化学修飾を必要としない。したがって、一般的なリパーゼが用いられる重要な触媒反応であるエステル結合の分解反応、エステル合成反応、エステル交換反応、様々なキラル化合物の不斉合成に、効率的かつ安価に利用可能である。さらに、本発明によれば、CALB表層提示酵母を用いて効率よく乳酸エチルを製造でき、生分解性プラスチックのポリ乳酸の製造時に、重要な工程を生体触媒で行うことができる。
プラスミドpCAS-FLAGR-CALBの模式図である。 野生型CALB表層提示酵母MT8-1/pCAS-FLAGR-CALBの細胞形態を示す位相差顕微鏡写真および免疫蛍光顕微鏡写真である。 野生型CALB表層提示酵母およびROL表層提示酵母による培地中のハロ形成を示す写真である。 野生型CALB表層提示酵母およびCALB変異体表層提示酵母による培地中のハロ形成を示す写真である。 野生型CALB表層提示酵母およびpCAS−C組換え酵母の培養中の細胞増殖の経時変化を示すグラフである。 野生型CALB表層提示酵母およびpCAS−C組換え酵母の培養中のリパーゼ活性の経時変化を示すグラフである。 p−ニトロフェニルブチレートを基質として用いて測定した野生型CALB表層提示酵母およびCALB変異体表層提示酵母のリパーゼ活性を示すグラフである。 フルオレセインジエステルを基質として用いて測定した野生型CALB表層提示酵母およびCALB変異体表層提示酵母のリパーゼ活性を示すグラフである。 表層提示野生型CALBおよび表層提示野生型ROLの基質特異性を示すグラフである。 表層提示野生型CALBおよび表層提示野生型ROLを種々の温度で30分間加熱して不活性化させた後の残存活性を示すグラフである。 表層提示野生型CALBおよび表層提示野生型ROLを60℃で種々の時間にわたって加熱処理した後の残存酵素活性を示すグラフである。 野生型CALB表層提示酵母またはpCAS−C組換え酵母(コントロール酵母)を添加した乳酸およびエタノールの反応液におけるHPLC分析の結果を示すクロマトグラムである。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列からなるカンジダ・アンタークティカ由来リパーゼB(CALB)またはその変異体を細胞表層に提示する酵母。
  2. 前記変異体が、
    配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列において、
    (1)−2位のリジン残基および/または−1位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (2)308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
    (3)−2位のリジン残基および/または−1位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換され、かつ308位のリジン残基および/または309位のアルギニン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、
    請求項1に記載の酵母。
  3. 前記変異体が、以下からなる群から選択される、請求項2に記載の酵母:
    配列表の配列番号2の−7位のアラニン残基から317位のプロリン残基までのアミノ酸配列において、
    (1)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (2)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (3)308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (4)308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (5)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (6)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれリジン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (7)−2位および−1位がそれぞれリジン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド;および
    (8)−2位および−1位がそれぞれアラニン残基であり、かつ308位および309位がそれぞれアラニン残基であるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  4. 乳酸エステルの製造方法であって、
    請求項1から3のいずれかに記載の酵母の存在下で、アルコールおよび乳酸を反応させる工程
    を含む、方法。
  5. 前記アルコールがエタノールである、請求項4に記載の方法。
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