JP2021521821A - 粘性が低下した表現型を含む糸状菌株 - Google Patents

粘性が低下した表現型を含む糸状菌株 Download PDF

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Abstract

本開示の本菌株及び方法は、変化した表現型、変化した形態、変化した増殖特性等を有する変異菌株を生じさせる、糸状菌における遺伝子改変に関する。より詳細には、本明細書に提示及び記載したように、粘性が低下した表現型を含むそのような糸状菌の変異菌株は、深部培養中における増殖のために(例えば、商業的用途の酵素及びその他のタンパク質若しくは代謝産物を大量生産するために)特に適合する。
【選択図】図1

Description

本開示は、一般に、生物学、分子生物学、生体流動学、糸状菌、工業用タンパク質産生等の分野に関する。より特別には、本開示の本菌株及び方法は、変化した表現型、変化した形態、変化した増殖特性等を有する変異菌株を生じさせる、糸状菌における遺伝子改変に関する。より詳細には、本明細書に提示及び記載したように、そのような糸状菌の変異菌株は、深部培養中における増殖のために(例えば、商業的用途の酵素及びその他のタンパク質若しくは代謝産物を大量生産するために)特に適合する。
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に援用される、2018年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/661,658号に基づく優先権を主張するものである。
配列表の参照
「NB40808−WO−PCT_SequenceListing.txt」と名付けられた、配列表のテキストファイルの電子的提出の内容は、2019年4月5日に作製され、サイズは184KBであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
糸状菌は、天然及び異種タンパク質を高レベルに発現させることができ、それらを工業用、製薬用、動物の健康用、食品及び飲料用途等の目的の酵素及び他のタンパク質及び/又は代謝産物を大量生産するために特に適合させる。糸状菌は、典型的にはバイオリアクター(発酵槽)内の菌糸体用深部培養中において増殖させられ、そのバイオリアクターは、酸素及び栄養分を培養培地(即ち、培養ブロス)内に導入して分布させるために適合する。菌糸体の形態学的特徴は、培養培地(ブロス)の流動学的特性に影響を及ぼし、これによりバイオリアクターの性能に影響を及ぼす。
例えば、糸状菌の宿主トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)では、多数の天然及び異種タンパク質が効率的に分泌され、高い比生産性(Qp)及びグルコースの収率の両方を生じさせる。しかし、トリコデルマプロセス(即ち、一般に糸状菌)に対する能力要件は、体積生産性が低いために極めて高い。例えば、低い体積生産性は、高い培養ブロスの粘性及び酸素移動制限のためにバイオマスレベルを制限する必要によって誘発される。
一般に、ブロスの粘性が高いほど、酸素及び栄養分の分布が不均一になり、培養を撹拌するために必要とされるエネルギーが高くなる。例えば、一部の場合には、培養ブロスの粘性は酸素及び栄養分の溶解を有意に妨害するのに十分な程高くなり、それにより真菌の増殖及び/又は真菌の生成物産生に有害な影響を及ぼす。更に、バイオリアクター内の粘性ブロスを混合して通気するために必要とされる出力は、生産コストを有意に増大させ、動力及び電源装置に関してより高額の設備投資を招く可能性がある。従って、概して上述したように、当分野においては、改良された体積効率、強化された/一様である酸素分布、低下した細胞ブロス粘性、高比生産性、改良された炭素源の収率、減少したバイオリアクターの運転費、変化した(細胞)表現型、変化した(細胞)形態、変化した(細胞)増殖特性等を含むがそれらに限定されない多数の進行中及び満たされていないニーズが残っている。
本明細書では、変化した表現型、変化した形態、変化した増殖特性等を有する変異菌株を生じさせる遺伝子改変を有する糸状菌に関連する菌株、方法、構築物等について記載する。例えば、本開示の所定の実施形態は、親菌株に由来する糸状菌の変異菌株であって、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異菌株に関する。
従って、所定の実施形態では、本開示は、親菌株に由来する糸状菌の変異菌株であって、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33及び配列番号35の何れか1つとの約50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株の細胞が親細胞と比較して粘性が低下した表現型を含む変異菌株に関する。従って、所定の他の実施形態では、粘性が低下した表現型を含むそのような変異菌株は、(a)深部培養中における好気発酵中において、親菌株の細胞と比較して、予め選択された溶存酸素量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(b)予め選択された撹拌量で、親菌株の細胞と比較して増加した溶存酸素量を維持する細胞ブロスを産生する。
従って、他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも3’領域で欠失するか、又は破壊することを含む。他の実施形態では、遺伝子によってコードされるSSB7タンパク質は、SSB7のC末端の少なくとも最後の400アミノ酸位置の欠失、SSB7のC末端の少なくとも最後の600アミノ酸位置の欠失、SSB7のC末端の少なくとも最後の800アミノ酸位置の欠失又はSSB7のC末端の少なくとも最後の1,000アミノ酸位置の欠失を含む。他の実施形態では、遺伝子によってコードされるSSB7タンパク質は、完全に欠失している。
従って、所定の他の実施形態では、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の400アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の600アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の800アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、又はssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の1,000アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊している。
関連する実施形態では、親菌株及び変異菌株は、同一の目的タンパク質(POI)をコードする遺伝子を含む。他の実施形態では、変異菌株は、親菌株と比較してバイオマス単位量当たり実質的に同一量の目的タンパク質を産生する。他の実施形態では、変異菌株は、バイオマス単位量当たりで親菌株より多量の目的タンパク質を産生する。
他の実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門(phylum Ascomycota)の糸状菌である。他の実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ(Trichoderma)種真菌、フザリウム(Fusarium)種真菌、ニューロスポラ(Neurospora)種真菌、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種真菌、タラロマイセス(Talaromyces)種真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌及びペニシリウム(Penicillium)種真菌から成る群から選択される。
従って、所定の他の実施形態では、本開示は、本開示の粘性が低下した変異体によって生成される1種以上の目的タンパク質に向けられる。
所定の他の実施形態では、変異菌株は、MPG1タンパク質、SFB3タンパク質、SEB1タンパク質、CRZ1タンパク質及び/又はGAS1タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子改変を更に含む。
他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のssb7又はその相補的配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号19のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号20のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号21のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。
更に他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号22の領域Aをコードする核酸配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号23の領域Bをコードする核酸配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号24の領域Cをコードする核酸配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号25の領域Dをコードする核酸配列とハイブリダイズする。
他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存アミノ酸配列をコードする核酸配列とハイブリダイズし、保存配列は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号26〜30から成る群から選択される。
所定の他の実施形態では、本開示は、糸状菌細胞の粘性が低下した菌株を構築するための方法であって、(a)糸状菌の親菌株を入手するステップ、及び、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33又は配列番号35との少なくとも50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子改変するステップ、及び(b)ステップ(a)において改変された変異菌株を単離するステップを含み、ここで変異菌株の細胞が親細胞と比較して粘性が低下した表現型を含む方法に向けられる。従って、関連する実施形態では、深部培養中における好気発酵中の変異菌株は、(a)親菌株の細胞と比較して、予め選択された溶存酸素量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(b)予め選択された撹拌量で、親菌株の細胞と比較して増加した溶存酸素量を維持する細胞ブロスを産生する。
従って、本方法の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも3’領域で欠失するか、又は破壊することを含む。
所定の他の実施形態では、遺伝子によってコードされるSSB7タンパク質は、SSB7のC末端の少なくとも最後の400アミノ酸位置の欠失、SSB7のC末端の少なくとも最後の600アミノ酸位置の欠失、SSB7のC末端の少なくとも最後の800アミノ酸位置の欠失、SSB7のC末端の少なくとも最後の1,000アミノ酸位置の欠失等を含む。本方法の他の実施形態では、遺伝子によってコードされるSSB7タンパク質は、完全に欠失している。
本方法の所定の他の実施形態では、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の400アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の600アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の800アミノ酸位置をコードする3’領域で破壊しており、ssb7遺伝子は、SSB7のC末端の最後の1,000アミノ酸位置をコードする3’領域等で破壊している。
従って、所定の他の実施形態では、そのような真菌細胞は、目的タンパク質をコードする遺伝子を含む。他の実施形態では、変異菌株は、親菌株と比較してバイオマス単位量当たり実質的に同一量の目的タンパク質を産生する。他の実施形態では、変異菌株は、バイオマス単位量当たりで親菌株より多量の目的タンパク質を産生する。従って、所定の他の実施形態では、本開示は、本開示の変異菌株によって生成される目的タンパク質に向けられる。
本方法の所定の他の実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門(phylum Ascomycota)の糸状菌である。他の実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ(Trichoderma)種真菌、フザリウム(Fusarium)種真菌、ニューロスポラ(Neurospora)種真菌、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種真菌、タラロマイセス(Talaromyces)種真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌及びペニシリウム(Penicillium)種から成る群から選択される。
本方法の他の実施形態では、変異菌株は、MPG1タンパク質、SFB3タンパク質、SEB1タンパク質、CRZ1タンパク質及び/又はGAS1タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子改変を更に含む。
本方法の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のssb7遺伝子又はその相補的配列とハイブリダイズする。所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号19のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号20のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。又別の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号21のssb7エキソン又はその相補的配列とハイブリダイズする。
本方法の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号22の領域Aをコードする核酸配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号23の領域Bをコードする核酸配列とハイブリダイズする。又別の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号24の領域Cをコードする核酸配列とハイブリダイズする。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号25の領域Dをコードする核酸配列とハイブリダイズする。本方法の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存アミノ酸配列をコードする核酸配列とハイブリダイズし、保存配列は、配列番号26〜30から成る群から選択される。
所定の他の実施形態では、本開示は、粘性が低下した表現型を含む糸状菌細胞の変異菌株をスクリーニング及び単離するための方法であって、(a)配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33又は配列番号35と少なくとも50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする親真菌株内の遺伝子を遺伝子改変するステップ、及び(b)ステップ(a)において改変された変異菌株の細胞形態を親菌株の細胞形態と比較して粘性が低下した表現型についてスクリーニングするステップ、及び(c)粘性が低下した表現型を含むステップ(b)の改変変異菌株を単離するステップを含み、ここで深部培養中での好気発酵中の変異菌株は、(a)親菌株の細胞と比較して、予め選択された溶存酸素含量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(b)予め選択された撹拌量で、親菌株の細胞と比較して増加した溶存酸素含量を維持する細胞ブロスを産生する方法に向けられる。他の実施形態では、ステップ(c)の変異菌株は、それが由来する親菌株と比較して、より短い菌糸体(図2)に関連する粘性が低下した表現型を含む。
生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、配列番号2の天然SSB7タンパク質をコードする野生型T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子の核酸配列である。
配列番号2は、配列番号1によってコードされた天然T.リーゼイ(T.reesei)SSB7タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号3は、フレームシフト(fs)突然変異及びssb7遺伝子の最後のイントロン前の未成熟終止コドンを生じさせる、エキソン2におけるG(ΔG)の欠失を含む対立遺伝子ssb7(fs)の核酸配列である。
配列番号4は、配列番号3の対立遺伝子ssb7(fs)によってコードされた変異SSB7タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号5は、図6Aに提示した合成gBlock核酸配列である。
配列番号6は、図6Bに提示したssb7遺伝子のTS1を標的とする合成gBlockシングルガイドRNA(sgRNA)発現カセットである。
配列番号7は、図6Cに提示したssb7遺伝子のTS2を標的とする合成gBlockシングルガイドRNA(sgRNA)発現カセットである。
配列番号8は、フザリウム(Fusarium)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号9は、ニューロスポラ(Neurospora)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号10は、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号11は、タラロマイセス(Talaromyces)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号12は、アスペルギルス(Aspergillus)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号13は、ペニシリウム(Penicillium)種のSSB7タンパク質オルソログのアミノ酸配列である。
配列番号14は、T.リーゼイ(T.reesei)MPG1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号15は、T.リーゼイ(T.reesei)SFB3タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号16は、T.リーゼイ(T.reesei)SEB1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号17は、T.リーゼイ(T.reesei)CRZ1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号18は、T.リーゼイ(T.reesei)GAS1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号19は、野生型T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子エキソン1の核酸配列である。
配列番号20は、野生型T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子エキソン2の核酸配列である。
配列番号21は、野生型T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子エキソン3の核酸配列である。
配列番号22は、SSB7タンパク質領域AをコードするT.リーゼイ(T.reesei)核酸配列である。
配列番号23は、SSB7タンパク質領域BをコードするT.リーゼイ(T.reesei)核酸配列である。
配列番号24は、SSB7タンパク質領域CをコードするT.リーゼイ(T.reesei)核酸配列である。
配列番号25は、SSB7タンパク質領域DをコードするT.リーゼイ(T.reesei)核酸配列である。
配列番号26は、図9Cに示した保存SSB7アミノ酸配列である。
配列番号27は、図9Cに示した保存SSB7アミノ酸配列である。
配列番号28は、図9Dに示した保存SSB7アミノ酸配列である。
配列番号29は、図9Dに示した保存SSB7アミノ酸配列である。
配列番号30は、図9Eに示した保存SSB7アミノ酸配列である。
配列番号31は、T.アトロビリデ(T.atroviride)SSB7タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号32は、配列番号33の予測SSB7タンパク質をコードするT.リーゼイ(T.reesei)(QM6a菌株)ssb7遺伝子の核酸配列予測である。
配列番号33は、配列番号32によってコードされたT.リーゼイ(T.reesei)(QM6a菌株)予測SSB7タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号34は、配列番号35の予測SSB7タンパク質をコードするT.リーゼイ(T.reesei)(RUT−C30菌株)ssb7遺伝子の核酸配列予測である。
配列番号35は、配列番号34によってコードされたT.リーゼイ(T.reesei)(RUT−C30菌株)予測SSB7タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号36は、T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子転写産物の5’−UTR(未翻訳領域)である。
配列番号37は、T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子転写産物の3’−UTR(未翻訳領域)である。
配列番号38は、天然T.リーゼイ(T.reesei)Nik1タンパク質のアミノ酸配列である。
本明細書に開示及び例示したssb7対立遺伝子を示している、ssb7遺伝子座の略図である。より詳細には、実施例のセクションに提示及び記載したように、糸状菌のそのような(即ち、変異ssb7対立遺伝子を含む)変異菌株は、野生型ssb7対立遺伝子を含む親(コントロール)菌株と比較して、粘性が低下した(即ち、粘性が低下した発酵ブロスを産生する)表現型/形態を含む。従って、図1Aに示したように、ssb7遺伝子についての予測SSB7タンパク質コーディング配列に対応する領域(即ち、エキソン)は、イントロンの位置を示すエキソン間に引かれた線と共に、矢印として示した。様々なバージョンのssb7についての遺伝子予測は、それらの表示名(例えば、「QM6a JGI ssb7 PID 108712」及び「RUT−C30 PID 82397」)並びに本明細書に記載した予測(「SSB7 CDS (funannotate)」)によって示した。この遺伝子座にマッピングされたRNAシーケンシングリードの要約は、カバレッジマップ(RNAリードカバレッジ)に表示した。funannotateによって予測された5’及び3’−未翻訳領域(UTR)は、更にそのようなものとして指示及び表示した。配列の下の各トラックは、本明細書に開示及び例示した5種の対立遺伝子(例えば、対立遺伝子ssb7(fs)、対立遺伝子ssb7(311)、対立遺伝子ssb7(TS1)、対立遺伝子ssb7(TS2)及び対立遺伝子ssb7(339fs))を例示している。(例えば、「pRATT311左フランク」、「pRATT311右フランク」、「pRATT339左フランク」及び「pRATT339右フランク」と表示した)ボックスは、ssb7遺伝子座のマーカー(例えば、pyr2)の統合を標的とするために使用される相同ボックスを示し;(例えば、「TS1」及び「TS2」と表示された)ボックスは、cas9媒介性遺伝子編集のために使用される標的配列(TS)を示している。対立遺伝子内に存在する多型(即ち、突然変異及びインデル)は、小さな非表示(即ち、この分解能で可能な限り最善)のボックスとして提示した。更に、対立遺伝子の注釈の下には、下記の実施例1で詳述するように、その中のアミノ酸保存の4つの領域のコーディング配列内の場所を示している、A〜Dと表示したボックス(即ち、図1A、領域A〜D)が存在する。明確にするために、図1Bは、より高い配列解像度で、対立遺伝子(ssb7(fs)、ssb7(311)、ssb7(TS1)、ssb7(TS2)及びssb7(399fs))の各々について菌株Morph 77B7において同定されたフレームシフト(fs)部位の周囲の遺伝子改変を全て示している。
DNA断片1及び6を用いた形質転換によるT.リーゼイ(T.reesei)突然変異菌株Morph 77B7菌糸表現型の相補性を示す図である。図2に示したように、DNA断片1(図2、パネル1A及びパネル1B)並びにDNA断片6(図2、パネル6A及びパネル6B)は、各DNA断片(即ち、DNA断片1及び6)についての独立形質転換体を表す。大多数のDNA断片を有する形質転換体は、突然変異菌Morph 77B7について観察された高分岐及び粘性菌糸表現型を維持していた。例えば、図2に示したように、パネル1A及び1BのDNA断片1を含む形質転換体(菌株Morph 77B7内の他の突然変異遺伝子座の1つをコードする)(即ち、PID 112328)は、この高分岐及び粘性菌糸表現型を例示している。これとは対照的に、図2のパネル6A及び6Bに示したように、DNA断片6を含む(即ち、PID 108712/SSB7をコードする)形質転換体だけが、少なくとも部分的に、より粘性が低く低分岐の菌糸体を備えるようにこの表現型を逆転させた。
天然SSB7タンパク質(図3B、配列番号2)をコードするT.リーゼイ(T.reesei)野生型ssb7遺伝子(図3A、配列番号1)の核酸配列及び変異SSB7タンパク質(即ち、C末端が切断されている)をコードするT.リーゼイ(T.reesei)突然変異ssb7対立遺伝子(ssb7(fs)、図3C、配列番号3)の核酸配列を示す図であり、ここでコーディング配列領域は、大文字で示されており、イントロンはイタリック体の小文字で示されている。図3Cに示したように、突然変異ssb7対立遺伝子の核酸配列内の(ΔG)フレームシフト突然変異の部位の隣接ヌクレオチドは、ボールド体の大文字及び下線を付した文字GAとして示した。
エキソン1(図4A、配列番号19)、エキソン2(図4B、配列番号20)及びエキソン3(図4C、配列番号21)としてのT.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子(ORF)コーディング配列を示す図である。
SSB7タンパク質のアミノ酸保存を例示しているグラフ表示である。より詳細には、図5は、N末端MITドメインに渡るアミノ酸が欠如する短鎖タンパク質の予測を排除している、353個の子嚢菌類(Ascomycete)ホモログのMUSCLEアラインメントのグラフ表示である。図5の底部には、T.リーゼイ(T.reesei)SSB7タンパク質アミノ酸配列を示すボックスを示したが、ここでアミノ酸(残基)は、アラインメントされた配列の85%超において保存されている場合は黒色の影付き(又はさもなければライトグレーの)ボックス内に示した。図5に示したように、配列アラインメントにおけるアミノ酸配列ギャップは、残基間のグレーの影付き線として示した。残基の下方の単一のグレーのボックスは、PID 108712/SSB7についてダウンロードされたGeneBank EGR47392において注釈が付けられたMITドメインを示している。平均の疎水性及び等電点(I)も又図5にプロット及び提示した。アラインメントにおけるアミノ酸同一性は、前記の直ぐ上にプロットした。バーの高さは、アミノ酸同一性と比例している。グレーのバーはアラインメントにおいて少なくとも30%の配列と同一である、黒色のバーは30%未満の配列と同一である残基を表している。アラインメントは、A〜Dと表示したボックスとして示した領域A〜DであるSSB7ホモログにおける4つの保存領域を解明した。領域Aは、MITドメインに対応する。
ssb7遺伝子座でのcas9媒介性ゲノム編集のためにpTrex2g MoCasに追加された合成DNA配列を示す図である。例えば、配列番号5(図6A)は、ssb7遺伝子座を編集するための配列情報を備えるIDT gBlock核酸配列であり、配列番号6(図6B)は、77B7 TS1 sgRNAを発現させるためのIDT gBlockであり、配列番号7(図6C)は、77B7 TS2 sgRNAを発現させるためのIDT gBlockである。図6Aに示したように、一重下線付きのヌクレオチドは、インビトロプラスミドアセンブリーのために使用されるpTrex2gHyg MoCasと配列同一性の領域を示し、二重下線付ヌクレオチドは、ガイドRNA配列に対応する20ntの標的部位を示し、大文字ボールド体の残基は、標的部位に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を変化させるGからCへのヌクレオチド変化を表し、グレーの影付きヌクレオチドは、野生型遺伝子内の7個のG’である6個のG残基を示している。図6B及び図6Cに示したように、一重下線付のヌクレオチドは、インビトロプラスミドアセンブリーのために使用されるpTrex2gHyg MoCasとの配列同一性の領域を示しており、小文字のヌクレオチドは、T.リーゼイ(T.reesei)ゲノム内の標的部位を示しており、二重下線付ヌクレオチドは、sgRNAの配列を示し、グレーの影付きヌクレオチドはイントロン配列を示している。
対立遺伝子ssb7(311)及び対立遺伝子ssb7(TS1)と共に発酵ブロスの粘性の低下を示しているデータを示す図である。より詳細には、図7は、(親)TrGA 29−9及び(娘)ssb7突然変異体由来菌株のバイオリアクター発酵についての「撹拌」及び「溶存酸素(DO)」プロフィールを示す図である。撹拌量(図7、「x」でマークした左のy軸(RPM);t=0前の上向きの傾向)及び溶存酸素(図7、「|」でマークした右のy軸(DO%、;t=0前の下向きの傾向)は、撹拌の追加及びDO制限の測定値を計算するために使用された時間枠(±10時間)について、供給開始を調整した発酵時間(x軸)に対してプロットした。親TrGA 29−9(「29−9」:黒色)並びに2つのssb7突然変異(娘)菌株(TrGA 29−9 ssb7(311):グレー)及び(TrGA 29−9 ssb7(TS1):白色)のプロフィールをプロットした。
一般に野生型T.リーゼイ(T.reesei)SSB7タンパク質(配列番号2)のアミノ酸組成及び関連特性を示す図である。図8Aは、配列番号2のPEPSTATS分析を示す図であり、ここでSSB7タンパク質は、1,308個の残基、142,540(Da)の推定(理論的)分子量、およそ6.8の等電点及び10のおよその正味荷電を含む。モルパーセント(%)に基づくと、SSB7タンパク質は、図8Aに示したように、およそ12.0%(157個)のセリン(S)残基、9.6%(126個)のアラニン(A)残基、9.6%(126個)のプロリン(P)残基、6.8%(89個)のロイシン(L)残基、5.8%(76個)のグルタミン(Q)等を含む。図8Bは、配列番号2の残基位置1〜1,308を含む天然(全長)SSB7タンパク質の疎水性プロットを示している(Kyte−Doolittle疎水性インデックス、9−残基ウィンドウ、Kyte and Doolittle,1982による)。例えば、図8C〜図8Fは、配列番号2のN末端(残基1)で始まってC末端(残基1,308)で終了するおよそ320残基ウィンドウ内のSSB7タンパク質の配列(配列番号2)中1,308個の残基を走査したSSB7タンパク質の疎水性プロットを示しており、ここで、図8Cは、SSB7タンパク質残基1〜320(配列番号2)の疎水性プロットを示し、図8Dは、SSB7タンパク質残基321〜640(配列番号2)の疎水性プロットを示し、図8Eは、SSB7タンパク質残基641〜961(配列番号2)の疎水性プロットを示し、及び図8Fは、SSB7タンパク質残基962〜1,308(配列番号2)の疎水性プロットを示している。図8Gは、図8B〜8Fにおいて使用したKyle−Doolittleアミノ酸疎水性スコアを示している。従って、図8B〜8Gに示したように、SSB7タンパク質配列の疎水性領域は、ゼロより大きいスコア値として示されており、SSB7タンパク質の親水性領域は、ゼロより小さいスコア値として示されている(例えば、図8Gの残基値を参照されたい)。例えば、図8Cは、SSB7タンパク質(N末端残基1〜320)の疎水性プロットを示しており、ここで残基1〜320の1文字アミノ酸配列は、疎水性プロットの直ぐ上に示されている。
6種の異なる子嚢菌門(Ascomycota)SSB7タンパク質オルソログとアラインメントされた野生型トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)SSB7タンパク質(略称「SID_2」;ボールド体の大文字のアミノ酸残基で示した)及び野生型トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SSB7タンパク質(略称「SID_31」)のCLUSTAL W(1.83)多重配列アラインメントを示す図である。より特別には、図9A〜9Eに示したように、フザリウム(Fusarium)種SSB7タンパク質(配列番号8;略称「SID_8」)、ニューロスポラ(Neurospora)種SSB7タンパク質(配列番号9;略称「SID_9」)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種SSB7タンパク質(配列番号10;略称「SID_10」)、タラロマイセス(Talaroymyces)種SSB7タンパク質(配列番号11;略称「SID_11」)、アスペルギルス(Aspergillus)種SSB7タンパク質(配列番号12;略称「SID_12」)、ペニシリウム(Penicillium)種SSB7タンパク質(配列番号13;略称「SID_13」)及び野生型トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SSB7タンパク質(配列番号31)をT.リーゼイ(T.reesei)SSB7タンパク質(配列番号2)とアラインメントした。図9A〜9E(即ち、アラインメントしたアミノ酸残基の下方)に示したように、星印(*)は単一の完全に保存された残基を有する位置を示し、コロン(:)は、強度に類似する特性(即ち、Gonnet PAM 250マトリックス内で>0.5のスコアリング)を有する基間の保存を示し、ピリオド(.)は、弱い類似性(即ち、Gonnet PAM 250マトリックス内で<0.5のスコアリング)を有する基間の保存を示す。
本明細書で説明及び記載したように、本開示は、当分野における、改良された体積効率、強化された/一様な酸素分布、低下した細胞ブロス粘性、高比生産性、改良された炭素源の収率、減少したバイオリアクター(発酵槽)の運転費、変化した(細胞)表現型、変化した(細胞)形態、変化した(細胞)増殖特性等を含むがそれらに限定されない、糸状菌タンパク質生産及びそれらの方法における、所定の進行中及び満たされていないニーズを取り扱う。従って、本開示の本菌株及び方法は、一般に、変化した表現型、変化した形態、変化した増殖特性等を有する変異菌株を生じさせる、糸状菌における遺伝子改変に関する。より特別には、本明細書に提示及び記載したように、そのような糸状菌の変異菌株は、酵素及びその他のタンパク質若しくは代謝産物を大量生産するために、深部培養中における増殖のために特に適合する。
従って、所定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載した親菌株に由来する糸状菌の変異菌株に関する。所定の実施形態では、そのような変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む。より特別には、所定の他の実施形態では、本開示の変異菌株(即ち、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む)は、親菌株の(即ち、深部培養中における好気発酵中の)細胞と比較して、予め選択された(即ち、深部培養中における好気発酵中の)溶存酸素(DO)量を維持するために減少した撹拌量を必要とする、及び/又は予め選択された撹拌量で、増加したDO量を維持する細胞集団を産生する細胞ブロスを産生する。
例えば、所定の実施形態では、本明細書で構築及び記載した糸状菌のそのような変異菌株は、特に本明細書では「粘性が低下した」表現型と呼ぶ変化した細胞形態表現型(例えば、実施例1〜3及び図2を参照されたい)を含む。より特別には、実施例1に提示したように、「Morph 77B7」と名付けられたT.リーゼイ(T.reesei)突然変異体は、特にその親より短くより粘性の糸状体を有する、深部液体培地中で変化した形態(表現型)を有することが観察されたが、ここでMorph 77B7突然変異体は、更に親を含有する培養と比較して、増殖中により高レベルの溶存酸素(DO)も又示した(実施例1、表1を参照されたい)。
更に、実施例1に記載したように、突然変異(Morph 77B7)表現型に相補性を示したのは、本明細書で「ssb7」と名付けられた唯一の野生型遺伝子座だけであったが、ここでssb7遺伝子は、同一DNA配列上の他のタンパク質の予測と部分的に重複する、新規に予測されたタンパク質SSB7、例えばトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)QM6aタンパク質ID(PID)108712(The Genome Portal of the Department of Energy Joint Genome Institute,Grigoriev et al.,Nucleic Acids Res.,2011)をコードする。同様に、同定されたssb7突然変異対立遺伝子は、エキソン2における単一グアニン(G)ヌクレオチド欠失(ΔG)(T.リーゼイ(T.reesei)QM6a Scaffold 13、167404)を含むが、ここで(ssb7変異対立遺伝子の)エキソン2におけるGの欠失は、フレームシフト(fs)突然変異及びその変異対立遺伝子が「ssb7(fs)」と名付けられたssb7遺伝子の最終イントロン(イントロン2)の前の未成熟終止コドンを生じさせる。
本開示の実施例2では、更にssb7突然変異が発酵(培養)ブロスの粘性の低下(即ち、変化した形態/表現型)の原因であることの妥当性を検証しているが、ここでssb7遺伝子座は、詳細には親T.リーゼイ(T.reesei)菌株において突然変異していた。例えば、本明細書で「ssb7(311)」及び「ssb7(TS1)」と名付けられた対立遺伝子を生成する、相同組換えによるssb7突然変異生成を標的とするために、2種の異なる方法が使用されたが、ここでssb7の両方の対立遺伝子は、粘性が低下した表現型を示した。
本開示の実施例3は、追加してそのようなssb7突然変異体の有用性を試験及び確証したが、ここで「ssb7(311)」、「ssb7(339fs)」及び「ssb7(TS2)」と名付けられたssb7の3種の突然変異対立遺伝子についても又、セルラーゼの天然カクテルを発現する異なるトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)系統(「T4abc」と名付けられた)において評価された。このバックグラウンドに由来するこれらの突然変異体も又、本明細書に記載した粘性が低下した表現型を証明した。
従って、本明細書で詳細に例示及び記載したように、本開示の粘性が低下した表現型を含む糸状菌のそのような変異菌株は、親菌株の細胞と比較して、深部培養中における好気発酵中の予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するために減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は深部培養中における好気発酵中の予め選択された撹拌量で、増加したDO量を維持する細胞集団を産生する。例えば、糸状菌細胞のそのような変異(娘)菌株の細胞集団は、(未改変)親細胞の細胞集団と比較して粘性が低下した菌糸表現型を示すが、その低下した粘性は、下記の実施例のセクションで詳述するように、溶存酸素(DO)量及び追加の撹拌に関連する観察所見を説明する。
従って、本開示の所定の他の実施形態は、糸状菌細胞のそのような変異菌株を構築する方法、そのような変異菌株をスクリーニングする方法、そのような変異菌株等を使用して目的タンパク質を産生する方法に関するが、ここで変異菌株は、親菌株の細胞と比較して、予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は深部培養中における好気発酵中の予め選択された撹拌量で増加したDO量を維持する細胞集団を産生する。
I.定義
本菌株及び方法を詳細に説明する前に、明確にするために以下の用語を定義する。定義されていない用語は、当分野において使用されるそれらの通例の意味に一致するはずである。他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明の組成物及び方法が属する分野の当業者であれば一般に理解する意味と同一の意味を有する。
本明細書に記載のものに類似又は同等の任意の方法及び材料は、本組成物及び方法を実施又は試験するためにも使用できるが、以下では例示的な方法及び材料について記載する。本明細書で引用した刊行物及び特許は全て、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
本明細書では、単数の冠詞「1つの」及び「その」は、別途文脈が明確に指示しない限り複数の指示対象を含む。
特許請求の範囲が任意選択的な要素を排除するように記載され得ることにも更に留意されたい。従って、この記述は、特許請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一の」、「ただ〜のみ」、「〜を除いて」、「〜を含まない」等の排他的な用語の使用、又はその「否定的な」限定若しくは条件の使用のための先行文として機能することを意図している。
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物及び方法の範囲又は精神から逸脱することなく、他の一部の実施形態の何れかの特徴から容易に分離又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載した方法は何れも、記載した事象の順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
本明細書に記載した操作、構築及び使用のための糸状菌細胞は、一般に、子嚢菌門(phylum Ascomycota)、チャワンタケ亜門(subphylum Pezizomycotina)、特に栄養菌糸状態を有する真菌に由来する。そのような生物としては、トリコデルマ(Trichoderma)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、フザリウム(Fusarium)種、ペニシリウム(Penicillium)種、クリソスポリウム(Chrysosporium)種、セファロスポリウム(Cephalosporium)種、タラロマイセス(Talaromyces)種、ゲオスミチア(Geosmithia)種、ニューロスポラ(Neurospora)種、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種等を含むがそれらに限定されない商業的に重要な工業用及び製薬用タンパク質を製造するために使用される糸状菌細胞が挙げられる。例えば、所定の実施形態では、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(以前はトリコデルマ・ロンギブラチアツム(Trichoderma longibrachiatum)及びヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)として分類されていた)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・イタコニクス(Aspergillus itaconicus)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニデユランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ソーヤエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、タラロマイセス(ゲオスミチア)・エメルソニイ(Talaromyces(Geosmithia)emersonii)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)及びクリソスポリウム・ルクノウエンセ(Chrysosporium lucknowense)(C1)を含むがそれらに限定されない糸状菌細胞及びそれらの菌株が挙げられる。
本明細書で使用するゲノム座標(例えば、Scaffold 13、167404)は、エネルギー省の共同ゲノム研究所(JGI)によって生成されたトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)QM6aゲノム配列アセンブリーのバージョン2を参照している(The Genome Portal of the Department of Energy Joint Genome Institute,Grigoriev et al.,Nucleic Acids Res 2012 Jan;40(Database issue):D26−32.doi:10.1093/nar/gkr947)。JGIが組み立てたScaffold配列は、更に、ヌクレオチドアクセッション番号GL985056.1〜GL985132.1を付してGeneBank(米国国立生物工学情報センター)に預託されている。
所定の実施形態では、本明細書に記載した操作、構築及び使用のための糸状菌細胞は、一般に子嚢菌門(phylum Ascomycota)、チャワンタケ亜門(subphylum Pezizomycotina)、特に栄養菌糸状態を有し、ssb7遺伝子(配列番号1)の遺伝子(又は遺伝子ホモログ)を含む真菌に由来する。
他の実施形態では、本開示の変異菌株(即ち、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む)は、MPG1、SFB3、SEB1、CRZ1及び/又はGAS1タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を更に含む。
本明細書で使用するT.リーゼイ(T.reesei)MPG1タンパク質は、PCT出願の国際公開第2012/145584号パンフレット(本明細書に参照により全体として組み込まれる)に記載された配列番号14のアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用するT.リーゼイ(T.reesei)SFB3タンパク質は、PCT出願の国際公開第2012/027580号パンフレット(本明細書に参照により全体として組み込まれる)に記載された配列番号15のアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用するT.リーゼイ(T.reesei)SEB1タンパク質は、PCT出願の国際公開第2012/145595号パンフレット(本明細書に参照により全体として組み込まれる)に記載された配列番号16のアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用するT.リーゼイ(T.reesei)CRZ1タンパク質は、PCT出願の国際公開第2012/145596号パンフレット(本明細書に参照により全体として組み込まれる)に記載された配列番号17のアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用するT.リーゼイ(T.reesei)GAS1タンパク質は、PCT出願の国際公開第2012/145596号パンフレット及び同第2012/145592号パンフレット(本明細書に参照により全体として組み込まれる)に記載された配列番号18のアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、本開示のトリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、PCT出願の国際公開第2016/130523号パンフレットに記載のNik1M743突然変異を含み、そのNik1M743タンパク質は、配列番号38の743位でのメチオニン置換を含む。
所定の他の実施形態では、本開示のアスペルギルス(Aspergillus)種菌株は、Nik1M786突然変異を含み、そのNik1M776タンパク質は、PCT出願の国際公開第2016/130523号パンフレット(本明細書にその全体として参照により組み込まれる)に記載したように786位でのメチオニン置換を含む。本明細書で使用する語句「親細胞」、「親真菌細胞」、「親菌株」、「親真菌株」、「糸状菌細胞の親菌株」、「参照菌株」等は、互換的に使用することができ、「未改変」親糸状菌細胞を意味する。例えば、「糸状菌細胞の親菌株」は、その中で「親」細胞のゲノムが、「親」及び「娘」細胞が唯一の遺伝子改変によってのみ相違するように糸状菌細胞の変異(娘)菌株を生成するために(例えば、親細胞内に導入された唯一の遺伝子改変によって)改変されている、又は改変可能である糸状菌の任意の細胞若しくは菌株を意味する。
本明細書で使用する語句「変異細胞」、「娘細胞」、「変異菌株」、「娘菌株」、「変異若しくは娘真菌株」、「糸状菌細胞の変異若しくは娘菌株」等は、同じ意味で用いられ、糸状菌細胞の親(若しくは参照)菌株に由来する(即ち、〜から得られた(obtained from)、又は〜から得ることができる(obtainable from))変異菌株を意味するが、ここで変異菌株は、比較によって、「親」及び「変異」菌株間の表現型の差を1つの遺伝子改変に帰せることができるように、親菌株内に存在しない唯一の遺伝子改変を含む。これを言い換えると、親菌株及び変異菌株は、変異菌株に「導入された」単一の遺伝子改変を除くと、他の点では同質遺伝子系である。従って、本開示では、親及び変異菌株は、遺伝子改変、発現表現型、形態表現型等の所定の特徴を有すると記載することができる;しかし、当業者であれば、それが技術的にはそのような特徴を有する親若しくは変異菌株の細胞であること、及び便宜上「菌株」と呼ばれることを理解するであろう。
所定の実施形態では、未改変(親)細胞は、特に、それらに由来する遺伝子改変(変異/娘)細胞と(に対して)比較した場合に、特に「コントロール細胞」若しくは「参照細胞」と呼ぶことができる。
本明細書で使用する、(未改変)親細胞(即ち、コントロール細胞)の表現型/形態を変異(娘)細胞の表現型/形態と比較すると、「親」(未改変)及び「娘」(改変)細胞が、同一条件(例えば、培地、温度、pH等の同一条件)下で増殖/培養/発酵されることは理解されるであろう。
同様に、変異(改変)娘細胞における同一POIの産生に対して(未改変)親細胞(即ち、コントロール細胞)内の目的タンパク質(POI)の産生について記載する場合に、「親」及び「変異」細胞が本質的に同一条件(例えば、培地、温度、pH等の同一条件)下で増殖/培養/発酵させられることは理解されるであろう。
本明細書で使用する「目的タンパク質」若しくは「POI」は、糸状菌細胞の深部培養における産生が所望されるタンパク質である。そのようなタンパク質(POI)は、酵素、基質結合タンパク質、界面活性タンパク質、構造的タンパク質、抗体等であってよく、高レベルで発現させることができる。従って、POIは、変異菌株及び/又は親菌株と比較して、内在性遺伝子又は異種遺伝子によってコードされ得る。(POIをコードする)異種遺伝子は、親及び/又は変異真菌株中に(例えば、本開示の1つ以上の遺伝子改変の実施前、実施中又は実施後に)導入(例えば、形質転換)され得る。POIは、細胞内で、又は分泌タンパク質として発現させることができる。一般に、POIは、工業、製薬、動物の健康、食品及び飲料の用途において商業的に重要なものであり、それらを大量に生産することが望ましい。
本明細書で使用する「好気発酵」は、酸素の存在下における増殖を指す。
本明細書で使用する用語「ブロス」、「細胞ブロス」、「発酵ブロス」及び/又は「培養ブロス」は、互換的に使用され、集合的に(i)発酵(培養)培地及び(ii)液体(深部)培養中の細胞を指す。
本明細書で使用する用語「細胞集団」は、液体(深部)培養中に存在する(インタクト細胞及び溶解細胞を含む)細胞成分を指す。細胞集団は、乾燥細胞重量又は湿潤細胞重量で表すことができる。
本明細書で使用する「粘性」は、(例えば、剪断応力又は引張応力等の)機械的応力による変形に対する流体の抵抗性の尺度である。
本開示の状況において、粘性は、機械的応力による変形に対する(上記に規定した)「細胞ブロス」の抵抗性を更に指す。従って、所定の実施形態では、「粘性」は、本明細書では(例えば、ローター/インペラーによって提供/誘導される)そのような機械的応力に対する「細胞ブロスの抵抗性の尺度」であると定義されている。しかしながら、細胞ブロスの粘性は直接的に測定するのが困難な場合があるため、予め選択された撹拌量での培養ブロスの溶存酸素(DO)含量、予め選択されたDO量を維持するために必要とされる撹拌量、予め選択されたDO量又は菌糸形態さえを維持するために細胞ブロスを撹拌するために必要とされる電力量等の粘性の間接的測定を使用することができる。
本明細書で使用する糸状菌細胞の「粘性が低下した」変異菌株は、親菌株によって生成された同等の細胞ブロスと比較して、低下した粘性(即ち、剪断応力若しくは引張応力に対する抵抗性が低下している)を有する細胞ブロスを産生する変異菌株を指す。一般に、同等の細胞ブロスは、匹敵する細胞集団を有する。所定の実施形態では、任意の直接的若しくは間接的尺度に関する変異「粘性が低下した」菌株と親菌株との相違は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、又はそれ以上である。本明細書では、糸状菌細胞ブロスの粘性を比較するための方法について記載する。
本明細書で使用する「溶存酸素」(DO)は、体積/体積単位で測定される、液体培地中に存在する酸素(O)の量を指す。DOレベルは、発酵を通して高レベルで、例えば、170〜100%と20%との間、100〜80%と20%との間、70%〜20%、65%〜20%、60%〜20%、55%〜20%、50%〜20%、45%〜20%、44%〜20%、43%〜20%、42%〜20%、41%〜20%、40%〜20%、35%〜20%、30%〜20%、25%〜20%で維持され得る。特に、DOは、発酵の開始時には高くてよく、発酵が進行するにつれて低下することが容認され得る。DOレベルは、発酵培地がかき混ぜられる速度(例えば、撹拌する、及び/又は空気若しくは酸素の添加速度)によって制御することができる。培養は、かき混ぜる(例えば、400〜700RPMの間で撹拌する)ことができ、DOレベルは、空気若しくは酸素流量及びインペラー速度を変化させることによって、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超及び55%以上に維持される。
本明細書中で使用する用語「野生型」及び「天然」は、互換的に使用され、天然において見出される遺伝子、タンパク質又は菌株を指す。
本明細書で使用する「一次遺伝的決定基」は、他の遺伝子又はその遺伝子操作の非存在下において特定の表現型を付与するために必要及び十分である、遺伝子又はその遺伝子操作を指す。より特別には、本開示の実施例のセクションにおいて記載したように、本明細書では「ssb7」と名付けられた糸状菌遺伝子は、本明細書に記載した粘性が「低下した」表現型を付与するために必要及び十分である「一次遺伝的決定基」である。
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、タンパク質又はRNAの発現をコード且つ指示する核酸を指す用語「対立遺伝子」と同義である。糸状菌の栄養型は一般に一倍体であり、このため特定の表現型を付与するには、特定の遺伝子の単一コピー(即ち、単一の対立遺伝子)で十分である。
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」(及び/又はそれらのそれぞれの複数形)は、互換的に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを指す。本明細書では、アミノ酸残基に対する従来の1文字コード又は3文字コードを使用する。ポリマーは直鎖状又は分枝状であってよく、修飾アミノ酸を含むことができ、更に非アミノ酸によって中断されてもよい。これらの用語は、更に、自然に、又は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は例えば標識化成分との共役結合等の任意の他の操作又は改変等のインターベンションによって改変されているアミノ酸ポリマーも含んでいる。又、この定義の範囲には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上のアナログを含有するポリペプチド及び当該技術分野において知られる他の改変も含まれる。
本明細書で使用する用語「誘導ポリペプチド/タンパク質」は、N末端及びC末端の何れか又は両方への1つ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の1つ又は多数の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の置換、タンパク質の一方若しくは両方の末端での、又はアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、及び/又はアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の挿入によって、タンパク質から得られるか、又は得ることができるタンパク質を指す。タンパク質誘導体の調製は、天然のタンパク質をコードするDNA配列を改変し、そのDNA配列を好適な宿主に形質転換し、その改変DNA配列を発現させて誘導タンパク質を形成することによって達成することができる。
関連(及び誘導)タンパク質には、「変異タンパク質」が含まれる。変異タンパク質は、少ない数のアミノ酸残基における置換、欠失、及び/又は挿入によって、参照/親タンパク質(例えば、野生型タンパク質)とは異なる。変異タンパク質と親タンパク質との間の異なるアミノ酸残基の数は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50又はそれ以上のアミノ酸残基であり得る。変異タンパク質は、参照タンパク質と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を共有し得る。変異タンパク質は又、選択されたモチーフ、ドメイン、エピトープ、保存領域等において、参照タンパク質と異なっていてもよい。
本明細書で使用する用語「類似配列」は、目的タンパク質(即ち、典型的には元の目的タンパク質)と類似の機能、三次構造及び/又は保存残基を提供するタンパク質内の配列を指す。例えば、αへリックス又はβシート構造を含有するエピトープ領域では、類似配列中の置換アミノ酸は、好ましくは、同一の特異的構造を維持する。この用語は、ヌクレオチド配列並びにアミノ酸配列も指す。一部の実施形態では、アミノ酸の置換が類似若しくは改良された機能を示す変異酵素を生じさせるような類似の配列が開発される。一部の実施形態では、目的タンパク質内のアミノ酸の三次構造及び/又は保存残基は、目的の断片のセグメント又はその付近に位置する。従って、例えば目的セグメント若しくは断片が例えば、αへリックス若しくはβシート構造を含有する場合、置換アミノ酸は、好ましくはその特異的構造を維持する。
本明細書で使用する用語「相同タンパク質」は、参照タンパク質との類似の活性及び/又は構造を有するタンパク質を指す。ホモログ(相同体)が必ずしも進化的に関連していることは意図されていない。従って、この用語は異なる生物から得られる(即ち、構造及び機能に関して)同一の、類似の、又は対応するタンパク質を包含することが意図されている。所定の実施形態では、ホモログは、参照タンパク質と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を共有し得る。一部の実施形態では、参照タンパク質と類似の四次、三次及び/又は一次構造を有するホモログを特定することが望ましい。一部の実施形態では、相同タンパク質は、参照タンパク質と類似の免疫応答を誘導する。一部の実施形態では、相同タンパク質は、所望の活性を備える酵素を産生するように遺伝子操作される。
配列間のアミノ酸同一性の程度は、当分野において公知の任意の好適な方法を使用して決定され得る(例えば、Smith and Waterman,1981;Needleman and Wunsch,1970;Pearson and Lipman,1988;Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、Madison、WI)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA等のプログラム;並びにDevereux et al.,1984を参照されたい)。
例えば、PILEUPは、配列相同性レベルを決定するための有用なプログラムである。PILEUPは、プログレッシブなペアワイズアラインメントを用いて1群の関連配列から多数の配列アラインメントを作成する。それは更に、アラインメントを作成するために使用されるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることができる。PILEUPは、Feng and Doolittle(1987)のプログレッシブアラインメント法の簡易版を使用する。この方法はHiggins and Sharp(1989)によって記載された方法に類似している。有用なPILEUPパラメーターは、デフォルトのギャップ・ウェイト3.00、デフォルトのギャップ長ウェイト0.10及び加重エンド・ギャップを含む。有用なアルゴリズムの又別の実施例は、Altschul et al.,1990及びKarlin et al.,1993によって記載されたBLASTアルゴリズムである。1つの特に有用なBLASTプログラムは、WU−BLAST−2プログラムである(例えば、Altschul et al.,1996を参照されたい)。パラメーター「W」、「T」及び「X」は、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff,1989を参照されたい)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M’5、N’−4及び両方の鎖の比較を使用する。
本明細書で使用する語句「実質的に類似(の)」及び「実質的に同一(の)」は、少なくとも2つの核酸若しくはポリペプチドとの関連では、通常、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドが参照(即ち、野生型)配列と比較して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%又はそれ以上の同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、標準的なパラメーターを用いて、BLAST、ALIGN及びCLUSTAL等の公知のプログラムを使用して決定することができる(例えば、Altschul,et al.,1990;Henikoff et al.,1989;Karlin et al.,1993;及びHiggins et al.,1988を参照されたい)。BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、アメリカ国立生物工学情報センターを通して公的に入手可能である。更に、FASTA(Pearson et al.,1988)を使用してデータベースを検索することができる。2つのポリペプチドが実質的に同一であるという1つの指示は、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。典型的には、保存的なアミノ酸置換により異なるポリペプチドは、免疫学的に交差反応性である。従って、ポリペプチドは、例えば、2つのペプチドが、1つの保存的な置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという又別の指示は、2個の分子が、ストリンジェントな条件下で(例えば、中程度から高度のストリンジェンンシーの範囲内で)互いにハイブリダイズすることである。
本明細書で使用する「核酸」は、ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド配列及びそれらの断片若しくは部分並びにセンス鎖又はアンチセンス鎖の何れを表していても、二本鎖であっても一本鎖であってもよい、ゲノム又は合成起源のDNA、cDNA及びRNAを指す。
本明細書で使用する用語「発現」は、本開示の核酸分子に由来するセンス(mRNA)若しくはアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を指す。発現は、更にmRNAのポリペプチドへの翻訳を指し得る。従って、用語「発現」には、ポリペプチドの産生、例えば、以下に限定されないが、転写、転写後改変、翻訳、翻訳後改変、分泌等に関与する任意のステップが含まれる。
本明細書で使用する、例えば(i)「糸状菌細胞の変異菌株が「増加した」量の目的タンパク質(POI)を発現する/生成する」及び(ii)「糸状菌細胞の変異菌株が「低下した」量の天然SSB7タンパク質を発現する/生成する」、等の語句において使用される複合用語「発現/産生する」は、本開示のそのような変異糸状菌株におけるタンパク質の発現及び産生に関与する任意のステップを含むことが意図されている。例えば、「低下した」量の天然SSB7タンパク質を発現/産生する糸状菌細胞の変異菌株を生成する手段には、ssb7遺伝子のタンパク質コーディング配列、プロモーター配列、5’−UTR配列、3’−UTR配列、それらの組合せ等の遺伝子改変(例えば、突然変異、破壊、切断、欠失等)が含まれるがそれらに限定されない。
本明細書で使用する語句「全長SSB7タンパク質」及び「天然SSB7タンパク質」は、互換的に使用することができ、特に、本開示の親真菌細胞に由来する、又はそれから得られるSSB7タンパク質配列を指す。例えば、所定の実施形態では、天然SSB7タンパク質は配列番号2のアミノ酸位置1〜1,308を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号31のアミノ酸位置1〜1,235を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号33のアミノ酸位置1〜1,465を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号35のアミノ酸位置1〜1,285を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号8のアミノ酸位置1〜1,310を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号9のアミノ酸位置1〜1,370を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号10のアミノ酸位置1〜805を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号11のアミノ酸位置1〜1,004を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号12のアミノ酸位置1〜1,215を含む。他の実施形態では、天然SSB7タンパク質は、配列番号13のアミノ酸位置1〜1,098を含む。
従って、所定の他の実施形態では、糸状菌細胞の変異菌株は、親菌株と比較して低下した量の天然SSB7タンパク質を発現/産生する。
所定の他の実施形態では、本開示は、配列番号2又は配列番号31との少なくとも約50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含むトリコデルマ(Trichoderma)種真菌細胞の変異菌株であって、予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するために低下した撹拌量を必要とする、及び/又は深部培養中における好気発酵中の予め選択された撹拌量で増加したDO量を維持する細胞集団を生成する細胞ブロスを産生する変異菌株に関する。所定の実施形態では、SSB7タンパク質をコードするトリコデルマ(Trichoderma)種遺伝子は、配列番号1、配列番号32又は配列番号34との少なくとも約55%〜99%の配列同一性を含む。他の実施形態では、トリコデルマ(Trichoderma)種ssb7遺伝子は、配列番号1、配列番号32又は配列番号34の核酸配列を含む。所定の他の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、ssb7(fs)、ssb7(311)、ssb7(339fs)、ssb7(TS1)及びssb7(TS2)から選択される対立遺伝子を含む。
従って、上記で記載し、下記の実施例のセクションでより詳細に説明するように、ssb7遺伝子は、本明細書に記載した粘性が低下した表現型を付与するために必要及び十分である一次遺伝的決定基である。従って、本開示の特定の実施形態は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含むそのような変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株であって、粘性が低下した表現型を含む変異菌株に関する。
従って、所定の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異真菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変であって、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変が配列番号1のssb7遺伝子のエキソン1〜3の何れか1つ内で発生する遺伝子改変を含む。
所定の他の実施形態では、変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、配列番号1のssb7遺伝子のエキソン1〜3の何れか2つ内で発生する。
所定の他の実施形態では、変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、配列番号1のssb7遺伝子のエキソン1〜3の全3つ内で発生する。
又別の実施形態では、変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は配列番号1のssb7遺伝子のエキソン2内で発生する。
他の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異真菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図1Aに記載したSSB7タンパク質の保存領域A、領域B、領域C及び/又は領域D内で発生するか、又はそれらを破壊する。又別の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図1Aに記載したSSB7タンパク質の保存領域A内で発生する、又はそれを破壊する。又別の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図1Aに記載したSSB7タンパク質の保存領域B内で発生するか、又はそれを破壊する。又別の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図1Aに記載したSSB7タンパク質の保存領域C内で発生する。又別の実施形態では、本開示の粘性が低下した表現型を含む変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図1Aに記載したSSB7タンパク質の保存領域D内で発生するか、又はそれを破壊する。
所定の他の実施形態では、「実質的な配列相同性」を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子は、(それと比較される)対応する核酸配列からの極めて些細な配列変化を有する、及び(それと比較される)対応する核酸配列と実質的に同一の生物学的機能を保持するDNA若しくはRNA(核酸)配列に関する。例えば、所定の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子(若しくはORF)との実質的な配列相同性を含む核酸配列は、本明細書で記載するように、コードされた遺伝子産物(SSB7タンパク質)を同定することによって評価される。
所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子(若しくはORF)との実質的な配列相同性を含む核酸配列は、核酸ハイブリダイゼーション法を用いて決定/同定される。例えば、所定の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする本開示の遺伝子若しくはポリヌクレオチド(例えば、配列番号1)との実質的な配列相同性を含むDNA/RNA配列は、ストリンジェントな条件下で、そのようなDNA/RNA配列が本開示の特定の核酸配列とハイブリダイズする能力によって同定される。
本明細書で使用する「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、相互に対して有意に同一若しくは相同であるヌクレオチド配列が相互にハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を説明することが意図されている。そのようなストリンジェントな条件は、当業者には周知である(例えば、Ausubel et al.,1995;Sambrook et al.,1989を参照されたい)。例えば、所定の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、約65〜70℃での4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション(又は約42〜50℃での4×SSC+50%のホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、その後の約65〜70℃での1×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。同様に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの非限定的な例としては、約65〜70℃での1×SSC中でのハイブリダイゼーション(又は約42〜50℃での4×SSC+50%のホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、その後の約65〜70℃での0.3×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。従って、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、約50〜60℃での4×SSC中でのハイブリダイゼーション(又は代わりに約40〜45℃での6×SSC+50%のホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、その後の約50〜60℃での2×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。上記の数値、例えば65〜70℃で又は42〜50℃で、までの中間の範囲も又、本開示に含まれることが意図されている。所定の実施形態では、SSPE(1×SSPEは、0.15MのNaCl、10mMのNaH2PO4及び1.25mMのEDTA、pH7.4である)は、ハイブリダイゼーション及び洗浄バッファー中でSSC(1×SSPEは、0.15MのNaCl及び15mMのクエン酸ナトリウムである)と置換することができる;洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後に各15分間実施される。長さが50塩基対未満であると予想されたハイブリッドのためのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの溶融温度(T)より5〜10℃低くなくてはならないが、ここでTは、下記の方程式に従って決定される。長さが18塩基対未満であるハイブリッドのためには、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対の間のハイブリッドについては、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(G+C%)−(600/N)(式中、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCについての[Na+]=0.165M))。当業者であれば、核酸分子の例えばニトロセルロース膜若しくはナイロン膜等への非特異的ハイブリダイゼーションを減少させるために、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄バッファーに、ブロッキング剤(例えば、BSA若しくはサケ若しくはニシン精子キャリアDNA)、洗剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、フィコール、PVP等を含むがそれらに限定されない追加の試薬を添加できることは認識できるであろう。ナイロン膜を使用する場合は、特に、追加の、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、約65℃で0.25〜0.5MのNaH2PO4、7%のSDS中でのハイブリダイゼーション、その後の65℃での0.02MのNaH2PO4、1%のSDS中又は代わりに0.2×SSC、1%のSDS中での1回以上の洗浄である(例えば、Church and Gilbert,1984を参照されたい)。
従って、本開示の所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号1のssb7遺伝子又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号31のssb7遺伝子又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号32のssb7遺伝子又はその相補的配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号34のssb7遺伝子又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号1、配列番号32、配列番号34のssb7遺伝子又はその相補的配列のオープンリーディングフレーム(ORF)と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。
所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号19のエキソン1又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。別の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号20のエキソン2又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。別の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、配列番号21のエキソン3又はその相補的配列と高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。
所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存領域A(配列番号22)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存領域B(配列番号23)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存領域C(配列番号24)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。又別の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存領域D(配列番号25)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。
所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存配列1(配列番号26)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存配列2(配列番号27)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存配列3(配列番号28)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存配列4(配列番号29)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。更に他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする子嚢菌門(Ascomycota)真菌遺伝子は、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSSB7タンパク質の保存配列5(配列番号30)をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含む。
従って、概して上述したように、糸状菌細胞の変異菌株は、SSB7をコードする遺伝子の「遺伝子改変」を含み、この遺伝子改変は、(未改変)親細胞と比較される。
本明細書で使用する用語「改変」及び「遺伝子改変」は、互換的に使用され、以下の:(a)遺伝子内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去、又は遺伝子の転写若しくは翻訳のために必要とされる調節エレメント内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA等)(f)特異的突然変異誘発(CRISPR/Cas9を介した突然変異誘発を含むがそれらに限定されない)及び/又は(g)本明細書に開示した任意の1つ以上の遺伝子のランダム突然変異誘発。例えば、本明細書で使用する遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株としては、本明細書に開示したssb7遺伝子の遺伝子改変が挙げられるがそれには限定されない。従って、以下でより詳細に記載するように、様々な分子生物学的方法は周知であり、当業者であれば、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む糸状菌細胞のそのような変異菌株を生成/構築するために利用することができる。
本明細書で使用する「SSB7タンパク質をコードする遺伝子内の1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去」には、遺伝子のコーディング配列(即ち、エキソン)、非コーディング介在(イントロン)配列、プロモーター配列、5’−UTR配列、3’−UTR配列等の遺伝子改変が含まれるが、それらに限定されない。
従って、所定の実施形態では、遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする内在性遺伝子を排除するための遺伝子欠失技術によって構築される。本明細書で使用する「遺伝子の欠失」若しくは「遺伝子欠失」は、宿主細胞のゲノムからの遺伝子のコーディング配列の完全な除去を指す。遺伝子が遺伝子のコーディング配列に直接隣接して位置していない制御エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)を含む場合、遺伝子の欠失は、コーディング配列の欠失を指し、及び任意選択的に、例えば、プロモーター配列及び/又はターミネーター配列を含むがこれらに限定されない隣接エンハンサーエレメントの欠失を指す。
本明細書で使用する「遺伝子の部分的欠失」若しくは「部分的欠失遺伝子」は、宿主細胞のゲノムからの遺伝子のコーディング配列の部分的除去を指す。例えば、配列番号2のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)SSB7タンパク質をコードする配列番号1のssb7遺伝子は、エキソン1〜3(それぞれ、配列番号19〜23)のコーディング配列(CDS)を含む。例えば、下記に記載する所定の実施形態では、ssb7遺伝子の「部分的欠失」には、ssb7遺伝子のエキソン1〜3の何れか1つ以上の欠失が含まれるがそれらに限定されない。
標的遺伝子が遺伝子のコーディング配列に直接隣接して位置していない制御エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)を含む場合、「遺伝子の部分的欠失」は、コーディング配列の部分的欠失を指す、及び任意選択的に、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を含むがそれらに限定されない隣接エンハンサーエレメントの欠失を指す。
本明細書で使用する「遺伝子の破壊」、「遺伝子破壊」、「遺伝子の不活化」及び「遺伝子不活化」は、互換的に使用され、標的遺伝子を実質的に破壊/不活化する任意の遺伝子改変を広く指す。例示的な遺伝子破壊方法には、限定されないがポリペプチドコーディング配列(CDS)、プロモーター、エンハンサー又は又別の調節エレメントを含む遺伝子の任意の部分の完全若しくは部分的な消失又は同一物の突然変異誘発が含まれ、ここで突然変異誘発は、標的遺伝子を破壊/不活化し、機能的遺伝子産物(即ち、タンパク質)の産生を実質的に減少若しくは防止する、置換、挿入、欠失、逆位並びにそれらの任意の組合せ及びそれらの変形を包含する。本開示の所定の実施形態では、そのような遺伝子破壊は、宿主細胞がコードされたssb7遺伝子産物を発現/産生することを妨害する。
他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、確立されたアンチセンス(遺伝子サイレンシング)技術を使用して、即ち、その遺伝子の核酸配列に相補的であるヌクレオチド配列(例えば、RNAi、siRNA、miRNA等)を使用してダウンレギュレートされる。
所定の他の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、CRISPR/Cas9遺伝子編集、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)遺伝子編集、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ編集(TALEN)、ホーミング(メガ)ヌクレアーゼ編集等の確立された遺伝子編集技術を使用して遺伝子改変される。
所定の他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、遺伝子変換のプロセスによって構築(即ち、遺伝子改変)される(例えば、Iglesias and Trautner,1983を参照されたい)。
他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、化学的変異誘発(例えば、Hopwood,1970を参照されたい)及び転座(例えば、Youngman et al.,1983を参照されたい)を含むがそれらに限定されない、当分野において周知の方法を使用して、ランダム突然変異誘発又は特異的変異誘発によって構築(即ち、遺伝子改変)される。
例えば、本明細書に開示した1つ以上の遺伝子のそのような遺伝子改変は、遺伝子のプロモーターの効率を減少させ、エンハンサーの効率を減少させ、遺伝子のmRNAのスプライシング若しくは編集を妨害し、遺伝子のmRNAの翻訳を妨害し、全長タンパク質の翻訳を防止するために遺伝子のコーディング配列内に終止コドンを導入し、低活性若しくは不活性のタンパク質を産生するためにタンパク質のコーディング配列を変化させ、タンパク質と他の核タンパク質構成成分との相互作用を減少させ、低安定性タンパク質を産生するため、若しくはタンパク質を破壊の標的とするため、若しくはタンパク質がミスフォールドする、若しくは(例えば、グリコシル化により)不正確に改変されることを誘発するため、若しくはタンパク質の細胞輸送を妨害するためにタンパク質のコーディング配列を変化させる。
所定の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、変異宿主細胞によって発現/産生した天然SSB7の量を減少させるが、ここで発現/産生した天然SSB7タンパク質の減少した量は、当業者には公知の方法を使用して、検出、測定、アッセイ等される。従って、当業者であれば、本開示の粘性が低下した表現型を含む糸状菌細胞のそのような(突然変異した)変異菌株を同定するために実施例のセクションに記載したスクリーニング法を容易に採用及び/又は修正することができる。例えば、所定の実施形態では、発現/産生した天然SSB7の減少した量は、本明細書に開示した粘性が低下した表現型と容易に関連付けることができ、ここで当業者であれば、親菌株とそれに由来する変異菌株との間の形態学的相違をスクリーニングすることによって、粘性が低下した表現型を含むそのような変異宿主菌株を容易に同定することができる。従って、当業者であれば、深部培養中における好気発酵中に予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するために(親菌株と比較して)減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する変異菌株を同定するステップ及び/又は(ii)深部培養中における好気発酵中に予め選択された撹拌量で(親菌株と比較して)増加したDO量を維持する細胞集団を産生する変異菌株を同定するステップを含むがそれらに限定されない、親菌株と変異菌株とを粘性が低下した表現型についてスクリーニングするステップによって、粘性が低下した表現型を含むそのような変異菌株を容易に同定することができる。
他の実施形態では、発現/産生した天然SSB7の減少した量は、タンパク質移動/移動度(SDS−PAGE)、質量分析法、HPLC、サイズ排除、超遠心分離沈降速度分析、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、蛍光タグ、エピトープタグ、蛍光タンパク質(GFP、RFP等)キメラ/ハイブリッド等を含むがそれらに限定されないタンパク質定量法、遺伝子転写法、mRNA翻訳法等によって検出、同定、測定、アッセイ等される。
本明細書で使用する、機能的及び/又は構造的に類似するタンパク質は、「関連タンパク質」であると見なされる。そのような関連タンパク質は、属及び/又は種が異なる生物、或いは異なる分類の生物(例えば、細菌及び真菌)に由来し得る。関連タンパク質は更に、一次配列分析によって決定されるか、二次若しくは三次構造分析によって決定されるか、又は免疫学的交差反応性によって決定されるホモログ及び/又はオルソログを包含する。
本明細書で使用する用語「プロモーター」は、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御できる核酸配列を指す。一般に、コーディング配列は、プロモーター配列の3’(下流)に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してもよい、又は天然に存在する種々のプロモーターに由来する種々のエレメントから構成されていてもよい、又は合成核酸セグメントを含んでいてさえよい。種々のプロモーターが、種々の細胞型で、又は種々の生育段階で、又は種々の環境若しくは生理的条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることは、当業者には理解されている。殆どの細胞型で遺伝子の発現を最も多く引き起こすプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれている。更に、殆どの場合に調節配列の正確な境界は完全には明らかになっていないため、種々の長さのDNA断片が同じ活性を有し得ることは確認されている。
本明細書で使用する用語「作動可能に連結した」は、一方の機能が他方により影響されるような、単一核酸断片上での核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、それがそのコーディング配列の発現に影響を及ぼすことができる場合(即ち、そのコーディング配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コーディング配列(例えば、ORF)に作動可能に連結している。コーディング配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。核酸は、それが他の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結」している。例えば、分泌リーダー(即ち、シグナルペプチド)をコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現している場合は、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結している;プロモーター若しくはエンハンサーは、それがコーディング配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコーディング配列に作動可能に連結している;又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コーディング配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結した」は、連結されるDNA配列が隣接している、及び分泌リーダーの場合には、隣接してリーディング期にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、便宜的な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
本明細書で定義する「好適な調節配列」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、配列内、又はその下流(3’非コーディング配列)に位置し、関連コーディング配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性、又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造が含まれ得る。
本明細書で定義する用語「導入する(こと)」は、少なくとも1つのポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)、又はその遺伝子、又はそのベクターを「細菌細胞中に導入する(こと)」等の語句に使用される場合、ポリヌクレオチドを細胞中に導入するための当分野で公知の方法を含み、こうした方法としては、限定されないが、プロトプラスト融合、天然若しくは人工形質転換(例えば、塩化カルシウム、エレクトロポレーション)、形質導入、トランスフェクション等が挙げられる。
本明細書で使用する「形質転換された」又は「形質転換」は、細胞が組換えDNA技術の使用によって形質転換されていることを指す。形質転換は、典型的には、1つ以上のヌクレオチド配列(例えば、1つのポリヌクレオチド、ORF若しくは遺伝子)を細胞内に挿入することによって発生する。挿入されるヌクレオチド配列は、異種のヌクレオチド配列(即ち、形質転換する細胞中に天然には存在しない配列)であってよい。
本明細書で使用する「形質転換」は、DNAが、染色体組込み体又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、外来DNAを宿主細胞内に導入することを指す。本明細書で使用する「形質転換DNA」、「形質転換配列」及び「DNA構築物」は、配列を宿主細胞内又は生物内に導入するために使用されるDNAを指す。このDNAは、インビトロでPCR又は任意の他の好適な技術によって生成され得る。一部の実施形態では、形質転換DNAは入来配列を含むが、他の実施形態では、形質転換DNAは、相同ボックスによって隣接された入来配列を更に含む。更に別の実施形態では、形質転換DNAは、末端に付加された、他の非相同配列(即ち、スタッファー配列又は隣接配列)を含む。末端は、例えば、ベクター内への挿入等のように、形質転換DNAが閉環を形成するように閉じることができる。
本明細書で使用する「入来配列」は、真菌細胞染色体内に導入されるDNA配列を指す。一部の実施形態では、入来配列は、DNA構築物の一部である。他の実施形態では、入来配列は、1種以上の目的タンパク質をコードする。一部の実施形態では、入来配列は、形質転換対象の細胞のゲノム内に既に存在していても存在していなくてもよい(即ち、相同配列であっても非相同配列であってもよい)配列を含む。一部の実施形態では、入来配列は、1種以上の目的タンパク質、遺伝子及び/又は突然変異若しくは改変遺伝子をコードする。代替の実施形態では、入来配列は、機能的な野生型遺伝子若しくはオペロン、機能的な変異遺伝子若しくはオペロン又は非機能的な遺伝子若しくはオペロンをコードする。一部の実施形態では、入来配列は、遺伝子の機能を崩壊させるために遺伝子内に挿入される非機能的配列である。又別の実施形態では、入来配列は、選択マーカーを含む。更に別の実施形態では、入来配列は、2つの相同ボックスを含む。
本明細書で使用する「相同ボックス」は、真菌細胞染色体内の配列と相同である核酸配列を指す。より詳細には、相同ボックスは、本発明に従って、欠失される、破壊される、不活化される、ダウンレギュレートされる等の遺伝子又は遺伝子の一部の直接隣接するコーディング領域と約80〜100%の配列同一性、約90〜100%の配列同一性又は約95〜100%の配列同一性を有する上流又は下流領域である。これらの配列は、真菌細胞染色体内にDNA構築物が組み込まれる場所を指示し、真菌細胞染色体のどの部分を入来配列で置換するかを指示する。本開示を限定することを意図するものではないが、相同ボックスには、約1塩基対(bp)〜200キロ塩基(kb)が含まれ得る。好ましくは、相同ボックスは、約1bp〜10.0kb;1bp〜5.0kb;1bp〜2.5kb;1bp〜1.0kb、及び0.25kb〜2.5kbを含む。相同ボックスは又、約10.0kb、5.0kb、2.5kb、2.0kb、1.5kb、1.0kb、0.5kb、0.25kb及び0.1kbを含み得る。一部の実施形態では、選択マーカーの5’及び3’末端は、相同ボックスによって隣接されるが、ここで相同ボックスは、遺伝子のコーディング領域に直接隣接する核酸配列を含む。
本明細書で使用する用語「選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列」は、宿主細胞中で発現可能であり、選択可能マーカーの発現が発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択剤の存在下又は必須栄養素の欠如下で増殖する能力を付与するヌクレオチド配列を指す。
本明細書で使用する用語「選択可能マーカー」及び「選択マーカー」は、ベクターを含有するそれらの宿主の選択を容易にさせる、宿主細胞内で発現することができる核酸(例えば、遺伝子)を指す。そのような選択可能マーカーの例としては、抗微生物剤が挙げられるが、それらに限定されない。従って、用語「選択可能マーカー」は、宿主細胞が目的入来DNAを取り上げたか、又は何らかの他の反応が発生したことの兆候を提供する遺伝子を指す。典型的には、選択可能マーカーは、形質転換中に外来配列を受け入れていない細胞から外来DNAを含有する細胞を区別することを可能にする抗微生物剤耐性又は代謝有利性を宿主細胞に付与する遺伝子である。
本明細書で定義する宿主細胞「ゲノム」、真菌細胞「ゲノム」又は糸状菌細胞「ゲノム」は、染色体遺伝子及び染色体外遺伝子を含む。
本明細書で使用する用語「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」は、典型的には細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運び、及び通常は環状の二本鎖DNA分子の形態にある染色体外エレメントを指す。そのような要素は、多数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片及びDNA配列を適切な3’未翻訳配列と共に細胞内に導入できる固有の構造に接合又は再結合されている任意の起源に由来する、線状若しくは環状の、一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNAの自己複製配列、ゲノム組込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列であってよい。
本明細書で使用する用語「ベクター」は、細胞内で複製(増殖)することができ、新規な遺伝子若しくはDNAセグメント(例えば、「入来配列」)を細胞中に運ぶことができる任意の核酸を指す。従って、この用語は、様々な宿主細胞間で移動するために設計された核酸構築物を指す。ベクターとしては、「エピソーム」である(即ち、自律的に複製する)か、又は宿主細胞の染色体内に組み込むことができる、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、プラスミド、ファージミド、トランスポゾン並びにYAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、PLAC(植物人工染色体)等の人工染色体が挙げられる。
本明細書で使用する「形質転換カセット」は、遺伝子(若しくは、そのORF)を含み、その遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特異的ベクターを指す。
「発現ベクター」は、細胞内で異種DNAを組み込んで発現させる能力を有するベクターを指す。多数の原核生物及び真核生物の発現ベクターが市販されており、当業者には知られている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
本明細書で使用する用語「発現カセット」及び「発現ベクター」は、標的細胞中の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素を用いて、組換えにより、又は合成的に生成される核酸構築物(即ち、これらは、上述したベクター若しくはベクター要素である)を指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス若しくは核酸断片内に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分には、他の配列の中でも、転写対象の核酸配列及びプロモーターが含まれる。一部の実施形態では、DNA構築物には、標的細胞内の特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸要素も又含まれる。所定の実施形態では、本開示のDNA構築物は、本明細書で定義する選択マーカー及び不活化染色体セグメント又は遺伝子セグメント又はDNAセグメントを含む。
本明細書で使用する「ターゲティングベクター」は、その中にターゲティングベクターが形質転換される宿主細胞の染色体内の領域に相同なポリヌクレオチド配列を含み、その領域で相同組換えを促進できるベクターである。例えば、ターゲティングベクターは、相同組換えによって宿主細胞の染色体に変異を導入するのに使用される。一部の実施形態では、ターゲティングベクターは、例えば末端に付加された他の非相同配列(即ち、スタッファー配列又は隣接配列)を含む。末端は、例えば、ベクター内への挿入等、ターゲティングベクターが閉環を形成するように閉じることができる。
本明細書で使用する変異菌株は、その変異菌株によって生成されるタンパク質の量が親菌株によって生成されるタンパク質の量と比較して、20%以下低下する、15%以下低下する、10%以下低下する、更には5%以下低下する場合には、親菌株としてバイオマス1単位量当たり「実質的に同一量」のタンパク質を産生するが、ここで、タンパク質の量は、それからタンパク質産生が測定される細胞のバイオマスの総量に対して正規化されたものであり、バイオマスは、(例えば、細胞ペレットの)湿潤重量又は乾燥重量で表すことができる。
本明細書で使用する変異菌株は、変異菌株によって産生するタンパク質の量が親菌株と比較して、少なくとも5%増加した、少なくとも10%増加した、少なくとも15%以上増加した場合は、親菌株よりも「バイオマス1単位量当たり実質的により多量のタンパク質」を生成するが、ここで、タンパク質の量はそれからタンパク質産生が測定される細胞のバイオマスの総量に対して正規化されたものであり、バイオマスは(例えば、細胞ペレットの)湿潤重量又は乾燥重量で表すことができる。
本明細書で使用する、「蛍光色素」は、蛍光染料である。好ましい蛍光色素は、真菌の細胞壁内のセルロース及び/又はキチンに結合する。
II.粘性が低下した表現型を含むトリコデルマ(TRICHODERMA)菌株
上記で一般に記載し、下記の実施例のセクションで詳述するように、本開示の所定の実施形態は、親菌株に由来する糸状菌の変異菌株に関する。より特別には、所定の実施形態は、糸状菌の変異菌株及びその方法に関するが、ここでそのような変異菌株は、改良された体積効率、強化された/一様な酸素分布、低下した細胞ブロス粘性、高比生産性、改良された炭素源の収率、減少したバイオリアクター(発酵槽)の運転費、変化した(細胞)表現型、変化した(細胞)形態、変化した(細胞)増殖特性等を含む。
例えば、本明細書で記載及び提示したように、本開示のそのような(即ち、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む)変異菌株は、予め選択された(即ち、深部培養中における好気発酵中の)溶存酸素(DO)量を親菌株の(即ち、深部培養中における好気発酵中の)細胞と比較して維持するため減少した撹拌量を必要とする、及び/又は予め選択された撹拌量で、親菌株の(即ち深部培養中における好気発酵中の)細胞と比較して増加したDO量を維持する細胞集団を産生する細胞ブロスを産生する。より特別には、本明細書で構築及び記載した糸状菌の変異菌株は、特に本明細書では「粘性が低下した」表現型と呼ぶ変化した細胞形態表現型(例えば、実施例1〜3及び図2を参照されたい)を含む。
従って、実施例1に記載したように、「Morph 77B7」と名付けられたT.リーゼイ(T.reesei)突然変異体は、特にその親より短くより粘性の糸状体を有する、深部液体培地中で変化した形態(表現型)を有することが観察されたが、ここでMorph 77B7突然変異体は、更に親を含有する培養と比較して、増殖中により高レベルの溶存酸素(DO)も又示したが(実施例1、表1を参照されたい)、ここで突然変異体(Morph 77B7)表現型に相補性を示したのは、唯一の遺伝子座だけであった(これは「ssb7」と名付けられた)。ssb7遺伝子は、新規に予測されたタンパク質である、同一DNA配列上の他のタンパク質の予測、例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)QM6aタンパク質ID(PID)108712と部分的に重複するSSB7をコードする(The Genome Portal of the Department of Energy Joint Genome Institute,Grigoriev et al.,2011)(図1を参照されたい)。菌株Morph 77B7内で同定されたssb7突然変異対立遺伝子は、フレームシフト(fs)突然変異及びその変異対立遺伝子が「ssb7(fs)」と名付けられたssb7遺伝子の最終イントロン(イントロン2)の前の未成熟終止コドンを生じさせる、エキソン2における単一グアニン(G)ヌクレオチド欠失(ΔG)(T.リーゼイ(T.reesei)QM6a Scaffold 13、167404;配列番号3)を含む。実施例2では、更に、ssb7突然変異が発酵(培養)ブロスの粘性低下(形態/表現型の変化)の原因であることを検証するが、ここでssb7の遺伝子座は、親T.リーゼイ(T.reesei)菌株内で(2種の異なる方法によって)特異的に突然変異し、ssb7の両方の対立遺伝子は、粘性が低下した表現型を示した。同様に、実施例3では、そのようなssb7突然変異体の有用性を追加して試験及び確証したが、ここでssb7の3個の突然変異対立遺伝子は、更にセルラーゼの天然カクテルを発現する異なるトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)系統(「T4abc」と名付けられた)においても評価されたが、これらの突然変異対立遺伝子のそれぞれは、本明細書で記載した粘性が低下した表現型を証明した。
従って、本開示の所定の実施形態は、粘性が低下した表現型を含む糸状菌の変異菌株に関する。所定の他の実施形態は、糸状菌細胞のそのような変異菌株を構築する、糸状菌細胞のそのような変異菌株をスクリーニングする、糸状菌細胞のそのような変異菌株を使用して目的タンパク質を産生する組成物及び方法に関する。
III.粘性が低下した表現型を含む変異糸状菌株の構築
所定の実施形態では、糸状菌の変異菌株(細胞)は、糸状菌の親菌株(細胞)に由来するが、ここで変異菌株は、SSB7タンパク質/SSB7オルソログをコードする遺伝子の(即ち、親菌株と比較した)少なくとも1つの遺伝子改変を含み、そのような変異菌株は、親菌株と比較して粘性が低下した表現型を含む。より特別には、本開示の所定の他の実施形態は、SSB7タンパク質/SSB7オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む糸状菌のそのような変異菌株(細胞)に向けられ、ここで変異菌株は、深部培養中における好気発酵中に、(i)予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するために低下した撹拌量を必要とする細胞ブロス、及び/又は(ii)予め選択された撹拌量で、即ち親菌株と比較して増加したDO量を維持する細胞ブロスを産生する。
III.A 粘性が低下した表現型を含む変異トリコデルマ(TRICHODERMA)菌株の構築
上記で概して記載したように、本開示の所定の実施形態は、親トリコデルマ(Trichoderma)種菌株に由来する変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株に向けられる、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。所定の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、配列番号2又は配列番号31のSSB7タンパク質と少なくとも約50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。所定の他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、配列番号1のssb7遺伝子と少なくとも約50%の配列同一性を含むssb7遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。所定の他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、配列番号32のssb7遺伝子と少なくとも約50%の配列同一性を含むssb7遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。所定の他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、配列番号34のssb7遺伝子と少なくとも約50%の配列同一性を含むssb7遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。
他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここでSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、SSB7タンパク質の保存領域A〜D内で発生する(図1A及び配列番号22〜25を参照されたい)。所定の他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、エキソン1(配列番号19)、エキソン2(配列番号20)及びエキソン3(配列番号21)から成る群から選択される少なくとも1つのエキソンの遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。又別の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子改変は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター配列内で発生する、及び/又はSSB7タンパク質をコードする遺伝子の未翻訳領域(UTR)内で発生するが、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。
所定の他の実施形態では、変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここでSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、図8B〜8Fに示したように、1つ以上のコードされたSSB7タンパク質疎水性配列領域をそれらの親水性配列領域に転換させる、又はその逆も同様であるが、ここでこの変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。例えば、配列番号2のSSB7タンパク質配列の疎水性プロット(Kyte−Doolittle(KD)インデックスによる)(図8B〜8Fに示した)は、SSB7タンパク質配列内の所定のアミノ酸の疎水性度又は親水性度の定量的分析を提供する。従って、図8B〜8Fに示した疎水性プロットは、x軸上にSSB7タンパク質の(1°)アミノ酸配列及びy軸上に疎水性度(>0)及び親水性度(<0)(スコア)を示しており、KDインデックスを使用したアミノ酸疎水性スコアは図8Gに示した。例えば、当業者には一般に、そのようなプロットの形状を分析すると、タンパク質の部分的構造に関する特に重要な情報が得られることは理解されている。例えば、一続きのアミノ酸(即ち、球状(非膜貫通型)タンパク質についておよそ10残基ウィンドウ)が疎水性について正(>0)のスコアを示す場合、これらのアミノ酸はSSB7タンパク質の三次構造内に埋まっている(即ち、水性溶媒中に表面が露出していない)可能性が高い。対照的に、高い親水性スコア(<0)を備えるアミノ酸配列領域は、これらのアミノ酸残基が水性溶媒と接触していること、従って、これらの残基は主としてSSB7タンパク質の外面上に位置することを示している。
従って、本明細書で記載するように、そのような親水性若しくは疎水性SSB7タンパク質配列領域をコードするssb7遺伝子(若しくはその部分配列)は、それらの対向配列領域をコードするように容易に(例えば、疎水性配列と親水性との交換、又はその逆に)改変することができる。当分野において公知であるように、そのような遺伝子改変(例えば、少なくとも1個の親水性アミノ酸残基を疎水性残基に変換させる、又はその逆、好ましくは少なくとも2〜3個の連続親水性残基を疎水性残基に変換させる、又はその逆)の導入は、減少した量の天然SSB7タンパク質を発現/産生する変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株を構築する際に特に有用である。例えば、上述した改変ssb7遺伝子(若しくはその部分配列)によってコードされた(非天然)SSB7タンパク質は、ミスフォールディング及び/又はアンフォールディングに対する高度の傾向を有し、それにより結果としてタンパク質の凝集、沈降、タンパク質分解性切断、分解等を生じさせるであろう。そこで、当業者であれば、本開示の粘性が低下した表現型について親及び娘をアッセイすることによって、減少した量の天然SSB7タンパク質を発現/産生する改変(娘)菌株に対して天然SSB7タンパク質をコードする野生型遺伝子を含む親菌株をアッセイすることができる。
従って、配列番号1のssb7遺伝子、配列番号2のSSB7タンパク質、配列番号31のSSB7タンパク質、疎水性プロット(図8B〜8G)、SSB7タンパク質のアミノ酸組成(図8A)等を参照することによって、当業者であれば、天然SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含むそのような変異トリコデルマ(Trichoderma)種菌株を容易に構築することができるが、ここでそのような変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。例えば、当業者であれば、当分野において公知のルーチン及び従来型分子生物学的方法を使用してssb7遺伝子を遺伝子改変することができ、本開示の粘性が低下した表現型を含むそれらの変異菌株を容易に同定することができる。
III.B 粘性が低下した表現型を含む変異子嚢菌門(ASCOMYCOTA)菌株の構築
上述したように、所定の実施形態は、糸状菌の親菌株(細胞)に由来する糸状菌の変異菌株(細胞)に向けられるが、ここで変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで変異菌株は、粘性が低下した表現型を含む。より特別には、所定の実施形態は、トリコデルマ(Trichoderma)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、フザリウム(Fusarium)種、ペニシリウム(Penicillium)種、クリソスポリウム(Chrysosporium)種、セファロスポリウム(Cephalosporium)種、タラロマイセス(Talaromyces)種、ゲオスミチア(Geosmithia)種、ニューロスポラ(Neurospora)種、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種等を含むがそれらに限定されない糸状菌の変異菌株に関する。従って、所定の実施形態では、本開示は、配列番号8のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異フザリウム(Fusarium)種菌株に関する。他の実施形態では、本開示は、配列番号9のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異ニューロスポラ(Neurospora)種菌株に関する。他の実施形態では、本開示は、配列番号10のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異ミセリオフトラ(myceliophthora)種菌株に関する。他の実施形態では、本開示は、配列番号11のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異タラロマイセス(Talaromyces)種菌株に関する。他の実施形態では、本開示は、配列番号12のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異アスペルギルス(Aspergillus)種菌株に関する。他の実施形態では、本開示は、配列番号13のSSB7タンパク質オルソログをコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異ペニシリウム(Penicillium)種菌株に関する。
より特別には、上記で概して記載したように、配列番号1の野生型トリコデルマ(Trichoderma)種ssb7遺伝子は、配列番号2の新規に予測されたタンパク質SSB7をコードする(このタンパク質は、文献において特性解析されていない)。共同ゲノム研究所(JGI)のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)バージョン2.0データベース(菌株QM6a)は、この同一DNA配列についての異なる遺伝子構造をPID 108712であると予測している。より詳細には、本明細書に記載したssb7タンパク質配列の分析は、微小管相互作用及び輸送(MIT)ドメインを含有する。同様に、BLASTの検索は、SSB7タンパク質オルソログがフザリウム(Fusarium)種(配列番号8)、ニューロスポラ(Neurospora)種(配列番号9)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種(配列番号10)、タラロマイセス(Talaroymyces)種(配列番号11)、アスペルギルス(Aspergillus)種(配列番号12)及びペニシリウム(Penicillium)種(配列番号13)の真菌株に存在するが、サッカロミセス(Saccharomycetes)種には存在しないことを証明した。例えば、図5に提示及び記載したように、SSB7タンパク質は、タンパク質配列保存の幾つかの領域を含む。図5は、N末端MITドメインに渡るアミノ酸が欠如する短鎖タンパク質の予測を排除している、353個の子嚢菌類(Ascomycete)ホモログのMUSCLEアラインメントのグラフ表示である。より詳細には、アラインメントは、本明細書で「領域A」(配列番号22)、「領域B」(配列番号23)、「領域C」(配列番号24)及び「領域D」(配列番号25)であると規定したSSB7ホモログ/オルソログにおける4つの保存領域を解明している。図5に示したように、領域Aは、上記で参照したMITドメインに対応する。
更に、野生型トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)SSB7タンパク質(配列番号2)及び野生型トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SSB7タンパク質(配列番号31)を備えるそのようなSSB7オルソログ(配列番号8〜13)のCLUSTALアラインメントは、アミノ酸配列保存の幾つかの領域を示している、図9A〜9Eに示した。
従って、所定の他の実施形態では、本開示の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子は、配列番号26の「保存1」SSB7タンパク質アミノ酸をコードする核酸配列領域において改変されている。他の実施形態では、本開示の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子は、配列番号27の「保存2」SSB7タンパク質アミノ酸をコードする核酸配列領域において改変されている。又別の実施形態では、本開示の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子は、配列番号28の「保存3」SSB7タンパク質アミノ酸をコードする核酸配列領域において改変されている。他の実施形態では、本開示の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子は、配列番号29の「保存4」SSB7タンパク質アミノ酸をコードする核酸配列領域において改変されている。又別の実施形態では、本開示の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子は、配列番号30の「保存5」SSB7タンパク質アミノ酸をコードする核酸配列領域において改変されている。
従って、上記のセクションIIIにおいて記載したガイダンスに関して、下記に提示する実施例及び本明細書に開示したアミノ酸配列(例えば、配列番号2、4、8〜13、22〜31、33及び35)及び核酸配列(例えば、配列番号1、3、5〜7、19〜21、32若しくは34)を参照すると、当業者であれば、本開示の粘性が低下した表現型を含む糸状菌のそのような変異菌株を容易に構築することができる。
IV.MPG1、SFB3、SEB1、CRZ1及び/又はGAS1タンパク質をコードする遺伝子を更に含む変異真菌株
所定の実施形態では、本開示は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変、並びにMPG1タンパク質(配列番号14)、SFB3タンパク質(配列番号15)、SEB1タンパク質(配列番号16)、CRZ1タンパク質(配列番号17)及び/又はGAS1タンパク質(配列番号18)をコードする遺伝子の1つ以上の遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株に関する。
例えば、MPG1タンパク質、SFB3タンパク質、SEB1タンパク質、CRZ1タンパク質及び/又はGAS1タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む変異糸状菌株は、それからそれらが由来する親菌株(例えば、上記に参照した粘性が低下した表現型について記載している国際PCT出願の国際公開第2012/145584号パンフレット、同2012/027580号パンフレット、同2012/145595号パンフレット、同2012/145596号パンフレット、同2012/145596号パンフレット及び同2012/145592号パンフレットを参照されたい)と比較して、粘性が低下した表現型を含む。
従って、所定の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、SSB7をコードする遺伝子の遺伝子改変並びにMPG1、SFB3、SEB1、CRZ1及び/又はGAS1から選択されるタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも1つの遺伝子改変を含む。
所定の実施形態では、ssb7遺伝子の遺伝子改変及びmpg1、sfb3、seb1、crz1及び/又はgas1遺伝子の少なくとも1つの遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株は、ssb7遺伝子単独の遺伝子改変しか含まない糸状菌の変異菌株と比較して、粘性が低下した表現型を更に含む。より詳細には、糸状菌のそのような変異菌株は、深部培養中における好気発酵中に(i)予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するために減少した撹拌量を必要とする、及び/又は(ii)予め選択された撹拌量で、(ssb7単独の遺伝子改変を含む親菌株及び/又はそれらの変異菌株の細胞と比較して)増加したDO量を維持する、細胞ブロスを産生する。
V.分子生物学
概して上述したように、本開示の所定の実施形態は、糸状菌の親菌株に由来する糸状菌の変異菌株に向けられる。これらの変異菌株の細胞は、引き続いて、親菌株の細胞と比較して、深部培養中における好気発酵中に、予め選択された溶存酸素(DO)量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロス、及び/又は予め選択された撹拌量で、増加したDO量を維持する細胞ブロスを産生する。従って、所定の実施形態では、粘性が低下した表現型を含む本開示の変異菌株は、(即ち、親菌株の細胞と比較して)SSB7をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む。
従って、本明細書に記載した糸状菌の変異菌株は、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで遺伝子改変は:(a)遺伝子(若しくはORF)における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去、又は遺伝子(若しくはそのORF)の転写若しくは翻訳に必要とされる調節エレメントにおける1つ以上のヌクレオチドの導入、置換若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的突然変異誘発、及び/又は(g)本明細書に開示したSSB7タンパク質のランダム突然変異誘発を含むがそれらに限定されない。他の実施形態では、SSB7をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株は、MPG1、SFB3、SEB1、CRZ1及び/又はGAS1タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子改変を更に含む。
従って、所定の実施形態では、SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株は、天然SSB7タンパク質の発現/産生を排除するための遺伝子欠失によって構築される。他の実施形態では遺伝子改変を含む糸状菌の変異菌株は、天然SSB7タンパク質の発現/産生を排除するための部分的遺伝子欠失によって構築される。例えば、所定の実施形態では、改変糸状菌株は、ssb7遺伝子の部分的欠失を含むが、ここで部分的欠失は、ssb7遺伝子のコーディング配列の何れかの部分の部分的欠失を含む。従って、粘性が低下した表現型を含むそのような変異菌株は、天然SSB7タンパク質を発現/産生しない。例えば、遺伝子欠失技術は、遺伝子の部分的若しくは完全な除去を可能にし、それによって天然タンパク質の発現/産生を排除する。そのような方法では、遺伝子の欠失は、遺伝子に隣接する5’及び3’領域が隣接して含まれるように構築された統合プラスミド/ベクターを使用する相同組換えによって達成され得る。隣接5’及び3’領域は、例えば、プラスミドが細胞内で統合されることを可能にする選択可能マーカーと会合している統合プラスミド/ベクター上で糸状菌細胞内に導入され得る。
他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、そのタンパク質(例えば、SSB7)をコードする遺伝子を破壊若しくは不活化する遺伝子改変を含む。遺伝子破壊/不活化の典型的な方法としては、ポリペプチドコーディング配列(CDS)、プロモーター、エンハンサー又は他の調節エレメントを含む遺伝子の何れかの部分を破壊することが挙げられ、その破壊は、置換、挿入、欠失、逆位並びにそれらの組合せ及びそれらの変形を含む。
従って、所定の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、遺伝子破壊技術によって構築される。遺伝子破壊技術の非限定的な例としては、本開示の1つ以上の遺伝子内へのその(例えば、ssb7)遺伝子と相同である核酸断片を含有する統合可能なプラスミドを挿入(統合)することが挙げられるが、これは、重複領域間の相同性の領域と組込み(挿入)ベクターDNAとの重複を作り出すであろう。例えば、実施例のセクションで記載するように、糸状菌のそのような変異菌株(即ち、ssb7遺伝子破壊を含む)は、本開示の粘性が低下した表現型を含む。
従って、所定の他の非限定的な例では、遺伝子破壊技術として、遺伝子(例えば、ssb7タンパク質をコードする遺伝子)内への(例えばssb7)遺伝子と相同である核酸断片を含有する統合可能なプラスミドを挿入することが挙げられ、これは、重複領域間の相同性の領域と組込み(挿入)ベクターDNAとの重複を作り出し、ここで挿入されたベクターDNAは、例えば、ssb7遺伝子のプロモーターをSSB7タンパク質コーディング領域から分離するか、又はssb7遺伝子のコーディング若しくは非コーディング配列を遮断(破壊)し、結果としてそれらの粘性が低下した表現型株を生じさせる。従って、破壊構築物は、ssb7遺伝子と相同の5’及び3’領域が付随する選択マーカー遺伝子(例えば、pyr2)であってよい。選択マーカーは、破壊遺伝子を含有する形質転換体の同定を可能にする。従って、所定の実施形態では、遺伝子破壊は、プロモーター、未翻訳領域(UTR)、コドン変化等の遺伝子の制御エレメントの改変を含む。
他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、それらの転写又は翻訳のために必要とされる遺伝子又は調節エレメント内の1つ以上のヌクレオチドを導入する、置換する、又は除去することによって構築(即ち、遺伝子改変)される。例えば、ヌクレオチドは、終止コドンの導入、開始コドンの除去又はオープンリーディングフレーム(ORF)のフレームシフトを生じさせるように、挿入又は除去され得るが、例えば対立遺伝子ssb7(fs)を参照されたい。そのような改変は、当該技術分野の公知の方法に従って、部位特異的突然変異誘発又はPCR生成突然変異誘発によって実施され得る(例えば、Botstein and Shortle,1985;Lo et al.,1985;Higuchi et al.,1988;Shimada,1996;Ho et al.,1989;Horton et al.,1989及びSarkar and Sommer,1990を参照されたい)。
又別の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、遺伝子変換のプロセスによって構築(即ち、遺伝子改変)される(例えば、Iglesias and Trautner,1983を参照されたい)。例えば、遺伝子変換法では、目的遺伝子に対応する核酸配列をインビトロで変異させて欠陥のある核酸配列を生成し、次いでこれを親細胞に形質転換して欠陥遺伝子を含む変異細胞を生成する。相同組換えによって、欠陥のある核酸配列が内在性遺伝子に取って代わる。欠陥のある遺伝子又は遺伝子断片は又、欠陥のある遺伝子を含有する形質転換体の選択に使用され得るマーカーをコードすることが望ましい場合がある。例えば、欠陥のある遺伝子は、選択可能マーカーと会合している非複製プラスミド若しくは感温性プラスミド上に導入され得る。プラスミドを統合するための選択は、プラスミド複製を許容しない条件下でそのマーカーを選択することによって実施される。遺伝子置換をもたらす第2の組換え事象の選択は、選択可能マーカーの消失及び変異遺伝子の獲得についてコロニーを調査することによって実施される(Perego,1993)。
他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、ssb7遺伝子の核酸配列と相補的であるヌクレオチド配列を使用して、確立されたアンチセンス(遺伝子サイレンシング)技術によって構築される(Parish and Stoker,1997)。より詳細には、糸状菌株による遺伝子の発現は、この遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を導入することにより低減(ダウンレギュレート)又は排除することができ、それは細胞内で転写され、細胞内で産生されるmRNAにハイブリダイズすることができる。相補的アンチセンスヌクレオチド配列がmRNAにハイブリダイズできる条件下では、従って、翻訳されるタンパク質量は低減又は排除される。そのようなアンチセンス法としては、以下に限定されないが、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられ、これらの全てが当業者に周知である。
他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、化学的突然変異誘発(例えば、Hopwood,1970を参照されたい)及び転座(例えば、Youngman et al.,1983を参照されたい)を含むがそれらに限定されない当分野において周知の方法を使用して、ランダム突然変異誘発又は特異的突然変異誘発によって構築(即ち、遺伝子改変)される。遺伝子の改変は、親細胞に突然変異誘発を受けさせること、及びその中で遺伝子の発現が低減又は排除されている変異細胞についてスクリーニングすることによって実施され得る。例えば、当業者であれば、粘性が低下した表現型を含む糸状菌細胞のそのような(突然変異した)変異菌株を同定するために実施例のセクションに記載したスクリーニング法を容易に採用及び/又は修正することができる。
特異的であってもランダムであってもよい突然変異誘発は、例えば、好適な物理的若しくは化学的変異誘発剤の使用によって、好適なオリゴヌクレオチドの使用によって、又はDNA配列をPCR生成変異誘発にかけることによって実施され得る。更に、突然変異誘発は、これらの突然変異誘発法を任意に組み合わせることにより実施され得る。本発明の目的に好適な物理的又は化学的な変異誘発剤の例としては、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、N−メチル−N’−ニトロソグアニジン(NTG)、O−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチドアナログが挙げられる。そのような薬剤を使用する場合、突然変異誘発は、典型的には、好適な条件下で最適な変異誘発剤の存在下で突然変異誘発対象の親細胞をインキュベートするステップ、及び遺伝子の減少した発現を示すか、又は発現を示さない突然変異細胞を選択するステップによって実施される。
例えば、本明細書に開示した1つ以上の遺伝子のそのような遺伝子改変は、遺伝子のプロモーターの効率を減少させ、エンハンサーの効率を減少させ、遺伝子のmRNAのスプライシング若しくは編集を妨害し、遺伝子のmRNAの翻訳を妨害し、全長タンパク質の翻訳を防止するために遺伝子のコーディング配列内に終止コドンを導入し、低活性若しくは不活性のタンパク質を産生するためにタンパク質のコーディング配列を変化させ、タンパク質と他の核タンパク質構成成分との相互作用を減少させ、低安定性タンパク質を産生するため、若しくはタンパク質を破壊の標的とするため、若しくはタンパク質がミスフォールドする、若しくは(例えば、グリコシル化により)不正確に改変されることを誘発するため、若しくはタンパク質の細胞輸送を妨害するためにタンパク質のコーディング配列を変化させる。
所定の他の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、部位特異的遺伝子編集技術によって構築(即ち、遺伝子改変)される。例えば、所定の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、転写活性化因子様エンドヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、ホーミング(メガ)エンドヌクレアーゼ等の使用によって構築(即ち、遺伝子改変)される。より特別には、改変対象の遺伝子の部分(例えば、コーディング領域、非コーディング領域、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子又はコーディング領域を発現させるために必要とされる他の調節エレメント)は、ZFN遺伝子編集、TALEN遺伝子編集、ホーミング(メガ)エンドヌクレアーゼ等による遺伝子改変にかけられるが、それらの改変方法は、当業者には周知であり、利用することができる。
従って、所定の実施形態では、糸状菌の変異菌株は、CRISPR/Cas9編集によって構築(即ち、遺伝子改変)される(例えば、本明細書の実施例を参照されたい)。より詳細には、CRISPR/Cas9系による真菌ゲノム改変のための組成物及び方法は、当分野において記載されており、周知である(例えば、国際PCT出願の国際公開第2016/100571号パンフレット、同第2016/100568号パンフレット、同第2016/100272号パンフレット、同第2016/100562号パンフレット等を参照されたい)。従って、SSB7タンパク質をコードする遺伝子は、DNA上の標的配列にエンドヌクレアーゼを動員するガイドRNA(例えば、Cas9)又はガイドDNA(例えば、NgAgo)の何れかを結合することによってそれらの標的DNAを見出す、核酸誘導型エンドヌクレアーゼによって破壊、欠失、突然変異又はさもなければ遺伝子改変することができるが、ここでエンドヌクレアーゼは、DNAにおいて一本鎖又は二本鎖切断を生成することができる。この標的化DNA切断は、DNA修復のための基質となり、遺伝子を破壊又は欠失させるために提供された編集鋳型と再結合し得る。例えば、核酸誘導型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9又はCas9ヌクレアーゼをコードするコドン最適化遺伝子)は、糸状菌細胞内で活性なプロモーター及び糸状菌細胞内で活性なターミネーターに作動可能に連結されており、これにより糸状菌Cas9発現カセットを作製する。同様に、目的遺伝子に固有の1つ以上の標的部位は、当業者により容易に同定される。
例えば、目的遺伝子内の標的部位に向けられたgRNAをコードするDNA構築物を構築するためには、可変標的化ドメイン(VT)は、そのヌクレオチドが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9に対するCas9エンドヌクレアーゼ認識ドメイン(CER)をコードするDNAに融合している、(PAM)プロトスペーサー隣接モチーフ(TGG)の5’である標的部位のヌクレオチドを含むであろう。VTドメインをコードするDNAとCERドメインをコードするDNAとの組合せは、それによりgRNAをコードするDNAを生成する。従って、gRNAのための糸状菌発現カセットは、糸状菌細胞内で活性なプロモーター及び糸状菌細胞内で活性なターミネーターにgRNAをコードするDNAを作動可能に連結させることによって作製される。
所定の実施形態では、エンドヌクレアーゼによって誘導されたDNA切断は、入来配列を用いて修復/置換される。例えば、上述したCas9発現カセット及びgRNA発現カセットによって生成されたDNA切断を精密に修復するためには、細胞のDNA修復機構が編集鋳型を利用できるように、ヌクレオチド編集鋳型が提供される。例えば、標的化遺伝子の約500bpの5’は、編集鋳型を生成するために標的化遺伝子の約500bpの3’に融合させることができ、その鋳型は、RGENによって生成されたDNA切断を修復するために糸状菌宿主の機構によって使用される(RNA誘導型エンドヌクレアーゼ)。
Cas9発現カセット、gRNA発現カセット及び編集鋳型は、多数の様々な方法(例えば、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、天然コンピテンス又は誘導コンピテンス)を使用して糸状菌細胞に共送達することができる。形質転換細胞は、標的遺伝子座をフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて増幅させることにより、PCRによってスクリーニングされる。これらのプライマーは、野生型遺伝子座又はRGENによって編集されている改変遺伝子座を増幅させることができる。次いで、これらの断片は、編集されたコロニーを同定するために、シーケンシングプライマーを使用して配列決定される。
本開示のSSB7タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子改変させることのできる又別の方法は、目的遺伝子の発現レベルを変化させることによる。例えば、そのようなヌクレオチド誘導型エンドヌクレアーゼのヌクレアーゼ欠損性変異体(例えば、Cas9 D10A、N863A若しくはCas9 D10A、H840A)は、標的遺伝子の転写を強化若しくは拮抗することによって遺伝子の発現レベルを調節するために使用できる。これらのCas9変異体は、タンパク質配列内に存在する全てのヌクレアーゼドメインに対して不活性であるが、RNA誘導型DNA結合活性は維持している(即ち、これらのCas9変異体は、同種標的部位に結合すると、DNAの何れの鎖も切断することができない)。
従って、ヌクレアーゼ欠損性タンパク質(即ち、Cas9変異体)は、糸状菌発現カセットとして発現させることができ、糸状菌gRNA発現カセットと結合すると、その結果としてCas9変異タンパク質は、細胞内の特異的標的配列に向けられる。Cas9(変異)タンパク質の特異的遺伝子標的部位への結合は、細胞のDNA上の転写機構の結合若しくは移動を遮断し、それにより産生する遺伝子産物の量を減少させることができる。従って、本明細書に開示した遺伝子の何れも、この方法を用いて遺伝子発現を低下させるための標的とすることができる。遺伝子サイレンシングは、RNAseq等の方法を使用することによって、ヌクレアーゼ欠損性Cas9発現カセット及びgRNA発現カセットを含有する細胞内で監視することができる。
VI.実用性
一般に上記に記載したように、及び下記の実施例のセクションで提示するように、本明細書に開示した糸状菌の粘性が低下した菌株の使用は、深部培養中における酸素及び栄養分の分布を改良し、深部培養を撹拌するために必要とされるエネルギー量を減少させ、培養中に存在する細胞集団濃度の増加を可能にし、タンパク質生産の増加をもたらす。更に、本明細書に開示した糸状菌の変異菌株は、それらをその後の遺伝子操作、相補的分布、交配等のために良好に適合させる、完全に確定されたゲノムを含む。同様に、本発明の菌株は、例えば、付随する粘性低下を生じさせる操作によって、タンパク質産生に有害な影響を及ぼさない。更にその上、本明細書に開示した糸状菌のこれらの変異菌株(即ち、粘性が低下した菌株)は、既に高レベル発現が意図されたタンパク質(即ち、目的の内在性若しくは異種タンパク質)を生成する、既に選択マーカーをコードする、又は既に生産宿主において所望である他の特徴を含む親菌株を含む、本質的に任意の親菌株から生成することができる。従って、本発明の菌株及び方法は、目的タンパク質をコードする遺伝子を先在する粘性が低下した生産菌株内に移動させる必要を排除する。
従って、本発明の菌株及び方法は、糸状菌の深部培養中における商業的に重要なタンパク質の産生において利用される。例えば、商業的に重要なタンパク質としては、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、リアーゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、アミラーゼ、プルラナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、ペルヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ、ラッカーゼ、カタラーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、クロロフィラーゼ、ヒドロホビン、キモシン、炭酸脱水酵素、チミジル酸シンターゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素、チロシンキナーゼ、多剤耐性タンパク質(例えば、ABC P糖タンパク質)、CAD(カルバミル−Pシンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ、ジヒドロオロターゼ)、トポイソメラーゼ、リボヌクレオチド還元酵素、抗体及び他の酵素並びに糸状菌中で発現できる非酵素タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。そのようなタンパク質は、工業用、製薬用、動物の健康、食品及び飲料用等に適合する。
VII.目的タンパク質
先行するセクションで手短に述べたように、本発明の菌株及び方法は、糸状菌の深部培養中における商業的に重要なタンパク質の産生において利用される。本開示の目的タンパク質(POI)は、任意の内在性又は異種タンパク質であってよく、そのようなPOIの変異体であってもよい。タンパク質は、1つ以上のジスルフィド架橋を含有し得る、又はその機能的形態が単量体若しくは多量体であるタンパク質である、即ち、タンパク質は、四次構造を有し、複数の同一(相同)若しくは非同一(異種)サブユニットから構成され、ここで、POI若しくはその変異POIは、好ましくは目的の特性を備えるタンパク質である。
所定の実施形態では、POI若しくは変異POIは、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、炭酸脱水酵素、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリアーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リガーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンナナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、酸化還元酵素、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルヒドロラーゼ、ポリオールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びこれらの組合せから成る群から選択される。
所定の実施形態では、POI若しくは変異POIは、EC1、EC2、EC3、EC4、EC5若しくはEC6から成る群から選択される酵素委員会(EC)番号から選択される。
例えば、所定の実施形態では、POIは、EC1.10.3.2(例えば、ラッカーゼ)、EC1.10.3.3(例えば、L−アスコルビン酸オキシダーゼ)、EC1.1.1.1(例えば、アルコール脱水素酵素)、EC1.11.1.10(例えば、塩化物ペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.17(例えば、ペルオキシダーゼ)、EC1.1.1.27(例えば、L−乳酸脱水素酵素)、EC1.1.1.47(例えば、グルコース1−脱水素酵素)、EC1.1.3.X(例えば、グルコースオキシダーゼ)、EC1.1.3.10(例えば、ピラノースオキシダーゼ)、EC1.13.11.X(例えば、ジオキシゲナーゼ)、EC1.13.11.12(例えば、リノール酸13S−リポキシゲナーゼ(lipozygenase))、EC1.1.3.13(例えば、アルコールオキシダーゼ)、EC1.14.14.1(例えば、モノオキシゲナーゼ)、EC1.14.18.1(例えば、モノフェノールモノオキシゲナーゼ)、EC1.15.1.1(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ)、EC1.1.5.9(以前のEC1.1.99.10、例えば、グルコース脱水素酵素)、EC1.1.99.18(例えば、セロビオース脱水素酵素)、EC1.1.99.29(例えば、ピラノース脱水素酵素)、EC1.2.1.X(例えば、脂肪酸還元酵素)、EC1.2.1.10(例えば、アセトアルデヒド脱水素酵素)、EC1.5.3.X(例えば、フルクトシルアミン還元酵素)、EC1.8.1.X(例えば、ジスルフィド還元酵素)及びEC1.8.3.2(例えば、チオールオキシダーゼ)から選択されるEC1酵素(酸化還元酵素)を含むがそれらに限定されない酸化還元酵素である。
所定の実施形態では、POIは、EC2.3.2.13(例えば、トランスグルタミナーゼ)、EC2.4.1.X(例えば、ヘキソシルトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.40(例えば、アルテルナスクラーゼ(alternasucrase))、EC2.4.1.18(例えば、1,4α−グルカン分枝酵素)、EC2.4.1.19(例えば、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.2(例えば、デキストリンデキストラナーゼ)、EC2.4.1.20(例えば、セロビオースホスホリラーゼ)、EC2.4.1.25(例えば、4−α−グルカノトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.333(例えば、1,2−β−オリゴグルカンリントランスフェラーゼ)、EC2.4.1.4(例えば、アミロスクラーゼ)、EC2.4.1.5(例えば、デキストランスクラーゼ)、EC2.4.1.69(例えば、ガラクトシド2−α−L−フコシルトランスフェラーゼ)、EC2.4.1.9(例えば、イヌロスクラーゼ)、EC2.7.1.17(例えば、キシルロキナーゼ)、EC2.7.7.89(以前のEC3.1.4.15、例えば、[グルタミンシンテターゼ]−アデニリル−L−チロシンホスホリラーゼ)、EC2.7.9.4(例えば、αグルカンキナーゼ)及びEC2.7.9.5(例えば、ホスホグルカンキナーゼ)から選択されるEC2(トランスフェラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないトランスフェラーゼ酵素である。
他の実施形態では、POIは、EC3.1.X.X(例えば、エステラーゼ)、EC3.1.1.1(例えば、ペクチナーゼ)、EC3.1.1.14(例えば、クロロフィラーゼ)、EC3.1.1.20(例えば、タンナーゼ)、EC3.1.1.23(例えば、グリセロール−エステルアシルヒドロラーゼ)、EC3.1.1.26(例えば、ガラクトリパーゼ)、EC3.1.1.32(例えば、ホスホリパーゼA1)、EC3.1.1.4(例えば、ホスホリパーゼA2)、EC3.1.1.6(例えば、アセチルエステラーゼ)、EC3.1.1.72(例えば、アセチルキシランエステラーゼ)、EC3.1.1.73(例えば、フェルロイルエステラーゼ)、EC3.1.1.74(例えば、クチナーゼ)、EC3.1.1.86(例えば、ラムノガラクツロナンアセチルエステラーゼ)、EC3.1.1.87(例えば、フモシンB1エステラーゼ)、EC3.1.26.5(例えば、リボヌクレアーゼP)、EC3.1.3.X(例えば、リン酸加水分解酵素)、EC3.1.30.1(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)ヌクレアーゼS1)、EC3.1.30.2(例えば、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)ヌクレアーゼ)、EC3.1.3.1(例えば、アルカリホスファターゼ)、EC3.1.3.2(例えば、酸性ホスファターゼ)、EC3.1.3.8(例えば、3−フィターゼ)、EC3.1.4.1(例えば、ホスホジエステラーゼI)、EC3.1.4.11(例えば、ホスホイノシチドホスホリパーゼC)、EC3.1.4.3(例えば、ホスホリパーゼC)、EC3.1.4.4(例えば、ホスホリパーゼD)、EC3.1.6.1(例えば、アリールスルファターゼ)、EC3.1.8.2(例えば、ジイソプロピル−フルオロホスファターゼ)、EC3.2.1.10(例えば、オリゴ−1,6−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.101(例えば、マンナンエンド−1,6−α−マンノシダーゼ)、EC3.2.1.11(例えば、α−1,6−グルカン−6−グルカノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.131(例えば、キシランα−1,2−グルクロノシダーゼ)、EC3.2.1.132(例えば、キトサンN−アセチルグルコサミノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.139(例えば、α−グルクロニダーゼ)、EC3.2.1.14(例えば、キチナーゼ)、EC3.2.1.151(例えば、キシログルカン特異的エンド−β−1,4−グルカナーゼ)、EC3.2.1.155(例えば、キシログルカン特異的エキソ−β−1,4−グルカナーゼ)、EC3.2.1.164(例えば、ガラクタンエンド−1,6−β−ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.17(例えば、リゾチーム)、EC3.2.1.171(例えば、ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ)、EC3.2.1.174(例えば、ラムノガラクツロナンラムノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.2(例えば、β−アミラーゼ)、EC3.2.1.20(例えば、α−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.22(例えば、α−ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.25(例えば、β−マンノシダーゼ)、EC3.2.1.26(例えば、β−フルクトフラノシダーゼ)、EC3.2.1.37(例えば、キシラン1,4−β−キシロシダーゼ)、EC3.2.1.39(例えば、グルカンエンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.40(例えば、α−L−ラムノシダーゼ)、EC3.2.1.51(例えば、α−L−フコシダーゼ)、EC3.2.1.52(例えば、β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ)、EC3.2.1.55(例えば、α−N−アラビノフラノシダーゼ)、EC3.2.1.58(例えば、グルカン1,3−β−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.59(例えば、グルカンエンド−1,3−α−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.67(例えば、ガラクツラン1,4−α−ガクツロニダーゼ)、EC3.2.1.68(例えば、イソアミラーゼ)、EC3.2.1.7(例えば、1−β−D−フルクタンフルクタノヒドロラーゼ)、EC3.2.1.74(例えば、グルカン1,4−β−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.75(例えば、グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ)、EC3.2.1.77(例えば、マンナン1,2−(1,3)−α−マンノシダーゼ)、EC3.2.1.80(例えば、フルクタンβ−フルクトシダーゼ)、EC3.2.1.82(例えば、エキソ−ポリ−α−ガラクツロニシダーゼ)、EC3.2.1.83(例えば、κ−カラギナーゼ)、EC3.2.1.89(例えば、アラビノガラクタンエンド−1,4−β−ガラクトシダーゼ)、EC3.2.1.91(例えば、セルロース1,4−β−セロビオシダーゼ)、EC3.2.1.96(例えば、マンノシル−グリコプロテインエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ)、EC3.2.1.99(例えば、アラビナンエンド−1,5−α−L−アラビナナーゼ)、EC3.4.X.X(例えば、ペプチダーゼ)、EC3.4.11.X(例えば、アミノペプチダーゼ)、EC3.4.11.1(例えば、ロイシルアミノペプチダーゼ)、EC3.4.11.18(例えば、メチオニルアミノペプチダーゼ)、EC3.4.13.9(例えば、Xaa−Proジペプチダーゼ)、EC3.4.14.5(例えば、ジペプチジル−ペプチダーゼIV)、EC3.4.16.X(例えば、セリン型カルボキシペプチダーゼ)、EC3.4.16.5(例えば、カルボキシペプチダーゼC)、EC3.4.19.3(例えば、ピログルタミル−ペプチダーゼI)、EC3.4.21.X(例えば、セリンエンドペプチダーゼ)、EC3.4.21.1(例えば、キモトリプシン)、EC3.4.21.19(例えば、グルタミルエンドペプチダーゼ)、EC3.4.21.26(例えば、プロリルオリゴペプチダーゼ)、EC3.4.21.4(例えば、トリプシン)、EC3.4.21.5(例えば、トロンビン)、EC3.4.21.63(例えば、オリジン)、EC3.4.21.65(例えば、テルモミコリン)、EC3.4.21.80(例えば、ストレプトグリシンA)、EC3.4.22.X(例えば、システインエンドペプチダーゼ)、EC3.4.22.14(例えば、アクチニダイン)、EC3.4.22.2(例えば、パパイン)、EC3.4.22.3(例えば、フィカイン)、EC3.4.22.32(例えば、ステムブロメライン)、EC3.4.22.33(例えば、フルーツブロメライン)、EC3.4.22.6(例えば、キモパパイン)、EC3.4.23.1(例えば、ペプシンA)、EC3.4.23.2(例えば、ペプシンB)、EC3.4.23.22(例えば、エンドチアペプシン)、EC3.4.23.23(例えば、ムコールペプシン)、EC3.4.23.3(例えば、ガストリクシン)、EC3.4.24.X(例えば、メタロエンドペプチダーゼ)、EC3.4.24.39(例えば、ドイテロリシン)、EC3.4.24.40(例えば、セラリシン)、EC3.5.1.1(例えば、アスパラギナーゼ)、EC3.5.1.11(例えば、ペニシリンアミダーゼ)、EC3.5.1.14(例えば、N−アシル−脂肪族−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.2(例えば、L−グルタミンアミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.28(例えば、N−アセチルムラモイル−L−アラニンアミダーゼ)、EC3.5.1.4(例えば、アミダーゼ)、EC3.5.1.44(例えば、タンパク質−L−グルタミンアミドヒドロラーゼ)、EC3.5.1.5(例えば、ウレアーゼ)、EC3.5.1.52(例えば、ペプチド−N(4)−(N−アセチル−β−グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼ)、EC3.5.1.81(例えば、N−アシル−D−アミノ酸デアシラーゼ)、EC3.5.4.6(例えば、AMPデアミナーゼ)及びEC3.5.5.1(例えば、ニトリラーゼ)から選択されるEC3(ヒドロラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないヒドロラーゼ酵素である。
他の実施形態では、POIは、EC4.1.2.10(例えば、マンデロニトリルリアーゼ)、EC4.1.3.3(例えば、N−アセチルノイラミン酸リアーゼ)、EC4.2.1.1(例えば、炭酸脱水酵素)、EC4.2.2.−(例えば、ラムノガラクツロナンリアーゼ)、EC4.2.2.10(例えば、ペクチンリアーゼ)、EC4.2.2.22(例えば、ペクチン酸三糖リアーゼ)、EC4.2.2.23(例えば、ラムノガラクツロナンエンドリアーゼ)及びEC4.2.2.3(例えば、マンヌロン酸特異的アルギン酸リアーゼ)から選択されるEC4(リアーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないリアーゼ酵素である。
所定の他の実施形態では、POIは、EC5.1.3.3(例えば、アルドース1−エピメラーゼ)、EC5.1.3.30(例えば、D−プシコース3−エピメラーゼ)、EC5.4.99.11(例えば、イソマルツロースシンターゼ)及びEC5.4.99.15(例えば、(1→4)−α−D−グルカン1−α−D−グルコシルムターゼ)から選択されるEC5(イソメラーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないイソメラーゼ酵素である。
更に他の実施形態では、POIは、EC6.2.1.12(例えば、4−クマリン酸塩:補酵素Aリガーゼ)及びEC6.3.2.28(例えば、L−アミノ酸α−リガーゼ)から選択されるEC6(リガーゼ)酵素を含むがそれらに限定されないリガーゼ酵素である。
本発明の菌株及び方法のこれらや他の態様及び実施形態は、本明細書及び下記の実施例に照らせば、当業者には明白になるであろう。
本開示の所定の態様は、限定するものと解釈すべきでない以下の実施例に照らして更に理解することができる。材料及び方法の変更は、当業者には明白であろう。
実施例1
糸状菌における形態学的変化の原因としてのssb7遺伝子の同定
A.概説
トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)は、商業的発酵において使用した場合に濃い粘性発酵ブロスを産生する好気性糸状菌である。例えば、そのような発酵ブロスの高粘性は、特に酸素移動を減少させ、それにより細胞集団の量を限定し、これは同時にT.リーゼイ(T.reesei)の商業的発酵において達成される体積生産性を減少させる。粘性が低下した突然変異体の単離は、より粘性が低い発酵ブロスを産生する突然変異菌株を生じさせ得る。そのような変異菌株を用いると、発酵は、より多くの細胞集団を利用することができ、体積生産性の増加をもたらす。より特別には、1つのそのような突然変異体であるMorph 77B7は、遺伝子スクリーニングから単離されたが、ここで原因となる突然変異は、以前に特性解析されていないMITドメインを含有するタンパク質をコードする遺伝子ssb7におけるフレームシフト突然変異であると同定された。本実施例(及び下記に続く実施例2及び3)では、ssb7の突然変異が発酵ブロスの粘性の低下を生じさせることを例示する、ssb7の様々な突然変異対立遺伝子を開示する。本明細書に開示したssb7遺伝子座及び突然変異ssb7対立遺伝子は、図1に示した。
B.形態突然変異体についてのスクリーニング
トリコデルマ(Trichoderma)菌株を発現する「TrGA 29−9」と名付けられたグルコアミラーゼ(GA)(全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,725,727号明細書を参照されたい)は、10%の殺滅が得られるまで、NTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)を用いて突然変異させた。生存細胞をPDA(ポテトデキストロース寒天)上で平板培養し、胞子形成させた。胞子は、水中に懸濁させた後に平板から擦り取った。胞子は48〜72時間に渡りYEG(酵母エキスグルコースブロス)中で増殖させ、生じた菌糸体は200マイクロメートル(μm)フィルターに通してふるい、引き続いてこのフィルターを大量の水を用いて洗浄した。濾液を遠沈させ、菌糸体を収集し、YEG内に再接種した。毎回菌糸体をより小さなフィルターに通してふるった以外は、この同じ抽出手法を数回繰り返した。最終ステップでは、YEG中での増殖後、菌糸体を40μmのフィルターに通して濾過し、菌糸体を濾液から回収し、PDA上で平板培養した。
胞子ライブラリーを作製し、コロニーピッカーを使用して96ウエルのライブラリーを調製した。顕微鏡を使用して、ライブラリーを液体培養中でスクリーニングし、形態における変化(即ち、表現型)を示す突然変異体を回収した。このスクリーニングからの突然変異体を高細胞密度振とうフラスコ内で更に評価した。低粘性のブロスを用いた突然変異体は、更に14Lの発酵槽内で低下した粘性(表現型)、酸素移動特性及びタンパク質産生について標準及び高細胞密度条件下で評価した。
C.T.リーゼイ(T.reesei)Morph 77B7の単離及び特性解析
「Morph 77B7」と名付けられたT.リーゼイ(T.reesei)突然変異体(即ち、実施例1Bで上述したように得られた)は、特にその親より短くより粘性の糸状体を有する、深部液体培養中で変化した形態(表現型)を有することが観察された。例えば、液体培地中では、Morph 77B7を含有する培養は、親を含有する培養と比較して、増殖中のより高レベルの溶存酸素(DO)を更に示した(表1を参照されたい)。
より特別には、T.リーゼイ(T.reesei)菌株TrGA 29−9及びMorph 77B7は、深部(液体)培養中の類似の条件下で増殖させ、それらの増殖表現型を比較した。手短には、各菌株の胞子は、27.5g/Lの最終濃度まで添加した60%のグルコースと共にサイドバッフル及びボトムバッフルの両方を備える3Lのフラスコ内の500mLの最小培地へ別個に添加した。培養は、34℃の振とうインキュベーター内で48時間に渡り増殖させた。
48時間後、各フラスコの内容物は、9.5Lの培地(4.7g/LのKHPO、1.0g/LのMgSO・7HO、4.3g/Lの(NHSO並びに175g/Lのクエン酸、200g/LのFeSO・7HO、16g/LのZnSO・7HO、3.2g/LのCuSO・5HO、1.4g/LのMnSO・HO及び0.8g/LのHBOを含有する2.5mL/Lの400×の微量元素溶液を含有する)を含有する14Lの発酵槽に別個に添加した。これらの成分は一緒に、30分間に渡り121℃で加熱殺菌した。60%のグルコース及び0.48%のCaCl・2HOの溶液は、別個にオートクレーブ滅菌し、冷却し、75g/Lのグルコース及び0.6g/LのCaCl・2HOの最終濃度まで発酵槽に添加した。この培地は28%のNHを用いてpH3.5へ調整し、温度は全増殖期間に渡り34℃で維持した。
溶存酸素(DO)プローブは、ヘッドスペース内に追加の圧力が加えられない場合に100%へ較正された(即ち、0バールゲージ、1バール絶対値)。ヘッドスペース内の圧力は、次に0.7バール(ゲージ)に設定し、その後種培養前の酸素プローブ示度170%を添加した。発酵槽は、最初に500RPMに設定した変速電動機によって混合を提供する2基の四枚刃タービンを含有していた。
培養が増殖するにつれて、DO量レベルは、糸状菌菌糸の増殖に起因して、少なくとも部分的には発酵ブロスの粘性の増加の結果として低下した。DO量のレベルが40%未満に低下すると、撹拌速度は、溶存酸素を40%で維持するために増加させた。撹拌が750RPMに達すると、DO量のレベルは、40%未満に低下させられるであろう。DO量が40%未満に低下しなかった場合、発酵ラン中に撹拌速度を増加させることは不要で、初期撹拌速度は必要より高かった。グルコースが完全に消費されると、各発酵層中で生成されたバイオマス量が測定され、両方の菌株について実質的に同一であることが見出された。
従って、所定の撹拌レベルでの各発酵槽内のDO量レベル及び所定のDO量レベルを維持するために必要とされる撹拌量は、(様々な菌株増殖表現型に起因する)様々なブロスの粘性の間接的尺度である。唯一の変量(即ち、DO若しくは撹拌)を変動させて相互に測定するのが理想的であろうけれども、各発酵槽内の十分なバイオマスを保証するために、DOが40%未満に低下するのを防止し、それによって様々な菌株の増殖間のより有意味な比較を許容することが望ましい。
表1に示したように、菌株Morph 77B7は、(親)TrGA 29−9菌株と比較して、低下した発酵ブロス粘性を有する。例えば、バッチ増殖期の終了時(即ち、全グルコースが消費され尽くしたとき)、両方の菌株は類似のバイオマス濃度及び類似のピーク炭素発生率(CER)を達成した。そのために、コントロール菌株の撹拌が750RPMの最高設定点へ増加すると、DOは15%の最小設定点へ低下した。対照的に、Morph 7B77突然変異菌株は、同一バイオマス濃度を達成するためにこれ程多くの撹拌を必要とせず、ここで撹拌速度は、40%の設定点でDOを維持するために616RPMまでしか増加しなかった。
Figure 2021521821
D.T.リーゼイ(T.reesei)Morph 77B7における原因となるssb7(fs)突然変異対立遺伝子の同定
T.リーゼイ(T.reesei)TrGA 29−9親菌株及びMorph 77B7突然変異菌株のゲノムを(概して国際PCT出願の国際公開第2012/027580号パンフレットに記載されているように)シーケンシングすると、Morph 77B7ゲノムにおけるコーディング配列を変化させると予測された8つの新規な突然変異が同定され、それらの突然変異は何れも単独で、又は組み合わせて、本明細書に記載した観察された変化した形態表現型及び粘性の低下のために必要であると考えられる。そこで、これらの突然変異の何れが重要であるかを決定するために、相補性分析を実施した。
より特別には、本明細書で「ssb7」と名付けられた唯一の遺伝子座だけが突然変異表現型に相補性を示した。従って、配列番号1のssb7遺伝子は、同一DNA配列上の他のタンパク質の予測、例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)QM6aタンパク質ID(PID)108712と部分的に重複する、新規に予測されたタンパク質であるSSB7をコードする(下記では「JGIポータル」と略記する、The Genome Portal of the Department of Energy Joint Genome Institute,Grigoriev et al.,2011を参照されたい)。突然変異菌株Morph 77B7においては、ssb7突然変異対立遺伝子は、エキソン2内に単一グアニジン(G)ヌクレオチド欠失(ΔG)を含む(T.リーゼイ(T.reesei)QM6a Scaffold 13,167404)。例えば、エキソン2内(即ち、ssb7突然変異対立遺伝子内)のGの欠失は、フレームシフト突然変異及びssb7遺伝子の最終イントロンの前での早期終止を生じさせる。この対立遺伝子は、本明細書では「ssb7(fs)」と呼ぶ。
DNA断片を用いた形質転換によるT.リーゼイ(T.reesei)突然変異菌株Morph 77B7菌糸表現型の相補性解析は下記のように実施した。突然変異Morph 77B7において欠失した8つの突然変異遺伝子座各々について、発現を確証するために、形質変換選択マーカーを含有するプラスミド及び十分な隣接配列を備える野生型遺伝子座配列に対応するDNA断片を構築した。突然変異菌株Morph 77B7プロトプラストは、これらのプラスミドを用いて別個に形質転換させた。これらのプラスミド各々からの2個の形質転換体は、選択液体培地を備える振とうフラスコに移し、33℃で3日間に渡り増殖させた。大部分のDNA断片を運んでいる形質転換体は、Morph 77B7突然変異菌株について観察された高分岐性の粘性菌糸体表現型を維持していた。DNA断片1についての(Morph 77B7内の他の突然変異遺伝子座の1つ、即ち、PID 112328をコードする遺伝子をコードする)形質転換体は、この突然変異表現型を例示している。これとは対照的に、DNA断片6を含む(即ち、PID 108712/SSB7をコードする)形質転換体だけが、少なくとも部分的に、より粘性が低く低分岐の菌糸体を備えるこの表現型を逆転させた。図2に示したように、DNA断片1(図2、パネル1A及びパネル1B)並びにDNA断片6(図2、パネル6A及び6B)は、各DNA断片1及び6についての独立形質転換体を表す。配列番号4の変異SSB7タンパク質をコードする突然変異ssb7(fs)対立遺伝子(配列番号3)の核酸配列は、図3に示した。
従って、上記に概して記載したように、野生型T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子(配列番号1)の核酸配列は、文献において特性解析されていないSSB7(配列番号2)をコードする。例えば、SSB7についてのJGIポータルのT.リーゼイ(T.reesei)QM6a v2.0データベースPIDは、108712(http://genome.jgi−psf.org/cgi−bin/dispGeneModel?db=Trire2&id=108712;配列番号33)であるが、SSB7についてのJGIのT.リーゼイ(T.reesei)RUT−C30データベースPIDは、82397(Jourdier et al.,2017;配列番号35)である。従って、DNA配列は、2種のT.リーゼイ(T.reesei)菌株間ではこの遺伝子座で同一である;しかしながら、コーディング領域は、僅かに相違すると予測されている(図1A;「QM6a JGI ssb7 PID 108712」及び「RUT−C30 PID 82397」を参照されたい)。詳細には、菌株QM6a遺伝子モデルのN末端(PID 108712/配列番号33をコードする配列番号32)はRUT−C30遺伝子モデルとは異なる追加の2つのエキソン(PID 82397/配列番号35をコードする配列番号34)を抱いているが、他方菌株RUT−C30遺伝子モデルは追加のイントロンを含有している。この遺伝子座での遺伝子モデル予測を解明するために、本発明者らは、T.リーゼイ(T.reesei)からのRNAシーケンシングデータをfunannotate真菌ゲノム注釈パイプラインと結び付けて利用した(JM Palmer.2019.Funannotate genome annotation pipeline.Zenodo.http://doi.org/10.5281/zenodo.1134477)。Funannotateは、RNAシーケンシングリードマッピングによって支援された遺伝子モデルを予測したが、QM6a及びRUT−C30におけるJGIからの両方のモデル予測は、RNAシーケンシングデータとの不適合のイントロン−エキソン境界を有していた(図1Aを参照されたい)。SSB7遺伝子予測は、3つのエキソン(配列番号19、配列番号20及び配列番号21)、462bpの5’UTR(配列番号36)及び373bpの3’UTR(配列番号37)を含有する4762bpの転写産物から翻訳された1308個のアミノ酸の翻訳タンパク質を生じさせる。本出願人は本明細書において、funannotateソフトウエアに由来する予測を使用して、ssb7遺伝子及びSSB7タンパク質の配位について言及する。本出願人は、本明細書でfunannotateソフトウエアに由来する予測を使用して、ssb7遺伝子(配列番号1)及びSSB7タンパク質(配列番号2)の座標について言及するが、他方ゲノム座標は、依然としてJGI QM6a v2アセンブリーについて言及するであろう。
E.相同性に基づく機能
本明細書で実施したBLASTの検索は、SSB7タンパク質オルソログがフザリウム(Fusarium)種(配列番号8)、ニューロスポラ(Neurospora)種(配列番号9)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種(配列番号10)、タラロマイセス(Talaroymyces)種(配列番号11)、アスペルギルス(Aspergillus)種(配列番号12)及びペニシリウム(Penicillium)種(配列番号13)中には存在するが、サッカロミセス(Saccharomycetes)種には存在しないことを証明した。例えば、T.リーゼイ(T.reesei)ssb7遺伝子は、予測された微小管相互作用及び輸送(MIT)ドメイン(表2、領域A及び図5を参照されたい)及び表2の領域B、領域C及び領域Dに記載された未知のSSB7タンパク質ドメインを含む、特性解析されていないが高度に保存されたSSB7タンパク質をコードする。より特別には、353個の子嚢菌(Ascomycete)ホモログ(N末端MITドメインに渡るアミノ酸が欠如する短鎖タンパク質の予測を排除する)は、ソフトウエアパッケージGeneious内のMUSCLE法を使用してアラインメントさせた(Edgar RC(2004).”MUSCLE:multiple sequence alignment with high accuracy and high throughput”.Nucleic Acids Research.32(5):1792−97.doi:10.1093/nar/gkh340)。グラフィカル出力は、図5に示したが、ここでアミノ酸保存の4つの領域(A〜D)は、アラインメントから同定された。領域Aは、MITドメインと重複した。保存は、これらの4つの領域がSSB7機能にとって重要であることを意味するが、精密な酵素的若しくは構造的機能は、現在の化学的知見に基づくアミノ酸配列によっては示唆されない。
Figure 2021521821
実施例2
親菌株TrGA 29−9内でのssb7の破壊によるMORPH 77B7表現型の改造
A.概説
ssb7突然変異が粘性低下の原因であったことを詳細に検証するために、ssb7遺伝子座を親菌株TrGA 29−9内で特異的に突然変異させた。そこで、相同組換えによりssb7突然変異誘発を標的とするために、2種の方法を使用した。プラスミドpRATT311由来の線状DNAカセットを使用する1つの方法は、菌株Morph 77B7において同定されたΔGの部位(対立遺伝子「ssb7(311)」)での破壊的DNAの挿入を標的とした。
環状プラスミドpTrex2g MoCas 77b7−HR1を使用する第2方法は、フレームシフト突然変異の下流での(元のフレームと比較して)1つの同義コドン変化と一緒に、菌株Morph 77B7内で同定されたΔG突然変異を導入した(対立遺伝子「ssb7(TS1)」;対立遺伝子の比較については図1を参照されたい)。従って、ssb7の対立遺伝子はどちらも粘性の低下を示したが、他方フレームシフト対立遺伝子ssb7(TS1)は、より良好な粘性の低下を有していた。
B.菌株TrGA 29−9内の対立遺伝子ssb7(311)
T.リーゼイ(T.reesei)ssb7破壊カセットプラスミドpRATT311は、標準的な分子生物学的手順を用いて調製した。従って、当業者であれば、このプラスミドを本明細書に開示した関連DNA部分から容易に改造することができる。このプラスミドは、Scaffold 13、164849〜167403(左フランク)に対応するDNA配列と相同な2.6Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列を含んでいた。このプラスミド内には、Scaffold 13、167405〜169218(右フランク)に対応するDNA配列と相同な1.8Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列も又含まれていた。これらの配列は、ssb7遺伝子を標的化し、左フランクと右フランクとの間のゲノムのヌクレオチド(Scaffold 13、167404)を介在カセット配列で置換するために設計された。これらの介在カセット配列は、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)由来のpyr2選択マーカーを含んでいた。pyr2選択マーカーの直ぐ下流は、左フランク(リピート)の3’に最も近い領域と相同であるScaffold 13、167403〜166833に対応する0.6Kb領域を有するDNA配列であった。これらの繰り返し配列は、唯一の新規な標的化遺伝子改変としてのssb7遺伝子内に単一ヌクレオチドG欠失突然変異(Scaffold 13、167404)を残しながら、pyr2マーカーのその後の消失を促進し、将来の菌株開発におけるこのマーカーの使用を可能にする。本明細書に提示したデータは、ssb7コーディング配列を破壊するpyr2マーカー及びリピートを含有するpRATT311形質転換体由来であることに留意されたい(図1)。
菌株TrGA 29−9の自然発生pyr2突然変異誘導体は、5−フルオロ−オロト酸(FOA)選択によって単離した。このTrGA 29−9 pyr2菌株は、PEG媒介性プロトプラスト形質転換法を使用して、pRATT311由来のssb7破壊カセットを用いて形質転換させ、pyr2マーカーによって獲得されたウリジン原栄養性に基づいて候補について選択するためにソルビトールを含有するフォーゲル最少培地上で平板培養した。個々の形質転換体を単離し、フォーゲル最少培地に移動させて増殖させた。当業者であれば下記のガイダンスによって実施できるように、PCR分析を使用して、どの形質転換体で相同組換えによってssb7遺伝子座でssb7破壊カセットが統合したのかを同定した。
目的遺伝子の破壊を正確に標的化するためには1サブセットの組換え細胞しか相同フランクを上首尾で利用することができないので、所望の事象を備える形質転換体を同定するためには、多数の形質転換体をスクリーニングする必要がある可能性がある。PCRを使用すると、どの組換え細胞が所望の標的化破壊を有するのかを試験することができる。ホモロジーボックス領域のそれぞれに渡って増幅するプライマーが設計されなければならないが、ここで、1つのプライマーは最も近い末端から100bp超の選択マーカー内の1つの場所でプライミングし、他方のプライマーは、隣接ゲノム配列内のホモロジーボックス領域の末端を100bp超える場所でプライミングする。正確な標的化破壊を含有する可能性が高い細胞は、破壊カセットの左フランクと右フランクに及ぶPCR産物を作製することに成功するであろうが、他方不成功に終わる形質転換事象は予想されるサイズの産物を生成しないであろう。この段階では、培養は形質転換細胞と未形質転換細胞の混合であるので、精製のステップが必要になる可能性がある。培養の精製は、破壊部位に渡る短いPCR産物の消失についてPCRによって試験することができる。ssb7破壊カセットの確証された相同統合を有する生成された菌株は、「TrGA 29−9 ssb7(311)」と命名された。
C.菌株TrGA 29−9内の対立遺伝子ssb7(TS1)
本明細書に記載した菌株TrGA 29−9内のssb7のcas9媒介性編集のために使用したベクター及び菌株開発の方法は、本質的には、国際PCT出願のPCT/US2015/65693及び国際公開第2016/100272号パンフレットに記載された通りに実施したが、ここでその中の実施例3及び実施例4は、pTrex2gHyg MoCasの構築について記載しており;実施例5はこのベクター内にガイドRNA(gRNA)発現カセットを付加することを記載しており;及び実施例8は、HR指向性ゲノムの編集、形質転換及びスクリーニングのためのホモロジー領域の付加について記載している。
図6Aに示したgBlock DNA配列(配列番号5)は、Integrated DNA Technologies,Inc.(IDT,Coralville,IA)から発注されたが、5’末端又は3’末端の何れかで下線を付した配列は、EcoRVを用いた消化後に、pTrex2gHyg MoCasを用いたGibsonアセンブリーを可能にするために付加された。これらの下線を付した配列間は、ssb7遺伝子内のT.リーゼイ(T.reesei)ゲノム由来の1,098bpである。グレーのハイライトは、野生型ssb7遺伝子内の7個のG残基である、突然変異ssb7(fs)対立遺伝子の6個のG残基を示している。内部の二重下線付配列は、ガイドRNA(gRNA)配列に対応する20ヌクレオチド(nt)の標的配列である。最初の20nt標的は「TS1」と呼ばれ、2番目の20nt標的は「TS2」と呼ばれるが、ここでボールド体のc残基は、標的部位に隣接するPAM部位を変化させるGからCへの変化を表す。
2つのgBlockは、2つの異なる単一ガイドRNA(sgRNA)のための発現カセットをコードするためにIDTから発注されたが、1つはssb7遺伝子内のTS1(配列番号6、図B)を標的とし、1つは、ssb7遺伝子内のTS2(配列番号7、図6C)を標的とする。従って、2つのgBlockの何れかの端部で下線を付した配列は、SfiI及びAflIIを用いた消化後にpTrex2gHyg MoCasを用いたGibsonアセンブリーを可能にするために付加された。
そこで、2個の最終ベクターが構築された。1個のpTrex2g MoCas 77b7−HR1は、ssb7ホモロジー領域及びTS1 sgRNAカセットを有していた。第2のpTrex2g MoCas 77b7−HR2は、ssb7ホモロジー領域及びTS2 sgRNAカセットを有していた。DNAシーケンシングは、所望のgBlockの挿入を検証した。
従って、本明細書に開示した2つのssb7対立遺伝子は、これらのプラスミド「ssb7(TS1)」及び「ssb7(TS2)」を用いて生成した。対立遺伝子ssb7(TS1)は標的配列1(TS1)から生成し、Scaffold 13、167404で元のフレームシフト突然変異、並びにTS1認識配列を不活化するためにScaffold 13、167436でGからCへの突然変異を含有する(図1を参照されたい)。ssb7遺伝子座の確証された相同遺伝子操作を用いて生成された菌株は、「TrGA 29−9 ssb7(TS1)」と名付けられた。例えば、PCT出願の国際公開第2016/100272号パンフレット(PCT出願のPCT/US2015/065693)は、(例えば、組換えDNA構築物によって発現した)CASエンドヌクレアーゼを含む/発現する組換え真菌細胞、ガイドRNA(gRNA)を含む/発現する組換え真菌細胞、非機能的若しくは活性の低下した非相同末端結合(NHEJ)経路を含む組換え真菌細胞、糸状菌を形質転換させる方法及び組成物、そのような形質転換真菌細胞をスクリーニングするための方法及び組成物等について記載している。従って、当業者であれば、PCT出願の国際公開第2016/100272号パンフレットを参照することにより本開示の任意の糸状菌株において、対立遺伝子ssb7(TS1)又は本明細書に開示した任意の他の改変対立遺伝子を同様に構築することができる。
D.バイオリアクター内の粘性の低下
トリコデルマ・リーゼイ(Trichodermareesei)菌株は、深部(液体)培養中の類似の条件下で増殖させ、それらの増殖表現型を比較した。手短には、各菌株の胞子は、サイドバッフル及びボトムバッフルの両方を備える250mLのフラスコ内の50mLのクエン酸最小培地へ別個に添加した。培養は、5cmの動程を備える振とうインキュベーター内で170RPM、30℃で48時間に渡り増殖させた。48時間後、各フラスコの内容物は、接種のために2Lの発酵槽(バイオリアクター)に別個に添加した。インキュベーションの前に、4.7g/LのKHPO、1.0g/LのMgSO・7HO、9g/Lの(NHSO及び2.5mL/Lの微量元素溶液を含有する0.95kgの培地を2Lのバイオリアクターに添加し、その後に30分間に渡り121℃で一緒に加熱殺菌した。殺菌後の添加物:滅菌した4.8mLの50%のグルコース及び0.96mLの0.48%のCaCl・2HOは、インキュベーションの前にタンクに添加した。培地は、14%のNHを用いてpH3.5へ調整し、全増殖期間に渡り、温度は30℃及びpHは3.5で維持した。
溶存酸素(DO)プローブは、ヘッドスペース内に追加の圧力がない時点に100%へ較正した(即ち、0バールゲージ、1バール絶対値)。バイオリアクターは、最初に800RPMに設定した変速電動機によって混合を提供する、2枚の海洋インペラー間に4枚刃Rushtonインペラーを含有していた。
培養が増殖するにつれて、DOレベルは、糸状菌菌糸の増殖に起因して、少なくとも部分的には発酵ブロスの粘性の増加の結果として低下した。バイオリアクター内の溶存酸素の制御は、数個の設定点を調整する制御ループに基づいた。DOが30%未満に低下すると、溶存酸素を30%で維持するために撹拌速度は増加させられ、最大撹拌設定点は1,200RPMであった。DOが30%を保持できなかった場合は、酸素富化は21%から40%まで増加させられた。それでも未だDOが保持できない場合は、ガス流量は60sL/時から80sL/時まで増加させられた。グルコースが完全に消費された時点に各バイオリアクター内で生成されたバイオマス量が測定され、全菌株について実質的に同一であると見出された(約50g/kgの乾燥細胞重量)。バッチ処理グルコースの消耗後、グルコース制限状態にある細胞を維持し、たんぱく質産生を促進するために、グルコース及び混合二糖の緩徐な供給を開始した。親TrGA 29−9菌株及び2種のssb7突然変異体(由来)菌株TrGA 29−9 ssb7(311)及びTrGA 29−9 ssb7(TS1)のためのバイオリアクター内の撹拌及びDOプロフィールは、明確にするために図7に提示した。
例えば、図7に示したように、所定レベルの撹拌での各バイオリアクター内のDOレベル及び所定のDOレベルを維持するために必要とされる撹拌量は、発酵ブロス粘性の間接的な尺度であり、その測定値は、本明細書に記載した観察された真菌株の増殖表現型と相関する(例えば、図2を参照されたい)。唯一の変量(即ち、DO若しくは撹拌)を変動させて相互に測定するのが理想的であろうけれども、各バイオリアクター内の十分なバイオマスの生産を保証し、高生産性を達成するために、DOが30%未満に低下するのを防止し、それによって様々な真菌株の増殖間のより有意味な比較を許容することが望ましい。
従って、上述した粘性低下の2つの尺度は、各バイオリアクター内のラン、DO制限及び撹拌の追加から定量した。菌株は、それらがバッチ処理グルコースをいつ消耗するのか、従って供給開始を誘発するのか関して異なるので、菌株は、発酵中に、いつDOが最も制限されるかに関しても異なる。このため、これらの測定は、供給開始前20時間及び供給開始後40時間に及ぶ発酵時間の時間枠を使用して計算した。
図7は、この時間枠±10時間を示している。DO制限は、DOレベルが最小DO設定点より20%未満高いサンプリング点(即ち、36%未満のDO)の比率であると規定した。撹拌の追加は、制御ループによって誘発される800RPMの設定点の上方の追加の撹拌の平均値であると規定した。発酵ブロスの粘性は、細胞密度に伴って増加する粘性と共に、細胞密度の関数であるので、変異菌株と親菌株との比較は、類似の細胞質量濃度でのみ有効である。このため、実施例においては、それからこれらの間接的尺度が計算される時間枠中ではピーク乾燥細胞重量(DCW)が含まれる。
従って、粘性評価は、親TrGA 29−9菌株及びssb7突然変異体(娘)菌株であるTrGA 29−9 ssb7(311)及びTrGA 29−9 ssb7(TS1)に対してバイオリアクター内で実施した。全グルコースが消費され尽くしたバッチ増殖期の終了時には、全菌株は類似のバイオマス濃度を達成した(表3を参照されたい)。更に、ssb7の対立遺伝子であるssb7(311)及びssb7(TS1)は、バイオリアクター発酵ブロス粘性の(即ち、TrGA 29−9親と比較して)低下を生じさせた。更に、DOは、より短い発酵期間については低かった。従って、表3は、DOを設定点の上方で維持するために必要とされる低下した撹拌量の尺度及びDOが設定点の20%上方若しくは以下であった間の時間の低下した定量測定値を提供している。表3に示したように、粘性の低下は、マーカー挿入ssb7(311)に比較して、フレームシフト対立遺伝子ssb7(TS1)についての方が大きかった。
Figure 2021521821
表3に提示した粘性定量を行わない場合でさえ、突然変異ssb7対立遺伝子を含む娘菌株については撹拌が減少させられたことは図7において視覚的に明白である。当業者は、最小溶存酸素、初期撹拌及び最高撹拌についての最適設定点値が糸状菌及び発酵槽容器によって相違する可能性があることを認識するであろう。発酵パラメーターは、親菌株の溶存酸素制限及び撹拌追加測定値が突然変異娘細胞の発酵中のブロス粘性変化の検出を可能にするための範囲で設定されるべきであることを認識すべきである。図7における親プロフィールは、そのような情報プロフィールを例示している。
実施例3
全セルラーゼ菌株T4abc内のssb7の標的化突然変異
A.概説
ssb7突然変異体の有用性を詳細に試験するために、Nik1(M743T)突然変異(配列番号36)を含み、セルラーゼの天然カクテルを発現する、ssb7の3つの突然変異対立遺伝子についても、「T4abc」と名付けられた異なるT.リーゼイ(T.reesei)系統内でも評価した。これらの突然変異体も又、粘性が低下した表現型を証明した。
B.菌株T4abc内の対立遺伝子ssb7(311)、ssb7(TS2)及びssb7(339fs)
ssb7(311)対立遺伝子は、菌株「T4abc ssb7(311)」を生成するために、上記の実施例2に記載した菌株T4abc pyr2内で生成した。ssb7(TS2)対立遺伝子は、標的配列2を含有するプラスミド(TS2)を使用することを除いて、実施例2におけるssb7(TS1)と同様に、菌株T4abc内で生成した。従って、それは、TS1及びTS2認識配列それぞれを不活化するために、Scaffold 13、167404でのMorph 77B7フレームシフト突然変異並びにScaffold 13、167436及びScaffold 13、167466での2個の追加のGからCへの突然変異を含有していた(図1)。この菌株は、「T4abc ssb7(TS2)」と名付けられた。
ssb7(339fs)対立遺伝子は、当業者であれば、本明細書に開示した関連DNA部品からこのプラスミドを容易に改造できるように、標準の分子生物学的手順を用いて調製されるプラスミドpRATT339を用いて調製した。このプラスミドは、Scaffold 13、165839〜169218(左フランク)に対応するDNA配列と相同な3.4Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列を含んでいた。このフランク内には、エキソン2においてフレームシフト突然変異を誘発する単一G欠失があった。このプラスミド内には、Scaffold 13、169273〜171458(右フランク)に対応するDNA配列と相同な2.2Kbのホモロジーボックスを有するDNA配列も又含まれていた。これらの配列は、ssb7遺伝子を標的化し、左フランクと右フランクとの間のゲノムの領域(Scaffold 13、169219〜169272)を介在カセット配列で置換するために設計された。
これらの介在カセット配列は、形質転換すべき菌株のゲノム内の内在性T.リーゼイ(T.reesei)pyr2との相同性を最小限に抑えることが意図されたトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)由来のpyr2選択マーカーを含んでいた。pyr2選択マーカーの直ぐ上流には、その後のマーカーの消失及び形質転換体/破壊株の有用なpyr2突然変異誘導体の単離を促進する、このマーカーの3’末端の直接繰返し重複(リピート)がある。正確に標的化された介在カセット配列を備える形質転換体のサブセットでは、左フランク内のフレームシフト突然変異も又エキソン2(Scaffold 13、167404)内で単一Gヌクレオチドが欠失しているゲノム内に組み込まれ得るであろう。本明細書に開示したssb7(339fs)対立遺伝子は、Scaffold 13、167404でのヌクレオチド欠失及びScaffold 13、169219〜169272の間での繰返し隣接pyr2マーカーの挿入の両方を含有する(図1)。
従って、菌株T4abc pyr2は、PEG媒介性形質転換法を使用して、pRATT339由来のssb7破壊カセットを用いて形質転換させ、pyr2マーカーによって獲得されたウリジン原栄養性に基づいて候補について選択するためにソルビトールを含有するフォーゲル最少培地上で平板培養した。個々の形質転換体を単離し、フォーゲル最少培地に移動させて増殖させた。PCR分析を使用して、実施例2Bにおいて上述した相同組換えによってssb7遺伝子座でssb7破壊カセットが統合した形質転換体を同定した。胞子の精製後、統合が正確に発生したこと、及び形質転換体が同核状態であることを確認するために、更なるPCR分析を実施した。次に、統合事象中に左フランク内にこの突然変異が組込まれたかどうかを決定するために、フレームシフト突然変異に及ぶssb7遺伝子の一部分をPCR増幅させてシーケンシングした。エキソン3内のssb7破壊カセットの確証された相同統合及びエキソン2内のフレームシフト突然変異を備える生成された菌株は、「T4abc ssb7(339fs)」と命名された。
C.バイオリアクター内の粘性の低下
粘性の評価は、実施例2で記載したように、バイオリアクター内でT4abc及びssb7突然変異菌株について実施した。表4に示したように、全グルコースが消費され尽くしたバッチ増殖期の終了時には、全菌株は類似のバイオマス濃度を達成した(乾燥細胞重量)。3つのssb7対立遺伝子は、そのすべてが、DOを設定点より上方に維持するために必要とされた撹拌量の低下(撹拌の追加)及びその間にDOが設定点の20%上方又はそれ以下(DO制限)となった時間分率の低下によって証明される、T4abc親と比較したバイオリアクター内のブロス粘性の低下を生じさせた。
Figure 2021521821
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Claims (31)

  1. 親菌株に由来する糸状菌の変異菌株であって、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33若しくは配列番号35との約50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変を含み、ここで前記変異菌株の細胞は親細胞と比較して粘性が低下した表現型を含む、糸状菌の変異菌株。
  2. 深部培養中における好気発酵中の前記変異菌株は、(i)前記親菌株の前記細胞と比較して、予め選択された溶存酸素量を維持するために減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(ii)予め選択された撹拌量で、前記親菌株の前記細胞と比較して増加した溶存酸素量を維持する細胞ブロスを産生する、請求項1に記載の変異菌株。
  3. SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子の少なくとも3’領域で欠失するか、又は破壊することを含む、請求項1に記載の変異菌株。
  4. 目的タンパク質をコードする遺伝子を更に含む、請求項1に記載の変異菌株。
  5. 前記変異菌株は、前記親菌株と比較して、バイオマス単位量当たり実質的に同一量の目的タンパク質を産生する、請求項4に記載の変異菌株。
  6. 前記変異菌株は、バイオマス単位量当たりで前記親菌株より多量の前記目的タンパク質を産生する、請求項4に記載の変異菌株。
  7. 前記糸状菌は、子嚢菌門(phylum Ascomycota)の糸状菌である、請求項1に記載の変異菌株。
  8. 前記糸状菌は、トリコデルマ(Trichoderma)種真菌、フザリウム(Fusarium)種真菌、ニューロスポラ(Neurospora)種真菌、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種真菌、タラロマイセス(Talaromyces)種真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌及びペニシリウム(Penicillium)種真菌から成る群から選択される、請求項1に記載の変異菌株。
  9. 請求項4に記載の変異菌株によって産生した目的タンパク質。
  10. MPG1タンパク質、SFB3タンパク質、SEB1タンパク質、CRZ1タンパク質及び/又はGAS1タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子改変を更に含む、請求項1に記載の変異菌株。
  11. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1の前記ssb7遺伝子又はその相補的配列とハイブリダイズする、請求項1に記載の変異菌株。
  12. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21のssb7エキソン又はそれらの相補的配列とハイブリダイズする、請求項1に記載の変異菌株。
  13. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号22の領域A、配列番号23の領域B、配列番号24の領域C若しくは配列番号25の領域Dをコードする核酸配列又はそれらの相補的配列とハイブリダイズする、請求項1に記載の変異菌株。
  14. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前記SSB7タンパク質の保存アミノ酸配列をコードする核酸配列とハイブリダイズし、前記保存配列は、配列番号26〜30から成る群又はそれらの相補的配列から選択される、請求項1に記載の変異菌株。
  15. 糸状菌細胞の粘性が低下した菌株を構築するための方法であって、
    (a)糸状菌の親菌株を入手するステップ、及び、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33若しくは配列番号35との少なくとも50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子改変するステップ、及び
    (b)ステップ(a)において産生された変異菌株を単離するステップであって、前記変異菌株の前記細胞は、前記親細胞と比較して、粘性が低下した表現型を含むステップ
    を含む、方法。
  16. 深部培養中における好気発酵中の前記変異菌株は、(a)前記親菌株の前記細胞と比較して、予め選択された溶存酸素量を維持するための減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(b)予め選択された撹拌量で、前記親菌株の前記細胞と比較して増加した溶存酸素量を維持する細胞ブロスを産生する、請求項15に記載の方法。
  17. SSB7タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子改変は、前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子の少なくとも3’領域で欠失するか、又は破壊することを含む、請求項15に記載の方法。
  18. 前記真菌細胞は、目的タンパク質をコードする遺伝子を更に含む、請求項15に記載の方法。
  19. 前記変異菌株は、前記親菌株と比較して、バイオマス単位量当たり実質的に同一量の目的タンパク質を産生する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記変異菌株は、バイオマス単位量当たりで前記親菌株より多量の前記目的タンパク質を産生する、請求項18に記載の方法。
  21. 前記糸状菌は、子嚢菌門(phylum Ascomycota)の糸状菌である、請求項18に記載の方法。
  22. 前記糸状菌は、トリコデルマ(Trichoderma)種真菌、フザリウム(Fusarium)種真菌、ニューロスポラ(Neurospora)種真菌、ミセリオフトラ(Myceliophthora)種真菌、タラロマイセス(Talaromyces)種真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌及びペニシリウム(Penicillium)種真菌から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
  23. 請求項18に記載の方法によって産生した目的タンパク質。
  24. MPG1タンパク質、SFB3タンパク質、SEB1タンパク質、CRZ1タンパク質及び/又はGAS1タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の遺伝子改変を更に含む、請求項15に記載の方法。
  25. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のssb7遺伝子又はその相補的配列とハイブリダイズする、請求項15に記載の方法。
  26. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21のssb7エキソン又はそれらの相補的配列とハイブリダイズする、請求項15に記載の方法。
  27. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号22の領域A、配列番号23の領域B、配列番号24の領域C若しくは配列番号25の領域Dをコードする核酸配列又はそれらの相補的配列とハイブリダイズする、請求項15に記載の方法。
  28. 前記SSB7タンパク質をコードする前記遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前記SSB7タンパク質の保存アミノ酸配列をコードする核酸配列とハイブリダイズし、前記保存配列は、配列番号26〜30又はそれらの相補的配列から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
  29. 粘性が低下した表現型を含む糸状菌細胞の変異菌株をスクリーニング及び単離する方法であって:
    (a)配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号33若しくは配列番号35との少なくとも50%の配列同一性を含むSSB7タンパク質をコードする親糸状菌株内の遺伝子を遺伝子改変するステップ、
    (b)前記親菌株の細胞形態と比較して、ステップ(a)の前記改変変異菌株の細胞形態を粘性が低下した表現型についてスクリーニングするステップ、及び
    (c)粘性が低下した表現型を含むステップ(b)の改変変異菌株を単離するステップ
    を含む方法。
  30. 深部培養中における好気発酵中の前記変異菌株は、(a)前記親菌株の前記細胞と比較して、予め選択された溶存酸素量を維持するために減少した撹拌量を必要とする細胞ブロスを産生する、及び/又は(b)予め選択された撹拌量で、前記親菌株の前記細胞と比較して増加した溶存酸素量を維持する細胞ブロスを産生する、請求項29に記載の方法。
  31. 粘性が低下した表現型を含むステップ(c)の前記変異菌株は、前記親菌株と比較して、短い菌糸体を含む、請求項29に記載の方法。
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