JP2007299723A - 電界電子放出素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性マイエナイト化合物粉末を、バルクの導電性マイエナイト化合物上に形成した電界電子放出素子と、これを用いた電界電子放出装置はすでに存在したが、より密度エネルギー効率の高い電界電子放出素子および装置が求められていた。
【解決手段】12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有し、上記マイエナイト化合物に少なくとも1モル%以上は[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)と表される導電性マイエナイト型化合物を含有する粒子が、基体面上に形成されており、該粒子の単位面積あたりの密度が、該粒子の断面の円換算径R[μm]に対して0.001/R2[個/μm2]以上0.15/R2[個/μm2]以下であることを特徴とする電界電子放出素子および装置を提供する。
【選択図】図3
【解決手段】12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有し、上記マイエナイト化合物に少なくとも1モル%以上は[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)と表される導電性マイエナイト型化合物を含有する粒子が、基体面上に形成されており、該粒子の単位面積あたりの密度が、該粒子の断面の円換算径R[μm]に対して0.001/R2[個/μm2]以上0.15/R2[個/μm2]以下であることを特徴とする電界電子放出素子および装置を提供する。
【選択図】図3
Description
本発明は、電界電子放出素子、電界電子放出装置に関する。
フィールドエミッションディスプレイ装置(以下FEDという)は、電子を放出する、ミクロンサイズの極微小な電子放出源を備えた微小電子源が、画素ごとに多数配列されていて、これと対向して配設された正極上の蛍光体を電子線励起により発光させて画像表示させる装置である。高精細表示が可能で、CRTパネルよりはるかに薄型化できるので、大画面フラットディスプレイとして期待されている。また、冷陰極蛍光管や平面型照明装置は、強電界により電子放出させる電子放出源を備えた微小電子源を用いており、管径を小さくすることにより高輝度化とともに装置自体が小型化されるため、液晶等の非発光型表示装置のバックライトとして期待されている。
これらの微小電子源は電界電子放出素子と呼ばれるが、これらは加熱することなしに電界を印加することにより、電子が放出される陰極のことである。これまで電界電子放出素子の材料としては、例えばモリブデン、カーボンなどが検討されてきた。
電界電子放出素子の電子放出源(放出源)の先端での電界強度Eは、電界集中係数βを用いて印加電圧Vから式(1)のように表される。
E=β×V ・・・・・・・(1)
また、電界電子放出素子と正極の間に大きい電位差Vを与えたときに引き出される引き出し電流Iとの間には、式(2)の関係がある(「フィールドエミッションディスプレイ技術」、シーエムシー出版)。
また、電界電子放出素子と正極の間に大きい電位差Vを与えたときに引き出される引き出し電流Iとの間には、式(2)の関係がある(「フィールドエミッションディスプレイ技術」、シーエムシー出版)。
I=a×V2×exp(−b/V) ・・・・・(2)
a=(A×β2/Φ)×exp(9.8/Φ1/2)
b=(−6.5×109×Φ3/2)/β
ここで、A:電子放出面積(m2)、β:電界集中係数(m−1)、Φ:仕事関数(eV)である。
a=(A×β2/Φ)×exp(9.8/Φ1/2)
b=(−6.5×109×Φ3/2)/β
ここで、A:電子放出面積(m2)、β:電界集中係数(m−1)、Φ:仕事関数(eV)である。
式(1)および式(2)からわかるように、電界電子放出素子からの放出電流を大きくするためには印加電圧Vを高くする他に、仕事関数Φが小さい材料で電子放出源を形成する、電子放出面積(電子放出源の総数)Aを増やす、電界集中係数βを大きくすることが有効である。
例えば、電子放出源の材料として研究が行われているモリブデン(Mo)などの金属やカーボンは、電子の放出しやすさの指標の一つである仕事関数が4eV程度と、低くはないことから、低電圧で電子放出させるためには、微細な構造を形成して電界集中係数を大きくするという努力がなされてきた。モリブデンの場合、電界電子放出素子としては、微小な三角錘状の高さ1μmほどのスピント(Spindt)型と呼ばれる放出源チップを多数配置したものが知られている(米国特許第3665241号明細書参照)。しかし多数のスピント型放出源チップを精度良く製造することは難しく、面発光装置や画像表示装置に応用する場合に大面積化が困難であった。また、電界がチップ先端に集中して電場強度が非常に強くなるため、電子放出により発生したイオンが大きな運動量を持ってチップ先端に衝突し損傷を与える。その結果、電子放出が不安定になる、放出源の寿命が短いという課題があった。カーボンの場合は直径が数nm〜数十nmで長さが数μmの線状の構造を持つカーボンナノチューブに合成されて用いられるが、カーボンナノチューブの数密度をコントロールするのが難しいという問題がある。この様に、スピント型モリブデンやカーボンナノチューブにより構成される電子放出源や、それらを用いるFED、冷陰極蛍光管の製造には困難があった。
一方、導電性マイエナイト型化合物は0.6eVと大変小さい仕事関数を示すことが報告されている(非特許文献1)。仕事関数が小さい物質は、電子放出源のチップ先端の電界強度を高くしなくても電子が放出される可能性があり、この場合はチップ先端のアスペクト比を高くする必要がない。アスペクト比の小さいチップは先端の機械的強度も尖った構造のものに比べると強靭で、またチップ先端の電界強度が小さいために電子放出により発生したイオンがチップ先端に衝突する際の衝撃が弱いことから損傷を受けにくい電界電子放出素子を実現できる。
電界電子放出素子における、電子を放出する構造体の密度に関しては、特許文献1に、突起物状または針状の金属酸化物からなる構造体を有する基材が、該構造体の先端を含んだ表面の一部または全部を導電性物資により覆われている場合は、基材上の10μm×10μmの面積当たりに該構造体が0.01〜10000個の密度で存在すると好ましいことが開示されている。
また、特許文献2には、カーボン粒子からなる集合体を周期的に配列した電界電子放出素子において、集合体の粒の直径Dが5〜30μmのものに関しては、1D〜10Dの粒子間隔で配置するのが良いことが開示されている。
これに対して非特許文献1では、導電性マイエナイト化合物粉末を、バルクの導電性マイエナイト化合物上に形成した電界電子放出素子と、これを用いた電界電子放出装置が示されており、この場合電子放出を生じさせるための電圧は室温で1.5kVと大きい値が必要であった。
これに対して非特許文献1では、導電性マイエナイト化合物粉末を、バルクの導電性マイエナイト化合物上に形成した電界電子放出素子と、これを用いた電界電子放出装置が示されており、この場合電子放出を生じさせるための電圧は室温で1.5kVと大きい値が必要であった。
本発明は、上記の課題を解決し、導電性マイエナイト型化合物の粉体を用いてエネルギー効率の高い電界電子放出素子および電界電子放出装置を提供することを目的とする。
本発明は12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有し、上記マイエナイト化合物に少なくとも1モル%以上は[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)と表される導電性マイエナイト型化合物を含有する粒子が、基体面上に形成されており、該粒子の単位面積あたりの密度が、該粒子の断面の円換算径R[μm]に対して0.001/R2[個/μm2]以上0.15/R2[個/μm2]以下であることを特徴とする電界電子放出素子を提供する。
また、本発明は該導電性マイエナイト型化合物からなる粒子の最大粒子径が5μm以下である上記の電界電子放出素子を提供する。
また、前記導電性マイエナイト化合物が含有するAlの一部が、SiまたはGeで置換されている導電性マイエナイト型化合物の粒子からなる電界電子放出素子を提供する。
また、基体面上に該導電性マイエナイト化合物粒子が形成された電界電子放出素子と、該電界電子放出素子と対向して用いられるアノード電極を有する電界電子放出装置において、該導電性マイエナイト化合物粒子の円換算径Rが、アノード電極と該電界電子放出素子の間の距離の0.1倍以下となることを特徴とする電界電子放出装置を提供する。
本発明の導電性マイエナイト化合物粉末を用いた電界電子放出素子は、電子放出特性に優れており、エネルギー効率が高いため、電界電子放出装置として好適に使用できる。
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の電界電子放出素子において、電界放出源となる粒子は、粒子の断面の円換算径Rが小さいほど好ましいが、粉体の断面の円換算径が0.002μm未満の粉体を得ることは困難であるし、マイエナイト化合物の単位胞の大きさと同程度となり、導電性を保持していないおそれがある。また、粉体の円換算径が5μmを越えると、電子放出体としての作用が十分には得られ難い。冷陰極蛍光管および平面型照明装置に用いる場合、導電性マイエナイト型化合物粉末の最大粒子径は5μm以下とすると、高輝度が得やすくなって好ましい。このような粒径分散の小さい粒子からなる分散液の濃度をコントロールして平坦な基板の上に散布することによって、所望の電界電子放出素子を作製することが可能となる。
なお、円換算径とは、たとえば画像解析を利用した従来公知の方法で測定された断面積(基板と並行な面で粉体を切断した場合の切断面の面積)を円周率πで序した値の平方根を2倍した値として定義されるが、動的光散乱法を用いた粒径分布測定装置を用いて平均粒径を求め、これを円換算径Rとすることも可能である。
電子放出を担う粒子の粒径分布の標準偏差σは小さいほど好ましい。これは、粒径の平均値に対して最適な分布濃度で粉末を撒いたとしても、平均より粒径の大きい粒子は、隣接する粒子との距離が短いことから電界集中効果は打ち消しあって低下し、電子放出が起こらなくなる恐れがあるからである。また、粒径の異なる粒子は厳密には電界集中効果が異なるため、電子放出は電界集中効果の大きい粒子からのみ起こり、電界電子放出素子全体の放出電流値は減少する恐れがある。これらのことから、粒径分布の分散値は円換算径Rに対して3R以下が好ましい。より好ましくは2R以下であり、さらに好ましくは1.5R以下である。
円換算径Rの単位をμmで表すとした時、本発明の電界電子放出素子において、電子放出を担う粒子の密度の好ましい範囲は、基板面1μm2あたり、0.001/R2個以上0.15/R2個以下である。0.001/R2個未満では、電子放出を担う粒子の密度が低すぎて、素子として得られる電流密度が低くなる。一方、0.15/R2個超では、粒子間距離が小さいために電界集中効果が打ち消され、粒子から放出される電子数は減少する。より好ましい範囲は0.005/R2個以上0.1/R2個以下であり、さらに好ましい範囲は0.008/R2個以上0.04/R2個以下である。
これは例えば、円換算径Rが0.35μmの粒子を用いて電界電子放出素子を作製するとすれば、好ましい粒子密度の範囲は0.008個/μm2以上1.2個/μm2以下である。また、より好ましい範囲は0.04個/μm2以上0.82個/μm2以下であり、最も好ましい範囲は0.06個/μm2以上0.41個/μm2以下であるということを示している。また例えば、円換算径Rが1.3μmの粒子を用いて電界電子放出素子を作製するのであれば、好ましい粒子密度の範囲は0.0006個/μm2以上0.09個/μm2以下である。また、より好ましい範囲は0.003個/μm2以上0.06個/μm2以下であり、最も好ましい範囲は0.005個/μm2以上0.03個/μm2以下である。
上記で述べた粒子密度の電界電子放出素子は、導電性マイエナイト型化合物を粉砕し、平坦な導電性基板もしくは導電性膜の上に塗工することによって作製することが可能である。かかる素子は例として以下のように作製することができるが、他の作製方法を用いたり、作製条件を変えたりすることも可能であり、以下の説明に限定されない。
本発明において、電子放出を担う粒子は、12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有する。12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有し、このうちの1モル%以上は[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)と表される導電性マイエナイト型化合物となっている粉末でないと、結晶中に内包されるキャリア数が少ないことにより所望の電流が得られない可能性がある。露出された粉末表面に充分な量の導電性マイエナイト型化合物を存在させて充分な電子放出とカソード電極との導通をおこなわせ、電子放出により充分大きい電流を得るためには、[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)と表される化合物を70モル%以上含有することが好ましい。この化合物をマイエナイト化合物中に90モル%以上含有しているとさらに好ましい。また、12CaO・7Al2O3化学式で表されるマイエナイト化合物のCaの一部をSrで置換してもよいし、12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のSrの一部をCaで置換してもよい。
また、この導電性マイエナイト型化合物の導電率は0.1S/cm以上であることが好ましい。導電率が低いと、電子放出させたときに過剰なジュール熱が発生し、吸着ガスの放出や電子放出源の劣化を引き起こすおそれがある。
かかる導電性マイエナイト型化合物粉末の製造法は特に限定されないが、例として次のように合成すると、内包されるキャリア数が多く、導電率の高い導電性マイエナイト化合物が得られる。CaOまたはSrOと、Al2O3を、モル比が11.8:7.2〜12.2:6.8となるように調合し混合した原料を、アルミナ坩堝内で1550〜1650℃まで加熱して溶融した後、一旦粉砕し、粉砕後の粉を加圧してペレット状にし、再び1550〜1650℃に加熱して保持し焼き固める。このペレットをカーボン、金属チタン、金属カルシウム、金属アルミニウムのいずれか1種類以上の粉末や破片とともに蓋付き容器に入れ容器内を低酸素分圧に保った状態で1500℃以上の高温で熱処理し、冷却する。
このようにして得られた導電性マイエナイト型化合物を、金属やセラミックスなどのハンマ、ローラやボールなどを用いて機械的に圧縮、せん断および摩擦力を加えて粉砕する。これらの粉砕の後に、ジェットミルやビーズミルなどの方法で更に細かく粉砕する。ここで、粗粒を有機溶媒と混合してビーズミルを用いて細かく粉砕すると、平均粒径が数十〜数百nmの粒子が分散した液を得ることが出来て好ましい。この時、粉砕によって得られた粒子の粒径分布のσ値が3R以上であったとしても、遠心分離を用いた沈降法や篩い、ろ過などを用いることによって粒子径の分散値が3R以下になれば良い。ここで得られた電子放出粒子の円換算径Rは電極間距離の0.1倍以下となることが好ましい。0.1倍より電子放出粒子の円換算径Rが大きい場合、電子を放出する粒子の先端の電界集中係数βは粒径に大きく依存するようになる。電子放出はβの大きい電子放出源から起こりやすいことから、粒径分布により電子放出源の電子放出特性の不均一性が増長され、電界電子放出素子全体の放出電流値が減少する恐れがあるからである。
このようにして得られた導電性マイエナイト化合物粒子を含む分散液もしくは懸濁液は、スピンコート、スプレイコート、インクジェット印刷を用いて平坦な導電性の基板上、もしくは導電性の膜によりコートされたガラス板に散布し、300℃以上で焼成して溶媒を乾燥し、所望形状を得る。
以上のように作製された電界電子放出素子と、アノード電極を平行に対向させ配置した電界電子放出素子の駆動を容易にするためには、低電圧駆動できることが求められ、特にFEDのように駆動電圧のオン・オフにより電子放出を制御する用途では、駆動電圧の低電圧化が必要である。
駆動電圧の低電圧化のためには、閾値電圧が500V程度以下の電子放出素子が、消費電力が小さく好ましい。この閾値電圧は、本発明中では、2極型電界電子放出装置に対してカソード電極である電界放出素子を接地し、外部電源を用いて、アノード電極に正電圧Vを印加し、両極間を流れる電流を測定することにより求めた。測定された電流の値をアノード電極の面積で除し、電流密度i[μA/cm2]のV依存性を求め、その放出電流密度iが0.1μA/cm2以上となった時の印加電圧Vの値を閾値電圧とする。
閾値電圧特性の測定のために用いた円柱形の銅の棒の底面を平坦に研磨したものをアノード電極とし、電界電子放出素子とアノード電極を平行に対向させ配置した電界放素子装置の構成を図3に示した。2はアノード電極であり、4はカソード電極である。このとき、電界電子放出素子の基体3上に形成された導電体薄膜3aとアノード電極2の底面との間隔は、円換算径Rの10倍(10R)以上となるようにガラススペーサを使って調整する必要がある。間隔が10R以下では粒子上で電界集中効果が大きくならないことから、電子放出効率が低下するという問題が生じるからである。また、その際に用いられる基体としてはシリコンウエハやガラス板などが好ましい。また、導電性薄膜としては白金やアルミニウムなどを用いるのが好ましい。
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、この説明
が本発明を限定するものではない。なお、例1、例2は実施例であり、例3〜5は比較例である。
が本発明を限定するものではない。なお、例1、例2は実施例であり、例3〜5は比較例である。
(例1)
酸化物換算したCaOとAl2O3のモル比が12:7となるように炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとを調合し、大気雰囲気下、1300℃で6時間保持したのち室温まで冷却した。得られた焼結物を粉砕して、粒径50μmの粉末を得た。得られた粉末(以下粉末Aという)は白色の絶縁体であって、X線回折によるとマイエナイト型構造をもつ12CaO・7Al2O3化合物であった。
酸化物換算したCaOとAl2O3のモル比が12:7となるように炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとを調合し、大気雰囲気下、1300℃で6時間保持したのち室温まで冷却した。得られた焼結物を粉砕して、粒径50μmの粉末を得た。得られた粉末(以下粉末Aという)は白色の絶縁体であって、X線回折によるとマイエナイト型構造をもつ12CaO・7Al2O3化合物であった。
粉末Aをプレス成形して、縦×横×高さが約2×2×1cmの成型体とし、金属アルミニウム粉末3gとともに蓋付きアルミナ容器に入れ、真空炉中で1300℃まで昇温させ10時間保持する還元熱処理をおこなった。
得られた熱処理物は黒茶色を呈し、X線回折測定によりマイエナイト型構造のピークをもつことが確認された。また、光吸収スペクトルから、電子密度が1.4×1021/cm3で、van der Pauwの方法により120S/cmの電気伝導率を有することがわかった。また、得られた熱処理物のESRシグナルは、1021/cm3超の高い電子濃度の導電性マイエナイト型化合物に特徴的な、g値1.994を有する非対称形であることがわかった。以上により、導電性マイエナイト型化合物が得られたことが確認された(試料B)。
試料Bをアルミナの乳棒と乳鉢で手動粉砕し、得られた粉砕物をタングステンカーバイド製の遊星ミルを用いて粉砕した(試料C)。試料Cと1−プロパノール、0.1mmΦの酸化ジルコニアビーズを1:9:30の重量比で混合し、これらをポリエチレン容器に入れて24時間回転粉砕した(ビーズミル)。回転数は400rpmとした。
得られた懸濁液からろ紙(アドバンテック社製5A)を用いて吸引ろ過を行い、懸濁液Dを得た。懸濁液Dを一日静置し、上澄み部をスポイトで抽出し、懸濁液Eとした。
得られた懸濁液からろ紙(アドバンテック社製5A)を用いて吸引ろ過を行い、懸濁液Dを得た。懸濁液Dを一日静置し、上澄み部をスポイトで抽出し、懸濁液Eとした。
懸濁液Eについて、動的光散乱法を用いた粒径分布測定装置であるマイクロトラック(UPA社製)で粒径分布の測定を行ったところ、図1の粒径分布が得られた。図1から、粒子の平均粒径は0.35μm、標準分散0.30μmの粒子を含有する分散液であることがわかった。なお、この平均粒径の値は、走査型電子顕微鏡を用いて5μm × 5μmの正方形内の粒子について、円換算径を求め、平均値を算出した結果と合致した。この懸濁液の粒子の濃度を、懸濁液と、溶媒を加熱して蒸発させた後の粒子のみの重量をそれぞれ測定して、それらの重量差から求めると、0.6質量%であった。
懸濁液Eを、1.5cm×3cmの白金の膜が蒸着されたシリコンウェハ基板(高純度化学株式会社製)上にスポイトで約1cc垂らし、60秒間1000rpmでスピンコートを施した(コート基板E)。
コート基板Eを、窒素充填したグローブボックス中で450℃に保たれたホットプレート上に置き、10分間加熱した。加熱後はホットプレートのスイッチを切って自然放熱させ、室温に戻ったところでコート基板Eをグローブボックスから取り出した。この様にして作製した電極基板を電界電子放出素子Eとした。
電界電子放出素子Eの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。図2は電界電子放出素子Eを撮影した画像である。このような走査型電子顕微鏡の画像から5μm×5μmの正方形内の粒子数を数え、その総数を面積で除して基板上の粒子密度[個/μm2]を求めた。その際には円換算径Rについては、動的光散乱で求めた平均粒径0.35μmを用いた。電界電子放出素子Eの粒子密度は0.40個/μm2であった。得られた電界電子放出素子Eの電界放素子装置に用いた場合の閾値電圧特性を測定した。
閾値電圧特性の測定のために図3に示したような電界電子放出装置を用い、電界電子放出素子の基体3上に形成された導電体薄膜3aとアノード電極2の底面との間隔は、0.1mmとなるようにガラススペーサを使って調整し、真空容器内に設置し、5×10−4Pa以下の真空度までターボ分子ポンプを用いて真空引きを行った。このようにして形成された2極型電界電子放出装置に対してカソード電極としての電界電子素子を接地し、外部電源を用いて、正極に正電圧Vを印加し、両極間を流れる電流を測定した。測定された電流の値をアノード電極の面積で除し、電流密度i[μA/cm2]のV依存性を求めた。例1の電界電子放出素子Eを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は2Vと非常に低く、また印加電圧Vを高くした際の電流密度iの値も大きく、電子放出特性は優れていた。
(例2)
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約2分の1にし、懸濁液Fを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Fを作製した。例2の電界電子放出素子Fを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は110Vと低く、電子放出特性が優れていた。
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約2分の1にし、懸濁液Fを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Fを作製した。例2の電界電子放出素子Fを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は110Vと低く、電子放出特性が優れていた。
(例3)
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約4分の1にし、懸濁液Gを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Gを作製した。例3の電界電子放出素子Gを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は3600Vと高く電子放出特性は満足のいくものではなかった。
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約4分の1にし、懸濁液Gを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Gを作製した。例3の電界電子放出素子Gを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は3600Vと高く電子放出特性は満足のいくものではなかった。
(例4)
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約5分の1にし、懸濁液Hを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Hを作製した。例4の電界電子放出素子Hを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は1075Vと高く電子放出特性は満足のいくものではなかった。
例1の懸濁液Eの溶媒を、加熱により蒸発させて、分散液全体の体積を約5分の1にし、懸濁液Hを作製した。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子Hを作製した。例4の電界電子放出素子Hを用いて作製した電界電子放出装置の閾値電圧は1075Vと高く電子放出特性は満足のいくものではなかった。
(例5)
例1の懸濁液Eの作製工程で得られた懸濁液Dを一日静置し、上澄み部をスポイトで抽出した残りの下層部を懸濁液Iとした。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子を作製した。例5の電界電子放出素子Iでは、導電性マイエナイト化合物粒子の粒径が電界電子放出素子E〜Hのものに比べて1.3μmと大きい。電界電子放出素子Iを用いた電界電子放出装置の閾値電圧は750Vであり、好ましい500V以上の高い閾値電圧を示した。また最大の電流密度も小さい値となった。例1〜例5の粒径、粒子密度、閾値電圧の結果を表1に示す。
例1の懸濁液Eの作製工程で得られた懸濁液Dを一日静置し、上澄み部をスポイトで抽出した残りの下層部を懸濁液Iとした。それ以外は懸濁液Eと同様にして電界電子放出素子を作製した。例5の電界電子放出素子Iでは、導電性マイエナイト化合物粒子の粒径が電界電子放出素子E〜Hのものに比べて1.3μmと大きい。電界電子放出素子Iを用いた電界電子放出装置の閾値電圧は750Vであり、好ましい500V以上の高い閾値電圧を示した。また最大の電流密度も小さい値となった。例1〜例5の粒径、粒子密度、閾値電圧の結果を表1に示す。
本発明により、粒子密度を適当な値に調整することにより、僅かな量の導電性マイエナイト型化合物を使って、低い印加電圧で大きい電流密度を得ることが出来る電界電子放出装置を作ることが可能となる。即ち、高性能の電界電子放出素子を安価でかつ容易に製造出来、これを用いたフィールドエミッションディスプレイ装置、および冷陰極蛍光管が実現される。
1:導電性マイエナイト化合物からなる電子放出サイト
2:アノード電極(銅製円柱形電極)
3:電界放出素子の基体
3a:導電体薄膜
4:カソード電極
2:アノード電極(銅製円柱形電極)
3:電界放出素子の基体
3a:導電体薄膜
4:カソード電極
Claims (4)
- 12CaO・7Al2O3または12SrO・7Al2O3の化学式で表されるマイエナイト型化合物のいずれかを50モル%以上含有し、上記マイエナイト化合物に少なくとも1モル%以上は[Ca24Al28O64]4+(4e−)もしくは[Sr24Al28O64]4+(4e−)で表される導電性化合物を含有する導電性マイエナイト化合物粒子が、基体面上に形成されており、該粒子の単位面積あたりの密度が、該粒子の断面の円換算径R[μm]に対して0.001/R2[個/μm2]以上0.15/R2[個/μm2]以下であることを特徴とする電界電子放出素子。
- 該導電性マイエナイト型化合物粒子の最大粒子の円換算径が5μm以下である、請求項1に記載の電界電子放出素子。
- 該導電性マイエナイト化合物が含有するAlの一部が、SiまたはGeで置換されている請求項1または2に記載の導電性マイエナイト型化合物の粒子からなる電界電子放出素子。
- 基体面上に該導電性マイエナイト化合物粒子が形成された電界電子放出素子と、該電界電子放出素子と対向して用いられるアノード電極を有する電界電子放出装置において、該導電性マイエナイト化合物粒子の円換算径Rが、アノード電極と該電界電子放出素子の間の距離の0.1倍以下となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電界電子放出装置。
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