JP2007296915A - 車間維持支援装置および車間維持支援方法 - Google Patents

車間維持支援装置および車間維持支援方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アクセルペダル反力の付与による運転者へ注意喚起を確実なものとする。
【解決手段】所定の条件下で、アクセルペダルに反力を与えてドライバに注意を喚起する場合、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、通常の対応関係とは異なる対応関係へと変更する。これにより、ドライバがアクセルペダル反力を感じやすくなるアクセル開度となるようにドライバのアクセル操作を誘導できるので、アクセルペダル反力の付与によって確実に運転者へ注意を喚起できる。また、アクセルペダルの戻し操作が検出されると補正を中止するので、アクセルペダルが再度踏み込まれた際の加速のもたつき感などの違和感をドライバに与えないようにすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、先行車との車間距離が維持されるように支援する技術に関する。
前方車両との車間距離を検出し、車間距離の減少に伴いアクセルペダルの反力を増大させることによって、運転者の注意を喚起して、車間距離が維持されるように支援する装置が知られている(特許文献1参照)。
特開2005−8147号公報
しかし、車速が低い場合などのようにアクセル開度が小さい場合、すなわち、アクセルペダルの踏み込み量が少ない場合には、アクセルペダルに反力を与えても、反力が与えられたことをドライバが気づきにくい。
(1) 請求項1の発明による車間維持支援装置は、自車両と先行車との車間距離を検出し、アクセルペダルの操作量を検出し、検出される車間距離に基づいて、アクセルペダルに発生させる操作反力を演算し、演算された操作反力をアクセルペダルに発生させ、自車両の走行状況を検出し、検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて自車両の駆動トルクを決定し、決定された駆動トルクを出力するように駆動源の出力を制御し、検出された自車両の走行状況に基づいて、アクセルペダルが戻し操作されるまでアクセルペダルの操作量に対する自車両の駆動トルクの特性を補正するとともに、アクセルペダルの戻し操作が検出されると補正を中止することを特徴とする。
(2) 請求項6の発明による車間維持支援方法は、自車両と先行車との車間距離を検出し、アクセルペダルの操作量を検出し、検出される車間距離に基づいて、アクセルペダルに発生させる操作反力を演算し、演算された操作反力をアクセルペダルに発生させ、自車両の走行状況を検出し、検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて自車両の駆動トルクを決定し、決定された駆動トルクを出力するように駆動源の出力を制御し、検出された自車両の走行状況に基づいて、アクセルペダルが戻し操作されるまでアクセルペダルの操作量に対する自車両の駆動トルクの特性を補正するとともに、アクセルペダルの戻し操作が検出されると前記補正を中止することを特徴とする。
本発明によれば、検出した自車両の走行状況に基づいて、アクセルペダルの操作量に対する自車両の駆動トルクの特性を補正するので、アクセルペダルに反力が与えられたことをドライバに積極的に知らせることができる。また本発明によれば、アクセルペダルの戻し操作が検出されると補正を中止するので、アクセルペダルが再度踏み込まれた際の加速のもたつき感などの違和感をドライバに与えないようにすることができる。
図1は、本実施の形態における車間維持支援装置の構成を示す図である。この車間維持支援装置を搭載した車両は、自動変速機およびコンベンショナルディファレンシャルギヤを搭載した後輪駆動車である。この車両では、前後輪ともに、左右輪の制動力を独立に制御することができる。
図中、符号1はブレーキペダル、2はブースター、3はマスターシリンダー、4はリザーバー、10は左前輪、20は右前輪、30は左後輪、40は右後輪である。各車輪10,20,30,40には、ブレーキディスク11,21,31,41、および、制動液圧の供給により、対応するブレーキディスクを摩擦挟持して、各車輪ごとにブレーキ力(制動力)を与えるホイールシリンダ12,22,32,42が備えられている。
マスターシリンダー3と各ホイールシリンダ12,22,32,42との間には、圧力制御ユニット5が介装されている。運転者によるブレーキペダル1の踏み込み量に応じて、マスターシリンダー3で昇圧された油圧が各ホイールシリンダ12,22,32,42に供給されるようになっており、圧力制御ユニット5は、各ホイールシリンダ12,22,32,42の制動液圧を個別に制御する。圧力制御ユニット5は、前後左右の各液圧供給系(各チャンネル)個々にアクチュエータを含んで構成されている。これにより、各車輪を個々に制動している。アクチュエータは、例えば各ホイールシリンダ12,22,32,42の液圧を任意の制動液圧に制御可能なように、比例ソレノイド弁を使用して構成されている。
駆動トルク制御コントローラ60は、制駆動力制御コントローラ50から入力される駆動トルク指令値に基づいて、駆動輪の駆動トルクを制御する。駆動輪の駆動トルクの制御は、エンジン6の燃料噴射量を制御するエンジン制御、スロットル制御装置7によりスロットル開度を制御するスロットル制御、および、自動変速機8を制御する変速機制御等を行うことにより行う。
制駆動力制御コントローラ50には、ハンドル9の操舵角δを検出する操舵角センサ52からの信号、車両の前後加速度Xgおよび横加速度Ygを検出する加速度センサ53からの信号、車両に発生するヨーレートφを検出するヨーレートセンサ54からの信号、マスターシリンダ液圧Pmを検出するマスターシリンダ液圧センサ55からの信号、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ56からの信号、および、各車輪の車輪速Vw1,Vw2,Vw3,Vw4を検出する車輪速センサ13,23,33,43からの信号がそれぞれ入力される。また、制駆動力制御コントローラ50には、運転者のアクセル操作量に基づく要求駆動力τmやエンジントルクτa、および、車輪軸上での駆動トルクτwが駆動トルク制御コントローラ60から入力される。
レーザレーダ70は、例えば、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、自車両前方にレーザ光を送出し、自車両前方に存在する先行車両に反射して戻ってくる反射光を受光することにより、先行車両との間の車間距離L、および、相対速度Vrを検出する。ただし、相対速度Vrは、自車両の速度から先行車両の速度を減算した値とする。レーザレーダ70によって検出された車間距離L、および、相対速度Vrは、制駆動力制御コントローラ50に送られる。
アクセルペダルアクチュエータ80は、制駆動力制御コントローラ50からの指令に基づいて、アクセルペダル81に反力を与える。ここでの反力とは、ドライバがアクセルペダル81を踏み込む方向とは反対方向の力のことである。
−第1の制御モード−
本実施の形態における車間維持支援装置では、自車両と先行車両との間の車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していなければ、車両を減速させる制御を行い、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、アクセルペダルに反力を与える制御を行う。アクセルペダルに反力を与える制御を行った後、ドライバがアクセルペダルを離すと、減速制御を行う。ただし、先行車両が加速しても、加速制御は行わない。これらの制御を行う制御モードを第1の制御モードと呼ぶ。以下では、図2〜図6を用いて、詳細な処理内容について説明する。
図2は、本実施の形態における車間維持支援装置によって行われる第1の制御モードでの処理内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、制駆動力制御コントローラ50は、ステップS10の処理を開始する。ステップS10では、アクセル開度センサ56によって検出されるアクセル開度Acc、車輪速センサ13,23,33,43によって検出される各車輪の車輪速Vw1,Vw2,Vw3,Vw4、および、レーザレーダ70によって検出される先行車両との間の車間距離L、相対速度Vrを読み込んで、ステップS20に進む。
ステップS20では、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて、車間距離しきい値L*bを算出する。後述するように、先行車両との間の車間距離Lと比較する車間距離しきい値L*は、先行車両の減速の有無に関係なく算出する定常項と、先行車両の減速時に算出(更新)される過渡項との和により算出されるが、車間距離しきい値L*bは、定常項の値である。ここでは、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて、車間距離しきい値の定常項L*bを算出するための関数を予め用意しておき、この関数に、自車両の車速Vおよび相対速度Vrを代入することにより算出する。ただし、自車両の車速Vは、車輪速センサ13,23によって検出される前輪の車輪速Vw1およびVw2の平均値を求めることにより算出する。車間距離しきい値の定常項L*bを算出すると、ステップS30に進む。
ステップS30では、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出する。車間距離しきい値の過渡項L*aの詳細な算出方法を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
図3に示すフローチャートのステップS100では、次式(1)より、先行車両の加減速度αaを算出する。
αa=d(Va)/dt (1)
ただし、Vaは、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて算出される先行車両の車速である。先行車両の車速Vaを時間微分することにより、先行車両の加減速度αaを算出すると、ステップS110に進む。
ステップS110では、後述するステップS60において設定される警報フラグFwがオンにセットされているか否かを判定する。図2に示すフローチャートのステップS10からステップS80の処理は繰り返し行われているので、ここでは、前回の処理時にセットされた警報フラグFwの状態に基づいて判定する。警報フラグFwがオンにセットされていると判定すると、ステップS150に進み、警報フラグFwがオフにセットされていると判定すると、ステップS120に進む。
ステップS120では、ステップS100で算出した先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0以下であるか否かを判定する。所定の加減速度α0は、先行車両が減速しているか否かを判断するためのしきい値であり、αaおよびα0は共に、加速時の値を正、減速時の値を負とする。先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0以下であると判定すると、先行車両が減速していると判断して、先行車減速判断フラグFdec_aをオンにセットした後、ステップS130に進む。一方、先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0より大きいと判定すると、先行車両が減速していないと判断して、先行車減速判断フラグFdec_aをオフにセットした後、ステップS140に進む。
ステップS130では、次式(2)より、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出するためのパラメータTaを算出する。
Ta=(L−L*b)/Vr (2)
式(2)において、パラメータTaは、先行車両が減速を開始した時点での車間距離しきい値の定常項L*bに対する実車間距離Lの余裕距離相当分(L−L*b)を相対速度Vrで除算した時間を表している。パラメータTaを算出すると、ステップS150に進む。
一方、先行車両が減速していないと判断した後に進むステップS140では、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出するためのパラメータTaの値を0にして、ステップS150に進む。
ステップS150では、次式(3)より、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出する。
*a=Ta×Vr (3)
ステップS120〜ステップS150の処理から分かるように、車間距離しきい値の過渡項L*aは、先行車両が減速している時に設定され、先行車両が減速していない時には、0となる。
ステップS150において、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出すると、図2に示すフローチャートのステップS40に進む。ステップS40では、車間距離しきい値の定常項L*bと、過渡項L*aとを加算することにより、車間距離しきい値L*を算出する(式(4)参照)。
*=L*b+L*a (4)
ステップS40に続くステップS50では、次式(5)より、ステップS40で算出した車間距離しきい値L*と、レーザレーダ70により検出された先行車との車間距離Lとの偏差ΔLを算出する。偏差ΔLを算出すると、ステップS60に進む。
ΔL=L*−L (5)
ステップS60では、ステップS50で算出した偏差ΔLに基づいて、警報フラグFwをセットする。すなわち、偏差ΔLが0以上であれば、先行車との車間距離Lが車間距離しきい値L*以下になっているので、警報フラグFwをオンにセットし、偏差ΔLが0未満であれば、警報フラグFwをオフにセットする。警報フラグFwをセットすると、ステップS70に進む。
ステップS70では、ステップS50で算出した偏差ΔLに基づいて、アクセルペダルに反力を与える制御を行う。アクセルペダルに反力を与える制御の詳細な処理内容を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
図4に示すフローチャートのステップS200では、次式(6)より、目標アクセルペダル反力τ*aを算出する。
τ*a=Kp×ΔL (6)
ただし、式(6)におけるKp(Kp>0)は、車間距離偏差ΔLから目標アクセルペダル反力を算出するための所定のゲインである。
ステップS200に続くステップS210では、ステップS200で算出した目標アクセルペダル反力τ*aに応じた反力をアクセルペダル81に与えるための指令を、アクセルペダルアクチュエータ80に出す。この指令を受けたアクセルペダルアクチュエータ80は、目標アクセルペダル反力τ*aに応じた反力をアクセルペダル81に与える。式(6)から分かるように、アクセルペダル81への反力は、ΔLが正の時、すなわち、車間距離Lが車間距離しきい値L*より短い時に与えられる。ステップS210の処理を終了すると、図2に示すフローチャートのステップS80に進む。
ステップS80では、ステップS50で算出した車間距離偏差ΔLに基づいた制動力制御を行う。ステップS80で行う制動力制御の詳細な処理内容を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
図5に示すフローチャートのステップS300では、アクセル開度センサ56によって検出されるアクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0以上であるか否かを判定する。所定のアクセル開度しきい値Acc0は、アクセルペダルが全閉であるか否かを判断する程度の小さい値に設定しておく。アクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0以上であると判定すると、ドライバがアクセルペダル操作を行っていると判断して、アクセル操作フラグFaccをオンにセットした後、ステップS310に進む。一方、アクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0未満であると判定すると、ドライバがアクセルペダル操作を行っていないと判断して、アクセル操作フラグFaccをオフにセットした後、ステップS320に進む。
ステップS310では、車両を減速させるための目標減速度α*を0に設定して、ステップS330に進む。一方、ステップS320では、次式(7)より、目標減速度α*を算出して、ステップS330に進む。
α*=Kv×Kr×ΔL (7)
ただし、Krは、車間距離偏差ΔLに基づいて、車両に発生させる目標減速力を算出するためのゲインであり、後述するように、先行車両の加減速度αaに基づいて定める。また、ゲインKvは、目標減速力を目標減速度に換算するためのゲインであり、車両諸元に基づいて、予め設定しておく。
図6は、先行車両の加減速度αaと、ゲインKrとの関係を示す図である。図6に示すように、先行車両の加減速度αaが小さくなるほど、すなわち、先行車両の減速度合が大きくなるほど、ゲインKrは大きくなる。これにより、先行車両の減速度合が大きい程、自車両の減速制御時の減速度も大きくすることができる。また、先行車両の加減速度αaが所定の加減速度αa1より大きい領域では、ゲインKrの値をKr1とする。制駆動力制御コントローラ50のメモリ(不図示)には、図6に示すような先行車両の加減速度αaとゲインKrとの関係を定めたテーブルが予め記憶されており、このテーブルと先行車両の加減速度αaとに基づいて、ゲインKrを求める。
ステップS330では、目標制動液圧P*を算出する。このために、まず、次式(8)に示すように、ステップS310またはステップS320で算出した目標減速度α*から、エンジンブレーキにより発生する減速度α*engを減算することにより、ブレーキにより発生させる目標減速度α*brkを算出する。
α*brk=α*−α*eng (8)
ただし、α*、α*brk、α*engは、それぞれ、加速方向を正の値、減速方向を負の値とする。また、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、α*=α*eng=0であるから、α*brk=0となる。
続いて、次式(9)より、算出した目標減速度α*brkに基づいて、目標制動液圧P*を算出する。
*=−(Kb×α*brk) (9)
ただし、Kbは、目標減速度を目標制動液圧に換算するためのゲインであり、車両諸元に基づいて、予め設定しておく。また、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、α*brk=0より、P*=0となる。
ステップS330に続くステップS340では、ステップS330で算出した目標制動液圧P*に基づいた制動液圧を発生させるための指示を圧力制御ユニット5に出す。この指示を受けた圧力制御ユニット5は、目標制動液圧P*に基づいた制動液圧を発生させて、ホイールシリンダー12,22,32,42に供給する。これにより、車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していなければ、車両を減速させる制御が行われる。また、ドライバがアクセルペダルを操作している場合には、目標制動液圧P*=0であるから、減速制御は行われない。
ステップS80の処理が終了すると、ステップS10に戻る。以後、ステップS10からステップ80までの処理が繰り返し行われる。
第1の制御モードでは、レーザレーダ70によって検出される車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダル操作を行っていれば、アクセルペダルに反力を加え、アクセルペダル操作を行っていなければ、車両の減速制御を行う。これにより、車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダル操作を行っていれば、アクセルペダルを離すようにドライバに促し、ドライバがアクセルペダルを離すと、減速制御を行うことができる。また、ドライバがアクセルペダル操作を行っている時に減速制御を行わないので、加速制御と減速制御とが同時に行われるのを防ぐことができる。
また、第1の制御モードでは、先行車両の減速の有無に関係なく演算する定常項L*bと、先行車両の減速時に演算する過渡項L*aとに基づいて、車間距離しきい値L*を設定するので、先行車両の減速に応じた適切な車間距離しきい値を設定することができる。すなわち、先行車両が減速していない場合には、過渡項L*aの値が0となり、定常項L*bと車間距離Lとに基づいた車両制御を行い、先行車両が減速を開始すると、定常項L*bに過渡項L*aが加算された値が車間距離しきい値L*となるので、先行車両が減速を開始する前と比べて、早めにアクセルペダルに反力を与える制御または減速制御を開始することができる。
さらに、第1の制御モードでは、レーザレーダ70によって検出される車間距離Lが車間距離しきい値L*より長い場合に、過渡項L*aの値を更新するようにした(図3に示すフローチャートのステップS110〜ステップS150参照)。したがって、車間距離Lが車間距離しきい値L*より短い場合、すなわち、アクセルペダルに反力を与える制御または減速制御を行っている場合には、過渡項L*aの値は更新されないので、急激な車両挙動の変化を防ぐことができる。また、車間距離Lが車間距離しきい値L*より長い場合、すなわち、アクセルペダルに反力を与える制御または減速制御が行われていない場合には、過渡項L*aの値を更新することにより、適切なタイミングにおいて、アクセルペダルに反力を与える制御または減速制御を開始することができる。
−第2の制御モード−
本実施の形態における車間維持支援装置では、第1の制御モードで制御される場合には、自車両と先行車両との間の車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していなければ、車両を減速させる制御を行い、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、アクセルペダルに反力を与える制御を行った。さらに本実施の形態における車間維持支援装置では、自車両と先行車両との間の車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していなければ、車両を減速させる制御を行うようにしてもよい。また、自車両と先行車両との間の車間距離Lが第2の車間距離しきい値L*2(L*2<L*1)より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、アクセルペダルに反力を与える制御を行い、ドライバがアクセルペダル操作をしていなければ、車両を減速させる制御を行うようにしてもよい。これらの制御を行う制御モードを第2の制御モードと呼ぶ。以下では、図7〜図10を用いて、詳細な処理内容について説明する。
図7は、本実施の形態における車間維持支援装置によって行われる第2の制御モードでの処理内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、制駆動力制御コントローラ50は、ステップS400の処理を開始する。ステップS400では、アクセル開度センサ56によって検出されるアクセル開度Acc、車輪速センサ13,23,33,43によって検出される各車輪の車輪速Vw1,Vw2,Vw3,Vw4、および、レーザレーダ70によって検出される先行車両との間の車間距離L、相対速度Vrを読み込んで、ステップS410に進む。
ステップS410では、第1の車間距離しきい値L*1を算出する。第1の車間距離しきい値L*1の詳細な算出方法を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。図8に示すフローチャートのステップS500では、次式(10)により、車間距離しきい値L*h1を算出する。後述するように、第1の車間距離しきい値L*1は、自車両の車両状況に依存しない定常項と、自車両の車両状況に依存する過渡項との和により算出されるが、式(10)により求める車間距離しきい値L*h1は、定常項の値である。
*h1=Va×Th (10)
ただし、Vaは、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて算出される先行車両の車速であり、Thは所定の車間時間である。また、自車両の車速Vは、車輪速センサ13,23によって検出される前輪の車輪速Vw1およびVw2の平均値を求めることにより算出する。
ステップS500に続くステップS510では、アクセル開度センサ56によって検出されるアクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0以上であるか否かを判定する。アクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0以上であると判定すると、ドライバがアクセルペダル操作を行っていると判断して、アクセル操作フラグFaccをオンにセットした後、ステップS520に進む。一方、アクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0未満であると判定すると、ドライバがアクセルペダル操作を行っていないと判断して、アクセル操作フラグFaccをオフにセットした後、ステップS530に進む。
ステップS520では、次式(11)により、第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1を算出するためのパラメータTr1を算出する。
Tr1=(L−L*h1)/Vr (11)
式(11)において、パラメータTr1は、現在の相対速度Vrが維持されたと仮定して、車間距離Lが第1の車間距離しきい値の定常項L*h1になるまでの時間を表している。パラメータTr1を算出すると、ステップS530に進む。
なお、ステップS510およびS520の処理から分かるように、第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1を算出するためのパラメータTr1は、アクセル操作フラグFaccがオンされている時にのみ算出(更新)される。したがって、アクセルペダル操作が行われている場合、パラメータTr1は、実車間距離Lに応じて設定され、アクセルペダル操作が行われていない場合には、アクセルペダル操作が行われなくなった時の値が維持される。
ステップS530では、次式(12)より、第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1を算出して、ステップS540に進む。
*r1=Tr1×Vr (12)
ステップS540では、ステップS500で算出した第1の車間距離しきい値の定常項L*h1と、ステップS520で算出した第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1とを加算することにより、第1の車間距離しきい値L*1を算出する(式(13)参照)。
*1=L*h1+L*r1 (13)
ただし、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、式(11),(12),(13)より、L*1=Lとなる。第1の車間距離しきい値L*1を算出すると、図7に示すフローチャートのステップS420に進む。
ステップS420では、第2の車間距離しきい値L*2を算出する。第2の車間距離しきい値L*2の詳細な算出方法を、図9に示すフローチャートを用いて説明する。
図9に示すフローチャートのステップS600では、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて、車間距離しきい値L*h2を算出する。後述するように、第2の車間距離しきい値L*2は、先行車両の減速の有無に関係なく算出される定常項と、先行車両の減速時に算出(更新)される過渡項との和により算出されるが、車間距離しきい値L*h2は、定常項の値である。ここでは、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて、車間距離しきい値L*h2を算出するための関数を予め用意しておき、この関数に、自車両の車速Vおよび相対速度Vrを代入することにより算出する。第2の車間距離しきい値の定常項L*h2を算出すると、ステップS610に進む。
ステップS610では、上式(1)により、先行車両の加減速度αaを算出して、ステップS620に進む。ステップS620では、後述するステップS430(図7参照)において設定される警報フラグFwがオンにセットされているか否かを判定する。ステップS400からステップS480の処理は繰り返し行われているので、ここでは、前回の処理時にセットされた警報フラグFwの状態に基づいて判定する。警報フラグFwがオンにセットされていると判定すると、ステップS660に進み、警報フラグFwがオフにセットされていると判定すると、ステップS630に進む。
ステップS630では、ステップS610で算出した先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0以下であるか否かを判定する。ここでも、所定の加減速度α0は、先行車両が減速しているか否かを判断するためのしきい値であり、αaおよびα0は共に、加速時の値を正、減速時の値を負とする。先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0以下であると判定すると、先行車両が減速していると判断して、先行車減速判断フラグFdec_aをオンにセットした後、ステップS640に進む。一方、先行車両の加減速度αaが所定の加減速度α0より大きいと判定すると、先行車両が減速していないと判断して、先行車減速判断フラグFdec_aをオフにセットした後、ステップS650に進む。
ステップS640では、次式(14)より、第2の車間距離しきい値の過渡項L*r2を算出するためのパラメータTr2を算出する。
Tr2=(L−L*h2)/Vr (14)
式(14)において、パラメータTr2は、先行車両が減速を開始した時点での第2の車間距離しきい値の定常項L*h2に対する実車間距離Lの余裕距離相当分(L−L*h2)を相対速度Vrで除算した時間を表している。パラメータTr2を算出すると、ステップS660に進む。
一方、先行車両が減速していないと判断した後に進むステップS650では、第2の車間距離しきい値の過渡項L*r2を算出するためのパラメータTr2の値を0にして、ステップS660に進む。
ステップS660では、次式(15)より、第2の車間距離しきい値の過渡項L*r2を算出して、ステップS670に進む。
*r2=Tr2×Vr (15)
ステップS670では、第2の車間距離しきい値の定常項L*h2と、過渡項L*r2とを加算することにより、第2の車間距離しきい値L*2を算出する(式(16)参照)。
*2=L*h2+L*r2 (16)
ステップS670において、第2の車間距離しきい値L*2を算出すると、図7に示すフローチャートのステップS430に進む。ステップS430では、警報フラグFwをセットする。このため、まず、次式(17)より、ステップS420で算出した第2の車間距離しきい値L*2と、レーザレーダ70により検出された先行車との車間距離Lとの偏差ΔL2を算出する。
ΔL2=L*2−L (17)
続いて、式(17)に基づいて算出した偏差ΔL2が0以上であれば、先行車との車間距離Lが第2の車間距離しきい値L*2以下になっているので、警報フラグFwをオンにセットし、偏差ΔL2が0未満であれば、警報フラグFwをオフにセットする。警報フラグFwをセットすると、ステップS440に進む。
ステップS440では、車間距離の偏差ΔL2に基づいて、アクセルペダルに反力を与える制御を行う。アクセルペダルに反力を与える制御の詳細な処理内容を、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
図10に示すフローチャートのステップS700では、次式(18)より、目標アクセルペダル反力τ*aを算出する。
τ*a=Kp×ΔL2 (18)
ただし、式(18)におけるKp(Kp>0)は、車間距離偏差ΔLから目標アクセルペダル反力を算出するための所定のゲインである。
ステップS700に続くステップS710では、ステップS700で算出した目標アクセルペダル反力τ*aに応じた反力をアクセルペダル81に与えるための指令を、アクセルペダルアクチュエータ80に出す。この指令を受けたアクセルペダルアクチュエータ80は、目標アクセルペダル反力τ*aに応じた反力をアクセルペダル81に与える。式(18)から分かるように、アクセルペダル81への反力は、ΔL2が正の時、すなわち、車間距離Lが車間距離しきい値L*2より短い時に与えられる。ステップS710の処理を終了すると、図7に示すフローチャートのステップS450に進む。
ステップS450では、ステップS410で算出した第1の車間距離しきい値L*1、および、レーザレーダ70により検出された先行車との車間距離Lに基づいて、次式(19)より、第1の目標減速度α*1を算出する。
α*1=Kv×Kr1×(L*1−L) (19)
ただし、Kr1は、車両に発生させる第1の目標減速力を算出するためのゲインである。また、ゲインKvは、目標減速力を目標減速度に換算するためのゲインであり、車両諸元に基づいて、予め設定しておく。なお、第1の目標減速度α*1は、加速方向を正の値、減速方向を負の値とする。
上述したように、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、L*1=Lであるから、第1の目標減速度α*1は0となる。また、式(19)により算出された第1の目標減速度α*1の絶対値(減速度合)が所定の第1上限値Δα*1より大きい場合には、第1の目標減速度α*1の絶対値が上限値であるΔα*1以下となるように制限する。第1の目標減速度α*1を算出すると、ステップS460に進む。
ステップS460では、ステップS420で算出した第2の車間距離しきい値L*2、および、レーザレーダ70により検出された先行車との車間距離Lに基づいて、次式(20)より、第2の目標減速度α*2を算出する。
α*2=Kv×Kr2×(L*2−L) (20)
ただし、Kr2は、車両に発生させる第2の目標減速力を算出するためのゲインであり、アクセルペダル操作が行われている時の第2の目標減速度α*2の値は0とする。また、第2の目標減速度α*2は、加速方向を正の値、減速方向を負の値とする。
式(20)により算出された第2の目標減速度α*2の絶対値(減速度合)が所定の第2の上限値Δα*2(Δα*2>Δα*1)より大きい場合には、第2の目標減速度α*2の絶対値が上限値であるΔα*2以下となるように制限する。第2の上限値Δα*2を第1の上限値Δα*1より大きくすることにより、車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなった時には、緩やかな減速制御を行い、車間距離が第2の車間距離しきい値L*2(L*2<L*1)より短くなった時には、適切な車間距離へと迅速に移行させるための減速制御を行うことができる。第2の目標減速度α*2を算出すると、ステップS470に進む。
ステップS470では、車両に発生させる最終目標減速度α*を求める。ここでは、ステップS450で算出した第1の目標減速度α*1と、ステップS460で算出した第2の目標減速度α*2とを比較して、値が小さい方の減速度、すなわち、減速度合が大きい方の目標減速度を最終目標減速度α*とする。ここでも、最終目標減速度α*は、加速時の値を正、減速時の値を負とする。
ステップS470に続くステップS480では、最終目標減速度α*に基づいた制動制御を行う。まず、次式(21)に示すように、ステップS470で求めた最終目標減速度α*から、エンジンブレーキにより発生する減速度α*engを減算することにより、ブレーキにより発生させる目標減速度α*brkを算出する。
α*brk=α*−α*eng (21)
ただし、α*、α*brk、α*engは、それぞれ、加速方向を正の値、減速方向を負の値とする。また、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、α*=α*eng=0であるから、α*brk=0となる。
続いて、算出した目標減速度α*brkに基づいて、次式(22)より、目標制動液圧P*を算出する。
*=−(Kb×α*brk) (22)
ただし、Kbは、目標減速度を目標制動液圧に換算するためのゲインであり、車両諸元に基づいて、予め設定しておく。また、アクセルペダル操作が行われている時(アクセル操作フラグFaccのオン時)には、α*brk=0より、P*=0となる。
そして、算出した目標制動液圧P*に基づいた制動液圧を発生させるための指示を圧力制御ユニット5に出す。この指示を受けた圧力制御ユニット5は、目標制動液圧P*に基づいた制動液圧を発生させて、ホイールシリンダー12,22,32,42に供給する。これにより、車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなった時、および、第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していなければ、車両を減速させる制御が行われる。また、ドライバがアクセルペダルを操作している場合には、目標制動液圧P*=0であるから、減速制御は行われない。
ステップS480の処理が終了すると、ステップS400に戻る。以後、ステップS400からステップS480までの処理が繰り返し行われる。
第2の制御モードでは、アクセルペダル操作が行われている状態から行われない状態に移行した時に検出される車間距離Lに基づいて、第1の車間距離しきい値L*1を設定し、先行車との間の車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなると、車両の減速制御を行う。また、車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短い第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に、ドライバがアクセルペダル操作を行っていれば、アクセルペダルに反力を加え、アクセルペダル操作を行っていなければ、車両の減速制御を行う。アクセルペダルオフ時の車間距離に基づいて設定される第1の車間距離しきい値L*1より車間距離Lが短くなった時に、車両の減速制御を行うことにより、ドライバの運転特性に応じた減速制御を行うことができる。また、自車両と先行車両とがさらに接近して、車間距離Lが第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に、ドライバがアクセルペダル操作を行っていれば、アクセルペダルを離すようにドライバに促し、ドライバがアクセルペダルを離すと、減速制御を行うことができる。
また、第2の制御モードでは、自車両の車両状況に依存しない定常項L*h1と、自車両の車両状況に依存する過渡項L*r1とに基づいて、第1の車間距離しきい値L*1を設定する。これにより、自車両の車両状況に依存しない定常項L*h1は確保しつつ、自車両の車両状況に依存する過渡項L*r1によって、ドライバの運転特性に応じた車間距離しきい値を設定することができる。
特に、自車両と先行車両との間の相対速度Vrに基づいて、第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1を設定するので、相対速度に応じた適切な車間距離しきい値を設定することができる。すなわち、相対速度Vrが大きいほど(自車両が先行車両に接近する速度が大きいほど)、第1の車間距離しきい値の過渡項L*r1を大きい値に設定することにより、第1の車間距離しきい値L*1を大きい値に設定するので、先行車両に対して、より手前の位置から減速制御を開始することができる。
また、第2の制御モードでは、車間距離Lと第1の車間距離しきい値L*1とに基づいて、第1の目標減速度α*1を算出するとともに、車間距離Lと第2の車間距離しきい値L*2とに基づいて、第2の目標減速度α*2を算出し、第1の目標減速度α*1と第2の目標減速度α*2のうち、減速度が大きい方の目標減速度を最終目標減速度として設定して、車両の減速制御を行う。これにより、車間距離Lと、第1の車間距離しきい値L*1および第2の車間距離しきい値L*2とに基づいて、適切な減速制御を行うことができる。
第2の制御モードでは、第1の目標減速度α*1に減速度合の上限値を設定するとともに、第2の目標減速度α*2に減速度合の上限値を設けた。この第2の目標減速度の上限値を第1の目標減速度の上限値より大きくしたので、第2の車間距離しきい値L*2より手前の位置でアクセルペダルが離されると、緩やかな減速制御を行い、第2の車間距離しきい値L*2より車間距離Lが短い位置でアクセルペダルが離されると、適切な車間距離に迅速に移行させるための減速制御を行うことができる。
上述した第1および第2の制御モードでは、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、所定の条件下でアクセルペダルに反力を与える制御を行う。しかし、車速が低い場合などのようにアクセル開度が小さい場合、すなわち、アクセルペダルの踏み込み量が少ない場合には、アクセルペダルに反力を与えても、反力が与えられたことをドライバが気づきにくい。そこで、以下に説明するように、アクセルペダルの操作量に対する自車両の駆動トルクの特性を補正することで、すなわち、アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更することで、車速が低い場合などであっても、ある程度アクセルペダルを踏み込まなければならないようにしてもよい。
以下、図11〜18を参照して、詳細な処理内容を説明する。図11は、アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更するために、本実施の形態における車間維持支援装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。ステップS400の処理、およびステップS410からステップS480までの処理は、図7に示した、第2の制御モードで行われる処理内容と同じである。すなわち、以下に説明する処理内容は、図11に示すステップS401におけるトルク特性変更制御処理が付加された点で、第2の制御モードにおける処理内容と異なっており、その他の点については、第2の制御モードにおける処理内容と同じである。なお、第1の制御モードにおいてトルク特性変更制御処理を付加してもよい。具体的には、図2に示すステップS10の後に、ステップS11として、以下に説明するステップS401と同様の処理を追加すればよい。
ステップS400が実行されるとステップS401へ進む。ステップS401では、アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更する制御を行う。アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更する制御の詳細な処理内容を、図12に示すフローチャートを用いて説明する。
図12に示すフローチャートのステップS801では、駆動トルク制御判断フラグFtに1がセットされているか否かを判断する。なお、駆動トルク制御判断フラグFtは、レーザレーダ70で先行車両が検出された場合など、所定の条件下で1にセットされ、この所定の条件を満たしていない場合に0にセットされる。所定の条件としてはこれに限らず、例えば先行車との車間距離が所定のしきい値以下になった場合、相対速度が近づく方向に所定のしきい値以上になった場合等であっても良い。また、運転者が車線変更意思を示した場合(例えばウインカ操作をした場合)や、自車両に対する先行車の横変位が所定のしきい値以上となった場合、駆動トルク制御判断フラグFtを0にセットしても良い。また、単に車間維持支援装置が作動可能状態となったとき(不図示の作動スイッチをONにしたとき)に、駆動トルク制御判断フラグFtを1にセットしても良い。この場合、例えばアクセルペダルアクチュエータ80のフェールによってアクセルペダル反力の付与が作動不可能な状態(すなわち、車間維持支援装置が作動不能な状態)になると、駆動トルク制御判断フラグFtが0にセットされることになる。ステップS801が肯定判断されるとステップS803へ進む。一方、ステップS801が否定判断されるとステップS851へ進む。
アクセル開度が小さい場合、すなわち、アクセルペダルの踏み込み量が少ない場合には、アクセルペダルに反力を与えても、反力が与えられたことをドライバが気づきにくい。たとえば、図13の実線で示すように、一般的に車速が低い場合には、アクセル開度も小さい値となる。そこで、ステップS803以降の処理では、ドライバがアクセルペダル反力を感じやすくなるように、すなわち、所定のアクセル開度αtとなるまでアクセルペダルが踏み込まれるように、駆動トルク制御コントローラ60に出力する駆動トルク指令値(目標駆動トルク)τ*tを後述するように算出することで、アクセル開度と駆動トルクとの関係を変更(補正)する。
しかし、ある程度アクセルペダルが踏み込まれるようにアクセル開度と駆動トルクとの関係を変更してしまうと、ドライバが一旦アクセルペダルを緩めた後、再度アクセルペダルを踏み込んだ際に加速のもたつき感などの違和感をドライバに与える恐れがある。そこで、アクセル開度がほぼ0となるまでアクセルが緩められた場合には、アクセル開度と駆動トルクとの関係を変更前の状態に一旦戻し、加速のもたつき感などの違和感をドライバに与えないようにする。すなわち、アクセル開度がほぼ0となるまでアクセルが緩められた場合には、アクセル開度と駆動トルクとの関係の補正を一旦中止する。
また、アクセル開度と駆動トルクとの関係を変更前の状態に一旦戻した後であっても、継続してレーザレーダ70で先行車両が検出されている場合など、駆動トルク制御判断フラグFtに1が継続してセットされる場合には、ドライバがアクセルペダル反力を感じやすくなるように、アクセル開度と駆動トルクとの関係を再び変更する必要がある。そこで、このような場合には、後述するように、アクセル開度と駆動トルクとの関係を徐々に変更後の状態へ戻す。
ステップS803において、図13に示すように、車速とアクセル開度との関係から、自車両の車速Vに基づいて、所定のアクセル開度αtとアクセル開度との差を算出して、これをアクセル開度のオフセット値の目標値(以下、単にオフセット目標値と呼ぶ)αとする。
ステップS803でオフセット目標値αを設定した後、ステップS805へ進み、アクセルが緩められたか否かを判断する。具体的には、アクセル開度がほぼ0であるか否か、すなわち、アクセル開度センサ56によって検出されるアクセル開度Accが所定のアクセル開度しきい値Acc0以上であるか否かを判定することで、アクセルが緩められたか否かを判断する。なお、アクセル開度減少量が所定量以上となる場合や、アクセル開度が所定の開度以下になった場合、アクセルペダルの操作量の減少速度が所定速度以上となった場合などにアクセルが緩められたものと判断するようにしてもよい。
ステップS805が肯定判断されるとステップS807へ進み、アクセル操作判断フラグに1をセットする。このアクセル操作判断フラグは、後述する処理においてアクセルペダルが一旦緩められているか否かを判断するためのフラグであり、上述のようにアクセル開度がほぼ0とされると(ステップS805肯定判断)、1にセットされる。アクセルが緩められていないか、後述する処理において、アクセルペダルが一旦緩められているか否かを判断する必要がなくなった場合には0にセットされる。
ステップS807でアクセル操作判断フラグに1がセットされるとステップS809へ進み、アクセル開度のオフセット目標値αに関わらず、アクセル開度のオフセット値αoffを0としてステップS811へ進む。ステップS811において、現在のアクセル開度Accから算出されたオフセット値αoffを差し引き、オフセット値αoffを差し引いた後のアクセル開度に対応する駆動トルクを目標駆動トルクτ*tとする。
なお、ステップS807を実行した後にステップS811が実行される場合には、オフセット値αoffが0であるため、現在のアクセル開度Accに対応する駆動トルクが目標駆動トルクτ*tとして算出される。その結果、アクセル開度と駆動トルクとの関係は変更されないこととなる。ステップS811で目標駆動トルクτ*tを算出すると、図11に示すフローチャートのステップS410へ進む。
ステップS805が否定判断されるとステップS821へ進み、アクセル操作判断フラグに1がセットされているか否かを判断する。ステップS821では、アクセル操作判断フラグに基づいて、アクセルペダルが一旦緩められているか否かを判断する。アクセルペダルが一旦緩められている場合には、アクセル操作判断フラグに1がセットされるので、ステップS821が肯定判断される。また、上述したように、アクセルが緩められることなく継続して踏み込まれているか、アクセルペダルが一旦緩められているが、アクセルペダルが一旦緩められているか否かを判断する必要がなくなった場合には、アクセル操作判断フラグに0がセットされるので、ステップS821が否定判断される。
ステップS821が否定判断されるとステップS823へ進み、アクセル開度のオフセット値αoffをオフセット目標値αに設定してステップS811へ進む。ステップS811において、現在のアクセル開度Accから算出されたオフセット値αoffを差し引き、オフセット値αoffを差し引いた後のアクセル開度に対応する駆動トルクを目標駆動トルクτ*tとする。すなわち、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、図14の破線で示した通常の対応関係(グラフ201)から、実線で示した対応関係(グラフ202)へと変更する。これにより、アクセル開度Accに対して、発生する駆動トルクが減少するので、通常よりも大きくアクセルペダルを踏み込まないとドライバが所望する駆動トルクが得られなくなる。そのため、ドライバは、より大きくアクセルペダルを踏み込むことになる。
図14に示す、実線で示した変更後の対応関係を示すグラフ202では、アクセル開度が大きくなると、破線で示した通常の対応関係を示すグラフ201と一致するようにしている。したがって、先行車両の追い越しをする場合のように、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んだ際には、通常と同じ駆動トルクが得られる。
なお、現在のアクセル開度Accからオフセット値αoffを差し引いた値が0以下となる場合、目標駆動トルクτ*tは0とする。
ステップS821が肯定判断されると、すなわちアクセルペダルが一旦緩められている場合にはステップS831へ進む。ステップS831では、アクセル操作判断フラグが0から1にセットされて初回の処理であるか否か、すなわち、アクセルペダルが一旦緩められた後に再びアクセルペダルが踏み込まれてから最初の処理であるか否かを判断する。ステップS831が肯定判断されるとステップS833へ進み、アクセルペダルが一旦緩められた後に再びアクセルペダルが踏み込まれてからの経過時間を計時するため、経過時間Tcをリセットした後、経過時間Tcの計時を開始してステップS835へ進む。なお、ステップS831が否定判断される場合には、すでに一度ステップS833が実行されて経過時間Tcの計時が開始されているため、ステップS833をスキップしてステップS835へ進む。
ステップS835において、経過時間Tcと係数kとの積がオフセット目標値αより小さいか否かを判断する。ここで、係数kは、オフセット値αoffを経過時間Tcに応じた値として算出するためにあらかじめ定められた係数である。すなわち、図15に示すように、オフセット値αoffを経過時間Tcに比例させた場合、係数kはオフセット値αoffと経過時間Tcとの関係を示すグラフ211の傾きに相当する。経過時間Tcと係数kとの積がオフセット目標値αより小さい場合には、すなわちステップS835が肯定判断される場合にはステップS837へ進み、経過時間Tcと係数kとの積をオフセット値αoffとして設定してステップS811へ進む。
ステップS811において、現在のアクセル開度Accから算出されたオフセット値αoffを差し引き、オフセット値αoffを差し引いた後のアクセル開度に対応する駆動トルクを目標駆動トルクτ*tとする。すなわち、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、図16の破線で示した通常の対応関係(グラフ201)から、実線で示した対応関係(グラフ212)へと変更する。なお、実線で示した対応関係のグラフ212は、経過時間Tcに応じて次第に図示右側へ移動する。なお、上述の場合と同様に、図16に実線で示した対応関係のグラフ212では、アクセル開度が大きくなると、破線で示した通常の対応関係を示す曲線と一致するようにされている。
図15に示した一定の時間Tc1が経過すると、経過時間Tcと係数kとの積がオフセット目標値αと等しくなる。この場合、オフセット値αoffがオフセット目標値αと等しくなるため、図16に実線で示した対応関係のグラフ212は2点鎖線で示した対応関係のグラフ213と一致する。グラフ213は、オフセット値αoffをオフセット目標値αとしたときの対応関係であり、図14に示したグラフ202に等しい。すなわち、一定の時間Tc1が経過すると、アクセル開度と駆動トルクとの関係は、ドライバがアクセルペダルを緩める前の、補正後のアクセル開度と駆動トルクとの関係に再び戻るため、さらに時間が経過しても、オフセット値αoffをオフセット目標値αよりも大きくする必要はない。
したがって、経過時間Tcと係数kとの積がオフセット目標値α以上となると、すなわちステップS835が否定判断されると、ステップS841へ進み、経過時間Tcをリセットし、アクセル操作判断フラグに0をセットした上でステップS823へ進み、アクセル開度のオフセット値αoffをオフセット目標値αに設定する。これにより、図15に示すように、アクセルペダルが一旦緩められた後に再びアクセルペダルが踏み込まれてから一定の時間Tc1が経過した後は、アクセル開度のオフセット値αoffはオフセット目標値αに設定される。
ステップS841が実行された後、ステップS811において、現在のアクセル開度Accから算出されたオフセット値αoffを差し引き、オフセット値αoffを差し引いた後のアクセル開度に対応する駆動トルクを目標駆動トルクτ*tとする。すなわち、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係が、図14の実線で示した対応関係(グラフ202)へと再び変更される。
上述したアクセル開度と駆動トルクとの関係の変更が必要ない場合、すなわち、駆動トルク制御判断フラグFtに0がセットされている場合には、ステップS801が否定判断される。ステップS801が否定判断されるとステップS851へ進み、経過時間Tcをリセットし、アクセル操作判断フラグに0をセットしてステップS809へ進む。ステップS809において、アクセル開度のオフセット値αoffを0としてステップS811へ進む。ステップS811において、現在のアクセル開度Accから算出されたオフセット値αoffを差し引き、オフセット値αoffを差し引いた後のアクセル開度に対応する駆動トルクを目標駆動トルクτ*tとする。
なお、ステップS801が否定判断された後にステップS811が実行される場合には、オフセット値αoffが0であるため、現在のアクセル開度Accに対応する駆動トルクが目標駆動トルクτ*tとして算出される。その結果、アクセル開度と駆動トルクとの関係は変更されないこととなる。
このように構成される車間維持支援装置では、上述したように、ある程度アクセルペダルが踏み込まれるようにアクセル開度と駆動トルクとの関係が変更された後に、アクセルペダルが戻されると、たとえば図17に示すように駆動トルクが推移する。駆動トルク制御判断フラグFtに1がセットされて、ある程度アクセルペダルが踏み込まれるようにアクセル開度と駆動トルクとの関係が変更された後、時刻Tt1においてアクセルペダルが戻されてアクセル開度Accが0となると、駆動トルクが0となる。
アクセル開度Accがほぼ0とされることで、上述したようにアクセル開度と駆動トルクとの関係が変更前の状態に戻されるため、その後、時刻Tt2から時刻Tt3にかけてアクセルペダルが踏み込まれると、アクセル開度Accに応じて駆動トルクが増加する。時刻Tt2から時刻Tt3までの経過時間が図15に示した一定の時間Tc1よりも短い場合、時刻Tt3からアクセル開度Accが一定に保たれると、時刻Tt3から時刻Tt4までの間、駆動トルクは徐々に減少する。なお、時刻Tt4は、時刻Tt2から時間Tc1が経過した時刻である。
時刻Tt4から時刻Tt5までの間、アクセル開度Accが一定であれば、駆動トルクも一定である。時刻Tt5から時刻Tt6にかけてアクセルが踏み増しされると、アクセル開度Accの増加に応じて駆動トルクも増加する。
本形態による車間維持支援装置によれば、次の作用効果を奏する。
(1) 駆動トルク制御判断フラグFtに1がセットされている場合には、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、通常の対応関係とは異なる対応関係へと変更するように構成した。これにより、ドライバがアクセルペダル反力を感じやすくなるアクセル開度となるようにドライバのアクセル操作を誘導できるので、アクセルペダル反力の付与によって確実に運転者へ注意を喚起できる。
(2) アクセル開度Accに対して、発生する駆動トルクが減少するように構成した。したがって、駆動トルク制御判断フラグFtに1がセットされている場合には、アクセルが踏み増されなければ駆動トルクが減少してしまう。これにより、ドライバにアクセルペダルの踏み増しを促すことができるので、確実にアクセルペダル反力が付与されたことをドライバに認識させることができる。
(3) 現在のアクセル開度Accからオフセット値αoffを差し引くことで、現在のアクセル開度Accにオフセット量を設定し、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を変更(補正)するように構成した。これにより、制御内容が単純なものとなり、制駆動力制御コントローラ50における制御の信頼性を向上できる。
(4) 現在のアクセル開度Accからオフセット値αoffを差し引いた値が0以下となる場合、目標駆動トルクτ*tは0とするように構成した。したがって、現在のアクセル開度Accがオフセット値αoffに相当するアクセル開度よりも少ない場合には、駆動トルクが得られない。これにより、少なくともオフセット値αoffに相当するアクセル開度までアクセルペダルを踏み増すことをドライバに促すことができるので、確実にアクセルペダル反力が付与されたことをドライバに認識させることができる。
(5) アクセル開度が大きくなると、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係が、現在のアクセル開度Accからオフセット値αoffを差し引く前の、通常の対応関係となるように構成した。これにより、先行車両の追い越しをする場合のように、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んだ際には、通常と同じ駆動トルクが得られるので、ドライバの加速意志を尊重できる。
(6) アクセルが緩められた場合には、アクセル開度と駆動トルクとの関係の補正を一旦中止するように構成した。これにより、アクセル開度と駆動トルクとの関係が変更前の状態に戻るので、アクセルペダルが再度踏み込まれた際の加速のもたつき感などの違和感をドライバに与えないようにすることができる。
(7) アクセル開度と駆動トルクとの関係の補正を一旦中止した後、再びアクセルペダルが踏み込まれると、オフセット値αoffが徐々に増加して補正を中止する前の状態に徐々に戻るように構成した。これにより、一旦補正が中止された後であっても、ドライバがアクセルペダル反力を感じやすくなるアクセル開度となるようにドライバのアクセル操作を誘導できるので、ドライバがアクセルを緩めた後に再度アクセルペダルを踏み込んだ場合にも、アクセルペダル反力の付与によって確実に運転者へ注意を喚起できる。
(8) アクセル開度がほぼ0とされた場合に、アクセルが緩められたものと判断するように構成した。これにより、ドライバがアクセルを緩めたか否かを確実に判断できるので、その後のドライバのアクセルペダルの踏み込みに備えてアクセル開度と駆動トルクとの関係を変更前の状態に確実に戻すことができ、ドライバの加速意志を尊重できる。なお、アクセル開度減少量が所定量以上となる場合や、アクセル開度が所定の開度以下になった場合、アクセルペダルの操作量の減少速度が所定速度以上となった場合などに、アクセルが緩められたものと判断しても同様の作用効果を奏する。
なお、上述の説明では、係数kの採り得る値について特に言及していないが、係数kを適宜変更するようにしてもよい。たとえば、図18に示したグラフ214のように、係数kを大きくすることで、オフセット値αoffと経過時間Tcとの関係を示すグラフの傾きが大きくなる。このように、係数kを適宜変更することで、一旦補正が中止された後にアクセル開度と駆動トルクとの関係を再び補正後の状態へ戻す際の所要時間が変化する。
たとえば、自車両の走行状況に応じて係数kを次のように適宜変更するようにしてもよい。自車両の車速Vや先行車両との間の車間距離Lが小さいときほど、また、相対速度Vrが大きいときほど係数kを大きくすることで、駆動トルクが減る方向により早く推移することとなり、安全上も好ましい。
また、図18に示したグラフ215のように、経過時間Tcが所定の時間Tc0を経過するまでの間は、オフセット値αaが0となるようにしてもよい。このようにすることで、アクセルペダルが一旦緩められた後に再びアクセルペダルが踏み込まれてから所定の時間Tc0が経過するまでの間は、補正が中止された状態となり、この間のドライバのアクセル操作に対する応答性が向上する。
また、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係は、上述したものに限らない。たとえば、図19の曲線A〜Eで示すように様々な特性となるように設定できる。たとえば、上述した図14における変更後のアクセル開度Accと駆動トルクとの対応関係を曲線Aとすると、曲線Bで示すように、アクセル開度に対する駆動トルクがより低減されるようにしてもよい。この場合、ドライバのアクセル操作に対する応答性が悪くなるものの、車両の加速特性がゆったりとしたものになる。
また、曲線Cで示すように、アクセル開度に対して駆動トルクがリニアに出力されるようにしてもよい。この場合、加速特性がドライバに分かり易くなる。曲線Dで示すように、アクセル開度がアクセル開度Acc1を超えると、破線で示した通常の対応関係を示す曲線と一致するようにしてもよい。この場合、曲線Aの場合よりも小さいアクセル開度から破線で示した通常の対応関係を示す曲線と一致するので、ドライバの加速意志をより反映させた加速特性とすることができる。
なお、上述の説明では、アクセル開度がオフセット値αoffよりも少ない場合には目標駆動トルクτ*tを0としているが、細い実線で示す曲線Eのように、アクセル開度がオフセット値αoffよりも少ない場合であっても、目標駆動トルクτ*tが0よりも大きい値となるように、すなわちある程度駆動トルクが得られるようにしてもよい。
−−−変形例−−−
本発明は、上述した実施の形態に限定されることはない。例えば、第1の制御モードにおいて、車間距離しきい値の過渡項L*aを算出するためのパラメータTaは、式(2)より算出したが、算出した値に対して、上限リミット値Ta_maxを設けて、上限値を制限してもよいし、下限リミット値を設けて、下限値を制限してもよい。上限値は、例えば、自車両の速度Vに応じて設定することができる。図20は、自車両の車速Vと上限リミット値Ta_maxとの関係の一例を示す図である。同様に、第2の制御モードにおいて、第2の車間距離しきい値の過渡項L*r2を算出するためのパラメータTr2に対して、上限リミット値を設けてもよいし、下限リミット値を設けてもよい。
第1の制御モードにおける車間距離しきい値(定常項)L*b、および、第2の制御モードにおける第2の車間距離しきい値(定常項)L*h2は、自車両の車速Vおよび相対速度Vrに基づいて算出したが、先行車両の速度に所定時間を乗算することによって算出してもよいし、自車速、相対速度、および、先行車両の速度のうちの少なくとも一つに基づいて算出してもよい。
上述した実施の形態では、ホイールシリンダに制動液圧を供給することにより、車両を減速させるものとして説明したが、エンジンブレーキやシフトダウン等、他の減速制御を利用して、車両を減速させてもよい。
上述した実施の形態において、車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなった時に行われる減速制御では、エンジンブレーキを利用した減速制御を行い、車間距離が第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に行われる減速制御では、ホイールシリンダー12,22,32,42に制動液圧を供給することによる減速制御を行うようにしてもよい。この場合、ユーザは、車間距離Lが第1の車間距離しきい値L*1より短くなった時に行われる減速制御と、車間距離Lが第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に行われる減速制御とを識別することができる。
上述した第1の制御モードでは、自車両と先行車両との間の車間距離Lが車間距離しきい値L*より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、アクセルペダルに反力を与える制御を行ったが、アクセルペダルに反力を与える代わりに、アクセルペダルを振動させるようにしてもよい。同様に、第2の制御モードにおいても、車間距離Lが第2の車間距離しきい値L*2より短くなった時に、ドライバがアクセルペダルを操作していれば、アクセルペダルを振動させることができる。
上述した実施の形態では、第1の目標減速度α*1と第2の目標減速度α*2のうち、減速度が大きい方の目標減速度を最終目標減速度として設定して、車両の減速制御を行った。しかし、第1の目標減速度α*1に基づいて、第1の目標制動液圧P*1を算出するとともに、第2の目標減速度α*2に基づいて、第2の目標制動液圧P*2を算出し、値が大きい方の目標制動液圧を最終目標制動液圧として決定してから、車両の減速制御を行うようにしてもよい。
上述した実施の形態では、図13に示すように、車速とアクセル開度との関係から、自車両の車速Vに基づいて、所定のアクセル開度αtとアクセル開度との差を算出して、これをアクセル開度のオフセット目標値αとしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、所定のアクセル開度αtは、開度25%といった定数であってもよく、実車間距離Lや相対速度Vrなどに応じた値であってもよい。
また、トランスミッションのギヤ位置や、エンジン回転数、路面勾配などによってオフセット目標値αを変更するようにしてもよい。たとえば、トランスミッションのギヤ位置によってオフセット目標値αを変更する場合、ギヤ位置が高くなるほどオフセット目標値αが大きくなるようにしてもよく、ギヤ位置に応じたオフセット目標値αをマップ引きしてもよい。エンジン回転数によってオフセット目標値αを変更する場合、エンジン回転数が低くなるほどオフセット目標値αが大きくなるようにしてもよく、エンジン回転数に応じたオフセット目標値αをマップ引きしてもよい。路面勾配に応じてオフセット目標値αを変更する場合、上り坂ではオフセット目標値αが小さくなるように、下り坂ではオフセット目標値αが大きくなるように設定することで、上り坂でアクセル開度が小さいと加速しなくなるという不都合を防止できる。
このように所定のアクセル開度αtやオフセット目標値αを設定することで、自車両の走行状態や、前方障害物の状態に応じて、適切なオフセット目標値αを算出できる。これにより、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、自車両の走行状態や、前方障害物の状態に応じて変更できるので、ドライバに対してアクセル反力の付与による注意喚起を走行環境に応じて適切に行うことができる。
また、駆動トルク制御判断フラグFtに1がセットされている場合に、アクセル開度Accと駆動トルクとの関係を、通常の対応関係とは異なる対応関係へと変更する制御については、アクセルペダル反力を与えることで、ドライバに注意を喚起するための様々な装置に適用してもよい。
上述した実施の形態における車間維持支援装置では、アクセル開度と、駆動トルク制御コントローラ60に出力する目標駆動トルクτ*tとの関係を変更することで、結果としてアクセル開度と、エンジン6の出力トルクとの関係を変更するようにしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、オーチマチックトランスミッションの変速比を変更したり、エンジン6以外の原動機(たとえば電動モータなど)の出力トルクを変更すること等によって、アクセル開度と、車輪軸上での駆動トルクτwとの関係を変更するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
以上の実施の形態およびその変形例において、たとえば、先行車検出手段はレーザレーダ70に、アクセルペダル操作量検出手段はアクセル開度センサ56に、操作反力発生手段はアクセルペダルアクチュエータ80に、走行状況検出手段は各センサ13,23,33,43,52〜56およびレーザレーダ70に、駆動源制御手段は駆動トルク制御コントローラ60にそれぞれ対応する。アクセルペダル操作反力演算手段、駆動トルク決定手段、および補正手段は、制駆動力制御コントローラ50に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
本実施の形態における車間維持支援装置の構成を示す図 第1の制御モードでの処理内容を示すフローチャート 車間距離しきい値の過渡項L*aの詳細な算出方法を示すフローチャート アクセルペダルに反力を与える制御の詳細な処理内容を示すフローチャート 制動力制御の詳細な処理内容を示すフローチャート 先行車両の加減速度αaと、ゲインKrとの関係を示す図 第2の制御モードでの処理内容を示すフローチャート 第1の車間距離しきい値L*1の詳細な算出方法を示すフローチャート 第2の車間距離しきい値L*2の詳細な算出方法を示すフローチャート 第2の制御モードにおいて、アクセルペダルに反力を与える制御の詳細な処理内容を示すフローチャート アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更するために車間維持支援装置によって行われる処理内容を示すフローチャート アクセルペダルの操作量と駆動トルクとの関係を変更する制御の詳細な処理内容を示すフローチャート 車速Vとアクセル開度Accとの関係を示す図 アクセル開度Accと目標駆動トルクτ*tとの関係を示す図 経過時間Tcとオフセット値αoffとの関係を示す図 アクセル開度Accと目標駆動トルクτ*tとの関係を示す図 アクセル開度Accと車輪軸上での駆動トルクτwとの関係の経時変化を示す図 経過時間Tcとオフセット値αoffとの関係を示す図 アクセル開度Accと目標駆動トルクτ*tとの関係のその他の例を示す図 自車両の車速Vと上限リミット値Ta_maxとの関係の一例を示す図
符号の説明
1…ブレーキペダル、2…ブースター、3…マスターシリンダー、4…リザーバー、5…圧力制御ユニット、6…エンジン、7…スロットル制御装置、8…自動変速機、10…左前輪、11,21,31,41…ブレーキディスク、12,22,32,42…ホイールシリンダ、20…右前輪、30…左後輪、40…右後輪、50…制駆動力制御コントローラ、52…操舵角センサ、53…加速度センサ、54…ヨーレートセンサ、55…マスターシリンダ液圧センサ、56…アクセル開度センサ、60…駆動トルク制御コントローラ、70…レーザレーダ、80…アクセルペダルアクチュエータ、81…アクセルペダル

Claims (6)

  1. 自車両と先行車との車間距離を検出する先行車検出手段と、
    アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
    前記検出される車間距離に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる操作反力を演算するアクセルペダル操作反力演算手段と、
    前記演算された操作反力を前記アクセルペダルに発生させる操作反力発生手段と、
    自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
    前記検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて自車両の駆動トルクを決定する駆動トルク決定手段と、
    前記決定された駆動トルクを出力するように駆動源の出力を制御する駆動源制御手段と、
    前記検出された自車両の走行状況に基づいて、前記アクセルペダルが戻し操作されるまで前記アクセルペダルの操作量に対する前記自車両の駆動トルクの特性を補正するとともに、前記アクセルペダルの戻し操作が検出されると前記補正を中止する補正手段とを備えることを特徴とする車間維持支援装置。
  2. 請求項1に記載の車間維持支援装置において、
    前記補正手段は、前記戻し操作されたアクセルペダルが踏まれると、前記特性を前記補正後の特性に徐々に戻すことを特徴とする車間維持支援装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車間維持支援装置において、
    前記補正手段は、前記アクセルペダル操作量検出手段で検出された前記アクセルペダル操作量に基づいて、前記アクセルペダル操作量の減少量が所定量以上となったとき、前記アクセルペダルの操作量が所定値以下となったとき、および、前記アクセルペダルの操作量の減少速度が所定速度以上となったときの少なくともいずれか一つに該当すると判断したときに前記アクセルペダルが戻し操作されたと判断することを特徴とする車間維持支援装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の車間維持支援装置において、
    前記補正手段は、前記走行状況検出手段の検出結果に基づいて、前記駆動トルク決定手段で決定された駆動トルクを減らすように前記特性を補正することを特徴とする車間維持支援装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の車間維持支援装置において、
    前記補正手段は、前記アクセルペダル操作量検出手段で検出された前記アクセルペダルの操作量にオフセット量を設定することで、前記特性を補正することを特徴とする車間維持支援装置。
  6. 自車両と先行車との車間距離を検出し、
    アクセルペダルの操作量を検出し、
    前記検出される前記車間距離に基づいて、前記アクセルペダルに発生させる操作反力を演算し、
    前記演算された操作反力を前記アクセルペダルに発生させ、
    自車両の走行状況を検出し、
    前記検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて自車両の駆動トルクを決定し、
    前記決定された駆動トルクを出力するように駆動源の出力を制御し、
    前記検出された自車両の走行状況に基づいて、前記アクセルペダルが戻し操作されるまで前記アクセルペダルの操作量に対する前記自車両の駆動トルクの特性を補正するとともに、前記アクセルペダルの戻し操作が検出されると前記補正を中止することを特徴とする車間維持支援方法。
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