JP2007295825A - 柿酢の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 柿酢の原料柿は糖質含有量に大差があり、出来得るアルコールは10%から2%と巾が広い。このため一方は酸味が強すぎ、他方は酸味が薄く又往々にしてカビの発生による異臭のある柿酢となる。この問題を解決するため、元酢という形で酢酸を補填したり、水割りという形での希釈がなされていたが、柿果実のみでの柿酢の製造が望まれる。
【解決手段】 アルコール発酵後、酢酸発酵を経て柿酢を製造する工程は従前と同様であるが、最大の特徴は、柿ワインが所定のアルコール濃度になったとき、酵母を殺菌してアルコール発酵を停止させることにある。このことにより、前述のような酢酸の補填や、希釈をすることなく、一定の範囲内の酸量と糖度の柿酢が製造できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は柿酢の製造方法に関する。
柿酢は、柿を発酵させてつくった醸造酢の一種であり、果実酢の中では特に健康増進効果などの点から注目されている。柿酢の原料は甘柿でも渋柿でも良いが、渋柿は収穫後に渋抜き処理を施しておくのが無難である。また、農薬付着が懸念されるときは収穫後洗剤を用いて付着農薬を完全に除去することが重要である。
柿酢の製造工程は、一般に非特許文献1に示されているように、図1に示すとおりである。以下、順次説明するが、図1は渋柿を対象としており、その中で□中の事項は、必要に応じて処理または添加するものである。
原料の柿が赤くなり、手で簡単に潰せるぐらいに軟化した状態まで熟させ、潰して発酵タンクに仕込む。その前に収穫した柿は洗剤、水道水で十分に洗浄することが望ましい。柿を潰して仕込む最初の時、もろみに多量の優良酵母を添加する。これは雑菌、有害菌の繁殖抑制のためである。酵母はあらかじめ培養しておく。著しい泡だちが予想される場合は、適量のペクチナーゼを水に溶かして酵母と一緒に添加する。こうしてアルコール発酵を行なう。
アルコール発酵完了後、発酵もろみをしぼって汁液をとり、ただちに種酢を加えて酢酸変性させる。酢酸変性は氷酢酸または種酢(同じ原料で先につくった酢)を加えて調整するが、酢酸濃度の目安は1.5%程度とする。たとえば、6%の種酢であれば種酢1に対し、アルコール発酵液3の割合で混合する。その酢酸変性液を酢化槽に移し、酢酸菌膜を移植して酢酸発酵を行なう。
菌膜を除去し酢を熟成させる。酢酸発酵の終点は、見極めが難しいが、強いてあげれば、酢酸菌膜のシワが少なくなり、菌膜の一部をすくい取ると、その後に膜が再生しなくなることである。その後、酢をろ過して酸度調整等を行ない、加熱してびんに詰める。
柿酢製造は、端的にいえば、まず果実ワインをつくり、これを空気酸化させて酢に変換する作業である。ワインは、果実中の糖分を酵母の力を借りてアルコールに換え、酢酸はアルコールを餌とする酢酸菌を液の表面に繁殖させ、空気中の酸素と反応させてつくる。したがって、良い柿酢を安定的につくるには、果実の特徴を引き出すような前記の優良酵母、酢酸菌の積極的利用と、菌が十分に能力を発揮できるような温度、栄養条件などの設定が重要になる。ちなみに、前記酵母は12〜15℃で、また酢酸菌は30〜35℃でよく働く。
柿酢の製造方法は、一般的に上述のとおりであるが、柿果実の場合、品種、栽培条件によって糖質含有量に大きな差があり、従って出来うるアルコール(エチルアルコール)量にも大きな差が出てくる。
2000年10月30日、社団法人農山漁村文化協会発行、「地域資源活用 食品加工総覧 第7巻 加工品編」P345〜P347
柿酢の原料柿は栽培条件や品種によって糖質含有量に大差がある。高いものは26重量
%から低いものでは7重量%とその差は3倍以上にもなる。従って、出来うるアルコールは10%から2%と大きく変動する。酢酸発酵をさせて生成する柿酢は、一方は酸味が強すぎてしかもアルコールが残り、他方は酸味が薄く発酵過程でカビが発生して異臭の有る柿酢になってしまう。この問題を解決するために、従来技術は元酢という形で酢酸の補填をしたり水割りと言う形での希釈法が採られているが、栄養価に富む柿果実の機能性を追及する為に柿果実のみでの品質の良い柿酢の作出が望まれて来た。
本発明請求項1の発明は、破砕状態の柿果実に酵母を加えてアルコール発酵させるアルコール発酵工程と、アルコール発酵中の柿ワインのアルコール濃度を計測するアルコール濃度計測工程と、上記柿ワインが所定のアルコール濃度になったとき酵母を殺菌してアルコール発酵を停止させるアルコール発酵停止工程と、上記柿ワインに酢酸菌を添加して酢酸発酵させる酢酸発酵工程とを含むことを特徴とする柿酢の製造方法を提供する。
最大の特徴は、柿ワインが所定のアルコール濃度になったとき、酵母を殺菌してアルコール発酵を停止させることにある。このことにより、前述の元酢という形での酢酸の補填や、水割りという形での希釈をすることなく、一定の範囲内の酸量と糖度の柿酢が製造できる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の柿酢の製造方法において、酢酸発酵工程は静止発酵を採用することを特徴とする。このことにより発酵容器中でアルコールは上昇流となり酢酸成分は比重が大なので下降流となり、全体的に対流が起こり、少しずつ酢になっていくので、まろやかな美味しい酢が得られる。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の柿酢の製造方法において、アルコール発酵停止工程における酵母の殺菌を加熱又は加圧により行うことを特徴とする。酵母殺菌法として加熱法は、柿につく天然酵母をはじめとした雑菌やカビを殺すと同時にペクチナーゼ酵素の活性を高める利点があるが、熱変性による着色と揮発成分(香り)の減失がおこる欠点がある。
一方、加圧法は上述の加熱法の欠点は少ないが、加圧装置等の初期コストが高くつく欠点がある。
本発明は、前述のとおり、アルコール発酵中の柿ワインのアルコール濃度が所定の値になったとき、酵母を殺菌してアルコール発酵を停止させる工程を付加することにより、糖質含有量に大差があり、従って通常であれば、アルコール濃度が10%から2%と大きく変動する柿ワインのアルコール濃度を所望の範囲に制御することができ、美味しくて薫り高くまろやかで安定した品質の柿酢を提供し得る。
したがって、本発明は、健康増進効果の大きな柿酢を調味料、飲料酢として広くかつ多量に使われるきっかけをつくり、柿生産地域の活性化を促す効果も期待できる。
図2は、本発明の実施例における工程の流れを示す図であり、以下の実施例1、2はいずれもこの流れに基づくものである。
柿果実を粉砕したのち(柿が十分に熟し、実質的に破砕状態であれば必ずしも粉砕を要しない)、粉砕された柿果実を殺菌のため加熱する。加熱温度が50℃に達した時点で加
熱を中止して果実にペクチナーゼを添加し240分程度攪拌冷却する。30℃で冷却を中止し酵母(協会酵母901号)を添加し、櫂入れを行う。始めのうちは空気を入れて酵母の増殖をうながすが、沸きの現象を確認した後は空気を入れない嫌気発酵に切りかえる。
この時点で、もろみはアルコール発酵中であるが、最終的に酸度4.5%の酢を得たい場合はアルコール濃度が5%に達した時もろみを槽よりくみ出し袋に入れて搾る(上槽圧搾という)。その後、上槽圧搾したもろみの酵母を殺すため60℃の温度で30分程度加熱する。
アルコール濃度の計測法は、国税庁所定分析法による。つまり、もろみを蒸留してメスフラスコに蒸留液を採り、水で100ccに増量し温度補正をしてアルコール比重計で計測する。この計測法では誤差が0.3%程度となるので、大まかな度合いを見るのに使用し、目標濃度に近くなれば酸化法で分析すると0.05%程度の誤差で計測できる。
酵母殺菌加熱後、柿ワインが40℃程度になった時点で酢酸菌群(アセトバクタアセチ、グルコバクタ等)を添加し、酢酸菌膜を移植し、33℃の部屋で40日程度置き、いわゆる静置発酵を行わせる。当分の間は10日毎に酢酸の酸度確認を行い、30日経過後は毎日その酸度分析と、併せてアルコール分析をする。アルコール分が0.5%以下になると酢酸菌は働らきにくくなる。その時点で酢酸菌膜の除去と60℃で30分間火入れした後、オリ引きを行って、その後熟成タンクに入れて80日間熟成した。その後タンニンを沈殿させて上澄み液を0.5μのミクロフィルターにて濾過し、最終的に殺菌のため80℃にて10分間加熱し、最終製品である酢が出来上る。
この酢の、日本食品分析センターによる分析試験結果によると、いずれも100gあたり、水分86.9g、たんぱく質0.2g、脂質0.1g未満、灰分0.4g、糖質12.5g、エネルギー51kcal、ナトリウム3.1mg、カリウム192mgであり、酸度4.4%であった。
柿果実を粉砕したのち、粉砕された柿果実を殺菌のため加熱する。加熱温度が50℃に達した時点で加熱を中止して果実にペクチナーゼを添加し攪拌冷却する。30℃で冷却を中止し酵母(協会酵母901号)を添加し、櫂入れを行う。始めのうちは空気を入れて酵母の増殖をうながすが、沸きの現象を確認した後は空気を入れない嫌気発酵に切りかえる。
この時点でもろみはアルコール発酵中であるが、最終的に酸度1.5%の酢を得たい場合はアルコール濃度が2%に達した時もろみを槽よりくみ出し袋に入れて搾る(上槽圧搾という)。その後、上槽圧搾したもろみの酵母を殺すため60℃の温度で30分程度加熱する。
放置冷却の後、柿ワインが40℃程度になった時点で酢酸菌群(アセトバクタアセチ、グルコバクタ等)を添加し、酢酸菌膜を移植し33℃の部屋で25日程度置き、いわゆる静置発酵を行わせる。当分の間は10日毎に酢酸の酸度確認を行い、25日経過後は毎日その酸度分析と、併せてアルコール分析をする。酸度1.5%、アルコール度0.5%以下になった時点で、酢酸菌膜の除去とオリ引きを行って濾過し、殺菌のため60℃に到達するまで加熱(火入れ)する。この加熱は酢酸の酸度が低いためカビの発生を防ぐためである。その後熟成タンクに入れて80日間熟成した。その後タンニンを沈殿させて上澄み液を0.5μのミクロフィルターにて濾過し、最終的に殺菌のため80℃にて10分間加熱し、最終製品である酢が出来上る。
この酢の、日本食品分析センターによる分析試験結果によると、いずれも100gあたり、水分85.4g、たんぱく質0.2g、脂質0.1g未満、灰分0.2g、糖質14.1g、エネルギー60kcal、ナトリウム3.1mg、カリウム192mgであり、酸度1.5%であった。
この実施例によれば、非常に甘味比の高い柿酢ができた。即ち、純粋な柿酢であって、糖分と酸のバランスのとれた飲みやすい柿酢が得られたことになる。
要するに、以上の実施例におけるアルコール発酵を発酵途中で停止するという技術的思想、実例は過去に全くなく、栽培条件や品種により糖質含有量に大差のある柿果実を利用して、かつ所定の酸度でそのまま飲用できる柿酢を得るための方法としての本発明の効果は大なるものがある。
従来の柿酢の製造工程の流れを示す図である。 本発明の一実施例の製造工程の流れを示す図である。

Claims (3)

  1. 破砕状態の柿果実に酵母を加えてアルコール発酵させるアルコール発酵工程と、アルコール発酵中の柿ワインのアルコール濃度を計測するアルコール濃度計測工程と、上記柿ワインが所定のアルコール濃度になったとき酵母を殺菌してアルコール発酵を停止させるアルコール発酵停止工程と、上記柿ワインに酢酸菌を添加して酢酸発酵させる酢酸発酵工程とを含むことを特徴とする柿酢の製造方法。
  2. 酢酸発酵工程は静止発酵を採用することを特徴とする請求項1に記載の柿酢の製造方法。
  3. アルコール発酵停止工程における酵母の殺菌を加熱又は加圧により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の柿酢の製造方法。

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