JP2007295540A - 超音波デバイス及びその製造方法並びに接合方法 - Google Patents

超音波デバイス及びその製造方法並びに接合方法 Download PDF

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博紀 杉山
Tomoo Tanaka
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Abstract

【課題】整合部材と金属部材とが無機接合された超音波デバイス等を提供する。
【解決手段】本デバイスは、整合部材11と金属部材12と圧電部材13とがこの順に接合され、整合部材11と金属部材12とは、ロウ材により接合されている。更に、整合部材11と金属部材12との接合部からロウ材がはみ出してなるフィレット部15を備えることが好ましい。このデバイスは、整合部材11の接合面及び金属部材の接合面のうちの少なくとも一方にペースト状のロウ材を塗布する工程と、このロウ材を介して整合部材11と金属部材12とを一体化するに際し、整合部材11の接合面と金属部材12の接合面とを密着させて、整合部材11と金属部材12との間からロウ材をはみ出させる工程と、一体化された整合部材11及び金属部材12を焼成してフィレット部15を得る工程とを備え得られる。
【選択図】図2

Description

本発明は、超音波デバイス及びその製造方法並びに接合方法に関する。更に詳しくは、本発明は、超音波デバイスを構成するカーボンからなる音響整合部材と金属部材とが無機接合された超音波デバイス及びその製造方法、並びに、カーボン部材と金属部材とを無機接合できる接合方法に関する。
超音波デバイスは、通常、超音波を発振する圧電部材と、圧電部材から発振された超音波を機械共振させる金属部材とを備える。圧電部材で発振された超音波は金属部材から直接的に目的媒体へ伝達されてもよいが、金属部材と目的媒体との間に音響整合部材を介して伝達することが好ましい。音響整合層を介することで、金属部材と目的媒体との音響インピーダンスをより近づけることができ、超音波の伝達効率を向上できるからである。従って、超音波デバイスの金属部材の表面には、各目的媒体に対応した音響整合部材が接合されている。
この音響整合層としては、金属部材よりも音響インピーダンスが小さい目的媒体への超音波伝達を行う超音波デバイスには、カーボンが用いられることがある。カーボンは音響整合部材として優れた性能を有し、更に、耐熱性、耐湿性及び耐食性等が高く優れた耐久性を有している。しかし、セラミックス、樹脂及び金属等に比べて機械的強度が一般に小さく、特に熱膨張係数が大きく異なる金属との接合は難しいという問題がある。このため、従来、エポキシ樹脂等の有機接合材(下記特許文献1参照)により金属部材と接合されている。
特開平11−118550号公報
しかし、有機接合材はカーボンに比べると耐久性に劣り、カーボンが有する耐久性を十分に発揮させることが困難である。このため、音響整合部材としてカーボンを用いた超音波デバイスでは、カーボンの優れた耐久性を有効に利用できず、使用環境や製品寿命に制限を生じるという問題がある。
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、カーボンからなる音響整合部材と金属部材とが無機接合された超音波デバイス及びその製造方法、並びに、カーボン部材と金属部材とを無機接合できる接合方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
請求項1.音響インピーダンスを整合するためのカーボンからなる音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、
該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されていることを特徴とする超音波デバイス。
請求項2.上記音響整合部材と上記金属部材との接合部から上記ロウ材がはみ出してなるフィレット部を備える請求項1に記載の超音波デバイス。
請求項3.上記金属部材は、天面と側面とを有し、
該金属部材は、該天面で上記音響整合部材と接合されており、
該金属部材の天面のうち該音響整合部材と接合されてない非接合面は、接合面の周りにループ状に残されており、
上記フィレット部は、上記非接合面上にループ状に配されている請求項1又は2に記載の超音波デバイス。
請求項4.上記音響整合部材を構成する上記カーボンは、多孔質カーボンである請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
請求項5.上記ロウ材は、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
請求項6.上記ロウ材は、ペースト状のロウ材を用いてなる請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
請求項7.音響インピーダンスを整合するためのカーボンからなる音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、
該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されており、
該音響整合部材と該金属部材との接合部から該ロウ材がはみ出してなるフィレット部を備える超音波デバイスの製造方法であって、
上記音響整合部材の接合面及び上記金属部材の接合面のうちの少なくとも一方にペースト状のロウ材を塗布するロウ材塗布工程と、
塗布された該ロウ材を介して該音響整合部材と該金属部材とを一体化するに際し、該音響整合部材の接合面と該金属部材の接合面とを密着させて、該音響整合部材と該金属部材との間から該ロウ材をはみ出させてはみ出し部を形成する一体化工程と、
該一体化された該音響整合部材及び該金属部材を焼成して、上記フィレット部を得る焼成工程と、を備えることを特徴とする超音波デバイスの製造方法。
請求項8.上記音響整合部材を構成する上記カーボンは、多孔質カーボンである請求項7に記載の超音波デバイスの製造方法。
請求項9.上記ロウ材は、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する請求項7又は8に記載の超音波デバイスの製造方法。
請求項10.金属部材とカーボン部材とをロウ材により接合することを特徴とする接合方法。
請求項11.上記カーボン部材は多孔質カーボンからなる請求項10に記載の接合方法。
請求項12.上記ロウ材は、ペースト状である請求項10又は11に記載の接合方法。
本発明の超音波デバイスによれば、カーボンからなる音響整合部材と金属部材とが無機接合されており、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮できるために、幅広い使用環境で利用できる。
本発明の超音波デバイスにおいて、フィレット部を備える場合は、音響整合部材に割れ及びクラックを生じることなく製造でき、製造効率がよい。また、フィレット部を備えないものに比べてより高い耐久性を発揮できる。
本発明の超音波デバイスにおいて、フィレット部が金属部材の天面の非接合面上にループ状に配されている場合は、治具等を用いることなくフィレット部を形成することができ、効率よく製造できる。また、フィレット部がループ状に配されているために、音響整合部材に対する応力バランスがよく、割れ及びクラックを確実に防止できる。また、更に高い耐久性を発揮できる。
本発明の超音波デバイスにおいて、音響整合部材を構成するカーボンが多孔質カーボンである場合は、ロウ材を用いて接合することによる効果を特に大きく得ることができる。即ち、加熱溶解されたロウ材が多孔質カーボン内へ吸収されて接合される。このため、音響整合部材の接合部は多孔質カーボンと硬化されたロウ材との複合材料となる。従って、十分な機械的強度が得られ難い多孔質カーボンにも関わらず音響整合部材として金属部材に強固に、割れ及びクラックなく無機接合できる。また、多孔質カーボンが特異的に有する低音響インピーダンス特性を、使用環境に左右されることなく、優れた耐久性を持って発揮させることができる。
本発明の超音波デバイスにおいて、ロウ材がHf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する場合は、カーボンからなる音響整合部材と金属部材とを特に確実に接合できる。従って、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮でき、幅広い使用環境で利用できる超音波デバイスとすることができる。
本発明の超音波デバイスにおいて、ペースト状のロウ材を用いてなる場合は、簡便にフィレット部を形成でき、更に、ロウ材の硬化時に音響整合部材に負荷される応力が緩和される。このため、音響整合部材と金属部材とを強固に、割れ及びクラックなく無機接合できる。従って、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮でき、幅広い使用環境で利用できる超音波デバイスとすることができる。
本発明の超音波デバイスの製造方法によれば、カーボンからなる音響整合部材と金属部材とを無機接合できる。このため、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮できる超音波デバイスを確実に得ることができる。
本発明の超音波デバイスの製造方法において、ロウ材をはみ出させてはみ出し部を形成する一体化工程を備える場合は、簡便にフィレット部を形成でき、更に、ロウ材の硬化時に音響整合部材に負荷される応力が緩和できる。従って、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮でき、幅広い使用環境で利用できる超音波デバイスを容易に且つ確実に得ることができる。
本発明の超音波デバイスの製造方法において、音響整合部材を構成するカーボンが多孔質カーボンである場合は、本製造方法を用いる効果が特に得られ易い。即ち、加熱溶解されたロウ材が多孔質カーボン内へ吸収させて接合できる。このため、十分な機械的強度が得られ難い多孔質カーボンにも関わらず音響整合部材として金属部材に強固に、割れ及びクラックなく無機接合できる。
本発明の超音波デバイスの製造方法において、ロウ材がHf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する場合は、カーボンからなる音響整合部材と金属部材とを不具合なく特に確実に接合できる。
本発明の接合方法によれば、カーボン部材を割れ及びクラックなく強固に金属部材と無機接合できる。
本発明の接合方法において、カーボン部材が多孔質カーボンからなる場合は、本接合方法を用いる効果が特に得られ易い。即ち、加熱溶解されたロウ材が多孔質カーボン内へ吸収されて接合される。このため、十分な機械的強度が得られ難い多孔質カーボンにも関わらず金属部材に強固に、割れ及びクラックなく無機接合できる。
本発明の接合方法において、ロウ材がペースト状である場合は、簡便にフィレット部を形成でき、更に、ロウ材の硬化時にカーボン部材に負荷される応力が緩和される。このため、カーボン部材と金属部材とを強固に、割れ及びクラックなく無機接合できる。従って、カーボンが有する高い耐久性をそのまま発揮でき、幅広い使用環境で利用できるカーボンと金属との複合部材を容易に得ることができる。
本発明について、以下詳細に説明する。
[1]超音波デバイス
本発明の超音波デバイスは、音響インピーダンスを整合するための音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、該金属部材と接合された該音響整合部材の接合面は、カーボンからなり、該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されていることを特徴とする。
本発明の超音波デバイス10としては、図1に示す形態が例示される。即ち、音響整合部材11と、金属部材12と、圧電部材13とが、この順に積層された構造を有する。また、音響整合部材11と金属部材12とはロウ材により接合されているため、通常、これらの間にはロウ材からなる接合層14が形成されている。尚、図1には図示されていないが、金属部材12と圧電部材13との間にも各種接合層を備えることができる。
また、各部材間の配置は上記積層構造以外に特に限定されないが、通常、音響整合部材11と圧電部材13とは、金属部材12を介して各々が対応する位置に配置される。特に各々が円柱形状及び/又は円板形状である場合には、同軸(実質的に同軸である)に配置されていることが好ましい。
更に、本発明の超音波デバイスでは、音響整合部材と金属部材との接合部からロウ材がはみ出してなるフィレット部を備えることが好ましい。フィレット部を備えることにより、音響整合部材の接合面であるカーボンに割れ及びクラックを生じることなくより確実に音響整合部材と金属部材とを接合できる。その理由は定かではないが、焼成後のロウ材の硬化時に音響整合部材に負荷される応力が緩和されるためであると考えられる。
また、フィレット部を形成することによる効果は、特に音響整合部材の全体がカーボンからなる場合に大きく得られ、更には、音響整合部材の全体が多孔質カーボンからなる場合に特に効果的である。即ち、音響整合部材がより機械的強度の低い部材からなる場合に効果的である。
上記フィレット部を備える場合に、このフィレット部の形状及び形態等は特に限定されない。例えば、図3に例示するように、音響整合部材11及び金属部材12の両接合面が略同一形状であり、各々が面一で配置される場合には、これらの接合部の外周を取り囲むように形成されたフィレット部15とすることができる。但し、用いるロウ材の種類によっては焼成時の粘度低下により融けたロウ材が下方へ垂れる場合がある。このような場合には、図6に例示するように、垂れを堰き止めるための治具21を用いて上記接合部の外周を取り囲むフィレット部を形成できる。
これに対して、図2、図4及び図5に例示するように、音響整合部材11と接合された金属部材12の天面121のうち音響整合部材11と接合されてない部分である非接合面123が、接合面122の周りにループ状に残されており、このループ状の非接合面123上にループ状に配されたフィレット部15とすることができる。より具体的には、図4及び5に例示するようにステンレス製ケース体(金属部材12)の天面121にフィレット部15を備える場合等が挙げられる。これらの場合は、上記図6に例示する態様におけるように焼成時のロウ材の垂れを防止する治具21を用いる必要がなく、工程的及び作業効率的に好ましい。更に、上記図3に例示する形態のフィレット部15を備える場合に比べて、より強固に音響整合部材11と金属部材12とを接合できる。また、ループ状であるために応力バランスがよく、音響整合部材11の割れ及びクラックをより確実に防止できる。
上記「音響整合部材」は、音響インピーダンスを整合するための部材である。整合とは、超音波を伝達しようとする目的媒体と金属部材との間の音響インピーダンスの整合を意味する。通常、金属部材の音響インピーダンス値より小さく、且つ目的媒体の音響インピーダンス値より大きい音響インピーダンス値を有する。
また、この音響整合部材のうち、金属部材と接合された接合面はカーボンからなる。即ち、少なくとも接合面がカーボンからなればよい。従って、音響整合部材は一部のみがカーボンからなってもよく、全部がカーボンからなってもよい。
更に、音響整合部材を構成するカーボンは、多孔質カーボンであってもよく、緻密カーボンであってもよく、更には、これらが併用されていてもよい。多孔質カーボンとは密度が1.8g/cm以下(通常0.1g/cm以上)であるカーボンを意味し、緻密カーボンとは密度が1.8g/cmを超える(通常3.5g/cm以下)カーボンを意味するものとする。
この音響整合部材を構成するカーボンは、多孔質カーボン及び/又は緻密カーボンから構成できるが、これらのいずれを用いるかは、目的媒体の音響インピーダンスにより適宜のものとすることが好ましい。また、多孔質カーボンを用いる場合、その気孔率は特に限定されず音響整合部材において目的とする音響インピーダンスとなるように調整した多孔質カーボンを用いることが好ましく、特に空気中へ超音波を放射する目的においては、密度が1.0g/cm以下と小さい多孔質カーボンを用いることが好ましい。多孔質カーボンは機械的強度が小さく、無機接合することが難しいカーボンであるが、本発明の構成においては接合することができるものである。
この音響整合部材の形状は特に限定されないが、通常、天面と側面とを備える。この音響整合部材の形状としては、例えば、板状体、ブロック状体(円錐台状など)、柱状体(円柱状など)、更には、円柱の一端に円錐台が延設された形状等が挙げられる。また、各々の形状においてドーナツ形態であってもよい。即ち、ドーナツ形態の板状体、ドーナツ形態のブロック体、貫通孔を有する柱状体、円柱の一端に円錐台が延設された形状であって貫通孔を有する形状等が挙げられる。
上記「金属部材」は、圧電部材から発振された超音波を機械共振させる部材である。この金属部材を構成する金属材料の種類は特に限定されない。この金属材料としては、Al、Cu、Fe、Ni、Co、Cr及びMnから選択される1種又は2種以上の金属を主成分(通常、これらを金属材料全体に50質量%以上含有する)とする金属又は合金を用いることができる。即ち、例えば、ステンレス、コバール(成分例:全体100質量%とした場合に、Niを29質量%及びCoを17質量%含有し、且つSi、Mn、Mg、Zr、C、Al、Tiのうちの少なくとも1種を各1質量%以下、残部がFeからなる合金)、軽金属及び軽金属合金(アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン及びチタン合金など)、モリブデン鋼、クロム鋼、ニッケル合金等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記金属材料のなかでも、音響整合部材の接合面を構成するカーボンと線熱膨張係数がより近い金属材料が好ましい。即ち、例えば、線熱膨張係数3×10−6/℃以下(通常5×10−6/℃以上)である金属材料が好ましい。このような金属材料としては、ステンレス、及びコバール等が挙げられる。これらの金属材料からなる金属部材を用いることで、接合による音響整合部材の割れ及びクラックをより効果的に防止できる。これらの金属材料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのなかではコバールがより好ましい。ステンレスの線熱膨張係数(ステンレスの線熱膨張係数は例えば20×10−6/℃)よりも、更にカーボン(例えば多孔質カーボンの線熱膨張係数は3×10−6/℃)に近い線熱膨張係数(コバールの線熱膨張係数は例えば10×10−6/℃)を有し、接合による音響整合部材にクラックが生じることをより効果的に防止できるからである。
また、この金属部材の形状は特に限定されないが、通常、天面と側面とを備える。この金属部材の形状としては、板状体、ブロック状体、柱状体等が挙げられる。より具体的には、板状体を呈する金属部材としては有天筒状のハウジング、ケース等が挙げられる。また、ブロック状体としては円錐台形状等のボルト締めランジュバン素子における前板体などが挙げられる。更に、柱状体としては円柱形状が挙げられる。更に、その他の形状として円柱の一端に円錐台が延設された形状等が挙げられる。
上記「圧電部材」は、超音波を発振する部材である。この圧電部材は圧電性能を有する材料からなればよく、その種類は特に限定されないが、超音波を十分な出力で発振できる性能を有する材料である必要があり、通常、圧電セラミックスからなる。この圧電セラミックスの種類は特に限定されないが、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、圧電部材は1つの圧電セラミックスのみからなってもよく、2つ以上の圧電セラミックスの積層体からなってもよい。これらは超音波の出力により適宜選択できる。即ち、小さい出力であれば1つの圧電セラミックスのみからなる圧電部材を用いることができる。一方、大きい出力を要する場合には、複層化された圧電セラミックスを用いることができる。尚、複層化された圧電セラミックスにおいては各圧電セラミックス間には電極を介挿できる。
圧電部材の形状については特に限定されず、前記音響整合部材において述べた形状をそのまま適用できる。但し、音響整合部材の形状と圧電部材の形状とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記「積層構造」とは、音響整合部材、金属部材及び圧電部材がこの順に接合して積層された構造である。但し、各部材は、各々を接合するための接合層を介してしてもよいし、接合層を備えず係合手段等を用いて接合されていてもよい。
また、音響整合部材、金属部材及び圧電部材の各々の積層方向(音響整合部材から圧電部材への方向及び圧電部材から音響整合部材への方向)における形状は特に限定されない。例えば、音響整合部材と金属部材と圧電部材とは積層方向にいずれも同じ形状であり、積層構造が柱状であってもよい。また、いずれ1つのみが大きく、側面の一部が突出した積層構造であってもよい。更には、いずれか1つのみが小さく、側面の一部が凹んだ積層構造であってもよい。
上記「ロウ材」は、音響整合部材と金属部材とを接合する接合材である。このロウ材は、液相点が低いものの方が好ましい。割れ及びクラックを効果的に抑制できる。これは焼成後にロウ材が硬化する際に音響整合部材へ負荷される応力を緩和できるからためであると考えられる。この液相点は特に限定されないが、1050℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがより好ましく、950℃以下であることが更に好ましく、800℃以下であることがより更に好ましく、750℃以下であることが特に好ましく、500℃以下であることがより特に好ましく、とりわけ480℃以下であることが好ましい。通常、液相点は120℃以上である。
更に、硬化されたロウ材が、接合材(接合層14)として存在する場合、その硬度はより低いことが好ましく、この硬度は特に限定されないが、例えば、15〜180HV(より好ましくは15〜100HV)であることが好ましい。
また、ロウ材が硬化されてなる接合材の厚さは特に限定されないが5〜70μmであることが好ましい。
ロウ材を構成する金属の種類は特に限定されないが、Ag、Cu、Sn、In、Bi、Sb、Pb、Au、Zn、Ge、Cr、Nb、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu等のうちの少なくとも1種の金属を含有する。
これらのなかでは、Ag、Cu、Sn、In、Bi、Sb、Pb、Au、Zn及びGeのうちの少なくとも1種を主成分(通常、合計でロウ材全体に対して50質量%以上を含有)とすることが好ましい。更に、Cr、Nb、Ti、Zr、V、Mo、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの少なくとも1種の金属を副成分(ロウ材を構成する上記主成分以外の成分)として含有することが好ましい。
上記ロウ材は、活性元素を含有しないロウ材であってもよく、活性剤元素(以下、単に「活性剤」ともいう)を含むロウ材(以下、単に「活性ロウ材」ともいう)であってよい。このうち活性ロウ材とは活性剤の作用によってカーボンとの間の濡れ性が増大されたロウ材である。このためカーボンと強固な界面反応層を形成できる。
この活性ロウ材に含まれる活性剤の種類は特に限定されず、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu)等の金属元素が挙げられる。これらの金属元素の含有形態は特に限定されないが、通常、合金又は単体金属として含有される。これらの活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの活性剤のなかではHf及びTiのうちの少なくとも一方が好ましい。
また、このような活性剤を含有し、更には、液相点が低いロウ材としてはSn−Hf系ロウ材(Cu−Sn−Hf系ロウ材、Ag−Sn−Hf系ロウ材、Cu−Sn−Ag−Hf系ロウ材、Au−Sn−Hf系ロウ材など)、Cu−Ag−Ti系ロウ材、Cu−Ni−Ti系ロウ材、Ni−Ti系ロウ材、Cu−Ti系ロウ材、及び、Pb−Sn系ロウ材等が挙げられる。これらのロウ材は、更に、各々In、Al、Sn及びSi等の元素を含有できる。即ち、例えば、Cu−Sn−Hf系ロウ材として、Cu−Sn−Hf−Biロウ材、Cu−Sn−Hf−Inロウ材等が挙げられる。また、Cu−Ag−Ti系ロウ材として、Cu−Ag−Ti−Alロウ材、Cu−Ag−Ti−Snロウ材及びCu−Ag−Ti−Inロウ材等が挙げられる。更に、Cu−Ti系ロウ材として、Cu−Ti−Al−Siロウ材が挙げられる。これらのロウ材は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、上記ロウ材の各元素の含有割合は特に限定されないが、Sn−Hf系ロウ材においては、ロウ材全体を100質量%とした場合に、Snを39〜98.995質量%、Hfを1〜8質量%含有することができる。更に、Cu、Ag、Au、In、Al、Bi、Sb、Pb、Zn及びGeのうちの少なくとも1種を含有する場合には、この成分は合計で0.005〜40質量%とすることができる。即ち、例えば、Cu−Sn−Hf系ロウ材においては、ロウ材全体を100質量%とした場合に、Cuを0.005〜40質量%、Snを39〜98.995質量%、Hfを1〜8質量%含有することができる。更に、In、Al、Bi、Ag、Sb、Pb、Au、Zn及びGeのうちの少なくとも1種を含有する場合には、この成分は合計で0.5〜15.0質量%とすることができる。
また、Cu−Ag−Ti系ロウ材においては、ロウ材全体を100質量%とした場合に、Cuを4.5〜39.5質量%、Agを60.0〜95.0質量%、Tiを0.5〜15.0質量%含有することができる。更に、In、Al、Bi、Ag、Sb、Pb、Au、Zn、Ge及びSnのうちの少なくとも1種を含有する場合には、この成分は合計で0.5〜15.0質量%とすることができる。
より具体的には、(1)Cuを35.0〜35.5質量%、Agを62.5〜63.5質量%、Tiを1.0〜2.5質量%含有するCu−Ag−Tiロウ材、(2)Cuを26.0〜28.0質量%、Agを68.0〜69.5質量%、Tiを4.0〜5.5質量%含有するCu−Ag−Tiロウ材、(3)Cuを34.0〜34.5質量%、Agを62.5〜63.5質量%、Tiを1.0〜2.5質量%、Snを0.5〜1.5質量%含有するCu−Ag−Ti−Snロウ材、(4)Cuを27.0〜27.5質量%、Agを58.5〜59.5質量%、Tiを1.0〜2.0質量%、Inを12.0〜13.0質量%含有するCu−Ag−Ti−Inロウ材、(5)Cuを4.5〜5.5質量%、Agを92.0〜93.5質量%、Tiを1.0〜1.5質量%、Alを0.5〜1.5質量%含有するCu−Ag−Ti−Alロウ材、(6)Cuを92.0〜93.5質量%、Tiを2.0〜3.0質量%、Alを1.5〜2.5質量%、Siを2.5〜3.5質量%含有するCu−Ti−Al−Siロウ材等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、Cu−Ti−Ni系ロウ材においては、ロウ材全体を100質量%とした場合に、Cuを10.0〜20.0質量%、Tiを60.0〜80.0質量%、Niを9.5〜20.0質量%含有することができる。更に、In、Al及びSnのうちの少なくとも1種を含有する場合には、この成分は合計で0.5〜15.0質量%とすることできる。より具体的には、(7)Cuを14.0〜16.0質量%、Tiを69.0〜71.0質量%、Niを14.0〜16.0質量%含有するCu−Ti−Niロウ材等が挙げられる。
更に、Ti−Ni系ロウ材においては、ロウ材全体を100質量%とした場合に、Tiを20.0〜80.0質量%、Niを20.0〜80.0質量%含有することができる。更に、In、Al及びSnのうちの少なくとも1種を含有する場合には、この成分は合計で0.5〜15.0質量%とすることができる。より具体的には、(8)Tiを49.0〜51.0質量%、Niを49.0〜51.0質量%含有するTi−Niロウ材、(9)Tiを66.0〜68.0質量%、Niを32.0〜34.0質量%含有するTi−Niロウ材等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのロウ材を用いるときの形態は特に限定されない。このロウ材の形態としては、例えば、ペースト状、板状、シート状、ひも状、及び粉末状等の形態が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの形態のなかではペースト状が好ましい。ペースト状のロウ材を用いることにより、フィレット部を確実に形成でき、より高い接合強度を得ることができ、更には、音響整合部材の割れ及びクラック等を防止できる。尚、ペースト状のロウ材の粘度は特に限定されない。また、上記のうち板状のロウ材を用いる場合には、音響整合部材の接合面の面積よりも少なくとも5%以上大きい板状体を用いることが好ましい。これにより更に確実にフィレット部を形成できる。
尚、音響整合部材と金属部材との間におけるロウ材からなる接合層は、存在してもよく、存在しなくてもよい。即ち、実質的に接合層として存在せず、音響整合部材及び/又は金属部材の一部と反応された反応層(複合材料)となっていてもよい。また、これらの部材と反応されずに残存されたロウ材のみからなる層(接合部材層)が形成されていてもよい。更に、ロウ材として又はロウ材と共に、はんだを用いることもできる。
[2]超音波デバイスの製造方法
本発明の超音波デバイスの製造方法は、音響インピーダンスを整合するためのカーボンからなる音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されており、該音響整合部材と該金属部材との接合部から該ロウ材がはみ出してなるフィレット部を備える超音波デバイスの製造方法であって、
上記金属部材の接合面及び上記音響整合部材の接合面のうちの少なくとも一方にペースト状のロウ材を塗布するロウ材塗布工程と、
塗布された該ロウ材を介して該金属部材と該音響整合部材とを一体化するに際し、該音響整合部材の接合面と該金属部材の接合面とを密着させて、該音響整合部材と該金属部材との間から該ロウ材をはみ出させる一体化工程と、
該一体化された該音響整合部材及び該金属部材を焼成して、上記フィレット部を得る焼成工程と、を備えることを特徴とする。
即ち、本発明の超音波デバイスの製造方法は、前記本発明の超音波デバイスであって、フィレット部を有する超音波デバイスを製造する方法である。この製造方法では、ロウ材塗布工程と、一体化工程と、焼成工程と、を備える。
上記「ロウ材塗布工程」は、音響整合部材の接合面及び金属部材の接合面のうちの少なくとも一方にペースト状のロウ材を塗布する工程である。
この工程で用いるロウ材については、前記本発明の超音波デバイスで述べたロウ材のうちペースト状のものをそのまま適用できる。ペースト状のロウ材を用いた場合には、特に気孔率が大きいような機械的強度が小さい音響整合部材を用いた場合であっても、音響整合部材を割れ及びクラックなく金属部材と接合できる。これは固形状のロウ材に比べて融点が低く、音響整合部材(カーボンからなるために、金属部材及びロウ材に対してより線熱膨張係数が小さい)へ応力が負荷されることをより効果的に抑制できているためであると考えられる。
また、このロウ材においては、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有されることが好ましいことも前記本発明の超音波デバイスにおいて述べたロウ材におけると同様である。
上記「音響整合部材の接合面」とは、金属部材と接合されることとなる面である。同様に「金属部材の接合面」とは、音響整合部材と接合されることとなる面である。これらの音響整合部材及び金属部材の各々の形状は特に限定されないが、通常、音響整合部材は天面、側面及び底面を有し、金属部材は天面及び側面を少なくとも有する。そして、音響整合部材の底面の少なくとも一部が上記接合面となり、金属部材の天面の少なくとも一部が上記接合面となって、各々が接合される。尚、金属部材は、音響整合部材と同様に底面を備えてもよく、また、図5に示すような底面(底板16)を別体に備える有天筒状のケース体(金属部材12)とすることができる。
上記「塗布」は、前記ペースト状のロウ材を上記いずれかの接合面へ塗着することである。この塗布の方法は特に限定されず、印刷器具による印刷塗布、シリンジ、へら、刷毛及び筆等の塗布用具を用いた塗布、ディップコート、吹き付け塗布等の方法が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、塗布範囲及び塗布厚み等は特に限定されないが、上記フィレット部を形成できる厚みをもって塗布することが好ましい。音響整合部材の大きさによるが、例えば、10μm以上(通常1mm以下)の厚みで塗布することが好ましい。これにより、後述する一体化工程においてより確実にロウ材をはみ出させることができる。即ち、焼成されてフィレット部となるはみ出し部をより確実に形成できる。
この塗布は、上述のように音響整合部材の接合面に行ってもよく、金属部材の接合面に行ってもよい。また、後述するように、音響整合部材の接合面の方が金属部材の天面よりも小さくなる場合にも、いずれの接合面に塗布を行ってもよいが、作業効率上、金属部材の接合面(天面の一部)に塗布することが好ましい。
上記「一体化工程」は、塗布されたロウ材を介して音響整合部材と金属部材とを一体化するに際し、音響整合部材の接合面と金属部材の接合面とを密着させて、音響整合部材と金属部材との間からロウ材をはみ出させる工程である。
尚、以下では、音響整合部材と金属部材との間からはみ出されたロウ材、即ち、焼成されてフィレット部となる部分を、単に「はみ出し部」ともいう。
上記「密着」させる際には、通常、音響整合部材及び金属部材のうちの少なくとも一方を他方へ対して押圧して密着させる。これによってより確実にはロウ材を音響整合部材と金属部材との間からはみ出させることができる。
また、はみ出させるロウ材の量は特に限定されないが、通常、音響整合部材の大きさにより適宜とすることが好ましい。即ち、例えば、音響整合部材が板状である場合には、音響整合部材の厚さの20%以上の高さとなるはみ出し部を形成することが好ましい。はみ出し部の高さが20%以上であれば、接合強度をより効果的に向上させることができるフィレット部を形成できる。一方、フィレット部の高さは音響整合部材の厚さと同じであってもよいが、50%以下が好ましい。はみ出し部の高さが50%以下であれば、フィレット部を備えることによる効果は十分に得ながら、ロウ材の使用量を抑えることができる。
上記「焼成工程」は、一体化された音響整合部材及び金属部材を焼成してフィレット部を得る工程である。この焼成工程における焼成条件は特に限定されず、ロウ材の液相点等の各種特性により適宜とすることが好ましいが、通常、焼成温度は、500〜1200℃である。また、焼成雰囲気は133×10−4Pa(1×10−4torr)以上の真空又は不活性ガス雰囲気(Ar等)が好ましい。
また、本発明の製造方法では、音響整合部材を構成するカーボンとして、多孔質カーボンを用いることができる。この多孔質カーボンについては、前記本発明の超音波デバイスにおける多孔質カーボンをそのまま適用できる。この多孔質カーボンを用いた場合には、緻密なカーボンを用いた場合に比べて更に確実な(割れ及びクラックなく、強固に)接合を行うことができることも同様である。多孔質カーボンを用いた場合は、焼成時に溶解されたロウ材が、多孔質カーボンの空隙内へ侵入し、一部のロウ材が多孔質カーボンに吸収されるためである考えられる。
更に、本発明の製造方法では、塗布工程、一体化工程及び焼成工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、音響整合部材の接合面を粗面化処理する粗面化工程が挙げられる。粗面化処理とは、音響整合部材の接合面の表面粗度を大きくする処理である。これによりロウ材が融解された際に、音響整合部材との接触面積をより大きくでき、得られる接合面の強度を更に向上させることができる。特に多孔質カーボンからなる音響整合部材を用いる場合には、この粗面化処理を施すことにより、融解されたロウ材の空隙内へ侵入を誘発することができる。この粗面化処理は、荒研磨処理及び化学浸食処理等により行うことができる。この粗面化工程は、一体化工程の前、又は塗布工程の前に行うことができる。
[3]接合方法
本発明の接合方法は、金属部材とカーボン部材とをロウ材により接合することを特徴とする。
本発明における金属部材としては、前記本発明の超音波デバイスにおける金属部材をそのまま適用できる。また、本発明のカーボン部材としては、前記本発明の超音波デバイスにおける音響整合部材をそのまま適用できる。更に、このカーボン部材が多孔質カーボンからなる場合により効果が得られ易いことも同様である。また、本発明のロウ材としては、前記本発明の超音波デバイスにおけるロウ材をそのまま適用できる。更に、このロウ材がペースト状であることが好ましいことも同様である。
以下、図面に基づいて実施例により本発明をより具体的に説明する。
図5に示す超音波デバイス10を製造した。図5に示す超音波デバイス10は、天面121及び側面122を有する金属部材である有天筒状のステンレス製ケース体12を備える。また、ステンレス製ケース体12の天面121の内側面には圧電部材13が接合されている。更に、ステンレス製ケース体12の内壁面と圧電部材13との間隙にはモールド樹脂17が充填されている。一方、ステンレス製ケース体12の天面121の外側面には多孔質カーボンからなる音響整合層11が接合されている。更に、この音響整合部材11とステンレス製ケース体12とはロウ材によりフィレット部15が形成されるように接合されている。また、ステンレス製ケース体12の天面121には音響整合部材12と接合されてない非接合面が接合面の周りにループ状に残されるように接合されており、この非接合面上にフィレット部15がループ状に配されている。また、ステンレス製ケース体12は、電極18及び19を備える底板16と溶接されて内部が密封された構造となっている。また、ステンレス製ケース体12には、その外側面を取り囲む制振用幅広リング20が設けられている。
尚、電極18及び19はいずれも底板16を表裏に貫通して設けられている。また、このうち電極19の一端は圧電部材13と電気的に接続され、更に、底板16とは貫通部において絶縁樹脂22を介して電気的に絶縁されている。一方、電極18は底板16と貫通部を通じて電気的に接続されている。
[実施例1]
音響整合部材として、密度0.3g/cmであり円板状の多孔質カーボン(線熱膨張係数3.0×10−6/℃)を用いた。この音響整合部材は、直径11.8mm、厚さ2.6mmである。
金属部材として、天面及び側面を有する有天筒状のステンレス製ケース体(線熱膨張係数20×10−6/℃のステンレス)を用いた。この金属部材は、厚さが直径13.0mm、高さ6.0mm、厚さ0.3mmである。
圧電部材として、円板状のチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスを用いた。この圧電部材は、直径9.4mm、厚さ3.0mmである。
ロウ材として、液相点が715℃のWESGO社製の活性ロウ材を用いた。形態は板状体とペースト状体とを各々別々に用いた。また、板状体は直径13mmの円板状にして用いた。
(1)塗布工程及び一体化工程
有天筒状のステンレス製ケース体12の天面121の外側面の中心部に、ペースト状の上記活性ロウ材を厚さ0.02mm、直径13mmに塗布した。
その後、この塗布された活性ロウ材上に音響整合部材11を配置して、音響整合部材11をケース体12に対して押圧した。その結果、音響整合部材11とケース体12との間からはみ出された活性ロウ材からなるはみ出し部(フィレット部15となる)がフィレット状となった。このはみ出し部は、音響整合部材13との接合面の周りにループ状に残された非接合面上にループ状に配された。
(2)焼成工程
次いで、これまでに得られた複合積層体を焼成炉内で一体的に焼成した。焼成温度は670℃を最高温度とし、真空焼成した。その結果、高さ0.65mmのフィレット部が形成された超音波デバイス10が得られた。得られた超音波デバイス10において音響整合部材11には、割れ及びクラックは認められなかった。
(3)焼成工程後の各種工程
ケース体12の天面121の内側面の中心に、圧電部材13を接合した。次いで、圧電部材13とケース体12の内側面その間にモールド樹脂17を充填して硬化させた。その後、ケース体12の底面となる電極(18及び19)付き底板16の一方の電極19と圧電部材13の底面とをリード線を介してハンダ接合した。次いで、ケース体12に電極付き底板16を当接させてケース体12と底板16とを溶接した。その後、ケース体12の側面に、側面を取り囲む制振用幅広リング20を圧入した(幅広リング20は超音波デバイス10における不要な振動を抑制する制振部材である)。
[実施例2]
音響整合部材として、上記実施例1と同じ多孔質カーボン。
金属部材として、天面及び側面を有する有天筒状のコバール(線熱膨張係数10×10−6/℃)製ケース体を用いた。この金属部材は、直径13.0mm、高さ6.0mm、厚さ0.3mmである。
圧電部材として、円板状のチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスを用いた。この圧電部材は、直径9.4mm、厚さ3.0mmである。
ロウ材として、液相点が505℃のCu−Sn−Hf系活性ロウ材(ロウ材全体を100質量%とした際にCuを9.5質量%、Snを85.5質量%、Hfを5質量%含有する)を用いた。形態は板状体とペースト状体とを各々別々に用いた。また、板状体は直径13mmの円板状にして用いた。
上記実施例1における(1)と同様にして、上記活性ロウ材を厚さ0.03mm、直径12.5mmに塗布した。その後、上記活性ロウ材をはみ出させながら、活性ロウ材を介して音響整合部材と金属部材とを一体化させた。次いで、これまでに得られた複合積層体を焼成炉内で一体的に焼成した。焼成温度は700℃を最高温度とし、真空焼成した。その結果、高さ0.2mmのフィレット部が形成された超音波デバイス10が得られた。得られた超音波デバイス10において音響整合部材11には、割れ及びクラックは認められなかった。その後、上記実施例1における(3)と同様にして焼成工程後の各種工程を行った。
尚、本発明においては、上記の実施例1〜実施例3に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
本発明の超音波デバイスは、超音波使用分野において広く利用される。即ち、例えば、流量測定{天然ガス及びLPガスなどのガス流量測定、気体(水素ガスなど)流量測定等}、距離測定、速度測定、非破壊検査(超音波探傷など)、洗浄及び水中音波探知(魚群探知など)等の用途において有用である。
本発明の超音波デバイスに形成される積層構造の一例を模式的に示す説明図である。 本発明の超音波デバイスに形成される積層構造の他例を模式的に示す説明図である。 本発明の超音波デバイスに形成される積層構造の更に他例を模式的に示す説明図である。 図3に示す超音波デバイスの斜視図を示す模式的な断面図である。 本発明の超音波デバイスの一例を示す模式的な断面図である。 図3に示す態様のフィレット部を形成する方法を説明する模式的な断面図である。
符号の説明
10;超音波デバイス、11;音響整合部材、12;金属部材、121;天面、122;側面、13;圧電部材、14;接合層、15;フィレット部、16;底板、17;モールド樹脂、18及び19;電極、20;制振用幅広リング、21;フィレット部形成用の治具、22;絶縁樹脂。

Claims (12)

  1. 音響インピーダンスを整合するためのカーボンからなる音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、
    該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されていることを特徴とする超音波デバイス。
  2. 上記音響整合部材と上記金属部材との接合部から上記ロウ材がはみ出してなるフィレット部を備える請求項1に記載の超音波デバイス。
  3. 上記金属部材は、天面と側面とを有し、
    該金属部材は、該天面で上記音響整合部材と接合されており、
    該金属部材の天面のうち該音響整合部材と接合されてない非接合面は、接合面の周りにループ状に残されており、
    上記フィレット部は、上記非接合面上にループ状に配されている請求項1又は2に記載の超音波デバイス。
  4. 上記音響整合部材を構成する上記カーボンは、多孔質カーボンである請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
  5. 上記ロウ材は、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
  6. 上記ロウ材は、ペースト状のロウ材を用いてなる請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の超音波デバイス。
  7. 音響インピーダンスを整合するためのカーボンからなる音響整合部材と、金属部材と、超音波を発振する圧電部材と、がこの順に接合された積層構造を有し、
    該音響整合部材と該金属部材とは、ロウ材により接合されており、
    該音響整合部材と該金属部材との接合部から該ロウ材がはみ出してなるフィレット部を備える超音波デバイスの製造方法であって、
    上記音響整合部材の接合面及び上記金属部材の接合面のうちの少なくとも一方にペースト状のロウ材を塗布するロウ材塗布工程と、
    塗布された該ロウ材を介して該音響整合部材と該金属部材とを一体化するに際し、該音響整合部材の接合面と該金属部材の接合面とを密着させて、該音響整合部材と該金属部材との間から該ロウ材をはみ出させる一体化工程と、
    該一体化された該音響整合部材及び該金属部材を焼成して、上記フィレット部を得る焼成工程と、を備えることを特徴とする超音波デバイスの製造方法。
  8. 上記音響整合部材を構成する上記カーボンは、多孔質カーボンである請求項7に記載の超音波デバイスの製造方法。
  9. 上記ロウ材は、Hf、Ti、Zr、V、Mo、Cr、Nb及び稀土類元素から選択される少なくとも1種の活性剤元素を含有する請求項7又は8に記載の超音波デバイスの製造方法。
  10. 金属部材とカーボン部材とをロウ材により接合することを特徴とする接合方法。
  11. 上記カーボン部材は多孔質カーボンからなる請求項10に記載の接合方法。
  12. 上記ロウ材は、ペースト状である請求項10又は11に記載の接合方法。
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