JP2007294219A - アルカリ蓄電池およびその製造方法ならびに組電池装置 - Google Patents

アルカリ蓄電池およびその製造方法ならびに組電池装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 正極と負極の対向面積を増大させるよにしたアルカリ蓄電池であっても、アシスト出力および回生出力を両立させ、高温サイクル寿命、高温貯蔵特性が向上したアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】 本発明のアルカリ蓄電池は、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極10の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上であるとともに、水素吸蔵合金は合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、かつ少なくとも希土類元素、ニッケル、マグネシウム、アルミニウムを含有し、水素吸蔵合金の40℃での水素吸蔵量(H/M(原子比))が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.02MPa以上で0.15MPa以下で、放出水素平衡圧(Pd)とのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が0.05MPa以上で0.15MPa以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電動自転車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(PEV:Pure Electric Vehicle)等の充放電出力特性(アシスト出力、回生出力)、高温サイクル特性、高温貯蔵特性が要求される用途に適したアルカリ蓄電池およびその製造方法ならびにこのアルカリ蓄電池を用いた組電池装置に関する。
近年、二次電池(蓄電池)の用途が拡大して、携帯電話、ノートパソコン、電動工具、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)など広範囲にわたって用いられるようになった。このうち、特に、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)などの高出力が求められる機器の電源用としては、従来の範囲を遙かに超えた高出力が求められるようになるとともに、アシスト出力特性(エンジンアシストに必要な放電特性)だけでなく、回生出力特性(ブレーキなどによるエネルギー回収に必要な充電特性)と両立させることが求められるようになった。
一般的に、水素吸蔵合金は水素吸蔵時と水素放出時に水素吸蔵合金の水素化に伴う体積変化がもたらす歪みにより、吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が生じることとなる。このため、電池特性において、吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdのヒステリシスが大きいと不可逆的なエネルギー損失をもたらすこととなる。このことから、従来より、吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdのヒステリシスの小さい水素吸蔵合金が提案されている。
しかしながら、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)等の用途では、吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdのヒステリシスが小さい水素吸蔵合金(=Pa≒Pd)を用いた場合、水素平衡圧が高い水素吸蔵合金を用いると、放電特性(アシスト出力)を向上させることは可能である反面、充電特性(回生出力)が低下するという問題を生じた。
一方、水素平衡圧が低い水素吸蔵合金を用いると、放電特性(アシスト出力)が低下するという問題を生じる反面、充電特性(回生出力)が向上することとなる。このように、放電特性(アシスト出力)と回生特性(回生出力)の両特性を満足させることは極めて困難なことであった。また、正極と負極の対向面積を増大させることにより高出力化を達成することは、例えば、特許文献1(特開2000−82491号公報)などに示されている。
特開2000−82491号公報
ところが、上述した特許文献1に示されるように、正極と負極の対向面積を増大させるようにすると、必然的に正・負極間の距離が短くなる。このため、このように正・負極間距離が短い電池を高温環境下に放置すると、自己放電による容量低下(電圧低下)を引き起こすとともに、高温貯蔵特性の低下をもたらす問題があった。この問題は、放出水素平衡圧Pdを低減することにより改善することが可能である。ところが、放出水素平衡圧Pdを低減させると、逆に、高温サイクル特性が低下するという新たな問題が生じるようになった。これは、放出水素平衡圧Pdを低減させると、水素乖離が困難になり、リコンビ反応(正極より発生した酸素がセパレータを通過して負極に到達し、充電状態にある負極の水素吸蔵合金に吸蔵された水素で還元される反応)が抑制されるようになる。この結果、水素吸蔵合金の酸化が加速されるようになって、寿命低下すると考えられる。
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであって、正極と負極の対向面積を増大させるよにしたアルカリ蓄電池であっても、水素吸蔵合金の吸蔵水素平衡圧Pa、放出水素平衡圧Pdを最適化することにより、放電特性(アシスト出力)および回生特性(回生出力)の両特性を両立させ、更に、高温サイクル寿命、高温貯蔵特性を向上させることが可能なアルカリ蓄電池と、その製造方法およびこのアルカリ蓄電池を用いた組電池装置を提供することを目的とする。
本発明のアルカリ蓄電池は、コバルト化合物が含有された水酸化ニッケルを正極活物質とするニッケル正極と、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極と、アルカリ電解液からなる発電要素を外装缶内に備えている。そして、上記目的を達成するため、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上であるとともに、水素吸蔵合金は合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、かつ少なくとも希土類元素、ニッケル、マグネシウム、アルミニウムを含有し、水素吸蔵合金の40℃での水素吸蔵量(H/M(原子比))が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.02MPa以上で0.15MPa以下(0.02MPa≦Pa≦0.15MPa)で、放出水素平衡圧(Pd)とのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が0.05MPa以上で0.15MPa以下(0.05MPa≦Ln(Pa/Pd)≦0.15MPa)であることを特徴とする。
一般的に、アルカリ蓄電池に用いられている水素吸蔵合金は、CaCu5型結晶構造を主結晶相とするAB5型希土類系合金のNiの一部を、Co、Mn、Alなどの小さい元素で置換したものが用いられている。しかしながら、これらの水素吸蔵合金は吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdとのヒステリシスが小さい。このため、コバルト化合物が含有されている水酸化ニッケルを正極として用いた場合、高温貯蔵時に、アルカリ電解液に溶出した水素吸蔵合金のNi置換元素であるMnは、正極還元反応を促進し、オキシ水酸化コバルトを水酸化コバルトおよび金属コバルトに還元し、電池電圧が0V付近に低下する。
ところが、水素吸蔵合金の合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、少なくとも希土類元素、Ni、Mg、Alを含有する水素吸蔵合金は水素との安定性が高い。このため、水素放出速度が小さいが故に、放出水素平衡圧Pdを吸蔵水素平衡圧Paよりある一定量下げることが可能となる。ここで、放出水素平衡圧Pdを低減させるとその分、平衡電位が低下し、放電特性(アシスト出力)が低下する。ところが、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上であると、放電特性(アシスト出力)を向上させることができる。これは、平衡圧低下による平衡電位低下よりも、水素吸蔵合金の反応表面積が増大するため反応抵抗低減効果が大きいためと考えられる。
さらに、合金活性度が高い合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、少なくとも希土類元素、Ni、Mg、Alを含有する水素吸蔵合金を用いることで、充電特性(回生出力)は、水素吸蔵合金の40℃での水素吸蔵量(H/M(原子比))が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.02MPa以上で0.15MPa以下(0.02MPa≦Pa≦0.15MPa)で、放出水素平衡圧(Pd)とのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が0.05MPa以上で0.15MPa以下(0.05MPa≦Ln(Pa/Pd)≦0.15MPa)であると、充電時の合金活性度向上による反応抵抗低減効果が支配的になって、充電特性(回生出力)も向上すると考えられる。
また、高温雰囲気下でのサイクル特性が向上する理由として以下のことが考えられる。即ち、ある程度ヒステリシスを設けて水素放出速度を低減させることで充電時の水素乖離を抑制させるとともに、所定の吸蔵水素平衡圧Paとすることで合金表面水素濃度を増加することが可能となる。これにより、正極から発生する酸素による合金酸化を抑制することが可能となり、高温サイクル特性を向上させると考えられる。
高温放置時の貯蔵特性が向上する理由としては、上述のように放出水素平衡圧Pdを吸蔵水素平衡圧Paより所定量下げることで、高温放置時の温度上昇に伴う水素乖離を低減させ、正極の還元反応を抑制することが可能となり、正極の自己放電反応による容量低下を抑制し、高温貯蔵特性を向上させると考えられる。この場合、水素吸蔵合金は希土類以外の標準電極電位が−0.8Vよりも卑な遷移元素を含まないのが望ましい。これは、希土類以外の標準電極電位が−0.8Vよりも卑な遷移元素を含むと、負極から溶出した当該元素は正極にて価数変化を伴って酸化され、正極還元を促進して、高温貯蔵特性を低下させるためである。
この効果は、初期充放電による活性化(コンディショニング)後の水素吸蔵合金負極に形成されている放電リザーブH(Ah)の公称電池容量X(Ah)に対する割合H/X(%)が30%以上、50%以下(30%≦H/X≦50%)であるときに、その効果が発揮される。これは、放電リザーブの割合(H/X)が50%よりも大きいと、放電リザーブの電気量として蓄えられている水素が発生し、正極の還元を促進し、高温貯蔵特性を低下させる。一方、放電リザーブの割合(H/X)が30%未満であると、水素吸蔵合金の活性不足により放電特性(アシスト出力)の低下をもたらすようになるためである。
上述のようにコンディショニング後に、アルカリ蓄電池の公称電池容量(X)に対する水素吸蔵合金負極に形成されている放電リザーブ量(H)の割合(H/X)を30〜50%にする手法は、例えば、アルカリ電解液注液後、電池電圧が放置時ピーク電圧の90%に達する前に、このアルカリ蓄電池を充放電させて活性化させることが望ましい。これは、電極表面に電解液が均一配分されるまで放置することで、対向面積増大化に伴う液分散不均一部への液拡散を可能とし、その後、充放電することで、適正な合金活性化が可能となると考えられるからである。ところが、電池電圧が放置時ピーク電圧の90%を超えるまで上昇させると、水素吸蔵合金の酸化が進行して、放電特性(アシスト出力)の低下をもたらすようになるため、好ましくない。
本発明のアルカリ蓄電池のように電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)等の用途で使用される場合は、一般的に組電池にして用いられる。その際、充電後、所定時間を越えて休止する場合は、所定量を放電させた後に放置状態にするように制御するのが望ましい。これは、本発明のアルカリ蓄電池の水素吸蔵合金はヒステリシス(Ln(Pa/Pd))を設けているため、充電後放置する場合と放電後放置する場合では水素平衡圧が異なり、放電後放置することで水素乖離を低減させて、貯蔵特性を向上させることができるからである。
また、組電池においても、高温放置時の劣化モードは単電池と同様である。このことより、高い貯蔵特性を示すが、その反面、正極が長時間電解液に晒されることで、正極のCoなどが溶解し、正極の恒久劣化が生じて、回復率が低下する恐れがある。そこで、少なくとも満充電電圧の80%に達すると充電されるように制御するようにして用いることが望ましい。
本発明においては、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上という、正極と負極の対向面積を増大させた電池において、水素吸蔵合金の吸蔵水素平衡圧Paと放出水素平衡圧Pdを最適化することにより、放電特性(アシスト出力)、充電特性(回生出力)のみならず、高温サイクル特性および高温貯蔵特性を向上させることが可能となる。また、このような電池を組電池装置として用いることにより、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)等の用途で使用することが可能となる。
ついで、本発明の実施の形態を以下の図1〜図9に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。図2は電解液注液後の経過時間(hr)に対する電池電圧(V)の関係を示すグラフである。図3は公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/X(cm2/Ah)とアシスト出力(A)の関係を示すグラフである。
図4は公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/X(cm2/Ah)と回生出力(A)の関係を示すグラフである。図5は放置後ピーク電圧に対する活性化開始電圧(%)と、アシスト出力(A)および放電リザーブ(%)の関係を示すグラフである。図6はサイクル数とアシスト出力初期比との関係(高温サイクル特性)を示すグラフである。図7は高温貯蔵期間(月)と電池電圧との関係(高温貯蔵特性)を示すグラフである。図8は組電池装置を示すブロック図である。図9は、図8に示すマイクロコンピュータの処理動作を示すフローチャートである。
1.水素吸蔵合金
Ln(Yを含む希土類元素)、Mg、Ni、Co、Al、Mnを所定のモル比の割合で混合した後、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で1100℃で10時間の熱処理を行って合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この後、得られた水素吸蔵合金のインゴットを不活性雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400メッシュ〜200メッシュの間に残る水素吸蔵合金粉末を選別した。レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定したところ、質量積分50%にあたる平均粒径は25μmであった。
この場合、組成式がLn0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金aとし、Ln0.87Mg0.13Ni3.4Co0.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金bとし、Ln0.89Mg0.11Ni3.4Co0.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金cとした。また、Ln0.83Mg0.17Ni3.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金dとし、Ln0.87Mg0.13Ni3.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金eとした。さらに、LnNi4.3Co0.6Al0.3Mn0.2で表されるものを水素吸蔵合金fとした。
なお、これらの水素吸蔵合金a〜eは合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、水素吸蔵合金fはCaCu5型結晶構造を主結晶相とするAB5型希土類系元素である。そして、これらの水素吸蔵合金a〜fの吸蔵水素平衡圧Pa(MPa)および放出水素平衡圧(Pd)とのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))を求めると下記の表1に示すような結果となった。この場合、40℃の雰囲気下で、水素吸蔵量(H/M)が0.5のときの解離圧を吸蔵水素平衡圧Pa(MPa)として、JIS H7201(1991)「水素吸蔵合金の圧力−組成等温線(PCT曲線)の測定方法」に基づいて測定した。
Figure 2007294219
上記表7の結果から明らかなように、これらの水素吸蔵合金a〜fは、40℃での水素吸蔵量(H/M(原子比))が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.02MPa以上で0.15MPa以下(0.02MPa≦Pa≦0.15MPa)であることが分かる。この場合、合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、少なくとも希土類元素、Ni,Mg,Alを含有する水素吸蔵合金a〜eのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))は、0.05MPa〜0.21MPaで、CaCu5型結晶構造を主結晶相とする水素吸蔵合金fのヒステリシスの0.01MPaより大きいことが分かる。
2.水素吸蔵負極
上述のようにして得られた水素吸蔵合金粉末(平均粒径は25μm)100質量部に対して、非水溶性結着剤としてのSBR(スチレンブタジエンラテックス)0.5質量部と適量の水(あるいは純水)とともに添加して混練混合し、負極活物質スラリーをそれぞれ作製した。ついで、これらの各負極活物質スラリーをパンチングメタル基板11の両面に塗布して負極活物質層12を形成した。その後、室温で乾燥させた後、厚みが0.25mmで、充填密度が5.0g/cm3になるように圧延し、表面積Y(cm2)が720cm2になるように切断して水素吸蔵合金負極10(a1,b1,c1,d1,e1,f1)をそれぞれ作製した。
ここで、水素吸蔵合金aを用いたものを負極a1とした。また、水素吸蔵合金bを用いたものを負極b1とし、水素吸蔵合金cを用いたものを負極c1とし、水素吸蔵合金dを用いたものを負極d1とし、水素吸蔵合金eを用いたものを負極e1とし、水素吸蔵合金fを用いたものを負極f1とした。
3.ニッケル正極
多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板21を比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液に浸漬して、多孔性ニッケル焼結基板21の細孔内にニッケル塩およびコバルト塩を保持させた。この後、この多孔性ニッケル焼結基板21を25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩およびコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトに転換させた。
ついで、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥を行って、多孔性ニッケル焼結基板21の細孔内に水酸化ニッケルを主成分とする活物質22を充填した。このような活物質充填操作を所定回数(例えば6回)繰り返して、多孔性焼結基板21の細孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質22の充填密度が2.5g/cm3になるように充填した。この後、室温で乾燥させた後、所定の寸法に切断してニッケル正極20を作製した。
4.ニッケル−水素蓄電池
ついで、ポリプロピレン製不織布からなるセパレータ30を用意した。この後、上述のようにして作製した水素吸蔵合金負極10とニッケル正極20とを用い、これらの間にセパレータ30を介在させて、これらを渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。得られた渦巻状電極群の下部に負極集電体13を抵抗溶接するとともに、渦巻状電極群の上部に正極集電体24を抵抗溶接して渦巻状電極体をそれぞれ作製した。ついで、鉄にニッケルメッキを施した有底円筒形の金属外装缶40内に渦巻状電極体を挿入した後、負極集電体13と金属外装缶40の底部をスポット溶接した。
一方、正極キャップ51と蓋体52とからなる封口体50を用意し、正極集電体24に設けられたリード部24aを蓋体52の底部に接触させて、蓋体52の底部とリード部24aとを溶接した。この後、金属製外装缶40の上部外周面に溝入れ加工を施して、外装缶40の上部に環状溝部41を形成した。この後、外装缶15内にアルカリ電解液(水酸化リチウム(LiOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を含有した7Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液)を注液した。なお、アルカリ電解液の注液量は電池容量当たり2.5g/Ahとした。
ついで、封口体50に装着された封口ガスケット56を外装缶40の環状溝部41に載置するとともに、外装缶40の先端部42を封口体50側にカシメて封口して、公称電池容量が6Ahのニッケル−水素蓄電池A1,B1,C1,D1,E1,F1をそれぞれ組み立てた。この場合、各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1の公称電池容量X(Ah)に対する負極表面積Y(cm2)の割合(Y/X)は120(cm2/Ah)(Y/X=720/6=120(cm2/Ah))となる。
ここで、負極a1を用いたものを電池A1とした。また、負極b1を用いたものを電池B1とし、負極c1を用いたものを電池C1とし、負極d1を用いたものを電池D1とし、負極e1用いたものを電池E1とし、負極f1を用いたものを電池F1とした。なお、正極キャップ51と蓋体52とからなる封口体50において、蓋体52の中央部にはガス抜き孔53が形成されてあり、このガス抜き孔53を塞ぐように円盤状の弁体54が配置されている。そして、円盤状の弁体54の上に配置されたばね座54aと正極キャップ51との間にコイルスプリング55が配置されている。
ついで、これらの各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1を注液後に所定時間放置し、放置時の電圧がピーク電圧の60%となった時点で活性化を開始して、以下のようにして活性化処理を行った。なお、注液後の放置時間に対する電池電圧の関係は図2に示すように推移し、そのピーク電圧は水素吸蔵合金の種類により異なる。この場合、図2においては、Ce2Ni7構造の水素吸蔵合金a(Ln0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2)を用いた負極a1を備えた電池A1と、CaCu5型結晶構造を主結晶相とする水素吸蔵合金f(LnNi4.3Co0.6Al0.3Mn0.2)を用いた負極f1を備えた電池F1の結果のみを示している。
ここで、これらの各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1の放置時の電圧がピーク電圧の60%に達した時点で、これらの各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1を、25℃の温度雰囲で、1Itの充電々流でSOC(State Of Charge:充電深度)の120%まで充電し、1時間休止した。ついで、70℃の温度雰囲中に24時間放置(熟成)した後、45℃の温度雰囲で1Itの放電々流で電池電圧が0.3Vになるまで放電させた。ついで、このような充電→休止→熟成→放電のサイクルを2サイクル繰り返して、これらの各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1を活性化した。
5.試験
(1)放電リザーブの測定
ついで、上述のように活性化された各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1を用いて、以下のようにして負極の放電リザーブを求めた。この場合、電池を開放して電解液リッチな状態にし、この開放した電池中に参照極(Hg/HgO)を配置する。ついで、正極活物質が完全に放電状態となった後、25℃の温度雰囲において、1Itの放電電流で負極電位が参照極(Hg/HgO)に対して0.3Vになるまで放電させ、このときの放電時間から負極の1It放電時の容量を求めた。この後、10分間放電を休止した後、0.1Itの放電電流で負極電位が参照極(Hg/HgO)に対して0.3Vになるまで放電させ、このときの放電時間から負極の0.1It放電時の容量を求めた。得られた1It放電時の容量と0.1It放電時の容量の和を放電リザーブ量として求め、求めた放電リザーブ量を公称電池容量の比として算出して放電リザーブ((放電リザーブ量/公称電池容量)×100%)として表すと、表2に示す結果となった。
(2)放電特性(アシスト出力特性)および充電特性(回生出力特性)の測定
ついで、上述のように活性化された各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1を用いて、25℃の温度雰囲で、1Itの充電電流でSOC(State Of Charge :充電深度)の50%まで充電した後、1時間休止した。ついで、5It→10It→15It→20It→25It→30Itの順で放電電流を増加させながら10秒間ずつ放電させた。この後、30分間休止させた後、5It→10It→15It→20It→25It→30Itの順で充電電流を増加させながら10秒間ずつ充電させ、30分間休止させるようにして行った。
この場合、各放電レートおよび充電レートで10秒経過時点での各電池A1,B1,C1,D1,E1,F1の電池電圧(V)をそれぞれ測定した。この後、各放電レート(充電レート)を横軸(x軸)にプロットし、得られた電池電圧(V)を縦軸(y軸)にプロットして、V−I特性を求めた。そして、放電V−Iプロット近似直線上の電池電圧が0.9Vのときの電流(A)を放電出力(アシスト出力)とし、充電V−Iプロット近似直線上の電池電圧が1.6Vのときの電流(A)を充電出力(回生出力)として求めると、下記の表2に示すような結果となった。
Figure 2007294219
上記表2の結果から明らかなように、電池E1はアシスト出力が低下しており、電池F1は回生出力が低下しているのに対して、電池A1,B1,C1,D1においては、アシスト出力および回生出力の両特性が、電池E1や電池F1よりも優れていることが分かる。このことから、アシスト出力および回生出力の両特性を両立させるためには、水素吸蔵合金のH/M=0.5のときの吸蔵水素平衡圧Paが0.02〜0.15MPa(0.02MPa≦Pa≦0.15MPa)で、かつ放出水素平衡圧Pdとのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が0.05MPa〜0.15MPa(0.05MPa≦Ln(Pa/Pd)≦0.15MPa)を満たす水素吸蔵合金a,b,c,dを用いた負極a1,b1,c1,d1を備える必要があるということができる。
6.公称電池容量に対する負極表面積の割合(Y/X)の検討
ついで、公称電池容量X(Ah)に対する負極表面積Y(cm2)の割合(Y/X)(cm2/Ah)について検討した。そこで、水素吸蔵合金a(Ln0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2),水素吸蔵合金f(LnNi4.3Co0.6Al0.3Mn0.2)を用いて、表面積Y(cm2)が1020cm2になるように切断して水素吸蔵合金負極a2,f2をそれぞれ作製した。また、水素吸蔵合金a,fを用いて、表面積Y(cm2)が240cm2になるように切断して水素吸蔵合金負極a3,f3をそれぞれ作製した。
ついで、これらの負極a2およびf2を用いて上述と同様に、公称電池容量が6Ah(Y/X=1020/6=170cm2/Ah)のニッケル−水素蓄電池を作製し、これらを電池A2(負極a2を用いたもの)および電池F2(負極f2を用いたもの)とした。また、これらの負極a3およびf3を用いて上述と同様に、公称電池容量が3Ah(Y/X=240/3=80cm2/Ah)のニッケル−水素蓄電池を作製し、電池A3,F3とした。ついで、これらの電池A2,A3およびF2,F3を用いて、上述と同様に、放電リザーブ(%)、アシスト出力(A)、回生出力(A)を求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、表3には、電池A1,F1の結果も併せて示している。また、表3の結果から、面積増大に伴うアシスト出力の推移をグラフに表すと図3に示す結果が得られ、面積増大に伴う回生出力の推移をグラフに表すと図4に示す結果が得られた。
Figure 2007294219
上記表3、図3、図4の結果から明らかなように、水素吸蔵合金aを用いると、負極の面積が増大するに伴い、アシスト出力、回生出力ともに向上しており、特に、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上のときに、アシスト出力および回生出力の両方がともに大きく向上することが分かる。このことから、公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xは120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上にする必要があるということができる。
7.活性化開始電圧の検討
ついで、活性化開始電圧について検討した。そこで、上述のようにして作製した水素吸蔵合金負極a1を用いて電池を作製し、注液後に放置時の電圧がピーク電圧の90%に達した時点で、上述同様な活性化処理(1Itの充電々流でSOCの120%まで充電、1時間休止、70℃の温度雰囲で24時間放置(熟成)、45℃の温度雰囲で1Itの放電々流で電池電圧が0.3Vになるまで放電させ、このような充電→休止→熟成→放電のサイクルを2サイクル繰り返す処理)を行ったものを電池A4とした。また、注液後に放置時の電圧がピーク電圧の100%に達した時点で、上述同様な活性化処理を行ったものを電池A5とした。ついで、これらの電池A4,A5を用いて、上述と同様に、放電リザーブ(%)、アシスト出力(A)、回生出力(A)を求めると、下記の表4に示すような結果が得られた。なお、表4には、電池A1の結果も併せて示している。
Figure 2007294219
上記表4の結果に基づいて、横軸(x軸)に活性化開始電圧(ピーク電圧に対する割合)をプロットし、縦軸(y軸)にアシスト出力(A)および放電リザーブの割合(H/X)(%)をプロットしてグラフに表すと、図5に示すような結果が得られた。上記表4および図5の結果から明らかなように、電池A5のようにピーク電圧(図2のプラトー電圧)の100%に到達後に活性化を開始させると、放電リザーブの割合(H/X)が低下するとともに、アシスト出力(A)および回生出力(A)が低下することが分かる。これに対して、電池A1,A4のようにピーク電圧(図2のプラトー電圧)の90%以内に活性化を開始させると、放電リザーブが向上するとともに、アシスト出力(A)および回生出力(A)の両特性が向上することが分かる。
このことから、初期充放電による活性化(コンディショニング)は、ピーク電圧(図2のプラトー電圧)の90%以内で実施することが望ましいことが分かる。なお、放電リザーブの割合(H/X)が50%よりも大きいと、放電リザーブの電気量として蓄えられている水素が発生して正極の還元を促進し、高温貯蔵特性を低下させるようになる。一方、放電リザーブの割合(H/X)が30%未満であると、水素吸蔵合金の活性不足により放電特性(アシスト出力)の低下をもたらすようになる。このため、初期充放電による活性化(コンディショニング)後の水素吸蔵合金負極に形成されている放電リザーブH(Ah)の公称電池容量X(Ah)に対する割合は30%以上、50%以下(30%≦H/X≦50%)にするのが望ましいということができる。
8.高温サイクル特性の検討
ついで、高温サイクル特性について検討した。そこで、電池A1(合金aでY/X=120(cm2/Ah)で活性化開始電圧が60%の負極a1を用いたもの)、電池B1(合金bでY/X=120(cm2/Ah)で活性化開始電圧が60%の負極b1を用いたもの)、電池F1(合金fでY/X=120(cm2/Ah)で活性化開始電圧が60%の負極f1を用いたもの)を用い、これらの電池A1,B1,F1の高温サイクル寿命を以下のようにして求めると、下記の表5に示すような結果が得られた。
即ち、活性化された各電池A1,B1,F1を用いて、25℃の温度雰囲で、1Itの充電電流でSOCの40%まで充電した後、45℃の温度雰囲で1時間休止した。ついで、45℃の温度雰囲で8Itの放電電流でSOCの20%まで放電させた後、45℃の温度雰囲で10秒間休止した。ついで、45℃の温度雰囲で8Itの充電電流でSOCの20%まで充電させた後、45℃の温度雰囲で10秒間休止した。45℃の温度雰囲で8Itの放電、45℃の温度雰囲で10秒間休止、45℃の温度雰囲で8Itの充電を1サイクルとし、2000サイクル毎に放電容量を測定し、初期アシスト出力の80%を下回った時点でサイクル寿命とする判定を行うと、下記の表5に示すような結果が得られた。なお、電池A1,F1の結果をグラフに示すと、図6に示すような結果となった。
Figure 2007294219
表5および図6の結果から明らかなように、水素吸蔵合金aを用いた負極a1を備えた電池A1および水素吸蔵合金bを用いた負極b1を備えた電池B1は、高温サイクル寿命が向上しているのに対して、水素吸蔵合金fを用いた負極f1を備えた電池F1は高温サイクル寿命がこれらよりも低下していることが分かる。これは、ある程度ヒステリシスを設けて水素放出速度を低減させることで充電時の水素乖離を抑制させるとともに、所定の吸蔵水素平衡圧Paとすることで合金表面水素濃度を増加することが可能となる。これにより、正極から発生する酸素による合金酸化を抑制することが可能となり、高温サイクル特性を向上させると考えられる。
9.高温貯蔵特性の検討
ついで、高温貯蔵特性について検討した。そこで、電池A1(合金aでY/X=120(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極a1を用いたもの)、電池A2(合金aでY/X=170(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極a2を用いたもの)、電池F1(合金fでY/X=120(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極f1を用いたもの)を用い、電池F2(合金fでY/X=170(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極f2を用いたもの)を用い、これらの電池A1,A2,F1,F2の高温貯蔵特性を以下のようにして求めると、下記の表6に示すような結果が得られた。なお、下記の表6には、合金aでY/X=120(cm2/Ah)で、活性化開始電圧がピーク電圧の60%で活性化処理を2回行った負極a6を用いた電池A6の結果も併せて示している。
即ち、活性化された各電池A1,A2,F1,F2,A6を用いて、25℃の温度雰囲で、1Itの充電電流でSOCの80%まで充電した後、60℃の温度雰囲気中に6ヶ月間貯蔵した。高温雰囲気(60℃)中に6ヶ月間貯蔵した後、各電池A1,A2,F1,F2,A6の電圧を測定すると、下記の表6に示すような結果が得られた。また、10ヶ月間貯蔵時の電圧推移をグラフに表すと図7に示すような結果が得られた。
Figure 2007294219
上記表6および図7の結果から明らかなように、電池A1,A2においては高温貯蔵後の電池電池圧の低下が少なく、初期の電池電圧を維持しており、高温貯蔵特性が優れていることが分かる。なお、電池A6は、電池A1,A2よりも電圧低下が若干大きいことが分かる。これは、活性化処理を2回行うことで水素吸蔵合金の活性化が進み、放電リザーブが蓄積されるようになる。しかしながら、放電リザーブが大きいとその分、水素吸蔵合金からの水素解離が多くなり、これがニッケル正極の還元反応を促して恒温貯蔵特性が低下したと考えられる。一方、電池F1,F2においては高温貯蔵後の電池電池圧の低下が著しく、初期の電池電圧が大幅に低下しており、高温貯蔵特性に劣っていることが分かる。これには、放出水素平衡圧Pdを吸蔵水素平衡圧Paより所定量下げることで、高温放置時の温度上昇に伴う水素乖離を低減させることが可能となる。これにより、正極の還元反応を抑制することが可能となり、正極の自己放電反応による容量低下が抑制されて高温貯蔵特性が向上したと考えられる。
ついで、高温貯蔵期間が6ケ月経過後の電池A1および電池F1を解体して、これらの電池内からセパレータを取り出して、これらのセパレータを分析したところ、電池A1のセパレータには付着物は認められなかったが、電池F1のセパレータの正極側が黒褐色に変色しており、黒褐色部位はマンガン化合物やコバルト化合物であることが分かった。その付着物(Mn化合物、Co化合物)のセパレータの質量に対する付着量(質量%)を分析すると、下記の表7に示すような結果が得られた。
Figure 2007294219
これは、電池F1においては、負極f1に用いられる水素吸蔵合金f(LnNi4.3Co0.6Al0.3Mn0.2)はMnを含有しているため、このMnが高温貯蔵中にアルカリ電解液に溶出し、正極還元を促して正極のCoと反応してセパレータの正極面にそれらの化合物を析出させたと考えられる。このことから、電池A1などの負極に用いた合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、少なくとも希土類元素、Ni,Mg,Alより構成される合金群は、Mnなどの希土類元素以外の標準電極電位が−0.8Vよりも卑な遷移元素を含まない水素吸蔵合金を用いるのが望ましいということができる。これは、希土類以外の標準電極電位が−0.8Vよりも卑な遷移元素を含むと、上述のように負極から溶出した当該元素は正極にて価数変化を伴って酸化され、正極還元を促進して、セパレータの正極面にそれらの化合物を析出させ、高温貯蔵特性を低下させるためである。
10.自己放電特性の検討
ついで、自己放電特性について検討した。そこで、電池A2(合金aでY/X=170(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極a2を用いたもの)、電池F2(合金fでY/X=170(cm2/Ah)で活性化開始電圧がピーク電圧の60%の負極f2を用いたもの)を用い、これらの電池A2,F2の自己放電特性を以下のようにして求めると、下記の表8に示すような結果が得られた。
即ち、活性化された各電池A2,F2を用いて、25℃の温度雰囲で、1Itの充電電流でSOCの50%まで充電し、25℃の温度雰囲気中に3時間放置した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vに達するまで放電させて、3時間充電放置後の放電容量を求めた。ついで、25℃の温度雰囲気中に1時間放置した後、1Itの充電電流でSOCの50%まで充電し、25℃の温度雰囲気中に7日間放置した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vに達するまで放電させて、7日間充電放置後の放電容量を求めた。ついで、3時間充電放置後の放電容量に対する7日間充電放置後の放電容量の比率を、充電放置残存率として求め、これを充電時の自己放電特性とした。
一方、活性化された各電池A2,F2を用いて、25℃の温度雰囲で、1Itの充電電流でSOCの90%まで充電し、25℃の温度雰囲気中に30分放置した。その後、1Itの放電電流で24分間放電させ、25℃の温度雰囲気中に3時間放置した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vに達するまで放電させて、3時間放電放置後の放電容量を求めた。ついで、25℃の温度雰囲気中に1時間放置した後、1Itの充電電流でSOCの90%まで充電し、25℃の温度雰囲気中に30分放置した。その後、1Itの放電電流で24分間放電させ、25℃の温度雰囲気中に7日間放置した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vに達するまで放電させて、7日間放電放置後の放電容量を求めた。ついで、3時間放電放置後の放電容量に対する7日間放電放置後の放電容量の比率を、放電放置残存率として求め、これを放電時の自己放電特性とした。
Figure 2007294219
水素吸蔵合金fは、ヒステリシスが小さく、吸蔵水素平衡圧と放出水素平衡圧との差が小さい。このため、水素吸蔵合金fを用いた電池F2においては、上記表8の結果から明らかなように、放電放置しても自己放電特性はほとんど向上しないことが分かる。一方、水素吸蔵合金aを用いた電池A2においては、水素吸蔵合金fを用いた電池F2よりも放電放置することにより自己放電特性が向上することが分かる。これは、水素吸蔵合金aは、放電放置することで放電開始時点における水素平衡圧が放出水素平衡圧(吸蔵水素平衡圧よりも低い)状態での放置となるため、充電放置よりも自己放電特性が向上したと考えられる。
11.組電池
ついで、上述のように構成される単電池を複数個組み合わせて、アシスト出力(放電特性)および回生出力(回生特性)を向上させるとともに、高温サイクル寿命、高温貯蔵特性を向上させることができる組電池装置を図8に基づいて以下に説明する。ここで、図8に示すように、本発明の組電池装置100は、電源101と、上述したニッケル−水素蓄電池からなる単電池が8個直列接続された電池モジュールを30個直列接続して形成された組電池102とを備えている。
電源101と組電池102との間には、この電源101からの電流および電圧を所定の定電流および定電圧に変換して組電池102に供給する充電制御部103と、組電池102に流れる電流を検出する電流検出回路104と、組電池102の電池電圧を検出する電圧検出回路105と、組電池102の強制放電を制御する放電制御部106と、電流検出回路104および電圧検出回路105からの検出値に基づいて、充電制御部103および放電制御部106の動作を制御するCPUなどからなるマイクロコンピュータ107とが接続されている。なお、放電制御部106には組電池102を放電するための放電抵抗が接続されており、マイクロコンピュータ107には所定の時間を計測するタイマー108が接続されている。
ついで、上述のように構成される組電池装置100の動作を図9(なお、図9は組電池装置100のマイクロマイクロコンピュータ107の動作を示すフローチャートである)に示されたフローチャートに基づいて以下に説明する。この場合、組電池装置100に組電池102が装着されて電源101が投入されることにより、マイクロコンピュータ107は充放電制御動作を開始する。そして、電圧検出回路105が組電池102の電池電圧を検出してその検出値がマイクロコンピュータ107に入力されることにより、ステップS110にて「Yes」(電池有り)と判定して、次のステップS111にて、組電池102の充電を開始させる。この充電においては、充電制御部103の制御の下に、例えば、1Itの充電電流でSOCの50%まで充電が行われる。
そして、充電が行われてSOCの50%まで充電されると、ステップS112にて「Yes」と判定して、充電制御部103の充電動作を停止させ、次のステップS113にて、タイマーを起動させてSOCの50%まで充電させた後の経過時間の測定を開始させる。ついで、ステップS114にて、タイマーが起動して所定のt1時間(この場合、t1は30分とした)が経過したか否かの判定を行う。タイマーが起動して所定のt1時間(30分)が経過すると、ステップS114にて「Yes」と判定して、次のステップS115にて、組電池102の強制放電を開始させる。この強制放電においては、放電制御部106の制御の下に組電池102に放電抵抗が所定のt2時間(この場合、t2は30秒とした)接続されるようになされて、組電池102から1Itの放電電流が流れるようにした。
強制放電を開始させて所定のt2時間が経過すると、ステップS116にて「Yes」と判定して、次のステップS117に進め、電圧検出回路105が検出した組電池102の電池電圧が所定の電圧V1(満充電状態の電池電圧の80%)まで低下した否かの判定を行う。ここで、組電池102の電池電圧が所定の電圧V1(満充電状態の電池電圧の80%)まで低下していない場合は、ステップS117にて「No」と判定して、このステップS117の動作を繰り返し実行する。ステップS117の動作を繰り返し実行している内に、組電池102の電池電圧が所定の電圧V1(満充電状態の電池電圧の80%)まで低下すると、ステップS117にて「Yes」と判定して、上述したステップS111に戻り、上述したステップS111〜ステップS117までの動作を繰り返し実行する。
本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。 電解液注液後の経過時間(hr)に対する電池電圧(V)の関係を示すグラフである。 公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/X(cm2/Ah)とアシスト出力(A)の関係を示すグラフである。 公称電池容量X(Ah)に対する水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/X(cm2/Ah)と回生出力(A)の関係を示すグラフである。 放置後ピーク電圧に対する活性化開始電圧(%)と、アシスト出力(A)および放電リザーブ(%)の関係を示すグラフである。 サイクル数とアシスト出力初期比との関係(高温サイクル特性)を示すグラフである。 高温貯蔵期間(月)と電池電圧との関係(高温貯蔵特性)を示すグラフである。 本発明の組電池装置を示すブロック図である。 図8に示すマイクロコンピュータの処理動作を示すフローチャートである。
符号の説明
A1,B1,C1,D1,E1,F1…ニッケル−水素蓄電池、10…水素吸蔵合金負極、11…負極集電体、12…負極活物質、13…負極集電体、20…ニッケル正極、21…金属多孔体、22…正極活物質、24…正極集電体、24a…リード部、30…セパレータ、40…金属製外装缶、41…環状溝部、42…かしめ部、50…封口体、51…蓋体、52…正極キャップ、53…ガス抜き孔、54…弁体、54a…ばね座、55…コイルスプリング、56…封口ガスケット、100…組電池装置、101…電源、102…組電池、103…充電制御部、104…電流検出部、105…電圧検出部、106…放電制御部、107…マイクロコンピュータ、108…タイマー

Claims (6)

  1. コバルト化合物が含有された水酸化ニッケルを正極活物質とするニッケル正極と、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極と、アルカリ電解液からなる発電要素を外装缶内に備えたアルカリ蓄電池であって、
    公称電池容量X(Ah)に対する前記水素吸蔵合金負極の表面積Y(cm2)の割合Y/Xが120cm2/Ah(Y/X=120cm2/Ah)以上であるとともに、
    前記水素吸蔵合金は合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、かつ少なくとも希土類元素、ニッケル、マグネシウム、アルミニウムを含有し、
    前記水素吸蔵合金の40℃での水素吸蔵量(H/M(原子比))が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.02MPa以上で0.15MPa以下(0.02MPa≦Pa≦0.15MPa)で、放出水素平衡圧(Pd)とのヒステリシス(Ln(Pa/Pd))が0.05MPa以上で0.15MPa以下(0.05MPa≦Ln(Pa/Pd)≦0.15MPa)であることを特徴とするアルカリ蓄電池。
  2. 前記水素吸蔵合金は前記希土類元素以外は、標準電極電位が−0.8Vよりも卑な遷移元素を含まないことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
  3. 初期充放電による活性化(コンディショニング)後の前記水素吸蔵合金負極に形成されている放電リザーブH(Ah)の公称電池容量X(Ah)に対する割合H/X(%)が30%以上、50%以下(30%≦H/X≦50%)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池。
  4. コバルト化合物が含有された水酸化ニッケルを正極活物質とするニッケル正極と、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極とを外装缶内に収容した後、当該外装缶内にアルカリ電解液を注液して製造するアルカリ蓄電池の製造方法であって、
    前記アルカリ電解液を前記外装缶内に注液した後、電池電圧が放電時ピーク電圧の90%に達する前に充放電を行う充放電工程を備えていることを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
  5. 複数個のアルカリ蓄電池が直列接続された電池モジュールを備えた組電池装置であって、
    前記電池モジュールは請求項1〜請求項3のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の複数個が直列接続されて形成されているとともに、
    前記組電池装置は少なくともタイマー手段と電圧検出手段と充電制御手段と放電制御手段とマイクロコンピュータとを備えていて、
    前記タイマー手段が充電後の予め設定された所定の経過時間を報知すると前記放電制御手段は予め定められた所定の放電量を放電させるようになされていることを特徴とする組電池装置。
  6. 前記電圧検出手段が満充電状態の電池電圧の80%に達したことを検出すると、前記充電制御手段は充電を開始するようになされていることを特徴とする請求項5に記載の組電池装置。
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