JP2007293571A - 適応ノッチフィルタとそれを用いた制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ノッチフィルタ周波数設定値を決定するノッチフィルタ周波数決定部(11)と、ノッチフィルタの入力および出力とノッチフィルタ周波数設定値から適応入力を算出する適応入力演算部(14)と、ノッチフィルタの入力とノッチフィルタ周波数設定値と基準信号から適応基準を算出する適応基準演算部(15)とを備え、ノッチフィルタはノッチフィルタ周波数をノッチフィルタ周波数設定値で固定とし、幅または深さまたはそれら両方が可変となっており、フィルタ係数設定部(13)は、適応入力と適応基準とを用いてノッチフィルタの幅または深さまたはそれら両方を逐次演算により決定するようにした。
【選択図】図1
Description
図4は特許文献1で電動機の速度制御装置に使用されている適応ノッチフィルタの構成である。図4において、51はハイパスフィルタであり、電動機の速度フィードバック信号に含まれる振動成分を取り出す。23は基準信号生成部であり、制御帯域となる低周波成分を多く含み、ローパスフィルタなどにより高周波成分を抑制した信号を出力する。54は適応フィルタであり、ハイパスフィルタの出力する振動成分と基準信号生成部の生成した基準信号との和を入力とし、出力が基準信号と一致するように適応するため、結果的に振動成分の周波数をノッチフィルタ周波数としたノッチフィルタが得られる。52はFIRフィルタであり、その係数はフィルタ係数設定手段53により逐次修正される。特許文献には、52のFIRフィルタの代わりにIIRフィルタを用いてもよいとの記載があるが、一般にIIRフィルタの係数を適応則により逐次計算した場合、収束性が補償されない。
また別の従来技術として、IIR型のノッチフィルタを用い、そのノッチ周波数を適応アルゴリズムにより逐次修正するものもある。(例えば、特許文献2参照)。
図5は、特許文献2で電動機の速度制御装置に使用されている適応ノッチフィルタの構成である。図5において、61はハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタであり、電動機の速度フィードバック信号に含まれる振動成分を取り出す。62は方向フィルタであり、ノッチ周波数より低い周波数領域ではノッチフィルタと同位相、ノッチ周波数より高い周波数領域ではノッチフィルタと逆位相となるフィルタである。63はIIR型ノッチフィルタであり、64のフィルタ係数設定手段により係数を逐次修正される。65は、ノッチ周波数適応手段であり、適応則によりノッチ周波数を逐次修正する。66はIIRフィルタ係数換算部であり、ノッチ周波数適応手段65により得られたノッチ周波数でノッチフィルタの幅および深さは固定としたIIRフィルタの係数を算出する。特許文献2では、連続時間ラプラス領域でのノッチフィルタの伝達関数で、ノッチ周波数を離散的に変えた場合のIIRフィルタ係数をテーブルとして保有することにより、ノッチフィルタ適応手段65においてノッチ周波数のみを逐次修正することを可能にしている。
このように、従来の適応ノッチフィルタは、FIRフィルタの係数を適応則により逐次修正するか、あるいはIIR型ノッチフィルタを用い、ノッチフィルタの幅および深さをあらかじめ決定された固定値とし、ノッチ周波数を適応則により逐次修正するものである。
また、特許文献2に開示されている従来の適応フィルタは、適応アルゴリズムにより適応するパラメータはノッチ周波数のみであり、幅や深さが最適な値とはならないため、制御対象によって、ノッチ周波数の近傍の成分が抑制しきれなかったり、不必要に抑制しすぎて位相遅れが大きくなったりし、制御ゲインを十分に上げることができないという問題があった。また、振動している周波数が複数ある場合には、どの周波数に収束するかが不確定であり、抑制したい周波数の振動を抑制できない場合があるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ノッチフィルタの幅や深さを自動的に調整するとともに、振動している周波数が複数あっても抑制したい周波数に確実に適用することができ、手動調整とも容易に併用できるノッチフィルタとそれを用いた制御装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ノッチフィルタと、前記ノッチフィルタのノッチ周波数成分を含む振動信号と透過させる低周波数成分を含む基準信号との和を前記ノッチフィルタへの入力としノッチフィルタの出力が基準信号と一致するように前記ノッチフィルタの係数を逐次修正するフィルタ係数設定手段とを備えた適応ノッチフィルタにおいて、前記ノッチフィルタのノッチ周波数設定値を決定するノッチ周波数決定部と、前記ノッチフィルタの入力および出力と前記ノッチ周波数設定値から適応入力を算出する適応入力演算部と、前記ノッチフィルタの入力と前記ノッチ周波数設定値と前記基準信号から適応基準を算出する適応基準演算部とを備え、前記ノッチフィルタはノッチ周波数を前記ノッチ周波数設定値で固定とし、幅または深さまたはそれら両方が可変となっており、前記フィルタ係数設定手段は、前記適応入力と前記適応基準とを用いて前記ノッチフィルタの幅または深さまたは両方を逐次演算により決定するものである。
請求項2に記載の発明は、制御対象の状態量を検出する検出器と、前記制御対象の状態指令を生成する指令器と、前記検出器によって算出された状態量検出値と前記指令器が生成した状態量指令値をもとに操作量を変化させて前記制御対象の状態量を制御する状態制御器と、前記状態量検出値から前記操作量を算出するまでの演算の間に適用する第1のノッチフィルタと、前記操作量を算出する際に用いない第2のノッチフィルタと、前記第2のノッチフィルタの係数を逐次修正するフィルタ係数設定部とを備えた制御装置において、前記ノッチフィルタを適用するノッチ周波数設定値を決定するノッチ周波数決定部と、前記状態量検出値と前記ノッチ周波数設定値から振動信号を生成する振動信号生成部と、前記ノッチフィルタの入力および出力と前記ノッチ周波数設定値から適応入力を算出する適応入力演算部と、前記ノッチフィルタの入力および前記ノッチ周波数設定値および前記状態量指令値から適応基準を算出する適応基準演算部と、を備え、前記第2のノッチフィルタはノッチ周波数を前記ノッチ周波数設定値で固定とし、幅または深さまたはそれら両方が可変であり、前記フィルタ係数設定部は、前記適応入力と前記適応基準とを用いて前記第2のノッチフィルタの幅または深さまたは両方を前記第2のノッチフィルタの出力が状態量指令値と一致するように逐次演算により決定することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1記載の適応ノッチフィルタにおいて、前記ノッチフィルタは、IIRフィルタであることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1記載の適応ノッチフィルタにおいて、前記ノッチフィルタと前記適応入力演算部と前記適応基準演算部で用いるノッチ周波数は、前記ノッチ周波数決定部で決定されたノッチフィルタ周波数を離散化誤差補正して用いることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項2記載の制御装置おいて、前記ノッチフィルタは、IIRフィルタであることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項2記載の制御装置おいて、前記ノッチフィルタと前記適応入力演算部と前記適応基準演算部で用いるノッチ周波数は、前記ノッチ周波数決定部で決定されたノッチ周波数を離散化誤差補正して用いることを特徴とするものである。
固定周波数適応ノッチフィルタの演算式導出方法を以下に述べる。 深さを考慮したノッチフィルタの伝達関数はラプラス領域で以下のように表される。ωはノッチフィルタ周波数を表す。ζ1が大きいほど深いノッチフィルタとなり、ζ2が大きいほど幅の広いノッチフィルタとなる。以下ではこの式のζ1をノッチフィルタの「深さ」、ζ2をノッチフィルタの「幅」と呼ぶことにする。
これを双一次変換し、ノッチフィルタの入力をX ( k )出力をY ( k )とすると、
となる。ただし、Tsは演算周期を表す。ここで、式(2)は
と書き直せば、ノッチフィルタはIIRフィルタとなり、ブロック図で表すと図4のようになる。ここで、入力をX(k)、X(k−1)、X(k−2)、Y(k−1)、Y(k−2)とし、係数A1、A2、A3、A4を適応則により求めれば通常のIIR型適応フィルタが得られる。しかし、その場合収束性が補償されない上、最適な値に収束しなかったりする問題があるため、通常は特許文献1のように性能が劣るが収束が補償されるFIRフィルタとするか、特許文献2のようにノッチ周波数のみの適応として対処していた。また、その場合の適応フィルタは振動信号の周波数にあわせて適応することになるが、そもそも振動信号の周波数はフーリエ変換等の従来技術により検出可能であり、精度も問題ない。これを固定とすることにより、他のパラメータの収束が高速かつ確実となると考えられる。そこで、本発明では周波数は固定とし、幅と深さのみを適応させるため、数2を以下のようにζ1を含む項、ζ2を含む項、それらどちらも含まない項に分ける。
この式を用いて適応則によりフィルタ係数θを求める。その方法を以下に説明する。適応則によってフィルタ係数の推定値θ^が得られたとすると、yの推定値y^は
と表される。適応則は以下の評価関数Jを最小にするように推定値θ^を逐次更新するものである。
ただし、yrefは式(5)で計算される値yの理想的な値である。ノッチフィルタ出力Yが基準入力Yrefと一致する場合が理想であるから、
である。本適応フィルタでは、まず、ノッチ入力とノッチ出力の信号から、式(5)により適応入力ζを算出する。次に、適応出力の基準値yrefを式(9)より算出する。これらを用いて、以下の逐次型適応則による適応計算を順に行うと、yが適応基準yrefになるようにフィルタ係数の推定値θ^が逐次更新される。適応則は他にも重みつき最小二乗法、固定トレース法などがあり、どれを用いてもよい。オンラインで使用する場合には、古い情報の重みを減らす重みつき最小二乗法や入力信号が小さいときの重みを減らす固定トレース法が適している。
ただし、Γ(k)は計算の途中で用いる中間変数で、逐次更新されている。初期値は以下で与えられる。
ただし、Iは単位行列である。γは適応の速さを設定するパラメータで、例えばγ=1×10−7とすればよい。yが適応基準yrefに一致するようにフィルタ係数の推定値θ^が逐次更新され、結果的に、フィルタ出力yが基準信号yrefに一致するようにノッチフィルタの幅と深さが逐次更新される。適応するパラメータをFIRフィルタまたはIIRフィルタの係数そのものとするのではなく、ノッチフィルタの幅ζ2およびノッチフィルタの深さζ1とし、基準信号Yrefを適応基準yrefに置き換えることにより、周波数を固定とした適応が可能になる。
このようにおくと、
と書き直せる。この式を用いて適応則により
を求める。適応基準は
である。
本適応フィルタでは、まず、ノッチ入力とノッチ出力の信号から、数12により適応入力ζを算出する。適応係数が幅または深さのどちらか1つの場合、適応入力はベクトルではなくスカラーになる。次に、適応出力の基準値yrefを式(14)より算出する。これらを用いて、以下の逐次型適応則による適応計算を順に行うと、yが適応基準yrefに一致するようにノッチフィルタの幅の推定値ζ2が逐次更新される。
ただし、
は計算の途中で用いる中間変数で、逐次更新されている。初期値は以下で与えられる。
ただし、γは適応の速さを設定するスカラー量のパラメータで、例えγ=1×10−7とすればよい。
このようにおくと、
と書き直せる。この式を用いて適応則によりζ1を求める。適応基準は
である。
本適応フィルタでは、まず、ノッチ入力とノッチ出力の信号から、式(17)により適応入力ζを算出する。次に、適応出力の基準値yrefを式(19)により算出する。これらを用いて、以下の逐次型適応則による適応計算を順に行うと、yが適応基準yrefに一致するようにノッチフィルタの幅の推定値ζ1が逐次更新される。
ただし、Γ(k)は計算の途中で用いる中間変数で、逐次更新されている。初期値は以下で与えられる。
ただし、γは適応の速さを設定するスカラー量のパラメータで、例えばγ=1×10−7とすればよい。
12 ノッチフィルタ
13 フィルタ係数設定手段
14 適応入力演算部
15 適応基準演算部
21 振動信号生成部
22 基準信号生成部
31 指令器
32 制御器
33 ノッチフィルタ
34 制御対象
35 検出器
51 ハイパスフィルタ
52 FIRフィルタ
53 フィルタ係数設定手段
54 適応フィルタ
61 ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ
62 方向フィルタ
63 IIR型ノッチフィルタ
64 フィルタ係数設定手段
65 ノッチ周波数適応手段
66 IIRフィルタ係数換算部
Claims (6)
- ノッチフィルタと、前記ノッチフィルタのノッチ周波数成分を含む振動信号と通過させる低周波数成分を含む基準信号との和を前記ノッチフィルタへの入力としノッチフィルタの出力が基準信号と一致するように前記ノッチフィルタの係数を逐次修正するフィルタ係数設定部とを備えた適応ノッチフィルタにおいて、
前記ノッチフィルタのノッチ周波数設定値を決定するノッチ周波数決定部と、
前記ノッチフィルタの入力および出力と前記ノッチ周波数設定値から適応入力を算出する適応入力演算部と、
前記ノッチフィルタの入力と前記ノッチ周波数設定値と前記基準信号から適応基準を算出する適応基準演算部と、
を備え、
前記ノッチフィルタはノッチ周波数を前記ノッチ周波数設定値で固定とし、幅または深さまたは両方が可変であり、
前記フィルタ係数設定部は、前記適応入力と前記適応基準とを用いて前記ノッチフィルタの幅または深さまたは両方を逐次演算により決定する
ことを特徴とする適応ノッチフィルタ。 - 制御対象の状態量を検出する検出器と、前記制御対象の状態指令を生成する指令器と、前記検出器によって算出された状態量検出値と前記指令器が生成した状態量指令値をもとに操作量を変化させて前記制御対象の状態量を制御する状態制御器と、前記状態量検出値から前記操作量を算出するまでの演算の間に適用する第1のノッチフィルタと、前記操作量を算出する際に用いない第2のノッチフィルタと、前記第2のノッチフィルタの係数を逐次修正するフィルタ係数設定部とを備えた制御装置において、
前記ノッチフィルタを適用するノッチ周波数設定値を決定するノッチ周波数決定部と、
前記状態量検出値と前記ノッチ周波数設定値から振動信号を生成する振動信号生成部と、
前記ノッチフィルタの入力および出力と前記ノッチ周波数設定値から適応入力を算出する適応入力演算部と、
前記ノッチフィルタの入力および前記ノッチ周波数設定値および前記状態量指令値から適応基準を算出する適応基準演算部と、
を備え、
前記第2のノッチフィルタはノッチ周波数を前記ノッチ周波数設定値で固定とし、幅または深さまたはそれら両方が可変であり、
前記フィルタ係数設定部は、前記適応入力と前記適応基準とを用いて前記第2のノッチフィルタの幅または深さまたは両方を前記第2のノッチフィルタの出力が状態量指令値と一致するように逐次演算により決定する
ことを特徴とする制御装置。 - 前記ノッチフィルタは、IIRフィルタであることを特徴とする請求項1記載の適応ノッチフィルタ。
- 前記ノッチフィルタと前記適応入力演算部と前記適応基準演算部で用いるノッチ周波数は、前記ノッチ周波数設定値を離散化誤差補正して用いることを特徴とする請求項1記載の適応ノッチフィルタ。
- 前記ノッチフィルタは、IIRフィルタであることを特徴とする請求項2記載の制御装置。
- 前記ノッチフィルタと前記適応入力演算部と前記適応基準演算部で用いるノッチ周波数は、前記ノッチ周波数設定値を離散化誤差補正して用いることを特徴とする請求項2記載の制御装置。
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