JP2007288138A - 発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】赤色蛍光体を使う場合に比べて発光効率を向上させつつ、平均演色評価数Raを向上させることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】本発明の発光装置は、発光素子として、青色LEDチップ2と赤色LEDチップ3を有する。このLEDチップ2,3は、波長490〜510nmと530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有する蛍光体(緑色蛍光体)を透明樹脂に混合・分散させた蛍光体含有樹脂層10により覆われている。蛍光体含有樹脂層10から出射される光における波長550nmの発光強度に対する波長500nmの発光強度の割合が0.4以上である。
【選択図】図6
【解決手段】本発明の発光装置は、発光素子として、青色LEDチップ2と赤色LEDチップ3を有する。このLEDチップ2,3は、波長490〜510nmと530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有する蛍光体(緑色蛍光体)を透明樹脂に混合・分散させた蛍光体含有樹脂層10により覆われている。蛍光体含有樹脂層10から出射される光における波長550nmの発光強度に対する波長500nmの発光強度の割合が0.4以上である。
【選択図】図6
Description
本発明は、発光ダイオードランプなどの発光装置に関する。
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いたLEDランプは、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末などのバックライト、屋内外広告など、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。さらに、LEDランプは、長寿命で信頼性が高く、また低消費電力、耐衝撃性、高純度表示色、軽薄短小化の実現などの特徴を有することから、産業用途のみならず一般照明用途への適用も試みられている。このようなLEDランプを種々の用途に適用する場合、白色発光を得ることが重要となる。
LEDランプで白色発光を実現する代表的な方式としては、(1)青、緑および赤の各色に発光する3つのLEDチップを使用する方式、(2)青色発光のLEDチップと黄色発光の蛍光体とを組合せる方式、(3)紫外線発光のLEDチップと青色、緑色および赤色発光の三色混合蛍光体とを組合せる方式、の3つが挙げられる。これらのうち、一般には(2)の方式が広く実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
このようなLEDランプの構造としては、表面実装型(SMD)や砲弾型のようなカップ形状の中にLEDチップを配置し、所望の色を発する蛍光体を混合した透明樹脂を流し込み、これを固化させて蛍光体を含有する蛍光体層を形成した構造が一般的である。
ところで、一般照明用の発光装置に求められている特性として、高効率性に加え、演色性と呼ばれる色の見え方が重視されている。演色性は、太陽光、白熱灯に近い白色光を基準光として、その基準光の色彩を忠実に再現しているかを評価したものである。演色性を評価するための指標として、JIS Z 8726で定められた演色評価数がある。演色評価数は、JISに定められている試験色を試料光源と基準光とでそれぞれ照明したときの色ずれの大きさを、基準光で見たときを100とし、色ずれが大きくなるにしたがって数値が小さくなるように数値化したものである。演色評価数には、平均演色評価数Raと特殊演色評価数Riがあり、平均演色評価数Raは、試験No.1〜8の演色評価数値の平均値として表される。原則として100に近いほど演色性がよく、一般照明用としては、平均演色評価数Raが85〜90以上であることが好ましいとされている。
現在主流となっている白色LEDは上記(2)の方式であるが、この方式では、赤み成分が不足し演色性が十分ではない。平均演色評価数Raを向上させるために、黄色発光の蛍光体に加えて、窒化物系や硫化物系などの赤色発光の蛍光体を配合することが行われている。
しかしながら、赤色蛍光体が窒化物系などの場合には、青色LEDチップからの波長460nmの青色発光だけでなく、黄色系蛍光体から発光される緑色ないし黄色の光も吸収して励起に使用するため、赤色蛍光体を使用するとLEDランプの発光効率が約半減と大幅に下がるという問題を抱えている。
LEDランプの発光効率を低下させずに、赤み成分を補って演色性を向上させる対策として、赤色蛍光体ではなく赤色LEDチップを用いる策が考えられる(例えば特許文献2)。
特開2001−148516公報
特開2002−57376公報
しかし、赤色LEDチップからの発光スペクトルは、赤色蛍光体からの発光スペクトルに比べて半値幅が狭いので、赤みは増すものの、平均演色評価数Ra85以上の実現は難しいという問題がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、赤色蛍光体を使う場合に比べて発光効率を向上させつつ、平均演色評価数を向上させることが可能な発光装置を提供することを目的としている。
請求項1記載の発光装置は、青色光を放射する青色発光素子と;赤色光を放射する赤色発光素子と;前記青色発光素子から放射された青色光により励起されて、波長490〜510nmと波長530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有し、かつ波長530〜580nmの範囲の発光ピークの発光強度に対する波長490〜510nmの範囲の発光ピークの発光強度の割合が0.4以上である可視光を発する蛍光体を含有する蛍光体層と;を具備することを特徴としている。
請求項2記載の発光装置は、請求項1記載の発光装置において、前記蛍光体が、波長490〜510nmに発光ピークを有する第1の蛍光体と波長530〜580nmに発光ピークを有する第2の蛍光体とをそれぞれ含有することを特徴としている。
請求項3記載の発光装置は、青色光を放射する青色発光素子と;赤色光を放射する赤色発光素子と;前記青色発光素子から放射された青色光により励起されて、少なくとも波長490〜510nmに発光ピークを有するとともに、前記青色光との混色により、波長470nm〜490nmに発光強度の谷部を有し、かつ前記青色光のピーク波長の発光強度に対する前記谷部の波長の発光強度の割合が0.7〜0.9である可視光を発する蛍光体を含有する蛍光体層と;を具備することを特徴としている。
請求項4記載の発光装置は、請求項3記載の発光装置において、前記蛍光体が、波長490〜510nmと波長530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有し、かつ波長530〜580nmの範囲の発光ピークの発光強度に対する波長490〜510nmの範囲の発光ピークの発光強度の割合が0.4以上である可視光を発する蛍光体であることを特徴としている。
本発明における用語の定義および技術的意味は、特に指定しない限り以下の通りである。
青色光を放射する青色発光素子は、青色光を放射し、放射した青色光により蛍光体を励起して可視光を発光させるものである。本発明で用いられる青色光を放射する青色発光素子としては、例えば、青色発光タイプのLEDチップなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明において、青色発光素子から放射される青色光の主波長は、特に限定されないが、例えば420〜480nmである。
赤色光を放射する赤色発光素子は、赤色光を放射するものである。本発明で用いられる赤色光を放射する赤色発光素子としては、例えば、赤色発光タイプのLEDチップなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明において、赤色発光素子から放射される赤色光の主波長は特に限定されないが、例えば600〜700nmである。
蛍光体は、青色発光素子から放射された青色光により励起されて可視光を発し、この可視光と、青色発光素子から放射される青色光と、赤色発光素子から放射される赤色光との混色によって、発光装置として所望の発光色を得るものである。
本発明において、蛍光体としては、波長490〜510nmの範囲と波長530〜580nmの範囲にそれぞれ発光ピークを有する計1種類の蛍光体を使用することができる。また、各波長範囲にそれぞれ1つの発光ピークを有する2種類の蛍光体を混合して使用してもよい。すなわち、主波長が490〜510nmの緑色蛍光体と、主波長が530〜580nmの黄色蛍光体との計2種類の蛍光体を混合した蛍光体を使用することができる。
これら1種類または2種類の蛍光体の透明樹脂に対する配合割合は、発光装置からの発光の平均演色評価数Raが高く、かつ高い発光効率が得られるように調整される。
本発明では、蛍光体層から出射される光において、波長490〜510nmの範囲の発光ピーク(第1の発光ピーク)の強度の波長530〜580nmの範囲の発光ピーク(第2の発光ピーク)の強度に対する割合が、0.4以上になるように構成している。これにより、太陽光、白熱灯の発光スペクトルに近づけることができるので、平均演色評価数Raを向上させることができる。
また本発明では、蛍光体として、少なくとも波長490〜510nmの範囲に発光ピークを有する蛍光体を使用し、青色発光素子から放射された青色光との混色により、波長470nm〜490nmに発光強度の谷部を有し、この谷部の発光強度の波長490nm〜510nmの範囲の発光ピークの強度に対する割合が0.7〜0.95になるようなスペクトルの光が発せられるように構成することができる。さらに、この蛍光体を、波長490〜510nmの範囲の発光ピーク(第1の発光ピーク)とともに波長530〜580nmの範囲にも発光ピーク(第2の発光ピーク)を有し、かつ第1の発光ピークの強度の第2の発光ピークの強度に対する割合が0.4以上になるものとすることができる。
蛍光体を含む蛍光体層は、前記1種類または2種類の蛍光体を、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂のような透明樹脂に加えて混合・分散させた層として形成される。発光素子の外側を覆うように形成することができるが、発光素子を直接覆うようにして透明樹脂層を形成し、その上に前記した1種類または2種類の蛍光体を含む層を設けることも可能である。
請求項1または2記載の発明によれば、赤色発光素子を用いており、赤色蛍光体のように励起のために黄色光を吸収しないので、発光効率を向上させることができる。そのうえ、蛍光体からの発光スペクトルが、波長530〜580nmの範囲のピークとともに、波長490〜510nmの範囲にも発光ピークを有しているので、平均演色評価数Raを向上させることができる。また、蛍光体層から出射される光における波長530〜580nmの範囲の発光ピークの強度に対する波長490〜510nmの範囲の発光ピークの強度の割合を0.4以上にしているので、波長500nm付近の発光強度の低下が緩和されている。これにより、平均演色評価数Raを向上させることができる。
請求項3記載の発明によれば、青色発光素子から放射された青色光と、赤色発光素子から放射された赤色光、および青色発光素子から放射された青色光により励起されて蛍光体から発せられた少なくとも波長490〜510nmの範囲に発光ピークを有する可視光(緑色光)とにより、平均演色評価数Raを向上させることができる。そして、これらの光の混色により発せられる光が、波長470nm〜490nmの範囲に発光強度の谷部を有し、この谷部における発光強度の前記青色光のピーク波長の発光強度に対する割合が0.7〜0.9となるスペクトルを有しているので、平均演色評価数Raの低下を抑制しつつ、エネルギー効率の向上を図ることができる。すなわち、前記割合が0.7未満になると、平均演色評価数Raが低下しはじめ、割合が0.9を超える場合においては、波長470〜490nmの光は視感度が低いため、この波長域の発光強度が高くても視覚的効果が小さいので、エネルギー効率が低下して発光効率を高めることができない。
請求項4記載の発明によれば、平均演色評価数Raを向上させるとともに、エネルギー効率の向上を図り、発光効率を高めることができる。
したがって、本発明によれば、従来に比べて発光効率を向上させつつ、平均演色評価数を向上させることが可能な発光装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の発光装置をLEDランプに適用した第1の実施形態の構成を示す断面図、図2は、図1に示すLEDランプの複数個を、例えば一平面上に3行3列のマトリックス状に配置したLEDモジュールの一例を示す平面図、図3は、図2のA−A´線断面図である。
図1に示すLEDランプ1は、発光素子として青色発光タイプのLEDチップ(青色LEDチップ)2と赤色発光タイプのLEDチップ(赤色LEDチップ)3とを有している。青色LEDチップ2、赤色LEDチップ3は、それぞれ、回路パターン4を有する基板5上に搭載されている。基板5としては、放熱性と剛性を有するアルミニウム(Al)やニッケル(Ni)、ガラスエポキシ樹脂などから成る平板が用いられ、この基板5上に電気絶縁層6を介して陰極側と陽極側の回路パターン4が、青色LEDチップ接続用および赤色LEDチップ接続用に、それぞれ形成されている。回路パターン4は、CuとNiの合金やAuなどの導電性物質から構成されている。
そして、青色LEDチップ2の底面電極が一方の電極側の回路パターン4の上に配置されて電気的に接続され、上面電極が他方の電極側の回路パターン4に、金線などのボンディングワイヤ7を介して電気的に接続されている。青色LEDチップ2の電極接続構造としては、フリップチップ接続構造を適用することもできる。これらの電極接続構造によれば、青色LEDチップ2の前面への光取出し効率が向上する。赤色LEDチップ3の接続についても同様である。
回路パターン4は、青色LEDチップ2と赤色LEDチップ3とを同時に発光できるように構成されている。回路パターン4は、青色LEDチップ2用と赤色LEDチップ3用とを特に分けずに構成する(共用する)こともできるが、上記のように、それぞれ分けて構成したほうが電圧制御等の点で好ましい。
基板5上には、凹部8を有する樹脂製などのフレーム9が設けられている。凹部8を有するフレーム9は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPA(ポリフタルアミド)、PC(ポリカーボネート)などの合成樹脂から構成され、凹部8内に青色LEDチップ2及び赤色LEDチップ3が配置され、収容されている。そして、青色LEDチップ2及び赤色LEDチップ3が収容された凹部8内には、青色LEDチップ2から放射された光の一部を吸収して励起されて可視光を発する蛍光体を透明樹脂に混合し分散させた光体含有樹脂が塗布・充填されている。青色LEDチップ2及び赤色LEDチップ3はこのような蛍光体含有樹脂層10により覆われている。透明樹脂としては、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などが用いられる。
蛍光体含有樹脂層10に含有させる蛍光体は、LEDランプ1から所望の光量を得る上で、透明樹脂に対して5〜40質量%(重量%)含有していることが好ましく、10〜30重量%含有していることがより好ましい。蛍光体としては、波長490〜510nmの範囲に1以上の発光ピークを有する緑色蛍光体を使用することができる。また、このような波長490〜510nmの範囲に1以上の発光ピークを有する緑色蛍光体と、波長530〜580nmの範囲に1以上の発光ピークを有する黄色蛍光体とを混合して用いることができる。さらに、波長490〜510nmの範囲と波長530〜580nmの範囲にそれぞれ発光ピークを有する一種類の緑色蛍光体を用いてもよい。波長490〜510nmの範囲に半値幅の広い第1の発光ピークを、波長530〜580nmの範囲に半値幅の広い第2の発光ピークをそれぞれ有し、かつ第1の発光ピーク(波長500nm近傍)から第2の発光ピーク(波長550nm近傍)の範囲の発光強度の低下が少ない連続スペクトルを有する緑色蛍光体を用いることがより好ましい。このように、緑色蛍光体として、500nm近傍から550nm近傍まで連続したスペクトルを有するものを含有する場合には、黄色蛍光体を別途含有させる必要がない。
緑色蛍光体としては、例えば、(AEx(Si,Al)12(N,O)16:Eu蛍光体等のサイアロン蛍光体(AEは、Sr、Ba、Caなどのアルカリ土類元素を示す。)、RE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体(REは、Y、GdおよびLaから選ばれる少なくとも1種を示す。)などのYAG蛍光体、(Cax,Cey)Scz(SinGem)O12蛍光体(ただし3≧x,y,z,n,m≧0)、(Sr,Ba,Ca)SiO4:EuxCey蛍光体(ただし1≧x,y≧0、1≧xy≧0)、Sr3SiO5:Eu2+蛍光体等の珪酸塩蛍光体が用いられる。
黄色蛍光体としては、例えばRE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体(REはY、GdおよびLaから選ばれる少なくとも1種を示す。)等のYAG蛍光体、AE2SiO4:Eu蛍光体(AEはSr、Ba、Ca等のアルカリ土類元素である。)、Sr3SiO5:Eu2+蛍光体等の珪酸塩蛍光体、n−UVLEDBGR、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体等が用いられる。
第1の実施形態のLEDランプ1では、印加された電気エネルギーが青色LEDチップ2で主波長が420〜480nm(例えば460nm)の青色光に変換されて放射される。放射された青色光は、蛍光体含有樹脂層10中に含有された上記緑色蛍光体を含む蛍光体により、より長波長の光に変換される。また、印加された電気エネルギーが赤色LEDチップ3で主波長が600〜700nm(例えば630nm)の赤色光に変換されて放射される。そして、青色LEDチップ2から放射される青色光と、赤色LEDチップ3から放射される赤色光と、上記蛍光体の発光色とが交じり合った色である白色光(混色光)がLEDランプ1から放出される。
そして、上記蛍光体が配合された蛍光体層から出射される光のスペクトル(発光スペクトル)における波長490〜510nmの範囲の発光ピーク(第1の発光ピーク)の強度の、波長530〜580nmの範囲の発光ピーク(第2の発光ピーク)の強度に対する割合が0.4以上となっている。これは、従来の白色光LEDランプからの発光スペクトルにおける当該割合よりも大きな値である。このような分光分布は、蛍光体含有樹脂層10に波長490〜510nmの範囲に発光ピークを有する緑色蛍光体を所定量含有させることにより得ることができる。また、波長460nmの発光強度に対する波長550nmの発光強度の割合が1以上となっている。このような分光分布は、蛍光体層に、波長530〜580nmの範囲に発光ピークを有する緑色ないし黄色蛍光体を所定量含有させることにより得ることができる。
また、第1の実施形態においては、青色発光素子から放射された青色光と、蛍光体から発せられた少なくとも波長490〜510nmに発光ピークを有する緑色光との混色により発せられる光が、波長470nm〜490nmの範囲に発光強度の谷部を有しており、かつこの谷部における発光強度が青色光の発光ピークの発光強度に対して、0.7〜0.9の割合となるようなスペクトルを有している。このように、より視感度が高い波長(例えば490〜510nm)範囲への光変換がなされ、視感度が悪い波長範囲に発光強度の谷部が形成された発光スペクトルとなっているので、平均演色評価数Raの低下が抑制されるとともに、エネルギー効率が向上している。なお、青色光の発光ピークの強度に対する発光谷部の強度の割合が0.7未満では、平均演色評価数Raの大幅な低下が生じるため好ましくない。また、谷部の波長(470nm〜490nm)の光は視感度が悪く、発光強度が高くても視覚的効果が小さいので、この谷部の強度の青色光の発光ピークの強度に対する割合が0.9を超える場合には、エネルギー効率の点で好ましくない。
このように、第1の実施形態のLEDランプ1においては、従来のLEDランプの発光スペクトルには存在しなかった、主波長が490〜510nmの発光が加えられているので、波長500nm近傍の発光強度の低下を十分に緩和することができる。したがって、本発明においては、太陽光、白熱灯の発光スペクトルに近づけることができ、それにより、平均演色評価数Raを向上させることができる。
また、第1の実施形態のLEDランプ1においては、赤色LEDチップ3を用いることにより赤み成分を得ており、励起のために他の色成分の光を吸収することがないので、光を有効に取り出すことができる。半値幅が赤色蛍光体に比べて狭い赤色LEDチップ3を用いることによるデメリットは、波長490〜510nmの範囲および波長530〜580nmの範囲のそれぞれに1以上の発光ピークを有し、かつこれらの発光ピークの間の発光強度の低下が少ない連続スペクトルを有する蛍光体を加えることにより、十分に補うことができる。したがって、十分に高い平均演色評価数Raの値を確保することができるうえに、好ましい演色性を有している。
なお、上記実施形態では、LEDランプ1をマトリックス状に複数個配置したLEDジュール21について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複数個のLEDランプ1を1列状に配置して形成してもよく、さらにLEDランプ1は単数でもよい。
図4および図5は、本発明の第2の実施形態に係わるLEDパッケージを形成する発光装置を示している。図4は、この発光装置の平面図であり、図5は、図4に示す発光装置をF−F線に沿って切断した縦断面図である。なお、図4および図5おいて、第1の実施形態に関する図面と同様の構成要素については同じ参照数字を用いて、その説明を簡略化または省略する。
図4および図5に示す発光装置(LEDランプ)1は、パッケージ基板例えば装置基板5と、反射層31と、回路パターン4と、複数対好ましくは多数対の半導体発光素子(例えば青色LEDチップ2と赤色LEDチップ3)と、接着層32と、リフレクタ34と、蛍光体含有樹脂層10と、光拡散部材33とを備えて形成されている。蛍光体含有樹脂層10は封止部材としても機能する。
装置基板5は、金属または絶縁材、例えば合成樹脂製の平板からなり、発光装置1に必要とされる発光面積を得るために、所定形状例えば長方形状をなしている。装置基板5を合成樹脂製とする場合、例えば、ガラス粉末入りのエポキシ樹脂等で形成することができる。装置基板5を金属製とする場合は、この装置基板5の裏面からの放熱性が向上し、装置基板5の各部温度を均一にすることができ、同じ波長域の光を発する半導体発光素子2,3の発光色のばらつきを抑制することができる。なお、このような作用効果を奏する金属材料としては、10W/m・K以上の熱伝導性に優れた材料、具体的にはアルミニウムまたはその合金を例示することができる。
反射層31は、所定数の半導体発光素子2,3を配設し得る大きさであって、例えば、装置基板5の表面全体に被着されている。反射層31は、400〜740nmの波長領域で85%以上の反射率を有する白色の絶縁材料により構成することができる。このような白色絶縁材料としては、接着シートからなるプリプレグ(pre-preg)を使用することができる。このようなプリプレグは、例えば、酸化アルミニウム等の白色粉末が混入された熱硬化性樹脂をシート基材に含浸させて形成することができる。反射層31はそれ自体の接着性により、装置基板5の表面となる一面に接着される。
回路パターン4は、各半導体発光素子2,3への通電要素として、反射層31の装置基板5が接着された面とは反対側の面に接着されている。この回路パターン4は、例えば各半導体発光素子2,3を直列に接続するために、装置基板5および反射層31の長手方向に所定間隔ごとに点在して2列に形成されている。一方の回路パターン4の列の一端側に位置する端側回路パターン4aには、給電パターン部4cが一体に連続して形成され、同様に他方の回路パターン4の列の一端側に位置する端側回路パターン4aには、給電パターン部4dが一体に連続して形成されている。
給電パターン部4c,4dは反射層31の長手方向一端部に並べて設けられ、互いに離間して反射層31により絶縁されている。これらの給電パターン部4c,4dのそれぞれに、電源に至る図示しない電線が個別に半田付け等で接続されるようになっている。
回路パターン4は以下に説明する手順で形成される。まず、未硬化の前記熱硬化性樹脂が含浸されたプリプレグからなる反射層31を装置基板5上に貼付けた後、反射層31上にこれと同じ大きさの銅箔を貼付ける。次に、こうして得た積層体を加熱するとともに加圧して、熱硬化性樹脂を硬化させることによって、装置基板5と銅箔を反射層31に圧着し接着を完了させる。次いで、銅箔上にレジスト層を設けて、銅箔をエッチング処理した後に、残ったレジスト層を除去することによって、回路パターン4を形成する。銅箔からなる回路パターン4の厚みは例えば35μmである。
図5に示すように、半導体発光素子2は、例えば窒化物半導体を用いてなるダブルワイヤー型のLEDチップからなり、透光性を有する素子基板2b一面に半導体発光層2aを積層して形成されている。素子基板2bは、例えばサファイア基板で作られている。この素子基板2bの厚みは、回路パターン4より厚く、例えば90μmとする。なお、青色LEDチップである半導体発光素子2について説明するが、赤色LEDチップである半導体発光素子3についても同様に構成されている。
半導体発光層2aは、素子基板2bの主面上に、バッファ層、n型半導体層、発光層、p型クラッド層、p型半導体層を順次積層して形成されている。発光層は、バリア層とウェル層を交互に積層した量子井戸構造をなしている。n型半導体層にはn側電極が設けられ、p型半導体層上にはp側電極が設けられている。この半導体発光層2aは、反射膜を有しておらず、厚み方向の双方に光を放射できる。
各半導体発光素子2は、装置基板5の長手方向に隣接した回路パターン4間にそれぞれ配置され、白色の反射層31の同一面上に接着層32により接着されている。具体的には、半導体発光層2aが積層された素子基板2bの一面と平行な他面が、接着層32により反射層31に接着されている。この接着により、回路パターン4および半導体発光素子2は反射層31の同一面上で直線状に並べられるので、この並び方向に位置した半導体発光素子2の側面と回路パターン4とは、近接して対向するように設けられている。
接着層32の厚みは、例えば5μm以下とすることができる。接着層32には、例えば5μm以下の厚みで光透過率が70%以上の透光性を有した接着剤、例えばシリコーン樹脂系の接着剤を好適に使用できる。
図4および図5に示すように、各半導体発光素子2の電極と半導体発光素子2の両側に近接配置された回路パターン4とは、ボンディングワイヤ7で接続されている。さらに、前記2列の回路パターン4列の他端側に位置された端側回路パターン4b同士も、ボンディングワイヤ7で接続されている。したがって、この実施形態の場合、各半導体発光素子2は直列に接続されている。
以上の装置基板5、反射層31、回路パターン4、各半導体発光素子2,3、接着層32、およびボンディングワイヤ7により、発光装置1の面発光源が形成されている。
リフレクタ34は、一個一個または数個の半導体発光素子2,3ごとに個別に設けられるものではなく、反射層31上の全ての半導体発光素子2,3を包囲する単一のものであり、例えば長方形の枠で形成されており、半導体発光素子2,3は前記枠で形成された凹部8内に配置されている。リフレクタ34は反射層31に接着止めされていて、その内部に複数の半導体発光素子2,3および回路パターン4が収められているとともに、前記一対の給電パターン部4c、4dはリフレクタ34の外部に位置されている。
リフレクタ34は、例えば合成樹脂で成形することができ、その内周面は反射面となっている。リフレクタ34の反射面は、AlやNi等の反射率の高い金属材料を蒸着またはメッキして形成することができる他、可視光の反射率の高い白色塗料を塗布して形成することができる。あるいは、リフレクタ34の成形材料中に白色粉末を混入して、リフレクタ34自体を可視光の反射率が高い白色にすることもできる。前記白色粉末としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の白色フイラーを用いることができる。なお、リフレクタ34の反射面は、発光装置1の照射方向に次第に開くように形成することが望ましい。
蛍光体含有樹脂層10は、前記第1の実施形態と同様に、蛍光体を混合した液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ等の注入装置を用いて、反射層31表面および一直線上に配列された各半導体発光素子2およびボンディングワイヤ7等を満遍なく埋めるようにして充填し、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成されている。
反射層31表面とボンディングワイヤ7との間に流れ込んだ液状の透明樹脂は、毛細管現象等により各半導体発光素子2,3およびボンディングワイヤ7に行きわたり、その膜厚等がほぼ均一になっており、蛍光体も透明樹脂にほぼ均一に分散している。
このように構成される第2の実施形態においても、十分に高い平均演色評価数Raの値を確保することができるうえに、好ましい演色性を有している。また、エネルギー効率の向上を図ることができ、発光効率を高めることができる。
次に、本発明の実施例およびその評価結果について、比較例と比較しながら説明する。
実施例1,2、比較例1〜3
以下に示す発光素子、蛍光体をそれぞれ使用し、図1に示す構成を有するLEDランプを作製した。いずれの例でも、青色発光素子としては、波長460nmに発光ピークを有する青色LEDチップを用いた。
以下に示す発光素子、蛍光体をそれぞれ使用し、図1に示す構成を有するLEDランプを作製した。いずれの例でも、青色発光素子としては、波長460nmに発光ピークを有する青色LEDチップを用いた。
実施例1では、赤色発光素子として、波長630nmに発光ピークを有する赤色LEDチップを用い、蛍光体として、波長500nmと波長550nmにそれぞれ半値幅の広い発光ピークを有し、かつ波長500nm〜550nmの範囲の発光強度の低下が少ない連続スペクトルを有する緑色蛍光体(YAG蛍光体)を用いた。実施例2では、赤色発光素子として波長645nmに発光ピークを有する赤色LEDチップを用いた他は、実施例1と同じであった。
比較例1では、蛍光体として、波長550nmに発光ピークを有する黄色蛍光体(YAG蛍光体)と波長630nmに発光ピークを有する窒化物系赤色蛍光体を用い、赤色LEDチップは用いなかった。比較例2では、蛍光体として、波長550nmに発光ピークを有する黄色蛍光体(YAG蛍光体)のみを用い、赤色LEDチップも赤色蛍光体も用いなかった。比較例3では、赤色発光素子として、波長630nmに発光ピークを有する赤色LEDチップを用い、蛍光体として、波長550nmに発光ピークを有する黄色蛍光体(YAG蛍光体)のみを用いた。
上記蛍光体をシリコーン樹脂中に、表1に示す配合比(シリコーン樹脂に対する配合割合;重量%)でそれぞれ混合し、分散させた。次に、こうして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂を、ディスペンサを用いて深さ1.0mm、開口径3mmの凹部8内に充填した後、シリコーン樹脂を硬化させ、光路長0.5mmの蛍光体層(蛍光体含有樹脂層10)を形成し、図1に模式的に示す構成を有するLEDランプを作製した。なお、比較例1,2においては、赤色発光素子を用いていないので、図1に示すものとは異なり、LEDチップが1つの構成のLEDランプである。
これらのLEDランプの発光スペクトルを分光光度計(大塚電子製の瞬間分光度計MCPD−7000)を用いて測定した。測定された分光スペクトルを図6に示す。
図6から、実施例1,2のLEDランプの発光スペクトルは、視感度の低い波長470〜490nmの範囲(480nm)に発光強度の谷部を有し、この谷部(波長480nm)における発光強度の波長460nmの発光強度に対する割合が0.85となっていることがわかる。これに対して、比較例1〜3のLEDランプの発光スペクトルは、いずれも波長470nm〜490nmの範囲(480nm)に発光強度の谷部を有していない。
また、比較例1〜3のLEDランプの発光スペクトルでは、波長500nm近傍に急激な低下があるのに対し、実施例1,2の発光スペクトルでは、この低下がほとんどなくなっている。さらに、実施例1,2の発光スペクトルでは、460nm近傍および550nm近傍の発光強度が比較例1〜3に比べて低めに抑えられ、青色光から橙色光の波長域まで発光強度がなだらかに推移し、バランスのよい発光スペクトルになっていることがわかる。
次いで、実施例1,2および比較例1〜3のLEDランプについて測定された分光スペクトルから、色温度、平均演色評価数Raをそれぞれ算出し、あわせて、波長550nmの発光強度に対する波長500nmの発光強度の割合(波長500nmの発光強度/波長550nmの発光強度)を算出した。また、ゴニオメータを用いて発光効率を測定した。これらの結果を表1に示す。なお、表1に示す効率比は、比較例1のLEDランプの発光効率を100%としたときの相対値である。
表1に示されるように、実施例1で得られたLEDランプは、その平均演色評価数Raは90であり、比較例1で得られたLEDランプのRaよりも僅かに低かったが、85以上という、十分高い値のRaを得られた。そのうえ、発光効率が比較例1に比べて70%向上しており、極めて高い発光効率を有していた。このことから、赤色蛍光体を用いずに赤色LEDチップを用いた場合には、高い発光効率を得られることが確認された。
実施例1のLEDランプは、比較例2のLEDランプよりも効率が僅かに劣るが、Raは大幅に高かった。比較例2で他の例よりもRaが低かったのは、赤色蛍光体も赤色LEDチップもいずれも用いていないので、赤み成分が不足しているからである。このことから、赤色LEDチップを用いて赤み成分を補うとともに、波長500nm近傍にも発光ピークを有する蛍光体を含有した場合には、赤色蛍光体も赤色LEDチップも用いない場合に比べて、効率の低下を抑制しつつ、Raを90にまで向上できることが確認された。
実施例1のLEDランプは、比較例3のLEDランプと効率が同じでありながら、Raは大幅に高かった。実施例1と比較例3との条件の違いは、蛍光体のみである。このことから、波長550nm近傍に加えて波長500nm近傍にも発光ピークを有する緑色蛍光体を含有させたことが、Raの向上に寄与していることが確認された。
また、実施例2のLEDランプでは、赤色LEDチップの主波長は実施例1と異なるが、実施例1のLEDランプと同様に、十分高い値のRaが得られ、比較例1に比べて効率比が60%向上し、極めて高い発光効率を得られた。さらに、実施例2の結果からは、色温度は赤色LEDチップの主波長のみで変えられること、及び、赤色LEDチップの主波長を変えてもRaの値には影響がないことが確認された。
以上の結果から、赤色LEDチップを用いた場合でも、波長550nm近傍に加えて波長500nm近傍にも発光ピークを有する緑色蛍光体を含有することにより、赤色蛍光体を用いた場合に比べて遜色ない十分な値のRaが得られるうえに、発光効率が大幅に向上することが確認された。
なお、これらの実施例以外に、波長500nmに発光ピークを有する緑色蛍光体と波長550nmに発光ピークを有する黄色蛍光体との2種類の蛍光体を混合してシリコーン樹脂に含有させ分散させた蛍光体含有樹脂層でも同様の実験を行った。この場合にも上記実施例1,2と同様の効果が得られた。
本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1…LEDランプ、2…青色LEDチップ、3…赤色LEDチップ、4…回路パターン、5…基板、6…絶縁層、7…ボンディングワイヤ、8…凹部、9…フレーム、10…蛍
光体含有樹脂層、21…LEDモジュール。
光体含有樹脂層、21…LEDモジュール。
Claims (4)
- 青色光を放射する青色発光素子と;
赤色光を放射する赤色発光素子と;
前記青色発光素子から放射された青色光により励起されて、波長490〜510nmと波長530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有し、かつ波長530〜580nmの範囲の発光ピークの発光強度に対する波長490〜510nmの範囲の発光ピークの発光強度の割合が0.4以上である可視光を発する蛍光体を含有する蛍光体層と;
を具備することを特徴とする発光装置。 - 前記蛍光体が、波長490〜510nmに発光ピークを有する第1の蛍光体と波長530〜580nmに発光ピークを有する第2の蛍光体とをそれぞれ含有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
- 青色光を放射する青色発光素子と;
赤色光を放射する赤色発光素子と;
前記青色発光素子から放射された青色光により励起されて、少なくとも波長490〜510nmに発光ピークを有するとともに、前記青色光との混色により、波長470nm〜490nmに発光強度の谷部を有し、かつ前記青色光のピーク波長の発光強度に対する前記谷部の波長の発光強度の割合が0.7〜0.9である可視光を発する蛍光体を含有する蛍光体層と;
を具備することを特徴とする発光装置。 - 前記蛍光体が、波長490〜510nmと波長530〜580nmにそれぞれ発光ピークを有し、かつ波長530〜580nmの範囲の発光ピークの発光強度に対する波長490〜510nmの範囲の発光ピークの発光強度の割合が0.4以上である可視光を発する蛍光体であることを特徴とする請求項3記載の発光装置。
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- 2007-01-30 JP JP2007019579A patent/JP2007288138A/ja not_active Withdrawn
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