JP2007287841A - 固体電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 高温雰囲気下における導電性高分子の酸化劣化を防止し、ESRの上昇を抑えた固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 弁作用金属1の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層2と、固体電解質としての導電性高分子層3と、導電ペーストからなる陰極層4を有する固体電解コンデンサにおいて、導電性高分子層3の内部、誘電体酸化皮膜層2と導電性高分子層3の界面、又は導電性高分子層3と陰極層4の界面に酸化防止剤9を含ませる。このとき、酸化防止剤9は、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上からなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は固体電解質として導電性高分子を用いた固体電解コンデンサに関し、特に、高温耐久性に係る信頼性に優れた固体電解コンデンサに関する。
近年、電子機器の小型化、高速化、デジタル化に伴って固体電解コンデンサの分野においても小型、大容量で高周波領域でのインピーダンスが低いコンデンサが強く要求されている。
従来、100kHz〜数十MHzの高周波領域で使用されるコンデンサには、マイカコンデンサ、積層セラミックコンデンサがあるが、これらのコンデンサでは形状が大きくなり大容量化が難しい。一方、大容量のコンデンサとしてはアルミニウム電解コンデンサやタンタル固体電解コンデンサなどの電解コンデンサが存在する。しかしこれらの電解コンデンサは用いられている電解質(アルミニウム電解コンデンサでは電解液、タンタル電解コンデンサでは二酸化マンガン)の導電率が低いことから、高周波領域でのインピーダンスが十分に低いコンデンサを得ることは困難である。
この問題を解決するために、電解質として導電率の高いポリピロールやポリチオフェンなどの導電性高分子を用いたアルミニウム及びタンタル固体電解コンデンサが、例えば特許文献1に開示されている。この導電性高分子を用いた固体電解コンデンサは、電解質の導電率が高いため、高周波領域でのインピーダンスが十分に低いという大きな特徴を有する。
しかしながら、導電性高分子は酸化され易く、これを固体電解質として用いた固体電解コンデンサにおいては、外装樹脂で埋包されていても、高温雰囲気下では外装樹脂中を空気中の酸素が拡散してコンデンサ内部に侵入し、導電性高分子を劣化させる。このため、導電性高分子の導電率が低下し、その結果、高周波領域での等価直列抵抗(以下ESRと略す)が増大する。
この問題を解決するため、特許文献2には導電性高分子層又は誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層の界面、又は陰極層の外側表面にフェノール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、サリチル酸系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を有する固体電解コンデンサが開示されている。
しかしながら、前述した特許文献2の技術には以下に掲げる問題があった。第一に、フェノール系酸化防止剤では、酸化防止効果がまだ不十分であり、熱による酸化劣化が起こる問題があった。フェノール系酸化防止剤は、熱による劣化で発生する導電性高分子のラジカル部を安定化する作用がある。例えば、フェノール系酸化防止剤から水素が導電性高分子のラジカル部に供与されることで、その部分がカルボキシル基に変化し、そのためさらなるラジカル反応の連鎖が抑えられる。しかしながらカルボキシル基もまた熱的に不安定な構造であるため、熱により容易にラジカル解離し、さらに酸化劣化が進行しやすい。
第二に、ベンゾフェノン系酸化防止剤、サリチル酸系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤は、熱による酸化劣化への防止効果が弱い問題があった。ベンゾフェノン系酸化防止剤、サリチル酸系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤は紫外線を吸収することで、導電性高分子が紫外線のエネルギーを受けラジカル化するのを防ぎ、導電性高分子の酸化劣化を抑える効果がある。しかし、固体電解コンデンサのように外側が金属ケースや外装樹脂で覆われている構造では、紫外線の影響は小さく、酸化劣化を防止する大きな効果は得られない。
この状況にあって、本発明の課題は、高周波領域でのインピーダンスが小さく、高温雰囲気下における導電性高分子の酸化劣化を防止し、ESRの上昇を抑えた固体電解コンデンサを提供することにある。
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
陽極側電極としての弁作用金属と、前記弁作用金属の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層と、固体電解質として導電性高分子層と、導電ペーストからなる陰極層を有する固体電解コンデンサにおいて、導電性高分子層内、誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層の界面、又は、導電性高分子層と陰極層の界面に酸化防止剤を含む固体電解コンデンサであり、前記酸化防止剤が、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上で構成されている。
また、前記酸化防止剤が、水素供与しラジカルを安定化させる能力を有するフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤からなる第1の群と、過酸化物を分解する能力を有するリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤からなる第2の群とに対し、異なる群から選んだ2種類以上の酸化防止剤を混在させて構成される。
以上のような構成にすることにより、酸化防止剤が熱による酸化劣化で発生する導電性高分子のラジカル部を安定化するので、酸化劣化で起こるESRの増加をより長時間抑えることができる。
以上のように本発明は、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤を導電性高分子層又はその界面に含んでいるので、固体電解質としての導電性高分子の酸化劣化による導電率低下を防止し、高温耐久性に優れた固体電解コンデンサが得られるという効果がある。特に、水素供与しラジカルをカルボキシル基にすることで安定化させる能力を有する酸化防止剤と共に、カルボキシル基から酸素を奪い、より安定なヒドロキシル基にする能力を有する酸化防止剤(過酸化物を分解する能力を有する酸化防止剤)を導電性高分子層又はその界面に含んでいることで、より高温耐久性に優れた固体電解コンデンサが得られるという効果がある。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の固体電解コンデンサは、酸化防止剤に関する構成以外は、基本的には従来の固体電解コンデンサの構成とほぼ同様である。即ち、形状、材質等も公知のものが採用でき、特に制限はない。
本発明の実施の形態1の固体電解コンデンサは次の工程を含んで製造する。図1は本実施の形態の固体電解コンデンサに係る断面図である。図1を参照して、弁作用金属1にその金属の誘電体酸化皮膜層2を形成する工程と、誘電体酸化皮膜層2の上に酸化防止剤9を含ませた導電性高分子層3を形成する工程と、その導電性高分子層3の上に導電ペーストからなる陰極層4を形成する工程とを有する製造方法である。
また、本発明の実施の形態2の固体電解コンデンサは次の工程を含んで製造する。図2は本実施の形態の固体電解コンデンサに係る断面図である。図2を参照して、弁作用金属1にその金属の誘電体酸化皮膜層2を形成する工程と、誘電体酸化皮膜層2の上に導電性高分子層3を形成する工程と、導電性高分子層3と陰極層4の界面に酸化防止剤9を含ませるように導電性高分子層3の上に酸化防止剤9を充填する工程と、導電ペーストからなる陰極層4を形成する工程とを有する製造方法である。
さらに、本発明の実施の形態3の固体電解コンデンサは次の工程を含んで製造する。図3は本実施の形態の固体電解コンデンサに係る断面図である。図3を参照して、弁作用金属1にその金属の誘電体酸化皮膜層2を形成する工程と、酸化防止剤9を誘電体酸化皮膜層2と導電性高分子層3の界面に含ませるように誘電体酸化皮膜層2の上に酸化防止剤9を充填する工程と、導電性高分子層3を形成する工程と、形成した導電性高分子層3の上に導電ペーストからなる陰極層4を形成する工程とを有する製造方法である。
前記酸化防止剤は、ハイドロキノン、p−ニトロフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチル−4−メトキシフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、トリス[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、ブチリデン−1,1−ビス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−2’−メチレン−ビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−チオ‐ビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化剤、
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6−エチオキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン系酸化防止剤、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステリアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオ−ジブロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオ−プロピオネート)、2−メルカプトベンツイミダゾール等のイオウ系酸化防止剤の中から選択される。即ち、本発明の実施の形態で用いる酸化防止剤は、(1)アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上からなるとよく、(2)フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤からなる第1の群、及び、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤からなる第2の群の各群につき1種類以上を選んで配合することが特に好ましい。
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6−エチオキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン系酸化防止剤、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステリアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオ−ジブロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオ−プロピオネート)、2−メルカプトベンツイミダゾール等のイオウ系酸化防止剤の中から選択される。即ち、本発明の実施の形態で用いる酸化防止剤は、(1)アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上からなるとよく、(2)フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤からなる第1の群、及び、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤からなる第2の群の各群につき1種類以上を選んで配合することが特に好ましい。
その酸化防止剤の配合量は、導電性高分子層と陰極層との体積を基準として0.1〜100g/L、特に好ましくは10〜50g/Lとすることが好ましい。また、2種類以上の酸化防止剤を選んだ場合、酸化剤の配合比は任意に選ぶことができる。
以下に、本発明のいくつかの好適な実施例について、従来の技術による固体電解コンデンサと比較して説明する。ただし、本発明は以下の実施例には限られない。
(実施例1)図1に本発明の実施例1に係る固体電解コンデンサの断面図を示す。なお、導電性高分子層3の一部分を拡大図で示した。図1のように、本発明の実施例に係る固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属1と、この弁作用金属の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層2と、固体電解質としての導電性高分子層3と、導電ペーストからなる陰極層4、接着層5、外部電極6及び外装樹脂8を主にして構成されている。なお、符号は他の図面と共通である。
実施例1の固体電解コンデンサを製造する方法は以下のとおりである。図1に示すような、縦3.5mm、横3.0mm、厚さ1.5mmのタンタル微粉末の焼結体を作製した。これをリン酸水溶液中、90Vの電圧を印加して陽極酸化し、タンタル微粉末表面全体が誘電体酸化皮膜層2で被覆されたペレットを得た。
次に、酸化剤である20wt%(重量%)のドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄メタノール溶液にこの誘電体酸化皮膜層2で被覆されたペレットを10分間浸漬し、次いで60℃で30分乾燥させた後、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを10g/Lとピロールを50g/Lを混在させた溶液に10分間浸漬して室温で30分間保持してピロールの重合を行った。これらの一連の操作である酸化剤の充填、酸化防止剤9を含むピロールとの接触、重合を5回繰り返して、酸化防止剤9を層中に含む厚みが5〜10μm範囲の分布を持つ導電性ポリピロール層からなる導電性高分子層3を形成した。
続いて、エタノールで洗浄し、乾燥後、導電性ポリピロール層の表面に導電ペーストを塗布し、厚さ10〜50μmの陰極層を形成した。陰極層の形成は、銀ペーストを導電性ポリピロール層に塗布後、加熱硬化させることにより行った。
その後、銀ペーストを用いてコンデンサ素子の陰極層4と外部電極6とを接続した。またコンデンサ素子の陽極側は、予めタンタル焼結体から引き出されたタンタルワイヤー7(弁作用金属ワイヤー)を外部電極6に溶接した。さらに外部をエポキシ樹脂で外装して外装樹脂8を形成し、図1に示す構造を持つ実施例1の固体電解コンデンサを完成させた。
なお、本実施例では化学重合法でポリピロール層を形成したが、電解重合法で行ってもよい。電解重合法の場合は、電解液中に酸化防止剤を溶かして電解重合を行う。電解重合の重合条件は、公知の技術によって行うことができる。また、本実施例では導電性高分子層3としてポリピロール層を形成したが、ポリチオフェン層やポリアニリン層等でも同一の効果を得ることができる。
(実施例2)酸化防止剤にN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンと2−メルカプトベンツイミダゾールを使用した以外は実施例1と同様な方法でコンデンサを完成させた。即ち、実施例1におけるのと同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜層2を形成した。
次に、酸化剤である20wt%のドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄メタノール溶液にこの誘電体酸化皮膜層2で被覆されたペレットを10分間浸漬し、次いで60℃で30分乾燥させた後、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを5g/Lと2−メルカプトベンツイミダゾールを5g/L、ピロールを50g/Lを混在させた溶液に10分間浸漬して室温で30分間保持してピロールの重合を行った。これらの一連の操作である酸化剤の充填、酸化防止剤9を含むピロールとの接触、重合を5回繰り返して、異なる2種類の酸化防止剤9を層中に含む厚みが5〜10μm範囲の分布を持つ導電性ポリピロール層からなる導電性高分子層3を形成した。
その後、実施例1と同様にして、図1に示す構造の実施例2の固体電解コンデンサを完成させた。このコンデンサでは、図1の断面図に示すように、ポリピロールの導電性高分子層3に酸化防止剤9が含まれていることになる。なお、本実施例では化学重合法でポリピロール層を形成したが、電解重合法で行ってもよい。電解重合の重合条件は、公知の技術によって行うことができる。
(実施例3)実施例1におけるのと同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜層2を形成した。
次に、酸化剤である20wt%のドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄メタノール溶液にこの誘電体酸化皮膜層2で被覆されたペレットを10分間浸漬し、次いで60℃で30分乾燥させた後、濃度50g/Lのピロール水溶液に10分間浸漬して室温で30分間保持してピロールの重合を行った。これらの一連の操作である酸化剤の充填、ピロールとの接触、重合を5回繰り返して、厚みが5〜10μm範囲の分布を持つ導電性ポリピロール層からなる導電性高分子層3を形成した。
次に、導電性高分子層3と導電ペーストからなる陰極層4の界面に酸化防止剤9を含ませる操作を行った。即ち、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを5g/Lと2−メルカプトベンツイミダゾールを5g/Lを混在させた溶液中に導電性高分子層3を形成したペレットを10分間浸漬し、次いで125℃で30分間乾燥させた。
その後、実施例1と同様にして、図2に示す構造の実施例3の固体電解コンデンサを完成させた。このコンデンサでは、図2の断面図に示すように、ポリピロールの導電性高分子層3と導電ペーストからなる陰極層4の界面に酸化防止剤9が含まれていることになる。
なお、本実施例ではポリピロールの導電性高分子層3と導電ペーストからなる陰極層4の界面に酸化防止剤9が含まれているが、導電性高分子層3の形成前にペレットを酸化防止剤に浸漬させ、図3の断面図に示すように、誘電体酸化皮膜層2と導電性高分子層3の界面に酸化防止剤9を含ませても同一の効果を得ることができる。
また、本実施例では化学重合法でポリピロール層を形成したが、電解重合法で行ってもよい。電解重合の重合条件は、公知の技術によって行うことができる。また、本実施例では導電性高分子層3としてポリピロール層を形成したが、ポリチオフェン層やポリアニリン層等でも同一の効果を得ることができる。
(実施例4)酸化防止剤にブチリデン−1,1−ビス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)を5g/Lとビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトを5g/Lを使用した以外は実施例1と同様な方法でコンデンサを完成させた。即ち、実施例1におけるのと同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜層2を形成した。
次に、酸化剤である20wt%のドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄メタノール溶液にこの誘電体酸化皮膜層2で被覆されたペレットを10分間浸漬し、次いで60℃で30分乾燥させた後、ブチリデン−1,1−ビス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)を5g/Lとビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトを5g/L、ピロールを50g/Lを混在させた溶液に10分間浸漬して室温で30分間保持してピロールの重合を行った。これらの一連の操作である酸化剤の充填、酸化防止剤9を含むピロールとの接触、重合を5回繰り返して、異なる2種類の酸化防止剤9を層中に含む厚みが5〜10μm範囲の分布を持つ導電性ポリピロール層からなる導電性高分子層3を形成した。
その後、実施例1と同様にして、図1に示す構造の実施例4の固体電解コンデンサを完成させた。このコンデンサでは、図1の断面図に示すように、ポリピロールの導電性高分子層3に酸化防止剤9が含まれていることになる。
なお、本実施例では化学重合法でポリピロール層を形成したが、電解重合法で行ってもよい。電解重合の重合条件は、公知の技術によって行うことができる。また、本実施例では導電性高分子層3としてポリピロール層を形成したが、ポリチオフェン層やポリアニリン層等でも同一の効果を得ることができる。
(比較例)酸化防止剤9を用いない以外は実施例1と同様の条件で、図4に断面図で示す構造の固体電解コンデンサを製造した。
こうして得たコンデンサの耐熱性を観測するために、実施例1〜4、及び比較例のコンデンサの、1000時間、2000時間の105℃高温放置試験を行った結果を表1に示した。静電容量とESRは実施例1〜4、及び比較例それぞれの初期値の値を100とし、その値に対する変化(指数)で表した。なお、サンプル数は各水準20個ずつとし、静電容量とESRに関してはその平均を算出した。
まず、表1を参照して、実施例1〜4と比較例のそれぞれの固体電解コンデンサについて結果を評価する。ESRに関して、比較例に対し実施例1〜4のそれぞれの固体電解コンデンサでは、かなり向上し良くなっている。この理由について説明する。通常、ESRの上昇の原因として、固体電解質としての導電性高分子層3の熱による酸化劣化が挙げられる。この酸化劣化を防ぐ方法としては酸化防止剤9を導電性高分子層3又は誘電体酸化皮膜層2と導電性高分子層3の界面、導電性高分子層3と陰極層4の界面に含ませることが挙げられる。
実際、表1のように、比較例の固体電解コンデンサは酸化防止剤9を含んでいないので、高温放置試験でESRが大きく上昇しているが、酸化防止剤を含んでいる実施例1〜4はESRの上昇は抑えられ良好な結果が得られている。
ところで、酸化防止剤を含んだ場合、ESRの上昇を抑えられるが、長時間の高温放置による酸化劣化では、水素供与しラジカルをカルボキシル基にすることで安定化させる能力を有する酸化防止剤(アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤など)だけでは、カルボキシル基もまた熱的に不安定なため、ESRの上昇を抑える効果が大きくはない。この問題を解決する方法として、水素供与しラジカルをカルボキシル基にすることで安定化させる能力を有する酸化防止剤と共に、カルボキシル基から酸素を奪い、より安定なヒドロキシル基にする能力を有する酸化防止剤(リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの過酸化物を分解する能力を有する酸化防止剤)を導電性高分子層3又は誘電体酸化皮膜層2と導電性高分子層3の界面、導電性高分子層3と陰極層4の界面に含ませることが挙げられる。
このように、実施例1は水素供与しラジカルを安定化させる能力を有する酸化防止剤(アミン系酸化防止剤)だけを含むので、長時間の高温放置試験でESRが上昇しているが、水素供与しラジカルをカルボキシル基にすることで安定化させる能力を有する酸化防止剤と共に、カルボキシル基から酸素を奪い、より安定なヒドロキシル基にする能力を有する酸化防止剤(イオウ系酸化防止剤)を含んでいる実施例2〜4のそれぞれの固体電解コンデンサは長時間においてもESRの上昇は抑えられ良好な結果が得られている。
ところで、実施例1ではアミン系酸化防止剤の1種類を含む場合について、その効果を説明したが、リン系酸化防止剤の1種類以上、又はイオウ系酸化防止剤の1種類以上を含む場合についても効果は認められる。また、本発明の実施例では1種類又は2種類の酸化防止剤を含む場合について説明したが、3種類以上の酸化防止剤を配合し混在させて用いてもよいことは明らかである。さらに、本発明の実施例では、導電性高分子層内、又は誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層の界面、又は導電性高分子層と陰極層の界面のいずれかに酸化防止剤が含まれる場合について説明したが、酸化防止剤が含まれる場所が複数箇所にわたる方がより効果的であることは明らかである。
以上説明したように、本発明によれば、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上の酸化防止剤を導電性高分子層又はその界面に含んでいるので、固体電解質としての導電性高分子の酸化劣化による導電率低下を防止し、高温耐久性に優れた固体電解コンデンサが得られる。特に、水素供与しラジカルをカルボキシル基にすることで安定化させる能力を有する酸化防止剤と共に、カルボキシル基から酸素を奪い、より安定なヒドロキシル基にする能力を有する酸化防止剤(過酸化物を分解する能力を有する酸化防止剤)を導電性高分子層又はその界面に含ませることで、より高温耐久性に優れた固体電解コンデンサが得られる。
1 弁作用金属
2 誘電体酸化皮膜層
3 導電性高分子層
4 陰極層
5 接着層
6 外部電極
7 弁作用金属ワイヤー
8 外装樹脂
9 酸化防止剤
2 誘電体酸化皮膜層
3 導電性高分子層
4 陰極層
5 接着層
6 外部電極
7 弁作用金属ワイヤー
8 外装樹脂
9 酸化防止剤
Claims (3)
- 陽極側電極としての弁作用金属と、前記弁作用金属の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層と、固体電解質としての導電性高分子層と、導電ペーストからなる陰極層とを有する固体電解コンデンサにおいて、
前記導電性高分子層の内部、前記誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層との界面、及び、前記導電性高分子層と陰極層との界面のうちの少なくとも1つに酸化防止剤が含まれ、
前記酸化防止剤が、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれか1種類以上からなることを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 陽極側電極としての弁作用金属と、前記弁作用金属の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層と、固体電解質としての導電性高分子層と、導電ペーストからなる陰極層とを有する固体電解コンデンサにおいて、
前記導電性高分子層の内部、前記誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層との界面、及び、前記導電性高分子層と陰極層との界面のうちの少なくとも1つに酸化防止剤が含まれ、
前記酸化防止剤には、水素供与しラジカルを安定化させる能力を有する酸化防止剤としての、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む第1の群と、過酸化物を分解する能力を有する酸化防止剤としての、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤を含む第2の群との各群につき1種類以上の酸化防止剤が選択され混在させて用いられたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 陽極側電極としての弁作用金属と、前記弁作用金属の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜層と、固体電解質としての導電性高分子層と、導電ペーストからなる陰極層とを有する固体電解コンデンサにおいて、
前記誘電体酸化皮膜層と導電性高分子層との界面に酸化防止剤を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
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