JP2007287450A - 透明導電性基材 - Google Patents

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【課題】透明性と導電性に優れ、かつ耐久性にも優れた、特にタッチパネルに適した透明導電性基材を提供すること。
【解決手段】基材、下地膜及び透明導電膜がこの順で積層されてなる透明導電性基材であって、前記透明導電膜の原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が1.0〜5.0nmであることを特徴とする透明導電性基材。このような透明導電膜の表面形状を呈するためには、下地膜として酸化亜鉛又は酸化第二スズを特定の条件で成膜するのが好ましい。また透明導電性基材には、酸化ケイ素膜などをさらに積層してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明導電性基材に関する。より詳しくは、透明性と導電性に優れ、かつ耐久性にも優れた、特にタッチパネルに適した透明導電性基材に関する。
タッチパネルは、2枚の透明導電性基材の電極面を相対するように配置された構造を有し、タッチペン又は指の押し圧により電極面どうしが接触して導通により位置検出をする。そして2枚の電極面が繰り返し接触するために電極の変形や傷つきが起こりやすかった。
そこで、従来のタッチパネルは、ペン又は指入力に対する耐久性の向上を図るために、種々の工夫がなされてきた。
たとえば、スズドープ酸化インジウムなどの透明導電膜自体に着目した方法としては、透明導電膜の金属酸化物の粒径を限定したり(特許文献1参照)、マイクロ波により透明導電膜を結晶化させたり(特許文献2参照)、また、透明導電膜を加熱処理して膜表面に針状突起を設けたもの(特許文献3)などがある。
また、基材と透明導電性膜との間に中間層を設けることにより耐久性の向上を目指したものとしては、透明な金属(酸化)薄膜を設け、これらの膜厚と屈折率が適切な関係になるように選択したもの(特許文献4)、基材と透明導電性膜との間に設けた下地層の表面形状に着目して、下地層の表面形状を中心線平均粗さ(Ra)が100〜300nm,かつ凹凸の平均間隔(Sm)が20〜100μm,十点平均粗さ(Rz)が0.6〜7.0μmの範囲となるようにしたもの(特許文献5参照)などがある。
特開2005−183310号公報 特開2005−141981号公報 特開2005−205903号公報 特開2005−235678号公報 特開2003−316505号公報
本発明は、膜の表面形状に凹凸をつけるという観点から、透明性及び導電性を損なわず、かつ耐久性に優れた透明導電性基材及びそれを用いたタッチパネルを提供することにある。
本発明者らは、基材と透明導電膜との間に設けた下地層の表面形状に着目し、下地膜用薬剤と成膜温度を選択することにより、透明性及び導電性を損なわず、かつ耐久性の向上に効果のある表面形状とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)基材、下地膜及び透明導電膜がこの順で積層されてなる透明導電性基材であって、前記透明導電膜の原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が1.0〜5.0nmである透明導電性基材、(2)透明導電膜の膜厚が10〜20nmである上記(1)記載の透明導電性基材、(3)下地膜が酸化亜鉛又は酸化第二スズである上記(1)又は(2)に記載の透明導電性基材、(4)下地膜の原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が0.7〜5.0nmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明導電性基材、(5)さらにその他の層を積層した上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明導電性基材、(6)その他の層が酸化ケイ素膜である上記(5)記載の透明導電性基材、(7)透明導電膜がスズドープ酸化インジウム膜である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の透明導電性基材である。
また本発明は、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の透明導電性基材を有するタッチパネルである。
タッチパネルにおける透明導電性基材の表面形状は、その凹凸が緩いと導電膜部分の接触面積が大きくなり、入力時の磨耗劣化度合いが大きくなる。一方、凹凸がきついと透明性にかける。本発明の透明導電性基材は、下地層の表面形状を原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が0.7〜5.0nmとなる凹凸を設けることにより、その上に積層する透明導電膜の平均面粗さ(Ra)が1.0〜5.0nmとなり、それをタッチパネルに使用した場合に、上下ガラスの貼り付きを減らし、耐久性を向上するのにもっとも好ましいことがわかった。
また、実施例の測定結果からもわかるとおり、下地膜を積層しても透明性及び導電性が実質的に低下することがなく、酸化ケイ素膜を下地膜と透明導電膜の間に設けた場合には、酸化ケイ素膜を設けない場合に比して透過率、導電性ともに向上することがわかった。
なお、従来技術に例示されている特開2003−316505号公報に記載された下地膜は基材と透明導電性膜との間に設けた下地層の表面形状に着目した点で類似しているが、当該従来技術は基材上に樹脂ワニスを塗布して熱また光により硬化させて作製されたものであるのに対し、本発明においては、酸化亜鉛又は酸化スズのような金属酸化物を特定温度で成膜するものである。このような下地用薬剤を用いて成膜することにより、上記特開2003−316505号公報に記載された下地膜とは異なる形状を持つ下地膜を成膜することができ、それにより、あらたに産業上利用可能な透明導電性基材を提供することが可能となった。
本発明の透明導電性基材は、基材、下地膜及び透明導電膜がこの順で積層されたものであるが、さらにその他の層を中間層又はコーティング層として積層させることもできる。
(基材)
本発明の透明導電性基材に用いられる基材は、550nmの波長の光の透過率が70%以上であれば特に制限はなく、任意の材質、形状、付加的構成をとることができる。材質としては、たとえば、アルカリガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートなどのポリエステル、ポリエーテル系樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂などがあり、ここでは特に、ガラスが好ましい。タッチパネルに使用する場合には、ガラスの550nmの波長の光の透過率は、80%以上であることが好ましいが、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
(下地膜)
本発明の下地膜は、原子間力顕微鏡(AFM)による平均面粗さ(Ra)が0.7〜5.0nm、好ましくは1.0〜5.0nmである。最大高低差(RP−V)は通常10〜60nmであるが、好ましくは10〜30nmである。
平均面粗さ(Ra)とは、基準面(指定面の高さの平均値となるフラット面)から指定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、次式で算出される。
Ra=1/S0∬|F(X,Y)−Z0|dXdY
ここで、S0は基準面の面積、Z0は基準面の高さ、F(X,Y)は座標(X,Y)における指定面の高さを表す。
平均面粗さ(Ra)及び最大高低差(RP−V)を算出するために必要な測定値は、例えばNanopics(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)等の原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。本発明における平均面粗さ及び最大高低差の数値は、それぞれ、対象となる膜表面の縦4μm×横4μmの任意の範囲における平均面粗さ及び最大高低差を意味する。
本発明における下地膜の膜厚は、通常5〜20nmである。5nmより小さいと成膜が困難であり、20nmを越えると透過率が下がる。膜厚は、例えばSE800(SENTECH社製)等の分光エリプソメーターを用いて測定することができる。
本発明の下地膜の材質としては、原子間力顕微鏡(AFM)による平均面粗さ(Ra)が0.7〜5.0nmである膜を形成し得る限り特に制限されないが、金属酸化物が好適である。特に酸化亜鉛(ZnO)や酸化第二スズ(SnO)が好ましい。
酸化亜鉛用の薬剤としては、熱分解して酸化亜鉛になるものが好ましく、たとえば、ジンクアセチルアセトネート、オクチル酸亜鉛、酢酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、硝酸亜鉛などを例示することができ、好ましくはネオデカン酸亜鉛である。
一方、酸化第二スズ用の薬剤としては、熱分解して酸化第二スズとなるものが好ましく、例えば、塩化第二スズ、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、テトラブチルスズ、スタニアスオクトエート(Sn(OCOC15)、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート等を例示することができ、ジブチルスズジアセテートが好ましい。
(透明導電膜)
本発明における透明導電膜は、具体的には、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンドープ酸化亜鉛膜及びインジウムドープ酸化亜鉛膜等を例示することができるが、ここでは特にスズドープ酸化インジウム膜が好適である。原子間力顕微鏡(AFM)による平均面粗さ(Ra)は1.0〜5.0nmを有する。最大高低差(RP−V)は通常10〜60nmであるが、好ましくは10〜30nmである。また、透明導電膜の膜厚は、特にタッチパネル用としては10〜20nmが好ましい。
(その他の層)
本発明の透明導電性基材は、本発明の基材、下地膜及び透明導電膜のみをこの順で有していてもよいが、本発明の透明導電性基材の透明性及び導電性を損なわない限り、これら以外に任意の層を有していてもよい。そのような層として、透明導電膜の外側の面、下地膜と透明導電膜の間、基材と下地膜の間、あるいは基材の外側の面に、1層又は2層以上設けることができる。その他の膜の具体例としては、酸化ケイ素膜、酸化マグネシウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化ゲルマニウム膜、反射防止膜、カラーフィルター、配向膜、液晶膜等が挙げられる。また、本発明の透明導電性基材はいずれかの部分に1層又は2層以上の空気層を有していてもよい。また、本発明の透明導電性基材は、本発明の基材、下地膜及び透明導電膜をこの順でそれぞれ1層ずつ有していればよいが、本発明の基材、下地膜及び透明導電膜のいずれか1つ又は2つ以上を2層以上有していてもよい。例えば、基材、下地膜、透明導電膜、下地膜の順で有するものや、透明導電膜、下地膜、基材、下地膜、透明導電膜の順で有するものも、本発明の透明導電性基材に含まれる。
(膜の製造法)
本発明の膜の製造方法としては、スパッター法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法(CVD法)、パイロゾル法等の一般的な成膜方法を用いることができる。スパッター法によれば、例えば亜鉛化合物を酸素ガス存在下で焼結させたもの等をターゲットとして用いることにより、酸化亜鉛からなる下地膜を成膜することができる。また、電子ビーム法やイオンプレーテイング法によれば、例えば亜鉛化合物を酸素ガス存在下で焼結させたもの等を蒸発物質として用いることにより、酸化亜鉛からなる下地膜を成膜することができる。また、化学気相成膜法やパイロゾル法によれば、例えば亜鉛化合物を含有する有機溶媒溶液(下地膜形成液)等を蒸発物として用いることにより、酸化亜鉛からなる下地膜を成膜することができる。
化学気相成膜法(CVD法)、パイロゾル法等で用いる蒸発物中の有機溶媒溶液としては、成膜を妨げない限り特に制限はないが、アセトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等を例示することができる。
なお、本発明の下地膜を成膜するにはパイロゾル法が好ましく、パイロゾル法による下地膜の成膜温度は通常420〜430℃程度で行われるが、本発明においてはそれよりも高温度で行うのが好ましい。酸化亜鉛膜の場合は、450〜500℃、好ましくは470〜490℃であり、酸化第二スズ膜の場合には、450〜550℃、好ましくは490〜520℃である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
以下の実施例は、いずれもパイロゾル法によりガラス基板に透明導電性積層体を作製した。
(実施例1)ガラス/ZnO/SiO2/ITO積層体
500℃に加熱したコンベアー炉を3基(炉(1)〜(3))連結し、アルカリガラス基板(300×400×0.7mm)をベルトコンベアー内に投入し、第1基においては酸化亜鉛膜形成用溶液(0.2モル/lのネオデカン酸亜鉛を含むエタノール溶液)、第2基においてはSiO2膜形成溶液(テトラエトキシシラン)、第3基においてはITO膜形成溶液(塩化第2スズを12%含むインジウムアセチルアセトンを0.2モル/l含むアセチルアセトン溶液)をそれぞれ用い、超音波で霧滴状にして空気をキャリアガスとしてコンベアー炉の中に吹き込み、ガラス基板の表面に接触させて熱分解させることにより、積層体を連続的に作製した。得られた積層体は、ガラス/ZnO(10nm)/SiO2(30nm)/ITO(18nm)であった。
(実施例2)ガラス/SnO2/SiO2/ITO積層体
コンベアー炉第1基において酸化第二スズ膜形成用溶液(0.2モル/lのジブチルスズジアセテートを含むアセチルアセトン溶液)を使用した以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。得られた積層体は、ガラス/SnO2(15nm)/SiO2(30nm)/ITO(18nm)であった。
(実施例3)ガラス/ZnO/ITO積層体
コンベアー炉第2基においてSiO2膜形成溶液を噴霧することなく基材を通過させて行った以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。得られた積層体は、ガラス/ZnO(10nm)/ITO(18nm)であった。
(実施例4)ガラス/SnO2/ITO積層体
コンベアー炉第1基において酸化第二スズ膜形成用溶液(0.2モル/lのジブチルスズジアセテートを含むアエチルアセトン溶液)を使用した以外は、実施例3と同じ方法で積層体を作製した。得られた積層体は、ガラス/SnO2(15nm)/ITO(18nm)であった。
他方、比較のため、下地膜を有しない積層体を作製した。
(比較例1)ガラス/ITO積層体
コンベアー炉第1基において下地膜形成用溶液を噴霧することなく基材を通過させた以外は、実施例3と同じ方法で積層体を作製した。得られた積層体は、ガラス/ITO(18nm)であった。
(比較例2)ガラス/SiO2/ITO積層体
コンベアー炉第1基においては下地膜形成用溶液を噴霧することなく基材を通過させた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。得られた積層体は、ガラス/SiO2(30nm)/ITO(18nm)であった。
上記実施例1〜4及び比較例1〜2について次の測定を行った。
(シート抵抗値)
4端子4深針法により、面内9点を測定しその平均値を求めた。その結果を表1に示す。実施例1及び2はガラス/下地膜/SiO2膜/ITO膜からなる積層体であり、比較例2がそれらに対応する。また、実施例3及び4はガラス/下地膜/ITO膜からなる積層体であり、比較例1がそれらに対応する。測定結果から、下地膜を付加してもシート抵抗値はむしろ低くなっており、導電性が低下しないことが分かった。
Figure 2007287450
(可視光透過率)
U4000(日立社製)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
表2には、測定波長400、500、500及び700nmにおけるそれぞれの透過率(%)を表示した。実施例1〜3は比較例と同等の透過率を示した。実施例4においてやや低い透過率を示したが、実用的には問題のない程度であった。
Figure 2007287450
(平均面粗さRa及び最大高低差RP−V)
原子間力顕微鏡(Nanopics:エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて測定した。その結果を図1に示す。
図1の結果から、本発明の透明導電性基材を用いた場合、平均面粗さが1.0nmより大きい膜が面内均一に得られ、比較例1〜2に比べ凹凸を有する膜が得られる。また、SiO2を成膜しても、その凹凸は失われることが無いことがわかった。
図1は、本発明の実施例1〜4及び比較例1〜2のそれぞれについての、原子間力顕微鏡(Nanopics:エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて測定した表面構造の写真の図である。

Claims (8)

  1. 基材、下地膜及び透明導電膜がこの順で積層されてなる透明導電性基材であって、前記透明導電膜の原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が1.0〜5.0nmであることを特徴とする透明導電性基材。
  2. 透明導電膜の膜厚が10〜20nmであることを特徴とする請求項1記載の透明導電性基材。
  3. 下地膜が、酸化亜鉛または酸化第二スズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性基材。
  4. 下地膜の原子間力顕微鏡による平均面粗さ(Ra)が0.7〜5.0nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基材。
  5. さらに、その他の層を積層したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性基材。
  6. その他の層が酸化ケイ素膜であることを特徴とする請求項5記載の透明導電性基材。
  7. 透明導電膜がスズドープ酸化インジウム膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性基材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性基材を有することを特徴とするタッチパネル。
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