JP2007283489A - 木質系材料の射出成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、射出工程で金型に注入された成形材料を金型内で成形して離型して成形体を得る成形工程とを経る。射出装置に備えられたスクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュとし、射出工程において、加熱筒内で成形材料を加熱する温度の最大値は100℃以上180℃以下とする。
【選択図】図3
Description
(1)木質系材料の射出成形方法であって、木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、前記成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により前記加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、前記成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、前記射出工程で金型に注入された成形材料を当該金型内で成形し離型して成形体を得る成形工程と、を有し、前記スクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュであり、前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度の最大値が100℃以上180℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(2)上記(1)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記スクリュは、圧縮比が0.9以上1.2以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記金型の温度は、30℃以上110℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(4)上記(1)または(2)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記金型の温度は、成形材料を金型へ注入するときは80℃以上180℃以下であって、離型して成形体を得るときは20℃以上70℃以下に調整することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度は、前記加熱筒の前方側ほど高いことを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(6)上記(1)から(5)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記加熱筒は、熱媒体が循環して加熱する方式であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(7)上記(1)から(6)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記成形材料の含水率は、2%以上20%以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(8)上記(1)から(7)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記成形工程において、前記成形体の含水率が4.0%以下となるように水分を除去することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(9)上記(1)から(8)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法によって成形された成形体。
本発明に係る木質系材料の射出成形方法は、図3のフローシートに示すように、「水蒸気処理工程」、「射出工程」、「成形工程」の3つの工程を備えている。
以下、本発明を特徴付ける「水蒸気処理工程」、「射出工程」、「成形工程」の各工程についてそれぞれ順に説明する。
水蒸気処理工程では、原料である木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る。この「木質系材料を水蒸気に接触させる」処理のことを、本明細書では「水蒸気処理」と呼ぶことにする。
水蒸気処理工程では、木質系材料を飽和蒸気あるいは過熱蒸気等に接触させる。具体的には、例えば耐圧容器内に木質系材料を投入して、この耐圧容器内に例えばボイラー等の供給源から水蒸気を供給する。この水蒸気処理工程においては、150℃以上230℃以下の水蒸気を木質系材料に接触させるのが好ましい。このような温度範囲の水蒸気を木質系材料に接触させることによって、木質系材料に含まれるリグニン、ヘミセルロース、セルロース等を分解することができる。水蒸気の温度が150℃未満であると、木質系材料に含まれているリグニン、ヘミセルロース、セルロースなどの成分が分解しにくく、230℃を超えると、分解により生じた成分が再縮合して可塑化を阻害する可能性がある。より好ましくは、水蒸気の温度は200℃である。
また、水蒸気処理においては、3気圧以上その温度での飽和蒸気圧以下の水蒸気に木質系材料を接触させるのが好ましい。水蒸気の圧力が3気圧より低いと、木質系材料の温度の上昇が遅く、木質系材料に含まれるリグニン、ヘミセルロース、セルロース等の加水分解等の進行が著しく遅くなる場合がある。より好ましくは、水蒸気の圧力はその温度の飽和蒸気圧である。
成形材料の乾燥は、常温下でも高温下でも実施し得るが、好ましくは、水蒸気処理の後、成形材料に対して温風を吹き付ける等により高温下にて乾燥する。
射出工程では、加熱筒及びスクリュを備える射出装置によって成形材料を加熱しながら加圧することにより可塑化させ、その可塑化した成形材料を射出して金型に注入する。
射出装置に投入する成形材料の含水率は、2%以上20%以下が好ましい。ここでいう成形材料の含水率とは、成形材料の絶乾質量に対する当該成形材料が含んでいる水分の割合を百分率で表した値(=(成形材料が含んでいる水分の質量÷成形材料の絶乾質量)×100)のことである。射出装置に投入する成形材料の含水率が2%未満の場合には、射出装置内において成形材料を加熱しながら加圧しても流動性が発現しにくくなる。反対に、射出装置に投入する成形材料の含水率が20%を超えると、後述の成形工程で得られる成形体の水分が高くなり、成形体の強度が低下したり、成形体が水分を含むことによって時間が経ったときに臭気が発生する恐れがある。射出装置に投入する成形材料の含水率は、より好ましくは、6%以上10%以下である。
射出装置11は、加熱筒21を備え、その内部にスクリュ41を備えている。スクリュ41の後方には、スクリュ41と同軸方向にピストン運動し、スクリュ41を進退させる射出シリンダ13と、スクリュ41を回転させるモーター15とが備えられている。加熱筒21には、スクリュ41の溝の後端付近に成形材料を投入するためのホッパー51が設けられており、先端には成形材料を金型61のキャビティ63へ射出するためのノズル53が設けられている。
まず、第1動作において、スクリュ41が回転し、ホッパー51から加熱筒21内に投入される成形材料を加熱筒21の前方へ移送する。このとき、スクリュ41自体は、前方に移送されて加熱筒21内に溜まった成形材料の圧力を受けて徐々に後退する。次に、第2動作において、第1動作で後退したスクリュ41が射出シリンダ13によって押圧されて前進する。射出装置11は、この第1動作及び第2動作により、成形材料を加熱しながら加圧して可塑化させ、その可塑化した成形材料を、第2動作で、金型61へ射出する。なお、成形装置11は、加熱筒21により積極的に成形材料を加熱するとともに、第1動作においては、スクリュ41の回転により生じるせん断熱によっても成形材料を加熱することとなる。
一般に、熱可塑性合成樹脂用の射出装置では、成形材料の逆流を防止するための逆止弁が設けられる。この逆止弁とは、スクリュが回転して成形材料を前方に移送するとき(第1動作において)は成形材料を通過させ、スクリュが前進し成形材料を射出するとき(第2動作において)は、成形材料を通過させず、成形材料が逆流して後方へ流れるのを防ぐ機能を有する部位あるいは部品のことである。逆止弁としては、例えば、スクリュの外周に沿って帯状の溝が設けられており、その溝をめぐって環状の可動部材が備えられており、その環状の可動部材が前後に動くことにより、成形材料が通過可能な状態と、成形材料が後方へ通過できない状態とに変位する、一般にリングバルブあるいは逆流防止リングと称されるものなどを使用することができる。
図1に示す加熱筒21には、複数の熱媒体通路25a,25b,25c,25dが設けられている。熱媒体通路25aは、加熱筒21の内部を掘り抜いた状態で設けられており、加熱筒21の内部において前後方向に往復しながら周方向に一周するように設けられている。熱媒体通路25aの一端に設けられた流入口27aに熱媒体が流し込まれると、熱媒体が加熱筒21の前後方向を往復するように流れながら、加熱筒21の周方向に一周し、他端に設けられた流出口29aから流出する。熱媒体通路25b,25c,25dは、加熱筒21の外周に形成された螺旋状に溝によって構成されており、この螺旋状の溝を覆うようにジャケットカバー23が設けられている。熱媒体通路25b,25c,25dの一端に設けられた流入口27b,27c,27dに熱媒体が流し込まれると、熱媒体が加熱筒21の外周に設けられた螺旋状の溝に沿って流れた後に、他端に設けられた流出口29b,29c,29dから流出する。
熱媒体としては、水、油等の液体や、水蒸気等の気体を用いることができる。温調器等においてあらかじめ温度調節された熱媒体を熱媒体通路25a,25b,25c,25dを介して循環させることによって、加熱筒21の温度を一定にコントロールすることができる。また、スクリュ41と成形材料との間のせん断熱等により加熱筒21の内部の温度が過剰に高くなった場合は、熱媒体通路25a,25b,25c,25dを通過する熱媒体の吸熱作用により、加熱筒21の温度が一定に保たれるようにコントロールすることができる。したがって、熱媒体を循環させて加熱筒21の温度をコントロールする方式の場合には、加熱筒21の内部が過剰に加熱されたり、局部的に加熱されるのを防止することができる。
加熱筒21を、前方から、熱媒体通路25aで加熱する第1ゾーンI,熱媒体通路25bで加熱する第2ゾーンII,熱媒体通路25cで加熱する第3ゾーンIII,熱媒体通路25dで加熱する第4ゾーンIV,およびホッパー下ゾーンVの5区域に分けて個別に加熱する温度を設定する。加熱する温度は、加熱筒の長さによっても相違するが、一例として、第1ゾーンIと第2ゾーンIIは100℃以上180℃以下、第3ゾーンIIIは70℃以上110℃以下、第4ゾーンIVは50度以上100℃以下、ホッパー下ゾーンVは40℃以上50℃以下の範囲内で前方の区域ほど高くなるように設定する。より好ましくは、加熱する温度は、第1ゾーンIと第2ゾーンIIは130℃以上150℃以下、第3ゾーンIIIは80℃以上100℃以下、第4ゾーンIVは60℃以上70℃以下、ホッパー下ゾーンVは40℃以上50℃以下の範囲内で前方の区域ほど高くなるように設定する。
なお、加熱する温度が高い第1ゾーンIから第4ゾーンIVは、熱媒体として油を用いる。加熱する温度が低いホッパー下ゾーンVは、図示していないが、加熱筒21内に周方向に掘り抜かれた熱媒体通路に水を流通させることによって加熱することができる。なお、熱媒体は、第1ゾーンIと第2ゾーンIIのみに油を使用し、その他は水を使用してもよい。
加熱筒21が熱媒体を循環させて加熱する方式である場合は、成形材料を「加熱する温度」は、上述の加熱筒21に備えられた温度センサー31によって測定することができる。この他にも、例えば、加熱筒21を加熱するための熱媒体の温度を測定し、この熱媒体の温度を「加熱する温度」とすることも可能である。この場合、熱媒体の温度は、熱媒体の温度を一定にコントロールするために射出装置11とは別に設置されている温調器に備えられた温度センサー等によって測定することができる。
次に、第2動作では、スクリュ41が前進することにより、スクリュ41の前方側に滞留した成形材料が加圧され、加熱筒21の先端に設けられたノズル53から、図示しない型締装置により型締された金型61のキャビティ63へ射出される。成形材料は、第1動作で射出可能なほどに可塑化されなかった場合であっても、この第2動作で加圧されることにより十分に可塑化され、射出可能となる。
また、スクリュ41の外面には、成形材料との摩擦低減用のコーティング処理を施すようにしてもよい。例えば、ポリテトラフルオロエタンをコーティングすることにより、スクリュ41の外面に成形材料が付着するのを防止することができる。特に、スクリュ41の前方側に、このような摩擦低減用のコーティング処理を施すのが好ましい。
成形工程では、射出工程で金型61に注入された成形材料を当該金型61内で成形し離型して成形体を得る。すなわち、射出工程で可塑化し、金型61のキャビティ63内へ注入された成形材料を、金型61(キャビティ63)内で冷却して固化させることにより成形し、金型61を開いて離型することにより成形体を得る。
金型61の温度は、成形工程を通してほぼ一定でもよいし、あるいは、成形材料を金型61へ注入するときと、離型して成形体を得るときで変化させてもよい。
第1に、より複雑な形状の成形体を得ることができる。これは、流動性が高い状態のままの成形材料を金型61へ注入することができることにより、金型61(キャビティ63)が複雑な形状であっても、成形材料を金型61(キャビティ63)の隅々までスムーズに充填することができるためである。
第2に、成形体の表面にウェルドラインが生じ難くなる。ウェルドラインとは、成形材料を金型内に注入する際に成形材料の表面温度が低下することにより、成形材料が合流する部分に生じる細い線のことである。成形材料を金型61へ注入するときの金型61の温度を80℃以上180℃以下とすることにより、注入時に成形材料の温度がほとんど低下しないため、ウェルドラインが生じ難く、外観のよい成形体を得ることができる。
第3に、金型61の表面形状を成形体の表面に忠実に転写することができる。これは、流動性が高い状態のままの成形材料を金型61へ注入することができることにより、成形材料が金型61の表面に隙間なく密着した状態となるためである。金型41の表面が鏡面状であれば、得られる成形体の表面がより平滑になる。その結果、成形体は光沢が増し、よりプラスチック様の外観となる。また、金型61の表面に細かい模様があれば、その模様を成形体の表面に転写することもでき、例えば、表面にシボ(凹凸)を有する成形体を得ることができる。
成形体の水分を除去する方法としては、金型61のキャビティ63の当接面に脱気用の溝(一般にガスベントあるいは単にベントと称される)を設け、その脱気用の溝から成形材料が発する水蒸気を金型61の外へ排出する方法が挙げられる。その他、成形工程中に、閉じている金型61の型板同士の間隔を一時的にわずかに広げて成形材料が発する水蒸気を金型61の外へ排出し、それから再度型板同士の間隔を閉じて成形材料を成形する方法などを用いることもできる。
スクリュの前方において成形材料が炭化したのは、スクリュの圧縮比が1.5と高いため、スクリュの前方において成形材料に高圧がかかりスクリュが空回りしたことが原因であると考えられた。それにより発生したスクリュのせん断熱により成形材料が局所的に加熱されて劣化して可塑性を発現せず、その滞留した可塑性を有しない成形材料がさらに過剰に加熱されて炭化したものと推察された。また、スクリュの外周において、加熱筒との接触部分の成形材料だけが劣化して固まったのは、スクリュに逆止弁があることにより、成形材料がスクリュの前方へ移送されにくい状態となり滞留し、滞留した成形材料がスクリュのせん断熱により局部的に加熱されたためであると考えられた。
この結果から、圧縮比が高く、逆止弁を備えたスクリュを備えた射出装置を用いると、スクリュのせん断熱により、成形材料が過熱して変質して固まったり、炭化したりすることが分かった。
この結果から、木質系材料から得られた成形材料を射出装置を用いて可塑化する場合は、圧縮比が低く逆止弁を備えない直線形のスクリュを備えた射出装置を用いることにより、成形材料が局部的に過剰に加熱されて劣化して滞ることなく、スムーズに可塑化して射出することができることが明らかとなった。
13 射出シリンダ
15 モーター
21 加熱筒
25a,25b,25c,25d 熱媒体通路
41 スクリュ
61 金型
63 キャビティ
Claims (9)
- 木質系材料の射出成形方法であって、
木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、
加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、前記成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により前記加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、前記成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、
前記射出工程で金型に注入された成形材料を当該金型内で成形し離型して成形体を得る成形工程と、を有し、
前記スクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュであり、
前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度の最大値が100℃以上180℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記スクリュは、圧縮比が0.9以上1.2以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1または請求項2に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記金型の温度は、30℃以上110℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1または請求項2に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記金型の温度は、成形材料を金型へ注入するときは80℃以上180℃以下であって、離型して成形体を得るときは20℃以上70℃以下に調整することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度は、前記加熱筒の前方側ほど高いことを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記加熱筒は、熱媒体が循環して加熱する方式であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記成形材料の含水率は、2%以上20%以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
前記成形工程において、前記成形体の含水率が4.0%以下となるように水分を除去することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。 - 請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法によって成形された成形体。
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