JP2007283489A - 木質系材料の射出成形方法 - Google Patents

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恭夫 高須
Toshiko Takahashi
勤子 高橋
Haruhisa Tominaga
晴久 富永
Masami Mitani
昌巳 三谷
Riichi Nakano
利一 中野
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Abstract

【課題】植物由来の木質系材料をプラスチック材料と同様に射出成型法によって連続的に成形することのできる技術を提供する。
【解決手段】木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、射出工程で金型に注入された成形材料を金型内で成形して離型して成形体を得る成形工程とを経る。射出装置に備えられたスクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュとし、射出工程において、加熱筒内で成形材料を加熱する温度の最大値は100℃以上180℃以下とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、水蒸気処理した木質系材料を射出装置を用いて可塑化して金型に注入し、当該金型内で成形して成形体を得ることを特徴とする木質系材料の射出成形方法に関するものである。
プラスチック材料からなる成形品は、射出成形法によって連続的に成形が可能であることから、現在では、日用品から機械部品に至るまでありとあらゆる用途で用いられるようになっている。射出成形法によれば、加熱筒内にスクリュを備えた射出装置を用いて、加熱しながらスクリュを回転してプラスチック材料を溶融し、スクリュの前進により溶融したプラスチック材料を金型内に射出して成形することにより、連続的に効率よく成形体を得ることができる。
一方、現在、プラスチック材料の代替材料として、木材を利用する試みがいろいろとなされている。例えば、特許文献1には、樹木等の木質系材料に由来するリグニンとセルロースを含有する材料を、水蒸気処理した後に加熱することによって可塑化して成形する方法が開示されている。この方法によれば、従来は金属やエンジニアリングプラスチック等により形成されていたギヤやカムなどの各種の機械部品を、植物由来の木質系材料のみによって形成することが可能である。
しかし、木質系材料は、プラスチック材料とは異なり、加熱加圧しても本来なかなか流動化しにくい材料である。しかも、木質系材料は加熱しすぎると炭化する性質がある。そのため、木質系材料をプラスチック材料と同様に射出成形法により成形しようとした場合には、例えばスクリュの回転により生じるせん断熱等により部分的に炭化が進行したり、木質系材料の流動性が低いために金型内に射出することができないなどの問題があった。
特開2003−165844号公報
そこで、本発明は、植物由来の木質系材料をプラスチック材料と同様に射出成形法によって連続的に成形することのできる技術を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段は、以下の(1)〜(9)の発明である。
(1)木質系材料の射出成形方法であって、木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、前記成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により前記加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、前記成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、前記射出工程で金型に注入された成形材料を当該金型内で成形し離型して成形体を得る成形工程と、を有し、前記スクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュであり、前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度の最大値が100℃以上180℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(2)上記(1)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記スクリュは、圧縮比が0.9以上1.2以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記金型の温度は、30℃以上110℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(4)上記(1)または(2)に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記金型の温度は、成形材料を金型へ注入するときは80℃以上180℃以下であって、離型して成形体を得るときは20℃以上70℃以下に調整することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度は、前記加熱筒の前方側ほど高いことを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(6)上記(1)から(5)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記加熱筒は、熱媒体が循環して加熱する方式であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(7)上記(1)から(6)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記成形材料の含水率は、2%以上20%以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(8)上記(1)から(7)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、前記成形工程において、前記成形体の含水率が4.0%以下となるように水分を除去することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
(9)上記(1)から(8)のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法によって成形された成形体。
本発明によれば、木質系材料からなる成形体を射出成形法により効率的かつ連続的に製造することが可能となる。その結果、木質系材料からなる成形体の大量生産が可能となるとともに、より複雑な形状の成形体を製造することが可能となる。
本発明は、木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、前記成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により前記加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、前記成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、前記射出工程で金型に注入された成形材料を当該金型内で成形し離型して成形体を得る成形工程と、を有し、前記スクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュであり、前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度の最大値が100℃以上180℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法である。
本発明に係る木質系材料の射出成形方法は、図3のフローシートに示すように、「水蒸気処理工程」、「射出工程」、「成形工程」の3つの工程を備えている。
本発明における「木質系材料」とは、典型的には、リグニンとヘミセルロースとセルロースとを含有するリグノセルロース系材料のことである。「木質」という単語がその名称に付されているが、木材に限らず、草本類からも採取することが可能である。このような木質系材料は、例えば、スギ、ヒノキ、ブナなどの各種の樹木から採取することが可能である。また、ケナフ、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類から採取することが可能である。あるいは、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈り草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの廃棄物から採取することも可能である。さらに、木質系材料は、殆どリグニンを含まない上質紙の古紙と、パルピングの工程で廃棄物として排出されるリグニンとを混合することによって得ることも可能である。本発明においては、これらの木質系材料の2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明において、原料として使用する木質系材料は、水蒸気処理工程で水蒸気と均一に接触させることができるように細分化されているものが好ましい。木質系材料が細分化されていると、水蒸気と均一に接触させることができるのみならず、木質系材料を水蒸気に接触させるために必要とされる時間を短縮することが可能になる。したがって、木質系材料は、例えば、フレーク状、チップ状あるいは微粉状に加工されている木材を使用するのが好ましい。木質系材料は、木材の切断加工の際に生ずる鋸くずやプレーナー屑等をそのまま使用することも可能である。
木質系材料は、水蒸気と接触させた後に加熱しながら加圧することによって、可塑性及び流動性を発現することが本発明者らによって見出されている。その理論的な根拠は必ずしも明らかではないが、木質系材料に含まれているリグニン、ヘミセルロース、セルロースなどの成分が、水蒸気処理により分解して、その分解後の成分が、加熱により溶融して組織中において流動化することが原因であると考えられている。木質系材料を可塑化させることによって、この木質系材料をプラスチックのように自由な形状に成形することが可能になる。
本発明は、上記の木質系材料の特性を利用して木質系材料を射出成形する方法である。これにより、木質系材料からなる成形体を効率的かつ連続的に製造することが可能になるとともに、木質系材料からなる成形体の大量生産が可能になる。しかも、より複雑な形状の成形体を生産することが可能になる。本発明は、具体的には、木質系材料を水蒸気と接触させて得られた成形材料を、射出装置を用いて加熱しながら加圧して金型内に射出して、成形材料を金型内で成形して成形体を得る射出成形方法である。
以下、本発明を特徴付ける「水蒸気処理工程」、「射出工程」、「成形工程」の各工程についてそれぞれ順に説明する。
[水蒸気処理工程]
水蒸気処理工程では、原料である木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る。この「木質系材料を水蒸気に接触させる」処理のことを、本明細書では「水蒸気処理」と呼ぶことにする。
水蒸気処理工程では、木質系材料を飽和蒸気あるいは過熱蒸気等に接触させる。具体的には、例えば耐圧容器内に木質系材料を投入して、この耐圧容器内に例えばボイラー等の供給源から水蒸気を供給する。この水蒸気処理工程においては、150℃以上230℃以下の水蒸気を木質系材料に接触させるのが好ましい。このような温度範囲の水蒸気を木質系材料に接触させることによって、木質系材料に含まれるリグニン、ヘミセルロース、セルロース等を分解することができる。水蒸気の温度が150℃未満であると、木質系材料に含まれているリグニン、ヘミセルロース、セルロースなどの成分が分解しにくく、230℃を超えると、分解により生じた成分が再縮合して可塑化を阻害する可能性がある。より好ましくは、水蒸気の温度は200℃である。
また、水蒸気処理においては、3気圧以上その温度での飽和蒸気圧以下の水蒸気に木質系材料を接触させるのが好ましい。水蒸気の圧力が3気圧より低いと、木質系材料の温度の上昇が遅く、木質系材料に含まれるリグニン、ヘミセルロース、セルロース等の加水分解等の進行が著しく遅くなる場合がある。より好ましくは、水蒸気の圧力はその温度の飽和蒸気圧である。
水蒸気処理は、水蒸気を木質系材料に適当な時間(例えば数十秒から数十分間程度)接触させることによって完了することができる。水蒸気の圧力や温度が低い場合には、水蒸気と木質系材料との接触時間をより長くすることが好ましい。また、木質系材料が細分化されていない場合には、木質系材料の内部に水蒸気を十分に浸透させるために、木質系材料と水蒸気との接触時間をより長くすることが好ましい。
水蒸気処理の時間は適宜調整することが可能であるが、水蒸気の温度が150℃以上230℃以下の場合、最長でも120分程度で完了するのが好ましい。このようにして得られた成形材料は、射出工程において加熱しながら加圧したときに可塑性及び流動性が発現するようになる。例えば、木質系材料としてフレーク状のイエローポプラを用いる場合、木質系材料に対して水蒸気を20分程度接触させて得られた成形材料は、射出工程にて加熱しながら加圧したときに可塑性を発現する。
水蒸気処理を終了するときには、木質系材料が収容されている耐圧容器等を解放して大気圧に戻せばよく、徐々に圧力を下げることもできるし、一気に大気圧まで解放することもできる。大気圧まで一気に開放する場合には、木質系材料の組織内部で水蒸気の体積が一気に膨張するので、木質系材料を繊維状あるいは粉末状等に粉砕することができる(以下、高圧状態から一挙に圧力開放して木質系材料を粉砕することを、爆砕という)。爆砕によれば、木質系材料を水蒸気処理するのと同時に細分化することができる。木質系材料を爆砕によって細分化することによって、得られた成形材料は、その後の工程において効率的に乾燥させることができる。
水蒸気処理を完了した後は、得られた成形材料を乾燥するのが好ましい。多量に水分を含有する成形材料を射出装置に投入すると、成形材料を加熱しながら加圧して可塑化させる際に、成形材料の内部から水分が気化して良好な成形物が得られない恐れがあるからである。また、水蒸気処理の後に速やかに水分を蒸発させることによって、水分とともに成形材料に含まれる水溶性の成分が溶出してしまうことを防止することができるからである。
成形材料の乾燥は、常温下でも高温下でも実施し得るが、好ましくは、水蒸気処理の後、成形材料に対して温風を吹き付ける等により高温下にて乾燥する。
従来の木質系材料の成形方法においては、成形材料を乾燥した後に、さらに微細状に粉砕する工程を要する場合があった。これは、本来なかなか可塑化しない木質系材料からなる成形材料を、少しでも可塑化しやすくするために行われる。ところが、本発明の木質系材料の射出成形方法にあっては、ここであえて成形材料を微細状に粉砕しなくても、次工程の射出工程において、射出可能なほど十分に可塑化させることができる。射出工程に投入可能な成形材料の形態としては、例えば、チップ状、フレーク状、ペレット状が挙げられる。具体的には、厚さ0.1mm以上、長辺が1.5mm以上のフレーク状、もしくは、長辺が5.0mm以上のチップ状またはペレット状であってもよい。したがって、本発明の木質系材料の成形方法においては、乾燥工程の後に、粉砕する工程を設けることなく、水蒸気処理工程に投入した木質系材料の形態のままの成形材料を射出工程へ投入することが可能である。もちろん、成形材料は、必要に応じてさらに微細状に粉砕してもよい。成形材料を粉砕する場合は、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサー等の粉砕手段を使用することができる。
[射出工程]
射出工程では、加熱筒及びスクリュを備える射出装置によって成形材料を加熱しながら加圧することにより可塑化させ、その可塑化した成形材料を射出して金型に注入する。
射出装置に投入する成形材料の形態は特に限定されない。上述したとおり、チップ状、フレーク状、ペレット状の成形材料であってもよいし、粉砕機によって微粉状に粉砕した成形材料でもよい。
射出装置に投入する成形材料の含水率は、2%以上20%以下が好ましい。ここでいう成形材料の含水率とは、成形材料の絶乾質量に対する当該成形材料が含んでいる水分の割合を百分率で表した値(=(成形材料が含んでいる水分の質量÷成形材料の絶乾質量)×100)のことである。射出装置に投入する成形材料の含水率が2%未満の場合には、射出装置内において成形材料を加熱しながら加圧しても流動性が発現しにくくなる。反対に、射出装置に投入する成形材料の含水率が20%を超えると、後述の成形工程で得られる成形体の水分が高くなり、成形体の強度が低下したり、成形体が水分を含むことによって時間が経ったときに臭気が発生する恐れがある。射出装置に投入する成形材料の含水率は、より好ましくは、6%以上10%以下である。
射出工程で用いる射出装置は、加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えている。この射出装置は、成形材料を加熱筒内で加熱しながらスクリュの回転により加熱筒の前方に移送するのに次いでスクリュを前進させることにより、1本の加熱筒で、成形材料を可塑化し射出して加熱筒の先端に備えられた金型に注入する装置である。
以下では、射出装置の動きを「第1動作」及び「第2動作」に分けて説明する。すなわち、「スクリュの回転により成形材料を加熱筒の前方に移送する」動きのことを「第1動作」と呼び、その第1動作に次いで、「スクリュを前進させて成形材料を金型に射出する」動きのことを「第2動作」と呼ぶ。また、射出装置の方向については、成形材料を射出する方向のことを「前」と呼び、その反対の方向のことを「後」と呼ぶことにする。
以下、図面を参照しながら、本発明に用いられる射出装置について具体的に説明する。図1は、本発明に用いられる射出装置の断面図を示している。
射出装置11は、加熱筒21を備え、その内部にスクリュ41を備えている。スクリュ41の後方には、スクリュ41と同軸方向にピストン運動し、スクリュ41を進退させる射出シリンダ13と、スクリュ41を回転させるモーター15とが備えられている。加熱筒21には、スクリュ41の溝の後端付近に成形材料を投入するためのホッパー51が設けられており、先端には成形材料を金型61のキャビティ63へ射出するためのノズル53が設けられている。
射出装置11の動作について説明する。
まず、第1動作において、スクリュ41が回転し、ホッパー51から加熱筒21内に投入される成形材料を加熱筒21の前方へ移送する。このとき、スクリュ41自体は、前方に移送されて加熱筒21内に溜まった成形材料の圧力を受けて徐々に後退する。次に、第2動作において、第1動作で後退したスクリュ41が射出シリンダ13によって押圧されて前進する。射出装置11は、この第1動作及び第2動作により、成形材料を加熱しながら加圧して可塑化させ、その可塑化した成形材料を、第2動作で、金型61へ射出する。なお、成形装置11は、加熱筒21により積極的に成形材料を加熱するとともに、第1動作においては、スクリュ41の回転により生じるせん断熱によっても成形材料を加熱することとなる。
スクリュ41は、逆止弁を備えない直線形のスクリュを用いる。
一般に、熱可塑性合成樹脂用の射出装置では、成形材料の逆流を防止するための逆止弁が設けられる。この逆止弁とは、スクリュが回転して成形材料を前方に移送するとき(第1動作において)は成形材料を通過させ、スクリュが前進し成形材料を射出するとき(第2動作において)は、成形材料を通過させず、成形材料が逆流して後方へ流れるのを防ぐ機能を有する部位あるいは部品のことである。逆止弁としては、例えば、スクリュの外周に沿って帯状の溝が設けられており、その溝をめぐって環状の可動部材が備えられており、その環状の可動部材が前後に動くことにより、成形材料が通過可能な状態と、成形材料が後方へ通過できない状態とに変位する、一般にリングバルブあるいは逆流防止リングと称されるものなどを使用することができる。
しかし、本発明は、射出装置に逆止弁を備えていないことを特徴とする。すなわち、射出装置に逆止弁を備えると、スクリュと逆止弁との間に形成される成形材料の通路が屈曲していたり、狭くなっていたりする。このような構造であると、第1動作において、成形材料が通路の屈曲部や狭部に詰まりやすくなり、スムーズに成形材料を前方に移送することができなくなってしまう。また、成形材料が逆止弁によって詰まってしまうと、成形材料が局部的に加熱されて炭化したり劣化したりする恐れがある。本発明では、逆止弁をあえて設けておらず、成形材料の通路がまっすぐな直線形のスクリュ41を用いている。この結果、第1動作において、成形材料をスムーズに前方に移送することができる。
また、スクリュ41は、圧縮比が0.9以上1.2以下のスクリュを用いるのが好ましい。圧縮比とは、スクリュ最前部の溝1ピッチの体積に対するスクリュ最後部の溝1ピッチの体積の割合(=スクリュ最後部の溝1ピッチの体積÷スクリュ最前部の溝1ピッチの体積)である。圧縮比が高いスクリュほど、スクリュ前部の溝の体積が後部の溝の体積より小さいことを示す。つまり、スクリュの前方側ほど成形材料の通路が狭くなることを示す。したがって、スクリュの圧縮比を大きくするほど、成形材料が前方に移送されるに従いより高圧で加圧することができる。しかしながら、成形材料は、もともと極めて可塑化しにくい木質系材料から得られたものであるから、スクリュにより移送される際に生じる抵抗が大きく、圧縮比が1.2を超えると、成形材料の抵抗によりスクリュが滑り、空回りしやすくなる。スクリュが空回りすると、スクリュの回転により生じたせん断熱により成形材料が局部的に過剰に加熱され、成形材料の一部が劣化したり、炭化したりする。その結果、成形材料を可塑化させることができなくなる。スクリュの圧縮比が、0.9以上1.2以下であるとスクリュが空回りせずスムーズに成形材料を前方に移送でき、同時に成形材料を適度に加圧することができる。スクリュの圧縮比は、より好ましくは、1.0以上1.2以下であり、最も好ましくは、1.1である。
また、スクリュ41は、直径に対する長さの比(=スクリュ長さ÷スクリュ直径)が16以上22以下であると、第1動作において成形材料を適度に混練できるので好ましい。より好ましくは、直径に対する長さの比が20である。
加熱筒21は、成形材料を加熱する手段を備えている。加熱する手段は特に限定されず、例えば、バンドヒーター等の電熱式のヒーターを加熱筒21の外周に備え付けて加熱する方式や、水や油などの熱媒体を循環させて加熱する方式等の種々の手段を講じることができる。これらの加熱する手段は、単独で用いても、複数を併用しても良い。加熱する手段として熱媒体を循環させて加熱する方式を用いた場合には、熱媒体の加熱作用と吸熱作用とにより、加熱筒21の温度を一定に保つことができ、より好適である。この方法によれば、後述するように、成形材料を加熱できるだけでなく、成形材料が局部的に加熱されて炭化することを防止することができる。
熱媒体を巡回させて加熱筒内を加熱する方式について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1に示す加熱筒21には、複数の熱媒体通路25a,25b,25c,25dが設けられている。熱媒体通路25aは、加熱筒21の内部を掘り抜いた状態で設けられており、加熱筒21の内部において前後方向に往復しながら周方向に一周するように設けられている。熱媒体通路25aの一端に設けられた流入口27aに熱媒体が流し込まれると、熱媒体が加熱筒21の前後方向を往復するように流れながら、加熱筒21の周方向に一周し、他端に設けられた流出口29aから流出する。熱媒体通路25b,25c,25dは、加熱筒21の外周に形成された螺旋状に溝によって構成されており、この螺旋状の溝を覆うようにジャケットカバー23が設けられている。熱媒体通路25b,25c,25dの一端に設けられた流入口27b,27c,27dに熱媒体が流し込まれると、熱媒体が加熱筒21の外周に設けられた螺旋状の溝に沿って流れた後に、他端に設けられた流出口29b,29c,29dから流出する。
熱媒体としては、水、油等の液体や、水蒸気等の気体を用いることができる。温調器等においてあらかじめ温度調節された熱媒体を熱媒体通路25a,25b,25c,25dを介して循環させることによって、加熱筒21の温度を一定にコントロールすることができる。また、スクリュ41と成形材料との間のせん断熱等により加熱筒21の内部の温度が過剰に高くなった場合は、熱媒体通路25a,25b,25c,25dを通過する熱媒体の吸熱作用により、加熱筒21の温度が一定に保たれるようにコントロールすることができる。したがって、熱媒体を循環させて加熱筒21の温度をコントロールする方式の場合には、加熱筒21の内部が過剰に加熱されたり、局部的に加熱されるのを防止することができる。
本発明において、加熱筒21内で成形材料を加熱する温度の最大値は、100℃以上180℃以下であるのが好ましい。加熱筒21内で成形材料を加熱する温度の最大値が100℃未満であると、成形材料が可塑化しにくくなり、一方、180℃を超えると、成形材料に含まれる可塑化に寄与する成分が再縮合するなどして、成形材料の可塑化を阻害するなどの問題が生じうる。また、加熱温度の最大値が180℃を超えると、加熱により成形材料が劣化したり、炭化しやすくなる。加熱筒21による成形材料の加熱温度の最大値は、より好ましくは、130℃以上150℃以下である。
また、加熱筒21内で成形材料を加熱する温度は、加熱筒21の前方側ほど高い方が好ましい。具体的には、加熱筒21を、加熱する温度を個別に設定可能な複数の区域に分けて、加熱筒21の前方側の区域に進むほど加熱温度が高くなるように設定する。このようにすることにより、第1動作においては、加熱筒21の後方側では成形材料はほとんど可塑化せず、成形材料が前方へ移送するに従い徐々に可塑化して流動性を帯びる。それにより、第2動作である射出時にほとんど可塑化していない後方側の成形材料が栓のように作用し、前方に移送されて可塑化した成形材料が後方側に逆流するのを防止することができる。この結果、上述したように、射出装置の逆止弁を省略することが可能である。
図1を参照しながら、加熱筒21において成形材料を加熱する温度の設定方法についてより具体的に説明する。
加熱筒21を、前方から、熱媒体通路25aで加熱する第1ゾーンI,熱媒体通路25bで加熱する第2ゾーンII,熱媒体通路25cで加熱する第3ゾーンIII,熱媒体通路25dで加熱する第4ゾーンIV,およびホッパー下ゾーンVの5区域に分けて個別に加熱する温度を設定する。加熱する温度は、加熱筒の長さによっても相違するが、一例として、第1ゾーンIと第2ゾーンIIは100℃以上180℃以下、第3ゾーンIIIは70℃以上110℃以下、第4ゾーンIVは50度以上100℃以下、ホッパー下ゾーンVは40℃以上50℃以下の範囲内で前方の区域ほど高くなるように設定する。より好ましくは、加熱する温度は、第1ゾーンIと第2ゾーンIIは130℃以上150℃以下、第3ゾーンIIIは80℃以上100℃以下、第4ゾーンIVは60℃以上70℃以下、ホッパー下ゾーンVは40℃以上50℃以下の範囲内で前方の区域ほど高くなるように設定する。
なお、加熱する温度が高い第1ゾーンIから第4ゾーンIVは、熱媒体として油を用いる。加熱する温度が低いホッパー下ゾーンVは、図示していないが、加熱筒21内に周方向に掘り抜かれた熱媒体通路に水を流通させることによって加熱することができる。なお、熱媒体は、第1ゾーンIと第2ゾーンIIのみに油を使用し、その他は水を使用してもよい。
本発明において、加熱筒21内で成形材料を「加熱する温度」は、加熱筒21に備えられた温度センサー(サーモカップル)で測定することができる。図2は、図1に示す加熱筒21のA−A断面図である。図2に示すように、温度センサー31は、加熱筒21に形成された孔に埋め込まれており、例えば、加熱筒21の厚みが約20mmであるときは、加熱筒21の外表面から9mm程度の深さに埋め込むことよって備え付けることができる。
加熱筒21が熱媒体を循環させて加熱する方式である場合は、成形材料を「加熱する温度」は、上述の加熱筒21に備えられた温度センサー31によって測定することができる。この他にも、例えば、加熱筒21を加熱するための熱媒体の温度を測定し、この熱媒体の温度を「加熱する温度」とすることも可能である。この場合、熱媒体の温度は、熱媒体の温度を一定にコントロールするために射出装置11とは別に設置されている温調器に備えられた温度センサー等によって測定することができる。
射出装置11の第1動作では、スクリュ41の圧縮比が1.0より大きいとき、スクリュ41の溝の体積が前方と後方とで異なることにより、成形材料は圧縮(加圧)されながらスクリュ41の前方へ移送される。この第1動作により、成形材料の少なくとも一部が可塑化される。
次に、第2動作では、スクリュ41が前進することにより、スクリュ41の前方側に滞留した成形材料が加圧され、加熱筒21の先端に設けられたノズル53から、図示しない型締装置により型締された金型61のキャビティ63へ射出される。成形材料は、第1動作で射出可能なほどに可塑化されなかった場合であっても、この第2動作で加圧されることにより十分に可塑化され、射出可能となる。
第1動作において、スクリュ41の回転速度は適宜設定可能であり、特に制限されるものではないが、40回転/分以上100回転/分以下であると、成形材料が滑ることによりスクリュ41が空回りすることがないため好ましい。より好ましくは、50回転/分である。なお、第1動作において、スクリュ41の前方に滞留した成形材料にかかる圧力(いわゆる背圧)を測定したところ、この圧力は15MPa〜160MPa程度であった。ただし、この測定結果は、あくまで参考であり、圧力が15MPaより低くても、第2動作において成形材料を射出することは可能である。
第2動作において、射出速度(スクリュが前進する速度)は、500mm/秒程度を最大限として、できるだけ速い方が好ましい。射出速度が速い方が、成形工程で得られる成形体の外観がよくなる傾向があるからである。また、射出圧力(スクリュが前進する際にスクリュの先端にかかる圧力)は、2000kg/cm以上2500kg/cm以下が好ましい。射出圧力が2000kg/cmよりも低い場合、金型61のキャビティ63内へ成形材料を十分に射出充填できない場合がある。
なお、加熱筒21の先端に設けられたノズル53は短い方が好ましい。ノズル53が長い場合、成形材料の射出時にノズル53内で成形材料が冷却されて可塑性が失われ、ノズル53内に成形材料が詰まる可能性があるからである。これに対し、ノズル53が短い場合は、成形材料の射出時における圧力損失が少なく、よりスムーズに成形材料を射出することができる。
また、スクリュ41の外面には、成形材料との摩擦低減用のコーティング処理を施すようにしてもよい。例えば、ポリテトラフルオロエタンをコーティングすることにより、スクリュ41の外面に成形材料が付着するのを防止することができる。特に、スクリュ41の前方側に、このような摩擦低減用のコーティング処理を施すのが好ましい。
[成形工程]
成形工程では、射出工程で金型61に注入された成形材料を当該金型61内で成形し離型して成形体を得る。すなわち、射出工程で可塑化し、金型61のキャビティ63内へ注入された成形材料を、金型61(キャビティ63)内で冷却して固化させることにより成形し、金型61を開いて離型することにより成形体を得る。
金型61の温度は、成形工程を通してほぼ一定でもよいし、あるいは、成形材料を金型61へ注入するときと、離型して成形体を得るときで変化させてもよい。
成形工程を通して金型61の温度をほぼ一定とする場合は、金型61の温度は、30℃以上110℃以下とするのが好ましい。このとき、金型61の温度を、射出工程において加熱筒内で成形材料を加熱する温度の最大値よりも低い温度範囲内で、且つ、30℃以上110℃以下とすることにより、金型61(キャビティ63)内で成形材料を冷却して固化させることができる。金型61の温度が30℃より低いと、成形材料を金型61のキャビティ63内へ注入するとき(注入時)に、成形材料が冷えて流動性が低下する。それにより、成形材料を金型61(キャビティ63)の隅々にまで充填しにくくなる。また、金型61の温度が110℃を超えると、得られる成形体が柔らかくなりすぎるので、成形体を金型61から離型しにくくなる。金型61の温度は、より好ましくは、50℃以上100℃以下であり、最も好ましくは、70℃以上80℃以下である。
金型61の温度は、成形材料を金型61へ注入するときは80℃以上180℃以下とし、離型して成形体を得るときは20℃以上70℃以下に調整すると、より好ましい。まず、成形材料を金型61へ注入するときの金型の温度を80℃以上180℃以下とする。これにより、注入時には、成形材料の温度がほとんど低下しない。したがって、流動性が高い状態のままの成形材料を金型61へ注入することができ、隅々までスムーズに充填することができる。次に、成形材料が金型61(キャビティ63)に充填された後に、金型61の温度を下げて成形材料を冷却し、離型して成形体を得るときの金型61の温度を20℃以上70℃以下とする。これにより、成形材料を十分に冷却して固化させることができ、得られる成形体を、容易に金型61から離型することができる。また、より短時間で成形材料が固化するため、短時間で効率よく成形体を製造することができる。
成形材料を金型61へ注入するときの金型61の温度を80℃以上180℃以下とすることにより、上述した効果に加え、以下に述べる3つの効果も得られる。
第1に、より複雑な形状の成形体を得ることができる。これは、流動性が高い状態のままの成形材料を金型61へ注入することができることにより、金型61(キャビティ63)が複雑な形状であっても、成形材料を金型61(キャビティ63)の隅々までスムーズに充填することができるためである。
第2に、成形体の表面にウェルドラインが生じ難くなる。ウェルドラインとは、成形材料を金型内に注入する際に成形材料の表面温度が低下することにより、成形材料が合流する部分に生じる細い線のことである。成形材料を金型61へ注入するときの金型61の温度を80℃以上180℃以下とすることにより、注入時に成形材料の温度がほとんど低下しないため、ウェルドラインが生じ難く、外観のよい成形体を得ることができる。
第3に、金型61の表面形状を成形体の表面に忠実に転写することができる。これは、流動性が高い状態のままの成形材料を金型61へ注入することができることにより、成形材料が金型61の表面に隙間なく密着した状態となるためである。金型41の表面が鏡面状であれば、得られる成形体の表面がより平滑になる。その結果、成形体は光沢が増し、よりプラスチック様の外観となる。また、金型61の表面に細かい模様があれば、その模様を成形体の表面に転写することもでき、例えば、表面にシボ(凹凸)を有する成形体を得ることができる。
なお、ここでいう「金型61の温度」を測定するためには、金型61の外表面の温度を接触式の温度計や感温センサー等によって測定すればよい。また、金型61に孔を穿設して、その孔に棒状温度計や感温センサーを挿入して測定してもよい。なお、金型61の温度調節が、予め調温した水や油などの熱媒体を金型61に設けられた溝に循環させる方法の場合は、熱媒体の温度検出によっても行われる。また、金型61の温度調節はバンドヒーターやカートリッジヒーターなどの電熱ヒーターを金型61の内部に設けて加熱する方法など、公知の各種の方法を用いることができる。
成形工程においては、成形体の含水率が4.0%以下となるように水分を除去するのが好ましい。成形体の含水率を4.0%以下とすることにより、成形体の強度を向上させることができる。また、成形体の含水率を4.0%以下とすることにより、時間が経過したときに成形体が腐敗して臭気が発生するなどの不具合を防止することができる。
成形体の水分を除去する方法としては、金型61のキャビティ63の当接面に脱気用の溝(一般にガスベントあるいは単にベントと称される)を設け、その脱気用の溝から成形材料が発する水蒸気を金型61の外へ排出する方法が挙げられる。その他、成形工程中に、閉じている金型61の型板同士の間隔を一時的にわずかに広げて成形材料が発する水蒸気を金型61の外へ排出し、それから再度型板同士の間隔を閉じて成形材料を成形する方法などを用いることもできる。
なお、成形材料が金型61に注入されるときの圧力損失をできるだけ小さくすると、成形材料をよりスムーズに金型61に注入することができる。したがって、金型61は、できるだけ成形材料の流路(スプル65)の短いものが好ましく、ゲート(成形材料の入り口)が、成形材料の充填量を制限する機能を有しておらず、スプル65からキャビティ63に直接つながるいわゆるダイレクトゲート(スプルゲート)であるとより好ましい。
本発明に係る木質系材料の射出成形方法によれば、射出装置を用いて成形材料を可塑化して金型61に注入することにより、連続的に効率よく成形体を得ることができる。また、その際、可塑剤やバインダー樹脂等の添加剤を加えることなく成形材料を可塑化して成形することができる。
以下の表1に示す実施例1〜5および比較例1の各製造条件のもとで、木質系材料を射出成形した。
Figure 2007283489
比較例1では、圧縮比が1.5であり逆止弁を備えたスクリュを備えた射出装置を用いて木質系材料からなる成形体の作成を試みた。その結果、射出工程で成形材料を加熱する温度の最大値が160℃のとき成形材料が射出されなかったので、加熱する温度の最大値を200℃に上げて再度射出を試みたが、成形材料は射出されなかった。そこで加熱筒の内部を確認したところ、スクリュの前方においては成形材料が炭化しており、スクリュの外周においては、加熱筒との接触部分の成形材料が劣化して固まっていた。
スクリュの前方において成形材料が炭化したのは、スクリュの圧縮比が1.5と高いため、スクリュの前方において成形材料に高圧がかかりスクリュが空回りしたことが原因であると考えられた。それにより発生したスクリュのせん断熱により成形材料が局所的に加熱されて劣化して可塑性を発現せず、その滞留した可塑性を有しない成形材料がさらに過剰に加熱されて炭化したものと推察された。また、スクリュの外周において、加熱筒との接触部分の成形材料だけが劣化して固まったのは、スクリュに逆止弁があることにより、成形材料がスクリュの前方へ移送されにくい状態となり滞留し、滞留した成形材料がスクリュのせん断熱により局部的に加熱されたためであると考えられた。
この結果から、圧縮比が高く、逆止弁を備えたスクリュを備えた射出装置を用いると、スクリュのせん断熱により、成形材料が過熱して変質して固まったり、炭化したりすることが分かった。
一方、実施例1〜5では、圧縮比が1.0で逆止弁を備えない直線形のスクリュを備えた射出装置を用いて木質系材料からなる成形体の作成を試みた。その結果、射出工程では成形材料が可塑化し、スムーズに金型へ注入することができ、成形工程では表面が黒くプラスチックのような外観の成形体が得られた。
この結果から、木質系材料から得られた成形材料を射出装置を用いて可塑化する場合は、圧縮比が低く逆止弁を備えない直線形のスクリュを備えた射出装置を用いることにより、成形材料が局部的に過剰に加熱されて劣化して滞ることなく、スムーズに可塑化して射出することができることが明らかとなった。
また、成形材料の形状に注目すると、圧縮比が1.5であり逆止弁を備えたスクリュを備えた射出装置を用いた比較例1では、粉末にまで細分化された成形材料を用いたにもかかわらず、可塑性は発現しなかった。一方、圧縮比が1.0で逆止弁を備えない直線形のスクリュを備えた射出装置を用いた実施例1〜5では、実施例1〜3の粉末にまで細分化された成形材料だけでなく、実施例4のかんな屑や実施例5のチップ状の成形材料でも可塑性が発現し、成形体を得ることができた。この結果より、圧縮比が低く逆止弁を備えない直線形のスクリュを備えた射出装置を用いれば、成形材料をあえて粉末にまで細分化する必要がなく、かんな屑やチップ状のままで成形可能であることが確認された。
本発明に用いられる射出装置の一部断面図である。 図1に示す射出装置のA−A断面図である。 木質系材料の射出成形方法のフローチャートである。
符号の説明
11 射出装置
13 射出シリンダ
15 モーター
21 加熱筒
25a,25b,25c,25d 熱媒体通路
41 スクリュ
61 金型
63 キャビティ

Claims (9)

  1. 木質系材料の射出成形方法であって、
    木質系材料を水蒸気に接触させて成形材料を得る水蒸気処理工程と、
    加熱筒内に進退可能且つ回転可能に配置されたスクリュを備えた射出装置を用い、前記成形材料を前記加熱筒内で加熱しながら前記スクリュの回転により前記加熱筒の前方に移送するのに次いで前記スクリュを前進させることにより、前記成形材料を可塑化し射出して金型へ注入する射出工程と、
    前記射出工程で金型に注入された成形材料を当該金型内で成形し離型して成形体を得る成形工程と、を有し、
    前記スクリュは、逆止弁を備えない直線形のスクリュであり、
    前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度の最大値が100℃以上180℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  2. 請求項1に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記スクリュは、圧縮比が0.9以上1.2以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記金型の温度は、30℃以上110℃以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記金型の温度は、成形材料を金型へ注入するときは80℃以上180℃以下であって、離型して成形体を得るときは20℃以上70℃以下に調整することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記射出工程において、前記加熱筒内で前記成形材料を加熱する温度は、前記加熱筒の前方側ほど高いことを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  6. 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記加熱筒は、熱媒体が循環して加熱する方式であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  7. 請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記成形材料の含水率は、2%以上20%以下であることを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  8. 請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法であって、
    前記成形工程において、前記成形体の含水率が4.0%以下となるように水分を除去することを特徴とする、木質系材料の射出成形方法。
  9. 請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の木質系材料の射出成形方法によって成形された成形体。
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