JP2009107331A - 木質成形体の製造方法および木質成形体 - Google Patents
木質成形体の製造方法および木質成形体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明は、木質系材料の樹脂化に関するものであり、木質系材料の樹脂化の課題である匂いを減少させ、且つ吸水率を低減させたことを特徴とする木質成形体の製造方法およびその成形体に関するものである。
【解決手段】本発明は、木質の持っている接着性や熱流動性を発現させ、その木質系材料を成形する木質成形体の製造方法および木質成形体に関するものであり、木質系材料の含水率を調整した後、加熱水蒸気を木質組織に接触させる蒸煮処理を行うことにより、吸水率が低く蟻酸や酢酸からの匂いを極めて少なくすることができる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、木質の持っている接着性や熱流動性を発現させ、その木質系材料を成形する木質成形体の製造方法および木質成形体に関するものであり、木質系材料の含水率を調整した後、加熱水蒸気を木質組織に接触させる蒸煮処理を行うことにより、吸水率が低く蟻酸や酢酸からの匂いを極めて少なくすることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、木質系材料の樹脂化に関するものであり、木質系材料の樹脂化の課題である匂いを減少させ、且つ吸水率を低減させたことを特徴とする木質成形体の製造方法および木質成形体に関するものである。
詳しくは木質系材料の含水率を調整した後、加熱水蒸気を木質組織に接触させ、木質の持っている接着性や熱流動性を発現させ、その木質系材料を成形して得られる木質成形体の製造方法およびその成形体に関するものであり、吸水率が低く蟻酸や酢酸などの有機酸からの匂いや、有機化合物のホルムアルデヒドの放散が極めて少ない木質系成形体の製造方法および木質成形体に関するものである。
詳しくは木質系材料の含水率を調整した後、加熱水蒸気を木質組織に接触させ、木質の持っている接着性や熱流動性を発現させ、その木質系材料を成形して得られる木質成形体の製造方法およびその成形体に関するものであり、吸水率が低く蟻酸や酢酸などの有機酸からの匂いや、有機化合物のホルムアルデヒドの放散が極めて少ない木質系成形体の製造方法および木質成形体に関するものである。
プラスチックや金属などの代替材料として、木材を利用する試みがこれまでになされている。例えば特許文献1には、リグニン、ヘミセルロース、及びセルロースを含む木質系材料を水蒸気処理(以下、蒸煮処理という)した後に加熱しながら加圧することによって成形される成形体の製造方法が開示されている。この成形体によれば、従来は金属やプラスチック等により成形されていた各種の製品を、木質系材料に代替させることができる。具体的には、例えば、食器やアクセサリー、家具、建材、電化製品などの各種の製品をプラスチックを用いることなく、天然由来の木質系材料によって製造することが可能になる。(特許文献1)
また、リグノセルロース含有材料を蒸煮処理し乾燥して得られるリグノセルロース系材料を含む成形用組成物を加熱して、該成形材料を溶融させ、形状を付与するものとして、木質材料の流動性を略完全な形で実現したものが提案されている。 (特許文献2)
特開2004−261967号公報
特開2003−165844号公報
また、リグノセルロース含有材料を蒸煮処理し乾燥して得られるリグノセルロース系材料を含む成形用組成物を加熱して、該成形材料を溶融させ、形状を付与するものとして、木質材料の流動性を略完全な形で実現したものが提案されている。 (特許文献2)
ところで、蒸煮処理を行った木質系材料からなる成形体は24時間浸漬吸水試験では4%から8%の高い吸水率があり機械部品として使用する場合は耐久性の点で問題があり、吸水率を低減して耐久性を持たせたいと言う強い要望がある。また、木質系材料を蒸煮処理した時に木質が分解して蟻酸や酢酸等を作るため成形体に加熱・加圧したとき強い匂いを発するため製品とした時にこの匂いを解決することが必要である。
これらを解決するにはニスなどの保護塗料を塗布することが考えられるが、ニスなどの保護塗料は、合成樹脂や有機溶剤などの化学成分を主成分として製造されている。従って地球環境にとってより優しい製品を実現するためには使用を避けなければならない材料である。またニスを塗布する場合には、製品の製造工数がその分増加し、コストアップにもなる。このような理由からニスを塗布することなく吸水率の低減や匂いの低減をすることができる技術の登場が強く求められている。
そこで本発明は、木質系材料からなる成形体において、成形体の吸水率と匂いの発生を低減した成形体とその製造方法を提供することを目的とするものである。
発明者は、鋭意検討の結果、蒸煮処理前の木質の含水率を調整し木質組織内への加熱蒸気の浸透を良くして比較的分解温度の低いヘミセルロース、リグニンの分解を促進させる自由水を少なくすることにより、成形体の吸水率を改善できることを見いだした。
蒸煮処理前の木質系材料が自由水を多く含むと、蒸煮処理によりその自由水が蒸気となって木質系材料に浸透してセルロース、リグニン、ヘミセルロースを過剰に分解させて又は流出させるので、後の成形工程におけるリグニンやヘミセルロースの接着効果や流動性付与効果を低減させるおそれがある。したがって、蒸煮処理前の木質系材料の含水率を調整することにより、そのような不都合が抑制されることを見いだしたのである。また、含水率を調整することにより、成形体製造時の加熱によるセルロースやリグニンの熱分解を抑え、ヘミセルロースやセルロースの分解により発生する蟻酸、酢酸、ホルムアルデヒドを抑制し、木質成形体の匂いを低減できることを見いだした。
蒸煮処理前の木質系材料が自由水を多く含むと、蒸煮処理によりその自由水が蒸気となって木質系材料に浸透してセルロース、リグニン、ヘミセルロースを過剰に分解させて又は流出させるので、後の成形工程におけるリグニンやヘミセルロースの接着効果や流動性付与効果を低減させるおそれがある。したがって、蒸煮処理前の木質系材料の含水率を調整することにより、そのような不都合が抑制されることを見いだしたのである。また、含水率を調整することにより、成形体製造時の加熱によるセルロースやリグニンの熱分解を抑え、ヘミセルロースやセルロースの分解により発生する蟻酸、酢酸、ホルムアルデヒドを抑制し、木質成形体の匂いを低減できることを見いだした。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、以下の通りである。
請求項1記載の木質成形体の製造方法は、木質系材料を乾燥させて、その含水率を調整する蒸煮前調整工程と、その蒸煮前調整工程により含水率が調整された木質系材料を蒸煮処理する蒸煮工程と、その蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を成形する成形工程とを含むことを特徴とする。
請求項2記載の木質成形体の製造方法は、請求項1記載の木質成形体の製造方法において、前記蒸煮前調整工程は、木質系材料の含水率を20%以下に調整することを特徴とする。
請求項3記載の木質成形体の製造方法は、請求項1または2に記載の木質成形体の製造方法において、前記成形工程は、前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を仮成形する仮成形工程と、その仮成形工程により成形された仮成形体を圧縮成形する本成形工程とを含むものであり、前記蒸煮工程の後であって、且つ前記仮成形工程または前記本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、前記木質系材料を乾燥し、その含水率を調整する成形前乾燥工程を含むことを特徴とする。
ここで、「仮成形工程または本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、木質系材料を乾燥し」とは、仮成形工程と本成形工程とのうちのいずれか一方の前にのみ木質系材料を乾燥することを当然に含むものであり、さらに、仮成形工程と本成形工程との両工程の前に木質系材料を乾燥することを含む意味である。
請求項4記載の木質成形体の製造方法は、請求項3記載の木質成形体の製造方法において、前記成形前乾燥工程は、前記仮成形工程の前であって且つ木質系材料を粉砕する粉砕工程の前に行われる場合、前記木質系材料の含水率を15%以下に乾燥させ、前記本成形工程の前に行われる場合、前記木質系材料で構成される仮成形体を含水率2%以下に乾燥させることを特徴とする。
請求項5記載の木質成形体の製造方法は、請求項3または4に記載の木質成形体の製造方法において、前記仮成形工程は、木質系材料を金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形することを特徴とする。
請求項6記載の木質成形体の製造方法は、請求項1記載の木質成形体の製造方法において、成形材料100重量部に対して5重量部以上35重量部以下の割合で熱可塑性樹脂が含まれるよう、前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料に熱可塑性樹脂を添加して前記成形材料を得る樹脂添加工程を含み、前記成形工程は、その樹脂添加工程により得られた成形材料を金型内に射出することにより、前記木質成形体を射出成形することを特徴とする。
請求項7記載の木質成形体の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の木質成形体の製造方法において、前記蒸煮工程は、通気性がある側面を有する容器の上方の開口から、前記木質系材料を投入し、その容器内に投入された木質系材料に蒸煮処理を行うものであり、前記容器内における側面間に架設される長手状の横架部材を、その長手方向に直交する断面が、前記容器上方の開口に対し凸の山形状をなし、且つ容器下方に対し開放された形状をなす向きで、前記容器内に設けた状態で、前記木質系材料が前記容器内へ投入されることを特徴とする。
請求項8記載の木質成形体の製造方法は、木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与することにより木質成形体を製造する方法であって、木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形するものであり、成形用木質系材料の含水率を水蒸気処理前および仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形することを特徴とする。
請求項9記載の木質成形体の製造方法は、請求項8記載の木質成形体の製造方法において、木質系材料の含水率を3%以上20%以下に調整し、水蒸気に接触させた後に、その木質系材料の含水率を5%以上15%以下に乾燥させて仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を含水率2%以下に乾燥後、圧縮成形したことを特徴とする。
請求項10記載の木質成形体の製造方法は、請求項8または9に記載の木質成形体の製造方法において、木質系材料の含水率を5%以上15%以下に調整し、金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形する。
請求項11記載の木質成形体は、木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与することにより製造されるものであって、木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形されるものであり、成形用木質系材料の自由水および結合水の含水率を仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形されたことを特徴とする。ここで、「木質系材料の自由水および結合水の含水率を仮成形前若しくは本成形の成形前に調整」するとは、自由水および結合水を含む木質系材料中の水分の含水率を成形前若しくは本成形の成形前に調整することを意味している。
請求項1記載の木質成形体の製造方法は、木質系材料を乾燥させて、その含水率を調整する蒸煮前調整工程と、その蒸煮前調整工程により含水率が調整された木質系材料を蒸煮処理する蒸煮工程と、その蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を成形する成形工程とを含むことを特徴とする。
請求項2記載の木質成形体の製造方法は、請求項1記載の木質成形体の製造方法において、前記蒸煮前調整工程は、木質系材料の含水率を20%以下に調整することを特徴とする。
請求項3記載の木質成形体の製造方法は、請求項1または2に記載の木質成形体の製造方法において、前記成形工程は、前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を仮成形する仮成形工程と、その仮成形工程により成形された仮成形体を圧縮成形する本成形工程とを含むものであり、前記蒸煮工程の後であって、且つ前記仮成形工程または前記本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、前記木質系材料を乾燥し、その含水率を調整する成形前乾燥工程を含むことを特徴とする。
ここで、「仮成形工程または本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、木質系材料を乾燥し」とは、仮成形工程と本成形工程とのうちのいずれか一方の前にのみ木質系材料を乾燥することを当然に含むものであり、さらに、仮成形工程と本成形工程との両工程の前に木質系材料を乾燥することを含む意味である。
請求項4記載の木質成形体の製造方法は、請求項3記載の木質成形体の製造方法において、前記成形前乾燥工程は、前記仮成形工程の前であって且つ木質系材料を粉砕する粉砕工程の前に行われる場合、前記木質系材料の含水率を15%以下に乾燥させ、前記本成形工程の前に行われる場合、前記木質系材料で構成される仮成形体を含水率2%以下に乾燥させることを特徴とする。
請求項5記載の木質成形体の製造方法は、請求項3または4に記載の木質成形体の製造方法において、前記仮成形工程は、木質系材料を金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形することを特徴とする。
請求項6記載の木質成形体の製造方法は、請求項1記載の木質成形体の製造方法において、成形材料100重量部に対して5重量部以上35重量部以下の割合で熱可塑性樹脂が含まれるよう、前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料に熱可塑性樹脂を添加して前記成形材料を得る樹脂添加工程を含み、前記成形工程は、その樹脂添加工程により得られた成形材料を金型内に射出することにより、前記木質成形体を射出成形することを特徴とする。
請求項7記載の木質成形体の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の木質成形体の製造方法において、前記蒸煮工程は、通気性がある側面を有する容器の上方の開口から、前記木質系材料を投入し、その容器内に投入された木質系材料に蒸煮処理を行うものであり、前記容器内における側面間に架設される長手状の横架部材を、その長手方向に直交する断面が、前記容器上方の開口に対し凸の山形状をなし、且つ容器下方に対し開放された形状をなす向きで、前記容器内に設けた状態で、前記木質系材料が前記容器内へ投入されることを特徴とする。
請求項8記載の木質成形体の製造方法は、木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与することにより木質成形体を製造する方法であって、木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形するものであり、成形用木質系材料の含水率を水蒸気処理前および仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形することを特徴とする。
請求項9記載の木質成形体の製造方法は、請求項8記載の木質成形体の製造方法において、木質系材料の含水率を3%以上20%以下に調整し、水蒸気に接触させた後に、その木質系材料の含水率を5%以上15%以下に乾燥させて仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を含水率2%以下に乾燥後、圧縮成形したことを特徴とする。
請求項10記載の木質成形体の製造方法は、請求項8または9に記載の木質成形体の製造方法において、木質系材料の含水率を5%以上15%以下に調整し、金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形する。
請求項11記載の木質成形体は、木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与することにより製造されるものであって、木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形されるものであり、成形用木質系材料の自由水および結合水の含水率を仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形されたことを特徴とする。ここで、「木質系材料の自由水および結合水の含水率を仮成形前若しくは本成形の成形前に調整」するとは、自由水および結合水を含む木質系材料中の水分の含水率を成形前若しくは本成形の成形前に調整することを意味している。
請求項1記載の木質成形体の製造方法によれば、木質系材料を乾燥させてその含水率を調整してから、木質系材料を蒸煮処理するので、ニスなどの保護塗料を塗布することなく、吸水率や匂いが低減された木質成形体を提供することができるという効果がある。
請求項2記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、蒸煮前調整工程により、木質系材料の含水率を20%以下に調整することから、吸水率や匂いがより低減された木質成形体を提供することができるという効果がある。木材の平衡含水率(すなわち、結合水のみとなる含水率)は、15%であるため、含水率を20%以下に調整することにより、自由水を5%以下とすることができ、吸水率や匂いの改善により高い効果が得られるのである。
請求項3記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1または2に記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、成形に要する時間を短縮し、量産が可能になるという効果がある。元来、木質系材料は熱伝導性が低く、また、木質系材料が木粉で構成される場合には、多量の空気を含むため、より熱伝導性が低い。そのため、成形材料である木質系材料を均一温度に加熱するのに時間がかかる。よって、まず、仮成形工程により仮成形体を成形し、木質系材料を高密度化する。仮成形は常温で成形することができ、加熱を要する本成形に比較して処理時間が短くて済む。そして、仮成形体を成形して嵩を減らし圧密としてから、本成形を行うこととすれば、加熱時間が短縮され作業効率が良い。
また、木質系材料内に結合水が多量に存在すると、木質系材料を圧縮成形する際に、木質系材料の内部から水分が気化して成形体の表面に汚れや成形体内部割れなどの不良が発生するおそれがある。よって、仮成形工程または本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、木質系材料を乾燥することにより、圧縮成形中の水分の気化を抑制し、良質な成形材料を得ることができるという効果がある。
なお、仮成形の後であって本成形の前に成形前乾燥工程を行う場合には、仮成形体を多数成形してまとめて乾燥させ、その後、本成形を順次行えば、作業を効率的に進めることができる。
請求項4記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項3記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、仮成形前であって粉砕前の木質系材料の含水率を15%以下に乾燥させることにより、木質系材料が粉砕機のふるいの目を詰まらせることを抑制できるという効果がある。木質系材料の含水率が高いと、粉砕器のふるいの目を詰まらせやすいのである。
また、仮成形後、金型からの取り出しの際に、応力により仮成形体が膨張する場合がある。よって、本成形工程の前に、成形前乾燥工程により仮成形体を含水率2%以下まで乾燥させることととすれば、乾燥により仮成形体が収縮し、本成形用の型内に仮成形体を収めることができるという効果がある。また、圧縮成形中における水分の気化を確実に抑制し、より良質な成形材料を得ることができるという効果がある。
請求項5記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項3または4に記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、仮成形工程では、1Ma以上で木質系材料を加圧成形して仮成形体を成形するので、常温下においても、所定の形状を保持して仮成形体をなす程度に、木質系材料を相互に結合させることができるという効果がある。また、20MPa以下で木質系材料を加圧成形することにより、必要以上の加圧を行うことを抑制できる。約20MPaで加圧することにより、木質系材料は、木材の真密度(空隙のない状態となるときの密度)と言われている約1.45g/cmの密度まで圧縮される。よって、これ以上の圧力を加えても、密度が変化しにくいのである。
請求項6記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、射出成形により、木質成形体を成形することができるという効果がある。成形材料100重量部に対し熱可塑性樹脂の分量を5重量部以上とすることにより、リグニンやヘミセルロースの流動効果に、熱可塑性樹脂の流動効果が加えられ、成形材料が充分な流動性を持つので、複雑な構造体であっても射出成形が可能となる。また、熱可塑性樹脂の分量を35重量部以下とすることにより、樹脂材料の使用量を抑えることができる。現在は、埋蔵資源の枯渇が懸念されている状況にあるので、埋蔵資源を由来とする樹脂の割合を抑えることが好ましいのである。
請求項7記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法の奏する効果に加え、蒸煮工程の効率を向上できるという効果がある。横架部材は、その長手方向に直交する断面が、容器上方の開口に対し凸の山形状をなす向きで容器内に設けられる。よって、容器上方の開口から投入された木質系材料は、横架部材の山形状の傾斜面により横架部材の両サイドに流されるので、木質系材料堆積後も、横架部材の山頂部分には隙間が生じる。したがって、蒸煮工程においては、通気性を有する側面間に架設された横架部材の山頂部分が蒸気路として機能する。そしてこの横架部材は、下方に向けて開放された形状を有するため、横架部材を通過する蒸気に、容器内部の木質系材料を晒すことができるのである。
請求項8から10記載の木質成形体の製造方法、または請求項11記載の木質成形体によれば、木質系材料からなる成形体を製造するに際して、ニスなどの保護塗料を塗布することなく、木質系材料の蒸気処理前の含水率と成形体成形前の木質含水率を調整することで、成形体の吸水率や匂いを低減する成形体を提供できるものである。
請求項2記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、蒸煮前調整工程により、木質系材料の含水率を20%以下に調整することから、吸水率や匂いがより低減された木質成形体を提供することができるという効果がある。木材の平衡含水率(すなわち、結合水のみとなる含水率)は、15%であるため、含水率を20%以下に調整することにより、自由水を5%以下とすることができ、吸水率や匂いの改善により高い効果が得られるのである。
請求項3記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1または2に記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、成形に要する時間を短縮し、量産が可能になるという効果がある。元来、木質系材料は熱伝導性が低く、また、木質系材料が木粉で構成される場合には、多量の空気を含むため、より熱伝導性が低い。そのため、成形材料である木質系材料を均一温度に加熱するのに時間がかかる。よって、まず、仮成形工程により仮成形体を成形し、木質系材料を高密度化する。仮成形は常温で成形することができ、加熱を要する本成形に比較して処理時間が短くて済む。そして、仮成形体を成形して嵩を減らし圧密としてから、本成形を行うこととすれば、加熱時間が短縮され作業効率が良い。
また、木質系材料内に結合水が多量に存在すると、木質系材料を圧縮成形する際に、木質系材料の内部から水分が気化して成形体の表面に汚れや成形体内部割れなどの不良が発生するおそれがある。よって、仮成形工程または本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、木質系材料を乾燥することにより、圧縮成形中の水分の気化を抑制し、良質な成形材料を得ることができるという効果がある。
なお、仮成形の後であって本成形の前に成形前乾燥工程を行う場合には、仮成形体を多数成形してまとめて乾燥させ、その後、本成形を順次行えば、作業を効率的に進めることができる。
請求項4記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項3記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、仮成形前であって粉砕前の木質系材料の含水率を15%以下に乾燥させることにより、木質系材料が粉砕機のふるいの目を詰まらせることを抑制できるという効果がある。木質系材料の含水率が高いと、粉砕器のふるいの目を詰まらせやすいのである。
また、仮成形後、金型からの取り出しの際に、応力により仮成形体が膨張する場合がある。よって、本成形工程の前に、成形前乾燥工程により仮成形体を含水率2%以下まで乾燥させることととすれば、乾燥により仮成形体が収縮し、本成形用の型内に仮成形体を収めることができるという効果がある。また、圧縮成形中における水分の気化を確実に抑制し、より良質な成形材料を得ることができるという効果がある。
請求項5記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項3または4に記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、仮成形工程では、1Ma以上で木質系材料を加圧成形して仮成形体を成形するので、常温下においても、所定の形状を保持して仮成形体をなす程度に、木質系材料を相互に結合させることができるという効果がある。また、20MPa以下で木質系材料を加圧成形することにより、必要以上の加圧を行うことを抑制できる。約20MPaで加圧することにより、木質系材料は、木材の真密度(空隙のない状態となるときの密度)と言われている約1.45g/cmの密度まで圧縮される。よって、これ以上の圧力を加えても、密度が変化しにくいのである。
請求項6記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1記載の木質成形体の製造方法の奏する効果に加え、射出成形により、木質成形体を成形することができるという効果がある。成形材料100重量部に対し熱可塑性樹脂の分量を5重量部以上とすることにより、リグニンやヘミセルロースの流動効果に、熱可塑性樹脂の流動効果が加えられ、成形材料が充分な流動性を持つので、複雑な構造体であっても射出成形が可能となる。また、熱可塑性樹脂の分量を35重量部以下とすることにより、樹脂材料の使用量を抑えることができる。現在は、埋蔵資源の枯渇が懸念されている状況にあるので、埋蔵資源を由来とする樹脂の割合を抑えることが好ましいのである。
請求項7記載の木質成形体の製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法の奏する効果に加え、蒸煮工程の効率を向上できるという効果がある。横架部材は、その長手方向に直交する断面が、容器上方の開口に対し凸の山形状をなす向きで容器内に設けられる。よって、容器上方の開口から投入された木質系材料は、横架部材の山形状の傾斜面により横架部材の両サイドに流されるので、木質系材料堆積後も、横架部材の山頂部分には隙間が生じる。したがって、蒸煮工程においては、通気性を有する側面間に架設された横架部材の山頂部分が蒸気路として機能する。そしてこの横架部材は、下方に向けて開放された形状を有するため、横架部材を通過する蒸気に、容器内部の木質系材料を晒すことができるのである。
請求項8から10記載の木質成形体の製造方法、または請求項11記載の木質成形体によれば、木質系材料からなる成形体を製造するに際して、ニスなどの保護塗料を塗布することなく、木質系材料の蒸気処理前の含水率と成形体成形前の木質含水率を調整することで、成形体の吸水率や匂いを低減する成形体を提供できるものである。
以下、本発明の実施態様について説明する。図1は、本発明の木質成形体の製造方法の第1実施形態を示す工程図であって、圧縮成形により木質成形体を製造する場合の工程図である。
木質系材料準備工程(P1)では、木質系材料が準備される。本発明における「木質系材料」とは、植物由来のリグノセルロース系材料全般を意味し、例えば、リグニンとヘミセルロースとセルロースとを含有するリグノセルロース系材料のことである。またこの木質系材料は、「木質」という単語は木材に限るものではなく、草本類からも採取することが可能である。このような木質系材料は、例えば、スギ、ヒノキ、ブナなどの各種の樹木から採取することが可能である。またケナフ、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類から採取することが可能である。あるいは、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの破棄物から採取することも可能である。さらに、木質系材料は、ほとんどリグニンを含まない上質紙の古紙と、パルピングの工程で廃棄物として排出されるリグニンとを混合することによって得ることも可能である。さらには、これらの木質系材料のうち二種以上を組み合わせることも可能である。
木質系材料準備工程(P1)では、木質系材料が準備される。本発明における「木質系材料」とは、植物由来のリグノセルロース系材料全般を意味し、例えば、リグニンとヘミセルロースとセルロースとを含有するリグノセルロース系材料のことである。またこの木質系材料は、「木質」という単語は木材に限るものではなく、草本類からも採取することが可能である。このような木質系材料は、例えば、スギ、ヒノキ、ブナなどの各種の樹木から採取することが可能である。またケナフ、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類から採取することが可能である。あるいは、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの破棄物から採取することも可能である。さらに、木質系材料は、ほとんどリグニンを含まない上質紙の古紙と、パルピングの工程で廃棄物として排出されるリグニンとを混合することによって得ることも可能である。さらには、これらの木質系材料のうち二種以上を組み合わせることも可能である。
本発明において、原料として使用する木質系材料は、水蒸気と均一に接触させることができるように細分化されているものを使用するのが好ましい。木質系材料が細分化されていると、後に説明する蒸煮処理において水蒸気と均一に接触させることができるのみならず、木質系材料を水蒸気に接触させる蒸煮処理に必要とされる時間を短縮することが可能になる。従って、木質系材料としては、フレーク状あるいは微粉状に加工されている木材などを使用するのが好ましい。木材の切断加工の際に生じる鋸屑やプレーナ屑などをそのまま使用することも可能である。
木質系材料準備工程(P1)において、原料として準備する木質系材料の含水率(乾量基準)は、30%(以下、含水率においては重量%を意味する)以下であることが好ましい。含水率が30%を超えると、蒸煮処理によって木質系材料中に生成する分解成分が流出し易くなり、可塑化及び流動化に必要な成分が木質系材料中に保持されにくくなるからである。また、含水率が高いと蒸煮処理によって過剰に反応してセルロースの分解などを起こすと有機酸の発生が多くなり成形体に強い匂いを与えることとなる。木材は割れなどを防ぐため、製材する前に大気中に放置し、含水率を木材繊維の水分飽和点である30%以下にする処置を行っている場合が多い。よって、製材所や木工所から出る木屑は、含水率が概ね30%以下であるので、木質系材料準備工程(S1)では、これらを原料として調達すると良い。
なお、木質系材料の含水率とは、木質系材料の絶乾質量に対する当該木質系材料が含んでいる水分の割合を百分率で表した値(=(木質系材料が含んでいる水分の質量÷木質系材料)×100)のことであり、例えば、「加熱乾燥式水分計MX-50」(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定することができる。なお、後述する実施例の含水率も、同様の装置を用いて測定している。
なお、木質系材料の含水率とは、木質系材料の絶乾質量に対する当該木質系材料が含んでいる水分の割合を百分率で表した値(=(木質系材料が含んでいる水分の質量÷木質系材料)×100)のことであり、例えば、「加熱乾燥式水分計MX-50」(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定することができる。なお、後述する実施例の含水率も、同様の装置を用いて測定している。
木質系材料は、水蒸気と接触させた後に圧縮成形することによって、所定の形状に成形することができる。また、木質系材料は、水蒸気と接触させた後に加熱しながら圧縮することによって、可塑性及び流動性を発現することが見出されており、これは木質系材料に含まれているリグニン、ヘミセルロースなどの成分が、蒸煮処理により分解して、その分解後のリグニン、ヘミセルロースが加熱により溶融して組織中において流動化することが原因であると考えられている。木質系材料を可塑化・流動化させることによって、この木質系材料をプラスチックのように射出成形などによって自由な形状に成形することが可能になる。しかも可塑化・流動化した木質材料は、一旦固化した場合でも、再び加熱加圧することによって、可塑性・流動性を発現することができる。
次に、蒸煮前の含水率調整工程(P2)について説明する。蒸煮前の含水率調整工程(P2)は、準備した木質系材料を乾燥させ、その含水率を調整し、低減させる工程である。含水率の調整は、常温下でも高温下でも実施し得るが、好ましくは乾燥機により温風を吹き付ける等により高温下にて乾燥する。
蒸煮前の含水率調整工程(P2)では、木質成形体の原料として使用する木質系材料の含水率(乾量基準)が、20%以下となるように調整することが好ましい。木質系材料の含水率を、木材の平衡含水率(すなわち、結合水のみとなる含水率)である15%に近い20%以下に調整することにより、自由水を5%以下とすることができ、木質成形体の匂いの低減および吸水率の向上に高い効果が得られる。これは、後の蒸煮工程(P3)において、自由水の加熱により活発になった蒸気が木質系材料に浸透してヘミセルロールやリグニンを過剰に分解してしまうことを抑制することができ、その結果、木質系材料中に生成する分解成分の流出を抑制し、可塑性及び流動化、および疎水性の向上に必要なヘミセルロースやリグニンを木質系材料中に保持することができるからである。また、自由水の加熱により活発になった蒸気によるヘミセルロースやセルロースの過剰な分解を抑制し、これらの分解の結果として発生する酢酸、蟻酸などの有機酸ガス、およびホルムアルデヒドなどの有機化合物を抑制し、木質成形体の匂いを減少させることができるからである。
なお、蒸煮前含水率調整工程(P2)により、木質系材料の含水率を15%以下となるように調整すれば、木質系材料中の自由水が0となるので、より高い効果が得られる。
さらに、例えば、ジャケット式の乾燥機を用いて130℃の温度での乾燥させることにより、木質系材料の含水率を5%以下となるように調整すると、吸水率および匂いの低減について、極めて高い効果が得られる。なお、仮に、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、木質系材料の含水率を0%としたとしても、乾燥機から出した後は、大気中の水分を吸って短時間で1〜2%の含水率になってしまう。よって、蒸煮前の含水率調整工程(P2)における含水率の目標値は、3%以上としても良い。含水率の目標値が3%以上であれば、木質系材料を大気から隔離するように構成された高価な乾燥機を必要とせず、また処理も短時間でよい。
次に、蒸煮前の含水率調整工程(P2)について説明する。蒸煮前の含水率調整工程(P2)は、準備した木質系材料を乾燥させ、その含水率を調整し、低減させる工程である。含水率の調整は、常温下でも高温下でも実施し得るが、好ましくは乾燥機により温風を吹き付ける等により高温下にて乾燥する。
蒸煮前の含水率調整工程(P2)では、木質成形体の原料として使用する木質系材料の含水率(乾量基準)が、20%以下となるように調整することが好ましい。木質系材料の含水率を、木材の平衡含水率(すなわち、結合水のみとなる含水率)である15%に近い20%以下に調整することにより、自由水を5%以下とすることができ、木質成形体の匂いの低減および吸水率の向上に高い効果が得られる。これは、後の蒸煮工程(P3)において、自由水の加熱により活発になった蒸気が木質系材料に浸透してヘミセルロールやリグニンを過剰に分解してしまうことを抑制することができ、その結果、木質系材料中に生成する分解成分の流出を抑制し、可塑性及び流動化、および疎水性の向上に必要なヘミセルロースやリグニンを木質系材料中に保持することができるからである。また、自由水の加熱により活発になった蒸気によるヘミセルロースやセルロースの過剰な分解を抑制し、これらの分解の結果として発生する酢酸、蟻酸などの有機酸ガス、およびホルムアルデヒドなどの有機化合物を抑制し、木質成形体の匂いを減少させることができるからである。
なお、蒸煮前含水率調整工程(P2)により、木質系材料の含水率を15%以下となるように調整すれば、木質系材料中の自由水が0となるので、より高い効果が得られる。
さらに、例えば、ジャケット式の乾燥機を用いて130℃の温度での乾燥させることにより、木質系材料の含水率を5%以下となるように調整すると、吸水率および匂いの低減について、極めて高い効果が得られる。なお、仮に、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、木質系材料の含水率を0%としたとしても、乾燥機から出した後は、大気中の水分を吸って短時間で1〜2%の含水率になってしまう。よって、蒸煮前の含水率調整工程(P2)における含水率の目標値は、3%以上としても良い。含水率の目標値が3%以上であれば、木質系材料を大気から隔離するように構成された高価な乾燥機を必要とせず、また処理も短時間でよい。
次に、蒸煮工程(P3)について説明する。
蒸煮工程(P3)では、木質系材料からなる木質成形体を製造するために、原料となる木質系材料を、飽和蒸気あるいは加熱蒸気などの水蒸気に接触させる。本発明において、この処理のことを、蒸煮処理と呼ぶ。
蒸煮工程(P3)では、具体的には、上記蒸煮前の含水率調整工程(P2)により含水率が調整された木質系材料を原料収容容器に入れた状態で、耐圧性を有する耐圧容器に投入して、この耐圧容器内に例えばボイラーなどの供給源から水蒸気を供給することにより蒸煮処理を行う。
この蒸煮処理においては、蒸気温度は180℃以上230℃以下の水蒸気を木質系材料に接触させることが好ましい。木質系材料をこのような温度範囲の水蒸気に接触させることによって、その木質系材料に含まれるヘミセルロース、リグニンなどの分解を行うことができる。
蒸煮工程(P3)では、木質系材料からなる木質成形体を製造するために、原料となる木質系材料を、飽和蒸気あるいは加熱蒸気などの水蒸気に接触させる。本発明において、この処理のことを、蒸煮処理と呼ぶ。
蒸煮工程(P3)では、具体的には、上記蒸煮前の含水率調整工程(P2)により含水率が調整された木質系材料を原料収容容器に入れた状態で、耐圧性を有する耐圧容器に投入して、この耐圧容器内に例えばボイラーなどの供給源から水蒸気を供給することにより蒸煮処理を行う。
この蒸煮処理においては、蒸気温度は180℃以上230℃以下の水蒸気を木質系材料に接触させることが好ましい。木質系材料をこのような温度範囲の水蒸気に接触させることによって、その木質系材料に含まれるヘミセルロース、リグニンなどの分解を行うことができる。
蒸煮処理は、水蒸気を木質系材料に適当な時間(例えば数十秒から数十分程度)接触させることによって完了する。水蒸気の圧力や温度が低い場合には、水蒸気と木質系材料との接触時間をより長くすることが好ましい。また、木質系材料が細分化されていない場合には、クラッシャーなどで破砕、細分化した方が効率は良い。
水蒸気の温度が200℃以上で230℃以下の場合、水蒸気を木質系材料に数十秒から20分間程度接触させることで蒸煮処理を完了することができる。なお、蒸煮工程の効率を向上するために、例えば、以下に説明する通気補助具10を、原料収容容器Cに装着して用いると良い。
図2(a)は、原料収容容器Cに装着される通気補助具10の使用状態を示す斜視図である。図2(a)に示すように、原料収容容器Cは立方体形状を有し、上方に向けて開口し、底面および側面が網目で構成され、通気性を有する。蒸煮工程(P3)では、原料収容容器Cの上方の開口から木質系材料を投入する。そして、その原料収容容器Cを図示しない耐圧容器に格納し、例えばボイラーなどの供給源から水蒸気を供給することにより、原料収容容器C内の木質系材料に対し蒸煮処理を行う。なお、図2(a)には、原料収容容器Cに、通気補助具10が2つ装着された状態を図示している。
図2(b)は、通気補助具10の正面図であり、図2(c)は、通気補助具10の側面図である。なお、図2(a)に示すIIb方向から視た状態を、通気補助具10の正面とする。
図2(a)に示すように、通気補助具10は、一対の支柱12と、その一対の支柱12間に架け渡された複数段の横架部材14とを備えたはしご状の構造を有する。
支柱12は、上端が下向きに屈曲されてフック12aを構成する。一対のフック12aを原料収容容器Cの開口Mの縁に係合させることにより、支柱12は原料収容容器Cの側面の内側に沿って垂れ下がる。
横架部材14は、原料収容容器Cの対向する側面間の距離とほぼ同じ長さを有する長手状の部材であって、一対の支柱12間において、支柱12の長手方向に対し垂直に接合される(図2(c)参照)。よって、通気補助具10を原料収容容器Cに取り付けると、横架部材14は、原料収容容器Cの側面間に横方向に架設される。図2(c)に示すように、横架部材14は、長手方向に直交する断面が、原料収容容器C上方の開口Mに対し凸の山形状をなす向きで、原料収容容器C内に設けられる。よって、その状態で原料収容容器Cの上方から木質系材料を投入すると、木質系材料が横架部材14の両サイドに流され、各横下部材14下の山頂部には木質系材料が堆積しにくい。よって、各横架部材14の山頂部と、堆積した木質系材料との間に隙間が形成される。その結果、横架部材14の山頂部の空間が蒸気の通り道となる。また、横架部材14は、長手方向の断面が下方に向けて開放された形状を有するため、横架部材14下の山頂部を通過する蒸気に、原料収容容器C内部の木質系材料が晒される。よって、蒸煮工程(P2)の効率を向上することができるのである。
このような横架部材14は、支柱12の下端、および支柱12の上下方向に均等の間隔に、且つ、支柱12の両サイドに交互に取り付けられる。このように満遍なく、蒸気の通気路を配置することにより、蒸煮工程(P3)の効率をより向上することができる。なお、図2(c)には、横架部材14の傾斜面が平面であるように図示しているが曲面であっても良い。
図2(a)は、原料収容容器Cに装着される通気補助具10の使用状態を示す斜視図である。図2(a)に示すように、原料収容容器Cは立方体形状を有し、上方に向けて開口し、底面および側面が網目で構成され、通気性を有する。蒸煮工程(P3)では、原料収容容器Cの上方の開口から木質系材料を投入する。そして、その原料収容容器Cを図示しない耐圧容器に格納し、例えばボイラーなどの供給源から水蒸気を供給することにより、原料収容容器C内の木質系材料に対し蒸煮処理を行う。なお、図2(a)には、原料収容容器Cに、通気補助具10が2つ装着された状態を図示している。
図2(b)は、通気補助具10の正面図であり、図2(c)は、通気補助具10の側面図である。なお、図2(a)に示すIIb方向から視た状態を、通気補助具10の正面とする。
図2(a)に示すように、通気補助具10は、一対の支柱12と、その一対の支柱12間に架け渡された複数段の横架部材14とを備えたはしご状の構造を有する。
支柱12は、上端が下向きに屈曲されてフック12aを構成する。一対のフック12aを原料収容容器Cの開口Mの縁に係合させることにより、支柱12は原料収容容器Cの側面の内側に沿って垂れ下がる。
横架部材14は、原料収容容器Cの対向する側面間の距離とほぼ同じ長さを有する長手状の部材であって、一対の支柱12間において、支柱12の長手方向に対し垂直に接合される(図2(c)参照)。よって、通気補助具10を原料収容容器Cに取り付けると、横架部材14は、原料収容容器Cの側面間に横方向に架設される。図2(c)に示すように、横架部材14は、長手方向に直交する断面が、原料収容容器C上方の開口Mに対し凸の山形状をなす向きで、原料収容容器C内に設けられる。よって、その状態で原料収容容器Cの上方から木質系材料を投入すると、木質系材料が横架部材14の両サイドに流され、各横下部材14下の山頂部には木質系材料が堆積しにくい。よって、各横架部材14の山頂部と、堆積した木質系材料との間に隙間が形成される。その結果、横架部材14の山頂部の空間が蒸気の通り道となる。また、横架部材14は、長手方向の断面が下方に向けて開放された形状を有するため、横架部材14下の山頂部を通過する蒸気に、原料収容容器C内部の木質系材料が晒される。よって、蒸煮工程(P2)の効率を向上することができるのである。
このような横架部材14は、支柱12の下端、および支柱12の上下方向に均等の間隔に、且つ、支柱12の両サイドに交互に取り付けられる。このように満遍なく、蒸気の通気路を配置することにより、蒸煮工程(P3)の効率をより向上することができる。なお、図2(c)には、横架部材14の傾斜面が平面であるように図示しているが曲面であっても良い。
蒸煮処理を終了するときには、木質系材料が収容されている原料収容容器Cなどを解放して大気圧に戻せばよい。大気圧以上の高圧の水蒸気の場合には、徐々に圧力を下げることもできるし、一気に大気圧まで解放することもできる。大気圧まで一気に解放する場合には、木質系材料の組織内部で水蒸気の体積が一気に膨張するので、木質系材料を繊維状あるいは粉末状などに粉砕することができる(以下、高圧状態から一気に圧力を解放して木質系材料を粉砕することを爆砕という。)。爆砕によれば、木質系材料を蒸煮処理するのと同時に細分化することができる。木質系材料を爆砕によって細分化することによって、木質系材料をその後の工程において効率的に乾燥させることができる。
図1に戻り、仮成形前の含水率調整工程(P4)について説明する。なお、仮成形前の含水率調整工程(P4)、後述する粉砕工程(P5)、仮成形工程(P6)、本成形前の含水率調整工程(P7)は、必須の工程ではなく、場合に応じて省略することができる。
木質系材料を水蒸気に接触させる処理である蒸煮処理を完了した後は、仮成形前の含水率調整工程(P4)により、木質系材料を乾燥し、その含水率を調整する。好適には、含水率が15%以下となるように、木質系材料を乾燥させる。木質系材料中に水分、特に結合水が多量に存在すると、木質系材料を圧縮成形する際に、木質系材料の内部から水分が気化して成形体の表面に汚れや成形体内部割れなどの不具合が発生するからである。なお、仮成形前の含水率調整工程(P4)における含水率の目標値は、3%以上としても良い。この場合は、木質系材料を大気から隔離するように構成された高価な乾燥機を要しない。
木質系材料を水蒸気に接触させる処理である蒸煮処理を完了した後は、仮成形前の含水率調整工程(P4)により、木質系材料を乾燥し、その含水率を調整する。好適には、含水率が15%以下となるように、木質系材料を乾燥させる。木質系材料中に水分、特に結合水が多量に存在すると、木質系材料を圧縮成形する際に、木質系材料の内部から水分が気化して成形体の表面に汚れや成形体内部割れなどの不具合が発生するからである。なお、仮成形前の含水率調整工程(P4)における含水率の目標値は、3%以上としても良い。この場合は、木質系材料を大気から隔離するように構成された高価な乾燥機を要しない。
次に粉砕工程(P5)について説明する。
蒸煮処理を完了した木質系材料を、成形前の含水率調整工程(P4)により乾燥させた後は、必要に応じてさらに微細状に粉砕する工程(粉砕工程)を実施するのが好ましい。この粉砕工程(P5)は、場合によっては省略可能であるが、木質系材料を粉砕してさらに微細化することによって、この木質系材料を加熱しながら加圧したときに流動性及び可塑性が発現しやすくなる。蒸煮処理した木質系材料を粉砕するためには、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサーなどの粉砕手段を用いることができる。
なお、本実施形態では、木質系材料を圧縮成形することにより木質成形体を製造する方法について説明するがものであるが、もし、粉砕した後の木質系材料を用いて押し出し成形や射出成形を行う場合には、木質系材料の粒径は、押し出し成形や射出成形のためのメルトフローを考慮すれば、好ましくは800μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。
次に、仮成形工程(P6)について説明する。
仮成形工程(P6)では、木質系材料を蒸煮処理した後に、この木質系材料を仮成形して仮成形体を作成する。これにより蒸煮処理した木質系材料を、所定の形状を保持し得る程度に、仮成形する。木質系材料を「仮成形」するためには、木質系材料をプレス機などによって圧縮成形すればよい。例えば、蒸煮処理した木質系材料を金型によって圧縮成形することもできる。
仮成形工程における圧力条件は、好ましくは1.0MPa以上20MPa以下である。木質系材料を1.0MPa以上の圧力で圧縮成形することによって、所定の形状を保持し得る程度に、木質系材料を相互に結合させることができる。また、20MPa以下とすることにより、必要以上の圧力を加えることがない。より好ましい圧力条件は、1.5MPa以上8MPa以下である。このようにすれば、より適切な圧力で、木質系材料を仮成形することができる。
木質系材料は多量に空気を含んでいるため熱伝導性が低い。よって、木質系材料を加熱しながら、成形体を圧縮成形しようとすると、木質系材料が成形可能温度に達するのに時間がかかる。よって、本実施形態では、本成形工程(P8)の前に仮成形工程(P6)を設け、常温で仮成形を行い、木質系材料の嵩を減らして圧密としてから、本成形を行うことにより、熱伝導効率を向上させ、成形時間を短縮している。
仮成形体は、常温でも作成できるため、木質系材料を加熱する必要はない。しかし、木質系材料を仮成形する前に、この木質系材料に少量の熱硬化性樹脂を必要に応じて添加する場合や、その他の必要に応じて、木質系材材料を加熱しながら圧縮成形して、仮成形体を成形しても良い。その加熱温度は80℃以上120℃以下が好ましい。
蒸煮処理を完了した木質系材料を、成形前の含水率調整工程(P4)により乾燥させた後は、必要に応じてさらに微細状に粉砕する工程(粉砕工程)を実施するのが好ましい。この粉砕工程(P5)は、場合によっては省略可能であるが、木質系材料を粉砕してさらに微細化することによって、この木質系材料を加熱しながら加圧したときに流動性及び可塑性が発現しやすくなる。蒸煮処理した木質系材料を粉砕するためには、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサーなどの粉砕手段を用いることができる。
なお、本実施形態では、木質系材料を圧縮成形することにより木質成形体を製造する方法について説明するがものであるが、もし、粉砕した後の木質系材料を用いて押し出し成形や射出成形を行う場合には、木質系材料の粒径は、押し出し成形や射出成形のためのメルトフローを考慮すれば、好ましくは800μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。
次に、仮成形工程(P6)について説明する。
仮成形工程(P6)では、木質系材料を蒸煮処理した後に、この木質系材料を仮成形して仮成形体を作成する。これにより蒸煮処理した木質系材料を、所定の形状を保持し得る程度に、仮成形する。木質系材料を「仮成形」するためには、木質系材料をプレス機などによって圧縮成形すればよい。例えば、蒸煮処理した木質系材料を金型によって圧縮成形することもできる。
仮成形工程における圧力条件は、好ましくは1.0MPa以上20MPa以下である。木質系材料を1.0MPa以上の圧力で圧縮成形することによって、所定の形状を保持し得る程度に、木質系材料を相互に結合させることができる。また、20MPa以下とすることにより、必要以上の圧力を加えることがない。より好ましい圧力条件は、1.5MPa以上8MPa以下である。このようにすれば、より適切な圧力で、木質系材料を仮成形することができる。
木質系材料は多量に空気を含んでいるため熱伝導性が低い。よって、木質系材料を加熱しながら、成形体を圧縮成形しようとすると、木質系材料が成形可能温度に達するのに時間がかかる。よって、本実施形態では、本成形工程(P8)の前に仮成形工程(P6)を設け、常温で仮成形を行い、木質系材料の嵩を減らして圧密としてから、本成形を行うことにより、熱伝導効率を向上させ、成形時間を短縮している。
仮成形体は、常温でも作成できるため、木質系材料を加熱する必要はない。しかし、木質系材料を仮成形する前に、この木質系材料に少量の熱硬化性樹脂を必要に応じて添加する場合や、その他の必要に応じて、木質系材材料を加熱しながら圧縮成形して、仮成形体を成形しても良い。その加熱温度は80℃以上120℃以下が好ましい。
次に、本成形前の含水率調整工程(P7)について説明する。
本成形前の含水率調整工程(P7)では、仮成形した成形体を本成形金型に挿入する前に乾燥機により、木質系材料の含水率(乾量基準)が2%以下となるまで、好適には1%以下となるまで、乾燥し、その含水率を調整する工程である。
本成形前の含水率調整工程(P7)では、仮成形した成形体を本成形金型に挿入する前に乾燥機により、木質系材料の含水率(乾量基準)が2%以下となるまで、好適には1%以下となるまで、乾燥し、その含水率を調整する工程である。
この工程では、除湿乾燥機を用いると共に、仮成形体の含水率を所定値以下に保つために、除湿乾燥機から成形機までをエアホースで連結し、仮成形体をダイレクトに供給する機構を利用しても良い。
このようにすれば、仮成形体を金型から取り出したとき、応力により膨張しても、水分を除去することで、仮成形体を小さくすることができ、続く本成形工程において、仮成形体を金型内に収めることができる。
次に、仮成形体を圧縮成形する本成形工程(P8)について説明する。
仮成形体を本成形するためには、仮成形体をプレス機などによって圧縮成形すればよい。例えば、仮成形体を金型の内部にセットして、この仮成形体を高圧でプレスして本成形体を作成することができる。
この本成形体には必要に応じて仮成形体を加熱しながら圧縮成形することもできる。
本成形工程(P8)において、仮成形体を圧縮成形する際の圧力条件は、10.0MPa以上40.0MPa以下である。また、仮成形体を加熱しながら圧縮成形する場合の加熱条件は、160℃以上230℃以下である。つまり仮成形体をこのような条件で圧縮成形することによって、表面がプラスチックのように滑らかで光沢のある本成形体を作成することが可能となる。
本発明によれば、従来は金属やエンジニアリングプラスチックなどによって形成されていた部品を、木質系材料からなる成形体によって代替させることができる。従って、従来は廃棄処分されていた廃材や間伐材などの有効利用を促進することが可能であるとともに、木質系材料は土壌中で生分解するので、焼却処分が不要となり、二酸化炭素排出量削減の効果も期待できる。
次に、本発明の木質成形体の製造方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態の製造方法は、図1を参照して説明した木質系材料準備工程(P1)、蒸煮前の含水率調整工程(P2)、蒸煮工程(P3)を行うところまでは、第1実施形態の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
次に、成形材料100重量部に対して5重量部以上35重量部以下の割合で熱可塑性樹脂が含まれるよう、蒸煮処理された木質系材料に熱可塑性樹脂を添加して、成形材料を得る(樹脂添加工程)。このような成形材料によれば、成形材料100重量部に対して、65重量部以上95重量部以下の木質系材料を含有できる。
成形材料100重量部に対して熱可塑性樹脂の分量を5重量部以上とすることにより、リグニンやヘミセルロースから得られる流動性に、熱可塑性樹脂の流動性が加えられ、成形材料が充分な流動性を持つので、複雑な構造体であっても射出成形が可能となる。また、熱可塑性樹脂の分量を35重量部以下とすることにより、樹脂材料の使用量を抑えることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ乳酸、アクリル樹脂、熱可塑性エストラマーが好適に用いられ得る。特に、成形温度が200℃に近いオレフィン系樹脂が好適に用いられる。木質系材料は約200℃程度で流動化するが、加熱温度がこれよりも高すぎると、分解ガスが発生して、木質成形体に不良が発生するおそれがあるからである。
なお、樹脂添加工程前に、図1に示す成形前の含水率調整工程(P4)を行っても良い。また、樹脂添加工程前に、必要に応じて、図1に示す粉砕工程(P5)を行っても良い。
次に、熱可塑性樹脂が混合された成形材料を固めて粉砕することにより、後の射出工程に投入可能な形態にする。射出工程に投入可能な形態としては、例えば、チップ状、フレーク状、ペレット状、タブレット状が挙げられる。例えば、長辺が1.5mm以下のフレーク状、もしくは、長辺が5.0mm以下のチップ状、直径5.0mm程度のペレット状またはタブレット状であってもよい。なお、成形材料は、必要に応じてさらに微細状に粉砕してもよい。成形材料を粉砕する場合は、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサー等の粉砕手段を使用することができる。
次に、射出成形工程(成形工程の一例)を行う。射出成形工程では、射出装置によって、成形材料を加熱しながら加圧することにより可塑化させ、所定の射出圧で金型に射出することにより、木質成形体を射出成形する。プランジャ温度は180℃であり、金型温度は、例えば、100℃であり、射出圧は、例えば、16MPaである。射出成形機としては、例えば、HAITIAN HTF−200X 200トン横型射出成形機を用いることができる。
なお、成形材料の加熱温度は、好適には180℃から230℃である。180℃以上とすることにより、木質系材料の熱流動性が高まり、複雑な構造体であっても成形可能となる。また、230℃以下とすることにより、ヘミセルロースなどの分解による分解ガスの発生、および分解ガスによる成形不良の発生を抑制することができる。
加熱温度は、材種に応じて適宜変更され得る。例えば、マトリクス材(基盤となる材料)に杉などの針葉樹を用いた場合は、加熱温度は200℃から210℃にすることが望ましい。一方、メイプルなどの広葉樹をマトリクス材とした場合には、加熱温度は180℃から200℃程度が望ましい。
第2実施形態の木質成形体の製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果が得られる。すなわち、蒸煮前の含水率調整工程を経ることにより、蒸煮工程における木質のヘミセルロースやリグニンが過剰に流れ出ず保持される。よって、蒸煮により分解されたヘミセルロースやリグニンが、射出成形時の加熱加圧により重合し疎水性を高め、吸水率の改善に繋がるものと考えられる。
また、第2実施形態によれば、樹脂の混合により流動性をさらに高めたため、例えば歯車のような複雑な構造体であっても、木質系材料を高含有した木質成形体を射出成形することができる。
次に、本発明の木質成形体の製造方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態の製造方法は、図1を参照して説明した木質系材料準備工程(P1)、蒸煮前の含水率調整工程(P2)、蒸煮工程(P3)を行うところまでは、第1実施形態の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
次に、成形材料100重量部に対して5重量部以上35重量部以下の割合で熱可塑性樹脂が含まれるよう、蒸煮処理された木質系材料に熱可塑性樹脂を添加して、成形材料を得る(樹脂添加工程)。このような成形材料によれば、成形材料100重量部に対して、65重量部以上95重量部以下の木質系材料を含有できる。
成形材料100重量部に対して熱可塑性樹脂の分量を5重量部以上とすることにより、リグニンやヘミセルロースから得られる流動性に、熱可塑性樹脂の流動性が加えられ、成形材料が充分な流動性を持つので、複雑な構造体であっても射出成形が可能となる。また、熱可塑性樹脂の分量を35重量部以下とすることにより、樹脂材料の使用量を抑えることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ乳酸、アクリル樹脂、熱可塑性エストラマーが好適に用いられ得る。特に、成形温度が200℃に近いオレフィン系樹脂が好適に用いられる。木質系材料は約200℃程度で流動化するが、加熱温度がこれよりも高すぎると、分解ガスが発生して、木質成形体に不良が発生するおそれがあるからである。
なお、樹脂添加工程前に、図1に示す成形前の含水率調整工程(P4)を行っても良い。また、樹脂添加工程前に、必要に応じて、図1に示す粉砕工程(P5)を行っても良い。
次に、熱可塑性樹脂が混合された成形材料を固めて粉砕することにより、後の射出工程に投入可能な形態にする。射出工程に投入可能な形態としては、例えば、チップ状、フレーク状、ペレット状、タブレット状が挙げられる。例えば、長辺が1.5mm以下のフレーク状、もしくは、長辺が5.0mm以下のチップ状、直径5.0mm程度のペレット状またはタブレット状であってもよい。なお、成形材料は、必要に応じてさらに微細状に粉砕してもよい。成形材料を粉砕する場合は、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサー等の粉砕手段を使用することができる。
次に、射出成形工程(成形工程の一例)を行う。射出成形工程では、射出装置によって、成形材料を加熱しながら加圧することにより可塑化させ、所定の射出圧で金型に射出することにより、木質成形体を射出成形する。プランジャ温度は180℃であり、金型温度は、例えば、100℃であり、射出圧は、例えば、16MPaである。射出成形機としては、例えば、HAITIAN HTF−200X 200トン横型射出成形機を用いることができる。
なお、成形材料の加熱温度は、好適には180℃から230℃である。180℃以上とすることにより、木質系材料の熱流動性が高まり、複雑な構造体であっても成形可能となる。また、230℃以下とすることにより、ヘミセルロースなどの分解による分解ガスの発生、および分解ガスによる成形不良の発生を抑制することができる。
加熱温度は、材種に応じて適宜変更され得る。例えば、マトリクス材(基盤となる材料)に杉などの針葉樹を用いた場合は、加熱温度は200℃から210℃にすることが望ましい。一方、メイプルなどの広葉樹をマトリクス材とした場合には、加熱温度は180℃から200℃程度が望ましい。
第2実施形態の木質成形体の製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果が得られる。すなわち、蒸煮前の含水率調整工程を経ることにより、蒸煮工程における木質のヘミセルロースやリグニンが過剰に流れ出ず保持される。よって、蒸煮により分解されたヘミセルロースやリグニンが、射出成形時の加熱加圧により重合し疎水性を高め、吸水率の改善に繋がるものと考えられる。
また、第2実施形態によれば、樹脂の混合により流動性をさらに高めたため、例えば歯車のような複雑な構造体であっても、木質系材料を高含有した木質成形体を射出成形することができる。
以下、本発明をさらに具体化した実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例1および実施例2は、図1に示す工程のうち、粉砕工程(P5)を除く全工程を経て、木質成形体を圧縮成形した例である。また、実施例3から実施例5は、図1に示す工程のうち、仮成形前の含水率調整工程(P4)から仮成形工程(P6)までを除く全工程を経て、木質成形体を圧縮した例である。
(実施例1)まず、原料となる木質系材料としての木粉として、製材工場でスギ材を鋸挽きした時の鋸屑を準備し、この木質系材料を含水率12%に調整した。その後215℃で6分間蒸煮処理した後に、木粉の含水率を8%となるように乾燥した。その後φ140mmの成形金型内に充填し、室温にて20MPaの圧力で30秒間圧縮成形して仮成形体を得た。再びφ140mmの成形金型内にセットして30MPaの条件で2分間圧縮成形を行なった。これにより得られた木質成形体は、表面にガスの発生によるくもりはなく、光沢のある成形体であった。24時間浸漬吸水率も1%以下で、有機酸による匂いもないものであった。
(実施例1)まず、原料となる木質系材料としての木粉として、製材工場でスギ材を鋸挽きした時の鋸屑を準備し、この木質系材料を含水率12%に調整した。その後215℃で6分間蒸煮処理した後に、木粉の含水率を8%となるように乾燥した。その後φ140mmの成形金型内に充填し、室温にて20MPaの圧力で30秒間圧縮成形して仮成形体を得た。再びφ140mmの成形金型内にセットして30MPaの条件で2分間圧縮成形を行なった。これにより得られた木質成形体は、表面にガスの発生によるくもりはなく、光沢のある成形体であった。24時間浸漬吸水率も1%以下で、有機酸による匂いもないものであった。
(実施例2)成形体原料となる木質系材料としてヒノキ材の鉋屑を準備し、この木質系材料を含水率12%に調整した。215℃で6分間蒸煮処理した後に、φ140mmの成形用金型内に充填し、室温にて30MPaの圧力で3分間圧縮成形して仮成形体を作成した。この仮成形体を再びφ140mmの成形金型内にセットして、200℃、30MPaの条件で2分間圧縮成形を行なった。この場合も吸水率の低い、また有機酸の発生の極めて少ない成形体を得ることができた。
(比較例1)比較例1では、図1に示す蒸煮前の含水率調整工程(P2)に替えて、木質系材料に水を添加し、その含水率を100%まで上昇させた。そして、その木質系材料について200℃で20分間蒸煮処理した後、型内の寸法がφ140mmの成形用金型内に充填し、180℃、30MPaの条件で、3分間圧縮成形を行なった。
[実験例1]
本発明の効果を検証するため、実施例1,2、比較例1から得られる木質成形体の匂いを測定した。具体的には、匂いのもとになっている有機酸の放散量を測定した。表1は、実施例1,2および比較例1で作成された各木質成形体からの酢酸、蟻酸の放散量μg/Lを示している。
[実験例1]
本発明の効果を検証するため、実施例1,2、比較例1から得られる木質成形体の匂いを測定した。具体的には、匂いのもとになっている有機酸の放散量を測定した。表1は、実施例1,2および比較例1で作成された各木質成形体からの酢酸、蟻酸の放散量μg/Lを示している。
表1に示す結果からわかるように、蒸煮工程前に木質系材料の含水率を8%、12%にそれぞれ調整して成形を行った実施例1,2によれば、有機酸の発現が少ないため匂いの少ない木質成形体を得ることができた。これに対し、蒸煮前に乾燥を行っていない比較例では、匂いの元となる酢酸、蟻酸が多量に発生している。また実施例1,2によれば、表面も滑らかな光沢のある木質成形体を得ることができた。
官能試験として、性別と年齢の異なる10人について匂いの試験を行なった結果も10人とも不快な匂いがないとの結果を得た。
官能試験として、性別と年齢の異なる10人について匂いの試験を行なった結果も10人とも不快な匂いがないとの結果を得た。
(実施例3)まず、成形体の原料となる木質系材料として、広葉樹の野球バット削り屑(メイプルとアオダモの混合材)を準備し、この木質系材料を乾燥し、その含水率を調整した(蒸煮前の含水率調整工程(P2))。
その後、蒸煮処理(P3)を経て、木質系材料を180℃の加熱温度、30MPaの条件で2分間圧縮成形を行なうことにより、木質成形体を製造した。
実施例3における蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、乾燥機を用いて木質系材料の含水率を3%に調整して成形された木質成形体を、試料S3−1と称する。また、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、大気乾燥により木質系材料の含水率を15%に調整して成形された木質成形体を、試料S3−2と称する。
(比較例2)比較例2では、蒸煮前の含水率調整工程(P2)に替えて、木質系材料に水を添加し、含水率を上昇させた。その他の工程は、実施例3と同様である。ここで、木質系材料に130重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−1と称し、木質系材料に200重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−2と称する。
[実験2]
実施例3および比較例2から得られる試料の各々について、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく吸水試験を行った結果を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、蒸煮前に含水率を15%以下まで低下させた実施例3の試料S3−1、S3−2は、蒸煮前に水を添加した比較例2の比較試料H2−1,H2−2に比較して、吸水率が低減している。また、実施例3の試料S3−1,S3−2の実験結果を比較してみると、蒸煮前の木質系材料の含水率を3%まで低減させた試料S3−1で、吸水率がより低減され、効果がより顕著であることが分かった。
その後、蒸煮処理(P3)を経て、木質系材料を180℃の加熱温度、30MPaの条件で2分間圧縮成形を行なうことにより、木質成形体を製造した。
実施例3における蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、乾燥機を用いて木質系材料の含水率を3%に調整して成形された木質成形体を、試料S3−1と称する。また、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、大気乾燥により木質系材料の含水率を15%に調整して成形された木質成形体を、試料S3−2と称する。
(比較例2)比較例2では、蒸煮前の含水率調整工程(P2)に替えて、木質系材料に水を添加し、含水率を上昇させた。その他の工程は、実施例3と同様である。ここで、木質系材料に130重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−1と称し、木質系材料に200重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−2と称する。
[実験2]
実施例3および比較例2から得られる試料の各々について、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく吸水試験を行った結果を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、蒸煮前に含水率を15%以下まで低下させた実施例3の試料S3−1、S3−2は、蒸煮前に水を添加した比較例2の比較試料H2−1,H2−2に比較して、吸水率が低減している。また、実施例3の試料S3−1,S3−2の実験結果を比較してみると、蒸煮前の木質系材料の含水率を3%まで低減させた試料S3−1で、吸水率がより低減され、効果がより顕著であることが分かった。
(実施例4、比較例3)上記実施例3、比較例2は、180℃で木質成形体を成形していたが、実施例4、比較例3は、成形温度を210℃とした。なお、実施例4は、成形温度のみが実施例3と異なり、他の条件は実施例3と同一である。同様に、比較例3は、成形温度のみが比較例2と異なり、他の条件は比較例2と同一である。
実施例4における蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、乾燥機を用いて木質系材料の含水率を3%に調整して得られた木質成形体を、試料S4−1と称する。また、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、大気乾燥により木質系材料の含水率を15%に調整して得られた木質成形体を、試料S4−2と称する。
また比較例3については、木質系材料に130重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−1と称し、木質系材料に200重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−2と称する。
[実験3]
次に、木質系材料の含水率と木質成形体の吸水率との関係について本発明者等が行った実験について説明する。実験3は、実験2と同様に、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく24時間水浸漬の吸水試験を行った。実験3の結果を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、成形温度が180℃であった実験2の各試料S3−1,S3−2に比較して(図3(a)参照)、成形温度が210℃であった実験3の各試料S4−1,S4−2の吸水率が低減していることが分かる。よって、成形温度が高い方が、より吸水率を低減させることができる、という知見が得られた。
(実施例5)イエローポプラの木粉を、1.8MPの蒸煮圧、220℃の蒸煮温度下で20分間、蒸煮処理し、その後、加圧圧力25MPa、金型冷却温度80℃、加熱時間3分間の熱プレス条件下で圧縮成形行って、木質成形体からなる試験片を12個、成形した。各試験片は、試験片No.i(iは1から12までの整数)と称して区別する。試験片No.1〜4は、170℃の成形温度で成形した。試験片No.5〜8は、190℃の成形温度で成形した。また、試験片No.9〜12は、210℃の成形温度で成形した。なお、各試験片の成形前の含水率は、それぞれ異ならせている。
[実験4]
次に、実施例5で得られた試験片No.1〜12を用いて、成形前の木質系材料の含水率と成形温度と木質成形体の吸水率との関係についての実験を行った。実験5では、実験2と同様に、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく24時間水浸漬の吸水試験を行った。
図4は、実験5の試験結果を示すグラフである。図4(a)〜図4(c)から分かるように、木質成形体の吸水率と吸水厚膨張率との間には明らかな相関関係が見られるものの、成形前の含水率と木質成形体の吸水率との間、および成形前の含水率と吸水厚膨張率との間には、明らかな相関関係は見られない。したがって、図3に示す実験結果と、図4に示す実験結果からは、吸水率改善のためには、成形前の含水率よりも、蒸煮処理前の含水率を調整することの方が重要であることが分かる。
また、図4(a)は、170℃の成形温度で成形された試験片のグループの実験結果を示し、図4(b)は、190℃の成形温度で成形された試験片のグループの実験結果を示し、図4(c)は、210℃の成形温度で成形されたグループの実験結果を示している。これらからは、成形温度が高くなるほど、吸水率が低下し、吸水厚膨張率も低下することが分かる。
実施例4における蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、乾燥機を用いて木質系材料の含水率を3%に調整して得られた木質成形体を、試料S4−1と称する。また、蒸煮前の含水率調整工程(P2)において、大気乾燥により木質系材料の含水率を15%に調整して得られた木質成形体を、試料S4−2と称する。
また比較例3については、木質系材料に130重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−1と称し、木質系材料に200重量%の水を添加して得られた試料を比較試料H2−2と称する。
[実験3]
次に、木質系材料の含水率と木質成形体の吸水率との関係について本発明者等が行った実験について説明する。実験3は、実験2と同様に、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく24時間水浸漬の吸水試験を行った。実験3の結果を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、成形温度が180℃であった実験2の各試料S3−1,S3−2に比較して(図3(a)参照)、成形温度が210℃であった実験3の各試料S4−1,S4−2の吸水率が低減していることが分かる。よって、成形温度が高い方が、より吸水率を低減させることができる、という知見が得られた。
(実施例5)イエローポプラの木粉を、1.8MPの蒸煮圧、220℃の蒸煮温度下で20分間、蒸煮処理し、その後、加圧圧力25MPa、金型冷却温度80℃、加熱時間3分間の熱プレス条件下で圧縮成形行って、木質成形体からなる試験片を12個、成形した。各試験片は、試験片No.i(iは1から12までの整数)と称して区別する。試験片No.1〜4は、170℃の成形温度で成形した。試験片No.5〜8は、190℃の成形温度で成形した。また、試験片No.9〜12は、210℃の成形温度で成形した。なお、各試験片の成形前の含水率は、それぞれ異ならせている。
[実験4]
次に、実施例5で得られた試験片No.1〜12を用いて、成形前の木質系材料の含水率と成形温度と木質成形体の吸水率との関係についての実験を行った。実験5では、実験2と同様に、23℃の条件下で、JISのK7209A法に基づく24時間水浸漬の吸水試験を行った。
図4は、実験5の試験結果を示すグラフである。図4(a)〜図4(c)から分かるように、木質成形体の吸水率と吸水厚膨張率との間には明らかな相関関係が見られるものの、成形前の含水率と木質成形体の吸水率との間、および成形前の含水率と吸水厚膨張率との間には、明らかな相関関係は見られない。したがって、図3に示す実験結果と、図4に示す実験結果からは、吸水率改善のためには、成形前の含水率よりも、蒸煮処理前の含水率を調整することの方が重要であることが分かる。
また、図4(a)は、170℃の成形温度で成形された試験片のグループの実験結果を示し、図4(b)は、190℃の成形温度で成形された試験片のグループの実験結果を示し、図4(c)は、210℃の成形温度で成形されたグループの実験結果を示している。これらからは、成形温度が高くなるほど、吸水率が低下し、吸水厚膨張率も低下することが分かる。
P2 蒸煮前の含水率調整工程(蒸煮前調整工程の一例)
P3 蒸煮工程
P4 仮成形前の含水率調整工程
P6 仮成形工程
P7 本成形前の含水率調整工程
P8 本成形工程
C 原料収容容器(容器の一例)
14 横架部材
P3 蒸煮工程
P4 仮成形前の含水率調整工程
P6 仮成形工程
P7 本成形前の含水率調整工程
P8 本成形工程
C 原料収容容器(容器の一例)
14 横架部材
Claims (11)
- 木質成形体の製造方法であって、
木質系材料を乾燥させて、その含水率を調整する蒸煮前調整工程と、
その蒸煮前調整工程により含水率が調整された木質系材料を蒸煮処理する蒸煮工程と、
その蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を成形する成形工程とを含むことを特徴とする木質成形体の製造方法。 - 前記蒸煮前調整工程は、木質系材料の含水率を20%以下に調整することを特徴とする請求項1記載の木質成形体の製造方法。
- 前記成形工程は、
前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料を仮成形する仮成形工程と、
その仮成形工程により成形された仮成形体を圧縮成形する本成形工程とを含むものであり、
前記蒸煮工程の後であって、且つ前記仮成形工程または前記本成形工程の少なくともいずれか一方の前に、前記木質系材料を乾燥し、その含水率を調整する成形前乾燥工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の木質成形体の製造方法。 - 前記成形前乾燥工程は、前記仮成形工程の前であって且つ木質系材料を粉砕する粉砕工程の前に行われる場合、前記木質系材料の含水率を15%以下に乾燥させ、
前記本成形工程の前に行われる場合、前記木質系材料で構成される仮成形体を含水率2%以下に乾燥させることを特徴とする請求項3記載の木質成形体の製造方法。 - 前記仮成形工程は、木質系材料を金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形する請求項3または4に記載の木質成形体の製造方法。
- 成形材料100重量部に対して5重量部以上35重量部以下の割合で熱可塑性樹脂が含まれるよう、前記蒸煮工程により蒸煮処理された木質系材料に熱可塑性樹脂を添加して前記成形材料を得る樹脂添加工程を含み、
前記成形工程は、
その樹脂添加工程により得られた成形材料を金型内に射出することにより、前記木質成形体を射出成形することを特徴とする請求項1記載の木質成形体の製造方法。 - 前記蒸煮工程は、
通気性がある側面を有する容器の上方の開口から、前記木質系材料を投入し、その容器内に投入された木質系材料に蒸煮処理を行うものであり、
前記容器内における側面間に架設される長手状の横架部材を、その長手方向に直交する断面が、前記容器上方の開口に対し凸の山形状をなし、且つ容器下方に対し開放された形状をなす向きで、前記容器内に設けた状態で、前記木質系材料が前記容器内へ投入されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の木質成形体の製造方法。 - 木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与する木質系材料の製造方法において、木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形するものであり、成形用木質系材料の含水率を水蒸気処理前および仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形することを特徴とする木質成形体の製造方法。
- 木質系材料の含水率を3%以上20%以下に調整し、水蒸気に接触させた後に、その木質系材料の含水率を5%以上15%以下に乾燥させて仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を含水率2%以下に乾燥後、圧縮成形したことを特徴とする請求項8記載の木質成形体の製造方法。
- 木質系材料の含水率を5%以上15%以下に調整し、金型内に充填し、1MPa以上20MPa以下で加圧成形して仮成形体を成形する請求項8,9に記載の木質系成形体の製造方法。
- 木質系材料を水蒸気に接触させ、木質系材料に熱流動性を付与することにより製造される木質成形体であって、
木質系材料の水蒸気処理、仮成形、本成形にて成形されるものであり、成形用木質系材料の自由水および結合水の含水率を仮成形若しくは本成形の成形前に調整し、成形されたことを特徴とする木質成形体。
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