JP2007283661A - 竹繊維成形体の製造方法 - Google Patents

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Yasuo Takasu
恭夫 高須
Toshiko Takahashi
勤子 高橋
Haruhisa Tominaga
晴久 富永
Masami Mitani
昌巳 三谷
Takeshi Mizutani
武 水谷
Tatsuya Oguri
達也 小栗
Yoji Kikata
洋二 木方
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Abstract

【課題】竹材を原料として強度の高い成形体を製造する方法を提供する。
【解決手段】竹材を原料とし、水蒸気処理工程と、柔細胞除去工程とを経ることにより、竹材から竹繊維を取り出し、その竹繊維を細分化工程において細分化し、成形工程において加熱しながら加圧することにより可塑化して成形する。
【選択図】図1

Description

本発明は、竹繊維成形体の製造方法に関するものである。
近年の環境保全意識の向上にともない、石油由来のプラスチックや金属等の限りある資源に代えて、植物資源の活用が期待されている。すでに、木材を利用して成形体を製造する試みがいくつかなされており、例えば、特許文献1には、リグニン、ヘミセルロース、及びセルロースを含むリグノセルロース系材料からなる成形体が開示されている。この成形体は、細分化したリグノセルロース系材料を水蒸気処理した後に加熱しながら加圧することによって成形されている。
ところで、竹は成長が早く繰り返し生産することが容易であることから、資源としての有効活用が期待されている。竹は、リグニン、ヘミセルロース、及びセルロースを含んでおり、粉砕した竹材を水蒸気処理した後に加熱しながら加圧することにより可塑化して成形可能であることが本発明者らによって確認されている。また、竹材は、竹以外の木材を原料とする場合と比べて低温で可塑化することが可能であるとともに、成形性が良好であることも確認されている。しかし、このような方法で得られた竹材を原料とする成形体は、同様の方法で竹以外の木材を原料として得られた成形体と比べて強度が低いという問題点があった。
特開2003−165844号公報
そこで本発明は、竹材を原料として従来よりも強度の高い成形体を製造することを目的とする。
課題を解決するための手段は、以下の(1)〜(2)の発明である。
(1)竹繊維成形体の製造方法であって、竹材を水蒸気に接触させる水蒸気処理工程と、前記水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る柔細胞除去工程と、前記竹繊維を細分化する細分化工程と、前記細分化工程で細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し成形体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
(2)上記(1)に記載の竹繊維成形体の製造方法であって、前記柔細胞除去工程と前記細分化工程との間に、前記竹繊維を解繊する解繊工程を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
本発明によれば、竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得て、その竹繊維を成形することにより、強度の高い竹繊維成形体を得ることができる。
竹材は、大別すると道管・師管を形成する強靭な維管束鞘と、維管束鞘を取り巻く柔らかい柔細胞からなっている。維管束鞘は、直径10μm前後のモノフィラメント(単繊維)の集合体であり、その直径は一般に約300μmから1000μm程度となっている。本発明では竹材から柔細胞を除去して取り出した維管束鞘を「竹繊維」とよび、その竹繊維からなる成形体を「竹繊維成形体」とよぶ。
本発明に係る竹繊維成形体の製造方法は、図1のフローチャートに示すように、「水蒸気処理工程」、「柔細胞除去工程」、「乾燥工程」、「解繊工程」、「細分化工程」および「成形工程」の6つの工程を備えている。以下に、各工程についてそれぞれ順に説明する。
[水蒸気処理工程]
まず、原料となる竹材を水蒸気に接触させる。この「竹材を水蒸気に接触させる処理」のことを、本明細書では「水蒸気処理」と呼ぶ。竹材を水蒸気処理することにより、竹材に含まれるヘミセルロース、リグニン等が分解する。その分解後の成分が寄与することにより、成形工程において、竹繊維を加熱しながら加圧することにより可塑化および流動化させることができる。また、水蒸気処理することにより竹材を構成する維管束鞘と柔細胞の結合がゆるみ、柔細胞除去工程において、維管束鞘から柔細胞を容易に除去することができるようになる。
水蒸気処理では、加熱した飽和蒸気あるいは過熱蒸気等に竹材を接触させる。具体的には、例えば耐圧容器内に竹材を投入して、この耐圧容器内にボイラー等の供給源から水蒸気を供給する。このとき竹材の形状は特に限定されず、筒状の竹材を耐圧容器内に入るよう適当な長さに切って用いることができる。その他、短冊状等に断裁したものを用いてもよい。
この水蒸気処理においては、60℃以上250℃以下の水蒸気を竹材に接触させるのが好ましい。竹材をこのような温度範囲の水蒸気に接触させることによって、竹材に含まれるヘミセルロース、リグニン等が分解し、竹繊維の可塑化および流動化に寄与する成分が生じる。水蒸気処理は、竹材を110℃以上230℃以下の水蒸気に接触させて実施するのがより好ましい。更に好ましくは、150℃以上230℃以下である。
水蒸気処理は、水蒸気を竹材に適当な時間(例えば数十秒から数十分間程度)接触させることによって完了することができる。水蒸気の圧力や温度が低い場合には、水蒸気と竹材との接触時間をより長くすることが好ましい。
例えば、筒状の竹材を180℃以上200℃以下の水蒸気に接触させる場合、竹材に対して水蒸気を5分間から20分間程度接触させることによって、その竹材を加熱しながら加圧したときに可塑性及び流動性が発現するようになる。
水蒸気処理を終了するときには、竹材が収容されている耐圧容器等を開放して大気圧に戻せばよい。大気圧以上の高圧の水蒸気の場合には、徐々に圧力を下げることもできるし、一気に大気圧まで解放することもできる。以下、徐々に圧力を下げて終了する水蒸気処理を「蒸煮」、大気圧まで一気に開放して終了する水蒸気処理を「爆砕」と区別してよぶことがある。爆砕すると、竹材の組織内部で水蒸気の体積が一気に膨張するので、竹材に含まれるヘミセルロース、リグニン等の化学的分解とともに、物理的な分離効果が期待できる。なお、爆砕を実施する場合には、水蒸気の温度は、150℃以上230℃以下であることが好ましく、170℃以上200℃以下であることがより好ましい。
[柔細胞除去工程]
柔細胞除去工程では、水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る。
竹材において、柔細胞は維管束鞘を取り巻くように配置している。水蒸気に接触させた竹材は、容易に維管束鞘から柔細胞を除去することができ、竹繊維を取り出すことができる。具体的には、水蒸気に接触させた竹材を手で揉みほぐしたり、ローラーで押し当ててほぐすなどすれば、柔細胞をほぼ取り除くことができる。この柔細胞除去工程で得られる竹繊維は、直径10μm前後のモノフィラメント(単繊維)の集合体で、直径が約300μmから500μm程度であり、長さはほぼ水蒸気処理時の竹材の長さである。このように竹材から柔細胞を除去することにより、成形体の曲げ強さを向上させることができる。
[解繊工程]
柔細胞除去工程の後に、柔細胞除去工程で得られた竹繊維を解繊する工程(解繊工程)を実施するのが好ましい。竹繊維はモノフィラメントの集合体であり、解繊工程では、竹繊維を構成するモノフィラメントの束を解す。このとき、ディスク式リファイナ、ドラム式リファイナ、ファイバライザ等の解繊機を用い、竹繊維の直径が少なくとも300μm以下となるまで機械的に解繊するのが好ましい。このように竹繊維を機械的に解繊することにより、竹繊維が解れるとともに、竹繊維同士が絡まり、竹繊維が成形体中において補強材として機能する。
[細分化工程]
細分化工程では、柔細胞除去工程で得られた竹繊維を細分化する。この細分化工程では、粉砕機やカッター等を用いて竹繊維を直径0.001mm以上0.5mm以下、長さ5mm以上50mm以下の繊維状になるように破砕及び/または切断するのが好ましい。このように細分化することにより成形工程における成形性が向上し、より複雑な形状に成形することが可能となる。特に、細分化された竹繊維が直径0.005mm以上0.1mm以下、長さ10mm以上の繊維状であると、耐衝撃性を飛躍的に向上させることができる。より好ましくは、直径0.005mm以上0.05mm以下、長さ15mm以上の繊維状である。一方、このような範囲より更に小さくなるまで細分化すると、得られる成形体の強度がかえって低くなる傾向があり、好ましくない。
[乾燥工程]
成形工程の前に竹繊維を乾燥させる工程(乾燥工程)を実施するのが好ましい。竹繊維中に水分が多量に存在すると、成形工程において竹繊維を加熱しながら加圧して可塑化および流動化させる際に、竹繊維の内部から水分が気化して成形性あるいは流動性が損なわれる恐れがあるからである。乾燥工程は、竹繊維の含水率(=(竹繊維に含まれている水分の重量/竹繊維の絶乾状態の重量)×100(%)で表される数値)が28%以下となるように実施することが好ましい。より好ましくは、15%以下である。乾燥の手段は特に制限するものではないが、竹繊維に対して温風を吹き付ける等により積極的な乾燥を行うのが好ましい。竹繊維は成形工程に投入する前に乾燥していればよく、乾燥工程は、成形工程の直前に行ってよいし、細分化工程、解繊工程あるいは柔細胞除去工程の前に行ってもよい。
[成形工程]
成形工程では、細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し、竹繊維成形体を得る。水蒸気処理された竹繊維は、加熱しながら加圧することにより、可塑化および流動化させることができるのであるが、竹繊維が細分化されていることにより、より容易に可塑化および流動化させることができる。加熱しながら加圧するための手段としては、例えば、一般的に使用されている合成樹脂を成形するための成形機などを使用することができる。具体的には、圧縮成形機、押出成形機、射出成形機、トランスファー成形機などを使用することができる。これらの成形機を使用することによって、竹繊維を加熱しながら加圧するのと同時に、可塑化した竹繊維を所定の形状に成形することが可能である。
竹繊維を加熱しながら加圧する際の温度条件は、好ましくは80℃以上200℃以下であり、より好ましくは100℃以上180℃以下である。加圧条件は、好ましくは10MPa以上80MPa以下であり、より好ましくは25MPa以上60MPa以下である。つまり、予め水蒸気処理した竹繊維をこの範囲まで加熱しながら加圧することによって、竹繊維を可塑化および流動化させるとともに形状を付与することができる。このようにして得られた竹繊維成形体は、表面が平滑でプラスチック様の成形体となっている。
本発明によれば、竹繊維が細分化されていることにより成形性が良好であり、複雑な形状を含め、いろいろな形状の成形品を作製することができる。例えば、カップ、皿などの日用品やスタンプなどの文房具を作ることが可能である。また、ボードやパネルなどの建築資材を作ることが可能である。さらに、曲げ強さや耐衝撃性など、ある程度の機械的強度が要求される部品を作ることも可能である。例えば、自動車部品、家電器機用の部品、OA機器用など、各種製品の部品を作ることが可能であり、歯車やカムなどの機械要素を作ることも可能である。
実施例1では、原料として竹を筒状のまま断裁した竹材を用意し、表1に示すNo.1〜No.10までの各条件のもと成形体を作成した。まず、表1の水蒸気処理の欄に示す条件で竹材を水蒸気処理した。ここで、「蒸煮」は、竹材を200℃で20分間蒸煮したことを示し、「爆砕」は、170℃で5〜15回爆砕したことを示す。次に、No.1〜8では、水蒸気処理した竹材を手で解して柔細胞を除いて竹繊維を得、それを細分化した。表1の材料名の欄における「繊維(粉砕)」は、竹繊維を得、その竹繊維を粉砕して細分化したことを示し、「繊維(カット)」は、竹繊維を得、その竹繊維を切断して細分化したことを示している。また、No.9の「竹全体(粉砕)」は、竹材から柔細胞を取り除くことなく、粉砕により細分化したことを示しており、No.10の「柔細胞」は、竹材を解して竹繊維を取り除いた後の残渣である柔細胞を示している。表1の材料の大きさの欄には、これらの材料の大きさが示されており、「φ4mmpass」および「φ0.5mmpass」は、直径4mmないし0.5mmの篩を通過した材料であることを示しており、「90〜250μm」は目開き250μmの篩を通過し、90μmの篩にとどまった材料であることを示している。また、「1cm」および「1〜2cm」は切断された繊維の長さを示している。No.10の柔細胞は、竹繊維を取り出す際に解れて不定形となったものをそのまま用いた。なお、No.1〜4の「繊維(粉砕)」は、フィリッチュ製ミルを用いて竹繊維を粉砕した。このような材料を表1の成形温度の欄に示す温度条件のもと、10分間予熱し、30MPaで10分間加圧して厚さ4mmの成形体を得た。得られた成形体の曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を測定し、その結果を表1に併記した。なお、アイゾット衝撃値とは、アイゾット試験機で測定した衝撃強度であり、その値が高いほど耐衝撃性に優れる。
Figure 2007283661
No.1〜8では、竹材を水蒸気処理した後に柔細胞を除去して得た竹繊維を粉砕または切断し、加熱しながら加圧することにより成形体を得ることができた。これにより、水蒸気処理した竹材は、柔細胞を除いても、加熱しながら加圧することにより流動化し、成形可能であることが確認された。
No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体は、No.9の「竹全体(粉砕)」からなる成形体と、材料が粉砕されている点で同じであるが、No.9が竹全体を粉砕しているのに対して、No.1、No.3およびNo.4は、竹材から柔細胞を除去して取り出した竹繊維を粉砕している点で異なっている。
No.9の「竹全体(粉砕)」からなる成形体と、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体の曲げ強さを比較すると、「繊維(粉砕)」からなる成形体の方が高いことがわかった。また、アイゾット衝撃値を比較しても、「繊維(粉砕)」からなる成形体の方が高いことがわかった。これにより、竹材から柔細胞を除いて竹繊維を取り出し、その竹繊維により成形体を形成することにより、曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を向上させることができることが明らかとなった。
ここで、No.2の成形体をみると、No.1、No.3およびNo.4と同様に「繊維(粉砕)」からなるにも関わらず、曲げ強さは、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体よりも低く、No.9の「竹全体(粉砕)」よりも低くなっている。これは、No.2の「繊維(粉砕)」は、竹材から柔細胞を除去して竹繊維を取り出した点においてはNo.1、No.3およびNo.4と同じであるが、粉砕後の材料の大きさがNo.1、No.3およびNo.4が「φ4mmpass」であるのに対して、No.2は「90〜250μm」と小さく、竹繊維を細分化して小さくしすぎたことにより成形体の強度が低下したものと考えられる。
No.5、No.6、No.7およびNo.8の「繊維(カット)」からなる成形体は、竹材から柔細胞を除去して竹繊維を取り出した点においては、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体と同じであるが、No.1、No.3およびNo.4が竹繊維を粉砕したのに対して、No.5、No.6、No.7およびNo.8では竹繊維を切断した点で異なっている。
No.5、No.6、No.7およびNo.8の「繊維(カット)」からなる成形体と、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体の曲げ強さを比較するとほぼ同等であるが、アイゾット衝撃値を比較すると、「繊維(カット)」からなる成形体の方が著しく高いことがわかった。これにより、竹繊維は繊維形状を保ちながら切断して細分化することにより、成形体の耐衝撃性を飛躍的に向上させることができることが明らかとなった。
また、No.10の柔細胞からなる成形体と、No.9の「竹全体(粉砕)」からなる成形体とを比較すると、「柔細胞」からなる成形体は、「竹全体(粉砕)」からなる成形体に比べて曲げ強さが低くほぼ半分の値であり、アイゾット衝撃値は同等であった。
ここでアイゾット衝撃値に着目すると、「繊維(粉砕)」からなる成形体は相対的に高く、「柔細胞」からなる成形体は相対的に低いことがわかる。また、「竹全体(粉砕)」からなる成形体のアイゾット衝撃値をみると、「柔細胞」からなる成形体と同等に低い。このことから、繊維部分と柔細胞が混在している場合は、柔細胞からなる成形体と同様にアイゾット衝撃値が低くなることがわかった。したがって、竹材から柔細胞を除いて竹繊維を取り出す際には、できるだけ柔細胞が残らないように取り除くのが好ましい。
実施例2では、原料として、ブナのかんな屑、竹の粉末および竹を筒状のまま適当な長さに断裁した竹材を用意し、以下のNo.1〜No.5までの5種類実験を行った。まず、原料を水蒸気処理して、加熱しながら加圧することにより成形可能な成形材料を作成した。
No.1では、従前試みられている木質系材料の成形方法に従って、木材であるブナのかんな屑を、200℃で20分間蒸煮した後粉砕して成形材料を得た(以下、この成形材料を「ブナ(粉末)」という)。
No.2では、竹をあらかじめ細分化して粉末状とし、No.1と同様に蒸煮し成形材料を得た(以下、この成形材料を「竹(粉末)」という)。なお、ここで得られた「竹(粉末)」は、 柔細胞と維管束鞘が混在していた。柔細胞は不定形の塊状で存在し、100μm〜500μm程度のものが多く、大きいものは1mm程であった。維管束鞘は棒形状で存在し、長さは0.5〜3.0mm、長いもので5.0mm程の長さであり、直径は10μm〜300μm程度のものが多く、細いものは単繊維化していた。
No.3では、竹材をNo.1と同様に蒸煮し、手で解して柔細胞を除去して竹繊維を得(以下、この竹繊維を「蒸煮竹繊維」とよぶ)、長さ10mmに切断して成形材料とした。なお、ここで得られた「蒸煮竹繊維」は、維管束鞘の表面に一部柔細胞が付着した状態で残存しており、維管束鞘の直径は300μm〜500μm程度であった。長さは蒸煮時の竹材の長さであった。
No.4では、竹材を170〜175℃で爆砕し、手で解して柔細胞を除去して竹繊維を得(以下、この竹繊維を「爆砕竹繊維」とよぶ)、長さ10mmに切断して成形材料とした。なお、ここで得られた「爆砕竹繊維」は、「蒸煮竹繊維」と同様に、維管束鞘の表面に柔細胞が付着した状態で残存しているが、その付着量は「蒸煮竹繊維」よりも多かった。維管束鞘の直径は「蒸煮竹繊維」と同様300μm〜500μm程度であり、長さは爆砕処理時の竹材の長さであった。
No.5では、No.4と同様に竹材を爆砕し、手で柔細胞を除去して竹繊維を得、その竹繊維を解繊機を用いて解繊した(以下、この解繊した竹繊維を「爆砕解繊竹繊維」とよぶ)。さらに、この「爆砕解繊竹繊維」を15mmの長さに切断して成形材料を得た。なお、ここで得られた「爆砕解繊竹繊維」は、「爆砕竹繊維」を解繊処理することで、「爆砕竹繊維」の維管束鞘表面に残存していた柔細胞が除去され少なくなっていた。維管束鞘部分の径は「爆砕竹繊維」より若干細い100μm〜300μm程度だが、所々で維管束鞘が解されて10μm前後の単繊維となっていた。また、繊維同士が絡まり合っていた。
次に、No.1〜No.5で得られた成形材料をそれぞれ成形型の内部に充填し、表2に示す成形温度条件のもと、30MPaで加圧し、1分間加熱しながら加圧し、厚さ4mmの成形体を得た。得られた成形体について曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を測定した。その結果を表2に併記する。
Figure 2007283661
No.1およびNo.2の結果より、「ブナ(粉末)」の成形温度が180℃であるのに対し、「竹(粉末)」の成形温度は120℃であり、「竹(粉末)」は「ブナ(粉末)」に比べてより低温で流動性を発現することが分かった。したがって、成形温度は異なるものの、竹は、木材であるブナと同様に粉末状にして水蒸気処理(蒸煮)し、加熱しながら加圧することにより流動性を発現し、成形体が得られることがわかった。しかしながら、得られた成形体の曲げ強さとアイゾット衝撃値は、「竹(粉末)」からなる成形体は、「ブナ(粉末)」からなる成形体に比べて低く、もろいことがわかった。
No.2、No.3およびNo.4の結果から、No.3の「蒸煮竹繊維」からなる成形体とNo.4の「爆砕竹繊維」からなる成形体の曲げ強さおよびアイゾット衝撃値は、No.2の「竹(粉末)」からなる成形体に比べて著しく高く、曲げ強さは約1.4〜1.5倍、アイゾット衝撃値は約9倍も高いことが明らかとなった。
これにより、竹材を原料とする場合、柔細胞を除いて得た竹繊維を成形することにより成形体の曲げ強さおよび耐衝撃性を著しく向上させることができることが分かった。これは、「竹(粉末)」には柔らかい柔細胞と剛直な維管束鞘とが混在しているのに対して、竹繊維はほぼ剛直な維管束鞘のみからなり、しかも繊維形状を保ったまま細分化されているため、成形体中で補強材の役割を果たすためであると考えられる。
No.2とNo.5の結果から、No.5の「爆砕解繊竹繊維」からなる成形体の曲げ強さおよびアイゾット衝撃値は、No.2の「竹(粉末)」からなる成形体に比べて極めて高く、曲げ強さは約2.9倍、アイゾット衝撃値は約12倍もの高さであることが明らかとなった。また、No.5の「爆砕解繊竹繊維」からなる成形体は、No.3の「蒸煮竹繊維」からなる成形体とNo.4の「爆砕竹繊維」からなる成形体と比較しても、曲げ強さは約2倍、アイゾット衝撃値は約1.4倍もの高さであり、著しく高いことが明らかとなった。
これにより、竹材を原料とする場合、柔細胞を除いて得た竹繊維を解繊してから成形することにより成形体の曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を飛躍的に向上させることができることが明らかとなった。これは、竹繊維を解繊する過程において解れた竹繊維が絡まり、成形体中でより強力に補強材として機能するためであると考えられる。
また、No.1とNo.5の結果から、No.5の「爆砕解繊竹繊維」からなる成形体の曲げ強さおよび耐衝撃性は、No.1の「ブナ(粉末)」からなる成形体に比べて著しく高く、曲げ強さは約1.9倍、アイゾット衝撃値は約8.5倍と極めて高いことが明らかとなった。この結果により、「爆砕解繊竹繊維」からなる成形体は、従前試みられていた木材からなる成形体と比較しても強度が高く、高強度が求められる用途にも展開が可能であることが明らかとなった。
実施例3では、原料として竹を筒状のまま適当な長さに断裁した竹材を用意し、200℃で20分蒸煮することにより水蒸気処理し、ゼファー機を用いて柔細胞を除去して竹繊維を得、その竹繊維を粉砕により細分化して直径4mmの篩を通過したものを成形材料とした。
得られた成形材料により、図2に示す金型10を用いて、カップ形状(上径5cm、下径3cm、高さ4cm、厚さ2mm)の成形体の作成を試みた。金型10の上方に備えられたシリンダ部12に成形材料を充填し、プランジャー16の押圧により、180℃の温度条件のもと、60MPaで10分間加圧した。
その結果、成形材料は可塑化および流動化し、金型10の下方に備えられたキャビティ14に充填され、カップ形状の成形体を得ることができた。得られた成形体の外観は、表面が黒くプラスチックのようであり、2mmという薄さにも関わらず、高強度であった。このように、竹繊維を細分化することにより、加熱しながら加圧することにより容易に可塑化及び流動化させることができ、キャビティ14が狭く複雑な形状であっても、隅々まで充填することが可能となる。その結果、カップ形状のような3次元形状の成形体を作成することができる。
竹繊維成形体の製造方法のフローチャートである。 (実施例3で用いた)金型の断面図である。
符号の説明
10 金型
12 シリンダ部(成形材料)
14 キャビティ(成形体)
16 プランジャー

Claims (2)

  1. 竹繊維成形体の製造方法であって、
    竹材を水蒸気に接触させる水蒸気処理工程と、
    前記水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る柔細胞除去工程と、
    前記竹繊維を細分化する細分化工程と、
    前記細分化工程で細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し成形体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の竹繊維成形体の製造方法であって、
    前記柔細胞除去工程と前記細分化工程との間に、前記竹繊維を解繊する解繊工程を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
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