JP2007283661A - 竹繊維成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】竹材を原料とし、水蒸気処理工程と、柔細胞除去工程とを経ることにより、竹材から竹繊維を取り出し、その竹繊維を細分化工程において細分化し、成形工程において加熱しながら加圧することにより可塑化して成形する。
【選択図】図1
Description
(1)竹繊維成形体の製造方法であって、竹材を水蒸気に接触させる水蒸気処理工程と、前記水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る柔細胞除去工程と、前記竹繊維を細分化する細分化工程と、前記細分化工程で細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し成形体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
(2)上記(1)に記載の竹繊維成形体の製造方法であって、前記柔細胞除去工程と前記細分化工程との間に、前記竹繊維を解繊する解繊工程を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
本発明に係る竹繊維成形体の製造方法は、図1のフローチャートに示すように、「水蒸気処理工程」、「柔細胞除去工程」、「乾燥工程」、「解繊工程」、「細分化工程」および「成形工程」の6つの工程を備えている。以下に、各工程についてそれぞれ順に説明する。
まず、原料となる竹材を水蒸気に接触させる。この「竹材を水蒸気に接触させる処理」のことを、本明細書では「水蒸気処理」と呼ぶ。竹材を水蒸気処理することにより、竹材に含まれるヘミセルロース、リグニン等が分解する。その分解後の成分が寄与することにより、成形工程において、竹繊維を加熱しながら加圧することにより可塑化および流動化させることができる。また、水蒸気処理することにより竹材を構成する維管束鞘と柔細胞の結合がゆるみ、柔細胞除去工程において、維管束鞘から柔細胞を容易に除去することができるようになる。
例えば、筒状の竹材を180℃以上200℃以下の水蒸気に接触させる場合、竹材に対して水蒸気を5分間から20分間程度接触させることによって、その竹材を加熱しながら加圧したときに可塑性及び流動性が発現するようになる。
柔細胞除去工程では、水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る。
竹材において、柔細胞は維管束鞘を取り巻くように配置している。水蒸気に接触させた竹材は、容易に維管束鞘から柔細胞を除去することができ、竹繊維を取り出すことができる。具体的には、水蒸気に接触させた竹材を手で揉みほぐしたり、ローラーで押し当ててほぐすなどすれば、柔細胞をほぼ取り除くことができる。この柔細胞除去工程で得られる竹繊維は、直径10μm前後のモノフィラメント(単繊維)の集合体で、直径が約300μmから500μm程度であり、長さはほぼ水蒸気処理時の竹材の長さである。このように竹材から柔細胞を除去することにより、成形体の曲げ強さを向上させることができる。
柔細胞除去工程の後に、柔細胞除去工程で得られた竹繊維を解繊する工程(解繊工程)を実施するのが好ましい。竹繊維はモノフィラメントの集合体であり、解繊工程では、竹繊維を構成するモノフィラメントの束を解す。このとき、ディスク式リファイナ、ドラム式リファイナ、ファイバライザ等の解繊機を用い、竹繊維の直径が少なくとも300μm以下となるまで機械的に解繊するのが好ましい。このように竹繊維を機械的に解繊することにより、竹繊維が解れるとともに、竹繊維同士が絡まり、竹繊維が成形体中において補強材として機能する。
細分化工程では、柔細胞除去工程で得られた竹繊維を細分化する。この細分化工程では、粉砕機やカッター等を用いて竹繊維を直径0.001mm以上0.5mm以下、長さ5mm以上50mm以下の繊維状になるように破砕及び/または切断するのが好ましい。このように細分化することにより成形工程における成形性が向上し、より複雑な形状に成形することが可能となる。特に、細分化された竹繊維が直径0.005mm以上0.1mm以下、長さ10mm以上の繊維状であると、耐衝撃性を飛躍的に向上させることができる。より好ましくは、直径0.005mm以上0.05mm以下、長さ15mm以上の繊維状である。一方、このような範囲より更に小さくなるまで細分化すると、得られる成形体の強度がかえって低くなる傾向があり、好ましくない。
成形工程の前に竹繊維を乾燥させる工程(乾燥工程)を実施するのが好ましい。竹繊維中に水分が多量に存在すると、成形工程において竹繊維を加熱しながら加圧して可塑化および流動化させる際に、竹繊維の内部から水分が気化して成形性あるいは流動性が損なわれる恐れがあるからである。乾燥工程は、竹繊維の含水率(=(竹繊維に含まれている水分の重量/竹繊維の絶乾状態の重量)×100(%)で表される数値)が28%以下となるように実施することが好ましい。より好ましくは、15%以下である。乾燥の手段は特に制限するものではないが、竹繊維に対して温風を吹き付ける等により積極的な乾燥を行うのが好ましい。竹繊維は成形工程に投入する前に乾燥していればよく、乾燥工程は、成形工程の直前に行ってよいし、細分化工程、解繊工程あるいは柔細胞除去工程の前に行ってもよい。
成形工程では、細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し、竹繊維成形体を得る。水蒸気処理された竹繊維は、加熱しながら加圧することにより、可塑化および流動化させることができるのであるが、竹繊維が細分化されていることにより、より容易に可塑化および流動化させることができる。加熱しながら加圧するための手段としては、例えば、一般的に使用されている合成樹脂を成形するための成形機などを使用することができる。具体的には、圧縮成形機、押出成形機、射出成形機、トランスファー成形機などを使用することができる。これらの成形機を使用することによって、竹繊維を加熱しながら加圧するのと同時に、可塑化した竹繊維を所定の形状に成形することが可能である。
No.9の「竹全体(粉砕)」からなる成形体と、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体の曲げ強さを比較すると、「繊維(粉砕)」からなる成形体の方が高いことがわかった。また、アイゾット衝撃値を比較しても、「繊維(粉砕)」からなる成形体の方が高いことがわかった。これにより、竹材から柔細胞を除いて竹繊維を取り出し、その竹繊維により成形体を形成することにより、曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を向上させることができることが明らかとなった。
No.5、No.6、No.7およびNo.8の「繊維(カット)」からなる成形体と、No.1、No.3およびNo.4の「繊維(粉砕)」からなる成形体の曲げ強さを比較するとほぼ同等であるが、アイゾット衝撃値を比較すると、「繊維(カット)」からなる成形体の方が著しく高いことがわかった。これにより、竹繊維は繊維形状を保ちながら切断して細分化することにより、成形体の耐衝撃性を飛躍的に向上させることができることが明らかとなった。
ここでアイゾット衝撃値に着目すると、「繊維(粉砕)」からなる成形体は相対的に高く、「柔細胞」からなる成形体は相対的に低いことがわかる。また、「竹全体(粉砕)」からなる成形体のアイゾット衝撃値をみると、「柔細胞」からなる成形体と同等に低い。このことから、繊維部分と柔細胞が混在している場合は、柔細胞からなる成形体と同様にアイゾット衝撃値が低くなることがわかった。したがって、竹材から柔細胞を除いて竹繊維を取り出す際には、できるだけ柔細胞が残らないように取り除くのが好ましい。
これにより、竹材を原料とする場合、柔細胞を除いて得た竹繊維を成形することにより成形体の曲げ強さおよび耐衝撃性を著しく向上させることができることが分かった。これは、「竹(粉末)」には柔らかい柔細胞と剛直な維管束鞘とが混在しているのに対して、竹繊維はほぼ剛直な維管束鞘のみからなり、しかも繊維形状を保ったまま細分化されているため、成形体中で補強材の役割を果たすためであると考えられる。
これにより、竹材を原料とする場合、柔細胞を除いて得た竹繊維を解繊してから成形することにより成形体の曲げ強さおよびアイゾット衝撃値を飛躍的に向上させることができることが明らかとなった。これは、竹繊維を解繊する過程において解れた竹繊維が絡まり、成形体中でより強力に補強材として機能するためであると考えられる。
得られた成形材料により、図2に示す金型10を用いて、カップ形状(上径5cm、下径3cm、高さ4cm、厚さ2mm)の成形体の作成を試みた。金型10の上方に備えられたシリンダ部12に成形材料を充填し、プランジャー16の押圧により、180℃の温度条件のもと、60MPaで10分間加圧した。
その結果、成形材料は可塑化および流動化し、金型10の下方に備えられたキャビティ14に充填され、カップ形状の成形体を得ることができた。得られた成形体の外観は、表面が黒くプラスチックのようであり、2mmという薄さにも関わらず、高強度であった。このように、竹繊維を細分化することにより、加熱しながら加圧することにより容易に可塑化及び流動化させることができ、キャビティ14が狭く複雑な形状であっても、隅々まで充填することが可能となる。その結果、カップ形状のような3次元形状の成形体を作成することができる。
12 シリンダ部(成形材料)
14 キャビティ(成形体)
16 プランジャー
Claims (2)
- 竹繊維成形体の製造方法であって、
竹材を水蒸気に接触させる水蒸気処理工程と、
前記水蒸気処理工程で水蒸気に接触させた竹材から柔細胞を除去して竹繊維を得る柔細胞除去工程と、
前記竹繊維を細分化する細分化工程と、
前記細分化工程で細分化した竹繊維を加熱しながら加圧して成形し成形体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。 - 請求項1に記載の竹繊維成形体の製造方法であって、
前記柔細胞除去工程と前記細分化工程との間に、前記竹繊維を解繊する解繊工程を含むことを特徴とする、竹繊維成形体の製造方法。
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