ところで、転造平ダイス101の食付き部121は、食付き部121と仕上げ部122との連接部から図11(a)中の矢印X方向へ向けて下降傾斜して構成されている。そのため、図11(a)のXIc−XIc線で断面視した食付き部121は、図11(c)に示すように、転造平ダイス101の一端側側面(図11(c)右側側面)から他端側側面(図11(c)左側側面)へ向けて下降傾斜する。
転造歯形面102に加工歯103を研削加工する際には、転造平ダイス101,105を研削盤に据付固定した状態で、食付き部121、仕上げ部122及び逃げ部123を連続して加工することで、食付き部121と仕上げ部122と逃げ部123との間で加工歯103の研削位置に位置ずれが生じることを防止している。
なお、転造平ダイス101,105は、仕上げ部122の転造面を基準として研削盤に据付固定されるので、砥石300が食付き部121の加工歯103を研削加工する際には、図12(a)及び図12(b)に示すように、砥石300が食付き部121の転造面に対して傾斜する。その結果、研削に使用される砥石300の各使用面301,302と食付き部121との接触面積に差異が生じ、図12(c)に示すように、各加工歯103の一方のフランク面の面積と他方のフランク面の面積に差異が生じる。
このように、一方のフランク面の面積と他方のフランク面の面積とが異なる加工歯103で被転造素材200を転造した場合には、アヤメローレットを構成する略四角錐状の凸部を対称に転造することができず、アヤメローレットの寸法精度が低下するという問題点があった。
また、アヤメローレットの転造は、被転造素材200を軸支した状態で、転造平ダイス101,105を相対移動させることで行われる。ここで、食付き部121は、上述したように、その転造方向と直交する方向において傾斜を有して構成されている(図11(c)参照)。これにより、図13に示すように、一方の転造平ダイス101の食付き部121と他方の転造平ダイス105の食付き部161との間に被転造素材200を挟持した場合には、転造方向と直交する方向(図13上下方向)において被転造素材200に対する圧下量に差異が生じる。
即ち、図13に示すように、一方の転造平ダイス101では、転造方向と直交する方向の一端側(図13上側)の圧下量が大きくなり、他方の転造平ダイス105では、転造方向と直交する方向の他端側(図13下側)の圧下量が大きくなる。これにより、被転造素材200は、その一端側(図13上側)に他方の転造平ダイス105側(図13左側)への力がかかると共に、その他端側(図13下側)に一方の転造平ダイス101側(図13右側)への力がかかり、被転造素材200が傾いてしまう。その結果、被転造素材200を適切な姿勢で転造することができず、アヤメローレットの位置精度が低下するという問題点があった。
また、被転造素材200が傾いた状態で転造することにより、アヤメローレットがひずんでしまい、アヤメローレットの寸法精度が低下するという問題点があった。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、被転造素材にアヤメローレットを精度良く転造できる転造平ダイス、転造平ダイスの製造方法及び転造方法を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の転造平ダイスは、右ねじれの溝と左ねじれの溝とが互いに交差するアヤメローレットを被転造素材に転造するものであり、前記右ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第1転造歯形面を有する第1転造平ダイスと、前記左ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第2転造歯形面を有する第2転造平ダイスとを備え、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスを相対移動させることにより、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの間に挟持される前記被転造素材を塑性変形させてアヤメローレットを転造するものであり、前記第1転造歯形面及び前記第2転造歯形面は、前記被転造素材に食い付く食付き部と、その食付き部の転造方向終端側に連接される仕上げ部とを備え、前記食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に前記食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されている。
請求項2記載の転造平ダイスの製造方法は、右ねじれの溝と左ねじれの溝とが互いに交差するアヤメローレットを被転造素材に転造する転造平ダイスの製造方法であって、前記右ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第1転造歯形面を有する第1転造平ダイスと、前記左ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第2転造歯形面を有する第2転造平ダイスとを備え、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスを相対移動させることにより、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの間に挟持される前記被転造素材を塑性変形させてアヤメローレットを転造する転造平ダイスを製造するものであり、前記第1転造歯形面及び前記第2転造歯形面は、前記被転造素材に食い付く食付き部と、その食付き部の転造方向終端側に連接される仕上げ部とを備えると共に、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスは、その食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に前記食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されるものであり、前記加工歯を研削加工する砥石は2軸方向に移動するものであり、前記加工歯を研削加工する砥石は2軸方向に移動するものであり、前記砥石によって形成される前記食付き部の歯先面及び歯底面と、前記2軸方向に移動した際の前記砥石の軌跡がなす平面とが略平行となるように前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスを保持する保持工程と、その保持工程により保持された前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの食付き部の被加工面に対して前記砥石を平行移動させて、前記食付き部の加工歯を研削加工する研削工程とを備えている。
請求項3記載の転造方法は、右ねじれの溝と左ねじれの溝とが互いに交差するアヤメローレットを被転造素材に転造する転造方法であって、前記右ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第1転造歯形面を有する第1転造平ダイスと、前記左ねじれの溝を加工するための加工歯が設けられる第2転造歯形面を有する第2転造平ダイスとを相対移動させることにより、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの間に挟持される前記被転造素材を塑性変形させてアヤメローレットを転造するものであり、前記第1転造歯形面及び前記第2転造歯形面は、前記被転造素材に食い付く食付き部と、その食付き部の転造方向終端側に連接される仕上げ部とを備えると共に、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスは、その食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に前記食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における前記仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されるものであり、前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスを相対移動させて、前記被転造素材を前記食付き部から前記仕上げ部まで転動させる往路工程と、その往路工程と逆方向に前記第1転造平ダイス及び前記第2転造平ダイスを相対移動させて、前記往路工程により転動された前記被転造素材を前記仕上げ部から前記食付き部まで転動させる復路工程とを備えている。
請求項1記載の転造平ダイスによれば、食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されている。
これにより、第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に被転造素材が挟持された場合に、転造方向と直交する方向における第1転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができると共に、転造方向と直交する方向における第2転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができる。その結果、被転造素材を第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に挟持した場合に、被転造素材が傾くことを防止して、アヤメローレットの位置精度を向上させることができるという効果がある。
また、被転造素材が傾くことを防止することができるので、被転造素材が傾いた状態で転造することによりアヤメローレットがひずむことを防止して、アヤメローレットの寸法精度を向上させることができるという効果がある。
請求項2記載の転造平ダイスの製造方法によれば、保持工程において、2軸方向に移動する砥石の軌跡がなす平面と砥石によって形成される食付き部の歯先面及び歯底面とが略平行となるように第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスを保持し、研削工程において保持工程により保持された第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの砥石によって形成される食付き部の歯先面及び歯底面に対して砥石を平行移動させて、食付き部の加工歯を研削加工する。
ここで、保持工程により2軸方向に移動する砥石の移動がなす平面と砥石によって形成される食付き部の歯先面及び歯底面とが略平行となるように第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスが保持されるので、砥石によって形成される食付き部の歯先面及び歯底面に対して砥石を略直角(即ち、砥石の回転軸を食付き部の歯先面及び歯底面に対して略平行)に保持し、砥石の移動方向と直交する方向における一端側使用面と食付き部との接触面積、及び砥石の移動方向と直交する方向における他端側使用面と食付き部との接触面積を同一にすることができる。その結果、アヤメローレットを構成する略四角錐状の凸部を対称に転造して、アヤメローレットの寸法精度を向上させることができる転造平ダイスを製造することができるという効果がある。
また、研削工程において第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの砥石によって形成される食付き部の歯先面及び歯底面に対して砥石を平行移動させることにより加工歯が研削加工されているので、加工歯を研削加工するために砥石を上下動させることが不要となる。その結果、加工歯を研削加工するための砥石の動きを単純化することができ、その分、研削能率の向上及び加工コストの低減を図りつつ転造平ダイスを製造することができるという効果がある。
また、転造平ダイスは、食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されている。
これにより、第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に被転造素材が挟持された場合に、転造方向と直交する方向における第1転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができると共に、転造方向と直交する方向における第2転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができる。その結果、被転造素材を第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に挟持した場合に、被転造素材が傾くことを防止して、アヤメローレットの位置精度を向上させることができる転造平ダイスを製造することができるという効果がある。
また、被転造素材が傾くことを防止することができるので、被転造素材が傾いた状態で転造することによりアヤメローレットのひずむことを防止して、アヤメローレットの寸法精度を向上させることができる転造平ダイスを製造することができるという効果がある。
請求項3記載の転造方法によれば、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスを相対移動させて、被転造素材を食付き部から仕上げ部まで転動させる往路工程と、その往路工程と逆方向に第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスを相対移動させて、往路工程により転動された被転造素材を仕上げ部から食付き部まで転動させる復路工程とを備えている。
ここで、従来のアヤメローレットの転造方法では、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスを一方向のみに相対移動させるものであり、被転造素材を食付き部から仕上げ部まで転動させて、アヤメローレットが転造される。かかる被転造素材は、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスが交互に当接してアヤメローレットが転造されるものであるが、被転造素材が一方向のみに回転するため、余肉を盛り上げる盛り上げ方向が一方向に限られてしまう。即ち、盛り上げられる余肉が一方向に偏るため、転造されるアヤメローレットが非対称となり、その分、アヤメローレットの寸法精度が低下する。
これに対し、本発明によれば、復路工程により、被転造素材を往路工程における回転方向と逆方向に回転させることができるので、往路工程において余肉を盛り上げる盛り上げ方向と逆方向に余肉を盛り上げることができる。その結果、アヤメローレットを対称に転造して、アヤメローレットの寸法精度の向上を図りつつアヤメローレットを転造することができるという効果がある。
更に、復路工程により被転造素材が仕上げ部から食付き部まで転動するので、被転造素材を食付き部から排出することができる。即ち、復路工程において食付き部が逃げ部の役割を担うので、被転造素材を排出するための逃げ部を別途配設することが不要となり、その分、転造ダイスの製造コストを低減しつつアヤメローレットを転造することができるという効果がある。
また、転造平ダイスは、食付き部の各加工歯の歯丈が同一寸法に設定されると共に食付き部の歯先面及び歯底面が転造方向終端側から始端側へ向けて下降傾斜し、かつ、第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における食付き部の歯先面及び歯底面の傾きが第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向と直交する方向における仕上げ部の歯先面及び歯底面の傾きと同一に設定されている。
これにより、第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に被転造素材が挟持された場合に、転造方向と直交する方向における第1転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができると共に、転造方向と直交する方向における第2転造平ダイスの被転造素材に対する圧下量を均一にすることができる。その結果、被転造素材を第1転造平ダイスの食付き部と第2転造平ダイスの食付き部との間に挟持した場合に、被転造素材が傾くことを防止して、アヤメローレットの位置精度の向上を図りつつアヤメローレットを転造することができるという効果がある。
また、被転造素材が傾くことを防止することができるので、被転造素材が傾いた状態で転造することによりアヤメローレットのひずむことを防止して、アヤメローレットの寸法精度の向上を図りつつアヤメローレットを転造することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して転造平ダイス1の全体構成について説明する。図1は、転造平ダイス1を構成する第1転造平ダイス2を説明する図であり、図1(a)は、第1転造平ダイス2の上面図であり、図1(b)は、第1転造平ダイス2の側面図であり、図1(c)は、図1(a)のIc−Ic線における第1転造平ダイス2の断面図であり、図1(d)は、図1(a)のId−Id線における第1転造平ダイス2の断面図である。
図2は、転造平ダイス1を構成する第2転造平ダイス5を説明する図であり、図2(a)は、第2転造平ダイス5の上面図であり、図2(b)は、第2転造平ダイス5の側面図であり、図2(c)は、図2(a)のIIc−IIc線における第2転造平ダイス5の断面図であり、図2(d)は、図2(a)のIId−IId線における第2転造平ダイス5の断面図である。
転造平ダイス1は、被転造素材200(図3参照)の外周面を塑性変形させて、アヤメローレット201(図7参照)を転造するための工具であり、図1及び図2に示すように、略直方体状の第1転造平ダイス2と、その第1転造平ダイス2に対向配置される第2転造平ダイス5とを備えて構成されている。なお、アヤメローレット201の転造は、第1及び第2転造平ダイス2,5を相対移動させることにより、第1及び第2転造平ダイス2,5の間に挟持された被転造素材200の外周面を塑性変形させて行われる。
第1転造平ダイス2は、図1に示すように、略直方体状に形成された平ダイスであり、その上面側(図1(a)紙面手前側、図1(b)、図1(c)及び図1(d)上側)には、被転造素材200に右ねじれの溝202(図7参照)を加工するための第1転造歯形面3が設けられている。
第1転造歯形面3には、図1(a)及び図1(b)に示すように、第1転造平ダイス2の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて、食付き部31、仕上げ部32及び逃げ部33が順に連続して設けられている。
なお、これら食付き部31、仕上げ部32及び逃げ部33で構成された第1転造歯形面3には、複数の第1加工歯4が刻設されている。これら複数の第1加工歯4は、被転造素材200に右ねじれの溝202を形成するための加工歯であり、被転造素材200の外周寸法に対応した一定のピッチで転造方向(図1(a)左右方向)へ列設されている。また、これら複数の第1加工歯4は、図1(a)に示すように、所定のリード角αで食付き部31の転造方向始端側(図1(a)右側)から逃げ部33の終端側(図1(a)左側)へ向けて傾斜して刻設されている。
食付き部31は、第1転造歯形面3を被転造素材200の外周面に食い付かせるための部位であり、いわゆる食付き部として用いられる。この食付き部31は、その各第1加工歯4の歯丈が同一寸法に設定されている。
なお、食付き部31は、図1(a)に示すように、仕上げ部32との連接部(食付き部31の転造方向終端部)が第1転造平ダイス2の転造方向(図1(a)左右方向)と直交するように形成されており、図1(b)に示すように、仕上げ部32との連接部から傾斜角κ1で下降傾斜して形成されている。即ち、食付き部31の各加工歯3の頂同士を結ぶ歯先面31a及び食付き部31の各加工歯3の谷同士を結ぶ歯底面31bは、仕上げ部32との連接部から傾斜角κ1で下降傾斜して形成されている。
また、食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bは、図1(c)に示すように、転造方向と直交する方向(図1(c)左右方向)における傾斜が、後述する仕上げ部32の歯先面32a及び歯底面32b(図1(d)参照)の転造方向と直交する方向(図1(d)左右方向)における傾斜と同一に設定されている。
仕上げ部32は、食付き部31によって被転造素材200に転造された右ねじれの溝202を仕上げるための部位であり、図1(b)及び図1(d)に示すように、その歯先面32a及び歯底面32bが第1転造平ダイス2の支持面(図1(b)及び図1(d)下側面)に対して略平行に形成されている。
逃げ部33は、仕上げ部32より仕上げられた被転造素材200を転造歯形面3から排出するための部位であり、いわゆる逃げ部として用いられている。この逃げ部33は、図1(b)に示すように、仕上げ部32の終端から第1転造平ダイス2の転造方向終端(図1(b)左側)へ向けて傾斜角κ2で下降傾斜して形成されている。
第2転造平ダイス5は、図2に示すように、略直方体状に形成された平ダイスであり、その上面側(図2(a)紙面手前側、図1(b)、図1(c)及び図1(d)上側)には、被転造素材200に左ねじれの溝203(図6参照)を加工するための転造歯形面6が設けられている。なお、第2転造平ダイス5は、転造歯形面3に刻設された複数の第2加工歯7の傾斜方向以外の形状が第1転造平ダイス2(図1参照)と同一形状に形成されているので、その説明を省略する。
複数の第2加工歯7は、被転造素材200に左ねじれの溝203を形成するための加工歯であり、図2(a)に示すように、上述した第1加工歯4と同一のピッチで転造方向(図2(a)左右方向)へ列設されている。また、これら複数の第2加工歯7は、図2(a)に示すように、第1加工歯4と同一のリード角αで食付き部61の転造方向始端側(図2(a)左側)から逃げ部63の終端側(図2(a)右側)へ向けて傾斜して刻設されている。ただし、第2加工歯7の傾斜方向は、上面視において第1加工歯4の傾斜方向と逆方向に設定されている。
次いで、図3及び図4を参照して、食付き部31の第1加工歯4の研削加工について説明する。図3は、食付き部31の第1加工歯4の研削工程を模式的に示す側面図である。図4(a)から図4(c)は、食付き部31の第1加工歯4の研削工程をリード角αと直交する方向視において模式的に示す部分拡大図である。なお、図3では、理解を容易とするために、砥石300を実際よりも小さく図示している。また、図4では、理解を容易とするために、食付き部31及び砥石300の一部のみを図示している。
第1転造平ダイス2は、図3に示すように、研削盤(図示せず)の支持面に対し傾斜角κ1で傾斜された状態で保持されている(保持工程)。即ち、第1転造平ダイス2は、食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bが研削盤の支持面に対して略平行となるように保持されている。また、砥石300の移動方向(X軸、Y軸)は、研削盤の支持面に対して平行であり、更に、研削盤の支持面に垂直な方向(Z軸)にも移動可能である。
ここで、第1加工歯4の研削工程は、回転する略円盤状の砥石300を第1加工歯4のリード角αに沿って移動させて一の第1加工歯4を研削加工し、次に砥石300を第1加工歯4のリード角αと直交する方向に移動させて一の第1加工歯4に連接される他の第1加工歯4を研削加工することで行われる(研削工程)。
即ち、砥石300は2軸(X軸、Y軸)方向に移動して第1加工歯4の研削加工を行うものである。ここで、上述したように、第1転造平ダイス2は、保持工程により傾斜角κ1で傾斜させた状態で研削盤に保持されている。その結果、砥石300によって形成される食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bと、2軸方向に移動した際の砥石300の軌跡がなす平面とが略平行となる。
これにより、研削工程では、図4(a)及び図4(b)に示すように、砥石300によって形成される食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bに対して砥石300を略直角(即ち、砥石300の回転軸300aを食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bに対して略平行)に保持して、砥石300の移動方向と直交する方向(図4(a)及び図4(b)左右方向)における一端側使用面301と食付き部31との接触面積、及び砥石300の移動方向と直交する方向における他端側使用面302と食付き部31との接触面積を同一にすることができる。
その結果、図4(c)に示すように、各第1加工歯4のフランク面の面積を同一に形成することができるので、アヤメローレット201を構成する略四角錐状の凸部204(図7参照)を対称に転造して、アヤメローレット201の寸法精度を向上させることができる。
また、食付き部31の第1加工歯4は、砥石300によって形成される食付き部31の歯先面31a及び歯底面31bに対して砥石300を平行移動(X軸及びY軸の2軸)させて研削加工するのみでよく、第1加工歯4を研削加工するために砥石300を上下方向(図4上下方向、Z軸)に移動させることが不要となる。その結果、第1加工歯4を研削加工するための砥石300の動きを単純化することができ、その分、第1加工歯4の研削能率の向上及び加工コストの低減を図ることができる。
なお、第2転造平ダイス5の食付き部61の第2加工歯7(図2参照)は、第1転造平ダイス2の食付き部31の第1加工歯4と同様に、保持工程により保持された状態で研削加工が施されるものであり、その説明は省略する。
次いで、図5を参照して、被転造素材200の転造状態について説明する。図5は、転造平ダイス1の転造方向一端側視における転造平ダイス1の断面図であり、第1転造平ダイス2の食付き部31と第2転造平ダイス5の食付き部61とが被転造素材200を挟持した状態を示している。なお、図5では、被転造素材200の長手方向長さ(図5上下方向長さ)の図示を省略している。
第1及び第2転造平ダイス2,5の食付き部31,61は、上述したように、第1及び第2転造平ダイス2,5の移動方向と直交する方向における歯先面31a,61a及び歯底面31b,61bの傾きが第1及び第2転造平ダイス2,5の移動方向と直交する方向における仕上げ部32,62の歯先面32a,62a及び歯底面32b,62bの傾きと同一に設定されている(図1及び図2参照)。
即ち、図5に示すように、第1及び第2転造平ダイス2,5の食付き部31,61は、研削盤(図示せず)に軸支される被転造素材200の軸心に対して略平行となり、転造方向と直交する方向(図5上下方向)における第1転造平ダイス2の被転造素材200に対する圧下量を均一にすることができると共に、転造方向と直交する方向における第2転造平ダイス5の被転造素材200に対する圧下量を均一にすることができる。
その結果、被転造素材200を第1転造平ダイス2の食付き部31と第2転造平ダイス5の食付き部61との間に挟持した場合に、被転造素材200が第1転造平ダイス2側(図5右側)又は第2転造平ダイス5側(図5左側)に傾くことを防止して、アヤメローレット201(図7参照)を適切な位置に転造することができる。
また、被転造素材200が第1転造平ダイス2側又は第2転造平ダイス5側へ傾くことを防止することができるので、被転造素材200が傾いた状態で転造することによりアヤメローレット201がひずむことを防止して、アヤメローレット201の寸法精度を向上させることができる。
次いで、図6を参照して、被転造素材200の転造工程について説明する。図6は、被転造素材200の転造工程を模式的に示す側面図である。図6の説明においては、図7から図10を適宜参照して説明する。図7(a)及び図7(b)は、往路工程で形成されたアヤメローレット201を部分的に示す正面図であり、図7(c)は、復路工程で形成されたアヤメローレット201を部分的に示す正面図である。図8(a)は、往路工程で形成されたアヤメローレット201を示す正面図であり、図8(b)は復路工程で形成されたアヤメローレット201を示す正面図である。図9は、往路工程で形成されたアヤメローレット201の写真を示す正面図であり、図10は、復路工程で形成されたアヤメローレット201の写真を示す正面図である。
なお、図7から図10では、理解を容易とするためにアヤメローレット201の一部のみを図示している。また、図8(a)は、アヤメローレット201の認識を容易とするために図9に示すアヤメローレット201の写真について図示したものである。同様に、図8(b)は、アヤメローレット201の認識を容易とするために図10に示すアヤメローレット201の写真について図示したものである。
被転造素材200の転造工程では、図6(a)に示すように、第1転造平ダイス2の食付き部31及び第2転造平ダイス5の食付き部61の間に被転造素材200を挟持した状態で、第1転造平ダイス2を図6(a)中の矢印A1方向に移動させると共に第2転造平ダイス5を図6(a)中の矢印B1方向に移動させる。これにより、各食付き部31,61の加工歯4,7(図1及び図2参照)が被転造素材200の外周面に食い付き、被転造素材200を図6(a)中の矢印C1方向に転動させる。
次に、図6(b)に示すように、第1転造平ダイス2を図6(b)中の矢印A1方向に更に移動させると共に第2転造平ダイス5を図6(b)中の矢印B1方向に更に移動させることにより、被転造素材200を図6(b)中の矢印C1方向に転動させる。なお、第1転造平ダイス2及び第2転造平ダイス5は、被転造素材200が少なくとも各仕上げ部32,62上を一回転する位置までそれぞれ移動する(往路工程)。
かかる往路工程では、アヤメローレット201は、第1転造平ダイス2と第2転造平ダイス5とが被転造素材200を交互に転造することで形成されるものであるが、被転造素材200が一方向(図6(a)及び図6(b)中の矢印C1方向)のみに回転するため、余肉を盛り上げる盛り上げ方向が一方向に限られる。
その結果、第1転造平ダイス2に転造されたアヤメローレット201は、図7(a)に示すように、右ねじれの溝202が左ねじれの溝203よりも深く形成されると共に、右ねじれの溝202の延在方向における凸部204の各側面が膨出する。
一方、第2転造平ダイス5に転造されたアヤメローレット201は、図7(b)に示すように、左ねじれの溝203が右ねじれの溝202よりも深く形成されると共に、左ねじれの溝203の延在方向における凸部204の各側面が膨出する。
即ち、往路工程において形成されたアヤメローレット201を部分的に見た場合では、図8(a)及び図9に示すように、右ねじれ又は左ねじれの溝202,203のどちらか一方の溝(図8(a)では左ねじれの溝203)が他方の溝よりも深く形成されると共に、凸部204の一方の溝203の延在方向における長さ寸法が他方の溝202の延在方向における長さ寸法よりも大きくなる。
次に、図6(c)に示すように、第1転造平ダイス2を図6(c)中の矢印A2方向に移動させると共に第2転造平ダイス5を図6(c)中の矢印B2方向に移動させることにより、各仕上げ部32,62に挟持される被転造素材200を図6(c)中の矢印C2方向に転動させる。即ち、第1転造平ダイス2及び第2転造平ダイス5を往路工程における移動方向と逆方向に相対移動させることにより、被転造素材200を往路工程と逆方向(図6(c)右方向)に転動させる。
また、図6(d)に示すように、第1転造平ダイス2を図6(d)中の矢印A2方向に更に移動させると共に第2転造平ダイス5を図6(d)中の矢印B2方向に更に移動させることにより、被転造素材200を図6(d)中の矢印C2方向に転動させる(復路工程)。
このように、復路工程により、被転造素材200を往路工程における回転方向(図6(a)及び図6(b)中の矢印C1方向)と逆方向(図6(c)及び図6(d)中の矢印C2方向)に回転させることができるので、往路工程において余肉を盛り上げる盛り上げ方向と逆方向に余肉を盛り上げることができる。
その結果、復路工程において、第1転造平ダイス2及び第2転造平ダイス5に転造されたアヤメローレット201は、図7(c)に示すように、右ねじれの溝202の深さ寸法と左ねじれの溝203の深さ寸法とが同一寸法に形成されると共に、凸部204の各側面が略平面に形成される。
即ち、復路工程において形成されたアヤメローレット201を部分的に見た場合では、図8(b)及び図10に示すように、凸部204の右ねじれの溝202の延在方向における長さ寸法と凸部204の左ねじれの溝203の延在方向における長さ寸法とを同一寸法に設定することができる、即ち、アヤメローレット201を対称に転造することができる。その結果、アヤメローレット201の寸法精度の向上を図ることができる。
次に、復路工程において矢印C2方向に転動する被転造素材200は、図6(e)に示すように、食付き部31,61の転造方向始端側まで転動されて排出される。以上のようにして、アヤメローレット201の転造が終了する。
なお、請求項1から請求項3に記載の「第1転造平ダイス及び第2転造平ダイスの移動方向」としては、食付き部31,61から仕上げ部32,62に向かう方向が該当する。
また、請求項1から請求項3に記載の「移動方向と直交する方向」としては、食付き部31,61と仕上げ部32,62との連接部に対して略平行な方向が該当する。
また、請求項2記載の「砥石の2軸方向に移動した際の軌跡がなす平面」としては、リード角αに沿う方向とリード角αに直交する方向との2軸方向で砥石300が移動した際に、その砥石300の移動軌跡がなす平面が該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、本実施の形態では、第1及び第2転造平ダイス2,5は、転造方向始端側から終端側へ向けて食付き部31,61、仕上げ部32,62及び逃げ部33,63が順に連続して設けられているが、必ずしもこれに限られるものではなく、食付き部31,61及び仕上げ部32,62のみで構成してもよい。
即ち、本実施の形態では、被転造素材200は、往路工程において食付き部31,61から仕上げ部32,62まで転動された後に、復路工程において仕上げ部32,62から食付き部31,61まで転動されるものである。そのため、復路工程において食付き部31,61は、被転造素材200を排出するためのいわゆる逃げ部の役割を担うので、被転造素材200を排出するための逃げ部33,63を配設することが不要となり、その分、転造平ダイス2,5の製造コストを低減することができる。