JP2007278803A - 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法 - Google Patents

肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007278803A
JP2007278803A JP2006104554A JP2006104554A JP2007278803A JP 2007278803 A JP2007278803 A JP 2007278803A JP 2006104554 A JP2006104554 A JP 2006104554A JP 2006104554 A JP2006104554 A JP 2006104554A JP 2007278803 A JP2007278803 A JP 2007278803A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hepatocellular carcinoma
sugar chain
amount
marker
subject
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006104554A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4752032B2 (ja
Inventor
Masafumi Mizogami
雅史 溝上
Koichi Kato
晃一 加藤
Reiko Takahashi
禮子 高橋
Yoshiko Kobayashi
淑子 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagoya City University
Glyence Co Ltd
Original Assignee
Nagoya City University
Glyence Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagoya City University, Glyence Co Ltd filed Critical Nagoya City University
Priority to JP2006104554A priority Critical patent/JP4752032B2/ja
Publication of JP2007278803A publication Critical patent/JP2007278803A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4752032B2 publication Critical patent/JP4752032B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

【課題】肝細胞癌の検出に有用な肝細胞癌マーカー、及びそれを利用した肝細胞癌の検査法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の肝細胞癌マーカーは以下の構造のトリシアリル糖鎖からなる。本発明の検査法では当該糖鎖の量を指標として用いる。
Figure 2007278803

【選択図】図1

Description

本発明は肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法に関する。
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)は肝細胞から発生する悪性腫瘍であり、原発性肝癌の90%以上を占める。肝細胞癌のほとんどはウイルス性肝炎から発生する。本邦においてはC型肝炎ウイルスによる感染が原因で肝細胞癌に至る場合が圧倒的に多い(約80%)。一般に、肝硬変の病態を経て肝細胞癌に至ることが多く、C型肝炎ウイルス感染者の場合は通常、慢性肝炎、肝硬変を経て肝細胞癌へと病態が進行する。
現在、肝細胞癌の腫瘍マーカー(診断マーカー)としてAFP、PIVKA−II、AFPレクチン分画が臨床診断で利用されている。これらの3種類の腫瘍マーカーにはそれぞれ特徴がある。AFPは肝炎、肝硬変、肝細胞癌で上昇することから、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしての特異性に欠ける。PIVKA−IIはAFPとの相関性がなく、肝細胞癌に対する特異性の高い腫瘍マーカーといわれているが、肝硬変でも上昇することがある。AFPレクチンL3分画は、肝細胞癌と肝硬変とを鑑別することが唯一可能であるといわれるが、小肝細胞癌での陽性率は低いとされている。必要に応じてこれらの腫瘍マーカーを組み合わせて肝細胞癌の検出が試みられるが、現在の臨床検査では肝硬変から肝細胞癌への移行について、約20%強を検出できていない。
H.Nakagawa;Analytical Biochemistery226,130-138(1995)
本発明は肝細胞癌の検出に有用な新規腫瘍マーカー(肝細胞癌マーカー)を提供すること、及びそれを利用することで的中率の高い肝細胞癌の判定が可能となる検査法を提供することを課題とする。
本発明者らは血清中糖タンパク質の構成糖鎖群(非特許文献1)に注目し、その中から新規腫瘍マーカー(肝細胞癌マーカー)を見出すことを目的として鋭意検討した。具体的には、最終的に肝細胞癌と診断された患者について、肝細胞癌に至る前(即ち肝硬変のとき)と肝細胞癌に至った後にそれぞれ血清を採取し、血清中に存在する糖鎖のプロファイルを詳細に分析した。その結果、肝細胞癌の発症に伴って消失もしくは減少する糖鎖をトリシアリル糖鎖群の中に発見した。即ち、肝細胞癌の検出に有効な肝細胞癌マーカーを見出すことに成功し、当該肝細胞癌マーカーを指標とすれば的中率の高い肝細胞癌の検査法を確立できることが判明した。
本発明は主として上記知見ないし成果に基づくものであり、以下の検査法及びを提供する。
[1]以下の構造式で表されるトリシアリル糖鎖からなる肝細胞癌マーカー。
Figure 2007278803
[2]被験者より採取された検体中における、[1]に記載の肝細胞癌マーカーの量を指標として用いた、肝細胞癌の検査法。
[3]被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量と、該検体中に含まれ、肝細胞癌患者と健常者との間で量の差が小さい特定の糖鎖の量との比率を用いて検査結果を得ることを特徴とする、[2]に記載の肝細胞癌の検査法。
[4]前記特定の糖鎖が、前記検体中に含まれるトリシアリル糖鎖であることを特徴とする、[3]に記載の肝細胞癌の検査法。
[5]以下のステップ(1)及び(2)を含み、被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量の増減が調べられることを特徴とする、[2]に記載の肝細胞癌の検査法、
(1)被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量を測定するステップ、及び
(2)前記ステップで測定された前記肝細胞癌マーカーの量と、以前に同一の被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量とを比較し、前記肝細胞癌マーカーの量の増減を評価するステップ。
[6]以下のステップ(1)及び(2)を含み、被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量と、健常者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量との差又は比が評価されることを特徴とする、[2]に記載の肝細胞癌の検査法、
(1)被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量を測定するステップ、及び
(2)前記ステップで測定された前記肝細胞癌マーカーの量と、健常者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量とを比較し、両者の差又は比を評価するステップ。
[7]
検査結果が、肝硬変から肝細胞癌へ進行したか否かの判定、又は肝硬変から肝細胞癌へ進行する徴候があるか否かの判定に利用されることを特徴とする、[2]〜[6]のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法。
[8]前記ステップ(1)が以下のステップを含む、[5]〜[7]のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法、
(1-1)被験者より採取された検体から糖鎖を調製するステップ、
(1-2)調製した糖鎖を標識化するステップ、
(1-3)標識化糖鎖を陰イオン交換カラムに供し、トリシアリル糖鎖画分を分取するステップ、及び
(1-4)分取したトリシアリル糖鎖画分を、ODSシリカカラムを使用した高速液体クロマトグラフィーに供し、該高速液体クロマトグラフィーの溶出パターンを分析して前記肝細胞癌マーカーの量を算出するステップ。
[9]前記検体が血清である、[2]〜[8]のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法。
本発明の肝細胞癌マーカーはトリシアリル糖鎖であって、以下の構造式で表される。
Figure 2007278803
後述の実施例に示すように、肝細胞患者由来の検体では非常に高い確率で当該糖鎖が消失又は減少していた。従って、当該糖鎖を利用すれば高い的中率で肝細胞癌の検査を行うことが可能といえる。このように、当該糖鎖は肝細胞癌の検査において非常に有用であり、単独で又は他の腫瘍マーカー(例えばAFPやPIVKA-II)と組み合わされて、肝細胞癌の検査に利用され得る。
上記の糖鎖構造からわかるように、当該糖鎖は糖鎖根部にフコースを持たず且つシアル酸を3つ保持した構造を有し、現行の臨床検査で利用されているAFPレクチンL3分画に含まれる糖鎖とは明らかに異なる。また、AFPレクチンL3分画には糖鎖根部にフコースを持ったあらゆる糖鎖が含まれることから、AFPレクチンL3分画を利用した臨床検査では糖鎖群を指標とした検査が行われていることになる。これに対して本発明の糖鎖を利用すれば単独の糖鎖を指標とした検査を行うことができる。このように単独で肝細胞癌の検査に利用可能な糖鎖を見出したことは非常に大きな成果である。尚、AFPレクチンL3分画を用いた検査は、AFP分子上の糖鎖の癌性変化をレクチンとの親和性を利用して検出し、肝細胞癌由来AFPを分別測定する手法である。レクチン親和性の相違は糖鎖根部に結合するフコースの有無に関係していると考えられており、肝細胞癌ではフコース結合型AFPが増加するといわれている。
本発明の肝細胞癌マーカーである糖鎖はトランスフェリン由来と考えられる。トランスフェリンは679個のアミノ酸と糖鎖を2個結合したタンパク質である。後述の実施例に示すようにタンパク質の精製操作を経ることなく血清から糖鎖を切り出しているにもかかわらず、本発明の肝細胞癌マーカーの量の評価が可能であった。この知見より、本発明の肝細胞癌マーカーは簡便な操作による肝細胞癌検査法を実現できるという点において有益であるといえる。一方、後述の実施例に示すように少量の血清を用いて本発明の肝細胞癌マーカーの量の評価が可能であった。このことは通常の生化学検査や血清検査のために用意された血清の一部を用いて本発明の肝細胞癌マーカーを指標とした検査が可能であることを意味する。従って、本発明の肝細胞癌マーカーを用いた検査法はルーチン化が容易で且つ被験者の負担の少ないもととなる。
本発明の他の局面は、上記本発明の肝細胞癌マーカー(以下、「マーカー糖鎖」ともいう)を用いた肝細胞癌の検査法に関する。本発明の肝細胞癌の検査法では被験者より採取された検体中におけるマーカー糖鎖の量が指標として用いられる。
本発明では、肝細胞癌であるか否かの判定を必要とする者(被験者)に由来する検体が使用される。検体としては、被験者より採取された体液(血液、リンパ液、髄液等)が用いられる。好ましくは被験者より採取された血液を分離して得られる血清を検体とする。即ち本発明の好ましい一形態では被験者の血清中に存在するマーカー糖鎖の量が測定される。血清は調製が容易であるという利点を有する。ところで、他の多くの検査の検体として血清が利用されており、このような検査と同時に本発明の検査法が実施されることも想定される。このような場合、本発明の検査法の検体として血清を採用すれば本発明の実施のために改めて検体を調製する必要がなくなり、被験者及び検査する者の負担が軽減し、検査時間の短縮化も図られる。
被験者は特に限定されない。即ち、肝細胞癌であるか否かの判定が必要な者に対して広く本発明を適用することができる。また、例えば、肝炎又は肝硬変と診断された患者に対して本発明の検査法を適用すれば肝細胞癌への進行の徴候を早期に把握でき、適切な治療法の選択及びそれに伴う患者のQOL(Quality of Life、生活の質)向上が可能となる。一方、他の検査法によって肝細胞癌であると判定された者(又は肝細胞癌のおそれが高いと判定された者)に対して本発明の検査法を適用することもできる。このように、他の検査法による判定結果を検証することに本発明の検査法を利用してもよい。
(マーカー糖鎖量の測定手法)
試料中のマーカー糖鎖量の測定には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴(NMR)、質量分析などを利用することができる。但し、分離能、定量性、及び簡便性などの観点から、逆相クロマトグラフィーカラムを使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用してマーカー糖鎖量を測定することが好ましい。
糖鎖の分離能に優れた逆相クロマトグラフィーカラムとしてODSシリカカラムが頻用されており、本発明においてもこれを利用することができる。ここで、ODSシリカカラムとは、担体としてのシリカゲルにオクタデシルシリル(Octadecylsilyl)基を結合させたカラムであり、例えばShim-pack HRC-ODS(島津製作所社製)、Union UK-C18(インタクト社製)、Cadenza CD-C18(インタクト社製)等の名称で市販されている。
HPLC分析を利用したマーカー糖鎖量の測定手順の一例を以下に詳述する。
(1)糖鎖の調製
まず、被験者より採取された検体から糖鎖を調製する。具体的には被験者より採血した後、血清を分離し、次いで糖鎖を遊離させる。採血及び血清の分離は常法で行うことができる。糖鎖の遊離法としては酵素を利用した方法(酵素化学的手法)と、無水ヒドラジンを利用した方法(化学的手法)が知られている。これらの中のいずれを採用することにしてもよいが操作に熟練を必要としないことや試薬の取り扱いの面から、酵素を利用した方法の方が好ましい。酵素を利用した糖鎖の遊離法の詳細については、糖蛋白質糖鎖研究法 生物化学実験法(高橋禮子著、学会出版センター)等を参照することができる。酵素を利用した糖鎖の遊離法では、グリコペプチダーゼA(グリコアミダーゼ、N-グリカナーゼなどとも呼称される、EC 3.5.1.52)(N.Takahashi、Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 76,Issue 4,20 june 1977,1194-1201)が使用される。グリコペプチダーゼAは市販されており(例えば生化学工業社製のグリコペプチダーゼA;アーモンド)、容易に入手可能である。グリコペプチダーゼAの使用法は製品に添付された説明書又は上掲の文献などに従えばよい。但し、グリコペプチダーゼAを作用させる操作に先立って、試料に対してタンパク質分解酵素(好ましくはペプシン)を作用させることが好ましい。グリコペプチダーゼが作用し易くなり、糖鎖の遊離を効率的に行うことができるからである。尚、グリコペプチダーゼの作用を妨げない限りにおいて、タンパク質分解酵素をグリコペプチダーゼと同時に作用させてもよい。
糖鎖を遊離させた後、糖鎖を分離精製する。例えば、グリコペプチダーゼAを作用させた後の試料に対して蛋白分解酵素(プロナーゼ、ブロメライン(EC 3.4.22.)など)を更に作用させる。これによって残存するペプチドが断片化される。次に、試料をゲルろ過カラムに供し、分子量の差に基づいて糖鎖を分画する。
(2)標識化
糖鎖の標識法としては2−アミノピリジンで蛍光標識する方法(PA化法)と、トリチウムラベルで放射線標識する方法等が知られている。試薬が取り扱い易く、検出も高速液体クロマトグラフィーで行えて比較的容易である点などを考慮すれば、2−アミノピリジンによる蛍光標識法を採用することが好ましい。2−アミノピリジンによる蛍光標識法として、2−アミノピリジン塩酸溶液を蛍光標識剤として、水素化シアノホウ素ナトリウム(NABH3CH)を還元剤として使用する方法(S.Hase, et.al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 85, 257-263 (1978)、S.Hase, T.Ibuki, T.Ikenaka,J.Biochem, Vol.95, 197-203(1984))と、2−アミノピリジン無水酢酸溶液を蛍光標識剤として、ボランジメチルアミンコンプレックスを還元剤として使用する方法(Kondo,et.al. Agric. Biol. Chem. 54, 2169 〜2170 (1990))が知られている。前者は使用する装置が少なく、簡便である。また、後者については専用の装置(GlycoTAG(登録商標)、タカラバイオ株式会社)が市販されており、当該装置を利用することもできる。PA化の際の還元剤として上記の還元剤の他、ボラン-N,N-ジエチルアニリンコンプレックス(C6H5N(C2H52・BH3)、ボラン−ピリジンコンプレックス(C5H5N・BH3)などを利用してもよい。
(3)標識化糖鎖の精製
標識化操作に続いて標識化糖鎖の精製を行う。例えば、標識化後の試料をゲルろ過カラムに供し、分子量の差に基づく分画によって夾雑物を除去する。標識化糖鎖の精製方法としてアミノカラムを使用する方法も提案されており(特開平8−228795号公報)、当該方法を採用してもよい。
(4)トリシアリル糖鎖画分の分取
標識化糖鎖を、DEAE(diethlaminoethil)カラム等の陰イオン交換カラムに供し、シアル酸残基の数によって中性糖鎖、モノシアリル糖鎖、ジシアリル糖鎖、トリシアリル糖鎖を分離する。トリシアリル糖鎖を分画できる限り、使用する陰イオン交換カラムの種類は特に限定されない。DEAEカラムとしては、市販のTSK−GEL DEAE-5PW(トーソー社製)等を利用することができる。
(5)ODSシリカカラムを使用したHPLC分析
HPLC装置にODSカラムを装填し、常法に従い平衡化する。続いて、市販の標準PA化グルコース重合体混合物をカラムに流し、カラムの状態を確認するとともに、溶出位置の補正規格化を行う。これによって、目的の糖鎖(即ちマーカー糖鎖)の溶出時間(溶出位置)が決定される。次に、上記の方法で調製したトリシアリル糖鎖画分をカラムに流す。得られたHPLCの溶出パターン(チャート)から、溶出時間を指標として目的の糖鎖のピークを特定し、その面積を求める。得られた面積から、検体(血清)中のマーカー糖鎖の量を算出する。また、目的の糖鎖の面積と他の糖鎖の面積とを比較する。
本発明では、以上のようにして算出された検体中のマーカー糖鎖量を用いて肝細胞癌の判定に有用な情報を得る。
血清を検体としたODS分析において実質的に検出されるトリシアリル糖鎖は、本発明のマーカー糖鎖を含めて主に3種類であり非常に少ないことから、ODS分析によって本発明の糖鎖を特定し、その量を算出することが可能である。このように、本発明の検査法ではODS分析までで検査結果を得ることができる。但し、さらに糖鎖分析(例えばアミド順相カラムによる分析)を実施し、その結果も利用して最終的な検査結果を導き出してもよい。
本発明の一態様では、被験者より採取された検体中のマーカー糖鎖量を、同一の検体中に含まれる特定の標準糖鎖(内部標準)の量を利用して評価する。ここでの標準糖鎖とは肝細胞癌患者と健常者との間で量の差が小さい糖鎖である。後述の実施例に示すように、血清を検体とした場合、ODSシリカカラムを用いたHPLC分析においてマーカー糖鎖の他に2種類のトリシアリル糖鎖を検出することが可能である。説明の便宜上、マーカー糖鎖を糖鎖bと呼び、他の2種類のトリシアリル糖鎖を糖鎖a及び糖鎖cと呼ぶことにする。糖鎖a及び糖鎖cの構造を以下に示す。
糖鎖aの構造
Figure 2007278803
糖鎖cの構造
Figure 2007278803
後述の実施例に示すように、糖鎖a及び糖鎖cの量については肝細胞癌との関連性が認められなかった。したがって、これら2種類のトリシアリル糖鎖のいずれか又は両者を特定の標準糖鎖として用いることができる。そこで、具体的には例えば以下の(1)〜(4)のいずれかで算出される値(マーカー糖鎖量の比率)を用いてマーカー糖鎖の量を評価することができる。
(1)糖鎖bの量/糖鎖aの量、(2)糖鎖bの量/糖鎖cの量、(3)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖cの量)、(4)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖bの量+糖鎖cの量)
尚、各糖鎖の量としてはHPLC分析の溶出チャートのピーク面積(又はピーク面積比)を用いることができる。
後述の実施例に示すように、PA化操作を伴うODS分析ではPA化の際に糖鎖のエピメル化が生じ、ODS分析の溶出チャートではエピメル化前後の糖鎖が別々のピークとして現れる。そこで、上記の式(1)〜(4)に用いる糖鎖の量として、エピメル化されていない糖鎖とエピメル化後の糖鎖の総量、エピメル化されていない糖鎖の量、又はエピメル化された糖鎖の量を用いることができるが、好ましくは前2者のいずれかを用い、更に好ましくはエピメル化されていない糖鎖とエピメル化後の糖鎖の総量を用いる。
以上の方法で得られたマーカー糖鎖の量に関する情報は、肝疾患の診断に有用である。本発明の一態様では、予め基準量を設定しておき、マーカー糖鎖量が基準量より少ないという検査結果から、被験者に肝細胞癌のおそれがある又は被験者に肝細胞癌のおそれが高いなどと判定する。一方、マーカー糖鎖量が基準量より多いという検査結果を利用して、肝細胞癌のおそれはない又は肝細胞癌のおそれは低いなどと判定することができる。マーカー糖鎖量の範囲に対応させた複数の区分(例えば、(1)肝細胞癌のおそれはない、(2)肝細胞癌のおそれは低い、(3)肝細胞癌の徴候が認められる、及び(4)肝細胞癌のおそれが高い、からなる4区分)を設定し、検査結果がいずれの区分に属するかを判定してもよい。
本発明の他の一態様では、被験者より採取された検体中のマーカー糖鎖量と、健常者より採取された検体中のマーカー糖鎖量とを比較する。即ち、この態様では、被験者より採取された検体中のマーカー糖鎖量と、健常者より採取された検体中のマーカー糖鎖量との差又は比を検査結果として与える。例えば、健常者の場合に比較して被験者ではマーカー糖鎖の量が少ないとの検査結果を利用して、被験者に肝細胞癌のおそれがある、又は被験者に肝細胞癌のおそれが高いなどと判定することができる。他方、健常者と被験者との間でマーカー糖鎖の量に顕著な差が認められないという検査結果を利用して、例えば、被験者に肝細胞癌のおそれはない、又は被験者に肝細胞癌のおそれは低いと判定することができる。
健常者の検体中のマーカー糖鎖量の測定は、被験者の検体中のマーカー糖鎖量の測定と同様の手順で行われる。また、予め健常者についてのマーカー糖鎖量が明らかになっている場合は、当該マーカー糖鎖量を比較対照として用いても良い。
この態様においても、上記の態様と同様に、同一の検体中に含まれる特定の標準糖鎖(内部標準)の量を利用してマーカー糖鎖量を評価することにしてもよい。即ち、以下の(1)〜(4)のいずれかで算出される値(マーカー糖鎖の比率)を用いてマーカー糖鎖の量を評価してもよい。この場合、エピメル化されていない糖鎖とエピメル化後の糖鎖の総量、エピメル化されていない糖鎖の量、又はエピメル化された糖鎖の量を用いることができる。
(1)糖鎖bの量/糖鎖aの量、(2)糖鎖bの量/糖鎖cの量、(3)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖cの量)、(4)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖bの量+糖鎖cの量)
本発明のさらに他の態様では、ある時点で測定された検体中のマーカー糖鎖量と、以前に同一の被験者より採取された検体中のマーカー糖鎖量とを比較し、マーカー糖鎖量の増減の有無及び/又は増減の程度を評価する。この態様での検査結果(マーカー糖鎖量の変化に関するデータ)は特に肝疾患の病態の進行をモニターするために有用な情報となる。即ち、マーカー糖鎖量の減少が認められたという検査結果を利用して、例えば、前回の検査から今回の検査までの間に肝硬変から肝細胞癌へと病態が進行した、又は肝硬変から肝細胞癌への病態の進行の徴候が認められる、と判定することができる。他方、マーカー糖鎖量の増加が認められたという検査結果を利用して、例えば、前回の検査から今回の検査までの間に病態が改善した、又は病態の改善の徴候が認められる、と判定することができる。さらには、マーカー糖鎖量の変動が認められないという検査結果を利用して、例えば、前回の検査から今回の検査までの間に病態は変化しないと判定することができる。
治療と並行して本発明の検査法を実施して病態の変化をモニターすれば、治療効果を確認することができ、的確な治療方針の決定を可能にする。このように本発明の方法は、肝疾患に罹患した患者に対する的確な治療方針の決定に有益な情報を与えるものであり、患者のQOL(生活の質)向上に多大な貢献をする。
尚、この態様での評価についても、上記の態様と同様に、同一の検体中に含まれる特定の標準糖鎖(内部標準)の量を利用して行うことにしてもよい。即ち、以下の(1)〜(4)のいずれかで算出される値(マーカー糖鎖の比率)を用いてマーカー糖鎖の量を評価してもよい。この場合、エピメル化されていない糖鎖とエピメル化後の糖鎖の総量、エピメル化されていない糖鎖の量、又はエピメル化された糖鎖の量を用いることができる。
(1)糖鎖bの量/糖鎖aの量、(2)糖鎖bの量/糖鎖cの量、(3)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖cの量)、(4)糖鎖bの量/(糖鎖aの量+糖鎖bの量+糖鎖cの量)
<肝細胞癌マーカーの検索>
新規な肝細胞癌マーカーを見出すことを目的として、肝細胞癌患者の血清の糖鎖プロファイリング(構造解析)を実施した。
1.実験方法
肝細胞癌と診断された合計9名の患者について、肝細胞癌発症前及び発症後の血清を用意した(9検体×2)。肝細胞癌発症前の検体は、肝細胞癌発症後よりも6〜8年前のものである。これらの患者は全てC型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus,以下「HCV」と略記する)感染者であった。比較対照として健常者4名の血清を用いた。以上の13名22検体について、血清中のN結合型糖鎖の構造を解析した。構造解析には3-Dマッピング法(Trendes in Glycosciene and Glycotechnology Vol15 No.84 july2003)を利用した。3-Dマッピング法とは、糖タンパク質より切り出されたN-結合型糖鎖を蛍光ラベル化した後、3種類のカラム(DEAEカラム、ODSカラム、Amideカラム)を利用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC;SHIMAZU LabSolutionを使用)で分離し、溶出位置から構造を決定する方法であり、GALAXY(Glycoanalysis by the three axes of MS and chromatography)としてインターネット上で公開されている(http://www.glycoanalysis.info/)。3-Dマッピング法では、各カラムでの溶出時間から糖鎖の構造を決定できる。
肝細胞癌患者から採取された検体(血清、300μl)について、まず、安全性を確保するために100℃で10分のウイルス不活化をした後、減圧乾燥させた。この条件でタンパク変性を行ったことにもなる。健常者から採取された検体についても同様の操作を行った。次に以下の手順で糖鎖の遊離(糖タンパク質からの切り出し)を行った。まず、上記操作後の各試料に0.5Mクエン酸緩衝液(pH4.0)を110μl、ペプシン(シグマ社)430μg、グリコアミダーゼA(生化学工業社)0.5mUを添加後、37℃で一晩反応させてN結合型糖鎖を遊離させた。混在しているペプチドをアミノ酸にまで分解するためにプロナーゼ50μg、1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.1)90μlを添加後、37℃一晩反応させた。次に糖鎖とペプチド(アミノ酸)を分離するため、試料をP-2バイオゲル(ゲル濾過カラム, Bio-Rad社)に供した。280nmの吸光度をモニタリングしながら超純水(MQ水)で溶出し(DETECTOR UV-2000及びFRACTION COLLECTOR PC-1500を使用)、オルシノール硫酸反応を利用して糖鎖を分取した後、一晩減圧乾燥させた。尚、オルシノール硫酸反応とは、糖鎖が存在すると紫色に発色するというものであり、各分画の50μlを乾固した後、5μlのMQ水に溶解してTLCプレートに添加、乾燥し、続いて2%オルシノール/50%硫酸を噴霧した後、加熱・発色させた。
続いて糖鎖の還元末端を蛍光ラベル化した。即ち、試料に2−アミノピリジン酢酸溶液を添加して90℃で60分間反応させた後、ジメチルアミン・ボラン酢酸水溶液を添加して80℃で35分間反応させた。反応終了後の試料をSephadex G-15カラム(Amersham Bioscience社)に供し、PA化糖鎖を含む画分を分取し、一晩減圧乾燥させた。このようにして得られた試料を、DEAEカラムに使用するA液(以下に示す)100μlに溶解した後、15μl分をDEAEカラム(TSK-Gel、DEAE−5PW 75×7.5mm、Tosoh)を用いたHPLCで分画した。その結果得られた中性糖鎖画分、モノシアリル糖鎖画分、ジシアリル糖鎖画分、トリシアリル糖鎖画分、及びテトラシアリル糖鎖画分を一晩減圧乾燥した。
次に、上記の方法で得られた各試料をMQ水50μlに溶解した後、中性糖鎖を含む試料は25μlを、モノシアリル糖鎖を含む試料は5μlを、ジシアリル糖鎖を含む試料は1μlを、トリシアリル糖鎖を含む試料は5μlをODS逆相カラム(Shim−pack HRC-ODS 6.0×150mm、島津製作所)に供した。ODS逆相カラムを用いたHPLCの溶出チャートから、トリシアリル糖鎖群の中に肝細胞癌発症前後で存在量の異なる糖鎖が認められた。糖鎖構造の決定のため、当該糖鎖を含む溶出画分をAmideカラム(TSK-Gel AMIDE−80 4.6×250mm)を用いたHPLCに供した。ODS逆相カラムの溶出結果と、Amideカラムの溶出結果から目的の糖鎖のグルコースユニットを計算し、3-Dマッピング法(GALAXY、http://www.glycoanalysis.info/)で構造を検索し、候補の糖鎖を絞り込んだ。次に、選ばれた候補の標準品と試料(目的の糖鎖を含む画分)をODSカラムに共打ちし、目的の糖鎖の構造の同定を試みた。
以下に上記の各HPLC分析の条件を記載する。DEAEカラムを用いたHPLC分析、ODS逆相カラムを用いたHPLC分析、Amideカラムを用いたHPLC分析の条件を記載する。
(1)DEAEカラムを用いたHPLC分析
カラム温度:30℃
溶出条件:B液0%(5min)〜20%(45min)の連続勾配
A液:10%アセトニトリル含有0.01%トリエチルアミン水溶液
B液:10%アセトニトリル含有7.4%トリエチルアミン水溶液(pH7.25〜7.34)
(2)ODS逆相カラムを用いたHPLC分析
カラム温度55℃
溶出条件:B液20%(0min)〜B液50%(60min)の連続勾配、流速1ml/min
検出条件:励起波長320nm、蛍光波長400nm
A液:0.01Mリン酸緩衝液(pH3.8)
B液:ブタノールを終濃度0.5%でA液に添加して得られた溶液
(3)Amideカラムを用いたHPLC分析
カラム温度:40℃
溶出条件: B液0%(0min)〜B液60%(30min)の連続勾配、流速1ml/min
検出条件:励起波長320nm、蛍光波長400nm
A液:10%アセトニトリル含有7.4%トリエチルアミン水溶液(pH7.25〜7.34)とアセトニトリルを35:55の比率で混合した溶液
B液:10%アセトニトリル含有7.4%トリエチルアミン水溶液(pH7.25〜7.34)とアセトニトリルを50:40の比率で混合した溶液
2.結果
今回の分析で確認できる全てのトリシアリル糖鎖の構造を図1の表に示す。一方、肝細胞癌患者検体のODS分析結果(溶出チャート)の代表例を図2(肝細胞癌発症前)及び図3(肝細胞癌発症後)に示す。肝細胞癌発症前の溶出チャート(図2)では、10min〜15minの間に3種類の糖鎖(Ta、Tb、Tc)が認められる。他方、肝細胞癌発症後の溶出チャート(図3)ではTa及びTcのピークは認められるものの、Tbのピークが消失している。このように、ODS逆相カラムを用いたHPLC分析の結果、血清中のトリシアリル糖鎖群の中に肝細胞癌発症前後で量が顕著に変動する糖鎖を認めた。Amideカラムを用いたHPLC分析、及びその後の候補標準品との共打ち試験による構造解析の結果、当該トリシアリル糖鎖(ピーク番号Tb)が以下の構造からなり、Code No 3A2-300.8で表される糖鎖であることが判明した。
Figure 2007278803
尚、説明の便宜上、当該糖鎖を「糖鎖b」と呼称し、同様にピークTa及びTcに対応する糖鎖をそれぞれ「糖鎖a」及び「糖鎖c」と呼称する。
Taよりも早い溶出のピーク(Ta’、Tb’、Tc’)は3種類の糖鎖(糖鎖a、糖鎖b、糖鎖c)がエピメル化されたものであることがわかった。エピメル化された糖鎖は、エピメル化前の糖鎖よりもODS分析における溶出時間が早いことが知られている。従って、エピメル化糖鎖のグルコースユニット値はエピメル化前の糖鎖のそれと異なる。一方で、エピメル化前後で分子量は変化しないため、Amide分析ではエピメル化された糖鎖とエピメル化前の糖鎖の間でグルコースユニット値は変わらない。
各検体のODS分析の結果を図4の表にまとめた。この表において1A〜9Bは患者検体、10〜13は健常者検体を表す。患者検体の検体No.については、肝細胞癌発症前に採取された検体であることを表すために数字の次にAを付し、肝細胞癌発症後に採取された検体であることを表すために同様にBを付した。
表の左欄には、各糖鎖のピーク面積(TA、TB、TC)及びトリシアリル糖鎖全体のピーク面積(Tri-Total)を示した。尚、TAはTaのピーク面積値とTa'のピーク面積値を合算したものであり、エピメル化された分も含めた糖鎖aの量に対応する。同様に、TBはTbのピーク面積値とTb'のピーク面積値を合算したもの、TCはTcのピーク面積値とTc'のピーク面積値を合算したものである。一方、表の右欄にはピーク面積比を示した。
表の左欄から明らかなように、肝細胞癌患者9名中4名では肝細胞癌後の検体(1B、2B、3B、4B)で糖鎖bの消失が認められる。また肝細胞癌患者中1名(7A,7B)では肝細胞癌前後で糖鎖bの量の顕著な減少を認めた。さらに、肝細胞癌患者中2名(5A,5B、9A,9B)では肝細胞癌前後で糖鎖bの量が減少する傾向が認められる。このように、肝細胞癌前後の検体を比較したとき、肝細胞癌後の検体において糖鎖bが消失するか又肝細胞癌前の検体に比較して糖鎖bの量が減少する割合は約80%であった。この結果より、糖鎖bの量に注目すれば、肝細胞癌への移行(即ち病態の悪化)を高い的中率で判定可能であるといえる。
一方、肝細胞癌患者9名中6名の肝細胞癌発症後の検体(1B、2B、3B、4B、5B、7B)では糖鎖bの量(TBのピーク面積値)が健常者の糖鎖bの量(平均値)よりも少ない。即ち、肝細胞癌発症後の検体では糖鎖bの量が健常者に比較して少ない傾向にある。このことから、肝細胞癌の判定の指標として糖鎖bの量が有用であるといえる。
ここで糖鎖a及び糖鎖cに注目すると当該糖鎖の量は、糖鎖bの場合に比較して、肝細胞癌発症前後で変動が小さい。このことから、肝細胞癌との顕著な関連性が認められる糖鎖bの量を評価するための対照(内部標準)として糖鎖aの量及び糖鎖cの量が有用であるといえる。そこで、肝細胞癌発症後の検体について糖鎖aの量及び/又は糖鎖cの量に対する糖鎖bの量の比率(TB/TAやTB/TCなどの面積比、表の右欄を参照)を求め、健常者の対応する値と比較してみると、一部の例外を除いて、両者の間に顕著な差が認められた。また、トリシアリル糖鎖全体の量に対する糖鎖bの量の比率(TB/Tri total)についても同様の比較を行ったところ同じ傾向が認められた。尚、糖鎖aや糖鎖cについてはこのような傾向は認められない。以上のように、糖鎖a、糖鎖c又はトリシアリル糖鎖全体の量に対する糖鎖bの量の比率が肝細胞癌の判定に有用であることが示された。
一方、肝細胞癌発症前後で糖鎖bの量の比率(TB/TA、TB/TC、TB/Tri total)を比較すれば、一部の例外を除いて、肝細胞癌発症後の方がその値が小さい。このように、糖鎖bの量の比率が減少することと、肝細胞癌への移行との間に高い相関が認められた。換言すれば、糖鎖bの量の比率は、肝細胞癌の移行を判定するための有効な指標であることが示された。
本発明の肝細胞癌マーカーは肝細胞癌の検査に利用され得る。本発明の肝細胞癌マーカーを利用した検査法(本発明の検査法)は、従来法よりも見逃しの少ない、確度の高い肝細胞癌の診断を可能とする。本発明の検査法は、肝細胞癌の判定、患者の病態の変化(例えば肝硬変から肝細胞癌への進行)をモニターすること、肝細胞癌に対する治療の効果の検証等に利用することができる。
本発明の肝細胞癌マーカーは肝癌患者の血清中に見出され、少量の血清を用いてその量の評価を行うことが可能である。従って、本発明の肝細胞癌マーカーを指標とすれば、通常の生化学検査や血清検査のために採血されたわずかな検体(血清)の一部を用いた糖鎖分析によって肝細胞癌の検査・診断が可能となる。
一方、本発明の肝細胞癌マーカーを研究目的での使用に供してもよい。例えば、肝細胞癌の発症メカニズムの研究に本発明の肝細胞癌マーカーを利用することができる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
実施例のODS分析で検出されるトリシアリル糖鎖の構造を示す。 肝細胞癌発症前の患者検体についてのODS分析結果(溶出チャート)である。 肝細胞癌発症後の患者検体についてのODS分析結果(溶出チャート)である。 患者検体及び健常者検体についてのODS分析の結果をまとめた表である。各検体のODS分析の結果を図4の表にまとめた。1A〜9Bは患者検体(Aは肝細胞癌発症前に採取された検体であることを表し、Bは肝細胞癌発症後に採取された検体であることを表す)。10〜13は健常者検体。Tri-total:トリシアリル糖鎖全体のピーク面積、TA:Taのピーク面積値とTa'のピーク面積値の合計、TB:Tbのピーク面積値とTb'のピーク面積値の合計、TC:Tcのピーク面積値とTc'のピーク面積値の合計、TB/TA:TBとTAの比、TB/TC:TBとTCの比、TB/(TA+TC):TBと(TA+TC)の比、TA/Tri total:TAとトリシアリル糖鎖全体のピーク面積値の比、TB/Tri total:TBとトリシアリル糖鎖全体のピーク面積値の比、TB/Tri totalの変化率:{(Bの検体のTB/Tri totalの値)−(Aの検体のTB/Tri totalの値)}/(Aの検体のTB/Tri totalの値)、TC/Tri total:TCとトリシアリル糖鎖全体のピーク面積値の比。

Claims (9)

  1. 以下の構造式で表されるトリシアリル糖鎖からなる肝細胞癌マーカー。
    Figure 2007278803
  2. 被験者より採取された検体中における、請求項1に記載の肝細胞癌マーカーの量を指標として用いた、肝細胞癌の検査法。
  3. 被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量と、該検体中に含まれ、肝細胞癌患者と健常者との間で量の差が小さい特定の糖鎖の量との比率を用いて検査結果を得ることを特徴とする、請求項2に記載の肝細胞癌の検査法。
  4. 前記特定の糖鎖が、前記検体中に含まれるトリシアリル糖鎖であることを特徴とする、請求項3に記載の肝細胞癌の検査法。
  5. 以下のステップ(1)及び(2)を含み、被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量の増減が調べられることを特徴とする、請求項2に記載の肝細胞癌の検査法、
    (1)被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量を測定するステップ、及び
    (2)前記ステップで測定された前記肝細胞癌マーカーの量と、以前に同一の被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量とを比較し、前記肝細胞癌マーカーの量の増減を評価するステップ。
  6. 以下のステップ(1)及び(2)を含み、被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量と、健常者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量との差又は比が評価されることを特徴とする、請求項2に記載の肝細胞癌の検査法、
    (1)被験者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量を測定するステップ、及び
    (2)前記ステップで測定された前記肝細胞癌マーカーの量と、健常者より採取された検体中の前記肝細胞癌マーカーの量とを比較し、両者の差又は比を評価するステップ。
  7. 検査結果が、肝硬変から肝細胞癌へ進行したか否かの判定、又は肝硬変から肝細胞癌へ進行する徴候があるか否かの判定に利用されることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法。
  8. 前記ステップ(1)が以下のステップを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法、
    (1-1)被験者より採取された検体から糖鎖を調製するステップ、
    (1-2)調製した糖鎖を標識化するステップ、
    (1-3)標識化糖鎖を陰イオン交換カラムに供し、トリシアリル糖鎖画分を分取するステップ、及び
    (1-4)分取したトリシアリル糖鎖画分を、ODSシリカカラムを使用した高速液体クロマトグラフィーに供し、該高速液体クロマトグラフィーの溶出パターンを分析して前記肝細胞癌マーカーの量を算出するステップ。
  9. 前記検体が血清である、請求項2〜8のいずれかに記載の肝細胞癌の検査法。
JP2006104554A 2006-04-05 2006-04-05 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法 Expired - Fee Related JP4752032B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006104554A JP4752032B2 (ja) 2006-04-05 2006-04-05 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006104554A JP4752032B2 (ja) 2006-04-05 2006-04-05 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007278803A true JP2007278803A (ja) 2007-10-25
JP4752032B2 JP4752032B2 (ja) 2011-08-17

Family

ID=38680397

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006104554A Expired - Fee Related JP4752032B2 (ja) 2006-04-05 2006-04-05 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4752032B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009069776A1 (ja) * 2007-11-30 2009-06-04 National University Corporation Hokkaido University 糖鎖分析による肝疾患の診断方法
WO2010058605A1 (ja) * 2008-11-21 2010-05-27 国立大学法人 北海道大学 細胞の状態を評価する方法
WO2010100862A1 (ja) 2009-03-05 2010-09-10 独立行政法人産業技術総合研究所 肝内胆管がんの検出、判別方法
WO2011034182A1 (ja) * 2009-09-18 2011-03-24 三菱化学株式会社 肝細胞癌マーカー

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09159669A (ja) * 1995-12-06 1997-06-20 Nakano Vinegar Co Ltd フィブリノーゲン中のシアリル糖鎖による生化学検査方法およびフィブリノーゲンの精製方法
WO2004066808A2 (en) * 2002-12-20 2004-08-12 Momenta Pharmaceuticals, Inc. Glycan markers for diagnosing and monitoring disease
WO2005098434A2 (en) * 2004-03-30 2005-10-20 Northern Advancement Center For Science & Technology RM2 ANTIGEN (ß1,4-GALNAC-DISIALYL-LC4) AS PROSTATE CANCER-ASSOCIATED ANTIGEN

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09159669A (ja) * 1995-12-06 1997-06-20 Nakano Vinegar Co Ltd フィブリノーゲン中のシアリル糖鎖による生化学検査方法およびフィブリノーゲンの精製方法
WO2004066808A2 (en) * 2002-12-20 2004-08-12 Momenta Pharmaceuticals, Inc. Glycan markers for diagnosing and monitoring disease
WO2005098434A2 (en) * 2004-03-30 2005-10-20 Northern Advancement Center For Science & Technology RM2 ANTIGEN (ß1,4-GALNAC-DISIALYL-LC4) AS PROSTATE CANCER-ASSOCIATED ANTIGEN

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6010066679, Hirokazu Yagi et al., "Development of structural analysis of sulfated N−glycans by multidimensional high performance liquid", Glycobiology, 2005, vol. 15 no. 10, pp. 1051−1060 *

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009069776A1 (ja) * 2007-11-30 2009-06-04 National University Corporation Hokkaido University 糖鎖分析による肝疾患の診断方法
JPWO2009069776A1 (ja) * 2007-11-30 2011-04-21 国立大学法人北海道大学 糖鎖分析による肝疾患の診断方法
WO2010058605A1 (ja) * 2008-11-21 2010-05-27 国立大学法人 北海道大学 細胞の状態を評価する方法
WO2010100862A1 (ja) 2009-03-05 2010-09-10 独立行政法人産業技術総合研究所 肝内胆管がんの検出、判別方法
US8557602B2 (en) 2009-03-05 2013-10-15 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Method for detecting and distinguishing intrahepatic cholangiocarcinoma
WO2011034182A1 (ja) * 2009-09-18 2011-03-24 三菱化学株式会社 肝細胞癌マーカー
JP5737761B2 (ja) * 2009-09-18 2015-06-17 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 肝細胞癌マーカー

Also Published As

Publication number Publication date
JP4752032B2 (ja) 2011-08-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6415547B2 (ja) 膵臓癌診断用組成物およびこれを用いた膵臓癌診断方法
US8003392B2 (en) Diagnostic test for the detection of early stage liver cancer
EP2580596B1 (en) Methods to diagnose liver diseases
US20070292869A1 (en) Compositions and Methods for Analyzing Renal Cancer
JP5737761B2 (ja) 肝細胞癌マーカー
JP6612414B2 (ja) Pd−l1に対するsrmアッセイ
AU2006304605A1 (en) Tissue-and serum-derived glycoproteins and methods of their use
KR101219519B1 (ko) 렉틴을 이용한 암 진단 방법
Uto et al. Clinical proteomics for liver disease: a promising approach for discovery of novel biomarkers
CN113176411B (zh) 利用唾液检测新型冠状病毒感染的生物标志物及其应用
Abdalla et al. Promising urinary protein biomarkers for the early detection of hepatocellular carcinoma among high-risk hepatitis C virus Egyptian patients
WO2008091948A2 (en) Galectin-3-binding, protein as a biomarker of cardiovascular disease
JP4752032B2 (ja) 肝細胞癌マーカー及び肝細胞癌の検査法
EP2333552B1 (en) Novel biomarkers for nonalcoholic fatty liver disease and methods for detecting nonalcoholic fatty liver disease using biomarker
Abe et al. A new serum biomarker set to detect mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease by peptidome technology
CN109425739B (zh) 一组蛋白作为肿瘤标志物在制备恶性肿瘤诊断试剂和试剂盒中的用途
WO2014046248A1 (ja) 肝臓癌の検出方法および肝硬変の検出方法
KR101527283B1 (ko) 당단백질의 탈당화 검출을 통한 암 마커 스크리닝 방법 및 간세포암 마커
WO2011088026A2 (en) Biomarkers of liver injury
JP6294118B2 (ja) 大腸癌マーカー及び大腸癌検出方法
CN113155983A (zh) 一种组合标志物及其应用和检测试剂盒
US20080319678A1 (en) Mass Tagging for Quantitative Analysis of Biomolecules using 13C Labeled Phenylisocyanate
JP2011512149A (ja) ガンの検出の方法および手法
CN112782297A (zh) 一种肝硬化相关生物标志物及其筛选方法和应用
JP3547879B2 (ja) フィブリノーゲン中のシアリル糖鎖による生化学検査方法およびフィブリノーゲンの精製方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20070719

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20070723

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081031

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081031

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20090123

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101101

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110111

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20110111

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110419

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110422

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140603

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees