JP2007277608A - 円筒内面の溶射前下地加工方法,同溶射前下地処理形状および円筒内の圧漏れ試験方法 - Google Patents

円筒内面の溶射前下地加工方法,同溶射前下地処理形状および円筒内の圧漏れ試験方法 Download PDF

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Abstract

【課題】円筒内面を粗面として溶射皮膜の密着度を高めつつ、円筒内面の軸方向端部を利用した圧漏れ試験や内径測定を適正に実施可能とし、かつ軸方向端部での溶射皮膜の剥離を防止する。
【解決手段】シリンダボア内面5に対し、溶射皮膜60を形成する前の下地処理として粗面9を形成する。シリンダボア内面5のクランクケース側の端部については粗面9を形成せず、この部位に樹脂製のコーティング層29を形成する。シリンダブロック1の上面にも、同様な上部コーティング層49を形成する。これら各コーティング層29,49を形成する部位を利用して圧漏れ試験機31にてシリンダボア3内の圧漏れ試験および、ギャップセンサ53による内径測定を行う。その後、シリンダボア内面5に形成する溶射皮膜は、コーティング層29,49には形成されず、粗面9とした部位のみに高密着度で形成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、円筒内面に対し、溶射皮膜を形成する前処理として粗面を形成する円筒内面の溶射前下地加工方法、同溶射前下地処理形状および円筒内の圧漏れ試験方法に関する。
内燃機関の出力・燃費・排気性能向上あるいは小型・軽量化といった観点から、アルミシリンダブロックのシリンダボア部に適用しているシリンダライナを廃止することへの設計要求は極めて高く、その代替技術の一つとして、シリンダボア内面に溶射皮膜を形成する溶射技術の適用が進められている。
上記した溶射技術をシリンダボア部に適用する場合には、溶射用材料を噴出する溶射ガンをシリンダボア内に軸方向に移動させつつ回転させて行い、溶射皮膜形成後は、例えばホーニング加工によって皮膜表面を研削加工して仕上げを行う。
そして、上記した溶射皮膜を形成する前には、例えば本出願人が提案している下記特許文献1に記載されているように、シリンダボア内面を粗面に形成する下地処理を実施することで、溶射皮膜の密着度を高めている。
特開2002−155350号公報(段落0002,0019)
ところで、シリンダボア内面に対し粗面を形成した後は、シリンダボア内に対し、鋳造欠陥などの対策として圧漏れ試験を行ったり、あるいは内径測定を行うなどの、品質管理試験を通常実施している。
このような圧漏れ試験や内径測定を行う際には、前述したように溶射皮膜の密着度を高めるためにシリンダボア内面に対してその全面を粗面に形成すると、圧漏れ試験時での軸方向端部に設定するシール材がシリンダボア内面に完全に密着せず隙間が形成されて正確な圧漏れ試験が行えず、また内径測定に際しても、高精度な測定ができなくなる。
このため、実際には、シリンダボア内面の軸方向端部を粗面に形成せず、この粗面に形成しない部位を利用して圧漏れ試験や内径測定を行うことが考えられる。
ところが、この場合、粗面に形成しない部位に付着した溶射皮膜は、当然のことながら、粗面とした部位の溶射皮膜に比較して密着度が低くなっており、したがってそのまま製品として使用した場合には、粗面に形成しない部位に付着した溶射皮膜を起点として溶射皮膜の剥離が進行するものとなる。
なお、粗面に形成しない部位に溶射用材料が付着しないように、この部位を例えばマスキング材で覆った状態で溶射作業を行うことで、粗面に形成しない部位への溶射皮膜の形成を防ぐことができるが、この場合には、マスキング材を外す際に、マスキング材に付着した溶射皮膜とともに粗面に形成した部位の溶射皮膜も一緒に剥がれる恐れがあり、好ましいものではない。
そこで、本発明は、円筒内面を粗面に形成して溶射皮膜の密着度を高めつつ、円筒内面の軸方向端部を利用した圧漏れ試験や内径測定を適正に実施可能とし、かつ軸方向端部での溶射皮膜の剥離の発生を防止することを目的としている。
本発明は、円筒内面に対して溶射皮膜を形成する前に、前記円筒内面の軸方向少なくとも一方の端部を除いた部位を粗面に形成し、前記粗面に形成していない軸方向端部に、前記溶射皮膜を構成する溶射用材料が付着しないコーティング層を形成することを最も主要な特徴とする。
本発明によれば、粗面に形成していない軸方向端部を利用して圧漏れ試験や内径測定を適正に実施することができ、また、溶射皮膜は、軸方向端部上のコーティング層には形成されず、それ以外の粗面とした部位にのみ溶射用材料が付着して溶射皮膜が高密着度で形成されるので、軸方向端部での溶射皮膜の剥離を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係わる自動車用エンジンにおける円筒部材としてのアルミシリンダブロック1の断面図であり、シリンダブロック1のシリンダボア3の円筒内面となるシリンダボア内面5に、後述する図6に示す溶射装置を用いて溶射皮膜60を形成する。
溶射皮膜60の形成後は、後述する図8に示すホーニング加工装置を用いて仕上げ加工を行う。なお、図1は、溶射皮膜60の形成前で、シリンダボア内面5を下地処理として粗面9に形成した状態を示す。シリンダボア内面5を粗面9に形成することで、その後に形成する溶射皮膜60の密着度が高まる。符号11はクランクケースである。
図2は、図1に示すシリンダブロック1のシリンダボア3周辺の拡大した断面図であり、シリンダボア3内に対し、後述する圧漏れ試験機31を用いて圧漏れ試験を実施している状態を示す。
シリンダボア3のシリンダボア内面5は、前述したように粗面9に形成している。この粗面9は、図3に示すように、縦型のマシニングセンタの主軸19に取り付けたボーリング加工用バー21の先端に、切削工具23を取り付け、主軸19を偏心回転さるコンタリング加工によって、図中上部から下部に向かう送り方向Aに向けて移動させながら、ねじ切り加工を行ってねじ状の凹凸部を形成する。
上記したねじ状の凹凸部は、図2に示すように、切削工具23によって直接切削されるねじ状の凹部25と、これら凹部25相互間に形成され、凹部25の切削時に発生する切削片によって、ねじ切り時の凸部(山部)26先端の一部(頂部)を破断して形成する破断部となる微細凹凸部27とを備えている。
図4(a)は、切削工具23により上記した凹部25と微細凹凸部27とを有する粗面9を形成する様子を示している。図4(b)は、参考例として工具201により通常のねじ切り加工を行う様子を示す。
図4(b)では、切削工具201が、回転しながら図中で下方に向けて移動し、この際切りくず203が矢印Bで示す方向に排出され、これにより谷部205と山部207とからなる通常のねじ切り加工がなされる。
一方、図4(a)では、切削工具23により、図4(b)の谷部205に相当する凹部25を形成する際に排出される切りくずKにより、現在形成している凹25に隣接する凸部(山部)26の頂部26aを破断し、これにより微細凹凸部27を形成する。
ここで、図4(a)の工具23は、工具送り方向後方側の面23aの水平面Lに対する角度α1を、図4(b)の同角度α2に比較して大きくして約30度とするとともに、工具送り方向前方側の面23bの水平面Lに対する角度β1を、図4(b)の同角度β2に比較して小さくして約10度としている。これにより、図4(a)では、凹25を形成する際に排出される切りくずKが、工具送り方向後方側に傾けた面23aによって凸部26側に押し付けられ、凹25に隣接する凸部26の頂部26aを破断し、微細凹凸部27を形成する。
図1,図2に示すように、シリンダボア内面5における図中で下方の軸方向端部28の表面は、粗面9を形成せずに滑らかな面とした上で、樹脂からなるコーティング層29を形成する。コーティング層29に使用する樹脂としては、例えばフッ素やポリアミドイミドなどがある。
そして、上記した粗面9を形成していない軸方向端部28を利用して、図2に示すように、シリンダボア3内に挿入する圧漏れ試験機31により、円筒内であるシリンダボア3内に対する圧漏れ試験を実施する。
圧漏れ試験機31は、軸部33の先端に形成した膨大部35の外周に、シール材としてのOリングからなる環状の下部シールゴム37を設けている。下部シールゴム37は、膨大部35内に設けた拡張部材39が半径方向外側に拡張移動することで、同方向に押圧されて拡張するように弾性変形し、軸方向端部28の表面に押し付けられる。
拡張部材39は、円周方向に沿って複数設けた板状部材からなり、膨大部35内に形成した摺動孔35aにて半径方向に移動可能に設けている。
また、膨大部35の中心部には軸方向に貫通するテーパコーン挿入孔35bを設け、このテーパコーン挿入孔35bにテーパコーン41を移動可能に挿入する。テーパコーン41は、先端ほど小径となるようなテーパ面41aを備えてほぼ円錐形状を呈しており、図中で下方に移動することで、前記した拡張部材39の内端39aを押圧して半径方向外側へ拡張移動せる。
上記したテーパコーン41は、基端部に駆動ロッド43の先端を連結し、駆動ロッド43の基端側に図示しないシリンダなどの駆動機構を連結して、図2中で上下可能となっている。
一方、前記した軸部33の基端部には円盤部45を形成し、円盤部45のシリンダブロック1の上面に接触する部位には、Oリングからなる上部シールゴム47を設けている。この上部シールゴム47が接触するシリンダブロック1の上面にも、前記したコーティング層29と同様な上部コーティング層49を形成する。
また、前記した膨大部35の下部外周には適宜複数の突部51を設け、突部51の先端には、軸方向端部28の面上にてシリンダボア3の内径を測定する内径測定手段としてのギャップセンサ53を設置する。
前記した下部シールゴム37は、上記した突部51とその上部の平板状のガイド54との間にて、拡張部材39とともに半径方向に拡張移動する。
前記したコーティング層29および上部コーティング層49の形成については、圧漏れ試験機31を利用して次のようにして行う。
まず、図5に示すように、上記したシリンダボア3と内径がほぼ同等の貫通孔55aを備えたコーティング剤塗布部材55を用意し、このコーティング剤塗布部材55におけるシリンダブロック1のコーティング層29および上部コーティング層49に対応する位置に、これら各コーティング層29,49に使用する樹脂の溶剤を含浸させたスポンジ57,59をそれぞれ設置する。
そして、上記コーティング剤塗布部材55の貫通孔55a内に、圧漏れ試験機31を、図2にてシリンダボア3内に挿入した状態と同様にして挿入し、上部シールゴム47をスポンジ59に密着させた状態で、テーパコーン41の作動により拡張部材39を拡張させて下部シールゴム37をスポンジ57に密着させ、これにより下部シールゴム37および上部シールゴム49にコーティング用の樹脂溶剤を付着させる。
その後、テーパコーン41の逆作動により、拡張部材39を元の位置に戻して下部シールゴム37をスポンジ57から離反させた状態で、圧漏れ試験機31をコーティング剤塗布部材55の貫通孔55aから引き抜き、これに続いて図2に示すように、圧漏れ試験機31をシリンダボア3内に挿入する。
圧漏れ試験機31をシリンダボア3内に挿入することで、上部シールゴム47がシリンダブロック1の上面に接触して上部シールゴム47に付着しているコーティング用の樹脂溶剤が、シリンダブロック1の上面に付着して上部コーティング層49が形成される。
また、下部シールゴム37については、前記したテーパコーン41の拡張動作によって半径方向外側に拡張してシリンダボア内面5の粗面9に形成していない軸方向端部28の表面に接触し、下部シールゴム37に付着しているコーティング用の樹脂溶剤が、上記粗面9に形成していない軸方向端部28の表面に付着してコーティング層29が形成される。
そして、この状態、すなわち、上部シールゴム47が上部コーティング層(シリンダブロック1の上面)49に、下部シールゴム37がコーティング層(軸方向端部28の表面)29にそれぞれ密着してこれら相互間のシリンダボア3内を密封した状態で、シリンダボア3内に空気などの気体を所定圧となるよう導入し、その際の圧力変化を観察することで圧漏れ試験を行う。
なお、シリンダボア3内への空気の導入は、特に図示していないが、例えば円盤部45に設けた空気導入孔を利用して実施する。
また、下部シールゴム37を拡張して軸方向端部28の表面に密着させた状態で、ギャップセンサ53により、シリンダボア3の内径を測定する。すなわち、シリンダボア内面5の粗面9に形成していない軸方向端部28は、内径測定部を構成している。この内径測定は、下部シールゴム37を拡張して軸方向端部28に密着させた状態であれば、コーティング用の樹脂溶剤の塗布時でも、その後の圧漏れ試験時でもどちらでもよい。
なお、図2の状態では、下部シールゴム37により、粗面9に形成していない軸方向端部28の全域にコーティング用の樹脂溶剤を塗布できないが、例えば軸部33を円盤部45に対して軸方向に移動可能な構成とし、軸部33の軸方向への移動によって下部シールゴム37を適宜必要部位に移動させることで、軸方向端部28の全域にコーティング用の樹脂溶剤を塗布することが可能である。この際、軸部33と円盤部45との間には、圧漏れ試験時での気体漏れを防止するためにシール材を設けるなど、シール性を確保する必要がある。
このようにして、シリンダボア3内の圧漏れ試験および内径測定を実施した後は、テーパコーン41の逆作動により、拡張部材39を元の位置に戻して下部シールゴム37を軸方向端部28から離反させた状態で、圧漏れ試験機31をシリンダボア3内から引き抜き、その後図6に示すような溶射装置を用い、図7に示すようにシリンダボア内面5に対して溶射皮膜60を形成する。この溶射皮膜60は、シリンダボア内面5に対してほぼ均一となるよう形成する。
図6に示す溶射装置は、シリンダボア3内の中心に、ガス溶線式の溶射ガン61を挿入し、その溶射口61aから溶射用材料として溶融した鉄系金属材料を溶滴63として溶射してシリンダボア内面5に溶射皮膜60を形成する。
溶射ガン61は、溶線送給機65から溶射用材料となる鉄系金属材料の溶線67の送給を受けるとともに、アセチレンまたはプロパンあるいはエチレンなどの燃料を貯蔵した燃料ガスボンベ69および酸素を貯蔵した酸素ボンベ71から、配管73および75を介して燃料ガスおよび酸素の供給をそれぞれ受ける。
上記した溶線67は、溶射ガン61に対し、中央部の上下に貫通する溶線送給孔77の上端から下方に向けて送給する。また、燃料および酸素は、溶線送給孔77の外側の円筒部79に、上下方向に貫通して形成してあるガス案内流路81に供給する。この供給した燃料および酸素の混合ガスは、ガス案内流路81の図6中で下端開口部81aから流出し、点火されることで燃焼炎83が形成される。
前記円筒部79の外周側には、アトマイズエア流路85を設けてあり、さらにその外周側には、いずれも円筒形状の隔壁87と外壁89との間に形成したアクセラレータエア流路91を設けてある。
アトマイズエア流路85を流れるアトマイズエアは、燃焼炎83の熱を前方(図6中で下方)へ送って周辺部に対する冷却を行うとともに、溶融した溶線67を同前方へ送る。一方、アクセラレータエア流路91を流れるアクセラレータエアは、上記前方へ送られ溶融した溶線67を、この送り方向と交差するように前記シリンダボア内面5に向けて溶滴63として送り、シリンダボア内面5に溶射皮膜60を形成する。
アトマイズエア流路85には、アトマイズエア供給源97から、減圧弁99を備えたエア供給管101を通してアトマイズエアを供給する。一方、アクセラレータエア流路91には、アクセラレータエア供給源103から、減圧弁105およびマイクロミストフィルタ107をそれぞれ備えたエア供給管109を通してアクセラレータエアを供給する。
アトマイズエア流路85とアクセラレータエア流路91との間の隔壁87は、図6中で下部側の先端部に、外壁89に対しベアリング111を介して回転可能となる回転筒部113を備えている。この回転筒部113の上部外周に、アクセラレータエア流路91に位置する回転翼115を設けてある。回転翼115に、アクセラレータエア流路91を流れるアクセラレータエアが作用することで、回転筒部113が回転する。
回転筒部113の先端(下端)面113aには、回転筒部113と一体となって回転する先端部材117を固定してある。先端部材117の周縁の一部には、前記したアクセラレータエア流路91にベアリング111を通して連通する噴出流路119を備えた突出部121を設けてあり、噴出流路119の先端に、溶滴63を噴出させる前記した溶射口61aを設けている。
溶射口61aを備える先端部材117が回転筒部113と一体となって回転しつつ溶射ガン61をシリンダボア3の軸方向に往復移動させることで、シリンダボア内面5のほぼ全域に溶射皮膜60を形成する。
ここで上記した溶射皮膜60は、シリンダボア内面5における粗面9に形成した部位に形成されるが、滑らかな面としているコーティング層29および上部コーティング層49には溶射用材料(溶滴63)が付着せず、図7に示すように溶射皮膜60が形成されることがない。
このため従来では、圧漏れ試験や内径測定に使用している軸方向端部28およびシリンダブロック1の上面に密着度の低い状態の溶射皮膜が形成されることにより、これら各部位を起点とした溶射皮膜の剥離が発生していたが、本実施形態では、溶射皮膜60は、溶射皮膜60の密着度の高い粗面9とした部位のみに形成しているので、軸方向端部28およびシリンダブロック1の上面付近を起点とした溶射皮膜の剥離を防止することができる。
図7のようにシリンダボア内面5に対して溶射皮膜60を形成した後は、図7中の下部および上部のそれぞれの二点鎖線で示す位置にて、不要な部位(図示しないピストンが摺動しない部位)を研削加工して溶射皮膜60の一部とともに除去する。この際、軸方向両端部ほど大径となるようなテーパ面125,127を形成して面取り加工を実施する。
上記した面取り加工の際にも、溶射皮膜60は、密着度が高い粗面9とした部位のみに形成しているので、剥離を防止することができ、その結果面取り加工時の加工速度を高めることができ、加工コスト低減に寄与することができる。
また、シリンダブロック1の上部コーティング層49を含む上面(シリンダヘッド取付面)については、溶射皮膜が形成されていないので、この上面を平滑に後加工する際に、シリンダボア内面5の密着度の高い溶射皮膜60の剥離を防止することができ、その結果上面後加工時の加工速度を高めることができ、加工コスト低減に寄与することができる。従来では、シリンダブロック1の上面に形成される溶射皮膜の上から後加工を行うこととなり、この上面の後加工による溶射皮膜の剥離に伴ってシリンダボア内面の溶射皮膜も一緒に剥離してしまう。
そして、最後に図8に示すように、溶射皮膜60の表面を仕上げ加工としてホーニング加工を行う。図8は、シリンダブロック1に対し、ホーニングツール301によりホーニング加工をしている状態を示す断面図である。ホーニングツール301におけるホーニングヘッド303の外周には、例えばダイヤモンドなどの砥粒で構成した砥石305を円周方向等間隔に4つ取り付けている。
ホーニングヘッド303内には、砥石305を直径方向外側に向けて拡張させる、前記図2に示したテーパコーン41とほぼ同様な拡張機構を備えており、加工時には、この砥石305を拡張させてシリンダボア内面5に所定の圧力で押し付ける。
そして、上記したホーニングツール301を回転させつつ軸方向に往復移動させることで、溶射皮膜60の表面を研削してホーニング加工を行う。これにより、シリンダボア内面5に対する加工が完了する。なお、ホーニング加工では、使用する砥石の粒度を変更することで、荒工程や仕上げ工程を順次実施する。
上記したように、本実施形態によれば、シリンダボア内面5における粗面9に形成していない軸方向端部28を利用して圧漏れ試験や内径測定を適正に実施することができ、また、溶射皮膜60は、軸方向端部28上のコーティング層29および上部コーティング層49には形成されず、それ以外の粗面9とした部位にのみ溶射用材料が付着して溶射皮膜60が高密着度で形成されるので、軸方向端部28およびシリンダブロック1の上面付近での溶射皮膜の剥離を防止することができる。
また、コーティング層29および上部コーティング層49は、下部シールゴム37および上部シールゴム47にコーティング用の溶剤を付着させた状態で、これら下部シールゴム37および上部シールゴム47を、シリンダボア内面5の軸方向端部28およびシリンダブロック1の上面に接触させることで形成しているので、各コーティング層29,49の形成に続いて圧漏れ試験や内径測定を連続して実施でき、作業時間が短縮されて作業性が向上する。
また、前記した圧漏れ試験を行う際に、下部シールゴム37近傍に設けたギャップセンサ53によって、軸方向端部28に対してシリンダボア3の内径を測定できるので、内径測定のための作業時間を別途設ける必要がなく、作業時間全体の短縮を図ることができる。
なお、上記した実施形態では、コーティング層29および上部コーティング層49を形成した後に、圧漏れ試験および内径測定を行っているが、これとは逆に圧漏れ試験および内径測定を行った後に、コーティング層29および上部コーティング層49を形成してもよい。この場合には、圧漏れ試験機31を、圧漏れ試験および内径測定を行った後にシリンダボア3から一旦引き抜き、図5のコーティング剤塗布部材55を使用した後、再度シリンダボア3内に挿入する必要がある。
また、シリンダボア内面5に対し、溶射皮膜60を形成する前の下地処理加工として、ねじ状の凹凸部を形成して粗面9としているが、この粗面9は、ねじ状の凹凸部に限るものではなく、例えばショットピーニング加工によるものでも構わない。ショットピーニング加工を行う場合には、コーティング層29および上部コーティング層49を形成する部位にショット玉が当たらないように、マスキングを行う必要がある。
本発明の一実施形態に係わるシリンダブロックの断面図である。 図1に示すシリンダブロックのシリンダボア周辺の、圧漏れ試験を行っている状態を示す拡大した断面図である。 図1のシリンダブロックに対する下地処理加工を行っている状態を示す断面図である。 (a)は図3の下地処理加工を工具および切りくずにより行っている状態を示す説明図、(b)は工具による通常のねじ切り加工を示す説明図である。 コーティング層を形成するために使用するコーティング剤塗布部材の断面図である。 図1のシリンダブロックのシリンダボア内面を粗面化した後に溶射皮膜を形成するための溶射装置の概略を示す全体構成図である。 図3の下地処理加工後に、溶射皮膜を形成した状態を示すシリンダブロックの要部の断面図である。 図7の溶射皮膜形成後の面取り加工後に、ホーニング加工を行っている状態を示すシリンダブロックの断面図である。
符号の説明
5 シリンダボア内面(円筒内面)
9 粗面
28 粗面に形成していない軸方向端部(シール材を密着させてシールする部位,内径測定部)
29 コーティング層
37 下部シールゴム(シール材)
47 上部シールゴム
49 上部コーティング層
53 ギャップセンサ(内径測定手段)
60 溶射皮膜

Claims (9)

  1. 円筒内面に対して溶射皮膜を形成する前に、前記円筒内面の軸方向少なくとも一方の端部を除いた部位を粗面に形成し、前記粗面に形成していない軸方向端部に、前記溶射皮膜を構成する溶射用材料が付着しないコーティング層を形成することを特徴とする円筒内面の溶射前下地加工方法。
  2. 前記粗面に形成していない軸方向端部は、前記円筒内に対する圧漏れ試験を行うために、シール材を密着させてシールする部位であることを特徴とする請求項1に記載の円筒内面の溶射前下地加工方法。
  3. 前記コーティング層は、前記シール材にコーティング用の溶剤を付着させた状態で、このシール材を前記軸方向端部に接触させることで形成することを特徴とする請求項2に記載の円筒内面の溶射前下地加工方法。
  4. 前記粗面に形成していない軸方向端部は、前記円筒内の内径を測定するための内径測定部であることを特徴とする請求項1に記載の円筒内面の溶射前下地加工方法。
  5. 円筒内面に対して溶射皮膜を形成する前に、前記円筒内面の軸方向少なくとも一方の端部を除いた部位を粗面に形成し、前記粗面に形成していない軸方向端部は、前記溶射皮膜を構成する溶射用材料が付着しないコーティング層を備えていることを特徴とする円筒内面の溶射前下地処理形状。
  6. 前記粗面に形成していない軸方向端部は、前記円筒内に対する圧漏れ試験を行うために、シール材を密着させてシールする部位であることを特徴とする請求項5に記載の円筒内面の溶射前下地処理形状。
  7. 前記粗面に形成していない軸方向端部は、前記円筒内の内径を測定するための内径測定部であることを特徴とする請求項5に記載の円筒内面の溶射前下地処理形状。
  8. 円筒内面に対して溶射皮膜を形成する前に、前記円筒内面の軸方向少なくとも一方の端部を除いた部位を粗面に形成し、前記粗面に形成していない軸方向端部に、前記溶射皮膜を構成する溶射用材料が付着しないコーティング層を形成し、このコーティング層を形成する前記軸方向端部にシール材を密着させて前記円筒内をシールしつつ圧漏れ試験を行い、この圧漏れ試験を行う際に、前記シール材近傍に設けた内径測定手段により、前記軸方向端部に対して前記円筒内の内径を測定することを特徴とする円筒内の圧漏れ試験方法。
  9. 前記コーティング層は、前記シール材にコーティング用の溶剤を付着させた状態で、このシール材を前記軸方向端部に接触させることで形成することを特徴とする請求項8に記載の円筒内の圧漏れ試験方法。
JP2006102979A 2006-04-04 2006-04-04 円筒内面の溶射前下地加工方法,同溶射前下地処理形状および円筒内の圧漏れ試験方法 Active JP4935154B2 (ja)

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