JP2007276291A - 射出成型用金型部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケル製のスタンパと当接する金型部材のキャビテイ面の耐摩耗性を長期間に亘り維持し、繰り返しの成型においても良好な耐摩耗性を維持して長期の使用にも耐え得る射出成型用金型部材を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、可動側金型部材34の表面41に、約0.1μm厚のCrの下地層41をスパッタ法で形成し、この下地層41の上にシリコン含有DLC被膜44が約0.5μm厚で形成することによって達成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンパクトディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体ディスク用基板、導光板、拡散板等のスタンパを使用してプラスチック材を成型するのに好適な射出成型用金型部材に関する。
従来、コンパクトディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体ディスク用基板は、表面に渦巻き状や円状等の溝またはピットが形成されているニッケル製のスタンパを支持した金型キャビテイ内に溶融したプラスチック樹脂を加圧充填して射出成型を行い、成型と同時にスタンパの表面形状を成型品に転写して製造されている。
このスタンパは、射出成型時に、溶融したプラスチック樹脂を充填し、冷却固化させることによって、300℃以上の高温及び数十℃の低温との間の温度サイクルの熱処理を受けるため、スタンパは、加熱及び冷却によるスタンパの伸縮によって金型部材のキャビテイ側表面を移動する。このスタンパの移動によって、金型部材のキャビテイ表面が磨耗され、ショット毎に損傷を受け、そのため、この損傷によってスタンパの損傷またはスタンパを介して成型されたディスクの表面性の低下による特性不良等を発生させる問題が生じる。
このような金型のキャビテイ面の磨耗を抑制するために、スタンパと当接するキャビテイ面に、ダイヤモンド状カーボン(以下DLCという)薄膜を形成することが提案されている。(例えば特許文献1参照)
特開平1−234214号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載された金型構造では、DLC薄膜の無いものに比べ、スタンパの支持面の耐摩耗性は改善されるものの、長期の使用によって、DLC薄膜自体が摩耗し、度々、金型部材を変更しなければならず、金型変更のため、成型を中断しなければならない問題があった。
本発明は、上述した従来技術における問題点を解決すべくなされたもので、その目的は、ニッケル製のスタンパと当接する金型部材のキャビテイ面の耐摩耗性を長期間に亘り維持し、繰り返しの成型においても良好な耐摩耗性を維持して長期の使用にも耐え得る射出成型用金型部材を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明による第1の手段は、ニッケルを主成分とするスタンパと当接する面に、Si、Al、W、Cr、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するダイヤモンド状カーボンからなる被膜を形成したことを特徴とする射出成型用金型部材としたものである。
本発明による第2の手段としては、前記第1の手段記載の射出成型用金型部材において、前記被膜は、前記金型部材の表面に形成されたセラミックスからなる断熱層上に形成されることを特徴とする射出成型用金型部材としたものである。
本発明による第3の手段としては、前記第1の手段または第2の手段記載の射出成型用金型部材において、前記被膜中に、炭素原子に対するシリコン原子の比率Si/Cが、0.005〜0.3でSiが含有されていることを特徴とする射出成型用金型部材としたものである。
本発明による第4の手段としては、前記第1の手段ないし第3の手段のいずれか1手段記載の射出成型用金型部材において、前記被膜の厚みが0.1μm〜10μmであることを特徴とする射出成型用金型部材としたものである。
本発明によれば、上記構成の射出成型用金型部材とすることによって、ニッケル製のスタンパと当接する金型部材のキャビテイ面の耐摩耗性を長期間に亘り維持し、繰り返しの成型においても良好な耐摩耗性を維持して長期の使用にも耐え得る射出成型用金型部材の提供を可能としたものである。
本発明においては、ニッケル製のスタンパと当接する金型のキャビテイ面に形成されたDLC被膜の耐摩耗性について検討の結果、スタンパの主材質であるニッケルは酸化触媒として知られており、相手材と物理的に擦れ合うことで強力な酸化力を発揮し、金型のキャビテイ面に形成されたDLC被膜が酸化され、この酸化によってDLC被膜の耐摩耗性が低下することを究明した。この化学的な変化と、スタンパとDLC被膜との摺動による機械的な摩耗との相乗効果によって、DLC被膜の摩耗が進行すると考えられる。
この究明に基づき、更なる検討を行った結果、DLC被膜中にシリコンを含有させたとき、DLC被膜の酸化が抑制され、DLC被膜の良好な耐摩耗性が長期に亘って維持できることを見出した。
このような良好な特性が発揮される明確な理由は不明であるが、DLC被膜の表面に存在するシリコンが酸化されて薄いシリコンの酸化物表面層が形成され、このシリコンの酸化物表面層が、この上で当接するニッケル製のスタンパによるDLC被膜に対する触媒作用を抑制して、DLC被膜の酸化を抑制するものと考えられる。
本来、DLC被膜の酸化に対する耐熱温度は、550℃程度であり、大気雰囲気中で550℃を越えると急激な酸化昇華現象を起こすことが知られている。さらに、高温化におけるDLC被膜は、酸化以外に450℃程度から、構造変化(アモルファス構造が結晶化し、グラファイト構造になる)を生じ、高硬度等のDLCとしてのトライポロジー特性が著しく低下してしまう。つまり、DLC被膜の酸化を防ぐ本発明の方式は、450℃以下でのDLC酸化抑制に利用価値が高く、低温でも酸化作用が高いニッケルスタンパを用い、かつ、成型樹脂温度が400℃以下である樹脂の射出成型方式に最適な利用手法といえる。
DLC被膜の酸化を抑制するには、当該被膜中の炭素原子に対するシリコン原子の比率Si/Cが0.005以上Siを含有させればよく、この比率が大きくなるにつれ酸化抑制効果が向上する。しかしながら、シリコン量の増加はDLC硬度の低下に繋がるため、前記比率Si/Cが0.3以上となると、DLC被膜の良好な耐摩耗性が損なわれるので、前記比率Si/Cは、0.005〜0.3となるように選定することが好ましく、特に耐酸化性能力が充分で、機械的な耐磨耗性の充分な0.01〜0.1の範囲が好適である。
この前記比率Si/Cは、後述するマグネトロンスパッタ装置におけるSiのスパッタ条件やイオン化蒸着あるいはプラズマCVD装置内に導入される4塩化珪素(SiCl)、4フッ化珪素(SiF)、テトラメチルシラン(Si(CH)等のシリコン化合物ガスの導入量を調節することによって容易に調節することができる。このように、カーボンとシリコンが混在した被膜では、酸化触媒であるニッケルスタンパと摺り合わさることによって、表面に存在するシリコンが酸化されて薄い(100nm以下の厚み)シリコンの酸化物層が形成され、この酸化物層がDLC被膜の表面を被覆して、ニッケルによるDLC膜の酸化を抑制することができる。
このようなシリコン含有のDLC被膜は、スパッタリングやイオンプレーテイング等の物理的蒸着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)等によって容易に作製することが可能であるが、特に、アークイオンプレーテイング(AIP)の一種であるFCVA(Filtered Cathodic Vacume Arc)方式によって形成する場合には、より良好な耐摩耗性を有する被膜が得られるので好適である。
FCVA方式により作成されるカーボン膜は、ta−C(tetrahedral amorphous carbon)と呼ばれ、DLCの範疇の中でも高いトライボロジー特性を有する膜である。イオン化蒸着、プラズマCVDなどを用いて作成される一般的なDLC、a−C:H(amorphous hydrogened carbon)と比較し、水素フリーにて膜形成が可能であることと、アーク放電により高エネルギー状態のイオンを発生できることにより、sp3比率が非常に高く、硬く高密度なアモルファスカーボンが形成できる。この為、a−C:Hと比較した場合ta−Cは機械的な磨耗に関しては、高い耐久性を示す。
一般に、この種、射出成型用金型においては、ステンレス鋼や炭素鋼等の鋼材から形成される固定側金型部材と可動側金型部材とを閉じ合わせて形成される成型品を形成するキャビテイ内の固定側金型部材または可動側金型部材または両方の金型部材のキャビテイ面に、スタンパの取付面を当接、配置し、このキャビテイ内に溶融プラスチック樹脂を充填して、射出成型が行われるが、本発明における射出成型用金型部材は、スタンパの取付面と当接する固定側金型部材または可動側金型部材あるいはその両方を指すものである。
本発明で使用されるスタンパは、電気鋳造法等によって容易に形成され、ニッケルを主体とし、実質的にニッケルのみで形成されるもの、あるいは、ニッケルに、銅、アルミニウム、リン等の少なくとも1種を50原子%未満で含有する合金であってもよい。
また、本発明による射出成型用金型部材のスタンパの取付面と当接するキャビテイ面に形成されるシリコン含有DLC被膜は、前述のように、FCVA、マグネトロンスパッタ等によって容易に形成することができるが、その膜厚は、0.1〜10μm、好ましくは、0.3〜3μmの範囲が適切である。
さらに、本発明による射出成型用金型部材のスタンパの取付面と当接するキャビテイ面に形成されるシリコン含有DLC被膜は、前記キャビテイ面との密着性を改善するために、前記キャビテイ面と前記シリコン含有DLC被膜との間に、Cr、W、Ti、Siから選択される少なくとも1種の元素を主成分とする下地層を介して形成することが好ましい。
このような下地層は、スパッタリング等によって軟鋼(STC)、ステンレス鋼、焼入れ鋼(SKD、SKC)等の鋼材からなる金型部材に適切に被着され、この下地層を介することによってシリコン含有DLC被膜が金型部材表面に強固に被着される。この下地層の膜厚は、0.03〜2μm、好ましくは0.1〜1μmが適切である。
以下、本発明に係わる一実施形態のニッケル製スタンパの裏面と当接支持する金型部材の表面にシリコン含有DLC被膜を形成した金型部材を備えた射出成型装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係わる射出成型用金型部材を備えた射出成型装置の概略構成を示す図で、図中の32はデジタルバーサタイルディスク(DVD)の記録情報に対応する微細な凹凸面を内面に形成した電気鋳造からなるスタンパ、33はSKD鋼材からなる固定側金型部材、34はSKD鋼材からなる可動側金型部材、35はスタンパ外周ホルダである。これらの金型部材を組み合わせとじることにより、成型品(本実施形態の場合はDVD用基板)を形成するキャビテイ36が形成される。キャビテイ36は、固定側金型部材33に取り付けられたゲート部材37、及び可動側金型部材34に上下動可能に取り付けられたゲートカット部材38で形成されたランナー39及びスプルー40と連通している。溶融状態になったポリカーボネート等の成型用樹脂は、スプルー40ならびにランナー39を経由してキャビテイ36内に射出、充填される。
この樹脂が冷却、固化した後にゲートカット部材38が上方に移動して、成型された成型品の中央部に当たるゲートカット部で切断し、その後に可動側金型部材34を移動させて金型を開き、スタンパ32の微細凹凸面が転写されたDVD用基板が取り出される。
なお、図中43は、固定側金型部材33及び可動側金型部材34に形成された冷却水が還流するための溝で、44は後述するスタンパ32の裏面の取付面45と当接するシリコン含有DLC被膜、46はスタンパ32の中央孔47を保持するスタンパ押さえ部材である。
図2は、可動側金型部材34のスタンパ取付面45との当接部分の拡大断面図で、可動側金型部材34の表面41には、約0.1μm厚のTiの下地層41が後述のFCVA方式で形成されており、この下地層41の上にシリコン含有DLC被膜44が約1.5μm厚で、後述する方法で形成されている。
このシリコン含有DLC被膜44は、シリコンをSi/C原子比率で0.05含有し、残部はカーボンであり、この被膜の表面には、極薄(厚さ50nm以下)のシリコンの酸化物層が形成されていた。
なお、このシリコン含有DLC被膜44の上には、Niからなる約0.3mm厚のスタンパ32がその中央孔部分及び外周部分でスタンパ押さえ部材46及びスタンパ外周ホルダ35で保持されている(図1参照)。また、図中、46は、スタンパ32の表面に形成されたDVDディスクの記録情報信号に対応する溝である。
このように、スタンパ32は、可動側金型部材34の所定位置に保持設定されるが、射出成型時の温度変化を受けて、伸縮し、この伸縮に伴って、スタンパ32の取付面45は、シリコン含有DLC被膜44と摺接することになる。このスタンパ32の取付面45とシリコン含有DLC被膜44との摺接によって、この被膜44は磨耗されるが、本発明によるシリコン含有被膜44は、シリコンを含有していないDLC被膜に比べ、摩耗の進行が抑制され、長期間の使用に耐え、良好な耐久性を有する。
次に、図3に基づいて、金型部材の表面にシリコン含有DLC被膜44の形成する方法について説明する。
図3は、前述のFCVA方式によるシリコン含有DLC被膜の形成に好適な被着装置の概略構成を示し、1は真空チャンバーで、2は金型部材を取り付けた基板で、この基板2は、シリコン含有DLC被膜44の被着時に均一組成及び厚みの被膜44を形成するため、所定速度で回転されている。また、この基板2には、基板バイアス電源3によって−150Vのパルス電圧が印加されており、バイアス電圧の変動によりイオンエネルギーを変更させ、sp3比率をコントロール、つまり硬度等膜特性を自由にコントロールすることが可能である。
5はシリコン板を取り付けたマグネトロンスパッタターゲットで、このターゲット5にマグネトロンスパッタ用電源6からDC電力(200W)が印加され、真空チャンバー1内に導入されて5×10−2Pa(パスカル)に維持されたArガスの放電によって、シリコンスパッタターゲット5から支持基板5上に取り付けられたシリコン板からシリコン粒子を放出させ、前記金型部材の取り付けられた基板2の金型部材の表面に、シリコン粒子を付着させる。
一方、DLC被膜は、FCVA方式によって、基板2上の金型部材の表面に形成されるが、この方式によりカーボン粒子を金型部材表面に供給する一例の供給装置が図3の左側に図示されている。
この供給装置は、ストライカーと呼ばれるプラス電極8と支持台に取り付けられたカーボンターゲット7(マイナス極)との間で、アーク放電発生電源9から供給される40Aの直流電源でアーク放電を発生させ、このアーク放電によって、プラスイオンの電荷を有するカーボン粒子4aや電荷を有していないカーボン粒子やマイナスの電子4bが混在するプラズマ9を発生させ、このプラズマ9は、上方の供給入り口10から湾曲した通路11を有する濾過手段13に供給される。
このように濾過手段13に供給されたプラズマ9は、湾曲した通路11の外側に巻回されたコイルから発生される磁場によって、電荷を有する粒子つまりイオン化した粒子と電荷を有していない粒子を濾別する。即ち、濾過手段13は、磁場の印加によって、電荷を有する粒子は、出口12方向に吸引送給されるが、電荷を有していない粒子は、磁場によって吸引されることなく直進して濾過手段13の側面に付着あるいは自重により下方に落下させて濾別して電荷を有する粒子4a、4bを選択的に出口12に送給している。
濾過手段13を通過した電荷を有する粒子4a、4bは、さらに、コイル14から発生される磁場によって密度を高められ、ビームとなって基板2に送給され、基板2上の金型部材に電荷を有するカーボン粒子4aが付着する。このようにして高密度のカーボン粒子4aが付着して形成されたDLC被膜は、硬さがHVで8000程度の硬い耐摩耗性の良いta−C被膜となる。なお、図3中の15は、プラズマ9の発生状況をのぞくためののぞき窓である。
このDLC被膜の形成と同時に、前述のシリコンのスパッタを行うことによって、所定濃度でシリコンを含有し、カーボンとシリコンの混在したシリコン含有のDLC被膜44が容易に形成される。
本発明による実施形態では、金型部材表面にシリコン含有DLC被膜44の形成に先立ってTiの下地層42が形成されるが、このTiの下地層42は、前記FCVA方式のカーボンターゲット7に代えてTi金属板をターゲットとして、容易に金型部材表面41にTi下地層42を形成することができる。
また、Ti下地層42の作成に先立って、この真空チャンバー1内で金型部材表面41をArプラズマによって、エッチング処理を行って下地層42の密着性を向上させることが好ましい。
このようにして形成されたシリコン含有DLC被膜及びシリコンを含有していないDLC被膜について、耐磨耗試験を行った。
図4は、耐磨耗試験装置の概略構成を示す図で、20は試験材料を取り付ける支持台で、この支持台20は、駆動手段21によって回転されるようになっており、この支持台20の上方に直径6mmのニッケル製ボール22を固定し、ボール22に適宜の荷重を印加する荷重付加手段23が取り付けられている。
支持台20上に取り付けられた試験材料に、1000gの荷重を印加してニッケルボール22を圧接させ、周速100mm/秒で回転させ、この回転数と、ニッケルボール22による磨耗深さ(nm)との関係を調べた。なお、この耐磨耗試験は、射出成型時の金型材料の表面温度に相当する200℃の加熱下で行った。
図5は、その試験結果を示し、図中白丸24は、シリコンを含まないDLC被膜の場合、ドット丸25は、シリコンを含有するDLC被膜について示してある。この結果から明らかなように、シリコンを含まないDLC被膜の場合は、2500回の回転数で磨耗深さが1000nmに達するのに対し、本発明によるシリコンを含有するDLC被膜では、250nm程度と磨耗が少なく、回転数が3000回になったとき、シリコンを含まないDLC被膜のものは、磨耗深さが1500nmまで磨耗され、下地が発現している。
一方、本発明によるシリコン含有DLC被膜の場合には、10000回の回転を行っても磨耗深さが500nmに達する程度で、磨耗の進行が少ないことが明らかであり、良好な耐摩耗性を有していることが明白である。
図6には、3000回の回転させた際のシリコンを含有していないDLC被膜の磨耗状態を示す表面の金属顕微鏡写真(A)及び10000回の回転の際の本発明によるシリコン含有DLC被膜の磨耗状態を示す表面の金属顕微鏡写真(B)を示し、この写真からも明らかなように、写真(A)の場合には、磨耗が激しく、表面が著しく損傷され、下地が発現した状態にあるのに対し、写真(B)のものでは、磨耗痕がみられるものの表面の平坦性が維持されており、摩耗量が少ないことが明らかである。
図7は、ニッケル製スタンパとシリコン含有DLC被膜との特異性を示すために試験した結果で、前述の耐摩耗性試験機において、ニッケルボール22に代えて同径のステンレスボールを使用した場合の耐摩耗性試験の結果を示し、白丸26は、シリコンを含まないDLC被膜について、ドット丸27は、シリコン含有DLC被膜についての試験結果である。
この結果から明らかなように、シリコン含有DLC被膜のものでは、シリコンを含まないDLC被膜のものに比べ、わずかに耐摩耗性がよいものの、シリコンを含まないDLC被膜でも、10000回の回転によっても摩耗深さは500nm程度である。この結果と前述の図5の結果と比較すると明らかなように、シリコンを含まないDLC被膜は、高温下でのニッケルとの摺接によって、DLC被膜の摩耗が著しく進行し、容易に使用に耐えない状況になるのに対し、本発明によるシリコン含有DLC被膜においては、10000回の回転数においても、摩耗の進行が抑制されることが明らかである。
次に、本発明による他の実施形態として、シリコン含有DLC被膜が、金型部材34の表面にセラミック溶射されたジルコニアからなる断熱層の表面に形成した例について、図8に基づいて説明する。
図8は、可動側金型部材34の表面に固着された断熱層48とスタンパ取付面45との当接部分の拡大断面図で、可動側金型部材34の表面に、厚みが約300μmのジルコニアからなる断熱層48がセラミック溶射されており、この断熱層48の表面に、約0.1μm厚のTi下地層42を介して、約1.5μm厚みのSi含有DLC被膜44が形成されている。この被膜44の上に、ニッケルスタンパ32のスタンパ取付面45が当接されている。
Ti下地層42及びSi含有DLC被膜44は、前述のFCVA方式によって形成され、Si含有DLC被膜44中のSi/C比率は、0.05であり、ニッケルスタンパ32による耐磨耗性は、前述の実施形態と同様の特性を示した。
この実施形態においては、前述の実施形態とは、Si含有DLC被膜44との間に断熱層48を介在させた点において相違し、この断熱層48を介在させることによって、プラスチック樹脂の成型時に、断熱層48の低い熱伝導性のために、溶融樹脂の固化を遅延させてスタンパ32の溝46等の凹凸を精度良く転写できるようにしたものである。
この断熱層48は、プラスチックの成型時に、熱伝導性が低く、溶融樹脂の固化を遅延させることのできるいわゆる断熱性を有するものであればよく、特に、ジルコニア、酸化チタン、アルミナ、チタン酸アルミニウムの少なくとも1種から選ばれたセラミック粉末をプラズマ・パウダー・スプレイ法などでセラミック溶射を行い断熱層を形成する。このようにして形成されたセラミック材からなる断熱層の表面を研磨し、断熱層の厚さを0.05m〜2.0mm、好ましくは0.1〜1.0mmに調整したものが好適である。
以上のように、本発明による射出成型用金型部材は、ニッケル製スタンパと当接する面にシリコン含有DLC被膜を形成したので、ニッケル製スタンパに特別の処理を施すことなく、当該スタンパと摺接しても長期の使用に耐えることが可能となり、金型部材の交換頻度を抑えることができ、生産性を向上させることができる。
なお、前記本発明による実施形態においては、Siを含有したDLC被膜について説明してきたが、Siに変えてAl、W、Cr、Tiあるいはこれらの合金等の不働態酸化皮膜を形成する元素をDLC被膜中に含有させることによっても同様の作用効果を奏することが可能である。
本発明による射出成型用金型部材として、コンパクトディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体ディスク用基板の成型用金型部材の他、導光板、拡散板等の成型のため、ニッケル製スタンパを使用して射出成型を行うものに対しても良好に利用可能である。
本発明の一実施形態に係わる金型部材を使用した成型装置の概略断面図である。 図1で示す金型部材の拡大断面図である。 本発明の一実施形態のシリコン含有DLC被膜を有する金型部材にシリコン含有DLC被膜を形成するための被着装置の概略図である。 本発明の一実施形態に係わるシリコン含有DLC被膜を有する金型部材の耐摩耗試験機の概略構成を示す図である。 本発明の位置実施形態に係わるシリコン含有DLC被膜を有する金型部材及びシリコンを含有しないDLC被膜を有する金型部材のニッケルボールによる耐摩耗性の試験結果を示す図である。 図5に示す耐摩耗性の試験後の各皮膜表面の摩耗状態を示す電子顕微鏡写真で、(A)は、シリコンを含有しないDLC被膜について、(B)は、シリコン含有DLC被膜についての写真である。 本発明の位置実施形態に係わるシリコン含有DLC被膜を有する金型部材及びシリコンを含有しないDLC被膜を有する金型部材のステンレスボールによる耐摩耗性の試験結果を示す図である。 本発明による他の実施形態の金型部材の拡大断面図である。
符号の説明
1:真空チャンバー、2:基板、3:基板バイアス電源、4a:(+)イオンに荷電されたカーボン粒子、4b:(−)イオンの電子、5:スパッタ用支持基板、6:グロー放電発生電源、7:カーボンターゲット、8:プラス電極、9:プラズマ、10:供給入り口、11:湾曲した通路、12:供給出口、13:濾過手段、14:コイル、20:支持台、21:駆動手段、22:ニッケル製ボール、23:荷重付加手段、24、26:シリコンを含有しないDLC被膜の試験データ、25、27:シリコン含有DLC被膜の試験データ、32:スタンパ、33:固定側金型部材、34:可動側金型部材、35:スタンパ外周ホルダ、36:キャビテイ、37:ゲート部材、38:ゲートカット部材、39:ランナー、40:スプルー、41:可動側金型部材のキャビテイ表面、42:下地層、43:冷却水還流溝、44:シリコン含有DLC被膜、45:スタンパ取付面、46:スタンパ押さえ部材、47:スタンパ中央孔、48:断熱層、49:銀ろう。

Claims (4)

  1. ニッケルを主成分とするスタンパと当接する面に、Si、Al、W、Cr、Tiから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するダイヤモンド状カーボンからなる被膜を形成したことを特徴とする射出成型用金型部材。
  2. 請求項1記載の射出成型用金型部材において、
    前記被膜は、前記金型部材の表面に形成されたセラミックスからなる断熱層上に形成されることを特徴とする射出成型用金型部材。
  3. 請求項1または2記載の射出成型用金型部材において、
    前記被膜中に、炭素原子に対するシリコン原子の比率Si/Cが、0.005〜0.3でSiが含有されていることを特徴とする射出成型用金型部材。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項記載の射出成型用金型部材において、
    前記被膜の厚みが0.1μm〜10μmであることを特徴とする射出成型用金型部材。
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