JP2007270255A - 銅粉を用いたセレンを含む廃液中の白金の回収方法 - Google Patents

銅粉を用いたセレンを含む廃液中の白金の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】白金族元素、セレン及びその他の不純物の群から選ばれた少なくとも一種の金属を低濃度で含有する水溶液から、白金族元素、特に白金を効率よく回収する。
【解決手段】白金族元素、セレン及びその他の不純物の群から選ばれた少なくとも一種の金属を白金族元素総量で4.0g/L以下含む水溶液へ銅粉を添加して、白金族金属を回収する方法であり、銅粉は好ましくは5〜50℃で、含まれている白金量の10〜40反応当量添加される。
【選択図】なし

Description

本発明は、比較的低濃度の白金族金属を含む水溶液から白金族金属を還元回収する方法に関する。特に本発明は、銅製錬工程より生じた貴金属含有残渣を湿式法により精製していく過程で発生する排水溶液から効率よく白金族金属(PGM:platinum-group metals)を回収する方法に関する。
本発明は、特に白金族元素、セレン及びその他の不純物を少なくとも一種類以上低濃度で含有する水溶液の処理に有効に利用される。
銅の製造工程で生じる鉱滓には、白金、パラジウムその他の白金族元素がかなりの量含まれている。これら白金族元素を回収分離する方法として、例えば、特開2001−107156号公報には、パラジウムを含有する水溶液からのジアルキルスルフィドを使用したパラジウムの抽出方法が記載されている(特許文献1)。又、特許第3480216号明細書には、鉱滓を塩酸に溶解し、酸化還元電位を特定範囲内に調整した後、トリブチルフォスフェイトで白金を選択的に抽出する白金とルテニウムとの分離方法が記載されており(特許文献2)、特開平10−102156号公報には、塩化白金酸溶液に特定条件下で中和処理を行い、ろ過し、ろ液の酸濃度を特定範囲に調整した後に塩化アンモニウムと接触させる白金とテルル及び銅との分離方法が記載されている(特許文献3)。
しかし、抽出、ろ過、洗浄工程等で排出される排溶液には、系外カットすべき不純物を多く含む一方、低濃度の白金族金属が存在していた。それらを廃棄するのは適当ではないが、上記従来方法も適用できないため回収して前工程へリサイクルして繰り返し処理していた。
特開2001−107156号公報 特許第3480216号明細書 特開平10−102156号公報
本発明は、白金族元素、セレン及びその他の不純物を少なくとも一種類以上低濃度で含有する水溶液から、白金族元素を効率よく回収することを目的とし、具体的には、貴金属含有残滓から白金族元素等を回収する工程で生じる排溶液中に含まれる白金族元素、白金を効率よく回収することを目的とする。
本発明は、下記金属回収方法に関する。
(1)白金族元素、セレン及びその他の不純物を少なくとも一種類以上含み、白金族元素総量で4.0g/L以下含む水溶液へ銅粉を添加して、該水溶液中から白金族金属を選択的に回収する方法。
(2)水溶液の組成は、Pt濃度が2.0g/L以下、Pd濃度が2.0g/L以下であり、さらに共存するセレン濃度が10.0g/L以下である上記(1)記載の方法。
(3)水溶液中のセレンの濃度が、共存する白金族金属のうち、特に白金の濃度に対して、5倍から100倍である上記(1)又は(2)記載の方法。
(4)含まれている白金族金属総量の10〜40反応当量の銅粉を添加する上記(1)〜(3)いずれかに記載の方法。
(5)銅粉を添加する際の上記水溶液の温度は5〜35℃である上記(1)〜(4)いずれかに記載の方法。
(6)上記水溶液は、銅製錬工程において副生する貴金属含有残滓を硫酸及び/又は塩酸で浸出して浸出後液について行われる下記(イ)〜(ホ)いずれかの工程から発生する、上記(1)〜(5)いずれかに記載の方法:
(イ)浸出後液とジアルキルカルビトール、メチルイソブチルケトン及びイソプロピルエーテルの群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(A)とを接触させて金を溶媒抽出するか、金を還元析出させて除去する工程。
(ロ)浸出後液又は上記工程(イ)の処理液と亜硫酸ガス、ヒドラジン、水素化ホウ素及び水素化ホウ素ナトリウムの群から選ばれた少なくとも一種の還元剤(B)とを接触させてセレン及び/又はテルルを還元回収する工程。
(ハ)上記工程(ロ)の還元残渣を塩酸浸出した液とジアルキルスルフィド(DAS)、オキシム類及びアミン類の群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(C)とを接触させてパラジウムを抽出回収する工程。
(ニ)上記工程(ハ)の処理溶媒からアンモニア水溶液によりパラジウムを逆抽出し、このパラジウム含有アンモニア水溶液からパラジウムを晶析し、これを濾過する工程、並びに晶析したパラジウムを分離してアンモニア水溶液に再溶解し、このパラジウム含有アンモニア水溶液からパラジウムを再晶析し、これを濾過するパラジウム精製工程。
(ホ)上記工程(ハ)のパラジウム抽出処理後液とリン酸トリブチルとを接触させて白金を抽出し、白金を含むリン酸トリブチルと水又は稀釈度の高い酸もしくはアルカリ液の群から選ばれた一種類の溶液とを接触させ白金を逆抽出する工程、並びにその白金を含む逆抽出後水溶液と塩化アンモニウムとを接触させて、沈殿した塩化白金酸アンモニウムをろ過して得る工程。
本発明により、白金族元素、セレン及びその他の不純物を少なくとも一種類以上を低濃度で含有する水溶液から、酸性条件下でも直接還元して白金族金属含有の固形物を得ることが出来るので、白金族元素等の高い回収率を達成し、繰返し量を低下することができる。一方でこの還元処理ではセレンの選択性の低さからセレンの回収率が低く、次の工程での処理も容易である。
以下本発明の一例を、図1の貴金属含有残滓から白金族元素等を回収する工程を示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
銅製錬工程において副生する貴金属含有残滓は、例えば、貴金属を含有する銅鉱石製錬の蒸留残渣、銅の電解製錬の際の陽極スライムその他の原料をいう。
貴金属含有残滓を浸出するのに使用される方法としては、酸浸出、アルカリ浸出、水浸出等が挙げられ、貴金属回収の際に不純物となる銅、テルルの除去のために硫酸浸出、さらにセレンの除去のために塩酸浸出をすることが好ましい。
(イ)上記塩酸浸出後液とジアルキルカルビトール、メチルイソブチルケトン及びイソプロピルエーテルの群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(A)とを接触させて金を抽出するか、金を還元析出させて除去してもよい。溶剤(A)のジアルキルカルビトールとしては金に対して非常に分配係数が大きく、また高い選択抽出性を有するという理由でジブチルカルビトール(DBC)が好ましい。又、上記塩酸浸出後液にシュウ酸等を加えて金を還元して析出させて除去してもよい。
(ロ)浸出後液又は上記工程(イ)の処理液と亜硫酸ガス、ヒドラジン、水素化ホウ素及び水素化ホウ素ナトリウムの群から選ばれた少なくとも一種の還元剤(B)とを接触させてセレン及び/又はテルルを還元回収する。還元剤(B)としては、液中に共存する酸類を消費せず、安価であり、かつ比較的入手が容易である亜硫酸ガスが好ましい。
(ハ)上記工程(ロ)の還元残渣を塩酸浸出した液(金及び/又は銅並びにセレン及び/又はテルルを除去した残液)とジアルキルスルフィド(DAS)、オキシム類及びアミン類の群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(C)とを接触させてパラジウムを抽出回収する。
工程(ハ)の処理液中の塩酸濃度は、好ましくは3モル/L〜4モル/Lに調整する。この範囲であると残留する白金及びセレンの抽出を抑制し、パラジウムを選択的に抽出できる。
溶剤(C)のジアルキルスルフィドとして、ジオクチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド及びメチルデシルスルフィド、t−ブチルデシルスルフィド等が挙げられる。パラジウムに対する分配係数が大きく、また選択抽出性が高いという理由で好ましくはジヘキシルスルフィド(DHS)である。
溶剤(C)中のジアルキルスルフィドの濃度は、例えば15〜60vol%、好ましくは20〜50vol%である。20vol%未満であるとローディングキャパシティーの低下により処理量が増大し工程管理が困難となり、50vol%を超えると比重の増加により分相性が低下し、工程の管理が困難になりやはり好ましくない。又、工程(C)の原料液中のパラジウム量に対してジアルキルスルフィドが4モル倍未満では十分な抽出効果が得られない。一方、この量が10モル倍を超えると効果が飽和する。
(ニ)上記工程(ハ)の処理溶媒からパラジウムを含む溶剤(C)を塩酸水溶液によりスクラビングして随伴する不純物を塩酸性排水(I1)として除去した後、アンモニア水で逆抽出すると、パラジウムはジクロロアンミンパラジウム錯体([Pd(NH32]Cl2)としてアンモニア水溶液中に溶解して得られる。上記アンミンパラジウム溶液へ塩酸水溶液を加え、ジクロロアンミンパラジウムを晶析させてろ過する際に、ろ液として排水(I2)が発生する。得られたパラジウム晶析塩は、さらに精製するため再度晶析を行う。この際に発生したジクロロアンミンパラジウム再晶析塩をろ過し、加熱溶解してスポンジ状パラジウムを得る。このパラジウム再晶析のろ過に伴い、ろ液として排水(I3)が発生する。
(ホ)上記工程(ハ)の処理液(パラジウムを除去した残液)とリン酸トリブチル(TBP)とを接触させて白金をTBP中に抽出する。この場合、パラジウムを除去した残液の塩酸濃度を5規定程度に調整してリン酸トリブチルと接触させることによりビスマスの抽出を抑制して白金の抽出を促すことができる。抽出後の残液として排水(II)が発生する。
抽出された白金を含むリン酸トリブチルは塩酸でスクラビングし、リン酸トリブチルに含有されるCu、Bi、Se、Pb、Pt等の不純物を塩酸性排水(III)中に移動させる。スクラビングする塩酸水溶液の濃度を4〜5.5規定とすると白金に随伴して抽出されたビスマスイオンを塩酸性排水に移行させてリン酸トリブチル中の白金イオンから分離することができる。
塩酸で洗浄したリン酸トリブチルに水、又は稀釈度の高い酸若しくはアルカリ液を接触させ、塩化白金酸を水相に逆抽出して塩化白金酸水溶液を得る。
得られた塩化白金酸水溶液をアルカリ性に調整し、更に中和して生じるCu、Te等を含む沈殿物をろ過し、得られたろ液へ塩酸を添加して濃度調整し、塩化アンモニウムと接触させて沈殿した塩化白金酸アンモニウムをろ過して得る。ろ液は排水(IV)となる。得られた塩化白金酸アンモニウムを大気下で焙焼することによりスポンジ状白金が得られる。
本発明の水溶液は、上記排水(I)〜(IV)の他に、固形物、有機相の洗浄排水等を含んでもよい。
水溶液の白金族元素総量は、上記銅製錬工程において副生する貴金属含有残滓の塩酸浸出後液の(イ)〜(ホ)処理工程を経ることにより、通常4.0g/L以下となる。
水溶液の組成は、Ptが例えば0.01〜2.0g/L、好ましくは0.1〜0.5g/L、Pdが例えば0.1〜2.0g/L、好ましくは0.1〜0.5g/Lである。
更に、この水溶液中にはセレンが例えば0.01〜10.0g/L、好ましくは0.01〜3.0g/L共存する。
本発明は、上記水溶液へ、含まれている白金量の好ましくは10〜40反応当量、更に好ましくは20〜30反応当量の銅粉を添加し、白金族元素、セレン、その他の不純物の群から選ばれた少なくとも一種を沈殿物とし、ろ過して回収する。
銅粉以外にも、亜硫酸ガス、ヒドラジン、水素化ホウ素及び水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤がいくつも報告されているが、他の試薬では、液中に含まれる白金族金属の濃度がすでに十分に低いため、白金族金属の還元と同時にセレンおよびその他の不純物も還元されてしまい、発生する還元残渣中のセレン品位が高くなってしまう。
それに対して、本発明は銅粉を上記反応当量を添加し、還元を行うことにより、白金族金属の9割以上を回収するとともに、セレンの6割以上を液中に残すことができる。
ここで、反応当量とは水溶液中に含まれる白金族金属の各元素のうち白金に対する化学反応当量を意味する。10反応当量未満であると目的とする白金族元素の回収率が低下し、一方、40反応当量を超えても更なる効果は期待できないため好ましくない。
銅粉の粒子径は、例えば−350メッシュ〜350メッシュであるものが好ましい。本発明で使用できる銅粉は例えば、株式会社ジャパンエナジーから商品名「C‐SP」として販売されている。
銅粉を添加する際の上記水溶液の温度は、5℃〜50℃、好ましくは5℃〜35℃の常温域とする。50℃を超えるとPt及びPdの逆溶解が起こり回収率が低くなる。
銅粉を添加後の攪拌時間は、好ましくは1〜3時間である。
上記銅粉の添加方法は本発明を限定するものではないが、例えば、攪拌しながら連続的又は逐次的に投入してもよい。
晶析が完了した時点でろ過すると白金族元素、セレンおよびその他の不純物を含む固形物が得られる。得られた固形物は定法により分離、精製してそれぞれ製品とすることが出来る。
以下実施例により本発明をより詳しく説明する。
実施例1
白金晶析後のろ液として得られた白金(0.16g/L)、パラジウム(0.02g/L)、セレン(3.25g/L)及びテルル(0.01g/L)を含む塩酸性元液500ml(pH0.1、塩酸濃度3.7規定)へ株式会社ジャパンエナジー製銅粉商品名「C‐SP」(325メッシュ)を1.0g(Pt反応当量の19倍)添加した。常温(約20℃)で3時間撹拌後、ろ過・乾燥して得られた固形分(還元残渣)は1.25gであった。元液中からのそれぞれの元素の回収結果を表1に示す。
実施例2
温度を80℃、攪拌時間を1時間にした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
Figure 2007270255
表1より白金基準で19反応当量の銅粉を80℃で添加した実施例2は、常温(約20℃)で銅粉を添加した実施例1に比べ白金及びパラジウムの回収率が劣った。
貴金属含有残滓から白金族元素等を回収する工程を示すフローチャートである。

Claims (6)

  1. 白金族元素、セレン及びその他の不純物を少なくとも一種類以上含み、白金族元素総量で4.0g/L以下含む水溶液へ銅粉を添加して、該水溶液中から白金族金属を選択的に回収する方法。
  2. 水溶液の組成は、Pt濃度が2.0g/L以下、Pd濃度が2.0g/L以下であり、さらに共存するセレン濃度が10.0g/L以下である請求項1に記載の方法。
  3. 水溶液中のセレンの濃度が、共存する白金族金属のうち、特に白金の濃度に対して、5倍から100倍である請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 含まれている白金族金属総量の10〜40反応当量の銅粉を添加する請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
  5. 銅粉を添加する際の上記水溶液の温度は5℃〜50℃である請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
  6. 上記水溶液は、銅製錬工程において副生する貴金属含有残滓を硫酸及び/又は塩酸で浸出して浸出後液について行われる下記(イ)〜(ホ)いずれかの工程から発生する、請求項1〜5いずれか1項記載の方法:
    (イ)浸出後液とジアルキルカルビトール、メチルイソブチルケトン及びイソプロピルエーテルの群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(A)とを接触させて金を溶媒抽出するか、金を還元析出させて除去する工程。
    (ロ)浸出後液又は上記工程(イ)の処理液と亜硫酸ガス、ヒドラジン、水素化ホウ素及び水素化ホウ素ナトリウムの群から選ばれた少なくとも一種の還元剤(B)とを接触させてセレン及び/又はテルルを還元回収する工程。
    (ハ)上記工程(ロ)の還元残渣を塩酸浸出した液とジアルキルスルフィド(DAS)、オキシム類及びアミン類の群から選ばれた少なくとも一種の溶剤(C)とを接触させてパラジウムを抽出回収する工程。
    (ニ)上記工程(ハ)の処理溶媒からアンモニア水溶液によりパラジウムを逆抽出し、このパラジウム含有アンモニア水溶液からパラジウムを晶析し、これを濾過する工程、並びに晶析したパラジウムを分離してアンモニア水溶液に再溶解し、このパラジウム含有アンモニア水溶液からパラジウムを再晶析し、これを濾過するパラジウム精製工程。
    (ホ)上記工程(ハ)のパラジウム抽出処理後液とリン酸トリブチルとを接触させて白金を抽出し、白金を含むリン酸トリブチルと水又は稀釈度の高い酸もしくはアルカリ液の群から選ばれた一種類の溶液とを接触させ白金を逆抽出する工程、並びにその白金を含む逆抽出後水溶液と塩化アンモニウムとを接触させて、沈殿した塩化白金酸アンモニウムをろ過して得る工程。
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