JP2007262233A - 重合体ラテックスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】分散安定性に優れ、しかも、種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に、高い耐水性および耐傷性(微小面積における耐剥離性)を有する重合体ラテックスを提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスであって、前記アルカリ可溶性共重合体が、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られ、かつ、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率が、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%である重合体ラテックス。
【選択図】なし
【解決手段】アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスであって、前記アルカリ可溶性共重合体が、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られ、かつ、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率が、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%である重合体ラテックス。
【選択図】なし
Description
本発明は、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスおよびその製造方法に関し、分散安定性に優れ、しかも、種々の基材に対して良好な付着性を有し、フィルム化した際に、高い耐水性および耐傷性(微小面積における耐剥離性)を有する重合体ラテックスおよびその製造方法に関する。
通常、重合体ラテックスは、乳化剤の存在下、水媒体中で単量体を重合して得られている。しかしながら、このようにして得られる重合体ラテックスをフィルム化すると、耐水性に劣るという問題がある。この問題を解決するために、分散安定化剤として、乳化剤に代えてアルカリ可溶性共重合体の中和物を使用することが提案されている。
アルカリ可溶性共重合体は、アルカリの作用により水媒体に可溶となる共重合体であり、通常、塩基性物質で中和することにより、水溶液として使用される。このようなアルカリ可溶性共重合体として、たとえば、特許文献1には、疎水性単量体単位を主成分とする重合体分子の片末端にラジカル重合性基を有するマクロモノマーと、カルボキシル基、スルホ基もしくはリン酸基を有するラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体と、を共重合して得られるグラフト共重合体が開示されている。また、特許文献2には、シリコーン分子の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と、その他のラジカル重合性単量体と、を共重合して得られるグラフト共重合体が開示されている。
しかしながら、特許文献1,2のように、特定のマクロモノマーを用いて得られるアルカリ可溶性共重合体を、分散安定化剤として用いた場合には、得られるフィルムの耐水性は、改善されるものの、基材(たとえば、プラスチックフィルム、金属基材)との付着性に劣るという問題があった。
また、近年、このような重合体ラテックスは、水分散液として用いられる以外に、用途によっては、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒中に分散して用いられるようになってきている。そのため、このような重合体ラテックスにおいては、耐水性、基材との付着性などの特性に加えて、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に対する分散性が優れていることも求められている。
本発明の目的は、分散安定性に優れ、しかも、種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に、高い耐水性および耐傷性(微小面積における耐剥離性)を有する重合体ラテックスおよびその製造方法を提供することである。また、本発明は、このような重合体ラテックスを用いて得られるフィルムを提供することも目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスにおいて、前記アルカリ可溶性共重合体として、ポリエチレングリコールと、特定量のエチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られる共重合体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスであって、
前記アルカリ可溶性共重合体が、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られ、
かつ、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率が、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%である重合体ラテックスが提供される。
好ましくは、前記単量体100重量部に対する、前記アルカリ可溶性共重合体の中和物の比率が、10〜40重量部である。
前記アルカリ可溶性共重合体が、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られ、
かつ、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率が、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%である重合体ラテックスが提供される。
好ましくは、前記単量体100重量部に対する、前記アルカリ可溶性共重合体の中和物の比率が、10〜40重量部である。
また、本発明によれば、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合してアルカリ可溶性共重合体を得る工程と、
前記アルカリ可溶性共重合体を、塩基を用いて中和して、中和物水溶液を得る工程と、
前記中和物水溶液の存在下で、単量体を重合する工程と、を有し、
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率を、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%とする重合体ラテックスの製造方法が提供される。
前記アルカリ可溶性共重合体を、塩基を用いて中和して、中和物水溶液を得る工程と、
前記中和物水溶液の存在下で、単量体を重合する工程と、を有し、
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率を、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%とする重合体ラテックスの製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記いずれかの重合体ラテックスを用いて得られるフィルムが提供される。
本発明によれば、分散安定性に優れ、しかも、種々の基材に対して良好な付着性を有し、しかもフィルム化した際に、高い耐水性および耐傷性を有する重合体ラテックスおよびその製造方法を提供することができる。
特に、本発明により得られる重合体ラテックスは、水分散液とした場合の他、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散した場合においても、良好な分散性を実現することができる。そのため、このような混合溶媒中に分散して使用される用途に好適に用いることができる。しかも、本発明により得られる重合体ラテックスは、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒中においては、ラテックス粒子の状態で分散した状態となる一方で、水溶性有機溶剤のみに対しては、溶解するという性質を有する。そのため、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散して用いた場合でも、付着性、耐水性および耐傷性に優れたフィルムを得ることができる。
以下、本発明に係る重合体ラテックス、および本発明の重合体ラテックスを用いて得られるフィルムについて、詳細に説明する。
本発明の重合体ラテックスは、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下で、単量体(B)を重合することにより製造されるものである。
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物
本発明で用いられるアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物は、アルカリ可溶性共重合体を、塩基性物質で中和することによって得られるものである。
本発明で用いられるアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物は、アルカリ可溶性共重合体を、塩基性物質で中和することによって得られるものである。
本発明に係るアルカリ可溶性共重合体(A)は、ポリエチレングリコール(a1)と、特定量のエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)と、その他のエチレン性不飽和単量体(a3)と、を重合して得られるものである。
ポリエチレングリコール(a1)としては、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が500〜30,000のものが好ましく、より好ましくは1,000〜10,000である。分子量が小さすぎると、分散安定効果が低くなる場合がある。一方、分子量が大きすぎると、重合時の粘度が高くなり、重合が困難となる場合がある。
ポリエチレングリコール(a1)の使用量は、アルカリ可溶性共重合体(A)を構成する全単量体100重量%に対して、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは3〜20重量%である。ポリエチレングリコール(a1)の量が少なすぎると、分散安定効果が低くなり、重合時に凝集物が発生し、得られるフィルムの付着性や耐水性、耐傷性が悪化する場合がある。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散した場合に分散性が低下する場合がある。一方、多すぎると、重合時の粘度が高くなり、重合が困難となり、得られるフィルムの付着性や耐水性、耐傷性が悪化する場合がある。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)としては、特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の多価カルボン酸無水物;などを挙げることができる。これらの単量体は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体のうち、(メタ)アクリル酸〔メタクリル酸および/またはアクリル酸の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕等のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)の使用量は、アルカリ可溶性共重合体(A)を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%であり、好ましくは8〜25重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)が少なすぎると、得られる共重合体がアルカリに可溶とならず、後述する単量体(B)の重合安定性が著しく劣る結果となる。一方、多すぎると、分散安定効果が低下する場合がある。
その他のエチレン性不飽和単量体(a3)としては、ポリエチレングリコール(a1)やエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)と重合可能な単量体であれば良く、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリルアミド単量体;エチレン性不飽和ニトリル単量体;等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド単量体としては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。
これらは、二種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリルアミド単量体としては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。
これらは、二種類以上を併用してもよい。
その他のエチレン性不飽和単量体(a3)の使用量はアルカリ可溶性共重合体(A)を構成する全単量体100重量%に対して、好ましくは69〜94重量%であり、より好ましくは72〜89重量%である。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)、その他のエチレン性不飽和単量体(a3)のうち、水への溶解度が比較的低い単量体、すなわち、20℃における水100gへの溶解度が0.2gより低い単量体の使用量は、30重量%以下とすることが好ましい。この量が多すぎると、得られる共重合体がアルカリに可溶とならなくなる場合がある。
アルカリ可溶性共重合体(A)は、上記したポリエチレングリコール(a1)と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)と、その他のエチレン性不飽和単量体(a3)と、を溶剤中で重合することによって得ることができる。このようにして得られるアルカリ可溶性共重合体(A)は、ポリエチレングリコール(a1)を主鎖とし、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)と、その他のエチレン性不飽和単量体(a3)と、を側鎖とするグラフト重合体であることが好ましい。グラフト重合体とすることにより、本発明の効果をより高めることができる。
重合に際しては、ポリエチレングリコール(a1)と、各単量体(a2、a3)と、を重合開始前に反応器に一括して添加し、その後重合させる方法を採用しても良いし、あるいは、重合開始前には一部だけ添加しておき、重合開始後に分割添加または連続添加していく方法を採用しても良い。なお、分割添加あるいは連続添加する場合においては、添加量および添加時期は適宜調整すれば良く、たとえば添加量を均等にしたり、また、添加時期を一定としたり、あるいは、添加量や添加時期を重合の進行段階に応じて変えることもできる。
また、ポリエチレングリコール(a1)と、各単量体(a2、a3)とを反応器に添加する際には、これらを予め混合しておき、混合物として、添加する方法を採用することが好ましい。混合物として添加することにより、得られるアルカリ可溶性共重合体における、高分子鎖中のエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a2)の連鎖分布の均一化を図ることができる。
なお、重合に用いる溶剤としては、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;が好適に使用される。なかでも、得られたアルカリ可溶性共重合体は、水系媒体中で高分子乳化剤として使用されるため、水への溶解性が高いアルコール類、セロソルブ類、ケトン類、エーテル類などがより好ましく用いられる。
また、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸メチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、シクロヘキサン、水などその他の溶剤も必要に応じて使用することができる。
また、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸メチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、シクロヘキサン、水などその他の溶剤も必要に応じて使用することができる。
アルカリ可溶性共重合体(A)を重合するための重合開始剤としては、特に限定されず、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、その種類によって異なるが、アルカリ可溶性共重合体(A)を構成する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.2〜15重量部、より好ましくは0.8〜5重量部である。
また、これらの重合開始剤は還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。この場合に用いる還元剤としては、特に限定されず、たとえば、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、その種類によって異なるが、重合開始剤1重量部に対して、好ましくは0.03〜10重量部である。
アルカリ可溶性共重合体(A)の製造に際しては、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、連鎖移動の効率という観点より、メルカプト基を有する化合物が好ましい。その中でも、炭素数20以下の化合物であるn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸等が特に好ましい。
連鎖移動剤を使用する場合、その添加量は、アルカリ可溶性共重合体(A)を構成する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜3.0重量部、より好ましくは0.5〜2.0重量部である。連鎖移動剤の添加量が少なすぎると、中和後の粘度が高くなり、取扱いが困難となる傾向にある。一方、多すぎると、得られる重合体の分子量が著しく低下し、分散安定化剤として機能しなくなる。連鎖移動剤を重合系に添加する方法は、特に限定されず、一括添加する方法を採用しても良いし、あるいは、断続的にまたは連続的に添加する方法を採用しても良い。
アルカリ可溶性共重合体(A)を製造する時の重合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃である。
そして、上記のようにして製造されるアルカリ可溶性共重合体(A)を、塩基性物質で中和することにより、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物を得ることができる。
アルカリ可溶性共重合体(A)を中和するために用いる塩基性物質としては、特に限定されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;等や、これらの混合物が用いられる。これらのうち、アンモニアが好適である。
アルカリ可溶性共重合体(A)を中和するために用いる塩基性物質としては、特に限定されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;等や、これらの混合物が用いられる。これらのうち、アンモニアが好適である。
なお、本発明で用いられるアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の中和度は、特に限定されず、通常、その中和度(エチレン性不飽和酸単量体のモル当量に対する塩基性物質のモル当量)が70%以上、好ましくは95%以上である。
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物存在下における、単量体(B)の重合
次いで、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下で、単量体(B)を重合することにより、本発明の重合体ラテックスを得る。
アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で重合させるための単量体(B)としては、特に限定されないが、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリルニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アリルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチル等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性単量体等が挙げられる。これらの単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
次いで、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下で、単量体(B)を重合することにより、本発明の重合体ラテックスを得る。
アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で重合させるための単量体(B)としては、特に限定されないが、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリルニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アリルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチル等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性単量体等が挙げられる。これらの単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記各単量体のなかでも、得られる重合体が、水溶性有機溶媒への溶解性が高いという点より、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体が好ましい。
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と、この中和物の存在下で重合する単量体(B)との比率は、次のような範囲とすることが好ましい。すなわち、単量体(B)100重量部に対して、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の比率を、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部とする。アルカリ可溶性共重合体の中和物が少なすぎると、単量体の分散安定効果が低くなり、凝集物が発生し、重合体ラテックスが安定的に得られなくなる場合がある。一方、多すぎると、得られる重合体ラテックスの粘度が高くなり、取扱いが困難となったり、得られるフィルムの耐水性が悪化してしまう場合がある。
本発明の重合体ラテックスは、上記した単量体(B)を水媒体中で、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物の存在下に重合することによって得ることができる。この際、アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と、単量体(B)とを、重合開始前に反応器に一括して添加し、その後重合させる方法を採用しても良いし、重合開始前に中和物および単量体を一部だけ添加しておき、重合開始後に分割添加または連続添加していく方法を採用しても良い。なお、分割添加あるいは連続添加する場合においては、添加量および添加時期は適宜調整すれば良く、たとえば添加量を均等にしたり、また、添加時期を一定としたり、あるいは、これらを重合の進行段階に応じて変えることもできる。
アルカリ可溶性共重合体(A)の中和物と単量体(B)とは、それぞれ別々に反応器に添加しても良いし、あるいは、これらを予め水に分散させ、分散体として、反応器に添加しても良い。アルカリ可溶性共重合体の中和物と単量体とを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に開始するのが望ましい。単量体のみを、先に多量に添加すると、凝集物が発生し易くなる。一方、アルカリ可溶性共重合体の中和物のみを、先に多量に添加すると、重合系が増粘したり、凝集物が発生し易くなる。両者の添加終了は、必ずしも同時である必要はないが、ほぼ同時とすることが望ましい。
単量体(B)を重合する際の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃である。
また、本発明の重合体ラテックスのガラス転移温度は、成膜性が高く、かつ得られるフィルムの耐傷性及び耐水性のバランスに優れる点で、−30〜+60℃が好ましく、−10〜+30℃が特に好ましい。
なお、本発明の重合体ラテックスには、必要に応じて、各種無機顔料を含有させて水性塗料としても良い。このような無機顔料としては特に限定されないが、たとえば、クレイ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、シリカ、雲母などが挙げられる。無機顔料の含有量は、特に限定されないが、重合体ラテックス中に含有される固形分100重量部に対して、好ましくは100〜400重量部、より好ましくは150〜300重量部である。本発明の重合体ラテックスによれば、無機顔料を含有させて水性塗料とした場合においても、分散性、貯蔵安定性、さらには抑泡性に優れた塗料を得ることができる。
このようにして得られる本発明の重合体ラテックスは、刷毛塗り法、浸漬法、スプレー法、ロールコータ法、ドクターブレード法などにより、各種基材(たとえば、紙、プラスチックフィルム、無機基材、金属基材等)上に塗布し、その後、室温下または温風で乾燥させることにより、フィルム化することができる。このようにして得られるフィルムは、各種基材との付着性が高く、耐水性および耐傷性に優れているため、このような性能が要求される各種用途に好適に用いることができる。
特に、本発明により得られる重合体ラテックスは、水分散液とした場合の他、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散した場合においても、良好な分散性を有する。そのため、このようにフィルム化する際には、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散した状態として、各種基材上に塗布、乾燥し、フィルム化する方法を採用することもできる。そして、この場合においても、各種基材との付着性が高く、耐水性および耐傷性に優れたフィルムを得ることができる。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、重合体ラテックス、および重合体ラテックスを用いて得られるフィルムの評価は下記の方法により行った。
保存安定性試験(水と水溶性有機溶剤とからなる混合溶媒に対する安定性)
まず、イオン交換水:50部に、グリセリン:10部、2−ピロリドン:10部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール465、エア・プロダクツ社製):1部、ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量 約80,000、Aldrich Chemical社製):0.5部を混合して、保存安定性試験に用いるための溶剤水溶液を得た。
一方、これとは別に、得られた重合体ラテックスにイオン交換水を添加して、固形分濃度を5%に調整した。
そして、固形分濃度を5%に調整した重合体ラテックスに、上記にて調製した溶剤水溶液を添加して、保存安定性試験用試料を作製した。本実施例では、重合体ラテックスの固形分1部に対して、溶剤水溶液50部を添加した。
まず、イオン交換水:50部に、グリセリン:10部、2−ピロリドン:10部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール465、エア・プロダクツ社製):1部、ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量 約80,000、Aldrich Chemical社製):0.5部を混合して、保存安定性試験に用いるための溶剤水溶液を得た。
一方、これとは別に、得られた重合体ラテックスにイオン交換水を添加して、固形分濃度を5%に調整した。
そして、固形分濃度を5%に調整した重合体ラテックスに、上記にて調製した溶剤水溶液を添加して、保存安定性試験用試料を作製した。本実施例では、重合体ラテックスの固形分1部に対して、溶剤水溶液50部を添加した。
得られた保存安定性試験用試料を70℃のオーブンに10日間放置し、ラテックスの平均粒子径を光散乱法粒度分布計(マイクロトラック、日機装(株)製)により測定し、放置前後のラテックスの平均粒子径の変化を調べ、下記の基準に従って評価した。放置前後における粒子径の変化が少ないほど、粒子の凝集が少なく、保存安定性に優れていることになる。
○:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が30nm以内である。
△:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が30nmを超え、60nm以下である。
×:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が60nmを超える。
○:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が30nm以内である。
△:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が30nmを超え、60nm以下である。
×:放置前後におけるラテックスの平均粒子径の差が60nmを超える。
溶解性(有機溶剤に対する溶解性)
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、枠付きガラス板に流延し、その後、25℃で4日間静置してフィルムとした。次いで、形成したフィルムから、約2gのサンプルを切り出し、グリセリン:10gと2−ピロリドン:10gとの混合溶液に24時間浸漬した。浸漬後、フィルムが完全に溶解しているか否かを、下記の基準で目視にて判定した。
○:フィルムが完全に溶解した。
×:フィルムか完全に溶解せず、フィルム形状が残っていた。
なお、重合体ラテックスを、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散させて用いる場合においては、有機溶剤のみに対しては、高い溶解性を有することが、得られるフィルムを良好に形成できるという点より好ましい。そのため、本実施例では、有機溶剤に対し溶解するものを良好とした。
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、枠付きガラス板に流延し、その後、25℃で4日間静置してフィルムとした。次いで、形成したフィルムから、約2gのサンプルを切り出し、グリセリン:10gと2−ピロリドン:10gとの混合溶液に24時間浸漬した。浸漬後、フィルムが完全に溶解しているか否かを、下記の基準で目視にて判定した。
○:フィルムが完全に溶解した。
×:フィルムか完全に溶解せず、フィルム形状が残っていた。
なお、重合体ラテックスを、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散させて用いる場合においては、有機溶剤のみに対しては、高い溶解性を有することが、得られるフィルムを良好に形成できるという点より好ましい。そのため、本実施例では、有機溶剤に対し溶解するものを良好とした。
付着性
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、モルタル板、PVC板、PET板、ABS板およびアルミ板上に、100g/m2 の量で塗布し、室温で24時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。次いで、得られたフィルムについて、JIS K5600に準拠したクロスカット法により付着性を評価した。具体的には、まず、得られたフィルムに、カッターナイフにより塗装膜上に1mm×1mmの大きさの方眼を合計100個刻み付けた。次いで、得られた碁盤目に25mm巾のセロハンテープを十分圧着して貼り付け、その後、セロハンテープを引き剥がした。その結果、欠落せずに残存する目の数を計測し、以下の基準で評価した。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜80個
×:79個以下
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、モルタル板、PVC板、PET板、ABS板およびアルミ板上に、100g/m2 の量で塗布し、室温で24時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。次いで、得られたフィルムについて、JIS K5600に準拠したクロスカット法により付着性を評価した。具体的には、まず、得られたフィルムに、カッターナイフにより塗装膜上に1mm×1mmの大きさの方眼を合計100個刻み付けた。次いで、得られた碁盤目に25mm巾のセロハンテープを十分圧着して貼り付け、その後、セロハンテープを引き剥がした。その結果、欠落せずに残存する目の数を計測し、以下の基準で評価した。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜80個
×:79個以下
耐傷性
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、PVC基板上に、100g/m2 の量で塗布し、室温で24時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。そして、S形摩擦試験機(JIS K5701−1に準拠)の摺動子に再生紙をセットし、重り無し(摺動子本体780g/(5cm×5cm))の状態で、フィルム表面を摺動子にセットした再生紙により10往復摩擦した。そして、摩擦した後の状態を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:キズが全く観察されず、耐スクラッチ性良好。
○:キズが数本見られるが、実用上問題無し。
△:キズが10数本程度みられ、実用限界。
×:キズが無数にあり、実用不可。
まず、固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、PVC基板上に、100g/m2 の量で塗布し、室温で24時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。そして、S形摩擦試験機(JIS K5701−1に準拠)の摺動子に再生紙をセットし、重り無し(摺動子本体780g/(5cm×5cm))の状態で、フィルム表面を摺動子にセットした再生紙により10往復摩擦した。そして、摩擦した後の状態を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:キズが全く観察されず、耐スクラッチ性良好。
○:キズが数本見られるが、実用上問題無し。
△:キズが10数本程度みられ、実用限界。
×:キズが無数にあり、実用不可。
重合体ラテックスフィルムの耐水性
固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、ガラス板上に100g/m2 の量で塗布し、乾燥することによりフィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿した。次いで、得られたフィルム(10cm×10cm)について、水道水に23℃、10日間浸し、重合体ラテックスフィルムの耐水性試験を行った。ブリスター(水ぶくれ)の数に基づいて、以下の通りに評価した。ブリスターの数が少ない程、耐水性に優れている。
◎:ブリスター0個(変化なし)
○:ブリスター1〜5個
△:ブリスター6〜15個
×:ブリスター16〜20個
××:ブリスター21個以上
固形分濃度を30%に調整した重合体ラテックスを、ガラス板上に100g/m2 の量で塗布し、乾燥することによりフィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿した。次いで、得られたフィルム(10cm×10cm)について、水道水に23℃、10日間浸し、重合体ラテックスフィルムの耐水性試験を行った。ブリスター(水ぶくれ)の数に基づいて、以下の通りに評価した。ブリスターの数が少ない程、耐水性に優れている。
◎:ブリスター0個(変化なし)
○:ブリスター1〜5個
△:ブリスター6〜15個
×:ブリスター16〜20個
××:ブリスター21個以上
実施例1
アルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物の調製
メタクリル酸メチル:43.5部、メタクリル酸:20.8部、アクリル酸メチル:19.1部、ポリエチレングリコール(PEG#1000、分子量1000、日本油脂(株)製):16.6部およびn−ドデシルメルカプタン:1.5部を撹拌して混合液を調製した。一方、内部を窒素置換した攪拌機付き反応器に、イソプロパノール:120部を仕込み、その後、80℃に加熱し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:1部を反応器に添加した。そして、80℃に保持された反応器に、上記にて調製した混合液を3時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。混合液の添加を終了した後、さらに90分間80℃に保持して、アルカリ可溶性共重合体(A1)を得た。次いで、得られたアルカリ可溶性共重合体(A1)に、イオン交換水と、共重合体を構成するメタクリル酸と当モル量となるように28%のアンモニア水と、を添加後、固形分濃度を調整して、46%のアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物水溶液を得た。
アルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物の調製
メタクリル酸メチル:43.5部、メタクリル酸:20.8部、アクリル酸メチル:19.1部、ポリエチレングリコール(PEG#1000、分子量1000、日本油脂(株)製):16.6部およびn−ドデシルメルカプタン:1.5部を撹拌して混合液を調製した。一方、内部を窒素置換した攪拌機付き反応器に、イソプロパノール:120部を仕込み、その後、80℃に加熱し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:1部を反応器に添加した。そして、80℃に保持された反応器に、上記にて調製した混合液を3時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。混合液の添加を終了した後、さらに90分間80℃に保持して、アルカリ可溶性共重合体(A1)を得た。次いで、得られたアルカリ可溶性共重合体(A1)に、イオン交換水と、共重合体を構成するメタクリル酸と当モル量となるように28%のアンモニア水と、を添加後、固形分濃度を調整して、46%のアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物水溶液を得た。
重合体ラテックスの製造
メタクリル酸メチル:40部、メタクリル酸ブチル60部を混合することにより、単量体(B)の混合物を得た。そして、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物水溶液:54.3部(固形分換算で25部)と、単量体(B)の混合物:100部と、からなる混合液を調製した。一方、これとは別に、反応器にイオン交換水:80部を仕込み、80℃に加熱し、4.3%過硫酸アンモニウム水溶液:47部を反応器に添加した。次いで、上記にて調製したアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物と単量体(B)とからなる混合液を、3時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。混合液の添加を終了した後、さらに2時間重合させて、最後に30℃に冷却して、固形分濃度35%、pH7.3の重合体ラテックスを得た。
メタクリル酸メチル:40部、メタクリル酸ブチル60部を混合することにより、単量体(B)の混合物を得た。そして、上記にて得られたアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物水溶液:54.3部(固形分換算で25部)と、単量体(B)の混合物:100部と、からなる混合液を調製した。一方、これとは別に、反応器にイオン交換水:80部を仕込み、80℃に加熱し、4.3%過硫酸アンモニウム水溶液:47部を反応器に添加した。次いで、上記にて調製したアルカリ可溶性共重合体(A1)の中和物と単量体(B)とからなる混合液を、3時間かけて連続添加することにより、単量体を重合させた。混合液の添加を終了した後、さらに2時間重合させて、最後に30℃に冷却して、固形分濃度35%、pH7.3の重合体ラテックスを得た。
そして、得られた重合体ラテックス、およびこの重合体ラテックスを用いて得られたフィルムについて、上記各方法により、諸特性を測定した。得られた結果を表3に示す。
実施例2,3
単量体として、表1に示す各成分を、表1に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性共重合体(A2、A3)の中和物水溶液を得た。なお、アルカリ可溶性共重合体(A2、A3)の中和物水溶液は、共に、固形分濃度を、46%に調整した。
単量体として、表1に示す各成分を、表1に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性共重合体(A2、A3)の中和物水溶液を得た。なお、アルカリ可溶性共重合体(A2、A3)の中和物水溶液は、共に、固形分濃度を、46%に調整した。
そして、得られたアルカリ可溶性共重合体(A2、A3)の中和物水溶液を用い、表2に示す各成分を、表2に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2,3に係る重合体ラテックスを製造し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例1〜3
単量体として、表1に示す各成分を、表1に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性共重合体(A4、A5、A6)の中和物水溶液を得た。なお、アルカリ可溶性共重合体(A4、A5)の中和物水溶液は、固形分濃度を46%に、アルカリ可溶性共重合体(A6)の中和物水溶液は、固形分濃度を40%に、それぞれ調整した。
単量体として、表1に示す各成分を、表1に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性共重合体(A4、A5、A6)の中和物水溶液を得た。なお、アルカリ可溶性共重合体(A4、A5)の中和物水溶液は、固形分濃度を46%に、アルカリ可溶性共重合体(A6)の中和物水溶液は、固形分濃度を40%に、それぞれ調整した。
そして、得られたアルカリ可溶性共重合体(A4、A5、A6)の中和物水溶液を用い、表2に示す各成分を、表2に示す各比率で使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜3に係る重合体ラテックスを製造し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
*4 …AA−2は、片末端メタクリロイル基型ポリメチルメタクリレートマクロモノマー(東亜合成化学工業(株)製)である。
*5 …M90Gは、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業(株)製)である。
*6 …PVA−205は、ポリビニルアルコール(重合度500、(株)クラレ製)である。
表1〜3より、以下のことが確認できる。
すなわち、本発明所定のアルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合して得られた重合体ラテックスは、水と水溶性有機溶剤とからなる混合溶媒に対する安定性、および有機溶剤に対する溶解性が高く、さらには、各種基材に対する付着性、耐傷性および耐水性に優れる結果となった。
すなわち、本発明所定のアルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合して得られた重合体ラテックスは、水と水溶性有機溶剤とからなる混合溶媒に対する安定性、および有機溶剤に対する溶解性が高く、さらには、各種基材に対する付着性、耐傷性および耐水性に優れる結果となった。
一方、ポリエチレングリコールの代わりに、片末端メタクリロイル基型ポリメチルメタクリレートマクロモノマーを使用した比較例1においては、水と水溶性有機溶剤とからなる混合溶媒に対する安定性、付着性および耐傷性に劣る結果となった。
ポリエチレングリコールの代わりに、ポリビニルアルコールを使用した比較例3においては、有機溶剤に対する溶解性が低く、さらには、耐傷性に劣る結果となった。
アルカリ可溶性共重合体中のメタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)の使用量を少なくした比較例2においては、単量体(B)の重合安定性に著しく劣ってしまい、重合体ラテックスを製造することができなかった。
ポリエチレングリコールの代わりに、ポリビニルアルコールを使用した比較例3においては、有機溶剤に対する溶解性が低く、さらには、耐傷性に劣る結果となった。
アルカリ可溶性共重合体中のメタクリル酸(エチレン性不飽和カルボン酸単量体)の使用量を少なくした比較例2においては、単量体(B)の重合安定性に著しく劣ってしまい、重合体ラテックスを製造することができなかった。
Claims (4)
- アルカリ可溶性共重合体の中和物の存在下で、単量体を重合することにより得られる重合体ラテックスであって、
前記アルカリ可溶性共重合体が、ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合して得られ、
かつ、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率が、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%である重合体ラテックス。 - 前記単量体100重量部に対する、前記アルカリ可溶性共重合体の中和物の比率が、10〜40重量部である請求項1に記載の重合体ラテックス。
- ポリエチレングリコールと、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、その他のエチレン性不飽和単量体と、を重合してアルカリ可溶性共重合体を得る工程と、
前記アルカリ可溶性共重合体を、塩基を用いて中和して、中和物水溶液を得る工程と、
前記中和物水溶液の存在下で、単量体を重合する工程と、を有し、
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の比率を、前記アルカリ可溶性共重合体を構成する全単量体100重量%に対して、5〜30重量%とする重合体ラテックスの製造方法。 - 請求項1または2に記載の重合体ラテックスを用いて得られるフィルム。
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WO2014161251A1 (zh) * | 2013-04-03 | 2014-10-09 | 京东方科技集团股份有限公司 | 碱可溶树脂及其制备方法、含有其的光刻胶组合物 |
-
2006
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