JP2008031276A - フィルム印刷水性インク用樹脂及びフィルム印刷水性インク用樹脂組成物 - Google Patents

フィルム印刷水性インク用樹脂及びフィルム印刷水性インク用樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦傷性や耐水性、保存安定性、基材フィルムに対する付着性等の各特性において、従来よりも改善されたフィルム印刷用水性インクを得るためのフィルム印刷水性インク用樹脂及びフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル95〜40重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる混合界面活性剤の存在下で又は単量体混合物100重量部に対して10重量部を超え、30重量部以下のアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で、重合して得られる共重合体からなるフィルム印刷水性インク用樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィルム印刷用水性インクとして好適な樹脂及び樹脂組成物に関する。
より詳しくは、ポリエステル樹脂フィルム、塩化ビニル樹脂フィルム等の樹脂フィルムやアルミニウム板等の金属板(以下、樹脂フィルムと金属板とを総称して「樹脂フィルム等」ということがある。)への付着性に優れ、これらの樹脂フィルム等に印刷したときに優れた耐水性及び耐擦傷性を示す画像を形成することができるフィルム印刷水性インク用樹脂、及びフィルム印刷水性インク用樹脂組成物に関する。
インクジェット方式による記録は、カラープリンターを始めとして、広く使用されている。この記録方式においては、受像紙用フィルムのベースフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムや合成紙が広く用いられ、他方、インクとしては、一般に、水性インクジェットインクが用いられている。
ところが、ポリエステルフィルム等は疎水性であり、水性インク受容性が低いため、そのままでは良好な印刷ができない。このため、疎水性フィルムの表面を種々の方法で改質することが検討されてきており、代表的には、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂で被覆することが行なわれている。
これにより、インクの受容性が改良されてきたものの、印刷速度、画像の色調、耐擦傷性、基材フィルムへの付着性等、インクジェット記録方式に対する要求は、留まるところを知らず、未だ需要者の要求に十分応えることができるようにはなっていないのが現状である。
インクジェット方式による記録に対する種々の要求に対処すべく、一方では、インクジェットインクの面からの検討も行なわれている。
例えば、特許文献1には、少なくとも、水性媒体と、分散剤なしに水に分散ないし溶解する自己分散型顔料と、特定の最低造膜温度を有する樹脂と、特定の有機溶剤とを含んでなる水性インク組成物が提案されている。
しかしながら、この水性インク組成物は、普通紙、コート紙等に対しては、高い印字品質と高い光学濃度を示すものの、ポリエステル等への印刷においては、十分な性能を発揮することができない。
本発明者らは、先に、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びこれと共重合可能なその他の単量体を、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物又は共重合性界面活性剤の存在下で重合して得られる酸価が5〜120の共重合体を、塩基性物質により中和してなる重量平均分子量が8,000以上である水溶性樹脂が、水性インクに好適であることを報告した(特許文献2)。
この水溶性樹脂を用いた水性インクは、網点再現性や耐擦傷性において前進したものの、その後の検討で、その保存安定性、基材フィルムに対する付着性で改善すべき点があり、また、耐擦傷性や耐水性の点でも更に改善すべきレベルにあることが判明した。
特開2004−115589号公報 国際公開第02/32971号パンフレット
従って、本発明の目的は、耐擦傷性や耐水性、保存安定性、基材フィルムに対する付着性等の各特性において、従来よりも改善されたフィルム印刷用水性インクを得るためのフィルム印刷水性インク用樹脂及びフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定組成の単量体混合物を特定の乳化剤の存在下に重合して得られる共重合体を水性媒体に溶解してなる樹脂組成物を用いれば、上記要求に適う水性インクが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル95〜40重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる混合界面活性剤の存在下で又は単量体混合物100重量部に対して10重量部を超え、30重量部以下のアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で、重合して得られる共重合体からなるフィルム印刷水性インク用樹脂が提供される。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂において、単量体混合物が、(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル94〜40重量%、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸1〜10重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜19重量%からなるものであることが好ましい。
また、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂において、単量体混合物におけるアクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリル酸エチルの合計含有比率が、80重量%以上であることが好ましい。
更に、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂において、樹脂ラテックスの粒子径が100〜600nmの範囲にあることが好ましい。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂は、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種から形成されたフィルムに好適に適用できる。
また、本発明によれば、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂と水性媒体とを含有してなるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物が提供される。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、7.0以上のpHを有するものであることが好ましい。
また、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、着色剤を含有していてもよい。
また、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種から形成されたフィルムに好適に適用できる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂を用いて分散安定性に優れたフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を得ることができる。このフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を用いることによって、耐擦傷性や耐水性、保存安定性、基材フィルムに対する付着性等の各特性において優れたフィルム印刷用水性インクを得ることができる。
本発明のフィルム印刷用インク用樹脂は、(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル95〜40重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を重合して得られる共重合体からなる。
本発明で共重合体を得るために使用する単量体混合物は、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを、合計で5〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%含有する。
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルは、いずれかを単独で使用しても、両者を併用してもよい。
アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの量が、上記上限を超え又は上記下限を下回ると、得られる樹脂組成物は、樹脂フィルム等への付着性、耐傷性及び耐水性に劣る。
本発明で使用する単量体混合物におけるアクリル酸エチルの含有量は、40〜95重量%であることが必要であり、好ましくは45〜90重量%である。
アクリル酸エチルの量が、上記上限を超え又は上記下限を下回ると、得られる樹脂組成物は、やはり、樹脂フィルム等への付着性、耐傷性及び耐水性に劣る。
本発明で使用する単量体混合物において、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリル酸エチルの合計量は、80重量%以上であることが好ましくは、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。上記合計量が上記範囲内にあることにより、フィルム印刷水性インク用樹脂の水性媒体に対する溶解性が優れたものとなり、フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の保存安定性(水性媒体に対する安定性)並びに樹脂フィルム等に対する付着性、耐傷性及び耐水性が良好となる。
本発明において使用する単量体混合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリル酸エチル以外に、これらと共重合可能なその他の単量体を、全単量体混合物に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲で含有していてもよい。
このような単量体は、特に限定されず、その具体例としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸誘導体単量体、芳香族ビニル単量体、アクリル酸エチル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和エーテル単量体、共役ジエン単量体、カルボン酸ビニルエステル単量体等を挙げることができる。
これらの単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、特に限定されず、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテントリカルボン酸等のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;等を挙げることができる。なかでも、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸誘導体単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等を挙げることができる。
アクリル酸エチル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等を挙げることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
α,β−エチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
カルボン酸ビニルエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル等を挙げることができる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等を挙げることができる。
本発明において、共重合体を得るために使用する単量体混合物は、1〜10重量%のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を含有することが好ましい。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の量が少なすぎると、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂の水溶性が劣るという問題があり、他方、多すぎると、フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の長期保存時の粘度変化が大きく、これから得られる画像が耐擦性に劣るという問題がある。
本発明でフィルム印刷水性インク用樹脂として使用する共重合体は、上記単量体混合物を、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる混合界面活性剤又はアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で重合して得られるものである。
上記単量体混合物の重合に用いる混合界面活性剤は、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる。
ノニオン界面活性剤は、特に限定されず、その具体例として、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステルを挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤の具体例としては、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤の具体例としては、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
ノニオン界面活性剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.3〜5.0重量部であることが好ましく、0.5〜3.0重量部であることがより好ましい。この使用量が上記範囲を外れると、フィルム印刷水性インク用樹脂の水性媒体に対する溶解性が低下するとともに、これから得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の安定性が低下する恐れがある。一方、使用量が上記上限を上回る場合には、更に得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の耐水性が低下する恐れがある。
アニオン界面活性剤は、特に限定されず、その具体例として、カルボン酸塩界面活性剤、スルホン酸塩界面活性剤、硫酸エステル界面活性剤及び燐酸エステル界面活性剤を挙げることができる。
カルボン酸塩界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等を挙げることができる。
スルホン酸塩界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルアルキルスルホン酸塩等を挙げることができる。
硫酸エステル塩界面活性剤の具体例としては、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノ脂肪酸グリセリル硫酸塩、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩等を挙げることができる。
燐酸エステル塩界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等を挙げることができる。
アニオン界面活性剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.03〜3.0重量部であることが好ましく、0.05〜1.5重量部であることがより好ましく、0.1〜1.0重量部であることが更に好ましい。この使用量が上記範囲を外れると、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の樹脂フィルム等に対する付着性が低下する恐れがあり、また、上記上限を上回る場合には、更に得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の耐水性が低下する恐れがある。
本発明においては、上記混合界面活性剤を上記範囲の量で使用することが好ましく、いずれかの界面活性剤を欠くと、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の保存安定性が劣り、樹脂フィルム等に対する付着性が低下する。
本発明でフィルム印刷水性インク用樹脂として使用する共重合体は、上記単量体混合物を、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で重合することによっても得られる。
本発明において、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物とは、水溶性高分子化合物であって、分子量1,000当り、アルコール性水酸基を5〜25個含有しているものをいう。
その具体例としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物等のビニルアルコール系重合体;酢酸ビニルとアクリル酸、メタクリル酸又は無水マレイン酸との共重合体のけん化物;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉等の澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコール等を挙げることができる。中でも、工業的に品質が安定したものを入手しやすい点から、ビニルアルコール系重合体が好ましい。
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜300,000である。分子量が1,000より小さいと、分散安定効果が低くなり、逆に500,000より大きいとこれの存在下で重合するときの粘度が高くなり、重合が困難になる恐れがある。
本発明において、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、10重量部を超え、30重量部以下であることが必要であり、好ましくは、10重量部を超え、20重量部以下である。この使用量が10重量部以下であると分散安定効果が低くなるので、重合時に凝集物が発生し、逆に30重量部より多くなると、重合系の粘度が高くなり、重合が困難になる恐れがある。
本発明において、単量体混合物の重合は、混合界面活性剤及びアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の両者の存在下で行なってもよい。
単量体混合物の重合方法は、特に限定されないが、通常、重合開始剤を使用して行なう。
重合開始剤は、特に限定されず、無機過酸化物、有機過酸化物、アゾ化合物等を使用することができる。
無機過酸化物重合開始剤の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過リン酸カリウム等の過リン酸塩;過酸化水素;等を挙げることができる。
有機過酸化物重合開始剤の具体例としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド;等を挙げることができる。
アゾ化合物重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
中でも、過硫酸塩が好ましく、とりわけ、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムが好ましい。
これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤の使用量は、その種類によって異なるが、単量体100重量部に対して、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜4重量部である。
また、これらの重合開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤は特に限定されず、その具体例としては、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;等が挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
還元剤の使用量は、還元剤によって異なるが、重合開始剤1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂は、そのラテックスの平均粒子径が100〜600nm、特には100〜300nmの範囲にあることが好ましい。
平均粒子径がこの範囲内にあるとき、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の保存安定性が優れたものになる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂は、その重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲にあることが好ましく、(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)及びアクリル酸エチルを含有する単量体混合物を、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる混合界面活性剤の存在下で重合した場合にあっては、5,000〜50,000の範囲にあることが好ましく、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で重合した場合にあっては、50,000〜200,000の範囲にあることが好ましい。特に、50,000以上の高分子量を有するフィルム印刷水性インク用樹脂は、光沢性に優れる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂の製造にあたり、連鎖移動剤の使用は必須ではなく、むしろ、使用しない方が好ましい。
連鎖移動剤を使用しないことにより、得られる樹脂の分子量を高くすることができ、これにより、上述の効果を得ることができる。
所望により使用しうる連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー;メルカプタン化合物;スルフィド化合物;ニトリル化合物;チオグリコール酸エステル;β−メルカプトプロピオン酸エステル;等が挙げられる。
メルカプタン化合物の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等を挙げることができる。
スルフィド化合物の具体例としては、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等を挙げることができる。
ニトリル化合物の具体例としては、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル等を挙げることができる。
チオグリコール酸エステルの具体例としては、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸オクチル等を挙げることができる。
β−メルカプトプロピオン酸エステルの具体例としては、β−メルカプトプロピオン酸メチル、β−メルカプトプロピオン酸オクチル等を挙げることができる。
これらの中でもチオグリコール酸エステルが好ましく、チオグリコール酸オクチルがより好ましい。
これらの連鎖移動剤は一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
単量体混合物を重合するときの温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃である。重合転化率は、通常、90重量%以上、好ましくは93重量%以上、より好ましくは95%以上である。
重合後、得られるラテックスを公知の方法で凝固乾燥処理することにより、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂を得ることができる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂は、合成樹脂フィルムや金属板に対して優れた接着性を示すので、これらへの印刷に使用するフィルム印刷水性インク用樹脂組成物に好適に使用することができる。
合成樹脂フィルムとしては、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ABS樹脂フィルム等を例示することができる。
金属板としては、アルミニウム板等を例示することができる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、上記本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂と水性媒体とを含有してなる。
ここで、水性媒体とは、水及び水との混和性を有する溶媒をいう。
水性媒体として好ましいのは、後述する水溶性ないし水混和性の有機溶媒と、水と、の混合物である。両者の混合比は、10:90〜90:10が好ましく、20:80〜80:20がより好ましい。
水以外の水性媒体は、特に限定されないが、水溶性ないし水混和性の各種アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミン等の有機溶媒を使用することができる。
その具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、等のアルコール;トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリドン等のケトン、等が挙げられる。
これらの中でも、水性インクとしての使用環境を考慮すると、沸点が100℃以上のものが好ましい。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物において、水性媒体の量は、フィルム印刷水性インク用樹脂100重量部に対して、50〜2,000重量部であることが好ましく、100〜1,500重量部であることがより好ましい。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、そのpHが7.0以上であることが好ましく、7.5以上、9.0以下であることがより好ましい。
pHをこの範囲内に保つことにより、フィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、保存安定性に優れ、塗布媒体であるフィルムに対する付着性に優れ、また、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の薄膜は、耐傷性及び耐水性に優れたものとなる。
フィルム印刷水性インク用樹脂組成物のpHを上記の範囲とするためには、フィルム印刷水性インク用樹脂組成物に塩基性化合物を配合すればよい。
塩基性化合物は、特に限定されないが、アンモニア又はアミンを使用することが好ましい。
アミンとしては、第三級アミンが好ましく、その具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン等を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。
塩基性化合物としては、このほか、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の、アルカリ金属水酸化物を使用することもできる。
これらの塩基性化合物の使用量は、pHを上記範囲に設定できるように選定すればよく、特に限定されない。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、着色剤を含有するものであってもよい。
着色剤としては、水溶性染料又は水不溶性顔料を使用することができるが、画像の濃度並びに耐光性及び耐水性に優れる点で、水不溶性顔料が好ましい。
水溶性染料としては、従来公知のものを使用することができる。
水不溶性顔料としては、従来公知の無機顔料及び有機顔料を使用することができる。
無機顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等を挙げることができる。
有機顔料の具体例としては、アゾ染料;アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等の染料キレート;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック;等を使用することができる。
これらの着色剤の量は、特に限定されないが、フィルム印刷水性インク用樹脂100重量部に対して、通常、0.5〜50重量部、好ましくは1〜10重量部である。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、その他、必要に応じて、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂及び必要に応じて使用する着色剤その他の成分を水性媒体と混合することによって得ることができる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、上述の単量体混合物の重合によって得られたフィルム印刷水性インク用樹脂のラテックスを一旦、凝固乾燥して、固形のフィルム印刷水性インク用樹脂とし、これを水性媒体に溶解することによって得ることもできるが、好適には、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂を重合して得られたエマルションを水性媒体と混合することによって得ることができる。
混合の順序、混合方法や混合に用いる機器には、特に限定はない。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、合成樹脂フィルムや金属板に対して優れた接着性を示すので、これらへの印刷に好適に使用することができる。
合成樹脂フィルムとしては、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ABS樹脂フィルム等を例示することができる。
金属板としては、アルミニウム板等を例示することができる。
本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、水性インク、例えば、水性グラビアインク、水性フレキソインク、インクジェット記録用水性インクとして好適に使用できる。また、水性塗料として使用することも可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、質量基準である。
また、各特性の評価方法は以下のとおりである。
(共重合体ラテックスの平均粒子径)
共重合体ラテックスの電子顕微鏡写真に写る共重合体ラテックス粒子を無作為に300個選び、その粒子径の数平均を求める。
(フィルム印刷水性インク用樹脂のガラス転移温度)
フィルム印刷水性インク用樹脂ラテックスを、アルミ皿上に採取し、常温で乾燥後、更に40℃で真空乾燥して得たフィルム印刷水性インク用樹脂試料を得る。この試料について、高感度示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、「RDC220」)を用いて、昇温速度10℃/分で測定する。
(フィルム印刷水性インク用樹脂の分子量)
重合によって得たフィルム印刷水性インク用樹脂ラテックスを、アルミ皿上に採取し、常温で乾燥後、更に40℃で真空乾燥して得たフィルム印刷水性インク用樹脂の試料を得る。この試料について、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーション(GPC)測定により、標準ポリスチレン換算分子量として求める。
(フィルム印刷水性インク用樹脂組成物のpH)
HORIBA社製のpH METER M−12を用いて、20℃、固形分濃度12.5%の条件で測定する。
(フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の外観)
フィルム印刷水性インク用樹脂組成物を目視し、フィルム印刷水性インク用樹脂が溶解している(「可溶」)か、分散している(「分散」)か、を判定する。
(フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の保存安定性)
まず、イオン交換水50部に、グリセリン10部、2−ピロリドン10部、ノニオン系界面活性剤(エア・プロダクツ社製、商品名「サーフィノール465」)1部及びヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量=約80,000、Aldrich Chemical社製)0.5部を混合して、保存安定性試験用水性媒体を調製する。
一方、これとは別に、得られた重合体ラテックスにイオン交換水を添加して、固形分濃度を5%に調整する。
次に、固形分濃度を5%に調整した重合体ラテックス20部に、上記保存安定性試験用水性媒体50部を添加して、保存安定性試験用試料ラテックスを作成する。
得られた保存安定性試験用試料ラテックスの平均粒子径を測定し、この保存安定性試験用試料ラテックスを50℃のオーブンに10日間放置した後、再度、平均粒子径を測定する。なお、平均粒子径の測定は、光散乱法粒度分布計(日機装社製、商品名「マイクロトラック」)による。
保存安定性試験用試料ラテックスの、50℃放置前後における平均粒子径の変化を調べ、下記の基準に従って評価する。放置により保存安定性試験用試料ラテックスが凝集して平均粒子径が増大するので、放置前後における粒子径の変化が少ないほど、粒子の凝集が少なく、保存安定性に優れていることになる。
○:放置前後における保存安定性試験用試料ラテックスの平均粒子径の差が30nm以内である。
△:放置前後における保存安定性試験用試料ラテックスの平均粒子径の差が30nmを超え、60nm以下である。
×:放置前後における保存安定性試験用試料ラテックスの平均粒子径の差が60nmを超える。
この試験法による保存安定性に優れているものほど、実際のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物においても、沈殿物が少なく、保存安定性に優れていることになる。
(溶解性(有機溶剤に対する溶解性))
重合によって得たフィルム印刷水性インク用樹脂ラテックス(固形分28g相当量)を脱イオン水を用いて17%濃度に調整した。次いで、重合に用いたメタアクリル酸単量体1当量あたり、1.1当量に相当する水酸化アンモニウム(28%)1.6gを添加してpHを約8に調整する。これに、グリセリン28gと2−ピロリドン28gとの混合有機溶剤を添加・攪拌し、重合体が混合有機溶剤に対して溶解したか否かを、下記の基準で、目視にて判定する。
○:重合体が混合有機溶剤にほぼ完全に溶解しているように見え、溶液が透明である。
△:重合体が混合有機溶剤に一部溶解して、溶液がやや濁っている。
×:重合体が混合有機溶剤に溶解せず、溶液が不透明である。
なお、本発明のフィルム印刷水性インク用樹脂を、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒に分散させて用いる場合において、有機溶剤に対して高い溶解性を有することが、得られるフィルムを良好に形成できるという点より好ましい。このことから、有機溶剤に対し溶解するものを良好とする。
(樹脂フィルム等に対する付着性)
フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の固形分濃度を12.5%(アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下での重合で得たもの。以下「PVA」系という。)、16%(混合界面活性剤の存在下での重合で得たもの。以下、「乳化剤系」という。)に調整し、これを塩化ビニル樹脂板(PVC板)、ポリエステル板(PET板)、ABS樹脂板(ABS板)及びアルミニウム板上に、それぞれ、3g/mの量で塗布し、40℃で72時間放置することにより乾燥し、フィルム化する。次いで、得られたフィルムについて、JIS K5600に準拠したクロスカット法により付着性を評価する。
具体的には、まず、得られたフィルムに、カッターナイフにより塗装膜上に1mm×1mmの大きさの方眼を合計100個刻み付ける。次いで、得られた碁盤目に25mm巾のセロハンテープを十分圧着して貼り付け、その後、セロハンテープを引き剥がす。引き剥がした後、欠落せずに残存する碁盤目の数を計測し、以下の基準で評価する。この数が大きいほど、付着性に優れる。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜80個
×:79個以下
(耐傷性)
固形分濃度を12.5%(PVA系)、16%(乳化剤系)に調整したフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を、PVC板上に、3g/mの量で塗布し、室温で72時間放置することにより乾燥し、フィルム化した。そして、S形摩擦試験機(JIS K5701−1に準拠)の摺動子に再生紙をセットし、重り無し(摺動子本体780g/(5cm×5cm))の状態で、フィルム表面を摺動子にセットした再生紙により10往復摩擦する。摩擦した後の状態を目視で観察し、下記基準により評価する。
◎:キズが全く観察されず、耐傷性良好。
○:キズが数本見られるが、実用上問題なし。
△:キズが10数本程度みられ、実用限界。
×:キズが無数にあり、実用不可。
(耐水性)
固形分濃度を12.5%(PVA系)、16%(乳化剤系)に調整したフィルム印刷水性インク用樹脂組成物を、ガラス板上に3g/mの量で塗布し、乾燥することによりフィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿する。次いで、得られたフィルム(10cm×10cm)について、水道水に23℃、10日間浸漬する。このときに生じるブリスター(水ぶくれ)の数に基づいて、以下の基準で評価する。ブリスターの数が少ない程、耐水性に優れている。
◎:ブリスター 0個(変化なし)
○:ブリスター 1〜5個
△:ブリスター 6〜15個
×:ブリスター 16〜20個
××:ブリスター 21個以上
(光沢性)
フィルム印刷水性インク用樹脂組成物の固形分濃度を16%に調整し、市販の塗工紙(坪量86g/m、白紙光沢20%)上に5g/mの量で塗布し、乾燥することにより、フィルム化し、その後、23℃、湿度50%、24時間の条件で調湿する。次いで、得られたフィルムについて、グロスメーター(村上色彩社製、「GM−26D」)を用いて、入射角75°、反射角75°の条件で、塗被紙表面の光の反射率(%)を測定する。
この反射率が大きい程、白紙光沢に優れている。
(実施例1)
アクリル酸エチル80部、アクリロニトリル15部、メタクリル酸5部、平均重合度500、鹸化度約87〜89モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「PVA205」)18部及びイオン交換水180部を、単量体混合物調製容器中で、攪拌混合して、単量体混合物の分散物を調製した。
別の攪拌機付き反応器(重合器)にイオン交換水220部を仕込み、80℃に昇温し、0.5部の過硫酸アンモニウムを40部の水に溶解して得た水溶液を添加後、前記単量体混合物の分散物を2時間かけて連続添加して重合させた。連続添加終了後、80℃で90分間、後反応を継続して、固形分濃度21%のフィルム印刷水性インク用樹脂ラテックスAを得た。重合転化率は、99%以上であった。ラテックスの粒子径は150nmであった。また、フィルム印刷水性インク用樹脂(以下、単に「水性インク用樹脂」という。)Aのガラス転移温度は、23℃であり、重量平均分子量は72,600、数平均分子量は29,800であった。
ラテックスA150部に、攪拌下に、水35部、N−メチルピロリドン(NMP)63部及び28%アンモニア水溶液4.0部を、この順で、添加して、溶液状態のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物(以下、単に「水性インク用樹脂組成物」という。)Aを得た。水性インク用樹脂組成物Aの固形分濃度は12.5%であり、pHは8.0であった。
この水性インク用樹脂組成物の各特性を評価した.その結果を表1に示す。
(実施例2〜3、比較例1〜4)
単量体の組成、ポリビニルアルコールの種類及び使用量並びにイオン交換水の量等を表1に示すように変えるほかは、実施例1と同様にして、水性インク用樹脂B〜G及び水性インク用樹脂組成物B〜Gを得た。
これらについて、各特性を評価した。その結果を、表1に示す。
表1から、以下のことがわかる。
フィルム印刷水性インク用樹脂を構成する共重合体におけるアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの量が本発明で規定する範囲を下回るときは、保存安定性、溶解性及び樹脂フィルム等に対する付着性、耐傷性及び耐水性に劣るほか、光沢性も著しく低下する(比較例1)。逆に、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの量が、本発明で規定する範囲を上回るときは、保存安定性及び溶解性に劣り、塩化ビニル樹脂フィルム以外の樹脂フィルム等に対する付着性、耐傷性及び耐水性に劣る(比較例2)。
フィルム印刷水性インク用樹脂を構成する共重合体におけるアクリル酸エチルの量が本発明で規定する範囲を上回るときは、溶解性及び樹脂フィルム等に対する付着性は優れるものの、その他の特性に劣る(比較例3)。
Figure 2008031276
表1及び表2の脚注
*1:クラレ社製、商品名「PVA205」
*2:クラレ社製、商品名「PVA105」。平均重合度100。鹸化度約98〜99モル%
*3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、商品名「ラテムルE−118B」)
*4:ポリオキシエチレンセチルエーテル(花王社製、商品名「エマルゲン120」)
フィルム印刷水性インク用樹脂を構成する共重合体の重合に用いるアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の量が本発明で規定する範囲を下回るときは、得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物の保存安定性、溶解性、アルミ板以外の樹脂フィルムに対する付着性、耐傷性及び耐水性に劣る(比較例4)。
これに対して、本発明の規定を満足するフィルム印刷水性インク用樹脂から得られるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物は、保存安定性、溶解性、樹脂フィルム等に対する付着性、耐傷性、耐水性及び光沢性の全てにおいて優れている(実施例1〜3)。
(実施例4)
アクリル酸エチル75部、アクリロニトリル25部、平均重合度500、アニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、商品名「ラテムルE−118B」)0.5部及びイオン交換水63部を攪拌混合して、単量体混合物のエマルションを調製した。
別の攪拌機付き反応器(重合器)にイオン交換水82.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、商品名「ラテムルE−118B」)0.3部及びノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンセチルエーテル(花王社製、商品名「エマルゲン120」)2.0部を仕込み、80℃に昇温し、0.5部の過硫酸アンモニウムを10.6部の水に溶解して得た水溶液を添加後、前記単量体混合物の分散物を2時間かけて連続添加して重合させた。連続添加終了後、80℃で90分間、後反応を継続して、固形分濃度40%のフィルム印刷水性インク用樹脂ラテックスHを得た。重合転化率は、99%以上であった。ラテックスの粒子径は188nmであった。また、フィルム印刷水性インク用樹脂(以下、単に「水性インク用樹脂」という。)Hのガラス転移温度は、18℃であり、重量平均分子量は29,800、数平均分子量は17,400であった。
ラテックスH125部に、攪拌下に、水100部、N−メチルピロリドン(NMP)75部及び28%アンモニア水溶液0.65部を、この順で、添加して、溶液状態のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物(以下、単に「水性インク用樹脂組成物」という。)Hを得た。水性インク用樹脂組成物Hの固形分濃度は16.6%であり、pHは8.0であった。
この水性インク用樹脂組成物Hの各特性を評価した.その結果を表2に示す。
(実施例5〜6、比較例5〜8)
単量体の組成、界面活性剤の種類及び使用量並びにイオン交換水の量等を表2に示すように変えるほかは、実施例4と同様にして、水性インク用樹脂I〜N及び水性インク用樹脂組成物I〜Nを得た。
これらについて、各特性を評価した。その結果を、表2に示す。
表2から、次のようなことがわかる。
フィルム印刷水性インク用樹脂を構成する共重合体におけるアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの量が本発明で規定する範囲を外れるときは、保存安定性、溶解性及び樹脂フィルム等に対する付着性、耐傷性及び耐水性に劣るほか、光沢性も著しく低下する(比較例5及び比較例6)。
また、フィルム印刷水性インク用樹脂を構成する共重合体がアクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリル酸エチルのいずれをも含有しないときは、樹脂が溶解せず、水性インク用樹脂組成物の諸特性に劣る(比較例7)。
また、フィルム印刷水性インク用樹脂をノニオン界面活性剤のみを用いて合成したときは、保存安定性、溶解性及び耐水性は良好であるものの、光沢性が著しく劣る(比較例8)。
Figure 2008031276

Claims (9)

  1. (アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル95〜40重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる混合界面活性剤の存在下で又は単量体混合物100重量部に対して10重量部を超え、30重量部以下のアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で、重合して得られる共重合体からなるフィルム印刷水性インク用樹脂。
  2. 単量体混合物が、(アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル)5〜40重量%、アクリル酸エチル94〜40重量%、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸1〜10重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜19重量%からなるものである請求項1に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂。
  3. 単量体混合物におけるアクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリル酸エチルの合計含有比率が、80重量%以上である請求項1又は2に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂。
  4. 樹脂ラテックスの粒子径が100〜600nmの範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂。
  5. フィルムが、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種から形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂と水性媒体とを含有してなるフィルム印刷水性インク用樹脂組成物。
  7. 7.0以上のpHを有するものである請求項6に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物。
  8. 更に着色剤を含有してなる請求項6又は7に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物。
  9. フィルムが、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種から形成されたものである請求項6〜8のいずれか1項に記載のフィルム印刷水性インク用樹脂組成物。
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