以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る吐出検出装置を用いたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンク(インクタンク)を有し、各インクタンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1において、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図8中符号114として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズルが複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されており、記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられて成る印字部12によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図1に示したように、印字部12の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。
なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔印字ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。図4は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図ある。
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a),(b) に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数の液滴吐出素子53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
すなわち、本実施形態における印字ヘッド50は、複数のノズル51が記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給側のインク流入口(供給路絞り)54とが設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図4に示したように、印字ヘッド50内部には、圧力室52、ノズル流路56及び供給流路(共通液室)58等が形成されている。ノズルプレート60には、液が吐出する最後の絞り部分となるノズル51が穿設されており、ノズル51はノズル流路56を介して圧力室52と連通している。また、圧力室52は供給路絞り54を介して供給流路58と連通している。
供給流路58はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図7中符号80として記載)と連通しており、インクタンク80から供給されるインクは供給流路58を介してヘッド内の各圧力室52に分配供給される。
図4に示したように、圧力室52の一部の面(図において天面)を構成している振動板(加圧板)64には個別電極66を備えたアクチュエータ68が接合されている。なお、アクチュエータ68には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。圧力室52に対応した個別電極66に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ68が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、供給流路58から供給路絞り54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
なお、図4には図示していないが、振動板64とアクチュエータ68との境界部には共通電極(膜)がある。
また、圧力室52内には、薄膜70の変位を電気信号に変換して検出電極(膜変位検出電極)71から検出信号として取り出す圧力検出器72が配設されている。薄膜70は圧力室52の下面(アクチュエータ68が接合されている振動板64に対向する面)の一部を成しており、当該薄膜70のインク接触面と反対側の面は限られた体積を持つ空洞部73に面している。
圧力検出器72は、インクの充填によるインク体積の変化、インク圧力の変化を検出する手段として機能し、圧力室52内のインク体積、インク圧力に応じて薄膜70が変形する。この薄膜70の変形量(すなわち変位量)を電気信号に変換して取り出し、インク体積の変化やインク圧力の変化を検出する。
薄膜70の変形・変位量はインク吐出に影響しない程度の量であり、薄膜70は吐出後のインク充填時にインク充填力を発生するように初期の形状に復帰する剛性又は機構を有している。薄膜70自体の張力で自然に初期形状に復帰するようにしてもよいし、薄膜70に対して復帰力を付与する手段を設けてもよい。
復帰力を付与する手段としては、静電力や、コイル・磁石による電磁気力による力を用いることが考えられる。これらは、何れもセンサとして機能する構造を、アクチュエータとしても使うことで実現可能であり、圧力検出直後にアクチュエータに切り替えることで復帰力を付与することができる。
薄膜70による圧力検出の詳細については後述するが、アクチュエータ68駆動時のインク圧力を圧力検出器72によって検出し、その検出結果に基づいて不吐出を起こす状態であるか否か(正常に吐出される状態であるか否か)の判定が行われる。
かかる構造を有する液滴吐出素子53を図5に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってノズル51を一定のピッチdで複数配列することにより、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400npi;ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現できる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドでノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 ,51-12 , 51-13 , …51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 , …51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 , …51-36 1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 , 51-12 , …51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
印字ヘッド50の構造及びノズル配列の形態は図3乃至図5で説明した例に限定されない。例えば、図6に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列してつなぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するフルラインヘッドを構成してもよい。
〔インク供給系の構成〕
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク80は印字ヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク80の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図7のインクタンク80は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図7に示したように、インクタンク80と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ82が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
図7には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ84と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード86とが設けられている。
これらキャップ84及びクリーニングブレード86を含むメンテナンスユニット(回復装置)は、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ84は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ84を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ84で覆う。
クリーニングブレード86は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構により印字ヘッド50のノズル面50A(図4に示したノズルプレート60の表面)に摺動可能である。ノズルプレート60にインク液滴又は異物が付着した場合、図7に示したクリーニングブレード86をノズルプレート60に摺動させることでノズルプレート60表面を拭き取り、ノズルプレート60表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ84に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内やその近傍の流路内)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ84を当て、吸引ポンプ87で圧力室内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク88へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ68が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ68の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータ68を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード86等のワイパーによってノズルプレート60表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、アクチュエータ68を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図7で説明したキャップ84は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
〔制御系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース90、システムコントローラ92、画像メモリ94、モータドライバ96、ヒータドライバ98、プリント制御部100、画像バッファメモリ102、ヘッドドライバ104、メンテナンスユニット106、吐出検出制御部108等を備えている。
通信インターフェース90は、ホストコンピュータ110から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース90にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ110から送出された画像データは通信インターフェース90を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ94に記憶される。画像メモリ94は、通信インターフェース90を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ92を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ94は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ92は、通信インターフェース90、画像メモリ94、モータドライバ96、ヒータドライバ98等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ92は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ110との間の通信制御、画像メモリ94の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ114やヒータ116を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ96は、システムコントローラ92からの指示に従ってモータ114を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ98は、システムコントローラ92からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ116を駆動するドライバである。
プリント制御部100は、システムコントローラ92の制御に従い、画像メモリ94内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ104に供給する制御部である。プリント制御部100において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ104を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部100には画像バッファメモリ102が備えられており、プリント制御部100における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ102に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ102はプリント制御部100に付随する態様で示されているが、画像メモリ94と兼用することも可能である。また、プリント制御部100とシステムコントローラ92とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ104はプリント制御部100から与えられるドットデータに基づいて各色の印字ヘッド50の吐出駆動用アクチュエータ68を駆動する。ヘッドドライバ104にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース90を介して外部から入力され、画像メモリ94に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ94に記憶される。画像メモリ94に蓄えられた画像データは、システムコントローラ92を介してプリント制御部100に送られ、該プリント制御部100において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部100で生成されたドットデータに基づいて印字ヘッド50が駆動制御され、印字ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期して印字ヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
吐出検出制御部108は、印字ヘッド50内に配設されている圧力検出器72からの検出信号を処理する信号処理回路を含んで構成され、圧力検出器72から得られた検出結果をプリント制御部100に提供する。
プリント制御部100及びシステムコントローラ92は、吐出検出制御部108を通じて得られた検出情報に基づいてノズル51の吐出/不吐出を判断し、不吐出ノズルが検出された場合には所定の回復動作や打滴補正等を実施する制御を行う。
メンテナンスユニット106は、図7で説明したキャップ84やクリーニングブレード86等を含むブロックであり、システムコントローラ92の指令に従い所要の回復処理を実施する。
〔吐出検出の方法〕
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10における吐出検出の方法について説明する。
図9は、正常な吐出が行われる状態の模式図である。同図に示したように、個別電極66に駆動電圧を印加してアクチュエータ68を変形させると、振動板64が変位して圧力室52が変形し、圧力室52内のインクが加圧される。こうして、アクチュエータ68の発生した圧力によってノズル51からインク滴120が吐出し、同時に圧力室52内の圧力検出器72の薄膜70も変位する。
一方、例えば、図10に示したように、圧力室52内に気泡124が存在し、不吐出になる状態では、アクチュエータ68の発生した圧力が気泡124の収縮によって吸収され、インクは吐出せず、同時に圧力検出器72の薄膜70の変位は図9の場合と比較して小さくなる。
薄膜70の変位量に応じた検出信号を検出電極71から取得することによりインク圧力の情報を得て、その圧力情報に基づき、不吐出を起こさせるような気泡124が存在しているか否か、つまり、不吐出を起こす状態であるか、正常な吐出が可能な状態であるかの判定が行われる。
インク圧力に応じて可動する薄膜70には、SUS、金、銀、プラチナ、アルミ合金など各種金属材料や半導体製造に用いられるシリコン、ゲルマニウムなどの材料、ポリイミド、ケブラー、ポリエステル、ポリサルフォンなどの樹脂材料などが使用可能である。
どのような材料を用いるかは、発生する圧力に対し必要な変位が得られるかという観点はもちろんの、インクとの関係、つまり、腐食などの耐久性に関わる適合性、インクを充填する際のインク漏れ性に関わる適合性、他のヘッド部分の製法、材料との適合性などから総合的に判断される。
本実施形態において、インク吐出に影響を与えることなく、良好な圧力検出を行うために、薄膜70の変形・変位量は、インクを吐出するためのアクチュエータ68の発生圧力の損失に換算して1/2以下とすることが望ましい。すなわち、アクチュエータ68が所定量変位したとき、本発明の薄膜70が存在しない場合の圧力室52内の圧力上昇値をδP1、薄膜70が存在する場合の圧力室52内の圧力上昇値をδP2 とすると、次式〔数式1〕の関係となっている。
〔数式1〕 δP2 /δP1 ≧1/2
或いはまた、薄膜70の変形・変位体積をV2 、インク吐出時のアクチュエータ68駆動による発生する圧力室52の排除体積をV1 (アクチュエータ68がインクを押し出そうとすうときの変形体積)とするとき、次式〔数式2〕を満たすことが好ましい。
〔数式2〕 V2/V1 ≦1/2
更に、インク吐出時に圧力室52からインク供給側の流路(供給流路58)に戻るインクの体積をV4 とするとき、次式〔数式3〕を満たすことが好ましい。
〔数式3〕 (V2 +V4 )/V1 ≦1/2
更には、次式〔数式4〕、
〔数式4〕 V4>V2
の条件を満たすものとし、より好ましくは、次式〔数式5〕、
〔数式5〕 V4×0.25>V2
の条件を満たすものとする。
別の観点から考えると、インク吐出時に圧力室52から吐出ノズル側(ノズル流路56及びノズル51方向)に流れるインクの体積をV3 とすると、次式〔数式6〕を満たすことが好ましい。
〔数式6〕 ( V2 +V3 ) /V1≦1/2
更には、次式〔数式7〕
〔数式7〕 V3>V2
の条件を満たすものとし、より好ましくは、次式〔数式8〕、
〔数式8〕 V3×0.25>V2
の条件を満たすものとする。
通常のピエゾ駆動方式によるインクジェットヘッドの設計においては、アクチュエータによる排除体積に関してインク吐出用のノズル側へ流れるインク体積と、インク供給路側へ戻るインク体積を略同程度に設定している。これは、できるだけ吐出量又は吐出速度を得つつも、インクの再充填が迅速に行われるようにするためである。
上記の〔数式2〜5〕で示した条件は、圧力検出機能を付加しても、当該検出機能がない場合と同程度の吐出量、吐出速度を得ることを目的として条件を定めてある。この場合は、ヘッドの駆動周波数より、着弾精度及び液滴サイズを重視している。
一方、上記の〔数式6〜8〕で示した条件は、圧力検出機能を付加しても、当該検出機能がない場合と同程度のインク再充填性能を得ることを目的として条件を定めてある。この場合は、再充填し難い高粘度のインクを使用する場合や、高い周波数でのヘッドの駆動を重視している。
また、〔数式5〕及び〔数式8〕における「×0. 25」は、流路の製造精度によるばらつきと、吐出現象のばらつきの実績値から、圧力検出の影響がこれ以下であれば無視できるとして定めた値である。最終的に排除体積の12.5%程度のロスであれば、吐出において無視できる程度であり、かかる条件を満たせば、吐出/リフィルに影響を及ぼさない。
圧力検出を感度よく行う目的からすれば、薄膜70は変位しやすく構成することが要求されるが、薄膜70が必要以上に大きく変位すると吐出圧力のロスが増えてしまい望ましくない。また逆に、吐出圧力のロスを抑えようと薄膜70の剛性を高くし過ぎると検出感度が落ちる。そこで、薄膜70の変位を適切に制限するストッパー機構を設ける態様が好ましい。
図11は、薄膜の変位を制限するストッパー機構の第1の例を示す。図11の例では、薄膜70側は平板状であり、この薄膜70に対して検出に必要な間隔を持って対向する面(同図において検出電極71の上面)に円柱状の突起130が設けられている。図11(a)に示した状態から薄膜70が変位し、図11(b)に示すように、薄膜70が突起130の上面に接触すると、薄膜70はそれ以上に変位しないようになっている。
なお、突起130の形状は、円柱に限定するものではなく、接触部が凸に丸くなった形状でもよいし、膜の変形に添うような窪みでもよい。更には、膜と対向する面間の距離を上記の必要な間隔に設定することも可能である。ただし、膜と対向する面間に気体が入っている場合は、気体の圧縮性がバネとなって膜の変位を阻害するので、気体を逃すための穴を膜以外の部分に設けることが望ましい。
図12は圧力と膜の変位の関係を示したグラフである。グラフ[1] は、図11で説明したストッパー機構を有する例である。図12のグラフ[2] はストッパー機構を有していない例である。グラフ[1] に示すように、ストッパー機構を有する構造の場合、圧力変化に対する膜の変位は、異常検出に必要十分な圧力までは感度高く変位し、それ以降、正常時に到達する圧力においては変位を抑えることができる。つまり、吐出に必要な圧力のロスを減少させる効果ある。これに対して、仮に、ストッパー機構を用いずに、膜を変位しにくい剛性の高いものにすると、グラフ[2] に示すように、吐出時のロスは少ないものの、異常時の変位も小さいため、感度よく検出できない。
したがって、ストッパー機構を用いてグラフ[1] のような検出特性を実現することにより、一層良好な検出が可能となる。
図13は、薄膜の変位を制限するストッパー機構の第2の例を示す。すなわち、図13は、ストッパーの突起140を薄膜70側に設けた例である。薄膜70の裏面側に突起140が接合されており、薄膜70の変位によって突起140の下面が検出電極に当接して、それ以上の変位を阻止する構造となっている。
図14は、薄膜の変位を制限するストッパー機構の第3の例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)中の14b−14b線に沿う断面図である。図14に示した構成は、薄膜70の変位を正圧及び負圧の何れの場合も制限できるように、薄膜70の両面にストッパー部材150、152を設けた例である。図14において薄膜70の上方向への変位量を制限するストッパー部材152は、薄膜70の有効可動領域70Aの上方に略アーチ状に架設され、薄膜70を挟んで下方のストッパー部材150と対向する位置に薄膜70との接触部となる突起部152Aが形成されている。かかる構成にすると、インクの吐出時だけでなく、インクの充填時にも圧力のロスを減らすことができる。
図15は、薄膜の変位を制限するストッパー機構の第4の例を示す。図15は、突起状のストッパーではなく、膜の断面形状を工夫して変位を制限した例である。この例では、薄膜170の有効可動領域170Aの周辺の部分が薄くなるように幅の狭い溝171が形成されるとともに、薄膜170の中央部も変位し易いように凹部173が形成されて薄くなっている。これら以外の部分は相対的に厚い板で出来ており、変形しにくい構造である(図15(a)参照)。
かかる構成において、薄膜70に圧力が加わると、図15(b)に示したように、周囲の溝171部分が変位して側壁177と接触し、それ以上の変位を防ぐことができる。また、図15のような構造を膜面に対し上下対称に設けると、正圧及び負圧の何れの場合にも膜変位を制限できるようになる。
圧力検出には、薄膜70と、これと対向する面間でコンデンサーを形成して静電容量の変化により検出する方法、薄膜に歪みゲージを形成し、膜の歪みを基に検出する方法、或いは、図11や図13及び14のように、薄膜70と対向する突起などが接触する構成の場合には、接触部をスイッチとして利用する方法も考えられる。
例えば、薄膜70は誘電体を含み、膜の変形、変位を静電容量によって検出する態様がある。また、薄膜70の変形,変位を電気抵抗によって検出する態様もある。更には、薄膜70は圧電体よりなり、圧力によって電圧を発生することで圧力変化を検出する態様がある。その他、薄膜70の変位を超音波の反射音戻り時間によって検出したり、レーザ変位計を用いて検出したりすることも可能である。
〔他の実施形態〕
図16は本発明の他の実施形態を示す断面図である。図16中図4と同一又は類似の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4では圧力室52内に圧力検出器72を設けた例を述べたが、図16に示すように、圧力室52につながるインク供給路180の内部に圧力検出器72を設ける態様も可能である。
すなわち、図16に示した印字ヘッド50は、圧力室52と連通するインク供給路180の内部にインクの吐出、インクの充填によるインク体積の変化、インク圧力の変化を検出する圧力検出器72を備えている。この圧力検出器72はインク供給路180の流路に面した薄膜70の変形・変位によってインク体積の変化、インク圧力の変化を検出する構造となっている。なお、圧力検出器72の構造は図4及び図11乃至図15で説明した例と同様の構造を適用可能である。
かかる形態において、インク吐出に影響を与えることなく、良好な圧力検出を行うために、薄膜70の変形・変位量は、インクを吐出するためのアクチュエータ68の発生圧力の損失に換算して1/2以下とすることが望ましい。或いはまた、薄膜70の変形・変位量は、変位体積に換算してアクチュエータ68による変位体積の1/2以下とすることが望ましい。
また、インク吐出時のアクチュエータ駆動により発生する排除体積に関して、薄膜70の変位によるインク供給路180の体積変化量を加算した圧力室52からインク供給側流路に戻るインク量が前記排除体積の1/2以下とする。
図17は、印字ヘッド50を上から見た平面透視図の要部拡大図である。図中符号182は、共通流路の基幹流路であり、この基幹共通流路182から複数の支流(共通流路支流)184が分岐している。各共通流路支流184は、個別供給路185を介して複数の(図17において4つの)圧力室52と連通している。
このように、複数個の圧力室52につながる共通流路支流184の基端部(基幹共通流路182)からの分岐の最上流部に圧力検出器72が設けられている。この1つの圧力検出器72により、これよりも下流に存在している複数個のノズル51からのインク吐出状態を検出する。すなわち、検出の際は、複数個のノズル51のうち、順番に1つずつのノズル51からインクを吐出する。若しくは、各ノズルの吐出タイミングをずらして連続的に吐出する。かかるノズル駆動(吐出動作)に対応した検出信号に基づき、吐出異常に係るノズルを特定することが可能である。
なお、図17では、一つの共通流路支流184に4つの圧力室52が繋がっている例を示したが、圧力室の個数や圧力検出器72の配置場所については、図17の例に限定されない。
図17の例を一般化して表現すると、n個(ただし、nは2以上の整数)の圧力室52につながる流路のインク供給側に1個以上n個未満の数の圧力検出器72を設けることにより、n個のノズルからのインク吐出を検出することができる。
また、図17に示したように、複数の圧力室52につながる共通流路支流184は、インクの流れの下流側に行くに従い、徐々に流路断面積が狭くなっている。
仮に、共通流路支流184が一様な太さだとすると、下流に行くほど流速が遅くなるので、共通流路支流184内に気泡が発生した場合、気泡が抜け難くい。しがって、図17
のように、下流側ほど流路短面積が狭くなる構成にして、下流に行くほどインク流速が徐々に早くなる構造とし、気泡の排除性を高める。また、下流ほど圧力検出器72から遠くなるので圧力波の減衰が考えられるため、これを防ぐためにも下流側ほど流路断面積を徐々に狭くする構成が好ましい。
基幹共通流路182についても同様に、インクの流れの下流側に行くに従い、徐々に流路断面積が狭くなっていく構成が好ましい。図17では、基幹共通流路182及び共通流路支流184についてそれぞれインクの流れの下流に行くに従い、流路断面積が連続的に狭くなっていく構造が示されているが、かかるテーパー状の流路構造に代えて、流路断面積が階段状に狭くなっていく構造も可能である。
もちろん、図17のような構造は、同じ共通流路支流184につながる各圧力室52から当該共通流路支流184基端部の圧力検出器72までの距離が異なっているため、これら圧力室52に対応するノズル51について同時吐出しても、それぞれの圧力波が圧力検出器72に伝わるには時間差があるため、同時吐出を行っても各ノズル51の吐出検出が可能である。しかし、上述のように、更に意図的に各ノズル51の駆動タイミングをずらすことで、その時間差を一層大きくすることが可能であり、1つの圧力検出器72で複数ノズル51の圧力検出を一層精度よく検出できる。
なお、圧力検出器72か圧力室52までの距離に依存する時間差を考慮すれば、連続吐出の場合は、圧力検出器72から近いものから順に駆動(検出)することが好ましい。
図18は、圧力検出器72の他の構造例を示した模式図である。インク190が通る流路の一部を成す薄膜70のインク190と反対側の面は空洞部192(以下「第1空洞部」という。)と接しており、該第1空洞部192の内部には気体又は液体(以下「流体194」という。)が充填されている。この第1空洞部192は、小穴196を通じて別の空洞部198(以下「第2空洞部」という。)に連通し、第1及び第2空洞部192,198内部の流体194は、小穴196を通じて移動することで、薄膜70の変形速度をコントロールする。また、第2空洞部198は、第1空洞部192より低い圧力となり、薄膜を初期位置に復帰させる作用をもたらす。
このような構造によれば、第1及び第2空洞部192,198内の流体194により薄膜70が自由振動するのを抑制することができ、インク190の不要な振動を抑えて吐出を一層安定させることができる。
また、図18の薄膜70は、インク吐出動作におけるインクの振動を抑制するダンパーとして機能するように、固有振動数、減衰特性が設定されることが好ましい。
更なる変形例として、上述の各実施形態で説明した薄膜70の圧力室52又はインク供給路180に面した面と反対側の面は別のインク供給路に面しており、薄膜70の両面がともにインクに接する構造も可能である。すなわち、例えば、図18において第1空洞部192に相当する部分をインク流路として利用し、当該インク流路を流れるインクによって薄膜70の変形速度をコントロールする構造も可能である。
上述の説明では、インクジェット記録装置10を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、印画紙に非接触で現像液等を塗布する吐出ヘッドを備えた写真画像形成装置についても本発明の液滴吐出装置を適用できる。また、本発明の適用範囲は画像形成装置に限定されず、吐出ヘッドを用いて処理液その他の液体を媒体に塗布する塗布装置など各種の装置について本発明を適用できる。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…印字ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、22…吸着ベルト搬送部、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、54…供給路絞り、56…ノズル流路、64…振動板、66…個別電極、68…アクチュエータ、70…薄膜、71…検出電極、72…圧力検出器、73…空洞部、92…システムコントローラ、100…プリント制御部、108…吐出検出制御部、130,140…突起、150,152…ストッパー部材、171…溝、173…凹部、180…インク供給路、182…基幹共通流路、184…共通流路支流、185…個別供給路、190…インク、192…第1空洞部、194…流体、196…小穴、198…第2空洞部