JP2007258234A - 半導体素子,薄膜トランジスタ,レーザーアニール装置,並びに半導体素子の製造方法 - Google Patents

半導体素子,薄膜トランジスタ,レーザーアニール装置,並びに半導体素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】グリーンレーザーのような半導体レーザーを用いて半導体薄膜の結晶化を実現する方法を提案する。
【解決手段】基板上に下地層と半導体層が順に二層以上形成させることによって、上層の半導体層に照射されたレーザーエネルギーを、上層の半導体層だけでなく、下層の半導体層にも、エネルギーを与えることによって、多層構造の半導体薄膜を1度に得る。
上層の多結晶Si膜を透過したレーザーエネルギーを下層の非結晶Si膜が吸収することによって生じる熱によって、下層が熱浴として働くために、上層の多結晶Si膜に対して緩やかなアニール効果が生じて、高品質の結晶化薄膜が得られると同時に、必要なレーザーエネルギーを低減できる。メンテ、コスト、容量などの点で有利なグリーンレーザーにより高品質な薄膜を実現するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザーを用いて半導体材料を結晶化した半導体素子,薄膜トランジスタ,それに用いるレーザーアニール装置,並びに半導体素子の製造方法に関するものである。
低温多結晶Si薄膜トランジスタは、携帯電話などの小型・モバイル機器の液晶ディスプレイの画素駆動素子として現在幅広く活用されており、その性能および信頼性向上を目指した様々な研究開発が行われている(例えば、特許文献1乃至5を参照。)。中でもエキシマレーザーアニール(ELA:excimer laser annealing)によるSi薄膜の結晶化は、高品質な多結晶Si作製に欠かせない技術となっており、低温多結晶Si薄膜トランジスタの液晶ディスプレイの製造において、エキシマレーザーアニールにより結晶化された多結晶Si基板が標準で利用されているのが現状である。
このエキシマレーザーは、XeClやKrFなどのガスを励起することにより得られる高出力の紫外光パルス発振レーザー(XeClガスの場合は波長308nm,KrFガスの場合は波長254nm)であり、Si膜に対する吸収が大きい波長であるため、Si膜表面部分のみを瞬間的(数10ns)に加熱することが可能である。そのためガラス基板に熱変形等のダメージを与えることが無く、耐熱性の低い安価なガラス基板が利用できるようになり、更にはプラスチック基板を用いることも可能である。
しかし、エキシマレーザーは、(1)エネルギー揺らぎ幅が5%以下と高いこと、(2)変換効率が1〜3%と低いこと、また、(3)エキシマレーザーで用いられるXeClやKrFなどのガスは非常に腐食性が大きく、エキシマレーザー照射装置の配管を一定期間(2000時間程度の使用)ごとに交換する必要があり、装置のランニングコストが高いこと、また、(4)配管を交換するたびに、レーザー照射条件が微妙に変化するため、交換後の再調整が必要であること、更に、(5)装置が大型であることなど多くの技術的課題がある。
一方、半導体レーザー励起固体レーザを用いたレーザーアニール技術の研究も長く行われてきた。特に、近年、Nd:YAGレーザー(基本波長:1064nm)の二倍波(波長532nm)であるグリーンレーザーを用いた、大出力,長尺ラインビーム照射によるグリーンレーザーアニール(GLA:Green Laser Anneal)装置が開発され、その装置操作の容易さや日常的な装置保守が不要であることにおいて非常に優れており、エキシマレーザーアニール装置に替わる液晶パネルディスプレイ用多結晶Si基板製造装置として注目されている。
しかし、グリーンレーザーはエキシマレーザーに比べて、多結晶Siに対する光吸収係数が小さいことから、レーザーエネルギーの一部が透過するという特徴があるため、エネルギーの高効率利用の観点で課題がある。
特開平4−85923号公報 特開2003−257861号公報 特開2005−123262号公報 特許第2586810号 特許第3357687号
従来は、低温多結晶Si薄膜トランジスタの製造においては、単層のシリコン薄膜に波長308nmのXeClのエキシマレーザーを照射し、非晶質Siの溶融,固化によってSiを結晶化している。その狙いとしては、Si膜以外に熱が逃げないように有効に利用しようとするものであった。
しかし、エキシマレーザーは、上述したように多くの技術的課題を有している。
本発明は、エキシマレーザーよりも操作性・保守性に優れたグリーンレーザーを高効率利用して、低温多結晶Si薄膜トランジスタを製造することを目的とする。また、本発明は、製造される多結晶Si薄膜の膜質の高品質化を目的とする。さらに、グリーンレーザーを高効率利用し、かつ、多結晶Si薄膜の膜質の高品質化を達成するためのレーザーアニール装置、並びに、その製造方法を確立することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、基板上に下地層と半導体層とが順に積層された半導体素子であって、基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成され、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーが照射されることにより、多層半導体膜が同時に結晶化されることを特徴とする。
本発明の技術的ポイントは、基板上に下地層と半導体層が順に二層以上形成させることによって、上層の半導体層に照射されたレーザーエネルギーを、上層の半導体層だけでなく、下層の半導体層にも、エネルギーを与えることにある。これによって、多層構造の半導体薄膜を1度に得るものである。前述した特許文献の中にも、多層構造の半導体薄膜の構造があるが、あくまで上層の半導体層の多結晶化であって、これまで多層の薄膜の結晶化を試みた事例は見当たらない。
また、可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーは、そのエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることが好ましい。
より具体的には、可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーは、レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることが好ましく、より好ましくは、レーザーは、Nd:YAGレーザー(基本波長:1064nm)の二倍波(波長532nm)であるグリーンレーザーを用いるのがよい。
グリーンレーザーは、エキシマレーザーに比べて多結晶Siに対する光吸収係数が小さいため、レーザーエネルギーの一部が透過するという特徴がある。これはエネルギーの高効率利用の観点からは望ましいことではない。この点に着目し、基板表面の非結晶Si膜と基板の間に、もう一層非結晶Si膜を堆積することによる二層乃至は多層構造化したSi薄膜基板を用いた結晶化を行うのである。
本発明の構成により狙いとする所は、一つには上層の多結晶Si膜を透過したレーザーエネルギーを下層の非結晶Si膜が吸収することによって生じる熱による上層の多結晶Si膜のアニール効果である。下層の半導体膜を熱浴として利用するのである。これにより結晶粒内欠陥の低減や結晶粒界の高品質化が期待されると同時に、結晶化に必要なレーザーエネルギーを低減できるという効果がある。
また、もう一つの狙いは、下層の非結晶Si膜の結晶化であり、結晶化した下層のSi膜を利用することにより付加価値のあるデバイス開発への発展が期待される。結晶化した下層のSi膜は、上層の半導体素子の構成要素に使う補助配線(ゲート、ボディ端子、配線)として利用できる。
また、本発明は、使用するレーザーが可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーであることから、基板の裏面からレーザーを照射することが可能である。すなわち、この基板はガラス基板などの透明絶縁体基板である場合、基板の裏面から可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射できるのである。
基板の裏面からレーザーを照射できるとなると、下層の半導体膜の特質を制御しておくことで(例えば、水素を多く含有させておく。)、レーザーを照射することによって、下層の半導体薄膜の部分において容易に剥離されることにより、ガラス基板から独立して半導体薄膜を得ることができるのである。
また、本発明の半導体素子は、基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成され、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーが照射されることにより、多層半導体膜が同時に結晶化されることを特徴とする。
基板がガラス基板などの透明絶縁体基板である場合、基板の裏面から可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射できるからである。
次に、本発明の薄膜トランジスタは、上述した多層半導体膜において、上層の半導体膜を能動層、下層の半導体膜を熱浴若しくは補助配線(ゲート、ボディ端子、配線)に用いたことを特徴とする。
また、上層と下層の利用用途を反転させて、上述した多層半導体膜において、下層の半導体膜を能動層、上層の半導体膜を熱浴若しくは補助配線(ゲート、ボディ端子、配線)に用いたことを特徴とする。
同時に結晶化される多層半導体膜を効率よく利用することにより付加価値のあるデバイス開発への発展が図れることとなる。
次に、本発明のレーザーアニール装置は、基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成された半導体素子に対して、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする。
また、本発明のレーザーアニール装置は、基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成された半導体素子に対して、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させ、その後、基板の裏面から前記レーザーを照射して、上層の半導体膜を剥離することにより、半導体薄膜を形成させることを特徴とする。
さらに、本発明のレーザーアニール装置は、基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成された半導体素子に対して、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする。
これらのレーザーの特徴は上述したものと同様であり、レーザーが有するエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることが好ましく、また、レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることが好ましく、より具体的にはグリーンレーザーであることが更に好ましい。
次に、本発明の半導体素子の製造方法は、基板上に下地層と半導体層とを順に積層させた半導体素子の製造方法であって、基板上に下地層と半導体層を少なくとも各二層形成する工程と、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射する工程とを備え、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする。
また、本発明の半導体素子の製造方法は、基板上に下地層と半導体層とを順に積層させた半導体素子の製造方法であって、基板上に下地層と半導体層を少なくとも各二層形成する工程と、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射する工程と、多層半導体膜を同時に結晶化させた後に前記基板の裏面から前記レーザーを照射する工程と、上層の半導体層の半導体膜を剥離する工程とを備えたことを特徴とする。
更に、基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成された半導体素子の製造方法であって、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする。
これらのレーザーの特徴は上述したものと同様であり、レーザーの有するエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることが好ましく、また、レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることが好ましく、より具体的にはグリーンレーザーであることが更に好ましい。
本発明によれば、上層の多結晶Si膜を透過したレーザーエネルギーを下層の非結晶Si膜が吸収することによって生じる熱によって、下層が熱浴として働くために、上層の多結晶Si膜に対して緩やかなアニール効果が生じて、高品質の結晶化薄膜が得られるといった効果がある。すなわち、下層が熱浴として働いて、上層の多結晶Si膜に対して緩やかなアニール効果を生ずることによって、上層の多結晶Si膜の結晶粒内欠陥の低減や結晶粒界の高品質化が図られるのである。
また、上層の多結晶Si膜の結晶化に必要なレーザーエネルギーを低減できるという効果がある。
また、多層にすることで、上層の薄膜の結晶化だけでなく、下層の薄膜も結晶化することで、多層の結晶化薄膜が得られる。特に、グリーンレーザーアニールによる結晶化において、Si膜を多層構造化することは、単に結晶化のレーザーエネルギー密度を低減させるだけの効果のみならず、上層の多結晶Si膜の結晶化を促進させ、その結晶粒界の改質する効果がある。
上層以外の下層の微結晶化するSi膜も有効的に利用することにより、高品質な上層の多結晶Si膜と合わせて、新規なデバイス開発が行えるといった効果もある。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。
ガラス基板上に酸化シリコンを下地層として積層し、次いで、Si半導体層を順に積層する実施例について説明する。また、可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーとしてはグリーンレーザーを用いる。
グリーンレーザーは、その波長(532nm)が結晶Siに対して大きい透過性を持つため、半導体薄膜の製造過程で、一度上層の非晶質Siが結晶化してしまうと、そこに照射されたグリーンレーザー光の大部分は透過してしまうこととなる。
このグリーンレーザー光を高効率に利用すべく、本発明では、上層のSi膜の下部に、間に酸化シリコン層を挟み、もう一層Si膜を形成する。
そのようにすることで、上層のSi膜を透過したグリーンレーザー光を、下層のSi膜に吸収させ、それにより生じる発熱によって、上層のSiの横方向の結晶化の促進および結晶粒界・欠陥の改質を図り、さらには結晶化レーザーエネルギーの低減を目指すのである。これがグリーンレーザーアニールを用いた結晶化におけるSi薄膜の二層構造化の狙いである。
図1は、二層構造のSi薄膜におけるグリーンレーザーアニールを用いた結晶化の概念図を一層構造のSi薄膜におけるグリーンレーザーアニールを用いた結晶化の概念図と対比して示している。
図1に示されるように、Si薄膜を二層構造化することにより、上層のSi膜を透過したグリーンレーザー光を下層のSi膜が吸収することにより生じる発熱によって、上層の多結晶Siの横方向の結晶化の促進および結晶粒界・欠陥の改質を図ることができるのである。
図2にグリーンレーザーアニール(GLA:Green Laser Anneal)をする前の二層構造Si薄膜と一層構造Si薄膜の構造模式図を示す。二層構造Si薄膜は、一層構造Si薄膜の上にさらに酸化シリコンを50nm、非晶質Siを50nm、プラズマCVD法(PECVD)を用いて連続成膜により堆積している。レーザー結晶化の前には、490℃、490秒の脱水素アニールが施されてある。
ここで、二層構造Si薄膜において、下層のSi膜を1層目Si膜、上層のSi膜を2層目Si膜と呼ぶことにする。以下では、二層構造poly−Siとは、GLA結晶化された二層構造Si薄膜の2層目の多結晶Si膜を指すこととする。
また、一層構造poly−SiとはGLA結晶化された一層構造Si薄膜を指すこととする。
また、実施例で用いたグリーンレーザーアニール装置について説明する。多結晶Siの結晶化に用いられたグリーンレーザーアニール装置は、ULVAC製の固体グリーンレーザーアニール装置である。また、そのレーザー照射条件は、Nd:YAGレーザーの二倍波である532nmの波長のグリーン光を用いて、105mmの長尺ラインビームスキャンにより非晶質Si薄膜を結晶化するもので、ビーム強度分布はガウシャンであり、半値幅は40μmである。この半値幅は、基板に照射されるビーム幅に等しい。パルス発振周波数は4KHzであり、オーバーラップは95%である。すなわち、4KHzの2μm刻みでパルス発振を行うので、同位置がパルス照射される回数は20回、スキャン速度は2μm×4KHz=8000μm/s=8mm/sである。
図3にGLA結晶化した二層構造Si薄膜の断面TEM(Transmission Electron Microscope,透過型電子顕微鏡)像を示す。このときの結晶化レーザーエネルギー密度は449mJ/cm2である。一層構造Si薄膜の結晶化よりも約3割低いレーザーエネルギー密度で2層目の非晶質Si膜を結晶化することが確認された。
図4にGLA結晶化した二層構造Si薄膜を用いた薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)の断面模式図を示す。
図5に結晶化レーザーエネルギー密度を変えていったときの二層構造poly−SiのSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)像およびAFM(Atmic Force Microscope,原子間力顕微鏡)像を示す。二層構造poly−Siの表面SEM像を示す。SEM観察前にサンプル表面はセコエッチングされている。
SEM像より、レーザーエネルギー密度が449mJ/cm2のときまでは二層構造poly−Siの結晶粒径は200〜300nm程度で変化しないが、473mJ/cm2のときには約2μm間隔で並ぶSiの隆起が観察され、結晶粒径も500nm以上になる。
ここで特筆すべき点は、結晶化のレーザーエネルギー密度が一層構造Si薄膜の結晶化よりも約3割低減できていることと、成長した結晶粒はスキャン方向に長くなるばかりではなく、スキャン方向に垂直な方向にも大きく成長していることである。これは1層目非晶質Si膜が2層目Si膜を透過したレーザー光を吸収・発熱することにより、レーザー光を吸収して発熱・溶融した2層目Si膜の溶融時間が延長したことによるものといえる。
GLA結晶化においてSi膜を二層構造化することにより、結晶化レーザーエネルギーを低減でき、かつ粒径の大きな多結晶Si膜を成長させることに成功したといえる。
また、図5に示されるように、レーザーエネルギー密度が449mJ/cm2のときまでは二層構造poly−Siの表面ラフネスは大きく、細かい凹凸が確認される。レーザーエネルギー密度が473mJ/cm2になると約2μm間隔で並ぶSiの隆起が観察されるが、その間の領域はSiの凹凸等なく平坦であることが確認された。
レーザーエネルギー密度を496mJ/cm2に上げると、約2μm間隔で並ぶSiの隆起は観察されなくなり、2μmを超える結晶粒と200〜300nm程度の結晶粒が混在する多結晶Siが確認された。
今まで異方性を帯びていた多結晶Siが、この結晶化エネルギー条件で等方性を帯びるようになり、これは薄膜トランジスタを作製した場合、その薄膜トランジスタ特性のチャネル方向依存性が低減されていることが期待されることになる。
図6(1)に二層構造poly−Siの平均粒径の結晶化レーザーエネルギー依存性を示す。これより、レーザーエネルギー密度が大きくなり、473mJ/cm2で急激に結晶粒径の増大が見られる。さらに、結晶粒径のスキャン方向平行成分、スキャン方向垂直成分ともに同様な増減の振る舞いをしていることがわかる。これは図6(2)の一層構造poly−Siの平均粒径の結晶化レーザーエネルギー依存性の振る舞いと異なる点である。
図7(1)に二層構造poly−Siの表面ラフネスの結晶化レーザーエネルギー依存性を示す。二層構造poly−SiのRms(Root Mean Square、二乗平均面荒さ)は結晶化エネルギーが大きくなるにつれて減少していくことが分かる。それに対して、最大高低差はレーザーエネルギー密度473mJ/cm2で極大をとり、496mJ/cm2で急激に減少することが分かった。Siの凹凸の最大高低差がゲート酸化シリコン膜厚の100nmを大きく超えると、ゲート耐圧の信頼性の低下が懸念される。二層構造poly−Siの場合、結晶化のレーザーエネルギー密度が大きくなり、約2μm間隔で現れるSiの隆起が消失するあたりのエネルギー密度で結晶化した多結晶Siが、表面ラフネスも少なく、結晶粒形状の異方性もあまり無いデバイス応用に適した多結晶Siであることがわかる。
[一層目Si膜の結晶性評価]
次に、結晶化後の1層目Siの結晶性について説明する。1層目Siの評価は、2層目Siをフッ硝酸で、中間の酸化シリコンをBHF(Bufferd Hydrofloric Acid、緩衝フッ酸溶液)でウェットエッチングした後に評価を実施した。
図8に1層目Siの表面SEM像を示す。Si表面はセコエッチングされている。これより結晶化レーザーエネルギー密度が449mJ/cm2のときまでは、1層目Siはほとんど結晶化していないことがわかる。すなわち、大部分が非晶質Siの状態であったため、セコエッチングした際にすべてエッチングされてしまい、SEM観察ができなかった。
結晶化レーザーエネルギー密度が大きくなり473mJ/cm2、496mJ/cm2になると、1層目Siは微結晶Siになりセコエッチングしても結晶が残り、SEM観察することができた。これは、2層目多結晶Siを透過したレーザー光が1層目の非晶質Siを微結晶化するのに十分なエネルギーを持っていたためによると考えられる。その1層目の微結晶化の際の発熱が2層目の結晶化を促進したと思われ、2層目Siが大粒径の多結晶Siに成長するためには少なくとも2層目Siを透過したレーザー光が1層目を微結晶化するのに必要なエネルギーを有していなくてはならないことが理解される。
図9に1層目Siのラマンシフトをプロットしたものを示す。これより結晶化レーザーエネルギー密度が449mJ/cm2のときまでは、1層目Siはほぼ非晶質Siの状態であり、473mJ/cm2ではピーク強度が大きくなり、ピーク値も結晶Siの値520cm−1に近づき微結晶化していることが確認できる。従って、レーザーエネルギー密度が大きくなると1層目Siの結晶性も良くなることがわかる。
[二層構造poly−Siを用いた薄膜トランジスタの電気特性]
図10(1)に二層構造poly−Siを用いて作製された薄膜トランジスタ(TFT)の伝達特性を、図10(2)に一層構造poly−Siを用いて作製されたTFTの伝達特性をそれぞれ示す。結晶化エネルギー条件は二層構造poly−Siは473mJ/cm2、一層構造poly−Siは591mJ/cm2である。
ここで、TFTのチャネル方向がレーザースキャン方向に平行なものをスキャン方向平行、チャネル方向がレーザースキャン方向に垂直なものをスキャン方向垂直と以下指すこととする。
上記2つのTFTはスキャン方向平行である。これより二層構造poly−Siを用いて作製されたTFTの方が大きい移動度を有していることがわかる。
これらから、二層構造化したSi膜を用いて結晶化した多結晶SiがTFTに応用できることが理解できよう。
図11に結晶化エネルギー密度が473mJ/cm2と496mJ/cm2の二層構造poly−Siを用いたTFTの伝達特性を示す。結晶化エネルギー密度が473mJ/cm2の方はスキャン方向平行であり、496mJ/cm2の方はスキャン方向垂直である。
これらの伝達特性の移動度はともに300cm2/Vsを超えており、飽和領域の伝達特性のドレイン電流の立ち上がりの電圧が線形領域のそれとほぼ同じであり、非常に良好な特性を示していることが理解される。
これは、結晶化エネルギーが大きくなるにつれて結晶粒径が大きくなり、結晶性が良い領域にチャネルが位置するようなTFTではこのような良好な伝達特性が得られるものと考えられる。
図12に二層構造poly−Siおよび一層構造poly−Siを用いたTFTの電界効果移動度のレーザーエネルギー依存性を示す。図12(1)より、二層構造poly−Siを用いたTFTの電界効果移動度は、スキャン方向平行なTFT,スキャン方向垂直なTFT共に結晶化レーザーエネルギーが増加するにつれて、電界効果移動度も増加することがわかる。特にスキャン方向垂直のTFTの電界効果移動度の増加は、一層構造poly−Siを用いたTFTでは見られなかった振る舞いであり、このことから二層構造poly−Siの結晶粒界の性質が一層構造poly−Siのそれとは異なり、粒界に位置するキャリアのトラップ準位が低減されていることが理解される。
また、結晶化レーザーエネルギー密度496mJ/cm2で結晶化された二層構造poly−Siを用いたTFTでは平均の電界効果移動度がチャネル方向平行,チャネル方向垂直共に200cm/Vs程度の値を有し、一層構造poly−Siを用いたTFTにおいて顕著であったトランジスタ特性のチャネル方向の依存性がなくなっている。
これは、この結晶化レーザーエネルギー密度で結晶化された二層構造poly−Siの表面SEM像、AFM像から分かるように、多結晶Siの結晶粒形状や表面状態が等方的であり、また局所的に2μmを超える大粒径の結晶粒が成長しているためであると考えられる。
図13に二層構造poly−Siおよび一層構造poly−Siを用いたTFTのS値のレーザーエネルギー依存性を示す。図13(1)より、二層構造poly−Siを用いたTFTのS値は、エキシマレーザーアニールにより結晶化された多結晶Siを用いたTFTに比べて、また一層構造poly−Siを用いたTFTのそれよりも、結晶化レーザーエネルギー密度に特に相関性はなく、小さいことがわかる。
また、レーザーエネルギー依存性は特に確認されなかった。これは、すなわち二層構造poly−Siを用いたTFTのS値は多結晶Siの粒径に依存していないということであり、結晶粒界の性質がエキシマレーザーアニールにより結晶化された多結晶Siや一層構造poly−Siとは異なり、そこに位置する電子のトラップ準位が1層目Siの発熱による2層目多結晶Siの結晶粒界の改質効果により十分に低減されているものと考えられる。
図14に二層構造poly−Siおよび一層構造poly−Siのシート抵抗のレーザーエネルギー依存性を示す。図14(1)より、二層構造poly−Siのシート抵抗は電流の流れる方向がスキャン方向に平行,垂直にかかわらず共にレーザーエネルギーが大きくなるにつれて減少していることがわかる。
これは、図14(2)に示されるように、一層構造poly−Siでは電流の流れる方向がスキャン方向に垂直な方向のシート抵抗が、結晶化レーザーエネルギーの増大に対して変化しないことと対照的であり、これも1層目Siの発熱による2層目多結晶Siの結晶粒界に対する改質効果により、粒界に位置するキャリアのトラップ準位が低減されていることによるものと考えられる。
以上より、二層構造poly−Siは、1層目Siの発熱による2層目多結晶Siの結晶粒界の改質がなされており、その多結晶Siの膜質の改善効果が、その多結晶Siを用いて実際にTFTを作製して、電気特性の評価を行い、一層構造poly−Siおよびエキシマレーザーアニールにより結晶化された多結晶Siを用いたTFTの電気特性と比較することにより得られた結果によって明らかになったのである。
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。なお、本発明の技術的範囲は上述した実施例に示した具体的な用途に限定されるものではない。
本発明は、携帯電話などの小型・モバイル機器の液晶ディスプレイの画素駆動素子である薄膜トランジスタおよびその製造に利用することができる。
二層構造のSi薄膜におけるグリーンレーザーアニールを用いた結晶化の概念図 (1)にグリーンレーザーアニールをする前の二層構造Si薄膜基板を、(2)に一層構造Si薄膜基板の構造模式図を示す。 GLA結晶化した二層構造Si薄膜の断面TEM像を示す。 GLA結晶化した二層構造Si薄膜を用いた薄膜トランジスタ(TFT)の断面模式図を示す。 二層構造poly−SiのSEM像およびAFM像を示す。 (1)に二層構造poly−Siの、(2)に一層構造poly−Siの平均粒径の結晶化レーザーエネルギー依存性を示す。 二層構造poly−Siの表面ラフネスの結晶化レーザーエネルギー依存性を示す。 1層目Siの表面SEM像を示す。 1層目Siのラマンシフトをプロットしたものを示す。 (1)に二層構造poly−Siを用いて作製された薄膜トランジスタ(TFT)の伝達特性を、(2)に一層構造poly−Siを用いて作製されたTFTの伝達特性をそれぞれ示す。 (1)に結晶化エネルギー密度が473mJ/cm2の、(2)に496mJ/cm2の二層構造poly−Siを用いたTFTの伝達特性を示す。 (1)に二層構造poly−Siを、(2)に一層構造poly−Si用いたTFTの電界効果移動度のレーザーエネルギー依存性を示す。 (1)に二層構造poly−Siを、(2)に一層構造poly−Si用いたTFTのS値のレーザーエネルギー依存性を示す。 (1)に二層構造poly−Siの、(2)に一層構造poly−Siのシート抵抗のレーザーエネルギー依存性を示す。

Claims (21)

  1. 基板上に下地層と半導体層とが順に積層された半導体素子であって、基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成され、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーが照射されることにより、多層半導体膜が同時に結晶化されることを特徴とする半導体素子。
  2. 前記基板の裏面から前記レーザーが照射され、上層の半導体膜が剥離されることにより、半導体薄膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
  3. 基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成され、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーが照射されることにより、多層半導体膜が同時に結晶化されることを特徴とする半導体素子。
  4. 前記レーザーが有するエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子。
  5. 前記レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子。
  6. 前記レーザーがグリーンレーザーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体素子の多層半導体膜において、上層の半導体膜を能動層、下層の半導体膜を熱浴若しくは補助配線(ゲート、ボディ端子、配線)に用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体素子の多層半導体膜において、下層の半導体膜を能動層、上層の半導体膜を熱浴若しくは補助配線(ゲート、ボディ端子、配線)に用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
  9. 前記基板の裏面から前記レーザーを照射することにより、下層の半導体膜が結晶化されたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
  10. 基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成された半導体素子に対して、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とするレーザーアニール装置
  11. 基板上に下地層と半導体層が少なくとも各二層形成された半導体素子に対して、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させ、その後、基板の裏面から前記レーザーを照射して、上層の半導体膜を剥離することにより、半導体薄膜を形成させることを特徴とするレーザーアニール装置。
  12. 基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成された半導体素子に対して、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とするレーザーアニール装置。
  13. 前記レーザーが有するエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザーアニール装置。
  14. 前記レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザーアニール装置。
  15. 前記レーザーがグリーンレーザーであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザーアニール装置。
  16. 基板上に下地層と半導体層とを順に積層させた半導体素子の製造方法であって、基板上に下地層と半導体層を少なくとも各二層形成する工程と、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射する工程とを備え、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする半導体素子の製造方法。
  17. 基板上に下地層と半導体層とを順に積層させた半導体素子の製造方法であって、基板上に下地層と半導体層を少なくとも各二層形成する工程と、上層の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射する工程と、多層半導体膜を同時に結晶化させた後に前記基板の裏面から前記レーザーを照射する工程と、上層の半導体層の半導体膜を剥離する工程とを備えたことを特徴とする半導体素子の製造方法。
  18. 基板の表裏両面に下地層と半導体層が形成された半導体素子の製造方法であって、基板の表裏の半導体層に可視光領域若しくは赤外領域にピーク波長を有するレーザーを照射して、多層半導体膜を同時に結晶化させることを特徴とする半導体素子の製造方法。
  19. 前記レーザーが有するエネルギーが、上層の半導体膜で全て吸収されるのではなく、下層の半導体膜にも吸収されるエネルギーの大きさであることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  20. 前記レーザーのピーク波長が500〜1600nmであることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  21. 前記レーザーがグリーンレーザーであることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
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