本発明は、液晶、有機EL等の表示装置に用いて好適な結晶化方法、薄膜トランジスタの製造方法、被結晶化基板、薄膜トランジスタおよび表示装置に関する。
液晶表示装置などの表示装置の駆動回路は、ガラス基板上に形成された非晶質半導体膜に形成されている。IT市場の拡大により取り扱う情報は、デジタル化され、高速化されるため表示装置も高画質化が要求されている。この要求を満足する手段としては、例えば各画素を切換えるスイッチングトランジスタを結晶半導体に形成することによりスイッチング速度が高速化され、高画質化が可能となる手段がある。
ガラス基板上に形成された非晶質シリコン層を結晶化する手段としては、エキシマレーザアニール法(ELA法)が知られている。しかしながら、このELA法により得られた結晶の粒径は、0.1μm程度であり、この結晶化された領域に薄膜トランジスタ(TFT)を形成した場合、1個の薄膜トランジスタのチャネル領域に多数の結晶粒界が含まれる。この結果として薄膜トランジスタの電界効果移動度は200cm2/Vsと、単結晶Siに形成されたMOSトランジスタの電界効果移動度と比較すると大幅に劣る。
本発明者等は、非晶質シリコン層にレーザ光を照射することにより少なくとも1個の薄膜トランジスタのチャネル部分を形成できる程度大きな結晶粒を形成する工業化技術を開発している。単一の結晶粒内にTFTを形成することは、チャネル領域内に結晶粒界が形成された従来のトランジスタと異なり、結晶粒界への特性への悪影響がなく、TFT特性が大幅に改善され、プロセッサ、メモリ、センサなどの機能素子を形成することができる。このような結晶化方法として本発明者等は、例えば非特許文献1や非特許文献2などに記載された結晶化方法を提案している。
前者の非特許文献1には、SiON/SiO2キャップ層やSiO2(二酸化シリコン)キャップ層を介して非晶質シリコン膜にフルエンス0.8J/cm2の位相変調したレーザ光を照射することにより、膜に平行な方向に結晶粒をラテラル成長させ、非晶質シリコン膜を結晶化する方法が記載されている。
また、後者の非特許文献2には、基板加熱下でSiO2キャップ層を介して非晶質シリコン膜にホモジナイズし強度変調したレーザ光を照射することにより、非晶質シリコン膜をラテラル方向に結晶成長させる方法が記載されている。
W.Yeh and M.Matsumura Jpn.Appl.Phys.Vol.41(2002)1909.
2002年秋季第63回応用物理学会学術講演会予稿集2,P779,26a-G-2.平松雅人他
谷口ら 応用物理学関係連合講演会 28a-ZG-2
しかしながら、非特許文献1の方法では、結晶粒径10μm以上の大きな粒径の結晶粒を得ることができるができる。大粒径化した結晶粒の近傍に小粒径の微細結晶粒が発生するため、膜組織全体として大粒径の結晶粒を揃えて比較的均一に(すなわち、ち密に)形成することが要望されている。また、SiON(酸窒化シリコン)キャップ膜は、膜中の酸素原子と窒素原子の比率を変化させることにより吸収スペクトルを変化させることが可能であるが、もっとも光学バンドギャップが小さい膜(酸素のないSiNx)でも5eV(波長は約240nmに相当)付近であり、エキシマレーザのなかでも波長が248nmであるKrFレーザには使用可能であるが、現在量産でよく用いられている、波長が308nmであるXeClレーザにおいては透明となってしまうために用いることはむずかしいということが判った。
また、非特許文献1及び2の方法では、結晶粒を大粒径化させるために、基板を高温域に加熱する必要があり、低温処理の要求を十分に満たすことができないという問題点がある。例えば図11に示す従来の結晶化装置100は、載置台101に内蔵されたヒータ102により高温域に加熱された被結晶化基板103にKrFエキシマレーザ装置104から出射されたパルスレーザ光105を照射して結晶化する装置である。このパルスレーザ光105は、凹レンズ106、凸レンズ107、位相シフタ108からなる光学系を透過したレーザ光である。ヒータ102は、コントローラ109で制御される電源110から給電され、被結晶化基板103を摂氏300〜750度の温度域に加熱する能力を有している。
基板加熱温度は例えば摂氏500度を超えることもあるので、汎用ガラス(例えばソーダガラス)やプラスチックなどは加熱により変質や変形を生じやすい。従って、これらの材料を液晶表示装置(LCD)の基板に採用するためには低温処理は必須条件となる。また、大画面LCDでは軽量化の要望が強いために基板の板厚を薄くする傾向にあり、加熱により変形を生じやすく、薄肉基板の平坦度を確保するためにも低温処理は必須条件となる。
さらに、被結晶化基板103を加熱することは、消費電力が増加するため、工業化においては特に省電力化の要求に答えることができない。さらに、波長が300nm以下の248nmのレーザ光源を用いた場合(例えば非特許文献3参照)、凹レンズ106、凸レンズ107、位相シフタ108、ミラーなどからなる光学系での光吸収が発生し、これら光学系において、この光吸収量に相当する分の発熱が生ずる。この発熱は、経時的に昇温し、レンズの焦点ボケ、結晶化位置の位置ズレが発生する。この位置ズレは、結晶化領域がずれることになり、トランジスタ回路を形成する際、露光工程において、チャネル領域が結晶化領域から外れて形成され、量産工程においては、歩留まりが悪くなる。さらに、表示装置においては、表示ムラや色ムラが発生し、表示不良となることが判った。
本発明は上記の点に対処してなされたものであり、室温でも大粒径の結晶を得ることができ、省電力、結晶化の位置ずれの発生を減少させた結晶化方法、薄膜トランジスタの製造方法、被結晶化基板、薄膜トランジスタおよび表示装置を提供することを目的とする。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、前記レーザ光は、複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光のレーザ光であり、前記非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に前記レーザ光に対して吸収特性を有するキャップ膜を設けてなることを特徴とする。
本発明は、結晶化用光学系において、できる限り光吸収の少ない波長のレーザ光を用いることにより光学系の発熱を防止して結晶化の位置ずれの発生を減少させ、非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層のSiOx膜(xは2未満)を設けて、結晶化用レーザ光の一部を吸収させることにより、室温で、比較的低電力で大粒径の結晶化を行う結晶化方法を提供するものである。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、前記レーザ光は、波長が300nm以上であり、複数種類の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光であり、前記非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に前記レーザ光に対して吸収特性を有するキャップ膜を設けてなることを特徴とする。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、前記レーザ光は、波長が300nm以上であり、複数種類の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光であり、前記非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層のSiOx膜を設けてなることを特徴とする。上記xは2未満である。
本発明の結晶化方法は、前記SiOx膜のxは、1.4乃至1.9の範囲であることを特徴とする。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、上記レーザ光は、波長が300nm以上であり、複数種類の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光であり、上記非単結晶半導体膜の上記レーザ光入射面上に少なくともニ酸化シリコン膜と少なくとも一層のSiOx膜を設けてなることを特徴とする。上記xは2未満である。
上記xは、好ましくは1.4乃至1.9であり、さらに好ましくは1.4乃至1.8である。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、前記レーザ光は、波長が300nm以上であり、複数種類の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光であり、前記非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層以上のSiとOとの組成比が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜を設けてなることを特徴とする。
本発明の結晶化方法は、非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して結晶化する結晶化方法であって、上記レーザ光は、波長が300nm以上であり、複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のレーザ光であり、上記非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくともニ酸化シリコン膜と一層以上のSiとOとの組成比が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜とを設けてなることを特徴とする。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、基板上に設けられた非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層のSiOx膜を形成する工程(上記xは2未満)と、ホモジナイズされたパルスレーザ光を前記SiOx膜を介して照射して、パルスレーザ光の一部を前記SiOx膜が吸収して発熱するとともに、前記非単結晶半導体膜にも照射して照射部を溶融し、パルスレーザ光が遮断したのち前記非単結晶半導体膜に結晶化領域を形成する工程と、前記結晶化領域に位置合わせして薄膜トランジスタを形成する工程とを具備することを特徴とする。
本発明の被結晶化基板は、基板に設けられた非単結晶半導体膜と、この非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層のSiOx膜とを設けてなることを特徴とする。上記xは2未満。
本発明の被結晶化基板は、基板に設けられた非単結晶半導体膜と、この非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくとも一層以上のSiとOとの組成比が異なるシリコン酸化膜とを設けてなることを特徴とする。
本発明の薄膜トランジスタは、上記結晶化方法により製造された結晶化領域にチャネル領域、ソース領域の一部または全部、ドレイン領域の一部または全部、チャネル領域上の一部にゲート絶縁膜、ゲート電極を形成してなることを特徴とする。
本発明の表示装置は、上記結晶化方法により製造された結晶化領域に画素を切替える薄膜トランジスタのチャネル部分を形成してなることを特徴とする。
本明細書において「非単結晶半導体膜」とは、非晶質半導体(例えば非晶質シリコン膜)、多結晶半導体(例えばポリシリコン膜)およびこれらの混合組織など結晶化の対象となる薄膜をいう。
上記シリコン酸化膜の少なくとも1層は、上記レーザ光の波長に対して吸収特性を示す膜である。上記シリコン酸化膜は、膜厚が100〜1500nmである。上記レーザ光は、位相シフタを用いて光強度が単調増加と単調減少を繰り返す繰り返しパターンの光強度分布となるように変調されたパルスレーザ光である。上記レーザ光は、位相シフタ入射前に光強度に関して均一化された光である。
本発明の「結晶化」とは、結晶化対象膜が溶融し、凝固する過程において結晶核を起点として結晶成長することをいう。
本発明によれば、室温でも大粒径に結晶化でき、省電力、結晶化の位置ずれの発生を減少させた結晶化方法、薄膜トランジスタの製造方法、被結晶化基板、薄膜トランジスタおよび表示装置を得ることができる。
以下、添付の図1乃至図8、図12乃至図16を参照して本発明の好ましい実施
の形態について説明する。
先ず、本明細書において用いられる用語は、次のように定義する。「ラテラル成長」とは、結晶化対象膜が溶融し、凝固する過程において、結晶粒の成長が膜面に沿って横方向に進行することをいう。「投入フルエンス」とは、結晶化のためのレーザ光のエネルギ密度を表わす尺度であり、単位面積当たりの1発のパルスのエネルギ量をいい、具体的には光源または照射領域(照射野)において計測されるレーザ光の平均光強度のことをいう。
「位相シフタ」とは、位相変調光学系の一例であり、レーザ光の位相を変調するための空間強度変調光学素子のことをいい、フォトリソグラフィプロセスの露光工程で使用される位相シフトマスクとは区別されるものである。位相シフタは、例えば透明体としての石英基材の所望の場所に所望の段差が形成されたものである。位相シフタの段差は、入射光を所定の位相角、例えば180度の位相差を生じるサイズに、エッチング等のプロセスにより形成される。
「プロジェクションレンズ」とは、位相シフタにより作られた像を基板表面に投影するための光学系であり、照射サイズが小さい場合には、おおむねテレセントリックレンズが用いられる。テレセントリックレンズを用いることで、基板とレンズとの距離が多少変化しても投影した像のサイズが変化しないようにすることが可能である。そのため、基板側のみが平行となるような片テレセントリックレンズ系または基板側および光源側の両方が平行となるような両テレセントリックレンズ系が用いられるが、量産装置においては照射ビームとして細長い、いわゆる「長尺」ビームが用いられることが多く、本明細書中では示していないが、短辺側のみがテレセントリック構造で、長辺側はレンズ効果が生じないような、「かまぼこ」型のプロジェクションレンズを用いることで、実現可能である。
この実施形態は、結晶化用光学系に対して、光吸収の少ないレーザ光を用いる
ことにより高エネルギのレーザ光であっても光学系の発熱を防止して結晶化位置の位置ずれの発生を減少させ、非単結晶半導体膜のレーザ光入射面上に少なくともニ酸化シリコン膜と少なくとも一層のSiOx膜(xは2未満)を設けて、結晶化用レーザ光の一部を吸収させることにより、結晶化のためのレーザ光エネルギ密度が比較的低電力で大粒径の結晶化を行う結晶化方法である。先ず、結晶化方法を説明するためのプロジェクション型結晶化装置の構成を、図1を参照して説明する。
結晶化装置1は、波長が300nm以上のレーザ光を発信するエキシマレーザ装置2と、この装置2の光軸上に順次設けられた凹レンズ3と、凸レンズ4と、ホモジナイザ5と、位相シフタ6と、プロジェクションレンズ7と、被結晶化基板8を載置する載置台9と、XYZθステージ10と、コントローラ11とからなる。即ち、結晶化装置1は、凹レンズ3と、凸レンズ4と、ホモジナイザ5と、位相シフタ6と、プロジェクションレンズ7からなる結晶化用光学系によりパルスレーザ光12を載置台9上の被結晶化基板8に照射するものである。
波長が300nm以上のレーザ光を発信するエキシマレーザ装置2は、結晶化用光学系である凹レンズ3と、凸レンズ4と、ホモジナイザ5と、位相シフタ6と、プロジェクションレンズ7において光吸収の小さいレーザ光を出力する。このエキシマレーザ装置2としては、例えば波長が308nmのレーザ光を発振するXeClエキシマレーザ装置が最適である。
このエキシマレーザ装置2の出射光路には、図示しないレーザ光量を所望の光量に調整するためのアッテネータが設けられる。このアッテネータの出射光路には、凹レンズ3および凸レンズ4を介してホモジナイザ5が設けられている。ホモジナイザ5は、照射領域におけるパルスレーザ光12を平準化する機能を備えている。すなわち、ホモジナイザ5は、ホモジナイザ5を通過するパルスレーザ光12を位相シフタ6への入射角度と光強度をホモジナイズ(均一化)するための光学系である。
さらに、ホモジナイズされたパルスレーザ光12は、図2(a)に示す位相シフタ6により例えば180度の位相差を生じさせるようになっている。位相シフタ6は、透明体からなる。図2(a)(b)に示すように平行に並ぶ複数の直線状の段差6aを有する位相シフタ6は、段差6aにおいてパルスレーザ光12に位相差を生じさせる。この位相差によりパルスレーザ光12が位相変調され、パルスレーザ光12が光強度変調される。その結果、図2(d)に示すように単調増加と単調減少を繰り返す繰り返しパターンの光強度分布BPが照射部に形成される。なお、本実施形態では位相シフタ6の間隔Wを100μmとした。
図2(a)は、位相シフタ6の平面図であり、図2(b)は、(a)図の断面図であり、図2(c)は位相シフタ6を透過したパルスレーザ光12の光強度分布を説明するための波形図であり、図2(d)は、(c)図の斜視図である。図2(c)に示す光強度分布BPは、斜視図で三次元的に示すと図2(d)ようにV字状溝の光強度分布となる。このような位相シフタ6は、面積比(デューティ)変調型位相シフタ6である。この面積比(デューティ)変調パターンは、図2(c)に示す複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布を得るために、図2(a)に示されているように段差6aの表面の面積が変化して形成されている。各断面逆三角形状ピークパターンの光強度分布は振幅PHが等しく、ピッチ間隔PWも等しい。
位相シフタ6で光強度変調されたパルスレーザ光12は、プロジェクションレンズ7に入射する。プロジェクションレンズ7は、位相シフタ6の像を被結晶化基板8上面に結像させるように設けられている。プロジェクションレンズ7は、等倍、縮小例えば縮小された像の縮小率が1/5の光学系である。例えば、位相シフタ6の段差6aの表面の面積100μm2に対応する投射像は、4μm2となる。
被結晶化基板8の構造は、図3に示す構成であり、キャップ膜が結晶化用レーザ光の一部を光吸収する光吸収性を有することを特徴とする。結晶化用レーザ光に対して光吸収性を有するキャップ膜は、低い結晶化用投入フルエンスで同等の横方向成長距離を得ることを可能にする。
即ち、被結晶化基板8は、絶縁体または半導体からなる基板15例えばシリコン基板上に下地保護膜16、非単結晶半導体膜例えば非晶質半導体膜17、第1のキャップ絶縁膜18、第2のキャップ絶縁膜19を順次積層してなる構造体である。この実施形態のキャップ膜20は、第1のキャップ絶縁膜18と、光吸収性を有する第2のキャップ絶縁膜19の2層からなる。光吸収性を有する第2のキャップ絶縁膜19は、例えば少なくとも一層のSiOx膜(xは2未満である。)や、少なくとも一層以上のSiとOとの組成比が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜などである。
下地保護膜16は、基板15からの不純物の滲透を防止し、非晶質半導体膜17の結晶化過程で発生する熱を蓄熱する効果を有する材料である。下地保護膜16は、例えば膜厚1000nmの二酸化シリコン膜である。下地保護膜16は、1層に限らず2層以上でもよい。特に、基板15からの不純物の浸透を防止するには、例えば基板15上にSiNx層を成膜し、さらにSiO2層を成膜する構成が有効である。さらに、下地保護膜16は、熱酸化膜上に二酸化シリコン膜(SiO2)を膜厚例えば30nm形成した構成でもよい。非晶質半導体膜17は、結晶化の対象となる膜であり、膜厚例えば50nm〜200nmの非晶質シリコンからなる。
第1のキャップ絶縁膜18は、例えば膜厚20〜200nm例えば30nmの二酸化シリコン膜からなる。他の実施例は、第1のキャップ絶縁膜18が無いか、もしくは非常に薄い膜を積層してもよい。図3では、光吸収性を有する第2のキャップ絶縁膜19(第2のキャップ酸化膜)は、例えば少なくとも一層のSiOx膜(xは2未満)である。これは、直接、非晶質半導体膜17上にSiOx膜を積層した場合に界面が不安定になる可能性があるため、化学的に安定な二酸化シリコン膜からなる第1のキャップ絶縁膜18を挿入している。これは必ずしも必要でなく、また必要であっても極薄膜でよい場合もある。
第2のキャップ絶縁膜19は、レーザ光12の一部を吸収して発熱する光吸収膜であり、膜厚例えば500nmのシリコン酸化膜からなる。このシリコン酸化膜の膜厚は100〜1500nmの範囲とすることが光吸収特性と蓄熱特性から望ましい。膜厚が100nmを下回ると、シリコン酸化膜の光吸収による発熱量が不足して蓄熱が不十分になり、所望サイズの大結晶粒を得ることができなくなる。一方、膜厚が1500nmを上回ると、光の透過量が減少して、結晶化しようとする非晶質半導体膜17に十分なフルエンスのパルスレーザ光が到達し難くなるので、結晶化の目的を十分に達成することができなくなる。
次に、このような二重構造キャップ膜20を有する被結晶化基板8を製造する方法の実施形態についてさらに具体的に説明する。
基板15例えばガラス基板等からなる絶縁基板の上に下地保護膜16としての絶縁層を形成する。基板15例えば絶縁基板には、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板などの絶縁基板の他に、表面に絶縁被膜が形成された金属基板、シリコン基板、或いはセラミック基板などを適用することが可能である。ガラス基板は、例えばコーニング社の#1737基板に代表されるような、低アルカリガラス基板を用いることが望ましい。下地保護膜16は、膜厚50〜2000nm例えば100nmの二酸化シリコン膜をプラズマ化学気相成長法で成膜する。
下地保護膜16の上に非晶質半導体膜17として非晶質シリコン膜を成膜する。非晶質シリコン膜の成膜法は、例えばプラズマ化学気相成長法によって膜厚200nmの非晶質Si膜を成膜する。この非晶質Si膜上にキャップ膜20を成膜する。
キャップ膜20は、第1のキャップ絶縁膜18としてニ酸化シリコン膜を非晶質Si膜上に成膜する。このニ酸化シリコン膜は、例えばSiH4とN2Oのプラズマ化学気相成長法によって成膜し、化学量論的組成比に近づけた膜厚30nmの膜である。
さらに、第1のキャップ絶縁膜18上に光吸収層として第2のキャップ絶縁膜19例えばシリコン酸化膜を形成する。このシリコン酸化膜は、例えば、SiH4とN2Oのプラズマ化学気相成長法によって成膜する。シリコン酸化膜は、流量比が上記第1のキャップ絶縁膜18である二酸化シリコン膜と異なる流量比にしてプラズマ化学気相成長法により成膜し、膜厚500nmのシリコン酸化膜を形成する。このようにして被結晶化基板8の上面には光吸収層として例えばSiとOの組成比が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜が設けられている。次いで、基板15上に形成した薄膜16〜19の脱水素処理を行なう。この脱水素処理は、例えば窒素雰囲気で摂氏570度×2時間の加熱処理である。このようにして被結晶化基板8が形成される。被結晶化基板8の上面には、光吸収層として例えばSiとOの組成比が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜が設けられている。
光吸収特性を有するキャップ膜20は、入射したホモジナイズされたパルスレーザ光12の反射光を少なくし、光吸収性を良くして、入射光の一部を吸収し、発生した熱を蓄熱する機能を有する厚さが必要である。蓄熱時間は、結晶粒が大きく成長することができる時間である。
載置台9は、XYZθステージ10の上に搭載され、水平面内でX軸,Y軸方向にそれぞれ可動で、かつ水平面に直交するZ軸方向に可動であるとともに、Z軸まわりにθ回転可能である。XYZθステージ10の電源回路はコントローラ11の出力部に接続され、X軸駆動機構、Y軸駆動機構、Z軸駆動機構、θ回転駆動機構がそれぞれ制御されるようになっている。エキシマレーザ装置2の電源回路は、コントローラ11の出力部に接続され、パルスレーザ光12の発振タイミング、パルス間隔、出力の大きさなどが制御されるようになっている。
次に、上記ホモジナイザ5の光学系について図4を参照して具体的に説明する。図1と同一部分には、同一符号を付与し、その詳細な説明は重複するので省略する。光学系は、エキシマレーザ装置2例えばエキシマレーザ光源として波長300nm以上例えば308nm波長のエキシマパルスレーザ光を出射するXeClエキシマレーザ光源を備えている。エキシマレーザ光源から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダからなる光学系3、4を介して拡大された後に、ホモジナイザ5に入射する。ホモジナイザ5は、第1のシリンドリカルレンズ25、第1のコンデンサ光学系26、第2のシリンドリカルレンズ27、第2のコンデンサ光学系28からなる。
ホモジナイザ5に入射したパルスレーザ光は、第1のシリンドリカルレンズ25に入射する。第1のシリンドリカルレンズ25の後側焦点面には、複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1のコンデンサ光学系26を介して第2のシリンドリカルレンズ27の入射面を重畳的に照明する。その結果、第2のシリンドリカルレンズ27の後側焦点面には、第1のシリンドリカルレンズ25の後側焦点面よりも多くの複数の光源が形成される。第2のシリンドリカルレンズ27の後側焦点面に形成された光源からの光束は、第2のコンデンサ光学系28を介して位相変調素子6(位相シフタ)を重畳的に照明する。
ここで、第1のシリンドリカルレンズ25および第1のコンデンサ光学系26は第1のホモジナイザを構成し、この第1のホモジナイザにより位相シフタ6上での入射角度に関する均一化が図られる。
また、第2のシリンドリカルレンズ27および第2のコンデンサ光学系28は第2のホモジナイザを構成し、この第2のホモジナイザにより位相シフタ6上での面内各位置での光強度(レーザフルエンス)に関する均一化が図られる。このようにして照明系は、実質的に均一な光強度分布(光強度分布)を有する光を位相シフタ6に照射する。
位相シフタ6に入射するパルスレーザ光12は、均一化光学系(ホモジナイザ)としての第1のシリンドリカルレンズ25および第1のコンデンサ光学系26により入射角度に関して均一化され、さらに第2のシリンドリカルレンズ27および第2のコンデンサ光学系28により光強度に関して均一化されることが望ましい。
即ち、ホモジナイザ5で入射角度と光強度に関して均一化されたパルスレーザ光12は、位相シフタ6を透過すると、図2(c)に示すように光強度が単調増加と単調減少を繰り返す理想的な光強度分布BPとなる。この図2(c)の光強度分布BPは断面逆三角形形状であり、最大ピーク値と最小ピーク値が突状であり、平坦部を有しないものである。しかも等振幅PHで、かつ等ピッチ間隔PWである。すなわち、位相変調された均一化レーザ光は高次振動成分を含まないために、このパルスレーザ光12が被結晶化基板8を照射すると理論的には位相シフタ6の段差6a−6aの幅間隔Wに応じたサイズの大結晶粒をラテラル成長させることが可能になる。
このとき絶縁層の光吸収による発熱効果と蓄熱効果とにより被結晶化膜に熱エネルギが補給されるので、溶融→凝固結晶化→結晶粒ラテラル成長の一連のプロセスが促進され、結晶粒のサイズが大きくなる。なお、図2(c)の光強度分布BPにおいてピーク部の角度θが鋭くなると膜破壊を生じ易くなるので、ピーク部の角度θはできるだけ緩やかな角度となるように光強度分布BPを設定することが望ましい。
なお、上記実施例は基板5に位相シフタ4による変調光を投射するプロジェクション法について説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく所望の距離を離して基板5上に位相シフタ4を設置したプロキシミティ法にも適用することができる。
次に、この結晶化装置1による結晶化方法を具体的に説明する。図1乃至図4と同一部分には、同一符号を付与し、その詳細な説明は重複するので省略する。コントローラ11に予め記憶されたプログラムにより自動的に制御される。コントローラ11は、被結晶化基板8を載置台9の予め定められた位置に搬送制御し、被結晶化基板8を仮固定例えば静電チャック又はバキュームチャックの制御をする。コントローラ11は、仮固定された被結晶化基板8を予め定められた手順で位置合わせする。
コントローラ11は、エキシマレーザ装置2発振させるための制御をする。この結果、エキシマレーザ装置2例えばXeClエキシマレーザ装置2は、発振し、パルスレーザ12を出射する。このパルスレーザ12は、例えばパルス幅例えば30nsec、照射レーザフルエンス例えば1J/cm2のパルスレーザ光50を出射する。このパルスレーザ光12は、凹レンズ3、凸レンズ4により発散収束されてホモジナイザ5に入射する。ホモジナイザ5は、入射したパルスレーザ光12の入射角度と光強度をホモジナイズ(均一化)する。
ホモジナイザ5は、均一化されたパルスレーザ光12を位相シフタ6に入射させ、位相シフタ6は、複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のパルスレーザ光12を出射する。エキシマレーザ装置2から出射されたパルスレーザ光12は、ホモジナイザ5で光強度及び入射角の均一化がされたのち位相シフタ6により複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布に変調され、この光強度分布がプロジェクションレンズ7により被結晶化基板8に結像される。この結果、結像部の非晶質半導体膜17は溶融し、レーザ光が遮断されたのち結晶化される。
この結晶化過程において、被結晶化基板8内においては、次のような過程で非晶質半導体膜17の結晶化が行われる。即ち、複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のパルスレーザ光12が、被結晶化基板8に入射したとき、被結晶化基板8の非晶質半導体膜17のパルスレーザ光入射面上に設けられた光吸収膜である第2のキャップ絶縁膜19に若干吸収される。第2のキャップ絶縁膜19で吸収された残部のほとんどのパルスレーザ光12は、非晶質半導体膜17に入射し、その照射部のみ直ちに厚さ方向に溶融させる。
このときの非晶質半導体膜17の温度上昇は、下地保護膜16および第1のキャップ絶縁膜18、第2のキャップ絶縁膜19に伝達し蓄熱される。この蓄熱効果および、第2のキャップ絶縁膜19の吸収による蓄熱効果は、パルスレーザ光が遮断されたとき非晶質半導体膜17の被照射部が急激に降温することを妨げる。そのため、大粒径の結晶化領域の形成を可能にする。非単結晶半導体膜の非晶質半導体膜17が直ちに厚さ方向に溶融し、パルスレーザ光が遮断されたときフルエンスが最小となる逆ピーク点を起点として凝固(結晶化)が開始し、ラテラル方向(非晶質半導体膜17の厚みに直交する方向)に結晶粒が成長する。
この結晶成長は、下地保護膜16、第1のキャップ絶縁膜18および第2のキャップ絶縁膜19の蓄熱効果により結晶粒のラテラル成長が促進されるので、最終凝固後の結晶粒のサイズが大きくなり、照射部において広範囲の単結晶化が実現される。また、第2のキャップ絶縁膜19の蓄熱効果は、低い結晶化用投入フルエンスで同等の横方向成長距離を得ることを可能にする。
このような結晶化工程は、エキシマレーザ装置2と被結晶化基板8とを相対的に移動例えば、コントローラ11がXYZθステージ10を移動させることにより非晶質半導体膜17の予め定められた領域を連続的又は間欠的に全面にわたって行われる。
本発明者等は、少なくとも1個の薄膜トランジスタのチャネル領域を形成できる程度に大きな結晶粒を、ち密に形成することに関して鋭意研究した結果、従来の平行パルスレーザ光の照射では結晶粒をち密に大粒径化できないという知見を得た。この原因は厳密な意味では明らかにされていないが、以下に述べるようなことがおおよそ推察される。
図5において、平行パルスレーザ光が(a)図に示す位相シフタ6の一つの段差6aを透過した後の光強度分布を(b)図に示す。この光強度分布において、ラテラル方向への結晶成長に寄与しうる成分は最初の逆ピーク波91から次のピーク波92までの間であり、これより外側の高次の波93(振動;干渉縞)はラテラル方向への結晶成長を促進させない成分であると考えられる。このため、ラテラル成長に寄与する主たる逆ピーク波91以外の高次振動の逆ピーク波93からも極めて短時間の結晶粒の成長が生じて、微細な結晶粒が生成されるために、膜全体として均一かつち密に大粒径化できないことがわかった。すなわち、平行パルスレーザ光(ホモジナイズされていない光)を位相変調した光は、高次の振動93を含むために、大粒径の結晶粒を形成することができないことが判明した。
この結晶化は、ホモジナイズされたパルスレーザ光を位相変調光学系および光吸収特性を有する絶縁膜を介して非晶質半導体膜17に入射させることにより大粒径の結晶粒を、ち密に並べて形成することができる。換言すれば、図5(b)の高次振動93を含まない図2(c)に示すような光強度分布をもつパルスレーザ光を非晶質半導体膜17に照射することにより、大粒径の結晶粒をち密(均一)に並べて形成することができる。
上記実施形態の結晶化方法は、光強度分布を最適化したパルスレーザ光、すなわち図5(a)(b)に示す高次の振動93の影響を取り除いた図2(c)に示すようなパルスレーザ光を、光吸収膜であるSiとOの組成比の二酸化シリコン膜と異なる第2のキャップ絶縁膜19としてのシリコン酸化膜を介して結晶化しようとする非晶質半導体膜17(非晶質膜または多結晶膜)に照射する。この結果として、光吸収によりシリコン酸化膜は、膜全体にわたり発熱し、この熱をシリコン酸化膜に所定期間蓄熱し、この蓄熱されたシリコン酸化膜からの熱エネルギを非晶質半導体膜17が蓄熱時間に渉って受けて加熱される。この蓄熱時間のシリコン酸化膜からの加熱により、非晶質半導体膜17の単結晶化がラテラル方向に成長する長さが長くなり、大粒径の結晶粒がち密に並んで形成される。
すなわち、この実施形態の方法は、被結晶化基板8の非晶質半導体膜17のレーザ光入射面に光吸収発熱性の絶縁膜(第2のキャップ絶縁膜19)から直接的に熱エネルギを供給する加熱効果により、従来法と異なり被結晶化基板8を外部から加熱せずとも、室温でかつ低投入フルエンスでも単結晶か又はそれに近い大粒径の結晶粒を得ることができることを見出したものである。
次に、本発明結晶化方法の実施例を図1乃至図8、図12乃至図16を参照して説明する。被結晶化基板8は、図3に示した実施例であり、絶縁体または半導体からなる基板15は例えばシリコン基板48であり、下地保護膜16は、膜厚1000nmの二酸化シリコン膜であり、非晶質半導体膜17は、結晶化の対象となる半導体膜で膜厚50nm〜200nmの非晶質シリコンであり、第1のキャップ絶縁膜18は、膜厚30nmの二酸化シリコン膜であり、第2のキャップ絶縁膜19は、レーザ光12の一部を吸収して発熱する光吸収膜であり、例えばSiとOの組成が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜で膜厚500nmのシリコン酸化膜である。
上記キャップ膜20を有する被結晶化基板8を製造する方法についてさらに具体的に説明する。このような二重キャップ絶縁膜18,19を有する被結晶化基板8に対して、図1に示す結晶化装置1を用いてホモジナイズされたパルスレーザ光50を位相変調して照射し、非晶質シリコン膜を結晶化させ、ラテラル成長させた。
XYZθステージ10により載置台9をX軸,Y軸,Z軸およびθ回転軸の各方向に移動させて結晶化用光学系に対して被結晶化基板8を高精度に位置合せした。
コントローラ11は、エキシマレーザ装置2から照射レーザフルエンスを620mJ/cm2に制御してパルスレーザ光12を出射した。パルスレーザ光12は、ビームエキスパンダを構成する凹レンズ3、凸レンズ4で拡大され、ホモジナイザ5において先ずシリンドリカルレンズ25、コンデンサレンズ26からなる第1のホモジナイザ部により入射角度に関してホモジナイズされ、次いでシリンドリカルレンズ27、コンデンサレンズ28からなる第2のホモジナイザ部により光強度に関してホモジナイズされる。
さらに、ホモジナイズされたパルスレーザ光12は、段差6aをもつ位相シフタ6において180度位相変調された後に、プロジェクションレンズ7を通って被結晶化基板8上の第2のキャップ絶縁膜19(シリコン酸化膜)に入射する。この結果、非晶質シリコン膜の被照射部は、溶融し、パルスレーザ光が遮断されたとき降温し、この降温過程でラテラル方向に結晶化された。この結晶粒は、図6に示すように平均結晶粒径が8μm程度の長さの結晶粒であった。
図6は、この結晶化方法により結晶化させたSi薄膜のSEM像である。SEM像の観察から明らかなように、ラテラル成長して大結晶粒化したSi結晶が生成されていることを確認できた。また、ラテラル成長したSi結晶は、中央の結晶核を起点として横方向に非常に良く伸び出しており、かつち密に並んでいることを確認できた。
パルスレーザ光を1ショット照射後に、コントローラ11は、被結晶化基板8を予め記憶されたプログラムにより自動的に所定ピッチ距離だけ平行移動させ、エキシマレーザ装置2を制御して、次のショットのパルスレーザ光12を被結晶化基板8に照射して非晶質シリコン膜の照射領域にラテラル方向の結晶成長をさせ、大結晶粒化したSi結晶化領域を非晶質シリコン膜に形成した。同様の操作を繰り返すことにより、非晶質シリコン膜の予め定められた素子形成領域に次々に結晶化した。
図7は、横軸にシランガスと笑気ガス(N2O)の流量比を、縦軸にできたシリコン酸化膜の吸収係数(cm-1)をとった特性図である。吸収係数は波長が248nmすなわちKrFエキシマレーザの波長および308nmすなわちXeClエキシマレーザの波長に相当するものである。図7は、図1に示す結晶化装置1において、レーザ装置をKrFエキシマレーザ装置とXeClエキシマレーザ装置とを切替えて得た特性図である。
図7から明らかなように、どちらの波長の場合においても流量比を変化させることにより吸収係数を変化させることが可能であることがわかる。これは、流量比を変化させることにより本来ならば第1のキャップ絶縁膜18である二酸化シリコン膜において膜中のシリコン原子と酸素原子の数の比率がほぼ1対2であるのに対して、第2のキャップ絶縁膜19はSiが多くなるため、吸収係数の値に関しても吸収の非常に小さいSiO2膜から吸収の大きなa−Si膜の値に向かって変化するためであると思われる。
また、それぞれの波長において吸収係数が変化させることが可能であることで、レーザ光の波長が変わってもシリコン酸化膜の吸収係数を所望の値に設定することで同様の効果を得ることが可能である。実施例には示していないが、SiO2の光学バンドギャップは、ほぼ9eV(光の波長に換算すると137nm)であり、a−Siの光学バンドギャップはほぼ1.7eV(光の波長に換算すると727nm)であるため、流量比を制御することによりこの間の波長の光に対して同様の効果を得ることが可能となる。
SiOx膜の透過スペクトルは、図12に示されている。図12は、成膜時のSiH4濃度を変化させたときの波長に対する透過率の特性を示す特性曲線図である。SiOx膜は、それぞれの波長でα〜7000cm−1となるように制御して作製した。実施例サンプルではラテラル成長距離は8μmを超えた。これに対して比較例サンプルのラテラル成長距離は、3μm弱であった。
以上のことから本発明方法を用いて、高充填率で大結晶粒(平均結晶粒径4〜8ミクロン)をラテラル成長させることが可能であることを確認した。
図8は、キャップ膜に光吸収特性を持たせたときの省エネルギー効果を示す特性曲線図であり、横軸にエキシマレーザ装置2から出射されるレーザ光の投入フルエンス(mJ/cm2)を、縦軸に非晶質半導体膜17の結晶化されたときの横方向成長距離(μm)をとった特性図である。図8は、図1に示す結晶化装置1において、エキシマレーザ装置2をKrFエキシマレーザ装置とXeClエキシマレーザ装置とを切替えると、共に第2のキャップ絶縁膜19を、次のように切替えた特性図である。図8から約5μmの横方向結晶成長距離を得るのに、第2のキャップ絶縁膜19を二酸化シリコン膜で形成した黒丸曲線では650mJ/cm2の投入フルエンスであるのに対して、第2のキャップ絶縁膜19をSiOx(xは2以下)膜で形成した白角の曲線では約450mJ/cm2の投入フルエンスである。
投入フルエンスは、約3割低減でき、本発明のSiOxキャップ膜を採用した被結晶化基板8は省エネルギー効果がある。結晶化のためのレーザ光のエネルギーを小さくできることは、結晶化装置1の凹レンズ3、凸レンズ4、ホモジナイザ5、位相シフタ6、プロジェクションレンズ7での上記レーザ光による発熱を低温化でき、高温による光学像に位置ずれ、焦点ボケなどを軽減できる効果が生ずる。KrFエキシマレーザ装置を使用した場合でも、本実施例においては、第2のキャップ絶縁膜19に窒素を含むシリコン酸化膜を用いないため、プロセス上の窒素原子のコンタミネーションが無くなる効果がある。
キャップ膜20の吸収係数値により、Si表面に到達する光量を調節することが可能であり、適度な吸収係数のSiOx膜のx値を2以下に選択することにより、エキシマレーザ装置2からのレーザ光の波長によらず低フルエンスでの横方向の結晶成長が可能になる。結晶性の評価を行なった結果、特に、xは1.4乃至1.9の場合に、結晶粒径、結晶方位共に充分満足する値であった。なお、図8において、黒丸曲線は、第2のキャップ絶縁膜19として二酸化シリコン膜を膜厚200nm成膜した被結晶化基板8の結晶化特性曲線図である。他方の白角曲線は、第2のキャップ絶縁膜19としてSiOx膜(xは2未満)を膜厚250nm成膜した被結晶化基板8の結晶化特性曲線図である。
上記実施形態では、キャップ膜20について、第1のキャップ絶縁膜18を薄く形成し、第1及び第2のキャップ絶縁膜18、19の2層に形成した実施形態について説明したが、波長が300nm以上の結晶化用レーザ光に対して吸収特性を有する第2のキャップ絶縁膜19を有すれば、上記実施形態と同様に室温でも大粒径に結晶化でき、省電力、結晶化の位置ずれの発生を減少させた結晶化方法を得ることができる。
図13は、被結晶化基板8に照射する結晶化用パルスレーザ光の投入フルエンスに対する、レーザ照射直後から非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間の特性曲線図である。黒□点の特性は、キャップ膜20が第1のキャップ絶縁膜18のみの被結晶化基板8の特性である。この被結晶化基板8は、第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜を膜厚200nmに形成し、非晶質シリコン膜を膜厚200nmに形成し、下地保護膜16としてSiO2膜を膜厚30nmに形成した被結晶化基板8の特性である。三角点の特性は、第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜を膜厚30nmに形成し、第2のキャップ絶縁膜19として消衰係数k=0.02のSiOx膜を膜厚250nmに形成し、非晶質シリコン膜を膜厚200nmに形成し、下地保護膜16としてSiO2膜を膜厚30nmに形成した被結晶化基板8の特性である。
第1および第2のキャップ絶縁膜18、19を設けたキャップ膜20による光吸収効果は、固化時間が延伸する効果がある。固化時間とは、位相シフタ6で位相変調された結晶化用のパルスレーザ光が非晶質半導体膜17に入射して、非晶質半導体膜17の被照射領域を溶融し、パルスレーザ光の照射期間が終了した後、溶融領域がゆっくり降温し、固液分岐温度に到達する位置が溶融領域内で移動して全域が固化する時間である。このような固化時間の延伸は、横方向結晶成長距離を長くする。
この様子は、図14に示されている。図14は、時刻t=t0からt=t1後の時点で、横方向成長が位置X1まで進んでいれば、固化する温度Tsを横切る位置がX1方向に移動し、この時点では連続した結晶粒となることを示している。この現象が連続してt=t2まで起これば、単一粒(結晶化領域)で長い横方向成長を得ることができる。即ち、長い横方向成長を得るには、最速横方向成長速度よりも降温速度が遅い方がよい。この遅い降温速度を実現するのが、第2のキャップ絶縁膜19を有するキャップ膜20の効果である。
図14から、長い横方向成長を得るためには、溶融領域の固化時間を延伸すればよいことが判る。光吸収特性を有するキャップ膜20を設けることは、固化時間を延伸する効果について図15を参照して説明する。図15(a)には、キャップ膜20として膜厚130nm形成した第1のキャップ絶縁膜18(SiO2層)のみにより形成した図3に示す被結晶化基板8の構造が示されている。即ち、図15(a)の被結晶化基板8の構造は、第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜の膜厚は、130nmであり、非晶質シリコン膜の膜厚は、50nmであり、下地保護膜16としてSiO2膜の膜厚は1000nmである。図15(b)には、結晶化用のパルスレーザ光が非晶質半導体膜17に入射して、非晶質半導体膜17の被照射領域を溶融し、パルスレーザ光の照射期間が終了した後、20nsec後(X1)と200nsec後(Y1)の被結晶化基板8内各深さ方向での温度を示す。
図15(c)には、図3に示す第1および第2のキャップ絶縁膜18、19を設けた被結晶化基板8の構造が示されている。即ち、図15(c)の被結晶化基板8の構造は、第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜の膜厚は、30nmであり、第2のキャップ膜19としてSiOx膜の膜厚は、320nmであり、非晶質シリコン膜の膜厚は、50nmであり、下地保護膜16としてSiO2膜の膜厚は1000nmである。図15(d)には、図15(c)の被結晶化基板8に結晶化用のパルスレーザ光を照射し、非晶質半導体膜17の被照射領域を溶融し、パルスレーザ光の照射期間が終了した後、20nsec後(X2)と560nsec後(Y2)の被結晶化基板8内各深さ方向での温度を示す。
図15は、図15(a)のキャップ膜20として膜厚130nmのSiO2層からなる第1のキャップ絶縁膜18のみ設けた被結晶化基板8の固化時間は200nsecであるのに対して、図15(c)(図3)に示す第1および第2のキャップ絶縁膜18、19を設けた被結晶化基板8の固化時間は560nsecに延伸している状態を示している。図15(c)(図3)に示す被結晶化基板8は、第1および第2のキャップ膜18、19からなるキャップ膜20であり、蓄えられる熱量が多くなり、より長い固化時間を確保できる。
第2のキャップ絶縁膜19を有するキャップ膜20の機能は、より多くの熱を蓄える機能と遅い降温速度機能である。キャップ膜20の第2のキャップ絶縁膜19は、光吸収機能を有する膜で構成することである。第2のキャップ絶縁膜19の例は、SiOx(x<2.0)である。理想的には、Si(〜1.1eVv:x=0)からSiO2(〜9eV:x=2)まで光学的ギャップを変化させることが可能である。結晶化のために使用するレーザ例えばエキシマレーザの波長で吸収係数を0〜105cm−1程度まで制御可能である。特に、xが1.4≦x≦1.9の範囲にある場合、良好な結晶成長が確認される。図5(a),(c)の被結晶化基板8には、基板15が省略されて示されている。
結晶化のためのレーザ光として例えば波長が308nmのXeClエキシマレーザ光を選択したときのキャップ膜20の厚さに対する結晶化用アニールに寄与する光量の特性は、図16に示す特性曲線である。この特性曲線において、下側曲線は、光吸収なしの従来のキャップ膜の特性曲線である。上側曲線は、k=0.02のSiOx膜による光吸収効果の特性曲線である。高い入射光の利用効率が示されている。
ここで、kは、消衰係数(屈折率の虚数部分)である。図16に示す特性曲線は、光吸収層であるSiOx膜の効果を示す図で、上側曲線と下側曲線の差分だけキャップ膜20により入射レーザ光の利用効率が高くなっていることを示している。
図17は、被結晶化基板8の表面に形成されるキャップ膜20の膜厚に対する、レーザ照射直後から非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間の特性曲線図である。□点の特性は、被結晶化基板8のキャップ膜20が第1のキャップ絶縁膜18のみの場合である。□点の特性は、第1のキャップ絶縁膜18としてのSiO2膜の膜厚に対するレーザ照射直後から非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間の特性曲線図である。即ち、この被結晶化基板8は、基板15上に下地保護膜16としてSiO2膜を膜厚30nm成膜し、この下地保護膜16上に非晶質シリコン膜を膜厚200nm成膜し、この非晶質シリコン膜上にキャップ膜20としてSiO2膜を膜厚100nmから400nmまで変化させて形成したものである。
図17の黒丸点の特性は、第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜を膜厚30nmに形成し、第2のキャップ絶縁膜19として消衰係数k=0.02のSiOx膜を膜厚約100nmから約400nmまで変えてキャップ膜20として形成した被結晶化基板8の特性である。黒丸点の特性は、第2のキャップ絶縁膜19としてのSiOx膜を膜厚に対するレーザ照射直後から非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間の特性曲線図である。即ち、この被結晶化基板8は、基板15上に下地保護膜16としてSiO2膜を膜厚30nm成膜し、この下地保護膜16上に非晶質シリコン膜を膜厚200nm成膜し、この非晶質シリコン膜上にキャップ膜20として第1のキャップ絶縁膜18としてSiO2膜を膜厚30nmに形成し、第2のキャップ絶縁膜19としてSiOx膜を膜厚約100nmから約400nmまで変えて形成したものである。
図17からわかるように、第1および第2のキャップ絶縁膜18、19を設けたキャップ膜20による光吸収効果は、膜厚が厚くなるにつれて非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間が長くなっている。この非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間が長くなることは、非晶質半導体膜17が溶融後、降温時間が長くなり、横方向の結晶成長が長く伸びることを示している。
図17において、他方の第1のキャップ絶縁膜18のみ設けたキャップ膜20による光吸収効果は、膜厚が150nmまでは、非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間が長くなっている。しかし、キャップ膜20の膜厚が、150nmより厚く成るにつれて非晶質半導体膜17は、摂氏1000度になるまでの時間が短くなっている。非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間が短くなることは、非晶質半導体膜17が溶融後、降温時間が短くなり、横方向の結晶成長が比較的短いことを示している。
次に、結晶化された領域に薄膜トランジスタ(TFT)の構成およびその製造方法について図9を参照して説明する。図1乃至図8、図12乃至図16と同一部分には、同一符号を付与し、詳細な説明は重複するので省略する。上述の結晶化方法により大結晶粒化した半導体膜をもつ被結晶化基板8を利用して薄膜トランジスタを作製した。図1〜図8、図12乃至図16と同一部分には、同一符号を付与し、その詳細な説明を省略する。
絶縁体叉は半導体からなる基板15例えば低アルカリガラス基板上に下地保護膜16を形成する。下地保護膜16は、ニ酸化シリコン(SiO2)または窒化シリコンを主成分として含む絶縁膜、例えば膜厚300nmのニ酸化シリコン膜である。下地保護膜16は、ガラス基板に密接して形成されていることが好ましい。上記下地保護膜16は、基板15例えばガラス基板から上記非晶質半導体膜17に不純物が拡散しないように阻止する作用をする膜である。
下地保護膜16の上に非晶質半導体膜又は非単結晶半導体の上記非晶質半導体膜17例えば非晶質シリコン膜を成膜する。非晶質シリコン膜は、例えばプラズマ化学気相成長法によって成膜した膜厚200nmの非晶質Si膜である。
非晶質シリコン膜上に光吸収特性を有する図3に示す第1および第2のキャップ絶縁膜18、19からなるキャップ膜20を形成して、被結晶化基板8を形成する。この被結晶化基板8は、図4に示されたホモジナイザ5によってホモジナイズされたパルスレーザ光を位相シフタ4に入射させ位相変調して図2(c)に示す複数の断面逆三角形状ピークパターンを有する光強度分布のパルスレーザ光12を形成し、このレーザ光12を被結晶化基板8に照射して結晶化工程を終了する。
次に、結晶化した非晶質半導体膜17上の第1および第2のキャップ絶縁膜18、19をエッチングにより除去する。次に、露出した非晶質半導体膜17の結晶化された領域に位置合わせして半導体回路例えば図9に示す薄膜トランジスタ35を次のようにして製造する。まず活性領域の形状を規定するためにフォトリソグラフィを用いてパターニングし、平面視野内でチャネル領域36およびソース領域37およびドレイン領域38のそれぞれに略対応する予め定められた所定パターンのSiアイランド39を形成した。このとき、チャネル領域36は、上記結晶化された領域に形成される。
次に、チャネル領域36、ソース領域37およびドレイン領域38上にゲート絶縁膜40を形成する。このゲート絶縁膜40は、ニ酸化シリコンあるいは酸窒化シリコン(SiON)を主成分とする材料で、厚さ10〜200nmのニ酸化シリコン膜、あるいは30〜500nmの酸窒化シリコン膜である。本実施例では、シリコンに接する側として3nmの二酸化シリコン膜41を、その上側にプラズマCVD法で、シランガスとアンモニアガス、笑気ガスを原料とした酸窒化シリコン膜42(SiON膜)を50nmの厚さで形成してゲート絶縁膜40とした。2層とした理由は、シリコンの界面側では界面準位密度の低い二酸化シリコン膜41を、上側はリーク電流を小さくするために誘電率の高いSiON膜42を用いたものであるが、これに限定されるものではなく、1層のみでも本発明の趣旨は逸脱しない。また本実施例では示していないが、ゲート絶縁膜40の下側の二酸化シリコン膜41として酸素プラズマなどで島状のSiアイランド39の表面を酸化した膜を用いることも可能である。
次に、ゲート絶縁膜40上にゲート電極43を形成するために導電層を形成した。導電層は、Ta、Ti、W、Mo、Al等の元素を主成分とする材料を用い、スパッタ法や真空蒸着法などの公知の成膜法を用いて形成した。例えばMo−W合金とした。フォトリソグラフィを用いてゲート電極用金属層をパターニングし、所定パターンのゲート電極43を形成した。
次に、ゲート電極43をマスクとして不純物を注入することによりソース領域37およびドレイン領域38を形成した。例えば、pチャネル型TFTを形成する場合、イオン注入法を用いて例えばボロンイオン等のp型不純物の注入を行う。この領域のボロン濃度は、例えば1.5×1020〜3×1021cm−3となるようにした。このようにしてpチャネル型TFTのソース領域37およびドレイン領域38を構成する高濃度p型不純物領域を形成する。このとき、n型不純物の注入を行えばnチャネル型TFTが形成されることはいうまでもない。
次いで、イオン注入法により注入した不純物元素を活性化するために熱処理工程を行う。この工程は、ファーネスアニール法、レーザアニール法、ラピッドサーマルアニール法などの方法で行うことができる。本実施の形態では、ファーネスアニール法で活性化工程を行った。加熱処理は、窒素雰囲気中において摂氏300〜650度の温度域で行うことが望ましく、本実施例では摂氏500度で4時間の熱処理を行った。
次に、ゲート電極43およびゲート絶縁膜40の上に層間絶縁
膜44を形成した。層間絶縁膜44は窒化シリコン膜、ニ酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜またはそれらを組み合わせた積層膜で形成すれば良い。また、膜厚は200〜600nmとすれば良く、本実施例では400nmとした。
次に、層間絶縁膜44における予め定められた所定の位置にコンタクトホールを開口する。そして、コンタクトホールの内部および層間絶縁層44の表面上に導電層を形成し、この導電層を所定の形状にパターニングする。本実施例ではこのソース・ドレイン電極37、38を、Ti膜を100nm、Tiを含むアルミニウム膜300nm、Ti膜150nmをスパッタ法で連続して形成した3層構造の積層膜とした。このようにして図8に示す薄膜トランジスタ35を形成した。
以下、上述の実施形態で得られるような薄膜トランジスタを実際にアクティブマトリクス型液晶表示装置に適用した例について説明する。図10は薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型表示装置の一例を示す図である。表示装置70は一対の絶縁基板71、72と両者の間に保持された電気光学物質73とを備えたパネル構造を有する。電気光学物質73としては液晶材料が広く用いられている。下側の絶縁基板71には画素アレイ部74と駆動回路部とが集積形成されている。駆動回路部は垂直駆動回路75と水平駆動回路76とに分かれている。
また、絶縁基板71の周辺部上端には外部接続用の端子部77が形成されている。端子部77は配線78を介して垂直駆動回路75及び水平駆動回路76に接続している。画素アレイ部74には行状のゲート配線79と列状の信号配線80が形成されている。両配線の交差部には画素電極81とこれを駆動する薄膜トランジスタ82が形成されている。薄膜トランジスタ82のゲート電極は対応するゲート配線79に接続され、ドレイン領域は対応する画素電極81に接続され、ソース領域は対応する信号配線80に接続されている。ゲート配線79は垂直駆動回路75に接続する一方、信号配線80は水平駆動回路76に接続している。
画素電極81をスイッチング駆動する薄膜トランジスタ82及び垂直駆動回路75と水平駆動回路76に含まれる薄膜トランジスタは、本発明に従って作製されたものであり、従来に比較して移動度が高くなっている。従って、駆動回路ばかりでなく更に高性能な処理回路を集積形成することも可能である。
以上説明したように上記実施形態によれば、光強度が単調増加と単調減少を繰り返すパターンの光強度分布となるように変調されたパルスレーザ光を非単結晶半導体膜に照射するので、高次の振動成分が低減され、その振動成分に起因する小粒径結晶の出現が有効に抑制されるとともに、さらに光吸収発熱性の膜の方からパルスレーザ光を入射して、光吸収発熱性の膜の疑似基板加熱効果により結晶化対象である半導体膜を昇温するので、結晶粒のラテラル成長距離が大幅に促進され、大粒径の結晶粒をち密に形成することができる。
また、結晶化工程において低温、例えば室温およびその近傍の温度域(例えば摂氏5〜50度)のような低温であっても大粒径の結晶化を行なうことができる。さらに、レーザ光エネルギーを低フルエンス化することができる。結晶化のための入射レーザ光のエネルギーは、例えば、従来構造の被結晶化基板より1/2、SiO2のみキャップ膜を設けた被結晶化基板より3/4のエネルギー光で同一大きさの横方向の成長距離の結晶化領域を得ることができた。
上記実施形態では、光吸収性を有する第2のキャップ絶縁膜19としてSiOx膜(xは、2未満である。)として説明したが、x値は、1.4〜1.8が望ましい。さらに、x値は、1.4乃至1.9で結晶粒径、結晶方位ともに充分満足する値であった。
さらに、本実施形態において、エキシマレーザ装置2としては、例えば308nmのレーザ光を発振するXeClエキシマレーザ装置を使用したが、波長が248nmのレーザ光を発振するKrFエキシマレーザ装置でも同様の良好な効果が得られたことを確認している。この波長が300nm以下のレーザ光による結晶化プロセスは、光吸収による光学系の発熱で、焦点ボケや結晶化位置の位置ズレが許容される範囲で使用することが望ましい。従って、本発明の他の実施形態として、波長が248nmのレーザ光を発振するKrFエキシマレーザ装置をエキシマレーザ装置2として使用してもよい。
本発明の結晶化方法を説明するための結晶化装置の構成を示す構成ブロック図。
図1の位相シフタの構成と、この位相シフタにより変調された光強度分布を説明するための図で、 (a)は位相シフタの平面図、(b)は(a)図の断面図、(c)は位相シフタを通過し位相変調されたレーザ光の光強度分布を示す図、(d)は(c)図のレーザ光の光強度分布を三次元的に示す図。
図1の被結晶化基板の構成を説明するための断面図。
図1のホモジナイザの光学系を説明するための構成図。
図1の位相シフタの光学特性を説明するための図。
図1の結晶化装置により被結晶化基板の結晶化領域の表面形状を説明するためのSEM像。
図3の第2のキャップ絶縁膜として所望する光吸収特性を得るための成膜時のSiH4濃度依存性を示す特性図である。
図3の光吸収特性を有する第2のキャップ絶縁膜による省エネルギー効果を説明するための特性曲線図。
図1の結晶化装置により結晶化された結晶化領域に薄膜トランジスタを形成する工程を説明するための断面模式図。
図8の薄膜トランジスタにより表示装置を形成する工程を説明するための表示装置の斜視図。
従来の結晶化装置を説明するための構成図。
図3のSiOx膜の成膜の際に使用するSiH4の濃度を変えたときの透過スペクトル。
図3の光吸収特性を有する第2のキャップ絶縁膜による省エネルギー効果を、従来のキャップ膜の特性と比較して示す特性曲線図。
図3の被結晶化基板の非晶質半導体膜の横方向結晶成長長さに対する非晶質半導体膜温度との関係を示す図。
図3の第2のキャップ絶縁膜による光吸収効果を従来のキャップ膜の特性と比較して示す図。
図3の被結晶化基板のキャップ膜の厚さに対するアニールに寄与する光量との関係を従来のキャップ膜の特性と比較して示す図。
図3の被結晶化基板8の表面に形成されるキャップ膜20の膜厚に対する、レーザ照射直後から非晶質半導体膜17が摂氏1000度になるまでの時間の特性曲線図である。
符号の説明
1:結晶化装置、 2:エキシマレーザ装置、 3、4:光学系、
5:ホモジナイザ、 6:位相シフタ、 7:プロジェクションレンズ、
8:被結晶化基板、 9:載置台、 10:XYZθステージ、
11:コントローラ、 12:パルスレーザ光、 15:基板、 16:下地保護膜、 17:非晶質半導体膜、 18:第1のキャップ絶縁膜、 19:第2のキャップ絶縁膜、 20:キャップ膜、 25:第1のシリンドリカルレンズ、 26:第1のコンデンサ光学系、 27:第2のシリンドリカルレンズ、 28:第2のコンデンサ光学系、 35:薄膜トランジスタ、 36:チャネル領域、 37:ソース領域、 38:ドレイン領域、 39:Siアイランド、 40:ゲート絶縁膜、
41:二酸化シリコン膜、 42:SiON膜、 43:ゲート電極、 44:層間絶縁膜、 70:表示装置、 71、72:絶縁基板、 73:電気光学物質、 74:画素アレイ部、 75:垂直駆動回路、 76、水平駆動回路、 77:端子部、 78:配線、 79:ゲート配線、 80:信号配線、 81:画素電極、 82:薄膜トランジスタ。