JP2007256430A - 耐摩耗製品の製造方法および耐摩耗製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハードコート層を十分に硬化して表面層の耐摩耗性を向上させることができる耐摩耗製品の製造方法およびこの製造方法により製造された耐摩耗製品を提供すること。
【解決手段】基材上にハードコート層が形成された耐摩耗製品であるプラスチック眼鏡レンズを製造する。ハードコート層形成工程は、加水分解反応および縮合反応により硬化するハードコート液を前記基材上へ塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記ハードコート液を乾燥して塗膜とする乾燥工程と、前記乾燥工程後に前記塗膜を加圧して硬化させる加圧工程とを備える。
【選択図】なし
Description
本発明は、ハードコート層を備えた耐摩耗製品の製造方法および耐摩耗製品に関する。
従来、眼鏡レンズ等の光学部品の基材として、プラスチック製の基材が使用されている。プラスチック製の基材は、ガラス製の基材に比べ、軽量であり、成形性にも優れるものの、表面が非常に傷つきやすい。そこで、一般に、プラスチック製の基材上にハードコート層を形成し、耐摩耗性の向上を図っている。
例えば、プラスチック製の基材に硬化前のハードコート液を塗布した後、所定の加熱処理により硬化させることでハードコート層を形成する方法がよく用いられる。この硬化反応が不十分であると、ハードコート層による耐摩耗効果が十分に発揮できない。
そこで、ハードコート液を硬化させる工程を、仮焼成工程と本焼成工程との2段階に分けて、硬化反応をより完全に行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
例えば、プラスチック製の基材に硬化前のハードコート液を塗布した後、所定の加熱処理により硬化させることでハードコート層を形成する方法がよく用いられる。この硬化反応が不十分であると、ハードコート層による耐摩耗効果が十分に発揮できない。
そこで、ハードコート液を硬化させる工程を、仮焼成工程と本焼成工程との2段階に分けて、硬化反応をより完全に行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の方法によってもハードコート液の硬化は完全ではないため、光学部品の耐摩耗性が十分であるとはいえなかった。また、ハードコート層の上には、一般に反射防止膜が形成されるため、ハードコート層自身の硬度や反射防止膜との密着性が十分でないと、光学部品が外界から物理的刺激を受けた場合に、いわゆる膜剥離を起こす可能性もある。特に、有機反射防止膜をハードコート層の上に形成した場合は、無機反射防止膜にくらべて表面が柔らかいため、ハードコート層の影響を強く受ける。
そこで、本発明の目的は、ハードコート層を十分に硬化して表面層の耐摩耗性を向上させることができる耐摩耗製品の製造方法、およびこの製造方法により製造された耐摩耗製品を提供することにある。
本発明の耐摩耗製品の製造方法は、基材上にハードコート層を形成する耐摩耗製品の製造方法であって、前記ハードコート層は、前記ハードコート層を形成するためのハードコート液を前記基材上へ塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記ハードコート液を乾燥して塗膜とする乾燥工程と、前記乾燥工程後に前記塗膜を加圧して硬化させる加圧工程と、を含むハードコート層形成工程により形成されることを特徴とする。
この本発明によれば、基材上にハードコート液を塗布した後、乾燥工程に引き続いて、加圧することで乾燥後の塗膜の更なる硬化を行うことができるので、いわゆる焼成工程が不要となる。それ故、プラスチック製基材のように熱で変質しやすい基材に好適に使用することができる。
この本発明によれば、基材上にハードコート液を塗布した後、乾燥工程に引き続いて、加圧することで乾燥後の塗膜の更なる硬化を行うことができるので、いわゆる焼成工程が不要となる。それ故、プラスチック製基材のように熱で変質しやすい基材に好適に使用することができる。
本発明では、前記ハードコート層を形成するためのハードコート液が以下の(A)成分と(B)成分とを含むことが好ましい。
(A)一般式:R1SiX1 3で示される有機ケイ素化合物
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、例えば、炭素数1〜6の炭化水素基である。X1は、加水分解性基を示す。)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子
本発明によれば、ハードコート液が、硬化成分として所定の有機ケイ素化合物およびルチル型の結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を含んでいるので、本発明のハードコート層形成工程により、硬化成分が加水分解反応を経て縮合反応(硬化反応)し、塗膜の硬化が促進されるため、硬化後のハードコート層として十分な硬度を持つことができ、光学部品表面の耐擦傷性を向上させることができる。
なお、本発明では、前記加圧工程あるいは前記焼成工程の後段で、ハードコート層上へ湿式法あるいは乾式法による有機・無機反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程を備えることが好ましい。
ここで、加圧工程における加圧媒体としては、気体でも液体でもよい。気体を用いる場合は、空気でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性気体を用いると、塗膜の硬化に悪影響を及ぼす可能性が低くなるため好ましい。加圧媒体として液体を用いる場合は水が好ましい。静水圧により塗膜を加圧すると、加圧と同時に水分を供給できるため、塗膜内における加水分解反応が促進される。その結果、加水分解反応で生じた塗膜中の硬化成分の反応基が縮合反応し、塗膜の硬化が促進される。
塗膜内の硬化反応を円滑に進め、十分に硬いハードコート層とするには、加圧工程における圧力は、2〜1000MPaであることが好ましい。
また、塗膜内の硬化反応を円滑に進めるには、加圧時の温度は、25〜140℃であることが好ましい。
加圧時間は1〜300分間が好ましい。
(A)一般式:R1SiX1 3で示される有機ケイ素化合物
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、例えば、炭素数1〜6の炭化水素基である。X1は、加水分解性基を示す。)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子
本発明によれば、ハードコート液が、硬化成分として所定の有機ケイ素化合物およびルチル型の結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を含んでいるので、本発明のハードコート層形成工程により、硬化成分が加水分解反応を経て縮合反応(硬化反応)し、塗膜の硬化が促進されるため、硬化後のハードコート層として十分な硬度を持つことができ、光学部品表面の耐擦傷性を向上させることができる。
なお、本発明では、前記加圧工程あるいは前記焼成工程の後段で、ハードコート層上へ湿式法あるいは乾式法による有機・無機反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程を備えることが好ましい。
ここで、加圧工程における加圧媒体としては、気体でも液体でもよい。気体を用いる場合は、空気でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性気体を用いると、塗膜の硬化に悪影響を及ぼす可能性が低くなるため好ましい。加圧媒体として液体を用いる場合は水が好ましい。静水圧により塗膜を加圧すると、加圧と同時に水分を供給できるため、塗膜内における加水分解反応が促進される。その結果、加水分解反応で生じた塗膜中の硬化成分の反応基が縮合反応し、塗膜の硬化が促進される。
塗膜内の硬化反応を円滑に進め、十分に硬いハードコート層とするには、加圧工程における圧力は、2〜1000MPaであることが好ましい。
また、塗膜内の硬化反応を円滑に進めるには、加圧時の温度は、25〜140℃であることが好ましい。
加圧時間は1〜300分間が好ましい。
本発明では、乾燥工程における乾燥温度が60〜100℃であり、乾燥時間が10〜90分間であることが好ましい。
この発明によれば、加圧工程の前にすでに、乾燥工程で加熱されているため、ハードコート液のいわゆる仮焼成が進行しており、後工程である加圧工程による硬化反応が円滑に進むようになる。
本発明では、加圧工程後に得られた前記ハードコート層をさらに焼成する焼成工程を備えることが好ましい。
この発明によれば、加圧工程と焼成工程の2工程を備えることで、ハードコート層の一層の硬化促進が可能となり、表面の耐摩耗性をさらに向上させることが可能となる。特に、加圧が静水圧による場合、塗膜の硬化反応を、本焼成工程により完結させることにより、より硬化が促進されたハードコート層を得ることが出来る。
焼成工程における加熱温度は、100〜140℃程度が好ましく、加熱時間としては15〜180分間程度が好ましい。
この発明によれば、塗膜の硬化反応を本焼成工程により完結させることが可能となり、より硬化が促進されたハードコート層を得ることが出来る。
この発明によれば、加圧工程の前にすでに、乾燥工程で加熱されているため、ハードコート液のいわゆる仮焼成が進行しており、後工程である加圧工程による硬化反応が円滑に進むようになる。
本発明では、加圧工程後に得られた前記ハードコート層をさらに焼成する焼成工程を備えることが好ましい。
この発明によれば、加圧工程と焼成工程の2工程を備えることで、ハードコート層の一層の硬化促進が可能となり、表面の耐摩耗性をさらに向上させることが可能となる。特に、加圧が静水圧による場合、塗膜の硬化反応を、本焼成工程により完結させることにより、より硬化が促進されたハードコート層を得ることが出来る。
焼成工程における加熱温度は、100〜140℃程度が好ましく、加熱時間としては15〜180分間程度が好ましい。
この発明によれば、塗膜の硬化反応を本焼成工程により完結させることが可能となり、より硬化が促進されたハードコート層を得ることが出来る。
本発明の耐摩耗製品は、上述した何れかの耐摩耗製品の製造方法により製造されたことを特徴とする。
このような本発明の耐摩耗製品は、上述した何れかの光学部品の製造方法により製造されているため、ハードコート層が非常に硬く、また、基材や反射防止膜との密着性も向上している。それ故、本発明の耐摩耗製品は、耐摩耗性が非常に向上したものとなっている。
このような耐摩耗製品としてはプラスチック眼鏡レンズや、プラスチック製ディスプレイパネル、光ディスク等が挙げられる。光ディスクとしては、例えば、CD系光ディスクやDVD系光ディスク等が挙げられる。
このような本発明の耐摩耗製品は、上述した何れかの光学部品の製造方法により製造されているため、ハードコート層が非常に硬く、また、基材や反射防止膜との密着性も向上している。それ故、本発明の耐摩耗製品は、耐摩耗性が非常に向上したものとなっている。
このような耐摩耗製品としてはプラスチック眼鏡レンズや、プラスチック製ディスプレイパネル、光ディスク等が挙げられる。光ディスクとしては、例えば、CD系光ディスクやDVD系光ディスク等が挙げられる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の耐摩耗製品は、プラスチック眼鏡レンズであり、透明なプラスチック製の基材と、この基材上に形成されたハードコート層と、このハードコート層上に形成された有機反射防止膜、及び撥水膜とを備えている。
本実施形態の耐摩耗製品は、プラスチック眼鏡レンズであり、透明なプラスチック製の基材と、この基材上に形成されたハードコート層と、このハードコート層上に形成された有機反射防止膜、及び撥水膜とを備えている。
(1.基材)
基材の材質としては、プラスチック製であればよく、特に限定されないが、屈折率が1.6以上の透明な素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを、重合硬化して製造される、エピスルフィド系プラスチックを基材の素材として使用することができる。
基材の材質としては、プラスチック製であればよく、特に限定されないが、屈折率が1.6以上の透明な素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを、重合硬化して製造される、エピスルフィド系プラスチックを基材の素材として使用することができる。
ポリチオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
イソシアナート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
イソシアナート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
また、メルカプト基を持つ化合物としても、公知の物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
また、エピスルフィド系プラスチックの原料モノマーとして用いられる、エピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
本発明における基材の重合方法としては、特に限定される物ではなく、一般に基材の製造に用いられている重合方法が、何ら制限なく使用される。例えば、ビニル系モノマーを用いる場合には、有機過酸化物等の熱重合開始剤を用いて、熱硬化を行い、基材を製造することができる。また、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を用いて、紫外線を照射することによってモノマーを硬化させ、基材を製造することもできる。
イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチックを、基材の素材として使用する場合には、イソシアネート基または、イソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を混合した後、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱硬化することによって製造できる。
硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合させることによって得られる、エピスルフィド系のプラスチックを基材の素材として使用する場合には、エピスルフィド基を持つ化合物を単独で、または、エピスルフィド基と共重合可能な他のモノマーと混合した後、エポキシ樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。
エポキシ樹脂用の硬化触媒は特に制限はないが、具体例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、エチルメチルイミダゾール等のイミダゾール類、などが挙げられる。
また、エピスルフィド基を持つ化合物と共重合可能な他のモノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。
また、エピスルフィド基を持つ化合物と共重合可能な他のモノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。
水酸基を持つ化合物の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート等の多価アルコール類が挙げられる。メルカプト基を持つ化合物の具体例としては、チオフェノール、エチルチオグリコレート、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
なお、上述したプラスチック製の基材には、必要に応じて染色処理が施される。また、基材には、後述するハードコート層との密着性を向上させるために適当なプライマー層を形成してもよい。
なお、上述したプラスチック製の基材には、必要に応じて染色処理が施される。また、基材には、後述するハードコート層との密着性を向上させるために適当なプライマー層を形成してもよい。
(2.ハードコート層)
本実施形態のハードコート層は、以下の(A)成分と(B)成分とから形成される。
(A)一般式:R1SiX1 3で示される有機ケイ素化合物
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、X1は、加水分解性基を示す)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子
本実施形態のハードコート層は、以下の(A)成分と(B)成分とから形成される。
(A)一般式:R1SiX1 3で示される有機ケイ素化合物
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、X1は、加水分解性基を示す)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子
(A)成分は、ハードコート層のバインダー剤としての役割を果たす。
(A)成分の化学式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、炭素数は1〜6である。R1はビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
また、X1は、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
(A)成分の化学式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、炭素数は1〜6である。R1はビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
また、X1は、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
(A)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。
この(A)成分の有機ケイ素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
この(A)成分の有機ケイ素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
(B)成分の酸化チタンの平均粒径は、1〜200nm、好ましくは5〜30nmである。また、(B)成分の無機酸化物粒子は、酸化チタンのみを含有するものであってもよく、酸化チタンと他の無機酸化物とを含有するものであってもよい。
例えば、酸化チタンと、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属の酸化物を混合して使用してもよい。
さらに、(B)成分の無機酸化物粒子は、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよい。
複合粒子を使用する場合には、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用すればよい。
例えば、酸化チタンと、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属の酸化物を混合して使用してもよい。
さらに、(B)成分の無機酸化物粒子は、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよい。
複合粒子を使用する場合には、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用すればよい。
(B)成分を(A)成分と混合して、ハードコート層を形成するためのハードコート液を調製する際には、(B)成分が分散したゾルと、(A)成分とを混合することが好ましい。
(B)成分であるルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を分散媒、例えば、水、アルコールもしくはその他の有機溶媒に分散させる。無機酸化物粒子の分散安定性を高めるために、無機酸化物粒子の表面を有機珪素化合物、アミン系化合物で処理してもよい。
この際、使用される有機ケイ化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が例示できる。
アミン系化合物としては、アンモニウム、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが例示できる。
これらの有機珪素化合物、アミン化合物の添加量は、無機酸化物粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲であることが好ましい。
(B)成分であるルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を分散媒、例えば、水、アルコールもしくはその他の有機溶媒に分散させる。無機酸化物粒子の分散安定性を高めるために、無機酸化物粒子の表面を有機珪素化合物、アミン系化合物で処理してもよい。
この際、使用される有機ケイ化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が例示できる。
アミン系化合物としては、アンモニウム、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが例示できる。
これらの有機珪素化合物、アミン化合物の添加量は、無機酸化物粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲であることが好ましい。
(B)成分の配合量は、ハードコート層の硬度や、屈折率等により決定されるものであるが、ハードコート液中の固形分の5〜80質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。配合量が少なすぎると、ハードコート層の耐磨耗性が不十分となり、配合量が多すぎると、ハードコート層にクラックが生じることがある。また、ハードコート層を染色する場合には、染色性が低下する場合もある。
さらに、ハードコート層は、(A)成分、(B)成分だけでなく、(C)成分として、多官能性エポキシ化合物を含有してもよい。
多官能性エポキシ化合物は、基材に対するハードコート層の密着性を向上させるとともに、ハードコート層の耐水性を向上させることができる。
ハードコート層上の反射防止膜を有機膜で形成した場合には、反射防止膜の膜厚が非常に薄くなることが多く、特に、反射防止膜に内部空洞を有するシリカ系微粒子を使用する場合には、水を通すために、ハードコート層に耐水性が必要となる。
多官能性エポキシ化合物は、基材に対するハードコート層の密着性を向上させるとともに、ハードコート層の耐水性を向上させることができる。
ハードコート層上の反射防止膜を有機膜で形成した場合には、反射防止膜の膜厚が非常に薄くなることが多く、特に、反射防止膜に内部空洞を有するシリカ系微粒子を使用する場合には、水を通すために、ハードコート層に耐水性が必要となる。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
なかでも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
さらに、ハードコート層に硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒としては、例えば、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトナート、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。
この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナートが挙げられる。中でも、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートを使用することが好ましい。
硬化触媒の添加量は、ハードコート液の固形分濃度の0.01〜5.0質量%の範囲内が望ましい。
この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナートが挙げられる。中でも、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートを使用することが好ましい。
硬化触媒の添加量は、ハードコート液の固形分濃度の0.01〜5.0質量%の範囲内が望ましい。
ハードコート層の膜厚は、0.05〜30μmであることが好ましい。0.05μm未満では、基材を保護するというハードコート層の基本的機能が発揮できず、30μmを超えると、ハードコート層の表面の平滑性が損なわれることとなる。
(3.反射防止膜)
本実施形態では、ハードコート層の上に反射防止膜を形成する。この反射防止膜は、湿式法による有機反射防止膜であって、単層の有機膜で構成されており、ハードコート層よりも0.10以上屈折率が低く、膜厚は50〜150nmである。
有機反射防止膜の屈折率は、ハードコート層よりも、0.10以上低ければよいが、0.15以上低いことが好ましく、さらには、0.20以上低いことが特に、好ましい。
有機反射防止膜は、以下の(D)成分、(E)成分を含有する。
(D)一般式:R2R3 nSiX2 3−n(式中、R2は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2は加水分解基であり、nは0または1である)で示される有機ケイ素化合物
(E)内部空洞を有するシリカ系微粒子
本実施形態では、ハードコート層の上に反射防止膜を形成する。この反射防止膜は、湿式法による有機反射防止膜であって、単層の有機膜で構成されており、ハードコート層よりも0.10以上屈折率が低く、膜厚は50〜150nmである。
有機反射防止膜の屈折率は、ハードコート層よりも、0.10以上低ければよいが、0.15以上低いことが好ましく、さらには、0.20以上低いことが特に、好ましい。
有機反射防止膜は、以下の(D)成分、(E)成分を含有する。
(D)一般式:R2R3 nSiX2 3−n(式中、R2は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2は加水分解基であり、nは0または1である)で示される有機ケイ素化合物
(E)内部空洞を有するシリカ系微粒子
(D)成分のR2の重合可能な反応基を有する有機基は、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
(D)成分のR3の炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が例示できる。
さらに(D)成分のX2としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
(D)成分のR3の炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が例示できる。
さらに(D)成分のX2としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
(D)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等があげられる。これら2種類以上を混合して用いてもよい。
(E)成分の内部空洞を有するシリカ系微粒子の平均粒径は、以下のようであることが好ましい。
(平均粒径)=(設計波長(nm)/反射防止膜屈折率)×1/4
(E)成分の内部空洞を有するシリカ系微粒子の平均粒径は、以下のようであることが好ましい。
(平均粒径)=(設計波長(nm)/反射防止膜屈折率)×1/4
有機反射防止膜には、上記(D)成分、(E)成分の他に、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の樹脂や、これらの樹脂の原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを添加することが可能である。
さらに、これらの成分以外に、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン、ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料等を添加し、耐光性、塗布性の向上を図ってもよい。
さらに、これらの成分以外に、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン、ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料等を添加し、耐光性、塗布性の向上を図ってもよい。
(4.撥水膜)
前述のような有機反射防止膜の上には、水滴をはじくための撥水膜が形成される。撥水膜を形成するための撥水剤としては、フッ素系撥水剤が好適に用いられる。フッ素系撥水剤の具体例としては、GE東芝シリコーン株式会社製TSL8233、TSL8257やダイキン工業株式会社製オプツールDSXなどが上げられる。
前述のような有機反射防止膜の上には、水滴をはじくための撥水膜が形成される。撥水膜を形成するための撥水剤としては、フッ素系撥水剤が好適に用いられる。フッ素系撥水剤の具体例としては、GE東芝シリコーン株式会社製TSL8233、TSL8257やダイキン工業株式会社製オプツールDSXなどが上げられる。
(5.プラスチック眼鏡レンズの製造方法)
以上のようなプラスチック眼鏡レンズは以下のようにして製造される。ここでは、ハードコート層形成工程以降について詳述する。
(5-1.ハードコート層形成工程)
本実施形態では、ハードコート層形成工程は、以下のように、調製工程、塗布工程、乾燥工程、加圧工程、および焼成工程に分かれる。ただし、焼成工程はなくともよい。なお、基材とハードコート層との間に、密着性や耐衝撃性向上を目的として、プライマー層を一層設けてもよい。
以上のようなプラスチック眼鏡レンズは以下のようにして製造される。ここでは、ハードコート層形成工程以降について詳述する。
(5-1.ハードコート層形成工程)
本実施形態では、ハードコート層形成工程は、以下のように、調製工程、塗布工程、乾燥工程、加圧工程、および焼成工程に分かれる。ただし、焼成工程はなくともよい。なお、基材とハードコート層との間に、密着性や耐衝撃性向上を目的として、プライマー層を一層設けてもよい。
(5-1-1.調製工程)
まず、ハードコート層を形成するためのハードコート液を調製する。
(A)成分の有機珪素化合物を有機溶剤に溶かし、水や塩酸等を添加して加水分解させて、加水分解物を生成する。この加水分解物に(B)成分の無機酸化物粒子が分散したゾルを添加する。
さらに、必要に応じて、硬化触媒、多官能性エポキシ化合物等を添加する。硬化触媒としては、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートがハードコート液のポットライフを長くすることができる点で好適である。
まず、ハードコート層を形成するためのハードコート液を調製する。
(A)成分の有機珪素化合物を有機溶剤に溶かし、水や塩酸等を添加して加水分解させて、加水分解物を生成する。この加水分解物に(B)成分の無機酸化物粒子が分散したゾルを添加する。
さらに、必要に応じて、硬化触媒、多官能性エポキシ化合物等を添加する。硬化触媒としては、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートがハードコート液のポットライフを長くすることができる点で好適である。
(5-1-2.塗布工程)
ハードコート液を基材上に塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。基材とハードコート層との密着性を高めるために、ハードコート液を塗布するまえに、基材にアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、プラズマ処理等を行っても良い。
ハードコート液を基材上に塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。基材とハードコート層との密着性を高めるために、ハードコート液を塗布するまえに、基材にアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、プラズマ処理等を行っても良い。
(5-1-3.乾燥工程)
ハードコート液を塗布後、ハードコート液を乾燥して、塗膜を得るための乾燥を行う。この乾燥のための加熱手段は、ハードコート液の種類によって選択されるが、熱風によるもの、赤外線によるものなどがある。
乾燥温度としては、常温(25℃)よいが、60〜100℃が好ましい。すなわち、必ずしも加熱する必要はないが、いわゆる仮焼成を行うためには加熱したほうがよい。100℃を超えると溶剤の急激な蒸発により外観が悪化するおそれがある。また、乾燥時間としては10〜90分間が好ましい。10間未満では乾燥が不十分であり、乾燥時間が90分間を越えても乾燥効果は特に向上しない。
ハードコート液を塗布後、ハードコート液を乾燥して、塗膜を得るための乾燥を行う。この乾燥のための加熱手段は、ハードコート液の種類によって選択されるが、熱風によるもの、赤外線によるものなどがある。
乾燥温度としては、常温(25℃)よいが、60〜100℃が好ましい。すなわち、必ずしも加熱する必要はないが、いわゆる仮焼成を行うためには加熱したほうがよい。100℃を超えると溶剤の急激な蒸発により外観が悪化するおそれがある。また、乾燥時間としては10〜90分間が好ましい。10間未満では乾燥が不十分であり、乾燥時間が90分間を越えても乾燥効果は特に向上しない。
(5-1-4.加圧工程)
本工程により、塗膜が加圧されるとともに硬化反応が促進され、ハードコート層が形成される。
加圧する媒体としては、気体あるいは液体が使用される。従って、プラスチック眼鏡レンズの基材のように曲面を有していても均一な加圧が可能である。
加圧媒体としての気体は空気でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性気体のほうが硬化時の副反応を起こさない点で好ましい。また、加圧媒体として液体を用いる場合は水が好ましく、いわゆる静水圧による加圧が簡便で好ましい。静水圧を用いると、塗膜内の硬化反応(有機ケイ素化合物の加水分解および重合)を促進する点でも好ましい。
本工程により、塗膜が加圧されるとともに硬化反応が促進され、ハードコート層が形成される。
加圧する媒体としては、気体あるいは液体が使用される。従って、プラスチック眼鏡レンズの基材のように曲面を有していても均一な加圧が可能である。
加圧媒体としての気体は空気でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性気体のほうが硬化時の副反応を起こさない点で好ましい。また、加圧媒体として液体を用いる場合は水が好ましく、いわゆる静水圧による加圧が簡便で好ましい。静水圧を用いると、塗膜内の硬化反応(有機ケイ素化合物の加水分解および重合)を促進する点でも好ましい。
加圧工程における圧力は2〜1000MPaが好ましく、10〜400MPaであることがより好ましい。圧力が2MPa未満であると、塗膜を緻密にすることができず、形成されたハードコート層の硬度が不十分となり、耐摩耗性に劣るようになる。圧力が1000MPaを越えると、基材が変形するおそれがある。
加圧時の温度は常温(25℃)でもよいが、硬化反応を促進する観点より、40〜140℃であることが好ましく、60〜120℃であることがより好ましい。温度が140℃を越えるとハードコート層にクラックを生じるおそれがある。
加圧時間は1〜300分間であることが好ましく、3〜180分間であることがより好ましい。加圧時間が1分間未満であると、加圧による塗膜の緻密化、および硬化反応が不十分となる。加圧時間が300分間を越えても、加圧効果の向上は期待できず、むしろ生産性が悪化する。
加圧時の温度は常温(25℃)でもよいが、硬化反応を促進する観点より、40〜140℃であることが好ましく、60〜120℃であることがより好ましい。温度が140℃を越えるとハードコート層にクラックを生じるおそれがある。
加圧時間は1〜300分間であることが好ましく、3〜180分間であることがより好ましい。加圧時間が1分間未満であると、加圧による塗膜の緻密化、および硬化反応が不十分となる。加圧時間が300分間を越えても、加圧効果の向上は期待できず、むしろ生産性が悪化する。
(5-1-5.焼成工程)
前記した加圧工程で、実用上使用可能なハードコート層が得られるが、加圧工程後に焼成工程を設けてもよい。その場合は、ハードコート層の硬化をさらに促進することができる。
焼成温度としては、100〜140℃が好ましい。焼成温度が100℃未満であると硬化反応が十分進行せず、加圧工程後に焼成工程を設ける意義が乏しくなる。焼成温度が140℃を超えると基材が黄変し透明性が低下するおそれがある。また、加熱時間としては15〜180分間が好ましく、30〜120分間であることがより好ましい。加熱時間が15分間未満であると、硬化反応が十分進行せず、加圧工程後に焼成工程を設けた意義が乏しくなる。また、加熱時間が、180分間を越えても、加熱効果の向上は期待できず、むしろ生産性が悪化する。
前記した加圧工程で、実用上使用可能なハードコート層が得られるが、加圧工程後に焼成工程を設けてもよい。その場合は、ハードコート層の硬化をさらに促進することができる。
焼成温度としては、100〜140℃が好ましい。焼成温度が100℃未満であると硬化反応が十分進行せず、加圧工程後に焼成工程を設ける意義が乏しくなる。焼成温度が140℃を超えると基材が黄変し透明性が低下するおそれがある。また、加熱時間としては15〜180分間が好ましく、30〜120分間であることがより好ましい。加熱時間が15分間未満であると、硬化反応が十分進行せず、加圧工程後に焼成工程を設けた意義が乏しくなる。また、加熱時間が、180分間を越えても、加熱効果の向上は期待できず、むしろ生産性が悪化する。
(5-2.反射防止膜形成工程)
ハードコート層の上には、以下のように湿式法により有機反射防止膜を形成する。
(D)成分の有機ケイ素化合物を有機溶剤で希釈して、必要に応じて水、塩酸等を添加し、加水分解を行う。その後、この加水分解物に(E)成分である内部空洞を有するシリカ系微粒子が分散したゾルを添加する。また、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよい。これにより、有機反射防止膜のコーティング液が完成する。
その後、このコーティング液を前記ハードコート層上に塗布する。塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。
そして、コーティング液を熱、紫外線等により硬化させることで有機反射防止膜が完成する。加熱によりコーティング液を硬化させる場合には、50〜200℃で加熱する。
ハードコート層の上には、以下のように湿式法により有機反射防止膜を形成する。
(D)成分の有機ケイ素化合物を有機溶剤で希釈して、必要に応じて水、塩酸等を添加し、加水分解を行う。その後、この加水分解物に(E)成分である内部空洞を有するシリカ系微粒子が分散したゾルを添加する。また、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよい。これにより、有機反射防止膜のコーティング液が完成する。
その後、このコーティング液を前記ハードコート層上に塗布する。塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。
そして、コーティング液を熱、紫外線等により硬化させることで有機反射防止膜が完成する。加熱によりコーティング液を硬化させる場合には、50〜200℃で加熱する。
(5-3.撥水膜形成工程)
前述の有機反射防止膜を形成したプラスチックレンズを洗浄し、撥水加工を行う。撥水処理液(例えば、ダイキン工業株式会社製オプツールDSXの0.1%パーフロロヘキサン溶液)を調整し、プラスチックレンズを浸積して、所定時間放置後引き上げ、室温に放置して乾燥することで撥水膜が形成される。
前述の有機反射防止膜を形成したプラスチックレンズを洗浄し、撥水加工を行う。撥水処理液(例えば、ダイキン工業株式会社製オプツールDSXの0.1%パーフロロヘキサン溶液)を調整し、プラスチックレンズを浸積して、所定時間放置後引き上げ、室温に放置して乾燥することで撥水膜が形成される。
上述のような実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
乾燥工程後に加圧工程を設けることで、塗膜が圧縮され、緻密なハードコート層を得ることができる。このようにハードコート層が緻密となり、屈折率が向上することでプラスチック製基材との屈折率差が小さくなり、干渉縞のないプラスチック眼鏡レンズとすることができる。
また、加圧が液体や気体であるため、プラスチック眼鏡レンズの基材のように曲面を有していても均一な加圧が可能である。
乾燥工程後に加圧工程を設けることで、塗膜が圧縮され、緻密なハードコート層を得ることができる。このようにハードコート層が緻密となり、屈折率が向上することでプラスチック製基材との屈折率差が小さくなり、干渉縞のないプラスチック眼鏡レンズとすることができる。
また、加圧が液体や気体であるため、プラスチック眼鏡レンズの基材のように曲面を有していても均一な加圧が可能である。
さらに、加圧により、前記(A)成分の有機ケイ素化合物の加水分解性基の加水分解が促進され、シロキサン結合を十分に形成することができる。(A)成分同士の結合が不十分である場合には、結合が弱い部分からハードコート層がはがれる可能性があり、特にチオウレタン系のプラスチック製の基材およびエピスルフィド系のプラスチック製の基材上では密着性が得られないことが多い。これに対し、本実施形態のように、加圧により(A)成分同士を確実に結合させることでハードコート層と基材との密着性を向上させることができ、プラスチック眼鏡レンズとしての耐摩耗性を向上させることができる。特に加圧媒体として静水圧を用いると硬化反応をより促進できる。
また、本実施形態では、有機反射防止膜を湿式法により形成しているため、ハードコート層、反射防止膜を連続して湿式法で形成できるので、プラスチックレンズの製造が容易である。それ故、乾式法で使用する真空装置等の大型設備が不要となり、製造にかかるコストを低減させることが可能となる。
さらには、乾式法で形成される無機物を主成分とする反射防止膜に比べ、湿式法で形成される有機反射防止膜は、ハードコート層との熱膨張率差が小さいことから、加熱によるクラックの発生が起こりにくくなるので耐熱性に優れたプラスチック眼鏡レンズとすることができる。
さらには、乾式法で形成される無機物を主成分とする反射防止膜に比べ、湿式法で形成される有機反射防止膜は、ハードコート層との熱膨張率差が小さいことから、加熱によるクラックの発生が起こりにくくなるので耐熱性に優れたプラスチック眼鏡レンズとすることができる。
有機反射防止膜を構成する(E)成分であるシリカ系微粒子は、内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系微粒子は、内部空洞を有しないシリカ系微粒子よりも屈折率が低くなり、有機反射防止膜を構成する有機薄膜の屈折率が低くなる。有機薄膜の屈折率を低くすることで、ハードコート層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、反射防止膜を単層の有機薄膜で構成される有機反射防止膜としたが、これに限らず、反射防止膜は無機物を主成分とするものとしてもよい。例えば、SiO2 ,SiO,ZrO2 ,TiO2,TiO,Ti2O3,Ti2O5,Al2O3,Ta2O5,CeO2,MgO,Y2O3,SnO2 ,MgF2 ,WO3等の無機物を主成分とする無機反射防止膜を形成してもよい。これらの無機物を単独で用いてもよく、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
例えば、基材から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層を有する反射防止膜としてもよい。
このような無機物を主成分とする反射防止膜を形成する際には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いて、反射防止膜を形成することができる。なお、真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
前記実施形態では、反射防止膜を単層の有機薄膜で構成される有機反射防止膜としたが、これに限らず、反射防止膜は無機物を主成分とするものとしてもよい。例えば、SiO2 ,SiO,ZrO2 ,TiO2,TiO,Ti2O3,Ti2O5,Al2O3,Ta2O5,CeO2,MgO,Y2O3,SnO2 ,MgF2 ,WO3等の無機物を主成分とする無機反射防止膜を形成してもよい。これらの無機物を単独で用いてもよく、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
例えば、基材から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層を有する反射防止膜としてもよい。
このような無機物を主成分とする反射防止膜を形成する際には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いて、反射防止膜を形成することができる。なお、真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、基材上にハードコート層、有機反射防止膜および撥水膜を形成したプラスチック眼鏡レンズを製造した。
基材としては、チオウレタン樹脂製のプラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、セイコースーパーソブリン用レンズ基材、屈折率1.67)を用いた。
[実施例1]
実施例1では、基材上にハードコート層、有機反射防止膜および撥水膜を形成したプラスチック眼鏡レンズを製造した。
基材としては、チオウレタン樹脂製のプラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、セイコースーパーソブリン用レンズ基材、屈折率1.67)を用いた。
(ハードコート液の調整)
ブチルセロソルブ87g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン117gを混合し、この混合液に0.1規定塩酸水溶液53gを加え4時間撹拌した。さらにこの混合液にルチル型酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化ケイ素および酸化スズからなる複合ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク1120Z(8RU−25・A17)」713gとシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「FZ−2164」)0.3gを加え1時間攪拌した。さらにこの混合液に市販のエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−313」25gを加え、1時間撹拌した。さらにこの混合液に、Fe(III )アセチルアセトネート2.5g、マンガン(III )アセチルアセトネート0.8gを添加し1時間撹拌後、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)1.3gを加え、2時間攪拌してハードコート液とした。
ブチルセロソルブ87g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン117gを混合し、この混合液に0.1規定塩酸水溶液53gを加え4時間撹拌した。さらにこの混合液にルチル型酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化ケイ素および酸化スズからなる複合ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク1120Z(8RU−25・A17)」713gとシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「FZ−2164」)0.3gを加え1時間攪拌した。さらにこの混合液に市販のエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−313」25gを加え、1時間撹拌した。さらにこの混合液に、Fe(III )アセチルアセトネート2.5g、マンガン(III )アセチルアセトネート0.8gを添加し1時間撹拌後、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)1.3gを加え、2時間攪拌してハードコート液とした。
(ハードコート層形成工程)
前記した調製工程により得られたハードコート液を用いて以下のようにハードコート層を形成した。なお、必要に応じて、基材上に公知のプライマー層を形成しておいてもよい。
<塗布工程>
基材をハードコート液に浸漬し、引き上げ速度30cm/minで引き上げた。
<乾燥工程>
ハードコート液を塗布した基材を80℃で30分間乾燥して、基材上に2.0μmの塗膜を形成した。
前記した調製工程により得られたハードコート液を用いて以下のようにハードコート層を形成した。なお、必要に応じて、基材上に公知のプライマー層を形成しておいてもよい。
<塗布工程>
基材をハードコート液に浸漬し、引き上げ速度30cm/minで引き上げた。
<乾燥工程>
ハードコート液を塗布した基材を80℃で30分間乾燥して、基材上に2.0μmの塗膜を形成した。
<加圧工程>
乾燥後の基材を、25℃の水が入っている加圧可能な水槽(図示せず)に浸漬し、200MPaの静水圧で、120分間加圧した。
<焼成工程>
加圧工程後のレンズを、加熱温度120℃、加熱時間30分間で焼成した。
乾燥後の基材を、25℃の水が入っている加圧可能な水槽(図示せず)に浸漬し、200MPaの静水圧で、120分間加圧した。
<焼成工程>
加圧工程後のレンズを、加熱温度120℃、加熱時間30分間で焼成した。
(有機反射防止膜形成工程)
まず、以下のようにして、有機反射防止膜形成用の組成物(コーティング液)を調製した。
ステンレス製容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル5000重量部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を加え、撹拌しながら0.01モル/リットルの塩酸299重量部を添加して一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で内部空洞を有するシリカ系微粒子のゾル(触媒化成工業(株)製)100重量部にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製 FZ−7001)1重量部と鉄(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナート1重量部とを加え一昼夜撹拌を続けたのち、前記シラン加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行い、コーティング液を得た。
次に、上述した焼成工程でハードコート層が形成された基材を、コーティング液に浸漬し、30秒後に引き上げ速度10cm/minで引き上げ、さらに120℃に設定したオーブン内で2時間加熱して有機反射防止膜を形成した。この反射防止膜の厚みは、100nmである。
まず、以下のようにして、有機反射防止膜形成用の組成物(コーティング液)を調製した。
ステンレス製容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル5000重量部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を加え、撹拌しながら0.01モル/リットルの塩酸299重量部を添加して一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で内部空洞を有するシリカ系微粒子のゾル(触媒化成工業(株)製)100重量部にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製 FZ−7001)1重量部と鉄(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナート1重量部とを加え一昼夜撹拌を続けたのち、前記シラン加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行い、コーティング液を得た。
次に、上述した焼成工程でハードコート層が形成された基材を、コーティング液に浸漬し、30秒後に引き上げ速度10cm/minで引き上げ、さらに120℃に設定したオーブン内で2時間加熱して有機反射防止膜を形成した。この反射防止膜の厚みは、100nmである。
(撥水膜形成工程)
撥水処理液はダイキン工業株式会社製オプツールDSXを使用した。0.1%溶液(溶媒はパーフロロヘキサン)を調整し、眼鏡レンズ基材を浸積して1分間放置後、10cm/minで引き上げた。その後24時間室温に放置した。
撥水処理液はダイキン工業株式会社製オプツールDSXを使用した。0.1%溶液(溶媒はパーフロロヘキサン)を調整し、眼鏡レンズ基材を浸積して1分間放置後、10cm/minで引き上げた。その後24時間室温に放置した。
[実施例2]
実施例2では、加圧工程における水槽の水の温度を120℃とし、加圧時間を30分間とした以外は、実施例1と同様に行った。
実施例2では、加圧工程における水槽の水の温度を120℃とし、加圧時間を30分間とした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例1]
加圧工程を設けず、かわりに、乾燥工程後の基材を、120℃に設定されたオーブン内で30分間加熱して焼成を行った。他の条件は実施例1と同様である。
加圧工程を設けず、かわりに、乾燥工程後の基材を、120℃に設定されたオーブン内で30分間加熱して焼成を行った。他の条件は実施例1と同様である。
[評価方法]
得られたハードコート層、反射防止膜付き眼鏡レンズについて、以下の方法により、耐摩耗性(耐擦傷性)を評価した。結果は、表1に示す。
得られたハードコート層、反射防止膜付き眼鏡レンズについて、以下の方法により、耐摩耗性(耐擦傷性)を評価した。結果は、表1に示す。
(耐摩耗性評価)
眼鏡レンズに、ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール株式会社製)で9.8Nの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷の付いた程度を目視により次の段階に分けて評価した。実用上はCまでが許容範囲である。
A:摩擦した範囲に、全く傷が認められない。
B:上記範囲内に、1〜10本傷がついた。
C:上記範囲内に、10〜20本傷がついた。
D:無数の傷がついているが、平滑な面が残っている。
E:無数の傷がついていて、平滑な面が残っていない。
眼鏡レンズに、ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール株式会社製)で9.8Nの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷の付いた程度を目視により次の段階に分けて評価した。実用上はCまでが許容範囲である。
A:摩擦した範囲に、全く傷が認められない。
B:上記範囲内に、1〜10本傷がついた。
C:上記範囲内に、10〜20本傷がついた。
D:無数の傷がついているが、平滑な面が残っている。
E:無数の傷がついていて、平滑な面が残っていない。
[評価結果]
実施例1、2とも、ハードコート層の形成工程として加圧工程を備えているため、プラスチック眼鏡レンズの耐摩耗性に優れている。特に、実施例1では、常温(25℃)における加圧であるにもかかわらず、実用上十分な耐摩耗性が得られている。実施例2では、加圧時の温度を120℃にあげることで、30分間という短い時間で優れた耐摩耗性が得られることがわかる。また、加圧時の温度を上げることで、加圧力も低くすることができる。
一方、比較例1では、120℃で焼成したにもかかわらず、30分間の加熱時間では実用上の使用に耐える耐摩耗性は得られなかった。すなわち、本実施例から明らかなように、ハードコート層の形成工程として加圧工程を備えることで、耐摩耗性に優れるハードコート層付きプラスチック眼鏡レンズが得られることがわかる。
実施例1、2とも、ハードコート層の形成工程として加圧工程を備えているため、プラスチック眼鏡レンズの耐摩耗性に優れている。特に、実施例1では、常温(25℃)における加圧であるにもかかわらず、実用上十分な耐摩耗性が得られている。実施例2では、加圧時の温度を120℃にあげることで、30分間という短い時間で優れた耐摩耗性が得られることがわかる。また、加圧時の温度を上げることで、加圧力も低くすることができる。
一方、比較例1では、120℃で焼成したにもかかわらず、30分間の加熱時間では実用上の使用に耐える耐摩耗性は得られなかった。すなわち、本実施例から明らかなように、ハードコート層の形成工程として加圧工程を備えることで、耐摩耗性に優れるハードコート層付きプラスチック眼鏡レンズが得られることがわかる。
本発明は、プラスチック眼鏡レンズのように、耐摩耗性が要求される各種の製品の製造方法として利用することができる。
Claims (8)
- 基材上にハードコート層を形成する耐摩耗製品の製造方法であって、
前記ハードコート層は、
前記ハードコート層を形成するためのハードコート液を前記基材上へ塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後に前記ハードコート液を乾燥して塗膜とする乾燥工程と、
前記乾燥工程後に前記塗膜を加圧して硬化させる加圧工程と、
を含むハードコート層形成工程により形成されることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項1に記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記ハードコート層を形成するためのハードコート液が以下の(A)成分と(B)成分とを含むことを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。
(A)一般式:R1SiX1 3で示される有機ケイ素化合物
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、例えば、炭素数1〜6の炭化水素基である。X1は、加水分解性基を示す。)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子 - 請求項2に記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記加圧工程における加圧が静水圧であることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項2または請求項3に記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記加圧工程における圧力が2〜1000MPaであることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項2〜請求項4のいずれかに記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記乾燥工程における乾燥温度が60〜100℃であり、乾燥時間が10〜90分間であることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項2〜請求項5のいずれかに記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記加圧工程後に得られた前記ハードコート層をさらに焼成する焼成工程を備えることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項6に記載の耐摩耗製品の製造方法において、
前記焼成工程における加熱温度が100〜140℃であり、加熱時間が15〜180分間であることを特徴とする耐摩耗製品の製造方法。 - 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の耐摩耗製品の製造方法により製造されたことを特徴とする耐摩耗製品。
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---|---|---|---|
JP2006078335A JP2007256430A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 耐摩耗製品の製造方法および耐摩耗製品 |
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JP (1) | JP2007256430A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010128420A (ja) * | 2008-12-01 | 2010-06-10 | Seiko Epson Corp | 光学物品およびその製造方法 |
JP2013029685A (ja) * | 2011-07-28 | 2013-02-07 | Marumi Koki Kk | デジタルカメラ用の撥水機能付きフィルター |
JP2013205777A (ja) * | 2012-03-29 | 2013-10-07 | Hoya Corp | 眼鏡レンズ |
-
2006
- 2006-03-22 JP JP2006078335A patent/JP2007256430A/ja not_active Withdrawn
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