以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、リフトアームの先端部分、即ち、例えば、アクチュエータシリンダの取付部付近から先の部分を鋳鋼により一体形成している。まず最初に、スキッドステアローダの全体について説明し、次に、リフトアームの構造を説明する。
図1は、スキッドステアローダ1の側面図である。図2は、スキッドステアローダ1の上面図である。スキッドステアローダ1は、それぞれ後述するように、例えば、ローダ本体2と、前輪3A及び後輪3Bと、運転席4と、支持部5と、リフトアーム6と、アームシリンダ7と、アタッチメントカプラ8及びバケット9等を備えて構成されている。
ローダ本体2は、スキッドステアローダ1の車体を構成しており、その前側の左右には前輪3A,3Aが、その後側の左右には後輪3B,3Bがそれぞれ回転可能に設けられている。左右の前輪3A及び後輪3Bの回転数は、それぞれ独立して制御可能である。左右の前輪3A及び後輪3Bの回転数を変えることにより、ローダ本体2の姿勢を制御することができ、スピンターンを行うこともできる。このような車輪3A,3Bの回転数制御は、運転席4内の操作レバー装置によって行うことができる。
運転席4は、前寄りに位置して、ローダ本体2の上部に設けられている。運転席4は、前面を除く他の3面(左右の両面及び後面)がネットガード4Aで覆われている。オペレータは、開口している前面を利用して運転席4に乗降する。また、運転席4の上面には、少なくとも一部が格子状に形成された天井部4Bで覆われている。なお、運転席4の前面以外の3面を全てネットガード4Aで覆う必要はなく、視界を確保でき、かつ、オペレータが乗降可能な構成であれば構わない。
ローダ本体2の後部にはエンジン等が格納されており、また、ローダ本体2の後部左右両側には、リフトアーム6,6の基端側を支持するための支持部5,5が、上方に延びるようにしてそれぞれ立設されている。支持部5の上側では、リフトアーム6の基端側がピン12を介して回動可能に支持されている。
リフトアーム6は、アームシリンダ7の伸縮動作によって上下方向に回動する。アームシリンダ7の基端側は、支持部5の下側にピン11を介して回動可能に支持されており、アームシリンダ7の先端側は、リフトアーム6の略中央部にピン13を介して回動可能に支持されている。アームシリンダ7が伸張することにより、図1中に二点鎖線で示すように、リフトアーム6は、上側に向けて変位する。アームシリンダ7が縮退することにより、図1中に実線で示すように、リフトアーム6は、下側に変位する。
リフトアーム6の先端側は、ローダ本体2の前方で下向きに屈曲しており、アタッチメントカプラ8が設けられている。アタッチメントカプラ8は、例えば、バケット9やフォーク、スイーパ等の各種アタッチメントを着脱可能に取り付けるためのものである。
アタッチメントカプラ8を介してリフトアーム6の先端側に取り付けられたバケット9は、作業用アタッチメントの一例であって、本発明はこれに限定されない。リフトアーム6が最低位置に下がっている場合に、例えば、バケット9の前面と地面との間の角度θ1は、30度程度となる。また、図1中に点線で示すように、トラック等にバケット9内の積荷を積み込む場合、バケット9と地面との角度θ2は、例えば45度程度となる。
即ち、バケット9の回動可能角度は、一般的なホイールローダに比べて、大きく設定されている。スキッドステアローダ1は、ホイールローダよりも小型に形成されるが、積み込み先であるトラック等の荷台の高さは変わらないため、バケット9の回動可能角度を大きく設定し、円滑な積み込み作業を行えるようにしている。
ここで、バケット9の重心と前輪3Aの中心との間の距離L1は、可及的に短く設定するのが好ましい。もしもL1を長く設定すると、即ち、リフトアーム6がローダ本体2の前方に突出する寸法を長くすると、バランスを取るために、ローダ本体2の後部にバランスウェイトを搭載する必要がある。バランスウェイトを搭載すると、スキッドステアローダ1の重量が増し、全体寸法が大型化して、作業性が低下する。従って、L1は、できるだけ短く設定するのが好ましい。
しかし、L1を短く設定すればするほど、左右のリフトアーム6,6をZ型リンク部材等で補強するための空間を十分に確保するのは容易ではなくなる。左右のリフトアーム6,6は、ローダ本体2のやや前方で下向きに湾曲しているため、リフトアーム6,6の先端側とローダ本体2の前端との間の隙間は短くなり、リンク部材等で補強するための空間が少なくなる。また、ホイールローダとは異なり、オペレータは、ローダ本体2の前方からスキッドステアローダ1に乗降するため、オペレータの乗降に支障のない構造を採用する必要もある。
そこで、本実施例では、次に述べるように、リフトアーム6,6間の補強用空間に乏しいスキッドステアローダ1において、リフトアーム6に加わる横荷重に十分備えることができ、かつ、軽量化を図ることができるリフトアーム6の新構造を提案する。
図3はリフトアーム6の斜視図を、図4はリフトアーム6の上面図をそれぞれ示す。図3の斜視図に示すように、リフトアーム6は、第1アーム部21と第2アーム部22とから構成されている。第1アーム部21は、例えば、鋼板等の材料から断面略矩形状の長尺な部材として形成されており、第2アーム部22は、例えば、SC450W等の鋳鋼から湾曲形状に形成されている。先に、第1アーム部21の構成を説明し、次に、第2アーム部22の構成を説明する。
第1アーム部21は、その基端側21Aがピン12を介して、支持部5の上側に回動可能に取り付けられており、その先端側21Bは第2アーム部22の基端側22Aに溶接等の固着手段を用いて取り付けられている。第1アーム部21の略中間部には、下側に延びるようにしてシリンダ取付部21Cが設けられている。そして、アームシリンダ7の先端側は、シリンダ取付部21Cにピン13を介して、回動可能に支持される。
第2アーム部22は、第1アーム部21の先端側21Bに取り付けられるもので、ローダ本体2の前輪3Aの上側を覆うかのようにして、下向きに湾曲している。第1アーム部21が複数の板金材料を溶接して製造されているのに対し、第2アーム部22は、鋳鋼によって一体的に形成されている。
第2アーム部22は、それぞれ後述する接続部22Aと、アタッチメント取付部22Bと、横荷重受け部22C及びアクチュエータ取付部22Dを鋳鋼によって一体的に形成している。
接続部22Aは、第2アーム部22の基端側に位置して設けられており、第1アーム部21の先端側21Bに取り付けられる。アタッチメント取付部22Bは、第2アーム部22の先端側に位置して設けられており、アタッチメントカプラ8を介して、バケット9が取り付けられる。
横荷重受け部22Cは、第2アーム部22の略中間部に位置して、内側(ローダ本体2側)に若干突出するようにして設けられている。横荷重受け部22Cの突出端側には、例えば、板金加工等により形成されるフロント部材30の一端側が接続されている。つまり、左右の第2アーム部22,22は、横荷重受け部22Cに接続されたフロント部材30を介して接続されている。従って、フロント部材30は、例えば、アーム接続部と呼ぶこともできる。
また、横荷重受け部22Cの上面側には、第2アーム部22の内側面に向けて斜め上方に延びる補強部22C1が設けられている。第2アーム部22に横方向(ローダ本体2の左右方向)から加わる荷重は、横荷重受け部22Cからフロント部材30を介して相手方の第2アーム部22に伝達される。補強部22C1は、第2アーム部22が横方向から受けた荷重を垂直方向及び水平方向の分力に分解し、特定の箇所に応力が集中するのを防止している。
アクチュエータ取付部22Dは、第2アーム部22の基端側寄りに位置して、上方に若干突出するようにして設けられている。アクチュエータ取付部22Dは、図示せぬアクチュエータシリンダの基端側を回動可能に取り付けるためのものである。
また、第2アーム部22の表面には、リブ22Eを適宜設けることもできる。図示の例では、第2アーム部22の先端側22B寄りに位置して、複数のリブ22Eを設けることにより、先端側22Bの剛性を高めている。
図5はリフトアーム6をローダ本体2の外側から見た側面図を、図6は、リフトアーム6の先端側をローダ本体2の内側から見た側面図を、それぞれ示す。既に述べた通り、このリフトアーム6は、板金加工等で製造される長尺な第1アーム部21と、鋳鋼で製造される第2アーム部22とのハイブリッド構造で形成されている。そして、第2アーム部22は、接続部22A、アタッチメント取付部22B、横荷重受け部22C及びアクチュエータ取付部22D等を一体化して形成しており、全体として一つの部品となるように構成されている。
さらに、図7の断面図に示すように、本実施例では、第2アーム部22の内部に、中空部22Fを設けている。中空部22Fは、第2アーム部22の基端側(接続部22A)から、第2アーム部22の略中間部の点Pにわたって形成されている。この点Pは、例えば、横荷重受け部22Cの下端と一致するように設定することができる。
もっとも、横荷重受け部22Cの下端まで中空部22Fを設ける必要は必ずしもなく、中空部22Fの長さL2を短くしてもよい。但し、中空部22Fの長さL2(接続部22Aからアタッチメント取付部22Bへ向かう長手方向の長さ)を短くすればするほど、第2アーム部22の重量は、増加する。
中空部22Fの横断面の大きさは、中空部22Fが設けられる部分の剛性確保の観点から設定される。即ち、中空部22Fが設けられる範囲の第2アーム部22の肉厚tは、必要な剛性が確保される値に設定される。
本実施例は、上述のように、リフトアーム6を第1アーム部21及び第2アーム部22の2分割構造で形成し、かつ、第2アーム部22を鋳鋼で一体形成する構成とした。従って、構造が複雑になりやすい第2アーム部22の構成を簡素化することができ、この結果、リフトアーム6の全体構造を簡素化することができる。これにより、リフトアーム6の部品点数を低減して、生産効率を高めることができ、製造コストを低減できる。
即ち、スキッドステアローダ1は、ホイールローダとは異なり、比較的狭い場所で種々の用途に活発に使用されるものであり、縦方向の荷重のみならず、横方向からも比較的強い荷重を受けるという技術的性質を備える。
また、比較的狭い場所での作業性を高めるために、スキッドステアローダ1には、小型軽量化が市場から要求される。従って、図1に示したように、バケット9の重心と前輪3Aの中心との間の距離L1は短く設定されており、Z型リンク部材等の補強構造を設けるための空間的余裕が少ない。
このような制約下において、スキッドステアローダ1では、僅かな空間を有効に利用して、バケット9等のアクチュエータの取付構造や縦方向荷重及び横方向荷重に備えるための構造等をリフトアーム6,6に設ける必要がある。従来のスキッドステアローダでは、この僅かな空間に種々の板金部品群が配置されていたため、リフトアームの構造が複雑であり、組立作業の効率も低かった。これに対し、本実施例では、この僅かな空間に配置される第2アーム部22を鋳鋼で一体形成するため、構造を簡素化し、生産効率を高めることができ、製造コストを低減できる。
また、本実施例では、第2アーム部22の剛性を確保しつつ、第2アーム部22内に中空部22Fを設ける構成とした。これにより、第2アーム部22の軽量化を図ることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
1…スキッドステアローダ、2…ローダ本体、3A…前輪、3B…後輪、4…運転席、4A…ネットガード、4B…天井部、5…支持部、6…リフトアーム、7…アームシリンダ8…アタッチメントカプラ、9…バケット、11,12,13…ピン、21…第1アーム部、21A…基端側、21B…先端側、 21C…シリンダ取付部、22…第2アーム部、22A…接続部、22B…アタッチメント取付部、22C…横荷重受け部、22C1…補強部、22D…アクチュエータ取付部、22E…リブ、22F…中空部、30…フロント部材。