JP2007253476A - 光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法、及びロールの清掃装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルム生産を停止することなく、簡単な設備で確実にロール汚れを拭き取ることができるロールの清掃方法、及び清掃装置を提供する。
【解決手段】冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)20を配し、該加熱手段(熱源)20によりロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて配置した清掃手段21によって、融解したロール汚れを拭き取る。
【選択図】図2
【解決手段】冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)20を配し、該加熱手段(熱源)20によりロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて配置した清掃手段21によって、融解したロール汚れを拭き取る。
【選択図】図2
Description
本発明は、溶融流延製膜法により作製される平面性の高い光学フィルム、特に、液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルムまた有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法、及びロールの清掃装置に関するものである。
液晶表示装置は、従来のCRT表示装置に比べて、省スペース、省エネルギーであることからモニターとして広く使用されている。さらにTV用としても普及が進んできている。このような液晶表示装置には、偏光フィルムや位相差フィルムなどの種々の光学フィルムが使用されている。
ところで、液晶表示装置に用いられる偏光板の偏光フィルムは、延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の片面または両面に、セルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムを保護膜として積層されている。また、位相差フィルムは、視野角の拡大やコントラストの向上などの目的で用いられており、ポリカーボネ−ト、環状ポリオレフィン樹脂、セルロースエステルなどのフィルムを延伸するなどしてリタデーションが付与されたものである。光学補償フィルムとも呼ばれることがある。
これらの光学フィルムでは、光学的な欠陥がなく、リタデーションが均一であること、特に位相軸のばらつきがないことが要求される。特に、モニターやTVの大型化や高精細化が進み、これらの要求品質は、ますます厳しくなってきている。
光学フィルムの製造方法には、大別して、溶融流延製膜法と溶液流延製膜法とがある。前者は、ポリマーを加熱溶解して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要に応じて延伸してフィルムにする方法であり、後者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要に応じて延伸してフィルムにする方法である。
いずれの製膜法であっても、溶融したポリマーまたはポリマー溶液は支持体上で冷却固化や乾燥固化される。そして、支持体から剥離された後、ポリマーフィルムは、複数の搬送ロールを用いて搬送されながら、乾燥や延伸などの処理がなされる。
溶液流延製膜法は、溶剤を大量に使用することより、環境負荷が大きいことが課題となっている。一方、溶融流延製膜法は、溶媒を使用しないことから生産性の向上が期待できる。しかしながら、溶融流延製膜法では、揮発成分などによるロール汚れが溶液流延製膜法に比較して大きく、ロール清掃のために生産を中断しなければならない状況では、上記の利点が薄れてしまうという問題があった。また、可塑剤を多く含む樹脂ほどロール汚れがつきやすいため、生産を停止することなく実施できるロール清掃方法の開発は重要な課題であった。
従来、フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法には、下記の特許文献1に記載の方法が提案されている。
特開2002−240125号公報 特許文献1には、樹脂被覆(ラミネート)紙の製造方法及び装置であって、特に、溶融樹脂を被覆する工程を含むラミネータ装置において、冷却ロールに付着する低分子成分を除去する冷却ロールの清掃方法が開示されており、清掃方法として、高出力のレーザー光源、あるいは、フレームバーナーの火炎を使用して、冷却ロールの表面にエネルギーを印加する方法が記載されている。
特開2003−89142号公報 また、特許文献2には、フィルムの製造に用いられるロール表面に紫外線を照射してロール表面の付着物を除去する方法が開示されている。
特開2001−62911号公報 特許文献3には、熱可塑性樹脂フィルムの製膜工程で発生するフィルム表面傷を低減するとともに、回転体に付着した汚れ清掃のために、走行するフィルムが接触する回転体にプラズマを照射することにより、回転体に付着した有機物を除去する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、いずれもロール表面の汚れの成分を分解、あるいは燃焼分解することで、汚れ成分を揮散させており、従って、過剰なエネルギーを必要として、設備費及び運転コストが高くつくという問題があった。
そして、従来より、光学フィルムの製造工程では、可塑剤を多く含む樹脂ほど冷却ロール等のロールに汚れが付きやすいため、生産を停止することなく、光学フィルムの製造を実施できるロールの清掃方法の開発が望まれていた。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、可塑剤を含む熱可塑性樹脂から溶融流延製膜法により光学フィルムを製造する方法におけるロールの清掃方法であって、非常に簡単な設備で、しかも確実にロール汚れを拭き取ることができ、これによって、ロール清掃のためにフィルムの生産を停止することなく、溶融流延製膜法による光学フィルムの生産性の向上が期待できるうえに、設備費、運転コストが安くつく、ロールの清掃方法、及び清掃装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、可塑剤を含む非晶性熱可塑性樹脂を溶融流延製膜法により流延ダイからフィルム状に溶融押し出して、回転駆動する冷却ロール上に支持し、該冷却ロール上にてフィルムを冷却した後、フィルムを剥離ロールで剥離し、剥離後のフィルムを、通常は、搬送ロールで搬送し、延伸後に巻き取る光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法であって、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)を配し、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて配置した清掃手段によって、融解したロール汚れを拭き取ることを特徴としている。
なお、本発明のロールの清掃方法において、ロールとは、流延ダイから押し出される溶融樹脂が最初に接する冷却ロール、並びに冷却ロールからフィルムを剥離するための剥離ロール、冷却ロールから剥離したフィルムを搬送するための搬送ロール、さらには、面矯正のためフィルムに接触させるタッチロールなどが含まれ、光学フィルムの製造方法工程において使用される回転体を意味する。回転体の形状には、ローラー、ドラム、無端ベルトなどが含まれる。
請求項2の発明は、請求項1に記載のロールの清掃方法であって、ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持することを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のロールの清掃方法であって、非晶性熱可塑性樹脂の主成分が、セルロースエステルであることを特徴としている。
請求項4の発明は、可塑剤を含む非晶性熱可塑性樹脂を溶融流延製膜法によりフィルム状に溶融押し出しする流延ダイと、溶融押し出しされたフィルムを冷却する回転駆動冷却ロールと、該冷却ロール上にて冷却されたフィルムを剥離する剥離ロールと、通常は、剥離後のフィルムを搬送する搬送ロールと、フィルム延伸装置と、延伸後のフィルムを巻き取る巻取り機とを具備する光学フィルムの製造装置におけるロールの清掃装置であって、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)が配置され、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度が、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇せしめられて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れが融解され、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて清掃手段が配置されて、この清掃手段によって、融解したロール汚れが拭き取られることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項4に記載のロールの清掃装置であって、 ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持することを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4または5に記載のロールの清掃装置であって、非晶性熱可塑性樹脂の主成分が、セルロースエステルであることを特徴としている。
請求項1の発明による光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法は、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)を配し、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて配置した清掃手段によって、融解したロール汚れを拭き取るもので、本発明によれば、非常に簡単な設備で、しかも確実にロール汚れを拭き取ることができ、これによって、ロール清掃のためにフィルムの生産を停止することなく、溶融流延製膜法による光学フィルムの生産性の向上が期待できるうえに、設備費、運転コストが安くつくという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のロールの清掃方法であって、ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持するもので、本発明によれば、ロール表面の融解した汚れに対して低温に保った清掃装置と接触させることで、清掃装置上に固化させて、ほゞ完全に拭き取ることができるという効果を奏する。
請求項1または2に記載のロールの清掃方法において、非晶性熱可塑性樹脂の主成分は、セルロースエステルであるのが、好ましい。
請求項4の発明による光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃装置は、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)が配置され、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度が、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇せしめられて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れが融解され、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて清掃手段が配置されて、この清掃手段によって、融解したロール汚れが拭き取られるもので、本発明によれば、非常に簡単な設備で、しかも確実にロール汚れを拭き取ることができ、これによって、ロール清掃のためにフィルムの生産を停止することなく、溶融流延製膜法による光学フィルムの生産性の向上が期待できるうえに、設備費、運転コストが安くつくという効果を奏する。
請求項5の発明は、請求項4に記載のロールの清掃装置であって、ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持するもので、本発明によれば、ロール表面の融解した汚れに対して低温に保った清掃装置と接触させることで、清掃装置上に固化させて、ほゞ完全に拭き取ることができるという効果を奏する。
請求項4または5に記載のロールの清掃装置において、非晶性熱可塑性樹脂の主成分は、セルロースエステルであるのが、好ましい。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、特に液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルム等に利用することができる光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法、及びロールの清掃装置に係るものである。
図1は、本発明のロールの清掃装置を具備する光学フィルムの製造装置の概略を示すフローシートである。
同図において、光学フィルムの製造方法は、例えばセルロースエステル系樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂のフィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から冷却ロール上に溶融押し出し、第1冷却ロール5に外接させるとともに、タッチロール6により溶融フィルムを冷却ロール5表面に所定の圧力で押圧し、さらに、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化して未延伸フィルムとし、剥離ロール9によって剥離した未延伸フィルム10を、ついで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して幅手方向に延伸した後、巻取り装置16により巻き取るものである。
なおここで、冷却ロール5とは、フィルムを押圧する2つのロールのうち、フィルムを搬送し、フィルムとの接触時間が長い方のロールと定義し、タッチロール6とは、押圧時にフィルムを介して冷却ロール5の反対側からフィルムに接するロールと定義する。
以下、まず、光学フィルムの製造方法について、順に説明する。
光学フィルムの製造方法において、可塑剤を含む例えばセルロースエステル系樹脂の溶融押し出しの条件は、他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機などで水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
樹脂と安定剤とは、溶融する前に混合機等により混合しておくことが好ましいが、可塑剤や紫外線吸収剤、マット剤に関しても溶融する前に混合機等を用いて混合しておくこともできる。混合機としては、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステル系樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2などで濾過し、異物を除去する。
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
可塑剤などの添加剤を予め混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3などの混合装置を用いることが好ましい。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法においては、材料を混合した後に押出し機1を用いて直接製膜する方法以外に、一旦、ペレット化した後、ペレットを押出し機1で溶融して製膜することも可能である。また、融点の異なる複数の材料が混合された系においては、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。熱分解しやすい樹脂や添加剤を使用する場合においては、樹脂の溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
フィルム製膜に用いる押出し機1は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。材料からペレットを作成せずに直接製膜する場合では、適当な混練度が必要であるため、2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られ、製膜が可能となる。1軸押出し機においても、2軸押出し機においても、ベント口を設け、真空ポンプなどを用いて、ベント口からガスを除去することが望ましい。一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を作製する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。
押出し機1内、及び押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機1内の樹脂の溶融温度は、樹脂の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、成形材料のガラス転位温度(Tg)に対して、ガラス転移温度(Tg)以上、ガラス転移温度(Tg)+100℃以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは溶融温度は、ガラス転移温度(Tg)+10℃以上、ガラス転移温度(Tg)+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機1内での樹脂の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、より好ましくは3分以内、最も好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量や、L/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、樹脂の粘度や吐出量等により適宜選択される。押出し機1でのせん断速度は、好ましくは1/秒〜10000/秒、より好ましくは5/秒〜1000/秒、もっとも好ましくは10/秒〜100/秒である。ギアポンプ噛み込み防止、メインフィルタ負荷低減のため、押出し機1の出側にプレフィルターを設けることが好ましい。
例えば必要に応じて、50/80/100メッシュのスクリーンや金属繊維の焼結フィルターを設けることが好ましい。オンラインチェンジ可能なタイプを使用することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行なうことが好ましい。また、プレフィルターの下流にフィルター2を設けることが好ましい。ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。濾過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、濾過精度を順次上げていく構成としたり、濾過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターの濾過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。濾過精度は、0.5μm以上、50μm以下が好ましい。
溶融流延製膜法において、流延ダイ4に傷や異物が付着すると、スジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインと呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機1から流延ダイ4までの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。
また、樹脂の付着を防止するために、配管内壁の表面粗さは小さいことが好ましく、0.3S以下が好ましい。配管内面に硬質クロムメッキを行ない、バフ研磨することが好ましい。流延ダイ4の内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。流延ダイ4周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば、特に限定はされないが、コートハンガーダイが好ましい。リップ部間隙tは0.1mm以上2mm以下が好ましく、ランド部長さLは5mm以上50mm以下が好ましい。L/tが10以上となることが好ましい。
第1冷却ロール5に密着した直後の樹脂の厚みを、hとすると、フィルムの厚みが70μm、以上100μm未満の場合には、t/hを10以下とし、50μm以上、70μm以下の場合には、t/hを15以下とし、50μm未満の場合には、t/hを20以下とすることが好ましい。t/hを前記の値にすることで、流延時のいわゆる溶融液リボンの伸張を抑え、流れ方向のリタデーションを小さく保つことができる。
フィルムの厚み調整機構としては、幅手方向に分割して温度を調整するヒーター式、機械的にリップ開度を調整する手動ボルト方式、あるいは、ヒーターによりボルトの伸縮を利用してリップ開度を調整するヒートボルト方式などを使用することが好ましい。
流延ダイ4の材質としては、ニッケル、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。
ダイリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。シャークスキン防止のためには、リップと樹脂の摩擦を減らすことが重要であり、これには、例えばDual Spiral Systems Inc.社製のセラミックコーティング(商品名K05MFC)を使用することが好ましい。また、リップ部の表面粗度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
流延ダイ4から押出された材料は、冷却ロールにて冷却、表面矯正される。流延ダイ4から押出された材料が最初に接触する冷却ロールを第1冷却ロール5とすると、材料が流延ダイ4から第1冷却ロール5に接触するまでの時間は短い方が好ましく、10秒以内、好ましくは5秒以内、最も好ましくは2秒以内である。また、流延ダイ4から第1冷却ロール5までの距離は10mm以上、100mm以下が好ましい。樹脂の温度を高く保つことで、いわゆる溶融液リボンの伸張により発生する流れ方向のリタデーションを小さくすることができる。また、ロールに接触してから押圧されるまでの時間は短い方が、ダイラインの矯正に効果的であり、ロール接着後、0.5秒以内に押圧されることが好ましい。また、そのためにはロールのなるべく押圧されるポイントに近い位置に材料を最初に接触させる必要があり、押圧されるまでにロールの中心角10°以内の円周部分で接することが好ましく、押圧されるまでにロールに接している距離は2〜100mmであることが好ましい。2つのロールの間に材料を落としてしまうと、押圧が安定せず平面性に優れたフィルムの作製が困難である。流延ダイ4出口から樹脂が第1冷却ロール5に密着する直前のエアギャップにおいて樹脂を保温することが好ましい。保温方法としてはマイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。
流延ダイ4からポリマーが流出する際、昇華物等による流延ダイ4や冷却ロールの汚染を防ぐため、流延ダイ4付近に吸引装置をつけることが好ましい。吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱するなどの処置を施すことが必要である。また、吸引圧が大きすぎると段ムラなどフィルム品質に影響を及ぼす、小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
溶融流延製膜法においては、流延ダイ4より溶融押し出されたフィルムと冷却ロール5とは、密着することが好ましい。溶融押し出されたフィルムと冷却ロール5とを密着させる方法としては、静電密着法、エアーナイフ、減圧チャンバーなどが使用できる。
冷却ロールは1本以上であれば良いが、フィルムの両面に対して平滑性を高めるために2本以上とし、両面とも冷却ロールに接触させることが好ましい。
冷却ロール(冷却ドラム)の温度調整は、冷却ロール(冷却ドラム)内部に水や油などの熱媒体を流すことにより調整することが好ましい。
光学フィルムの製造方法においてはTダイ4から溶融押し出されたフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、第1冷却ロール5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸のセルロースエステル系樹脂フィルム10を得る。第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこでフィルム10を幅手方向に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
図2に、本発明の光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃装置の詳細を示す。
同図において、本発明のロールの清掃装置は、冷却ロール5からフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)20が配置され、該ロール汚れ加熱手段(熱源)20のロール回転方向の後側に続いて拭き取りロール(清掃手段)21が配置されている。
そして、本発明のロールの清掃方法によれば、冷却ロール5からフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けて配置したロール汚れ加熱手段(熱源)20により、該ロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、ロール汚れ加熱手段(熱源)20に続いて配置した拭き取りロール(清掃手段)21によって、融解したロール汚れを拭き取るものである。
このような本発明のロールの清掃方法によれば、非常に簡単な設備で、しかも確実にロール汚れを拭き取ることができ、これによって、ロール清掃のためにフィルムの生産を停止することなく、溶融流延製膜法による光学フィルムの生産性の向上が期待できるうえに、設備費、運転コストが安くつくものである。
本発明において、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分を加熱する熱源20には、マイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。
また、ロール清掃手段21には、図示のように、冷却ロール5に別のロールを接触させて汚れを拭き取るクリーニングロールや、不織布を空気圧によってロールに接触させる清掃手段などを用いることができる。ロール清掃手段21として、クリーニングロールを使用する場合は、経時でクリーニングロール自体にも汚れが付着するため、クリーニングロール21の汚れを取り除くための転写ロールを用いることが、好ましい。
本発明において、冷却ロール5からフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側部分のロール表面温度とは、ロール清掃手段21が冷却ロール5に接触する直前のロール表面部分の温度とする。ロール表面温度の測定には市販の接触式、非接触式の温度計が使用できる。
フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度が、使用している可塑剤の融点よりも低い温度では、汚れがロール上で固化してしまうために、ロール清掃手段21では完全に取り除くことができない。また、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度が高過ぎる場合は、可塑剤を主成分とするロール汚れ成分が揮発してしまい、揮発物がフィルムやロールなどの装置上に凝縮してしまい、新たな汚れの原因となってしまう。さらに、清掃箇所が過ぎて、新たに溶融押し出されたフィルムが接触する冷却開始点のロール表面部分の温度が、冷却設定温度まで戻らず、冷却開始点のロール表面部分の温度が冷却設定温度よりも高い状態になってしまうと、新たに押し出された溶融樹脂が、該冷却設定温度よりも高い冷却ロールの表面部分とと接触したことで、冷却ロールからのフィルムの剥離が不安定になり、フィルムの剥離時に段状のムラができるなど、フィルムに汚れ以外の表面欠陥を生じてしまうため、好ましくない。
本発明のロールの清掃方法においては、ロール汚れを拭き取るロール清掃手段21の表面温度を、10〜50℃に保持するのが好ましい。というのは、例えば多価アルコールエステル系可塑剤であるトリメチロールプロパントリベンゾエートの融点(Tm)は、80℃であるので、この可塑剤を主成分とするロール汚れを拭き取るために、ロール清掃手段21を50℃以下の温度に保っておくことにより、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分において融解した可塑剤を主成分とするロール汚れを、50℃以下という低温に保ったロール清掃手段21と接触させることで、ロール清掃手段21上に固化させて拭き取ることができ、可塑剤を主成分とするロール汚れを効率よく拭き取ることができるからである。なお、ロール汚れを拭き取るロール清掃手段21は、溶融押し出されたフィルムと接触した後の比較的温度の高い冷却ロール表面部分と常時接触しているので、ロール清掃手段21の表面温度を10℃未満に設定することは、事実上困難であるし、またその必要もないものである。。
ここで、本発明のロールの清掃方法において、ロールとは、流延ダイ4から押し出される溶融樹脂が最初に接する冷却ロール5、並びに冷却ロールからフィルムを剥離するための剥離ロール9、冷却ロールから剥離したフィルムを搬送するための搬送ロール、さらには、面矯正のためフィルムに接触させるタッチロール6などが含まれ、光学フィルムの製造方法工程において使用されかつ可塑剤を主成分とするロール汚れが付着するロールを意味するものである。
本実施形態では、流延ダイ4より溶融押し出されたフィルムを、合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化して未延伸フィルムとし、剥離ロール9によって剥離した未延伸フィルム10を、ついで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して幅手方向に延伸する。
フィルムを幅手方向に延伸する方法は、公知のテンターなどを好ましく用いることができる。特に延伸方向を幅手方向とすることで、偏光フィルムとの積層がロール形態で実施できるので好ましい。幅手方向に延伸することで、セルロースエステル系樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅手方向になる。
一方、偏光フィルムの透過軸も、通常、幅手方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、液晶表示装置の表示コントラストを高くすることができるとともに、良好な視野角が得られるのである。
上記延伸機12におけるフィルム10の延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると所望のリタデーションが得られない場合があり、大きすぎると破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると破断してしまう場合があり、高すぎると所望のリタデーションが得られない場合がある。
フィルムの幅手方向の延伸は、制御された均一な温度分布下で行なうことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
上記の方法で作製したセルロースエステル系樹脂フィルムFのリタデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅手延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。長手方向、幅手方向とも0.5%から10%収縮させることで光学フィルムの寸法変化率を小さくすることができる。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜120μmの範囲が好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。フィルムの平均膜厚は、所望の厚さになるように、押し出し流量、流延ダイ4の流延口の間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることで調整できる。
延伸後のフィルムは、フィルム端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り機16によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
以上のようにして得られた幅手方向に延伸されたセルロースエステル系樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定の大きさのリタデーションを持つ。通常、フィルムの面内方向リタデーション(Ro)は20〜200nm、厚み方向リタデーション(Rt)は90〜400nmであり、フィルムの面内方向リタデーション(Ro)が20〜100nm、厚み方向リタデーション(Rt)が90〜200nmであることが好ましい。また、RtとRoの比:Rt/Roは、0.5〜2.5が好ましく、特に1.0〜2.0が好ましい。
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。
リタデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常15nm以内、好ましくは10nm以下、より好ましくは4nm以下である。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いる樹脂としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートが好ましいが、これらに限定されない。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが、得られるフィルムの寸法安定性に優れるので好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として50,000〜300,000、とくに60,000〜200,000であることが、得られるフィルムの機械的強度を強くできるので好ましい。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法において用いる熱可塑性樹脂中には、種々の目的で可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、染料及び油剤などの添加剤を含有させることができる。
可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルホスフェート、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート及びジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール酸エステル系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸系可塑剤、ジプロピレングリコールベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリベンゾエート等の多価アルコールエステル系可塑剤、その他にトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)などを挙げることができる。必要に応じて上記のうち2種類以上の可塑剤を併用して用いてもよい。これらの添加量は、可塑剤の効果とブリードアウトの兼ね合いから、熱可塑性樹脂に対して1%〜30%が好ましい。
また、ポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステルなどもブレンドすることで可塑性を改良できるので好ましく用いることができる。
ポリエステルエーテルとしては、炭素原子8〜12個の芳香族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸(例えばテレフタール酸、イソフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)、炭素原子2〜10個の脂肪族グリコールまたは脂環式グリコール類(例えば、エチレンジオール、プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び1,5−ペンタンジオール)、エーテル単位の間に炭素原子2〜4個を有するポリエーテルグリコール類(例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、特に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコールを構成要素とするコポリエステルエーテル)が好ましい。ポリエステルエーテルの配合量は、主たる樹脂に対して5〜30重量%が好ましい。配合量をこの範囲とすることで良好な可塑性を呈するフィルムが得られる。
一般式(1)中、lは、2、3または4を表わし、mは、2、3または4を表わし、nは、1〜100を表わす。
Rは、構造単位式(2)〜(7)に示す構造単位のいずれかを表わす。なお、構造単位式(2)中、pは2〜8を表わす。
ポリエステル−ウレタンを構成するポリエステルとしては、グリコール成分が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、または1,4−ブタンジオールであり、二塩基性酸成分が、コハク酸、グルタル酸、またはアジピン酸からなる両末端ヒドロキシル基を有するポリエステルであり、その重合度nは1〜100である。ポリエステルの分子量として、1,000〜4,500に当るものが特に望ましい。
ポリエステル−ウレタンを構成するジイソシアナート成分としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等のポリメチレンイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、p,p′−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。中でも、トリレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナートがポリウレタン化した場合、セルロースエステルとの相溶性が秀れているので好ましい。
ポリエステル−ウレタンの分子量は、2,000〜50,000が好ましく、さらに5,000〜15,000が好ましい。ポリエステル−ウレタンの合成は、上記のポリエステルとジイソシアナートとを混じ攪拌下加熱させる常法の合成法により、容易に得ることができる。また、原料のポリエステルも常法により、相当する二塩基性酸、またはこれらのアルキルエステル類とグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法が、あるいはこれらの酸の酸クロリドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法により、末端基がヒドロキシル基となるよう適宜調整すれば容易に合成することができる。
ポリエステル−ウレタンの配合量は、主たる樹脂に対して5〜30重量%が好ましい。配合量をこの範囲とすることで良好な可塑性を呈するフィルムが得られる。
ポリエステルとしては、ポリエチレングリコールと脂肪族二塩基性酸とからなるポリエステルで、その平均分子量は700から10,000が好ましい。
ポリエチレングリコールは、一般式が
HO−(CH2CH2−O)n−H
(式中、nは、整数である)で表される。nは4以下が好ましい。
HO−(CH2CH2−O)n−H
(式中、nは、整数である)で表される。nは4以下が好ましい。
また、脂肪族二塩基性酸とは、一般式が
HOOC−R−COOH
(式中、Rは、脂肪族二価炭化水素基である)で表される蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などであり、炭素数9以下が好ましい。
HOOC−R−COOH
(式中、Rは、脂肪族二価炭化水素基である)で表される蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などであり、炭素数9以下が好ましい。
ポリエステルの合成は、常法により、上記二塩基性酸またはこれらのアルキルエステル類とグリコール類とのポリエステル化反応、またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成することができる。
ポリエステルの配合量は、主たる樹脂に対して5〜30重量%が好ましい。配合量をこの範囲とすることで良好な可塑性を呈するフィルムが得られる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎるとフィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法では、フィルムの滑り性を付与するために、微粒子を添加することが好ましい。ここで、用いられる微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。中でもヘイズを小さく抑えることができることから二酸化珪素が特に好ましく用いられる。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)等の商品名を有する市販品が好ましく使用できる。
上記の溶融流延製膜法により得られる光学フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に貼り合わせることにより楕円偏光板とすることができる。
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。上記の溶融流延製膜法により得られる光学フィルムは、上記保護フィルム付きの偏光板に貼り合わせて作製してもよいし、また保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。
特に、上記の溶融流延製膜法により得られる光学フィルムは幅手方向に遅相軸を有しているため、偏光フィルムと、裁断することなく長尺ロール同士で貼り合わすことができ、偏光板の生産性が飛躍的に向上する。
偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.7、
数平均分子量75,000、温度140℃で5時間乾燥、
ガラス転移点:Tg=174℃)
トリメチロールプロパントリベンゾエート 10重量部
IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 1重量部
上記材料の混合物をV型混合機で30分混合した後、直径50mmの単軸押し出し機(GT−50、株式会社プラスチック工学研究所製)で、220℃にて溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。この時、押出し機入り口から材料とともに窒素を添加し、酸素濃度を低下させた。
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.7、
数平均分子量75,000、温度140℃で5時間乾燥、
ガラス転移点:Tg=174℃)
トリメチロールプロパントリベンゾエート 10重量部
IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 1重量部
上記材料の混合物をV型混合機で30分混合した後、直径50mmの単軸押し出し機(GT−50、株式会社プラスチック工学研究所製)で、220℃にて溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。この時、押出し機入り口から材料とともに窒素を添加し、酸素濃度を低下させた。
ついで、図1と図2示すTダイ4を取り付けた2軸押し出し機(PCM30、株式会社池貝製)にペレットを供給し製膜した。押出し機の設定温度は250℃、Tダイ4はコートハンガータイプで、流延ダイ4中央部のリップ部の間隙L1を315μm、及び流延ダイ4端部のリップ部の間隙L2を300μmに設定した。また押出し機1中間部のホッパー開口部から、滑り剤としてシリカ粒子(日本アエロジル社製)、及びUV吸収剤(TINUVIN360、チバスペシャルティケミカル社製)をそれぞれ、0.05重量部、0.5重量部となるよう添加した。
Tダイ4出口から押し出される材料の温度T1が、290℃になるように流延ダイ4の温度を設定した。溶融押し出ししたフィルムは100℃に温度調整した直径350mmのクロムメッキ鏡面冷却ロール5上に落下させた。冷却ロール5に密着したフィルムは、冷却ロール5の中心角5°の円周部分を搬送された後、タッチロール6で押圧された。フィルムの幅手250mmの全面に対し、0.4kgf/cm2の圧力で接触した。押圧されたフィルムは冷却ロール5の中心角150°の円周部分で接触した後、搬送ロール2本に順次通し、フィルムエッジ(端部)をスリッター13によりをスリットした後、ワインダー(巻取り機)16に巻き取り、セルロースアセテートプロピオネートフィルムFを得た。巻き取ったフィルムFの厚みが80μmとなるように、押し出し量と引き取りロールの回転数を調整した。
なお、使用した多価アルコールエステル系可塑剤であるトリメチロールプロパントリベンゾエートの融点(Tm)は、80℃であった。
そして、この実施例1では、冷却ロール5からフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)として赤外線ヒーター20を配するとともに、赤外線ヒーター(熱源)20のロール回転方向の後側に続いて表面に不繊布を巻き付けたクリーニングロール(清掃手段)21を配した。赤外線ヒーター(熱源)20とクリーニングロール(清掃手段)21との距離は、最短部で15mmとした。
このロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーター(熱源)20により、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より10℃高い、90℃に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、赤外線ヒーター(熱源)20のロール回転方向の後側に続いて配置したクリーニングロール(清掃手段)21によって、ロール表面部分の温度が冷めないうちに、融解したロール汚れを拭き取った。
また、表面に不繊布を巻き付けたクリーニングロール(清掃手段)21の不繊布にも汚れが蓄積するため、不織布は1時間ごとに交換した。
上記の方法により、24時間製膜を続けた後、冷却ロール5の表面汚れ、及び得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面汚れ、並びに工程汚れを目視評価し、得られた結果を、下記の表1に示した。
ここで、冷却ロール5の表面、及びセルロースアセテートプロピオネートフィルム表面の汚れの評価は、つぎのレベルにランク分けして行なった。
○:汚れが見られない場合
△:汚れが見られるが、問題ないレベルである場合
×:汚れがひどく清掃が必要な場合
また、工程汚れは、つぎのレベルにランク分けして行なった。
△:汚れが見られるが、問題ないレベルである場合
×:汚れがひどく清掃が必要な場合
また、工程汚れは、つぎのレベルにランク分けして行なった。
○:クリーニングロール(清掃手段)を取り付けたロール周辺の装置や壁面に 汚れが見られない場合
△:クリーニングロール周辺の装置や壁面に汚れは見られるが、フィルムへの 影響はないと考えられる場合
×:クリーニングロール周辺の装置や壁面に付着した汚れが、フィルム品質に 悪影響を及ぼしている場合
△:クリーニングロール周辺の装置や壁面に汚れは見られるが、フィルムへの 影響はないと考えられる場合
×:クリーニングロール周辺の装置や壁面に付着した汚れが、フィルム品質に 悪影響を及ぼしている場合
この実施例1で得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、フィルム汚れが見られず、面品質の良好なフィルムであった。
実施例2
上記表1の実施例1の結果に示すように、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度90℃で清掃したフィルムでは、ロール表面にわずかに汚れが見られ、この汚れは、光学フィルムとしての使用において問題ないレベルではあるが、このときのクリーニングロール(清掃手段)21の温度は、60℃にまで上昇していた。
上記表1の実施例1の結果に示すように、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度90℃で清掃したフィルムでは、ロール表面にわずかに汚れが見られ、この汚れは、光学フィルムとしての使用において問題ないレベルではあるが、このときのクリーニングロール(清掃手段)21の温度は、60℃にまで上昇していた。
そこで、このクリーニングロール(清掃手段)21の内部に冷却水を流入し、クリーニングロール(清掃手段)21の温度を30℃以下に保って、再度、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なったところ、フィルム汚れも、ロール汚れも、もちろん工程汚れも見られず、製膜作業が実施することができた。得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
実施例3と4
上記実施例1の場合と同様に実施するが、これらの実施例3と4において、上記実施例1の場合と異なる点は、赤外線ヒーター(熱源)20により、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を、実施例3では、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より50℃高い、130℃に上昇させ、実施例4では、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より90℃高い、170℃に上昇させた点にある。
上記実施例1の場合と同様に実施するが、これらの実施例3と4において、上記実施例1の場合と異なる点は、赤外線ヒーター(熱源)20により、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を、実施例3では、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より50℃高い、130℃に上昇させ、実施例4では、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より90℃高い、170℃に上昇させた点にある。
その他の点は、上記実施例1の場合と同様にして、24時間製膜を続けた後、冷却ロール5の表面汚れ、及び得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面汚れ、並びに工程汚れを目視評価し、得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
表1の結果から明らかなように、実施例3で得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、いずれもフィルム汚れ、冷却ロール汚れ、及び工程汚れが見られず、面品質の良好なフィルムであった。
これに対し、実施例4で得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、フィルム汚れ、冷却ロール汚れが見られず、面品質の良好なフィルムであったが、実施例4では、赤外線ヒーター(熱源)20により、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm=80℃)より90℃高い、170℃に上昇させているため、可塑剤等の若干の揮散があり、クリーニングロール周辺の装置や壁面に汚れは見られるが、フィルムへの影響はない程度であった。
比較例1
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、冷却ロール5に、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーター、及びクリーニングロール(清掃手段)を全く配置しなかった点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、冷却ロール5に、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーター、及びクリーニングロール(清掃手段)を全く配置しなかった点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
この比較例1の方法により、24時間製膜を続けた後、冷却ロール5の表面汚れ、及び得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面汚れ、並びに工程汚れを目視評価し、得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムには多くの汚れが見られた。このフィルム汚れの形状から、該汚れは、冷却ロール5に付いた汚れが、フィルム側に転写したものであると考えられる。
比較例2
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、冷却ロール5に、クリーニングロール(清掃手段)21は配置するが、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーターを配置しなかった点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、冷却ロール5に、クリーニングロール(清掃手段)21は配置するが、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーターを配置しなかった点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
この比較例2の方法により、24時間製膜を続けた後、冷却ロール5の表面汚れ、及び得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面汚れ、並びに工程汚れを目視評価し、得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面には、クリーニングロール(清掃手段)21が稼動していたにもかかわらず、比較例1と同様に、フィルム汚れ及びロール汚れが見られた。これは、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーターを配置しなかったために、冷却ロール5からフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度が低い状態にあり、従って、可塑剤を主成分とする汚れが、冷却ロール5上に固化してしまい、そのため、クリーニングロール(清掃手段)21が接触しても、ロール汚れが充分には取れなかったものと考えられる。
比較例3
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーター20の出力を上げて、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を250℃にした点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施してセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、ロール汚れ加熱手段(熱源)としての赤外線ヒーター20の出力を上げて、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度を250℃にした点にある。その他の点は、実施例1の場合と同じ条件で、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行なった。
この比較例3の方法により、24時間製膜を続けた後、冷却ロール5の表面汚れ、及び得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの表面汚れ、並びに工程汚れを目視評価し、得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、フィルムの搬送方向に段状の欠陥が生じていた。これは、赤外線ヒーター(熱源)20で上昇させた、フィルム剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分の温度が高過ぎるため、清掃箇所を過ぎて、新たに溶融押し出されたフィルムが接触する冷却開始点の冷却ロール5の表面部分の温度が、冷却設定温度まで下がらず、該冷却開始点の冷却ロール5の表面部分の温度が、冷却設定温度よりも高い状態になってしまい、新たに押し出されたセルロースアセテートプロピオネートフィルムの溶融樹脂が、該冷却設定温度よりも高い冷却ロール5の表面部分と接触したことで、冷却ロール5からのフィルムの剥離が不安定になり、フィルムに段状欠陥が発生したものと考えられる。
また、連続的ではないが、セルロースアセテートプロピオネートフィルム上に、転写によるものとは別の大きな汚れが見られた。これは、揮発した可塑剤が赤外線ヒーター20の支持部や、赤外線ヒーター20の反射鏡に付着し、それがセルロースアセテートプロピオネートフィルム上に落下したものと考えられる。
1:押出し機
2:フィルター
3:スタチックミキサー
4:流延ダイ
5:第1冷却ロール
6:タッチロール
7:第2冷却ロール
8:第3冷却ロール
9:剥離ロール
10:未延伸フィルム
12:延伸機
16:巻取り装置
F:光学フィルム(元巻き)
20:赤外線ヒーター(ロール汚れ加熱手段=熱源)
21:クリーニングロール(清掃手段)
2:フィルター
3:スタチックミキサー
4:流延ダイ
5:第1冷却ロール
6:タッチロール
7:第2冷却ロール
8:第3冷却ロール
9:剥離ロール
10:未延伸フィルム
12:延伸機
16:巻取り装置
F:光学フィルム(元巻き)
20:赤外線ヒーター(ロール汚れ加熱手段=熱源)
21:クリーニングロール(清掃手段)
Claims (6)
- 可塑剤を含む非晶性熱可塑性樹脂を溶融流延製膜法により流延ダイからフィルム状に溶融押し出して、回転駆動する冷却ロール上に支持し、該冷却ロール上にてフィルムを冷却した後、フィルムを剥離ロールで剥離し、剥離後のフィルムを巻き取る光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法であって、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)を配し、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度を、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇させて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れを融解し、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて配置した清掃手段によって、融解されたロール汚れを拭き取ることを特徴とする、光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法。
- ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持することを特徴とする、請求項1に記載のロールの清掃方法。
- 非晶性熱可塑性樹脂の主成分が、セルロースエステルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のロールの清掃方法。
- 可塑剤を含む非晶性熱可塑性樹脂を溶融流延製膜法によりフィルム状に溶融押し出しする流延ダイと、溶融押し出しされたフィルムを冷却する回転駆動冷却ロールと、該冷却ロール上にて冷却されたフィルムを剥離する剥離ロールと、剥離後のフィルムを巻き取る巻取り機とを具備する光学フィルムの製造装置におけるロールの清掃装置であって、冷却ロール等のロールからフィルムが剥離する剥離点よりロール回転方向の後側のロール表面部分に向けてロール汚れ加熱手段(熱源)が配置され、該加熱手段(熱源)によりロール表面部分の温度が、汚れの主成分である可塑剤の融点(Tm)以上、融点(Tm)+100℃以下に上昇せしめられて、ロール表面部分に付着した可塑剤を主成分とする汚れが融解され、加熱手段(熱源)のロール回転方向の後側に続いて清掃手段が配置されて、この清掃手段によって、融解されたロール汚れが拭き取られることを特徴とする、光学フィルムの製造装置におけるロールの清掃装置。
- ロール汚れを拭き取る清掃手段の表面温度を、10〜50℃に保持することを特徴とする、請求項4に記載のロールの清掃装置。
- 非晶性熱可塑性樹脂の主成分が、セルロースエステルであることを特徴とする、請求項4または5に記載のロールの清掃装置。
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JP2006081036A JP2007253476A (ja) | 2006-03-23 | 2006-03-23 | 光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法、及びロールの清掃装置 |
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JP2006081036A Withdrawn JP2007253476A (ja) | 2006-03-23 | 2006-03-23 | 光学フィルムの製造方法におけるロールの清掃方法、及びロールの清掃装置 |
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-
2006
- 2006-03-23 JP JP2006081036A patent/JP2007253476A/ja not_active Withdrawn
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