JP2007250669A - 誘電体dbrミラーを有する面発光半導体レーザおよびその製造方法 - Google Patents

誘電体dbrミラーを有する面発光半導体レーザおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超高速計算機向けの高温・高速動作が要求される面発光レーザに適用できるSiを構成材料として含む誘電体DBRミラーの形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の面発光レーザの誘電体DBRミラーの形成方法は、半導体成長により活性層を含む共振器を構成する工程と、同共振器端面にSiを含む誘電体DBRを温度150℃以上300℃以下の第一温度で成膜する工程と、そのあとに第一温度と異なる第二温度で熱処理を施す工程を有する。熱処理の条件は、第二温度が400℃以上550℃未満、時間が3分以上、もしくは第二温度が550℃以上750℃以下、時間が3分以上10分未満とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、誘電体DBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーを有する面発光半導体レーザおよびその製造方法に関し、特に、Siを含む誘電体DBRミラーを備える面発光半導体レーザおよびその製造方法に関する。
近年、インターネットの普及に伴い、コンピュータ内、コンピュータ間で処理される情報量は増加傾向にある。電気による信号伝送限界を超える手段として、コンピュータ内で高密度実装が可能な面発光レーザを用いた光インターコネクションが注目されている。特に、超高速計算機向けの光インターコネクション用光源として用いる場合には高温動作および20Gbpsを超える高速動作が要求される。
面発光レーザを高速化するには、微分利得の向上が重要である。微分利得を改善するには閾値を低減する必要があり、閾値の低減にはDBRミラーを高反射率化する必要がある。
また、高温動作にはキャリア閉じ込めに優れるGaAs基板上に形成される短波長帯0.98〜1.16μmの面発光レーザが適している。
面発光レーザを高速化する上で、DBRミラーを誘電体で構成する場合がある。たとえば、面発光レーザの中でも、トンネル接合を用いたものである。トンネル接合を用いると素子を低抵抗化できるので、高速動作化・消費電力低減に優れる。また、低抵抗化により発熱も抑制できるので素子寿命の長い面発光レーザを実現できる。
しかし、トンネル接合は高濃度ドーピング技術で形成するので、その後のDBRミラーを半導体で形成すると、半導体成長時の長時間の高温熱履歴により、ドーパント拡散による特性劣化に伴うダメージを被る。この熱ダメージから素子を守るためには低温形成可能な誘電体DBRミラーの採用が有効となる。
ここで、誘電体DBRミラーは低屈折率材料と高屈折率材料とを交互に積層した多層膜で構成される。2つの材料の屈折率差が大きいほど少ないペア数で高反射率が実現できる。ペア数が少なければ、作製時間は短縮され、層厚が薄くなることで加工プロセスが簡単となり歩留まりが向上する。また、多層膜形成による歪み減少により素子信頼性が向上する。高屈折率材料としては安価で加工性の優れるSiが用いられることが多い。
Siを含む誘電体DBRミラーを用いた面発光レーザの他の例としては、非特許文献1の図2に記載されているトンネル接合を用いた発振波長0.98μmの面発光レーザがある。表面側のDBRミラーとして5ペアのSiO2/Siから構成される誘電体DBR構造を採用している。
図14は、このような面発光レーザの構成を示す断面図である。図14に示した面発光レーザは、GaAs基板1201、裏面側DBRミラー1202、n型スペーサ層1203、InGaAsからなる2つの量子井戸から構成される活性層1204、p型スペーサ層1205、酸化狭窄層1206、電流注入層1207、トンネル接合を形成する高濃度p型層1208、トンネル接合を形成する高濃度n型層1209、表面側誘電体DBRミラー1210、+電極1211、−電極1212、保護膜1213から構成されている。
図15(a)〜図15(c)は、図14に示した面発光レーザの製造工程を示す断面図である。
はじめに、図15(a)に示したように、GaAs基板1201上に、裏面側DBRミラー1202からトンネル接合を形成する高濃度n型層1209までの各層を順次成長させる。
次に、図15(b)に示したように、エッチングにより、メサ1214を形成する。そして、430℃の高温炉のなかで窒素ガスをキャリアガスとした水蒸気酸化を45分間行う。
その後、図15(c)に示したように、リフトオフ法を用いてSiO2からなる保護膜1213を形成した後、+電極1211および−電極1212を形成し、375℃、10秒で電極アロイを行ったあと、電子ビーム蒸着法により5ペアのSiO2/Siから構成される誘電体DBRミラー1210を形成する。非特許文献1によれば、以上の手順により、閾値電流0.55mA、波長986nmで発振する、素子抵抗100Ωの低抵抗な面発光レーザを得たとされている。
他のSiを含む誘電体DBRミラーおよびトンネル接合を用いた面発光レーザの例としては、特許文献1の16ページ、20行目に記載されている発振波長0.986μmの面発光レーザがある。電子ビーム蒸着により形成した5周期のSiO2/Siから構成される誘電体DBRミラーを採用している。
他のSiを含む誘電体DBRミラーを用いた面発光レーザの例としては、非特許文献2の図1に記載されている発振波長1.3μmの面発光レーザがある。同文献では、SiO2/Siから構成される誘電体DBRミラーおよびMgO/Siから構成される誘電体DBRミラーを採用している。誘電体材料は電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation)を用いて形成されている。MgO形成時の基板温度は250℃、SiおよびSiO2形成時の基板温度は200℃である。同文献によれば、InP基板上に形成した誘電体DBRミラーにおいて、測定系の精度の限界である99.4%の反射率が得られたとされている。
他のSiを含む誘電体DBRミラーおよびトンネル接合を用いた面発光レーザの例としては、特許文献2の8ページ、11行目に記載されている発振波長0.98μmの面発光レーザがある。スパッタ蒸着法により形成した4周期のSiO2/Siから構成される誘電体DBRミラーを採用している。
他のSiを含む誘電体DBRミラーおよびトンネル接合を用いた面発光レーザの例としては、特許文献3の図2に記載されている発振波長1.55μmの面発光レーザがある。MgO/Siから構成される誘電体DBRミラーを採用している。
さらに他のSiを含む誘電体DBRミラーを用いた面発光レーザの例として、非特許文献3の図1に記載されている発振波長1.3μmの面発光レーザがある。同文献では、8.5ペアのSi−Al23誘電体DBRおよび6ペアのSi−SiO2誘電体DBRを採用している。これらは基板温度200℃でイオンビームアシスト堆積法(ion-beam assist deposition)を用いて形成され、Al23、SiO2成膜時には酸素イオンが適用される。
さらに他のSiを含む誘電体DBRミラーを用いた面発光レーザの例として、非特許文献4の図1に記載されている発振波長1.3μmの面発光レーザがある。同文献では、8ペアのSi/窒化ケイ素誘電体DBRを採用している。これらは反応性スパッタ(reactive sputtering)を用いて形成される。
特表2001−511604号公報(第16頁) 特開2005−223351号公報(第8頁) 特開2000−277853号公報(第5頁、図2) 特表平8−508137号公報(第44頁) ジェイ・ジェイ・ウィラー(J. J. Wierer)、他3名、「ラテラル エレクトロン カレント オペレーション オブ バーティカル キャヴィティ サーフィス エミティング レーザーズ ウイズ ベリイド トンネル コンタクト ホール ソースズ(Lateral electron current operation of vertical cavity surface emitting lasers with buried tunnel contact hole sources)」、アプライドフィジックスレター(Applied Physics Letter)、1997年、pp.3468-3470 ティー・ババ(T. Baba)、他4名、「コンティニュアス ウェイブ GaInAsP/InP サーフィス エミティング レーザーズ ウィズ ア サーマリー コンダクティブ MgO/Si ミラー (Continuous Wave GaInAsP/InP Surface Emitting Lasers with a Thermally Conductive MgO/Si Mirror)」ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、1994年、pp.1905-1909 エス・ウチヤマ(S. Uchiyama)、他2名、「コンティニュアス ウェイブ オペレーション アップ トゥ 36℃ オブ 1.3μm GaInAsP-InPバーティカル キャヴィティ サーフィス エミティング レーザーズ(Continuous-Wave Operation up to 36℃ of 1.3-μm GaInAsP-InP Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers)」、フォトニクステクノロジーレターズ(Photonics Technology Letters)、1997年、pp.141-142 エイチ・ワダ(H. Wada)、他10名「ロウ スレショウルド ハイ テンプラチャー パルスド オペレーション オブ InGaAsP/InP バーティカル キャヴィティ サーフィス エミティング レーザーズ(Low-threshold, high-temperature pulsed operation of InGaAsP/InP vertical cavity surface emitting lasers)」、フォトニクス テクノロジー レターズ(Photonics Technology Letters)、1991年、pp.977-979 エヴァ・シー・フリーマン(Eva C. Freeman)、他1名、「オプティカル コンスタント オブ RF スパッタド ハイドロジェネイティッド アモルファス Si(Optical constants of rf sputtered hydrogenated amorphous Si)」フィジカル レビュー B(Physical Review B)、1979年、pp.716-728 エム・エイチ・ブロドスキー(M. H. Brodsky)、他3名、「ストラクチャル オプティカル アンド エレクトリカル プロパティー オブ アモルファス シリコン フィルムズ(Structural, Optical, and Electrical Properties of Amorphous Silicon Films)」フィジカル レビュー B(Physical Review B)、1970年、pp.2632-2641
しかしながら、上記従来技術は、それぞれ、以下の点で改善の余地があった。
また、第1の課題として、非特許文献1に開示された面発光レーザには、高温動作時に高速性が阻害されるという課題があった。
この原因は、波長0.98〜1.16μmの短波長帯では、アモルファスSiの吸収が大きいことに起因する。理由はSiの吸収により誘電体DBRでの光吸収が増加し、反射率低下を招き、しきい値電流が上昇し、発熱増加とともに、微分利得が減少し、緩和振動周波数が低下するためである。また、誘電体DBRでの光吸収の増加は、光出力の減少を生じ、やはり誘電体DBRミラーでの発熱の増加により、活性層温度が上昇するため微分利得が減少し、緩和振動周波数が低下する。なお、非特許文献1でしきい値電流が小さいが、これは室温動作結果であり、量子井戸数も2つと少なく、室温動作に最適化されているためである。
また、非特許文献2〜非特許文献4のSiを含む誘電体DBRミラーにおいては、1.2μmより長い波長のレーザ発振が可能な面発光レーザにおいて用いられており、長波長帯では高反射率を実現できている。しかし、高温度動作に適した非特許文献1で示したような短波長帯0.98〜1.16μmの面発光レーザに適用した場合、波長0.98〜1.16μmの短波長帯では、Siの吸収係数が大きくなるため、同様に、面発光レーザ高速性が阻害される。
実用レベルの高速動作VCSELに求められる反射率は99%以上、望ましくは99.4%以上である。光出射側ミラーの場合には超高速計算機システムに必要な光出力として数mWオーダーの光出力を確保するために99.5%前後の値が求められる。
図9(a)および図9(b)は、誘電体DBRミラーの反射率のDBRペア数依存性をSiの吸収係数毎に示す図である。また、図10(a)および図10(b)は、誘電体DBRミラーの透過率に対する吸収率の比のDBRペア数依存性をSiの吸収係数毎に示す図である。これらの図面においては、Siに組み合わせる屈折率の小さい材料の代表としてSiO2、屈折率のやや高い材料の代表として窒化ケイ素を想定した。そして、図9(a)および図10(a)においては、SiO2/Siから構成される誘電体DBRミラーの結果を見積もった。また、図9(b)および図10(b)においては、窒化ケイ素/Siから構成される誘電体DBRの結果を見積もった。光の波長は0.98μmである。
各構成について、反射率のグラフ(図9)と、透過率に対する吸収率のグラフ(図10)とを比較すると、吸収係数が大きくてもペア数を増やせば、反射率は大きくとることができるが、吸収係数が大きいと誘電体DBRミラーでの光の吸収量も大きくなることがわかる。誘電体DBRミラーでの光の吸収量が増えると光出力が低下し、吸収された光は熱に変わり素子温度を上昇させ、温度上昇は高周波特性などの素子特性を劣化させる。
透過率に対する吸収率の比の実用レベルは、半導体DBRを用いた場合の予想される比率である0.4以下である。グラフから、反射率99.5%付近で透過率に対する吸収率の比を、実用レベルまで低減するには、Siの吸収係数を少なくとも200cm-1以下に下げる必要があることがわかる。
誘電体材料の光吸収係数の影響については、特許文献4の44頁13行目にも記載されており、光吸収係数が大きいと外部微分量子効率および光出力が低下する。
単結晶Siの間接バンドギャップ波長は1.117μmである。吸収係数は、波長0.98〜1.16μmの短波長帯で200cm-1以下と充分に小さい。しかし、誘電体DBRミラーに用いられるアモルファスSiになるとその結晶性に応じて吸収係数がバンドギャップ波長よりも長波長側で裾をひくように大きくなる。
この事実は、非特許文献5の図2および非特許文献6の図4に示されている。
まず、非特許文献5には、スパッタ、蒸着やケミカルヴェイアパーデポジション(chemical vapor deposition)のどの方法を用いてもアモルファスSiではこの吸収係数の裾引きの問題があることが示されている。また、同文献には、水素をアモルファスSiに添加することで吸収係数が低減されることが示されているが、水素の導入は屈折率も大きく変えることになり、また、水素組成を精度よく制御する必要があるため誘電体DBRミラーの反射率制御を難しくする。
非特許文献6には、室温でRFスパッタにより成膜したサファイア結晶基板上のSiにアニール処理を施すとSiの吸収係数が低減されることが示されている。しかし、波長1.08μmでSiの吸収係数を160cm-1まで低減するのに949℃で2時間と高温長時間の熱処理を必要とする。この熱処理条件を面発光レーザの誘電体DBRミラーに適用すると、半導体内のドーパントの拡散により特性劣化を生じてしまうので、実用に耐えうる条件ではなかった。
本発明者の実験においても、SiO2ガラス基板上に基板温度200℃でRFスパッタにより形成したSi膜に関し、図11に示すように、Si単結晶に比べ間接バンドギャップ波長よりも長波で吸収係数のすそ引きが観察された。0.98μmでの吸収係数は3080cm-1、1.16μmでの吸収係数は786cm-1、1.3μmでの吸収係数は398cm-1、1.55μmでの吸収係数は150cm-1であった。
また、第2の課題としては、誘電体DBRミラーをプラズマや電子ビームを用いて成膜する場合に、半導体表面にダメージが生じ、素子を高温で長期動作させると、ダメージを受けた領域から欠陥が増殖し、劣化が生じる場合があった
なお、特許文献1〜特許文献4においても、誘電体DBRミラーの具体的な製造条件について検討されていないため、上述した課題を同様に有していた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高温動作可能な面発光レーザにおいて、高速かつ高信頼動作可能とする低損失かつ高反射率の誘電体DBRミラーの形成方法を提供する。
本発明によれば、
面発光半導体レーザの共振器端面に、150℃以上300℃以下の第一温度でシリコンを含む誘電体DBRを形成した後、前記第一温度と異なる第二温度で熱処理を施す工程を含む面発光半導体レーザの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
共振器を構成する2つのミラーのうち少なくとも片側がシリコンを含む誘電体多層膜から構成されるDBRミラーである面発光半導体レーザであって、
前記共振器の発振波長が0.98μm以上1.16μm以下であって、
前記DBRミラーの反射率が99.4%以上であるとともに、
前記シリコンの吸収係数が200cm-1以下である面発光半導体レーザが提供される。
本発明においては、150℃以上300℃以下の第一温度で誘電体DBRを形成する。これにより、吸収損失が少なく、たとえば99.4%以上の高反射率の誘電体ミラーを形成することができる。このため、高温動作時においても低閾値でレーザ発振することができるため、発熱が小さい。その結果、高い微分利得を維持でき、高い緩和振動周波数が得られ、高速動作を実現する面発光半導体レーザを提供することができる。
ここで、積層体を150℃以上で形成することにより、Siの吸収係数を確実に低下させることができる。
また、誘電体DBRと半導体の間の歪み量は、後の熱処理の第二温度よりも、むしろ積層体を形成する第一温度で決まっており、積層体を300℃以下で形成することにより、デバイス動作温度である0℃から150℃におけるシリコンを含む誘電体DBRのひずみ量を、より高温で積層体を形成する場合に比べて抑制することができる。これにより、素子寿命の劣化を効果的に抑制することができる。
また、本発明においては、誘電体DBRを形成した後、第一温度と異なる第二温度で基板を加熱処理することにより、素子特性を劣化させることなく誘電体に隣接する半導体表面近傍の結晶欠陥を回復することができる。このため、面発光半導体レーザの動作信頼性を向上させることができる。
本発明によれば、吸収損失が少なく、高反射率の誘電体ミラーを有する面発光半導体レーザを提供することができる。これにより、高温動作時においても低閾値でレーザ発振することができるため、発熱を小さくできる。その結果、高い微分利得を維持でき、高い緩和振動周波数が得られ、高速動作を実現する面発光半導体レーザを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、共通の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態の面発光半導体レーザの構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のA−A'断面図である。
図1および図2に示した面発光レーザ100は、半絶縁性半導体基板からなる基板101上に、アンドープ半導体DBRミラーであるDBRミラー102、第一n型スペーサ層103、活性層104、p型スペーサ層105、トンネル接合を形成する高濃度p型層106、トンネル接合を形成する高濃度n型層107、第二n型スペーサ層108、誘電体DBRミラー109、+電極110、−電極111、および電極パッド112から構成されている。
面発光レーザ100は、共振器を構成する2つのミラーのうち少なくとも片側がシリコンを含む誘電体多層膜から構成されるDBRミラー(誘電体DBRミラー109)である面発光半導体レーザである。この面発光レーザ100は、共振器の発振波長が0.98μm以上1.16μm以下であって、誘電体DBRミラー109の反射率が99.4%以上であるとともに、上記シリコンの吸収係数が200cm-1以下である。
面発光レーザ100においては、共振器を構成するレーザ構造がトンネル接合を有する。具体的には、高濃度p型層106と高濃度n型層107とが隣接してトンネル接合を形成している。
シリコンを含む誘電体多層膜から構成される誘電体DBRミラー109は、たとえば、シリコンと酸化シリコンから構成されるDBRミラー、シリコンと窒化シリコンから構成されるDBRミラー、またはシリコンと窒化シリコンと酸化シリコンから構成されるDBRミラーとすることができる。さらに具体的には、誘電体DBRミラー109が、シリコン層と、SiNx層またはSiO2層とが交互に積層された構成であってもよい。さらに同じ誘電体DBRミラー109中に、SiNx層およびSiO2層をともに含んだ構成であってもよい。また、シリコン層と、SiO2層とが交互に積層された構成において一部のSi層がSiNx層で置き換えた構成であってもよい。シリコン層と、SiNx層とが交互に積層された構成において一部のSi層をSiO2層で置き換えた構成であってもよい。
次に、図3(a)〜図3(c)、図4(a)および図4(b)を参照して、面発光レーザ100の製造方法を説明する。
誘電体DBRミラー109を有する面発光レーザ100の製造方法は、半導体成長により活性層104を含む共振器を構成する工程と、同共振器端面にSiを含む誘電体DBRを温度150〜300℃の下で成膜する工程と、その後に熱処理を施す工程を有する。つまり、面発光半導体レーザの共振器端面に、150℃以上300℃以下の第一温度でシリコンを含む誘電体DBRを形成した後、第二温度で熱処理を施す工程を含む。
また、この製造方法は、以下の工程を含む。
基板101の上部に共振器を構成するレーザ構造を形成する工程、および
レーザ構造の上部に上記誘電体DBRを形成する工程。
本実施形態の製造方法において、共振器を構成するレーザ構造が、トンネル接合を有する構成としてもよい。
また、誘電体DBRを形成する工程は、上述した第一温度において、シリコン層と、誘電体層とを所定の回数交互に積層してシリコンを含む誘電体多層膜を形成する工程を含む。そして、誘電体多層膜を形成する工程の後、第二温度で熱処理を施す。
また、第二温度で熱処理を施す工程は、たとえば400℃以上550℃未満の第二温度で基板101を3分以上熱処理する工程としてもよい。また、第二温度で熱処理を施す工程は、550℃以上750℃以下の第二温度で3分以上10分未満基板101を熱処理する工程としてもよい。第二温度で熱処理を施す工程は、たとえば窒素雰囲気下で行われる。
Si単層膜がアニール処理により結晶性が改善されることが知られているが、本発明者が鋭意検討した結果、基板温度が室温よりも高い150℃以上300℃以下で誘電体DBRミラーを形成した後に、熱処理を施すことで、室温で誘電体DBRを形成したあとに熱処理するよりもSiの吸収を抑制できることを見出した。つまり、基板101の温度が室温よりも高い150℃以上300℃以上の第一温度で誘電体DBRミラー109を形成した後に、熱処理を施すことにより、室温で誘電体DBRを形成した後に熱処理するよりも、Siの吸収を抑制できる。
図12は、Si単層膜を200℃で形成した後、400℃および550℃でそれぞれ5分の熱処理を施した場合のSiの吸収スペクトルの変化である。400℃かつ5分の熱処理条件で、波長1.04μm以上におけるSiの吸収係数は200cm-1以下となり、550℃かつ5分の熱処理条件で、波長0.95μm以上におけるSiの吸収係数は200cm-1以下となった。
また、図13は、400℃で熱処理した際の、波長1.07μmでのSi吸収係数のアニール時間依存性である。Siの吸収係数をモニターしたところ、400℃で3分までに、109cm-1まで徐々に吸収係数は減少した。しかし、3分以降、吸収係数はほとんど変化しないことがわかった。この事実は熱処理温度を変えても同様であった。
また、熱処理温度400℃、時間3分で吸収係数が109cm-1まで下がっている事実は、Si単層膜を200℃で形成することにより、非特許文献6の結果と比較して、より低温の熱処理によりSiの吸収係数が低減できていることを示す。
さらに、誘電体DBRミラー中で他の誘電体に挟まれて積層したSiに対しても、積層膜を200℃で形成することにより、同様の効果が得られ、波長0.98〜1.16μmの短波長帯でSiの吸収が反射率に影響しないレベルとすることができることを見出した。
400℃以上750℃以下では、熱処理温度を固定した場合、熱処理時間3分以上では、反射率はほとんど変化しなかった。
推測するに、Siの吸収係数は膜の結晶性に依存するが、形成時の膜質の違い(粒度、粒度間距離等)に応じて、その後熱処理により到達可能なSiの吸収係数に違いが生じると考えられる。
また、熱処理時間を変えてSiを含む誘電体DBRミラーを形成した面発光レーザの信頼性評価を行ったところ、熱処理を施さなかったものや400℃以上550℃未満で熱処理したものに比べて、550℃以上750℃以下で熱処理したものでは、誘電体膜形成時の半導体表面近傍の欠陥が減少し、素子寿命が伸び、信頼性が向上した。
なお、550℃以上750℃以下で10分以上の熱処理、もしくは750℃以上で熱処理を加えた場合には、ドーピング拡散により、550℃未満の条件で加熱する場合よりも特性が劣化する懸念があった。熱処理温度550℃以上750℃以下では、10分未満に熱処理時間を抑えることで、素子の特性劣化をさらに確実に抑えることができた。
以下、面発光レーザ100の製造方法をさらに具体的に説明する。
初めに、図3(a)に示すように、半絶縁性半導体基板である基板101上に、裏面側のアンドープ半導体DBRミラーであるDBRミラー102からトンネル接合を形成する高濃度n型層107までの半導体層を順次成長させる。次に、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィーによるレジストパターニング後、エッチングによりトンネル接合領域であるトンネル接合を形成する高濃度p型層106およびトンネル接合を形成する高濃度n型層107を所定の形状に加工する。そして、図3(c)に示すように、高濃度p型層106およびトンネル接合を形成する高濃度n型層107を埋め込むように、p型スペーサ層105上に第二n型スペーサ層108を成長させて、電流狭窄構造を形成する。
次に、図4(a)に示すようにメサ容量低減のためにエッチングによりメサ113を形成し、第一n型スペーサ層103の表面を露出させた後、容量低減のため電極パッド112が形成される領域において、DBRミラー102の内部もしくは半絶縁性基板101までエッチングして、DBRミラーの上面を掘り下げる。その後、Siを含む誘電体DBRミラー109を全面に形成する。
Siを含む誘電体DBRミラー109は、基板温度150〜300℃で成膜する。誘電体DBRの反射率は反射率測定用サンプルとして半導体基板にも成膜を行うことで測定することができる。
成膜にはRFスパッタや反応性スパッタ等のスパッタ、電子ビーム蒸着、ケミカルヴェイアパーデポジション、イオンビームアシスト堆積法など、どの方法を用いてもよい。たとえば、RFスパッタ法により誘電体DBRを成膜する。
シリコンを含む誘電体多層膜を形成する工程は、たとえば、シリコン層と、SiNx層、SiO2層等の所定の誘電膜とを交互に積層する工程である。Siと組み合わせる誘電体DBRミラー109の材料としては、SiO2、窒化ケイ素(SiNx)、MgO、CaF2、MgF2、Al23などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二つ以上をSiと組み合わせて誘電体DBRミラーを形成してもよい。
成膜後、たとえば、窒素雰囲気で温度400℃以上550℃未満、時間5分の熱処理条件で熱処理を施す。なお、熱処理時の雰囲気は窒素雰囲気に限らない、真空中、水素雰囲気、Arなどの不活性ガス雰囲気で熱処理を行ってもよい。
図5に、例としてブラッグ波長が0.98μm、1.04μmの3ペアSi/SiO2誘電体DBRミラーの反射率の熱処理温度依存性を示す。図5に示したように、熱処理温度とともに、Siの吸収係数が低減され、反射率が高くなった。ブラッグ波長が1.04μmの誘電体DBRミラーでは、熱処理温度400℃以上で、Siの吸収損失を200cm-1以下として計算上予想される反射率の値にほぼ近い値が得られた。ブラッグ波長が0.98μmの誘電体DBRミラーでは、熱処理温度550℃以上で、Siの吸収損失を200cm-1以下として計算上予想される反射率の値にほぼ近い値が得られた。
なお、クラマース・クロニッヒの関係式から明らかなように吸収と屈折率は相互依存関係がある。吸収係数が変化すると屈折率も変化するため、Siを含む誘電体DBRミラーを形成する前に、あらかじめ熱処理を施したSi単層膜の屈折率を測定した。これは、以下の理由による。Si単層膜の屈折率は、熱処理条件によって変化する。また、Siを含む誘電体DBRミラーの膜厚は、Si単層膜の屈折率に依存して変化する。誘電体DBRミラーの形成前に、熱処理条件と屈折率との関係をあらかじめ取得しておくことにより、Siを含む誘電体DBRの膜厚の設計値に応じて熱処理条件を制御することができる。これにより、Siを含む誘電体DBRを設計通りの膜厚でさらに確実に形成できる。
Siの吸収係数は波長が長くなるほど小さくなるため、以上の実験データから、波長0.98〜1.16μmの短波長帯で所望のレーザ発振波長に応じて最低熱処理温度を400℃以上550℃未満で選ぶことでSiの吸収の影響を抑えられた誘電体DBRミラーを実現できることがわかる。
図4に戻り、誘電体DBRミラーの熱処理後、図4(b)に示すように誘電体DBRミラー109をドライエッチングすることで一部半導体を露出させる。+電極110および−電極111を形成する。+電極110は、第二n型スペーサ層108に接して設けられ、−電極111は、第一n型スペーサ層103に接して設けられる。また、これらの電極とともに、容量を低減するために、アンドープもしくは半絶縁性の半導体上に形成された誘電体DBRミラー109の上に、電極パッド112を形成する。電極パッド112は、+電極110と一体に形成される。375℃、10秒で電極アロイを行い、素子は完成する。なお、誘電体DBRミラー109のドライエッチングが困難な場合には、リフトオフを用いてもよい。リフトオフを用いる場合には、成膜には電子ビーム蒸着、イオンビームアシスト堆積法などが用いられる。
なお、熱処理温度は工程の順番によっては最低熱処理温度が求められる場合がある。たとえば、発振波長1.04μm以上の素子を作製する上で電極パッドの容量を低減するために電極パッド下にポリイミドを形成したのちに、誘電体DBRミラーを形成する場合などがそれにあたる。たとえば、ポリイミドのキュア温度が400℃から450℃の場合、熱処理温度はキュア温度以下の400℃とする。こうすることにより、ポリイミド上の誘電体DBRミラーに加わる、ポリイミドの熱変形に伴うひずみをさらに確実に抑制することができる。
本実施形態においては、Siを含む誘電体DBRミラー109を150℃以上300℃以下の温度で成膜し、誘電体DBRミラー109を形成した面発光レーザ100に熱処理を施すことで、吸収損失が少なく99.4%以上の高反射率の誘電体ミラーを形成することができる。これにより、高温動作時においても低閾値でレーザ発振することができるため、発熱が小さい。その結果、高い微分利得が得られ、緩和振動周波数は高くなり、高速動作を実現した面発光レーザ100を提供することができる。
また、Siを含む誘電体DBRミラー109を形成した面発光レーザ100に熱処理を施す上で、熱処理温度を400℃以上550℃未満とすることで、吸収損失が少なく反射率が99.4%以上の高反射率の誘電体ミラーを形成して、かつ、素子特性を劣化させることなく誘電体に接する半導体面の結晶欠陥を回復することができ、高温・高速動作でかつ長寿命を有する面発光レーザを提供することができる。
本実施形態においては、Siを用いて誘電体DBRミラー109を構成しているため、DBRミラーペア数が少なく、作製時間は短く、層厚が薄くなることで加工プロセスが簡単なため歩留まりが高い。また、多層膜形成による歪み減少により素子信頼性が高い。
また、誘電体DBRミラーにSiとともに用いる材料としてSiO2や窒化ケイ素を選択するとCF4ガスを用いたドライエッチングが可能となり、微細プロセスが可能となる。
また、面発光レーザ100においては、DBRミラー102を半導体DBRミラーとしているため、共振器両側のミラーを誘電体DBRミラー109とした場合に比べて、放熱特性により一層優れた構成となっている。
(第二の実施形態)
第一の実施形態において、Siを含む誘電体DBRミラー109を形成した面発光レーザ100に熱処理を施す上で、熱処理条件を温度550℃以上750℃以下、時間3分以上10分未満とすることもできる。
Siを含む誘電体DBRミラー109を形成した面発光レーザ100に熱処理を施す上で、熱処理温度を550℃以上750℃以下、熱処理時間を3分以上10分未満とすることで、吸収損失が少なく反射率が99.4%以上の高反射率の誘電体ミラーを形成して、かつ、素子特性を劣化させることなく誘電体に接する半導体面近傍の結晶欠陥を回復することができ、高温・高速動作でかつ長寿命を有する面発光レーザを提供することができる。
第一の実施形態において前述したように、550℃以上750℃以下10分以上熱処理もしくは750℃以上の熱処理を加えた場合には、550℃以上750℃以下、時間3分以上10分未満とした場合に比べて、ドーピング拡散により特性劣化が生じる懸念があった。そこで、550℃以上750℃以下で10分以下と高温でも熱処理時間を短くすることで、特性劣化は生じず、Siの吸収を抑制した99.4%以上の高反射率が得られた。
熱処理したSiを含む誘電体DBRミラーを形成した面発光レーザの信頼性評価を行ったところ、熱処理を施さなかったものや400℃以上550℃未満で熱処理したものに比べ550℃以上750℃以下で熱処理したものでは誘電体膜形成時の半導体表面の欠陥が減少した。これにより高温動作における、素子寿命がさらにのび、より一層の信頼性改善がみられた。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、以上の実施形態においては、埋込みトンネル接合型の面発光レーザの例を挙げたが、電極アロイ条件に配慮して誘電体DBRミラー形成後に電極形成を行えば非特許文献1の構造にも適用可能である。
また、以上の実施形態においては、トンネル接合を用いた短波長帯0.98〜1.16μmの面発光レーザを例に挙げたが、本プロセスはこれよりも長波長帯の面発光レーザに適用してもよい。また、非特許文献2〜4に示されるようなトンネル接合を用いない通常のpn接合型の面発光レーザに適用してもよい。
また、以上の実施形態においては、半絶縁性基板を用いたが、n型導電型性基板やp型導電性基板を用いてもよい。
また、以上の実施形態においては、半導体DBRをアンドープとしたが、その一部もしくは全体がn型導電性やp型導電性であってもよい。
また、n型導電型性基板を用いて半導体DBRをn型導電性とする場合には、基板裏面に−電極を形成してもよい。
また、以上の実施形態に記載の製造方法は、たとえば超高速計算機向けの高温・高速動作が要求される面発光レーザの製造方法に適用できる。
(実施例1)
本実施例においては、上述した図2に示した構成の面発光レーザを製造した。製造において、図3(a)〜図3(c)、図4(a)および図4(b)を参照して前述した手順を用いた。
図2に示すように半絶縁性半導体GaAs基板101上にGaAs/AlGaAsからなるアンドープ半導体DBRミラーであるDBRミラー102、GaAsからなる第一n型スペーサ層103、InGaAs/GaAsから構成される3つの量子井戸からなる活性層104、GaAsからなるp型スペーサ層105、GaAsからなるトンネル接合を形成する高濃度p型層106、GaAsからなるトンネル接合を形成する高濃度n型層107、GaAsからなる第二n型スペーサ層108、3ペアのSi−SiO2からなる表面側誘電体DBR構造である誘電体DBRミラー109、+電極110、−電極111、電極パッド112から構成されている。
まず、図3(a)に示したように、半絶縁性半導体基板である基板101上に、裏面側アンドープ半導体DBRミラーであるDRBミラー102からトンネル接合を形成する高濃度n型層107までの各半導体層を順次成長させた。
次に、図3(b)に示したように、フォトリソグラフィーによるレジストパターニング後、エッチングによりトンネル接合を加工し、図3(c)に示したように第二n型スペーサ層108で埋め込み成長を行い、電流狭窄構造を形成した。
つづいて、図4(a)示したように、メサ容量低減のために、エッチングによりn型スペーサ層103までメサを形成した後、容量低減のため電極パッド112の形成位置をアンドープ半導体DBRミラー102までエッチングした。
その後に1.07μmをブラッグ波長とする3ペアのSi/SiO2から構成される誘電体DBRミラー109を形成した。
ここで、誘電体DBRミラー109は基板温度200℃下でRFスパッタにより成膜した。誘電体DBRミラーの反射率は反射率測定用サンプルとしてn型半導体基板にも成膜を行うことで測定した。なお、ここではSiを含む誘電体DBRミラー成膜温度を200℃としたが、基板温度150〜300℃であればよい。
なお、Siと組み合わせる誘電体DBRミラー材料としてはSiO2のほかに窒化ケイ素、MgO、CaF2、MgF2、Al23などが考えられ、さらにはこれら二つ以上をSiと組み合わせて誘電体DBRミラーを形成してもよい。
また、成膜にはスパッタ(RFスパッタや反応性スパッタ)、電子ビーム蒸着、ケミカルヴェイアパーデポジション、イオンビームアシスト堆積法など、どの方法を用いてもよい。
成膜直後にはSiの光吸収により反射率が小さいため、温度400℃で、時間5分熱処理条件で熱処理を施した。反射率はアニール処理前後で99.0%から99.5%と改善された。
図4(b)に示すように誘電体DBRミラーの熱処理後、誘電体DBRミラー109をCF4ガスでドライエッチングすることで一部半導体を露出させ、+側にAuGeNiからなる+電極110、−側にAuGeNiからなる−電極111をそれぞれ形成し、400℃、10秒で電極アロイを行った。以上の手順により、図1に示した素子が得られた。
本実施例では、Siを含む誘電体DBRミラーを形成した面発光レーザに熱処理を施すことで、吸収損失が少なく、99.5%の高反射率の誘電体ミラーを形成することができた。これにより高温動作時においても低閾値でレーザ発振することができるため、発熱が小さい。その結果高い微分利得を維持でき、高い緩和振動周波数が得られ、50℃で20Gbpsを超える高速動作を実現した面発光レーザを提供することができた。
(実施例2)
本実施例においては、図6に示した構成の面発光レーザを製造した。図6は、本実施例の面発光レーザの構成を示す断面図である。また、図7(a)、図7(b)および図8(a)〜図8(c)は、図6に示した面発光レーザの製造工程を示す断面図である。
図6に示した面発光レーザは、n型半導体GaAs基板501上にGaAs/AlGaAsからなるn型半導体DBRミラー502、GaAsからなる第一n型スペーサ層503、3つのInGaAs/GaAsからなる量子井戸からなる活性層504、GaAsからなるp型スペーサ層505、GaAsからなるトンネル接合を形成する高濃度p型層506、GaAsからなるトンネル接合を形成する高濃度n型層507、GaAsからなる第二n型スペーサ層508、4ペアのSi/窒化ケイ素からなる表面側誘電体DBR構造である誘電体DBRミラー509、+電極510、−電極511、電極パッド512、ポリイミド513、保護膜514から構成されている。
本実施例では、この面発光レーザを以下の手順で製造した。
はじめに、図7(a)に示したように、n型半導体基板である基板501上に裏面側のn型半導体DBRミラー502からトンネル接合を形成する高濃度n型層507までの半導体層を成長し、図7(b)に示したように、フォトリソグラフィーによるレジストパターニング後、ウェットエッチングによりトンネル接合を直径8μmでp型スペーサ層505までエッチングし、図8(a)に示したように、第二n型スペーサ層508で埋め込み成長を行い、電流狭窄構造を形成した。
その後に図8(b)に示したように、メサ容量低減のために第一n型スペーサ層503までエッチングを行い、メサ515を形成し、0.98μmをブラッグ波長とする4ペアのSi/窒化ケイ素から構成される誘電体DBRミラー509を形成した。
Siを含む誘電体DBRミラーは基板温度250℃でRFスパッタにより成膜した。なお、ここでは基板温度を250℃としたが、Siを含む誘電体DBRミラー成膜時は基板温度150℃以上300℃以下であればよい。
また、成膜には、RFスパッタや反応性スパッタ等のスパッタ、電子ビーム蒸着、ケミカルヴェイアパーデポジション、イオンビームアシスト堆積法など、どの方法を用いてもよい。
成膜後、真空中にて温度550℃、時間5分の熱処理条件で熱処理を施した。反射率はSiの光吸収の低減により熱処理前後で98.2%から99.5%と改善された。
次に電極パッド512が配置される箇所にポリイミド513を形成し400℃で硬化させ、保護膜514として、λ/2厚の窒化ケイ素保護膜を形成した。
その後、図8(c)に示すように、誘電体DBRミラーをCF4ガスで窒化ケイ素/Si膜をドライエッチングすることで一部半導体を露出させ、+側および−側に、それぞれ、AuGeNiからなる+電極510およびAuGeNiからなる−電極511を形成し、400℃、10秒で電極アロイを行い、図6に示した素子を得た。
本実施例では、Siを含む誘電体DBRミラーを形成した面発光レーザに熱処理を施すことで、吸収損失の少なく99.5%程度の高反射率の誘電体ミラーを形成することができた。これにより高温動作時においても低閾値でレーザ発振することができるため、発熱が小さい。その結果、高い微分利得を維持でき、高い緩和振動周波数が得られ、50℃で20Gbpsを超える高速動作を実現した面発光レーザを提供することができた。
また、熱処理したSiを含む誘電体DBRミラーを形成した面発光レーザの信頼性評価を行ったところ、熱処理を施さなかったものや400℃以上550℃未満で熱処理したものに比べ550℃以上750℃以下で熱処理したものでは誘電体膜形成時の半導体表面の欠陥が減少した。そして、85℃動作において、400℃で熱処理したものの素子寿命が1000時間であるのに対し、550℃で熱処理したものでは10000時間と大幅に信頼性の改善がみられた。
本実施形態における面発光レーザの構成を示す斜視図である。 図1のA−A'断面図である。 図1の面発光レーザの製造工程を示す断面図である。 図1の面発光レーザの製造工程を示す断面図である。 本実施形態の面発光レーザにおける熱処理による反射率改善効果を説明する図である。 本実施例の面発光レーザの構成を示す断面図である。 図6の面発光レーザの製造工程を示す断面図である。 図6の面発光レーザの製造工程を示す断面図である。 本実施形態の誘電体DBRミラーのSi吸収係数とDBRペア数と反射率との間の関係を説明する図である。 本実施形態の誘電体DBRミラーのSi吸収係数とDBRペア数と、透過率に対する吸収率の比との間の関係を説明する図である。 アモルファスSiおよび単結晶Siの吸収係数の波長依存性を説明する図である。 アモルファスSiの吸収係数の熱処理温度依存性を説明する図である。 アモルファスSiの吸収係数の熱処理時間依存性を説明する図である。 従来の面発光レーザの構成を示す断面図である。 図14の面発光レーザの製造工程を示す断面図である。
符号の説明
100 面発光レーザ
101 基板
102 DBRミラー
103 第一n型スペーサ層
104 活性層
105 p型スペーサ層
106 高濃度p型層
107 高濃度n型層
108 第二n型スペーサ層
109 誘電体DBRミラー
110 +電極
111 −電極
112 電極パッド
113 メサ
501 基板
502 n型半導体DBRミラー
503 第一n型スペーサ層
504 活性層
505 p型スペーサ層
506 高濃度p型層
507 高濃度n型層
508 第二n型スペーサ層
509 誘電体DBRミラー
510 +側電極
511 −側電極
512 電極パッド
513 ポリイミド
514 保護膜
515 メサ
1201 基板
1202 DBRミラー
1203 n型スペーサ層
1204 活性層
1205 p型スペーサ層
1206 酸化狭窄層
1207 電流注入層
1208 高濃度p型層
1209 高濃度n型層
1210 誘電体DBRミラー
1211 +電極
1212 −電極
1213 保護膜
1214 メサ

Claims (10)

  1. 面発光半導体レーザの共振器端面に、150℃以上300℃以下の第一温度でシリコンを含む誘電体DBRを形成した後、前記第一温度と異なる第二温度で熱処理を施す工程を含む面発光半導体レーザの製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法において、
    基板の上部に前記共振器を構成するレーザ構造を形成する工程と、
    前記レーザ構造の上部に前記誘電体DBRを形成する工程と、
    を含み、
    誘電体DBRを形成する前記工程が、前記第一温度において、シリコン層と、誘電体層とを所定の回数交互に積層してシリコンを含む誘電体多層膜を形成する工程を含み、
    誘電体多層膜を形成する前記工程の後、前記第二温度で前記熱処理を施す面発光半導体レーザの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法において、
    前記共振器を構成するレーザ構造がトンネル接合を有する面発光半導体レーザの製造方法。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の製造方法において、
    RFスパッタ法により前記誘電体DBRを成膜する面発光半導体レーザの製造方法。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の製造方法において、
    第二温度で熱処理を施す前記工程を窒素雰囲気下で行う面発光半導体レーザの製造方法。
  6. 請求項1乃至5いずれかに記載の製造方法において、
    第二温度で熱処理を施す前記工程が、400℃以上550℃未満の前記第二温度で3分以上熱処理する工程である面発光半導体レーザの製造方法。
  7. 請求項1乃至5いずれかに記載の製造方法において、
    第二温度で熱処理を施す前記工程が、550℃以上750℃以下の前記第二温度で3分以上10分未満熱処理する工程である面発光半導体レーザの製造方法。
  8. 共振器を構成する2つのミラーのうち少なくとも片側がシリコンを含む誘電体多層膜から構成されるDBRミラーである面発光半導体レーザであって、
    前記共振器の発振波長が0.98μm以上1.16μm以下であって、
    前記DBRミラーの反射率が99.4%以上であるとともに、
    前記シリコンの吸収係数が200cm-1以下である面発光半導体レーザ。
  9. 請求項8に記載の面発光半導体レーザにおいて、前記共振器を構成するレーザ構造がトンネル接合を有する面発光半導体レーザ。
  10. 請求項8または9に記載の面発光半導体レーザにおいて、
    シリコンを含む誘電体多層膜から構成される前記DBRミラーが、シリコンと酸化シリコンから構成されるDBRミラー、シリコンと窒化シリコンから構成されるDBRミラー、またはシリコンと窒化シリコンと酸化シリコンから構成されるDBRミラーである面発光半導体レーザ。
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