JP2007248954A - 駆動制御装置および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エンコーダのディスク偏心により発生する無端移動部材の回動速度変動の安定化を簡易な構成で確実に行えるようにする。
【解決手段】 制御コントローラ部40は、目標角変位生成部30から受け取った目標角変位とエンコーダ31から出力合成回路700経由で受け取った検出角変位(実際にはエンコーダ31の出力信号に基づいて算出する)との差e(n)をとり、その差e(n)に基づいてパルス出力器37経由で駆動モータ32を駆動制御する。出力合成回路700は、エンコーダ31内の一対のセンサ(180度ずれた位置関係にある)の出力信号を合成し、その合成信号を1/2逓倍して出力する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、転写装置等に用いられる転写搬送ベルト等の無端移動部材を回動させる駆動ローラを駆動制御する駆動制御装置、およびその駆動制御装置を備えたカラープリンタやカラー複写機等の画像形成装置に関する。
カラー画像形成装置におけるカラー画像形成の一般的な方法としては、複数の感光体上にそれぞれ異なる色で形成されるトナー画像を直接転写紙に重ねながら転写させる直接転写方式と、同じく色の異なるトナー画像を中間転写体に重ねながら転写させ、その後に転写紙に一括して転写させる中間転写方式がある。これらの方式は、共通して複数の感光体を転写紙または中間転写体に対向させて並べて配置するのでタンデム方式と呼ばれ、感光体毎にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対して、静電潜像の形成および現像などの電子写真プロセスを実行させ、直接転写方式では走行中の転写紙上に、中間転写方式においては走行中の中間転写体上に転写する。
これらの各方式を用いたタンデム方式のカラー画像形成装置では、直接転写方式にあっては、転写紙を担持しながら走行する無端ベルト(エンドレスベルト)を、中間転写方式にあっては、感光体から画像を受け取り担持する無端ベルトを採用するのが一般的である。そして、4個の感光体をそれぞれ含む作像ユニットを無端ベルトの一方の走行辺に沿って並設している。
上記タンデム方式のカラー画像形成装置では、各色のトナー画像を精度よく重ねることが色ズレの発生を防止する上で重要である。そのため、いずれの転写方式においても転写ベルトの速度変動による色ズレを回避するために、転写ユニットを構成する複数個の従動軸のうちの一つにエンコーダを取り付け、そのエンコーダの回転速度変動に応じて駆動ローラの回転速度をフィードバック制御するのが有効な手段となっている。
このようなフィードバック制御を実現する最も一般的な方法として、比例制御(PI制御)がある。これはまず、エンコーダの目標角変位Ref(n)とエンコーダの検出角変位P(n−1)との差から位置偏差e(n)を演算する。そして、その演算結果の位置偏差e(n)にローパスフィルタをかけて高周波ノイズを除去するとともに、制御ゲインをかけ、更に一定の標準駆動パルス周波数を加える。これにより得られた駆動パルス周波数により、駆動ローラを駆動する駆動モータを制御することによって、常にエンコーダ出力が目標角変位で駆動されるように制御することができる。
実際の制御としては、エンコーダパルスの出力の立上りエッジをカウントするカウンタと、制御周期(例えば1ms)毎にカウントするカウンタを使用し、制御周期(1ms)間に移動する目標角変位の演算結果と、制御周期毎に上記エンコーダカウント値を取得することで得られる検出角変位との差から、位置偏差を取得することができる。
具体的な演算としては、エンコーダが取り付けられている従動軸のローラ径をφ15.615とすると以下のようになる。
e(n)=θ0×q−θ1×ne[rad]
なお、この式における各記号の意味は次のとおりである。
e(n)[rad]:今回のサンプリングにて演算された位置偏差
θ0[rad]:制御周期あたりの移動角度(=2π×V×10−3/15.615π[rad])
θ1[rad]:エンコーダ1パルスあたりの移動角度(=2π/p[rad]、ここでpはエンコーダのスリットピッチ)
q:制御周期タイマのカウント値
ne:エンコーダカウント値
V:ベルト線速[mm/s]
ここで例えば、制御周期1msでエンコーダの分解能を1回転当たり300パルスのものを使用し、転写ベルトを162mm/sで動作するようにフィードバック制御をかけた場合を想定すると以下のようになる。
θ0=2π×162×10−3/15.615π=0.0207487[rad]
θ1=2π×p=2π/300=0.0209439[rad]
以上の演算を制御周期毎に行うことで位置偏差を取得し、フィードバック制御を行う。
一般的なエンコーダの構成は、円周方向に数百単位の分解能で光を透過する放射状のスリットを有するディスクを従動ローラ軸に圧入してある。このディスクは、従動ローラと同時に回転するようになっていて、スリットをセンサで検出することで、従動ローラの回転量に応じたパルス信号(パルス状のON/OFF信号)を得られる。このパルス信号を用いて従動ローラの移動角を検出することで、駆動ローラの回転速度を制御している。
しかし、エンコーダのディスクの同芯度加工精度の影響で、従動ローラにディスクを取り付ける時に、お互いにずれた状態で取り付けられる場合がある。この状態で回転すると、従動ローラは一定速度で回転しているにも関わらず、ディスクが偏心した状態で回転される。これをセンサ(受光器)で読み取ると、ディスクの1回転成分がセンサの出力つまりパルス信号に出てしまう。更に1回転成分を、フィードバック制御により増幅して駆動ローラを回転させるため、ディスクの1回転毎に転写ベルトの速度変動が発生し、色ズレが発生する。
本来、フィードバック制御では、制御ゲインを上げることで負荷変動に対する応答性を良くしたいところであるが、制御ゲインを上げるとディスクの1回転成分が大きくなり、結果的に色ズレが大きくなるため、実際には制御ゲインが低い状態で、フィードバック制御をせざるを得なかった。そのため、本来制御したい他の変動成分の除去が十分に行われていなかった。
上述した従動ローラに取り付けられたディスクの偏心で発生する転写ベルトの速度変動を制御する方法として、例えば特許文献1に記載されたものがある。これは、駆動ローラを定速で回転させ、エンコーダ出力から得られる角速度情報を少なくとも駆動ローラ1周期分にわたって取得し、駆動ローラの1/2周期で区切って前半部分と後半部分を足し合わせることにより、駆動ローラによる偏心の速度変動成分を相殺し、従動ローラによる速度変動分のみを抽出するものである。更に、画像形成時には、従動ローラから検出された角速度情報と上記速度変動分の差分を取ることで、ベルトの速度走行を一定にするものである。
あるいは、従動ローラに取り付けられたディスクの偏心の影響を受けない制御方法として、例えば特許文献2に記載されたものがある。これは、無端ベルトまたはドラムの周方向に沿ってリニアスケールを部分的に形成し、リニアスケールに印刷された複数のタイミングマークを、無端ベルトまたはドラムが1回転する間に、複数のセンサのうち少なくとも2個のセンサが検出し、その各センサの出力パルスを基にエンコーダから速度信号としてのパルス信号を出力し、パルス信号と指令パルス信号との差を零にするための制御信号をコントローラで生成し、この制御信号に従って駆動モータを駆動することにより、無端ベルトまたはドラムの表面速度を一定に制御するものである。
特開2000−47547号公報 特開2004−69933号公報
特許文献1に記載の制御方法は、エンコーダのパルス間隔を一定クロックで計測し、駆動ローラを一定速度で回転させたときのエンコーダ速度変動分を、フィードバック制御したときのエンコーダ速度から差し引くことで、ディスク偏心で発生する速度変動をキャンセルし、エンコーダの速度を一定にしようと速度制御するものである。その制御を実現するためには、少なくともエンコーダのパルス間隔からディスクの偏心成分の影響を十分にサンプリングできるだけのクロックレートと、それを処理できる高速なハードウェア、および高い分解能のカウンタやタイマなどの計測手段が必要となり、高価なシステムとなり、コスト的にデメリットがある。
また、上述したようにエンコーダの目標角変位Ref(ni)とエンコーダの検出角変位P(n−1)との差から位置偏差e(n)を算出し、その算出結果から駆動モータの駆動パルス周波数を制御する位置制御の場合、そもそも特許文献1,2に記載の手法は適用できない。
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、画像形成装置等における対象ローラ(例えば転写搬送ベルト等の無端移動部材を回動させる駆動ローラあるいはその無端移動部材の回動により従動回転する従動ローラ)の周動を検出するエンコーダの出力信号に基づいて駆動ローラを駆動制御する駆動制御装置において、エンコーダのディスク偏心により発生する無端移動部材の速度変動の安定化を簡易な構成で確実に行えるようにすることを目的とする。
この発明は、上記の目的を達成するため、以下の駆動制御装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
請求項1の発明による駆動制御装置は、無端移動部材を回動させる駆動ローラあるいは該無端移動部材の回動により従動回転する従動ローラの周動を検出するエンコーダを備え、該エンコーダの出力信号に基づいて上記駆動ローラを駆動制御する駆動制御装置であって、上記エンコーダを、複数のマーク又はスリットが円周方向に所定間隔で配置されたディスクと、その各マーク又はスリットを検出するための一対のセンサとを備え、その各センサが180度ずれた位置に取り付けられた構成とし、上記一対のセンサの出力信号を合成する合成手段と、該合成手段からの合成信号を1/2逓倍する逓倍手段と、該逓倍手段からの1/2逓倍された合成信号をカウントするカウント手段と、該手段によるカウント値を所定タイミングでサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段によってサンプリングされたカウント値に基づいて制御目標値に対するフィードバック制御を行うことにより、上記駆動ローラを駆動制御するフィードバック制御手段と、上記一対のセンサの出力信号のうち、一方の出力信号の上記合成手段への入力タイミングを遅延させる遅延手段とを設けたことを特徴とする駆動制御装置。
請求項2の発明による駆動制御装置は、請求項1の駆動制御装置において、上記入力タイミングの遅延量として、任意の遅延量を入力する遅延量入力手段を設けたものである。
請求項3の発明による駆動制御装置は、請求項1の駆動制御装置において、上記一対のセンサの出力タイミングを検出する出力タイミング検出手段と、該出力タイミング検出検出手段による上記出力タイミングの検出結果に応じて上記入力タイミングの遅延量を算出する遅延量算出手段を設けたものである。
請求項4の発明による駆動制御装置は、請求項3の駆動制御装置において、所定時間毎に上記出力タイミング検出手段を動作させる動作指示手段を設けたものである。
請求項5の発明による駆動制御装置は、請求項1の駆動制御装置において、上記遅延手段を、上記一対のセンサの出力信号が同時に変化する場合に、上記一方の出力信号の上記合成手段への入力タイミングを更に遅延させる手段とし、上記フィードバック制御手段にフィルタ演算手段を備えたものである。
請求項6の発明による駆動制御装置は、請求項1の駆動制御装置において、上記遅延手段を、上記一対のセンサの出力信号が同時に変化する場合に、上記一方の出力信号の上記合成手段への入力タイミングを常に所定量だけ更に遅延させる手段とし、上記フィードバック制御手段にフィルタ演算手段を備えたものである。
請求項7の発明による駆動制御装置は、請求項6の駆動制御装置において、上記入力タイミングの遅延量として、任意の遅延量を入力する遅延量入力手段を設けたものである。
請求項8の発明による駆動制御装置は、請求項6の駆動制御装置において、上記一対のセンサの出力タイミングを検出する出力タイミング検出手段と、該出力タイミング検出手段による上記出力タイミングの検出結果に応じて上記入力タイミングの遅延量を算出する遅延量算出手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
請求項9の発明による駆動制御装置は、請求項8の駆動制御装置において、所定時間毎に上記出力タイミング検出手段を動作させる動作指示手段を設けたものである。
請求項10の発明による駆動制御装置は、請求項1〜9のいずれかの駆動制御装置において、上記フィードバック制御手段が、上記一対のセンサのうち、一方のセンサが使用不能になった場合に、他方のセンサの出力信号だけを用いて上記フィードバック制御を行うものである。
請求項11の発明による駆動制御装置は、請求項1〜10のいずれかの駆動制御装置において、上記フィードバック制御手段が、上記一対のセンサがいずれも使用不能になった場合に、上記フィードバック制御を中止するものである。
請求項12の発明による画像形成装置は、請求項1〜11のいずれかの駆動制御装置と、該駆動制御装置によって駆動制御される画像形成用の無端移動部材とを備えたものである。
請求項13の発明による画像形成装置は、請求項12の画像形成装置において、上記無端移動部材を、感光体ベルト,転写ベルト,中間転写ベルト,画像記録媒体搬送用ベルトのうちのいずれか一つ以上としたものである。
この発明の駆動制御装置によれば、対象ローラ(無端移動部材を回動させる駆動ローラあるいはその無端移動部材の回動により従動回転する従動ローラ)の周動を検出するエンコーダに、複数のマーク又はスリットが円周方向に所定間隔で配置されたディスクと、その各マーク又はスリットを検出するための一対のセンサとを備え、その各センサを180度ずれた位置に取り付けられた構成とし、その一対のセンサの出力信号を合成手段が合成し、その合成信号を逓倍手段が1/2逓倍して、その1/2逓倍した合成信号をカウント手段がカウントし、そのカウント値を所定タイミングでサンプリング手段がサンプリングし、そのサンプリングしたカウント値に基づいてフィードバック制御手段が制御目標値に対するフィードバック制御を行うことによって駆動ローラを駆動制御する。このとき、上記一対のセンサの出力信号のうち、一方の出力信号の合成手段への入力タイミングを必要に応じて遅延手段により遅延させる。
したがって、上記エンコーダのディスク偏心によって発生する無端移動部材の速度変動の安定化を、簡易な構成で確実に行うことができる。
この発明の画像形成装置によれば、上記駆動制御装置を備えることにより、低コストで画像品位に応じた適切な処理を行うことが可能である。
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例〕
まず、図2および図3によって、この発明による駆動制御装置を備えた画像形成装置の構成例について説明する。この画像形成装置は、直接転写方式の電子写真方式によりカラー画像を形成するカラーレーザプリンタ(以下「レーザプリンタ」という)であり、図2はそのレーザプリンタ全体の概略構成図である。
このレーザプリンタは、図2に示すように、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の画像を形成するための4組のトナー像形成部1(1Y,1M,1C,1K)が、図中の矢印Aに沿って転写搬送ベルト60が走行することによって転写紙Pが移動する方向における上流側(図で右下側)から順に配置されている。
この各トナー像形成部1はそれぞれ、像担持体としての感光体ドラム11(11Y,11M,11C,11K)と、現像ユニット12とを備えている。また、各トナー像形成部1の配置は、各感光体ドラム11の回転軸が平行になるように且つ転写紙移動方向に所定のピッチで配列するように、設定されている。
また、このレーザプリンタは、トナー像形成部1のほかに、光書込ユニット2、給紙カセット3,4、レジストローラ対5、転写紙(画像記録媒体)Pを担持して各トナー像形成部の転写位置を通過するように搬送する無端移動部材としての転写搬送ベルト(転写ベルトと画像記録媒体搬送用ベルトの機能を併せたもの)60を備えたベルト駆動装置6、ベルト定着方式の定着ユニット7、および排紙トレイ8等を備えている。なお、ベルト駆動装置6は、後述する制御系(駆動制御装置)を併せたものであり、また転写ユニットとしても機能するものである。
このレーザプリンタはさらに、手差しトレイ14、トナー補給容器22も備え、図示していない廃トナーボトル、両面・反転ユニット、電源ユニットなども二点鎖線で示したスペースSの中に備えている。
光書込ユニット2は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備えており、画像データに基づいて各感光体ドラム11の表面(外周面)にレーザ光を走査しながら照射する。
図3は、上述したベルト駆動装置6の概略構成を示す拡大図である。
このベルト駆動装置6で使用する転写搬送ベルト60は、体積抵抗率が10〜1011Ωcmである高抵抗の無端状単層エンドレスベルト(無端状のベルト部材)であり、その材質は例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)である。この転写搬送ベルト60は、各トナー像形成部1の感光体ドラム11に接触対向する各転写位置を通過するように、支持ローラ61〜66に張架されている。
これら支持ローラ61〜66のうちの転写紙移動方向の上流側に位置する入口ローラ61に対し、転写搬送ベルト60を挟んでその外周面側で対向するように静電吸着ローラ80が設けられている。この静電吸着ローラ80には電源18によって所定電圧が印加されており、2つのローラ61,80の間を通過した転写紙Pは帯電して転写搬送ベルト60上に静電吸着される。駆動ローラ63は転写搬送ベルト60を摩擦駆動する駆動ローラであり、駆動モータ(後述)によって矢印Dの方向に回転される。
各感光体ドラム11に対向する各転写位置において、転写電界を形成する転写電界形成手段としての転写バイアス印加部材27(27Y,27M,27C,27K)が転写搬送ベルト60の裏面に接触するように設けられている。これらの転写バイアス印加部材27はスポンジ等を外周に設けたバイアスローラであり、各転写バイアス電源9(9Y,9M,9C,9K)からローラ心金に転写バイアス電圧が印加される。この印加された転写バイアス電圧の作用により、転写搬送ベルト60に転写電荷が付与され、各転写位置において該転写搬送ベルト60の表面と感光体ドラム11の表面との間に所定強度の転写電界が形成される。また上記転写が行なわれる領域での転写紙と感光体ドラム11の接触を適切に保ち、最良の転写ニップを得るために、バックアップローラ68を備えている。
各転写バイアス印加部材27とそれらの近傍にそれぞれ配置されるバックアップローラ68は、それぞれ回転可能に揺動ブラケット93に一体的に保持され、回動軸94を中心として回動可能である。この回動は、カム軸97に固定されたカム96が矢印Eの方向に回動することによって時計方向に回動する。
前述した入口ローラ61と静電吸着ローラ80は一体的に、入口ローラブラケット90に支持され、軸91を回動中心として、図3の状態から時計方向に回動可能である。そして、揺動ブラケット93に設けられた孔95に、入口ローラブラケット90に突設されたピン92が嵌入しており、揺動ブラケット93の回動と連動して入口ローラブラケット90も回動する。これらのブラケット90、93の時計方向の回動により、各転写バイアス印加部材27とそれらの近傍にそれぞれ配置されるバックアップローラ68は感光体ドラム11から離され、入口ローラ61と静電吸着ローラ80も下方に移動する。これにより、黒(ブラック)トナーのみで画像を形成する時に、感光体ドラム11Y,11M,11Cと転写搬送ベルト60の接触を避けることが可能になっている。
一方、転写バイアス印加部材27Kとその隣のバックアップローラ68は出口ブラケット98に回転可能に支持され、出口ローラ62と同軸の軸99を中心に回動可能になっている。このベルト駆動装置6をレーザプリンタ本体に着脱する際に、図示していないハンドルの操作により出口ブラケット98を時計方向に回動させ、転写バイアス印加部材27Kおよびバックアップローラ68とともに転写搬送ベルト60を、ブラック画像形成用の感光体ドラム11Kから離間させることができる。
転写搬送ベルト60の駆動ローラ63に巻きつけられた部分の外周面には、図2に示すように、ブラシローラとクリーニングブレードから構成されたクリーニング装置85が接触するように配置されている。このクリーニング装置85により転写搬送ベルト60上に付着した残留トナー等の異物が除去される。
その転写搬送ベルト60の走行方向で駆動ローラ63のすぐ下流側に、転写搬送ベルト60の外周面を押し込むようにローラ64を設け、駆動ローラ63に対する転写搬送ベルト60の巻き付け角を大きく確保している。また、ローラ64のすぐ下流側には、転写搬送ベルト60の内周面に接触し、押圧部材であるばね69の付勢力により外側へ押圧して転写搬送ベルト60にテンションを与えるテンションローラ65が配設されている。
次に、このレーザプリンタによる画像形成動作について説明する。
このレーザプリンタによる画像形成時には、図2に示す給紙カセット3,4および手差しトレイ14のいずれかより転写紙Pが給紙されて、図示しない搬送ガイドにガイドされながら一点鎖線で示す搬送経路に沿って搬送ローラによって搬送され、レジストローラ対5が設けられている一時停止位置に送られる。
一方、カラー画像形成時には4組のトナー像形成部1(1Y、1M、1C、1K)の各感光体ドラム11(11Y、11M、11C、11K)は、図2で時計方向に回転しており、それぞれ図示していない帯電部材によって表面が均一に帯電された後、その表面に光書込ユニット2によって、形成すべき画像の各色のデータによって変調されたレーザ光が照射走査され、それぞれ静電潜像が書き込まれる。その後現像ユニットによって各色のトナーによって現像され、各感光体ドラム11の表面に各色のトナー像が形成される。
前述のようにレジストローラ対5に挟持されて一時停止された転写紙Pは、レジストローラ対5により所定のタイミングで送り出され、転写搬送ベルト60に担持されて各トナー像形成部1に向けて順次搬送され、その各転写ニップを通過する。各トナー像形成部1の感光体ドラム11上に形成される各色のトナー像は、それぞれ各転写ニップにおいて転写紙P上で重ね合わされるように順次作像タイミングをずらして作像されており、転写紙Pが各転写ニップを通過する際に上記転写電界やニップ圧の作用を受けて転写紙P上に転写される。この重ね合わせの転写により、転写紙P上にはフルカラートナー像が形成される。
このトナー像転写後の各感光体ドラム11の表面はクリーニング装置13によりクリーニングされ、更に除電されて次の静電潜像の形成に備えられる。
一方、フルカラートナー像が形成された転写紙Pは、定着ユニット7でこのフルカラートナー像が定着された後、切換ガイド21の回動姿勢に対応して、第1の排紙方向Bまたは第2の排紙方向Cに向かう。第1の排紙方向Bから排紙トレイ8上に排出される場合、画像面が下となった、いわゆるフェースダウンの状態でスタックされる。一方、第2の排紙方向Cに排出される場合には、図示していない別の後処理装置(ソータ、綴じ装置など)に向け搬送させるか、またはスイッチバック部を経て両面プリントのために再度レジストローラ対5に搬送される。
以上のようにして、このレーザプリンタは転写紙Pにフルカラー画像を形成する。
このようなタンデム方式の画像形成装置では、各色のトナー画像を高い位置精度で重ね合わせることが色ズレの発生を防止する上で重要である。しかしながら、ベルト駆動装置6で使用している駆動ローラ63、入口ローラ61、出口ローラ62、転写搬送ベルト60は、部品製造時に数十μm単位の製造誤差が発生する。この誤差により各部品が一回転した際に発生する変動成分が転写搬送ベルト60に伝達され、転写紙の搬送速度に変動が生じてしまう。
この転写紙の搬送速度(転写搬送ベルト60の回動速度)の変動により、各感光体ドラム11上のトナー像を転写紙Pに転写する際に、それぞれタイミングに微妙なズレが生じ、副走査方向(転写紙の搬送方向)に色ズレが発生してしまう。特に1200×1200DPI等の微小ドットで画像を形成する装置では、数μmのタイミングのズレが色ズレとして目立ってしまう。
そこで、この第1実施例におけるベルト駆動装置6(駆動制御装置を含む)では、図3で右下部の従動ローラ(「右下ローラ」という)66の軸上に設けたエンコーダの検出信号(出力パルス信号)によって右下ローラ66の回転速度を検出し、駆動ローラ63の回転をフィードバック制御することにより、転写搬送ベルト60を一定速度で走行させるようにする。
図4は、転写搬送ベルト60を透視してベルト駆動装置6の全体構成を示す斜視図である。
駆動ローラ63はタイミングベルト33を介して駆動モータ32に連結しており、駆動モータ32の回転速度に比例して回転駆動される。そして、この駆動ローラ63の回転によって転写搬送ベルト60が摩擦回動し、転写搬送ベルト60が回動することによって右下ローラ66が摩擦回転する。前述したように、この第1実施例では、右下ローラ66(対象ローラ)の軸上にエンコーダ31を設けており、このエンコーダ31の検出信号から検出した右下ローラ66の回転速度に基づいて駆動モータ32の速度制御を行っている。これは、前述したように、転写搬送ベルト60の位置変動(回動変動)で色ズレが発生するため、それを抑制するために行っている。
図5は、図4の右下ローラ66とエンコーダ31の構成例を示す斜視図である。
図6は、そのエンコーダ31内のディスク311とセンサの構成例を示す図であり、(a)はディスク311のみの正面図、(b)はディスク311とセンサの側面図である。
図7は、図4の駆動モータ32を一定速度で駆動してエンコーダ31の出力パルスのカウント値を一定タイミング(所定タイミング)でサンプリングしたときのサンプリング結果の異なる例を示す線図である。
エンコーダ31は、例えば図5,図6に示すように、ディスク311と、2つの発光素子312,316と、2つの受光素子313,317と、圧入ブッシュ314,315とを備えている。
ディスク311は、右下ローラ66の軸に圧入ブッシュ314,315を圧入することによって固定され、右下ローラ66の回転と同時に回転するようになっている。
また、このディスク311には、その円周方向に数百単位の分解能で光を透過する放射状のスリットが形成されており、その両側に一対つまり2つのエンコーダセンサをそれぞれ構成する発光素子312,受光素子313と発光素子316,受光素子317とを180度ずれた位置に配置しており、その受光素子313,317によって右下ローラ66の回転角度に応じた数のパルス信号(パルス状のON/OFF信号)を発生する。そのパルス信号を用いて右下ローラ66の移動角(以下「角変位」と称す)を検出することにより、駆動モータ32の駆動量を制御する。
ところで、ディスク311を右下ローラ66に圧入するときの同軸穴の加工には、数μmの誤差が発生し、これはゼロにすることは実質的には不可能である。そのため、ディスク311を右下ローラ66に取り付けるときに、お互いにずれた状態で取り付けられる場合があり、この状態で回転すると、右下ローラ66は一定速度で回転しているにも関わらず、ディスク311が偏心した状態で回転される。これをエンコーダセンサ(受光素子313,317)で読み取ると、ディスク311の1周期(1回転)毎に角変位変動が発生する。
図7において、(a)はディスク311の偏心がない状態でのサンプリング結果で、(b)は偏心があるときのサンプリング結果を示している。通常、ディスク311の偏心がない状態では、右肩上がりのサンプリング結果となるが、偏心がある場合、正弦波状のサンプリング結果となる。
なお、そのサンプリング結果はエンコーダ31の検出角変位を示しているため、サンプリング結果が正弦波状となっているということは、それだけ検出位置誤差が大きいことを示している。ディスク311の同軸穴の加工精度誤差が大きい場合、この正弦波の振幅がより大きく検出される。
2つの受光素子313,317は、180度ずれた位置に配置されているため、サンプリング結果の正弦波の位相は180度ずれたものとなる。よって、この2つのサンプリング結果を合成することにより、ディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すことが可能になる。この第1実施例では、この2つのサンプリング結果を後述する出力合成回路によって合成することにより、ディスク311の偏心の影響を受けない比例制御演算を行い、転写搬送ベルト60の回動速度を一定にすることを特徴としている。
図8は、このレーザプリンタにおける上述したベルト駆動装置6の駆動モータ制御部(駆動制御装置)を含む制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、この図8には、図示の都合上、エンコーダセンサは1つしか図示していないが、実際には2つあるものとする。
ベルト駆動装置6の駆動モータ制御部は、各エンコーダセンサ331(それぞれ発光素子と受光素子とからなる)の出力パルス信号に基づいて駆動モータ32の駆動パルスをデジタル制御する。
その駆動モータ制御部を含む制御部600は、CPU601,RAM602,ROM603,IO制御部604,駆動モータIF606,ドライバ607,検出IO部608,およびバス609によって構成されている。
CPU601は、ROM603内のプログラムに基づいてパーソナルコンピュータ等の外部装置38からの画像データの受信、およびその外部装置38との間の制御コマンドの送受信の制御をはじめ、このレーザプリンタ全体の制御を行う中央処理装置である。
このCPU601は、ROM603内のプログラムに従って動作し、エンコーダセンサ331等を使用することにより、この発明による各手段、つまりサンプリング手段,フィードバック制御手段,出力タイミング検出手段,遅延量入力手段,遅延量算出手段,および動作指示手段としての機能を果たすことができる。
このCPU601には、RAM602,ROM603,IO制御部604,駆動モータIF606,および検出IO部608がバス609を介して相互に接続されている。
RAM602は、CPU601が制御(処理)を行う際に利用するワークメモリや、画像データを展開する際の画像メモリとして使用される読み書き可能なメモリ(記憶手段)である。
ROM603は、CPU601が実行する(CPU601が動作するための)プログラム等の固定データを格納している読み出し専用のメモリである。
IO制御部604は、CPU601からの指示により、モータ,クラッチ,ソレノイド,センサ等の各負荷39との間の信号の入出力を制御する。
駆動モータIF606は、CPU601からの駆動指令により、ドライバ607を介して転写搬送ベルト60を回動させるための駆動モータ32(駆動ローラ63)へ駆動パルス信号を出力することにより、駆動モータ32の回転駆動を制御する。この回転駆動は、駆動パルス信号の周波数に応じて行われるため、転写搬送ベルト60の回動速度の可変制御が可能となる。
エンコーダセンサ331の出力パルス信号(エンコーダパルス)は、検出IO部608に入力される。
検出IO部608は、エンコーダセンサ331の出力パルスを処理してデジタル値に変換する。また、この検出IO部608は、エンコーダセンサ331の出力パルスを計数(カウント)するカウンタ(カウント手段)を含む複数のカウンタを備えている。そして、そのカウンタの値(エンコーダセンサ331の出力パルス数)に予め定められたパルス数対角変位の変換定数をかけて、右下ローラ66の軸(図5)の角変位に対応するデジタル値に変換する。このエンコーダ31のディスク311の角変位に対応するデジタル値の信号は、バス609を介してCPU601に送られる。
ここで、駆動モータIF606,ドライバ607,RAM602について、もう少し詳しく説明する。
駆動モータIF606は、CPU601からバス609を介して駆動指令(駆動周波数の指示を含む)を受けると、その駆動指令に基づいて指示された駆動周波数を有するパルス状の制御信号を生成し、それをドライバ607へ出力する。
ドライバ607は、パワー半導体素子(例えばトランジスタ)等によって構成されている。このドライバ607は、駆動モータIF606から入力されるパルス状の制御信号に基づいて動作し、駆動モータ32に駆動パルス信号を出力する。つまり、パルス状の駆動電圧を印加する。その結果、駆動モータ32は、CPU601の駆動指令によって指示された駆動周波数に比例する速度で駆動制御される。これにより、エンコーダ31のディスク311の角変位が目標角変位になるように追値制御され、右下ローラ66が所定の角速度で等角速度回転する。このディスク311の角変位は、エンコーダセンサ331と検出IO部608により検出され、CPU601に取り込まれて制御が繰り返される。
RAM602は、CPU601が制御を行う(ROM603内のプログラムを実行する)際のワークメモリや画像メモリとして使用される機能の他に、事前に、作像プロセスを実行しないで駆動モータ32を一定速度で駆動することで計測しておいたエンコーダ31のディスク偏心に対応したディスク1回転分の検出角変位誤差データ、つまり一定周期毎にサンプリングしたデータが格納されるデータメモリとしての機能を有している。
なお、RAM602は揮発性メモリであるため、図示しないEEPROM等の不揮発性メモリに上記検出角変位誤差データを格納しておき、電源ON時もしくは駆動モータ32の起動時等に、その検出角変位誤差データをRAM602上に展開することもできる。
ところで、一般に駆動モータのフィードバック制御に用いられる比例制御演算では、前述したように制御周期毎の目標角変位と検出角変位の差に制御ゲインをかけて、駆動モータの駆動速度を制御するため、エンコーダのディスク偏心による検出角変位誤差が大きいと、より増幅して駆動モータを駆動してしまう。そのため、ディスクの1回転毎に転写搬送ベルト60の位置変動が発生し、色ズレが発生してしまう。
また、前述したように、図7の(b)は駆動モータ32を一定速度で駆動した時の挙動を示しているが、これは言い換えると、エンコーダ31のパルス数のカウント値を一定タイミングでサンプリングした結果が、図7の(b)に示したものになっていると、右下ローラ66は一定速度で回転していることになる。
そのため、この第1実施例では、図7の(b)に示したように、制御周期毎の目標角変位(実際にはエンコーダ31の単位時間当りの角変位が一定となるような制御目標値である目標角変位に検出角変位誤差を加算したもの)を生成し、その目標角変位に一致するエンコーダ31の角変位をエンコーダセンサ331によって検出し、ディスク311の偏心の影響を受けない比例制御演算を行って駆動モータ32を駆動制御することにより、転写搬送ベルト60の回動速度を一定にするようにしている。
図1は、この発明による駆動制御装置の一実施形態の機能を説明するための構成を示す模式的な機能ブロック図である。この実施形態は、この発明を上述したベルト駆動装置6の制御に適用した場合の例を示す。
この図1において、この制御コントローラ部40は、減算回路41と、高周波ノイズを除去するためのローパスフィルタ42と、比例演算部(ゲインKp)43と、定常駆動パルス周波数設定部44と、加算回路45とによって構成されている。この制御コントローラ部40と目標角変位生成部30とパルス出力器37は、図8のCPU601がROM603内のプログラムを実行し、駆動モータIF606,ドライバ607,および検出IO部608を使用することによって実現することができる。
目標角変位生成部30は、作像プロセスを実行しないで駆動モータ32を一定速度で駆動することで予め計測したエンコーダ31のディスク偏心によって生じる検出角変位誤差を特性値としてメモリ301(図8のRAM602内のデータメモリに相当する)に保持しておく。そして、作像プロセス時に、所定のタイミング、例えば図示しないマークセンサによって基準位置を示すディスク311の基準マークが検出され、マークセンサから出力されるマーク検出信号が入力されるタイミングに応じてメモリ301から特性値を順次読み出す。これは、ディスク311の基準位置の検出タイミングから順次メモリの参照アドレスを切り替えることによって行われる。その後、その読み出した特性値を制御目標値である目標角変位に加算して新たな目標角変位Ref(n)とし、それを制御コントローラ部40に入力させる。
ここで、特性値(検出角変位誤差)と目標角変位の加算は、例えばマークセンサによってディスク311の1回転毎に基準マークが検出され、そのマークセンサから出力されるマーク検出信号が入力されるタイミングに応じて、周期的に繰り返されるように行われる。
なお、目標角変位生成部30が、予め計測した検出角変位誤差(特性値)を加算した目標角変位Ref(n)をメモリ301に保持しておき、作像プロセス時に、上記所定のタイミング(例えばディスク311の基準位置の検出タイミング)から順次メモリの参照アドレスを切り替えることによって目標角変位Ref(n)を読み出し、それを制御コントローラ部40に入力させるようにしてもよい。
制御コントローラ部40は、目標角変位生成部30から入力される制御目標値である目標角変位Ref(n)と、エンコーダ31のエンコーダセンサ331から出力合成回路700経由で受け取った検出角変位P(n−1)とを減算回路41に入力してその差e(n)をとる。つまり、差分の変位量の演算を行う。なお、検出角変位P(n−1)は実際にはエンコーダセンサ331の出力パルス信号に基づいて算出されるが、それについては追って詳細に説明する。
その差e(n)はローパスフィルタ42を通ることによって高周波ノイズが除去された後、比例演算部43に入力される。
比例演算部43は、ローパスフィルタ42からの差e(n)をゲインKpで比例増幅し、補正量(rad)Hzとして加算回路45に与える。
加算回路45は、定常駆動パルス周波数設定部44からの一定の定常駆動パルス周波数(Refpc)Hzに比例演算部43からの補正量(rad)Hzを加算して駆動パルス周波数f(n)を決定し、それをパルス出力器37へ出力する。
パルス出力器37は、加算回路45から受けた駆動パルス周波数f(n)の駆動パルス信号を生成し、それを駆動モータ32へ出力する。
図9は、図1の出力合成回路700の第1構成例を示すブロック図である。
この出力合成回路700は、遅延回路701,合成回路702,および逓倍回路703を備えている。
エンコーダ31内の2つのエンコーダセンサ331の受光素子313,317の各出力パルス信号は、合成回路702に入力される。
合成回路702は、合成手段であり、入力される各出力パルス信号を合成し、その合成した出力パルス信号を逓倍回路703へ出力する。
逓倍回路703は、逓倍手段であり、合成回路702からの出力パルス信号を、図示しない基準クロック生成回路からの基準クロックで同期をとり、1/2の周波数に逓倍して出力する。
よって、図1の制御コントローラ部40は、出力合成回路700からの出力パルス信号(実際には所定タイミングでサンプリングされる出力パルス信号のカウント値)に基づいて制御目標値に対するフィードバック制御を行い、駆動モータ32つまり転写搬送ベルト60を駆動制御することになる。
但し、この効果を発揮するためには、2つの受光素子313,317が精度よく180度ずれた配置である必要があるが、実際にはエンコーダ31の製造ばらつき、特にエンコーダ31内の各エンコーダセンサ331の取り付けのばらつきにより、180度の精度が出ているとは限らないのが実情である。この精度が出ていないと、エンコーダ31の出力パルス信号のカウント値を一定タイミングでサンプリングした時の2つの受光素子313,317のサンプリング結果は、正弦波であることにかわりがないが、位相のずれも180度でないものになってしまい、合成してもディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すことができなくなってしまうことになる。
図10にその例を示すと、エンコーダ31のディスク311に対し、2つのエンコーダセンサ331(発光素子312,受光素子313と発光素子316,受光素子317)の位置関係がαで180度となっていないとき、図7の(a)に示した特性から(b)に示した特性を差し引いた特性、いわゆるディスク311の偏心により発生してしまう変位誤差カウント値は図11に示すようになる。位置関係αに対して位相差α(180度でない)の特性である。したがって、この両特性を合成しても、ディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すことができないのが分かる。
そこで、第1実施例では、この位相のずれを正すため、図9の遅延回路701にて補正を行う。具体的には、例えば図10において、α=175度であった場合,位相差5度早くなっていることになり、遅延回路701で、位相差5度分の伝達を遅延させてやることになる。これにより、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号を合成したとき、ディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すことが可能となる。
なお、第1実施例では、エンコーダ31の製造ばらつき、特にエンコーダ31内の2つのエンコーダセンサ331の取り付けのばらつきにより、180度の精度が出ていない場合を例に取り上げてきたが、遅延回路701で用意された遅延量によっては、意図して2つのエンコーダセンサ331の位置関係を180度でない角度で配置したいときにも有効で、受光素子313,317、発光素子312,316の機械的なレイアウトの都合で90度といった位置に配置した場合でも、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号により、角変位変動を打ち消すことが可能となる。
以上のような動作により、合成回路702および逓倍回路703を経由して得られる値として、エンコーダ31の検出角変位をP(n−1)とする。
図12に、この発明による駆動制御を実現する上でのタイミングチャートの例を示す。なお、図8には、図示を省略したが、制御部600には、時間計測を行なう制御周期タイマが設けられているものとする。また、検出IO部608には、後述するエンコーダパルスカウンタおよび制御周期タイマカウンタが備えられている。さらに、以下のエンコーダ31の出力パルスとは、実際には出力合成回路700の出力パルスのことである。
まず、図12において、エンコーダ31の出力パルスであるエンコーダパルスをカウントするエンコーダパルスカウンタのカウント値は、エンコーダパルスの出力の立上りエッジによりインクリメント(+1)される。また、この制御の制御周期は1msであり、制御周期タイマによるCPU601への割り込みがかかる毎に制御周期タイマカウンタのカウント値がインクリメント(+1)される。
制御周期タイマの時間計測のスタートは、駆動モータ32のスルーアップおよびセトリング終了後に初めてエンコーダパルスの立上りエッジが検出された時点で行われ、且つ制御周期タイマカウンタのカウント値を「0」にリセットする。
また、制御周期タイマによるCPU601への割り込みがかかる毎に、エンコーダパルスカウンタのカウント値:neの取得および制御周期タイマカウンタのカウント値:qの取得およびインクリメント(+1)を行う。
これらの各カウント値をもとに、次に示すように位置偏差の演算を行う。
P(n−1)=θ1×ne
Ref(n)=θ0×q
e(n)=Ref(n)−P(n−1) (単位:rad)
ここで、上式中の各記号の意味は次の通りである。
e(n)[rad]:(今回のサンプリングにて演算された)位置偏差
θ0[rad]:制御周期1[ms]あたりの移動角度(=2π×V×10−3/Lπ[rad])
θ1[rad]:エンコーダ1パルスあたりの移動角度(=2π/p[rad])
q:制御周期タイマのカウント値
V:ベルト線速[mm/s]
L:右下ローラ径[mm]
f:ディスク回転の周期[Hz]
この第1実施例においては、エンコーダ31を取り付けてある従動ローラである右下ローラ径はφ15.515[mm]である。また、エンコーダ31の分解能pは、1回転あたり300パルスのものとする。
次に、急激な位置変動に応答してしまうことを避けるため、演算された偏差に対して、以下の仕様のフィルタ演算を行うとよい。
フィルタタイプ:Butterworth IIR ローパスフィルタ
サンプリング周波数:1KHz(=制御周期と等しい)
パスバンドリップル(Rp):0.01dB
ストップバンド端減衰量(Rs):2dB
パスバンド端周波数(Fp):50Hz
ストップバンド端周波数(Fs):100Hz
そのフィルタ演算のブロック図を図13に、フィルタ係数一覧を図14に示す。同じ構成のフィルタを2段カスケード接続し、各段における中間ノードをそれぞれu1(n),u1(n−1),u1(n−2)およびu2(n),u2(n−1),u2(n−2)と定める。ここで、インデックスの示す意味は次のとおりである。
(n):現在のサンプリング
(n−1):1つ前のサンプリング
(n−2):2つ前のサンプリング
以下のプログラム演算をフィードバック実行中に制御タイマ割り込みがかかる度に行う。
u1(n)=a11×u1(n−1)+a21×u1(n−2)+e(n)×ISF
e1(n)=b01×u1(n)+b11×u1(n−1)+b21×u1(n−2)
u1(n−2)=u1(n−1)
u1(n−1)=u1(n)
u2(n)=a12×u2(n−1)+a22×u2(n−2)+e1(n)
e′(n)=b02×u2(n)+b12×u2(n−1)+b22×u2(n−2)
u2(n−2)=u2(n−1)
u2(n−1)=u2(n)
図15にこのフィルタの振幅特性を、図16に位相特性を示す。
次に、制御対象に対する制御量を求める。制御ブロック図において、まず位置コントローラとしてPID制御を考えると、
F(S)=G(S)×E′(S)=Kp×E′(S)+Ki×E′(S)/S+Kd×S×E′(S)
ただし、Kp:比例ゲイン、Ki:積分ゲイン、Kd:微分ゲイン である。
G(S)=F(S)/E′(S)=Kp+Ki/S+Kd×S ……(1)
ここで、(1)式を双一次変換(S=(2/T)×(1−Z−1)/(1+Z−1))を行うと、次式を得る。
G(Z)=(b0+b1×Z−1+b2×Z−2)/(1−a1×Z−1−a2×Z−2) ……(2)
ただし、a1=0
a2=1
b0=Kp+T×Ki/2+2×Kd/T
b1=T×Ki−4×Kd/T
b2=−Kp+T×Ki/2+2×Kd/T
(2)式をブロック図として表すと、図17のようになる。ここで、e′(n)、f(n)は、E′(S)、F(S)をそれぞれ離散データとして扱うことを示している。図15において、中間ノードとしてそれぞれw(n)、w(n−1)、w(n−2)を定めると、差分方程式は次式のようになる(PID制御の一般式)。
w(n)=a1×w(n−1)+a2×w(n−2)+e′(n) ………(3)
f(n)=b0×w(n)+b1×w(n−1)+b2×w(n−2) …(4)
ここで、インデックスの示す意味は次のとおりである。
(n):現在のサンプリング
(n−1):1つ前のサンプリング
(n−2):2つ前のサンプリング
今、位置コントローラとして比例制御を考えると、積分ゲイン、微分ゲインはゼロとなる。従って、図17における各係数は以下のようになり、(3)式および(4)式は次の(5)式のように簡略化される。
a1=0 a2=1 b0=Kp b1=0 b2=−Kp
w(n)=w(n−2)+e′(n)
f(n)=Kp×w(n)−Kp×w(n−2)
→∴f(n)=Kp×e′(n) ……(5)
また、F0(S)に対応する離散データf0(n)は、この第1実施例の場合、一定であり、
f0(n)=6105[Hz]
である。よって、駆動モータ32に設定するパルス周波数は、最終的に次の(6)式により計算する。
f′(n)=f(n)+f0(n)=Kp×e′(n)+6105[Hz]…(6)
図18に前述したエンコーダパルスカウンタの動作フローチャートを示す。この図18のフローチャートおよび以下に説明するフローチャートにおいて、各ステップを「S」と略記している。
まず、駆動モータ32のスルーアップ&セトリング後の最初のパルス入力かどうかを判定し(S1)、YESならば、エンコーダパルスカウンタをリセットし(S2)、制御周期タイマカウンタをリセットし(S3)、制御周期タイマによる割り込みを許可し(S4)、制御周期タイマをスタートして(S5)、図示していないメインルーチンへリターンする。また、ステップ1の判定でNOであった場合は、エンコーダパルスカウンタをインクリメントして(S6)、メインルーチンへリターンする。
図19に制御周期タイマによる割り込み処理のフローチャートを示す。
まず、制御周期タイマカウンタをインクリメントし(S21)、次いでエンコーダパルスカウント値neを取得する(S22)。さらに、テーブルデータを参照してΔθの値を取得し(S23)、テーブルデータ参照アドレスをインクリメントする(S24)。次いで、これらの値を用いて位置偏差演算を行い(S25)、得られた位置偏差に対してフィルタ演算を行い(S26)、そのフィルタ演算の結果をもとに制御量の演算(比例演算)を行う(S27)。そして、実際に駆動モータ32(ステッピングモータ)の駆動パルスの周波数を変更して(S28)、メインルーチンへリターンする。
以上の制御によって、位置制御におけるエンコーダ31のディスク偏心によって発生する転写搬送ベルト60の回動速度を安定化する制御を、安価に且つ画像品位に応じて適切に行うことが可能になる。
〔第2実施例〕
次に、第2実施例について説明する。つまり、上記の説明では、図9における遅延回路701で必要な遅延量である2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のいずれか一方の合成回路702への入力タイミングの遅延量を決めるタイミングについて述べていないので、そのタイミングについて第2実施例として説明する。
エンコーダ31内の2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の位相差は、機械的な位置関係で決まる。そのため、一度そのエンコーダ31を使うことが決まれば、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の位相差はほぼ同じといえる。
第2実施例では、この特徴に鑑み、エンコーダ31を機械に組み込む前にまず、部品単体で2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングを調べておく。それより、遅延回路701で必要な遅延量を算出しておき、1部品対1特性値(遅延量)の関係を明らかにしておく。
その後、工場で機械本体にエンコーダ31を組み付けた時、遅延回路701で必要な遅延量をパーソナルコンピュータ等の外部装置又は操作部上の操作により入力させ、それを図8のCPU601内のメモリ(図示しない不揮発性メモリでもよい)に記憶させ、エンコーダ31の動作時には必ずその遅延量が掛かるようにしてやる。
これにより、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のいずれか一方が遅延回路701によって必要な遅延量(最適な遅延量)だけ遅延された後、合成回路702へ入力され、結果として誤差のない狙いの周波数信号が得られることになる。
なお、本方式は工場組み立て時だけでなく、外部装置又は操作部上の操作により、市場でのサービスマン対応も可能であるので、エンコーダ31の部品が交換されても、遅延回路701で必要な遅延量を入力し直すことで問題は発生しない。
〔第3実施例〕
次に、第3実施例について説明する。なお、第1実施例又は第2実施例とは若干異なるだけなので、その異なる部分のみ説明する。
第3実施例であるが、出力合成回路700として、図9に示したものの代わりに図20に示すものを用いる。
図20は図1の出力合成回路700の第2構成例を示すブロック図であり、図9と対応する部分には同一符号を付している。
第2実施例において、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の位相差は、機械的な位置関係で決まると述べたが、実際には、信号経路の違い、経時変化といったエンコーダ31以外の要因も実は存在する。
そこで、第3実施例では、より正確な周波数が得られるよう、機械システムとしての必要な遅延量を算出する。
具体的には、図20に示すように、機械システムとして組み込まれた状態で、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号を直接CPU601が検出して、その発生タイミングを調べ、遅延回路701で必要な遅延量つまり最適な遅延量を算出する。
そして、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すような位相関係になるように、一方のエンコーダセンサ331の出力パルス信号のみを遅延回路701が必要な遅延量だけ遅延した上で、合成回路702へ入力する。
これにより、機械システムとしての最適な遅延が掛かり、結果としてより誤差のない狙いの周波数信号が得られることになる。
さらに、第3実施例では、経時変化なども想定し、機械組み込み時だけでなく、ある一定時間(所定時間)ごとに再三遅延量を見直すということも行う。「ある一定時間」とは、組まれる機械システムにより、その値は変わってくる。
例えば、長周期でエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングが変化してくる特性のシステムでは、複写機やプリンタ等の使用具合であれば、一日に一回必ず行われる「電源ONごと」に行えば問題とならない。
また、機内温度などにより変化するといった、一日の使用状況の中でも変化する、短周期でエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングが変化してくるのであれば、機内温度を検出して、その温度変化によりその出力パルス信号を検出してその発生タイミングを再度調べ直すのが最適と言える。
いずれにせよ、その組まれるシステムにより、「ある一定時間」というのは異なってくるが、この第3実施例により、機械システムでの対応が可能となる。
以上より、エンコーダ31内の2つのエンコーダセンサ331の機械的な位置関係が180度でない場合でも、エンコーダ31内のディスク311の偏心により発生する角変位変動を抑えることが可能となる。
〔第4実施例〕
次に、第4実施例について説明する。なお、第1実施例〜第3実施例のいずれかと若干異なるだけなので、その異なる部分のみ説明する。
第4実施例では、合成回路702の改善を狙う。
合成回路702による各出力パルス信号の合成は、一般的にはOR合成が簡易であるが、仮に2つのエンコーダセンサ331の受光素子313,317の出力パルス信号のパルスが重なった場合、単純にクロックパルスが1つ減ってしまうことになり、結果として得られる周波数に誤差が生じてしまう。それに対応するため、第4実施例では、出力合成回路700として、図9に示したものの代わりに図21に示すものを用いる。
図21は図1の出力合成回路700の第3構成例を示すブロック図であり、図9,図20と対応する部分には同一符号を付している。
第4実施例では、第1実施例〜第3実施例で使用してきた遅延回路701を遅延回路705とし、更に遅延回路706を設けている。
具体的には、図22に示すような現象に対応するもので、CPU601などの制御部が、意図して片方のエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングを遅延できるようになっている。
これにより、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の合成回路702への入力タイミングをずらすことが可能となり、かつ周波数はそのままであるので、合成回路702,逓倍回路703を経由した出力パルス信号は正確に周波数合成されたものとなる。
なお、このシステムでの駆動周波数は、複数の場合もあり得るが,基本的にフィードバック制御すべき周波数は決まっており、第1実施例〜第3実施例、つまり2つのエンコーダセンサ331の機械的な位置関係の補正により、遅延回路705で必要な遅延量が決定した状態において、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のパルスの重なりは管理できることになる。
第4実施例では、この特性より、常に片方のエンコーダセンサ331の出力パルス信号を遅延回路705によって一定量遅延させるようにしておく。これにより、上述の2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のパルスが重なった場合の判断が不要となり、回路削減およびCPU601の負荷を軽減することが可能である。
以上により、遅延回路706を動作させる場合、パルスの重なった場合のみ動作させる場合も、あらかじめ一定量の遅延量を設定した場合も、パルス数が欠けることは無くなるが、1パルス1パルスの周波数は細かく変動してしまうことになるので、このような急な変動を無くすため、フィードバッグ制御系にフィルタ演算を行う機能(フィルタ演算手段)を設けることで、変動を抑える必要がある。
〔第5実施例〕
次に、第5実施例について説明する。なお、第4実施例と若干異なるだけなので、その異なる部分のみ説明する。
前述したように、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の位相差は、機械的な位置関係で決まるため、機械システムとして図21の遅延回路705で必要な遅延量を決定することができ、更に遅延回路705で必要な遅延量が決まった状態であれば、遅延回路706で必要な遅延量も決定することができる。
第5実施例では、この特徴に鑑み、機械に組み込む前にまず、部品単体で2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングを調べておく。それより、遅延回路705,706でそれぞれ必要な2つの遅延量を算出しておき、1部品対1特性値(遅延量)の関係を明らかにしておく。
その後、工場で機械本体にエンコーダ31を組み付けた時、遅延回路705,706でそれぞれ必要な2つの遅延量をパーソナルコンピュータ等の外部装置又は操作部上の操作により入力させ、それを図8のCPU601内のメモリ(図示しない不揮発性メモリでもよい)に記憶させ、エンコーダ31の動作時には必ずその2つの遅延量が掛かるようにしてやる。
これにより、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のいずれか一方が遅延回路705,706によって2つの必要な遅延量だけ遅延された後、合成回路702へ入力され、結果として誤差のない狙いの周波数信号が得られることになる。
なお、本方式は工場組み立て時だけでなく、外部装置又は操作部上の操作により、市場でのサービスマン対応も可能であるので、エンコーダ31の部品が交換されても、遅延回路705,706でそれぞれ必要な2つの遅延量を入力し直すことで問題は発生しない。
〔第6実施例〕
次に、第6実施例について説明する。なお、第4実施例又は第5実施例と若干異なるだけなので、その異なる部分のみ説明する。
第6実施例であるが、出力合成回路700として、図21に示したものの代わりに図23に示すものを用いる。
図23は図1の出力合成回路700の第4構成例を示すブロック図であり、図21と対応する部分には同一符号を付している。
第5実施例において、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号の位相差は、機械的な位置関係で決まると述べたが、実際には、信号経路の違い、経時変化といったエンコーダ31以外の要因も存在する。
そこで、第6実施例では、より正確な周波数が得られるよう、機械システムとしての必要な遅延量を算出する。
具体的には、図23に示すように、機械システムとして組み込まれた状態で、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号を直接CPU601が検出して、その発生タイミングを調べ、遅延回路705で必要な遅延量を算出する。
また、遅延回路705で必要な遅延量が決まることで、遅延回路705の出力パルス信号を直接CPU601が検出して、その発生タイミングを調べ、遅延回路706で必要な遅延量も算出する。
そして、2つのエンコーダセンサ331の出力パルス信号のディスク311の偏心による角変位変動を打ち消すような位相関係になるように、またパルスの重なりによる合成回路702経由後の周波数不一致もなくなるように、一方のエンコーダセンサ331の出力パルス信号のみを遅延回路705,706がそれぞれ必要な遅延量だけ遅延した上で、合成回路702へ入力する。
それにより、機械システムとしての最適な遅延が掛かり、結果としてより誤差のない狙いの周波数信号が得られることになる。
さらに、第6実施例では、経時変化なども想定し、機械組み込み時だけでなく、ある一定時間ごとに再三遅延量を見直すということも行う。「ある一定時間」とは、組まれる機械システムにより、その値は変わってくる。
例えば、長周期でエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングが変化してくる特性のシステムでは、複写機やプリンタ等の使用具合であれば、一日に一回必ず行われる「電源ONごと」に行えば問題とならない。
また、機内温度などにより変化するといった、一日の使用状況の中でも変化する、短周期でエンコーダセンサ331の出力パルス信号の発生タイミングが変化してくるのであれば、機内温度を検出して、その温度変化によりその出力パルス信号を検出してその発生タイミングを再度調べ直すのが最適と言える。
いずれにせよ、その組まれるシステムにより、「ある一定時間」というのは異なってくるが、この第6実施例により、機械システムでの対応が可能となる。
〔第7実施例〕
次に、第7実施例について説明する。なお、第1実施例〜第6実施例のいずれかと同様の制御に新たな制御を加えただけなので、その新たな制御についてのみ説明する。
上述の第1実施例〜第6実施例において、エンコーダセンサ331の出力に異常があった場合、上記フィードバック制御を行うために駆動系を壊す要因になりかねないため、商品においてエラー処置は必須事項である。
そこで、第7実施例では、2つのエンコーダセンサ331の受光素子313,317のうち、いずれか一方の受光素子が使用不能になった場合には、もう一方の受光素子の出力パルス信号が合成信号として出力合成回路700から出力されるため、その合成信号を用いて上記フィードバック制御を行う。このとき、逓倍回路703による合成信号の1/2逓倍は行わない。また、受光素子313,317の両方が使用不能になった場合には、上記フィードバック制御を中止する。具体的には、目標角変位Ref(n)とエンコーダ31の検出角変位P(n−1)との差e(n)の値を常に「0」に設定する。なお、実際には、図18のステップS1で正常なパルスが来ているかの監視を行うことで実現可能である。
なお、上述の第1〜第7実施例では、転写搬送ベルトの回動により従動回転する従動ローラのうちの右下ローラ66をエンコーダを取り付けた対象ローラとしたが、他の従動ローラ又は転写搬送ベルトを回動させる駆動ローラを対象ローラとしてもよい。また、エンコーダとして、円周方向に数百単位の分解能で光を反射する放射状のマークが形成されたディスクと、180度ずれた位置にマークの部位と対向するように配置した一対のセンサである2つのセンサ(それぞれ発光素子と受光素子とからなる)とを備えたものを使用することもできる。
以上、この発明を、転写搬送ベルトを駆動制御する駆動制御装置(ベルト駆動装置)に適用した実施例について説明したが、この発明はこれに限らず、画像形成用の他の無端移動部材(感光体ベルト,転写ベルト,中間転写ベルト,又は画像記録媒体搬送用ベルト)を駆動制御する駆動制御装置にも適用可能である。
すなわち、転写搬送ベルト60上に感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kが複数並べて配設されるタンデム式のレーザプリンタにおけるベルト駆動装置にこの発明を適用した例について説明したが、この発明が適用可能な画像形成装置およびベルト駆動装置はこの構成に限るものではない。
複数のローラに張架された無端状ベルトをそのローラのうちの少なくとも1つ以上のローラ(対象ローラ)によって回転駆動するベルト駆動装置を有する画像形成装置であれば、そのいずれのベルト駆動装置にも適用可能である。
また、前述の各実施例では、転写搬送ベルト60によって転写紙を搬送し、その転写紙上で感光体ドラムからの4色のトナー像を順次転写する直接転写方式のカラープリンタにこの発明を適用したが、中間転写ベルト上に4色のトナー像を転写して、4色重ね合わせた後に転写紙に一括して転写する間接転写方式のカラープリンタ等における中間転写ベルト駆動装置にも、この発明を適用可能である。
さらに、前述の各実施例では露光光源としてはレーザ光を使用しているが、これに限ったものではなく、例えばLEDアレイ等を光源として使用するものでもよい。
以上の説明から明らかなように、この発明の駆動制御装置によれば、エンコーダのディスク偏心によって発生する無端移動部材の回動速度変動を安定化する制御を低コストで行うことが可能になり、良好なフィードバック制御を行うことができる。したがって、この発明を利用すれば、無端移動部材の回動速度の安定化を低コストで実現可能な駆動制御装置を提供することができる。
この発明の画像形成装置によれば、上記駆動制御装置を用いることにより、エンコーダのディスク偏心によって発生する無端移動部材(感光体ベルト,転写ベルト,中間転写ベルト,又は画像記録媒体搬送用ベルト)の回動速度の変動を安定化する制御を低コストで且つ画像品位に応じて適切に行うことが可能になる。したがって、この発明を利用すれば、高品位の画像を低コストで取得可能な画像形成装置を提供することができる。
この発明による駆動制御装置の一実施形態の機能を説明するための構成を示す模式的な機能ブロック図である。 この発明による駆動制御装置を備えた画像形成装置の一例を示すレーザプリンタ全体の概略構成図である。 図2に示したベルト駆動装置6の概略構成を示す拡大図である。 同じくそのベルト駆動装置6における転写搬送ベルト60を透視してその構成を示す斜視図である。
図4に示した右下ローラ66とエンコーダ31の構成例を示す斜視図である。 そのエンコーダ31内のディスク311とセンサの構成例を示す図である。 図4の駆動モータ32を一定速度で駆動してエンコーダ31の出力パルスのカウント値を一定タイミングでサンプリングしたときのサンプリング結果の異なる例を示す線図である。 図2に示したレーザプリンタにおけるベルト駆動装置6の駆動モータ制御部を含む制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図1の出力合成回路700の第1構成例を示すブロック図である。 図4のディスク311における発光素子312,受光素子313と発光素子316,受光素子317との位置関係のずれを説明するための図である。 図4のディスク311における発光素子312,受光素子313と発光素子316,受光素子317との位置関係が図10に示すようにずれている場合の変位誤差カウント値を説明するための図である。 この発明によるベルト駆動制御を説明するためのタイミングチャートである。
この発明に使用するフィルタ演算の構成を示すブロック図である。 同じくそのフィルタ係数一覧を示すテーブル図である。
同じくそのフィルタの振幅特性を示す線図である。 同じくそのフィルタの位相特性を示す線図である。 図13における1段のフィルタ演算の構成を示すブロック図である。
エンコーダパルスカウンタの動作フローチャートである。 制御周期タイマ割り込み処理のフローチャートである。 図1の出力合成回路700の第2構成例を示すブロック図である。 同じく出力合成回路700の第3構成例を示すブロック図である。 図21の受光素子313,317の出力パルス信号とそれらのパルスが重なった場合の合成回路702の出力パルス信号との関係を示す線図である。 図1の出力合成回路700の第4構成例を示すブロック図である。
符号の説明
1Y,1M,1C,1K:トナー像形成部 6:ベルト駆動装置
30:目標角変位生成部 31:エンコーダ 32:駆動モータ
37:パルス出力器 40:制御コントローラ部 60:転写搬送ベルト
63:駆動ローラ 66:右下ローラ(従動ローラ) 311:ディスク
331:エンコーダセンサ 600:制御部 601:CPU 602:RAM
603:ROM 604:IO制御部 606:駆動モータIF
607:ドライバ 608:検出IO部 609:バス 700:出力合成回路
701,705,706:遅延回路 702:合成回路 703:逓倍回路

Claims (13)

  1. 無端移動部材を回動させる駆動ローラあるいは該無端移動部材の回動により従動回転する従動ローラの周動を検出するエンコーダを備え、該エンコーダの出力信号に基づいて前記駆動ローラを駆動制御する駆動制御装置であって、
    前記エンコーダは、複数のマーク又はスリットが円周方向に所定間隔で配置されたディスクと、その各マーク又はスリットを検出するための一対のセンサとを有し、その各センサが180度ずれた位置に取り付けられた構成となっており、
    前記一対のセンサの出力信号を合成する合成手段と、
    該合成手段からの合成信号を1/2逓倍する逓倍手段と、
    該逓倍手段からの1/2逓倍された合成信号をカウントするカウント手段と、
    該手段によるカウント値を所定タイミングでサンプリングするサンプリング手段と、
    該サンプリング手段によってサンプリングされたカウント値に基づいて制御目標値に対するフィードバック制御を行うことにより、前記駆動ローラを駆動制御するフィードバック制御手段と、
    前記一対のセンサの出力信号のうち、一方の出力信号の前記合成手段への入力タイミングを遅延させる遅延手段と
    を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  2. 請求項1記載の駆動制御装置において、
    前記入力タイミングの遅延量として、任意の遅延量を入力する遅延量入力手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  3. 請求項1記載の駆動制御装置において、
    前記一対のセンサの出力タイミングを検出する出力タイミング検出手段と、
    該出力タイミング検出手段による前記出力タイミングの検出結果に応じて前記入力タイミングの遅延量を算出する遅延量算出手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  4. 請求項3記載の駆動制御装置において、
    所定時間毎に前記出力タイミング検出手段を動作させる動作指示手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  5. 請求項1記載の駆動制御装置において、
    前記遅延手段は、前記一対のセンサの出力信号が同時に変化する場合に、前記一方の出力信号の前記合成手段への入力タイミングを更に遅延させる手段であり、
    前記フィードバック制御手段は、フィルタ演算手段を有することを特徴とする駆動制御装置。
  6. 請求項1記載の駆動制御装置において、
    前記遅延手段は、前記一対のセンサの出力信号が同時に変化する場合に、前記一方の出力信号の前記合成手段への入力タイミングを常に所定量だけ更に遅延させる手段であり、
    前記フィードバック制御手段は、フィルタ演算手段を有することを特徴とする駆動制御装置。
  7. 請求項6記載の駆動制御装置において、
    前記入力タイミングの遅延量として、任意の遅延量を入力する遅延量入力手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  8. 請求項6記載の駆動制御装置において、
    前記一対のセンサの出力タイミングを検出する出力タイミング検出手段と、
    該出力タイミング検出手段による前記出力タイミングの検出結果に応じて前記入力タイミングの遅延量を算出する遅延量算出手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  9. 請求項8記載の駆動制御装置において、
    所定時間毎に前記出力タイミング検出手段を動作させる動作指示手段を設けたことを特徴とする駆動制御装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の駆動制御装置において、
    前記フィードバック制御手段は、前記一対のセンサのうち、一方のセンサが使用不能になった場合に、他方のセンサの出力信号だけを用いて前記フィードバック制御を行うことを特徴とする駆動制御装置。
  11. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の駆動制御装置において、
    前記フィードバック制御手段は、前記一対のセンサがいずれも使用不能になった場合に、前記フィードバック制御を中止することを特徴とする駆動制御装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の駆動制御装置と、該駆動制御装置によって駆動制御される画像形成用の無端移動部材とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
  13. 請求項12記載の画像形成装置において、
    前記無端移動部材が、感光体ベルト,転写ベルト,中間転写ベルト,画像記録媒体搬送用ベルトのうちのいずれか一つ以上であることを特徴とする画像形成装置。
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