JP2007244975A - 自動車排ガス処理触媒およびその製造方法 - Google Patents

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隆之 松下
Masafumi Igari
雅文 井狩
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Abstract

【課題】特にディーゼルエンジン車の排ガスの浄化に有効に用いることができる吸蔵型NOx 還元触媒とその製造方法とを提供する。
【解決手段】担体として、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルを、重縮合することで多孔質のシリカゲルを得た上で、このシリカゲルをさらに焼成して得られる多孔質材料を用い、この担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持する。これらの担持は、その前駆物質を上記シリカゾルに添加して分散させてから、重縮合して焼成することによりなされる。これにより、上記多孔質材料の表面および内部の何れにも、上記アルカリ土類金属酸化物と白金とが分散するので、少なくとも200℃以下の温度で窒素酸化物を無害化する吸蔵型NOx 還元触媒の活性を発揮できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の排ガスを浄化するために用いられる排ガス処理触媒およびその製造方法に関するものであり、より詳細には、自動車排ガスの中でも特にディーゼルエンジンから排出される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx )を効率的に浄化することが可能な排ガス処理触媒およびその製造方法に関するものである。
従来から、自動車の排ガス処理に用いられる触媒の一つとして、窒素酸化物(NOx )を触媒の作用により還元して浄化する窒素酸化物還元触媒(NOx 還元触媒)が知られている。NOx 還元触媒には、吸蔵材にNOx を吸蔵させて空燃比(A/F値)の制御等により還元する方式と、尿素を還元剤として添加し還元する方式との2種類が知られており、前者を吸蔵型NOx 還元触媒、後者を尿素選択還元触媒と称する。
一般に、自動車の運転において、実際の空燃比(A/F値)が理論空燃比よりも高い条件をリーン(Lean)条件といい、逆に、理論空燃比よりも低い条件をリッチ(Rich)条件という。上記吸蔵型NOx 還元触媒では、上記リーン条件では、貴金属(触媒活性成分)によりNOx を酸化し、硝酸塩(NO3 -)として吸蔵材に吸蔵し、上記リッチ条件では、硝酸塩がNOx に還元されて貴金属(触媒活性成分)の表面に移動し、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等と反応して窒素(N2 )となる。
上記吸蔵型NOx 還元触媒は、耐熱性等の実用面での改良が逐次行われており、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、多孔質体からなる担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる排気ガス浄化用触媒が開示されている。
近年、自動車の低燃費化に伴い、通常走行時には、なるべくリーン側の条件で運転することが好ましいとされている。ところが、リーン条件では燃焼後の排気ガス中に含まれる酸素量が多くなるので、NOx の還元反応が不活発化する。この場合、吸蔵型NOx 還元触媒の実用性を高めるには、空燃比の高いリーン条件でも十分にNOx を浄化することが求められる。特に、自動車の走行中のエンジンから排出される排気ガス組成は、理論空燃比近傍からオーバーリーンの空燃比までの範囲内で頻繁に変化する。
そこで、特許文献1に開示される技術では、上記の問題を考慮して、酸素過剰の排気ガスを、多孔質体からなる担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる排気ガス浄化用触媒と接触させている。
具体的には、上記活性金属として、白金(Pt)と、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属の酸化物を用い、これらを多孔質担体に担持させて使用する。また、多孔質担体としては、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、シリカアルミナ、シリカ等が挙げられており、これらの多孔質担体はコージェライト、耐熱金属合金等からなるハニカム基体にコートして用いても良いとされている。
上記技術では、リーン条件の排ガス中のNOx ガスをPtの触媒作用によりNO2 ガスに酸化し、生成したNO2 ガスをアルカリ土類金属酸化物に吸蔵するという作用機構を利用している。つまり、空燃比を間欠的にリッチ条件にすることにより、吸蔵材(アルカリ土類金属酸化物)に吸蔵されたNO2 を気相に放出し、放出したNO2 をN2 に還元して無害化する。それゆえ上記技術によれば、酸素過剰の排気ガス中のNOx を効率よく浄化することができるとされる。
ところで、吸蔵型NOx 還元触媒ではないが、NOx やSOx 等の酸性ガスを吸着および分解する酸性ガス吸着分解剤として、アルカリ土類金属を利用した技術が知られている。例えば、特許文献2には、アルカリ土類金属のアルコキシド及びアルカリ土類金属以外の金属のアルコキシドを含有する無機アルコキシド混合物をゾル−ゲル法により加水分解し、重縮合して得られる多孔質ポリマーからなる酸性ガス吸着分解剤が開示されている。
特開平5−317652号公報(公開日:平成5年(1993)12月3日) 特開平11−076814号公報(公開日:平成11年(1999)3月23日)
ここで、近年、ディーゼルエンジン車の排ガスが社会問題になっており、特に排ガス中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter,PM)とNOx の除去対策が急務となっている。このうち、NOx の除去については、従来の吸蔵型NOx 還元触媒を用いても十分に対応できないという問題が生じている。
すなわち、ディーゼルエンジン車の燃焼温度はガソリンエンジン車よりも低いので、排ガスの温度がガソリンエンジン車に比べて低温となっている。上記特許文献1に開示される吸蔵型NOx 還元触媒はガソリンエンジン車用途であるため、ディーゼルエンジン車の排ガスの温度は、公知の吸蔵型NOx 還元触媒における触媒反応や吸蔵作用が有効に機能する温度まで達していないことになる。このように、従来の吸蔵型NOx 還元触媒では、ディーゼルエンジン車の排ガスに含まれるNOx を効率的に無害化することが困難となっている。
なお、上記特許文献2に開示される酸性ガス吸着分解剤は、酸性ガス全般に対して良好な除去作用を有しているが、ディーゼルエンジン車用の吸蔵型NOx 還元触媒として有効に利用することはできない。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、特にディーゼルエンジン車の排ガスの浄化に有効に用いることができる吸蔵型NOx 還元触媒とその製造方法とを提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、窒素酸化物の吸蔵成分としてアルカリ土類金属を用いるとともに活性金属として白金(Pt)を用いる吸蔵型NOx 還元触媒において、ゾル−ゲル法を利用して上記各金属成分を多孔質材料に担持させれば、ガソリンエンジン車よりも排ガス温度の低いディーゼルエンジン車であっても有効に機能する吸蔵型NOx 還元触媒が得られることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、上記の課題を解決するために、少なくともシリカからなる多孔質材料の担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる自動車排ガス処理触媒であって、上記多孔質材料は、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルを、重縮合することで多孔質のシリカゲルを得た上で、このシリカゲルをさらに焼成して得られるものであり、上記アルカリ土類金属酸化物および白金は、これらの前駆物質を上記シリカゾルに添加して分散させてから、当該シリカゾルを重縮合して焼成することによって上記担体に担持されることを特徴としている。
上記自動車排ガス処理触媒においては、上記ケイ素のアルコキシドとして、炭素数1〜4の低級アルコールのアルコキシドを少なくとも1種用いることが可能であり、特に、上記ケイ素の低級アルコールのアルコキシドとして、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
上記自動車排ガス処理触媒においては、上記アルカリ土類金属酸化物の前駆物質が炭酸塩および/または水酸化物であることが好ましく、上記アルカリ土類金属が、カルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一方であることが好ましい。
また、上記自動車排ガス処理触媒においては、上記白金の前駆物質は、溶液状態で使用可能な化合物であることが好ましく、上記白金の前駆物質が、白金アセチルアセトナート錯体であることが特に好ましい。
本発明にかかる自動車排ガス処理触媒の具体的な一例としては、少なくとも200℃以下の温度であっても、吸蔵型の窒素酸化物還元触媒の活性を発揮できるとともに、上記多孔質材料の表面および内部の何れにも、上記アルカリ土類金属酸化物と白金とが分散している構成を挙げることができる。
さらに、本発明には、少なくともシリカからなる多孔質材料の担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる自動車排ガス処理触媒の製造方法も含まれる。本発明にかかる製造方法では、上記多孔質材料にアルカリ土類金属酸化物と白金とを担持するために、1)ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルにアルカリ土類金属酸化物および白金の前駆物質を添加して、これら化合物をシリカゾル中に分散させる分散工程、2)上記化合物を分散させたシリカゾルを重縮合してシリカゲルを得るゲル化工程、3)当該シリカゲルを加熱焼成し、前駆物質をアルカリ土類金属酸化物および白金とする焼成工程、の各工程を含んでいればよい。
以上のように、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、ケイ素のアルコキシドを加水分解して得られるシリカゾルに、アルカリ土類金属化合物とともに白金化合物を添加し、均一混合した後、重縮合反応によりシリカゲルを調製し、さらに加熱焼成して得られる吸蔵型NOx 還元触媒である。
上記構成によれば、得られる自動車排ガス処理触媒は、少なくともシリカからなる多孔質材料の担体の表面および内部に、アルカリ土類金属酸化物および白金が均一に分散した状態にある。特に活性金属である白金は、分子レベルで分散している「微分散」の状態とすることができる。これにより、アルカリ土類金属酸化物による吸蔵作用および白金等による吸蔵型NOx 還元触媒の作用を、少なくとも400℃未満の低温、好ましくは200℃以下の温度で発揮することができる。
その結果、得られる吸蔵型NOx 還元触媒は、低温でもNOx 還元能力に優れた触媒となるので、この触媒を用いることにより、自動車排ガス、特にディーゼルエンジン車から排出される排ガス中のNOx を従来よりも一層効率よく除去することができる。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、自動車の排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx )をリーン状態で吸蔵するとともに、リッチ状態でNOx を還元する吸蔵型NOx 還元触媒である。
具体的には、担体としては、少なくともシリカからなる多孔質材料を用いるとともに、活性金属として白金を、吸蔵材としてアルカリ土類金属を用いており、上記多孔質材料の表面および内部の何れにも、上記アルカリ土類金属酸化物と白金とが分散した状態で担持されている。このような分散状態の担持は、アルカリ土類金属化合物と分散性を有する白金化合物との存在下で、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルを重縮合して多孔質シリカゲルを得た上で、さらに当該多孔質シリカゲルを焼成することにより達成される。
(1)担体としての多孔質材料
上記担体としての多孔質材料は、上述したように、少なくともシリカ(SiO2 )を含んでいればその成分は特に限定されるものではなく、シリカ以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、例えば、アルミナ(Al23 )等、自動車排ガス処理の分野(好ましくは吸蔵型NOx 還元触媒の分野)で公知の金属酸化物を含んでいてもよい。多孔質材料の組成については、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒の用途等に応じた特性を発揮できるように、公知の材料を公知の範囲内で組み合わせたり公知の手法を組み合わせたりして設計すればよい。
上記多孔質材料の形態も特に限定されるものではなく、自動車排ガス処理の分野(好ましくは吸蔵型NOx 還元触媒の分野)で公知の形態であればよい。後述するように、本発明では、ゾル−ゲル法を利用して多孔質材料を作製するが、この方法によれば、例えば、平均粒径が10〜15nmの範囲内で、かつ、0.1〜1nmの微細孔を有する粒子状の多孔質材料を作製することが可能である。また、上記平均粒径の多孔質材料を一次微粒子とすれば、重縮合反応を調節することで一次微粒子同士を結同させ、隙間の多い三次元構造の二次微粒子を形成することもできる。さらに、公知の方法を用いて多孔質フィルム等、粒子状以外の形状に加工することもできる。
上記ゾル−ゲル法による多孔質材料の作製方法は、具体的には、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解してシリカゾルを取得し、このシリカゾルを重縮合して多孔質シリカゲルを取得し、さらに当該多孔質シリカゲルを焼成することにより多孔質材料を取得する方法である。この作製方法を用いることで、本発明では、担体を作製するとともに、上記アルカリ土類金属酸化物および白金を担持させることになる。
上記ケイ素のアルコキシドは、一般式:Si(OR)4 (ただし、Rはアルキル基を示す。)で表される化合物を好ましく用いることができる。Rで表されるアルキル基は直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよいし、環状であってもよいが、直鎖状がより好ましい。また、上記アルキル基の炭素数は特に限定されるものではないが、シリカゾルおよびシリカゲルの調製・作製の便宜や、得られる多孔質材料の品質等から見れば、炭素数が1〜4の低級アルキル基を用いることが好ましい。
上記低級アルコールのアルコキシドとしては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロキシシラン等を挙げることができるが、中でもテトラエトキシシランをより好ましく用いることができる。
また、シリカゾルの調製において用いられるケイ素のアルコキシドの種類も特に限定されるものではなく、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。同様に、得られる多孔質材料の組成に合わせて、ケイ素のアルコキシド以外の金属アルコキシド等を併用してもよい。用いるアルコキシドの種類は、得ようとする多孔質材料の組成や求める物性等に合わせて適切に選択して用いればよい。
上記ケイ素のアルコキシドは溶液として用いるが、その溶媒は特に限定されるものではなく、シリカゾルの調製に影響を及ぼさない限り公知の各種溶媒を好適に用いることができる。中でも、本発明では、上記ケイ素のアルコキシド溶液がアルコール溶液であることが好ましく、溶媒として用いるアルコールとしては、炭素数1〜4の低級アルコールを好適に用いることができる。
上記低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール等を挙げることができるが、ケイ素のアルコキシドに含まれるアルキル基と同じ構造を含むアルコールを用いることが好ましい。本実施の形態では、テトラエトキシシランを特に好ましい例として挙げているので、溶媒としてはエタノールを好ましく用いることができる。
また、上記ケイ素のアルコキシド溶液の組成も特に限定されるものではなく、シリカゾルを調製可能な組成であれば公知の溶媒を公知の比率(重量比・体積比等)で用いることができる。例えば、テトラエトキシシランのエタノール溶液の場合であれば、重量比でエタノール:テトラエトキシシラン=100:30〜70の範囲内であればよい。
上記ケイ素のアルコキシドを主成分とするアルコール溶液に、水と、必要に応じてゾル−ゲル法触媒を加えて撹拌することにより、アルコキシドの加水分解反応が生じ、シリカゾルが調製される。上記ゾル−ゲル法の条件は特に限定されるものではなく公知の条件を好適に用いることができる。
具体的には、上記ゾル−ゲル法触媒としては、酸触媒および塩基触媒を挙げることができ、これらを併用することもできる。まず、酸触媒はケイ素のアルコキシドの加水分解反応に利用する。なお加水分解の際に反応液を激しく撹拌する場合には、空気中の二酸化炭素が取り込まれて炭酸が生じ、酸触媒として作用するので、酸触媒を添加しなくても良い場合もある。
上記酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸;塩化水素ガス等の鉱酸の無水物;酒石酸、フタル酸、マレイン酸、ドデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジクロルコハク酸、クロレンディック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水へキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ジクロルコハク酸、無水クロレンディック酸等の有機酸及びその無水物;等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記酸触媒の使用量も特に限定されるものではないが、ケイ素のアルコキシド1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲内が好ましく、0.005〜0.3モルの範囲内がより好ましい。0.001モル未満の場合には加水分解が不十分となるおそれがあり、また0.5モルを超えると重縮合反応が過剰に進行し、粘度が増大しすぎるおそれがある。
上記塩基触媒は、主としてケイ素のアルコキシドの加水分解生成物における重縮合反応用の触媒としてのみならず、その急速な架橋反応及び三次元網目構造形成用の触媒としても作用する。塩基触媒としては、無機塩基および有機塩基の何れも好適に用いることができる。無機塩基としては、具体的には、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化マグネシウム、アンモニア等を挙げることができるが特に限定されるものではない。また有機塩基としては、第一アミン、第二アミン、第三アミン、ポリアミン、アミン錯体等が挙げられ、より具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン、メンタンジアミン、キシリレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
上記塩基触媒の中でも、水に実質的に不溶で有機溶媒に可溶な第三アミン(例えばN,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等)、およびアンモニアがより好ましく、N,N−ジメチルベンジルアミン及びアンモニアが特に好ましい。特にアンモニアガスを用いると、微細粒子状の多孔質材料を得ることができる。
塩基触媒の使用量は、ケイ素のアルコキシド1モルに対して0.002〜1.5モルの範囲内であることが好ましい。0.002モル未満では重縮合反応の進行が遅く、1.5モルを超えると重縮合反応が急速に進行するため、得られる多孔質材料が不均一となるおそれがある。なお、塩基触媒として水に不溶で有機溶媒に可溶な第三アミンを使用する場合、その使用量は0.004〜0.008モルの範囲内であることが特に好ましい。また、第三アミン以外の場合には、0.1〜1.5モルの範囲内であることがより好ましい。
ゾル−ゲル法では、加水分解用溶媒として、加水分解に必要な水と、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒を用いる。好ましい有機溶媒として、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド等のアミド類;等を挙げることができるが特に限定されるものではない。
水の使用量は、ケイ素のアルコキシド1モルに対し10モル以下であればよく、1〜10モルの範囲内が好ましく、2〜8モルの範囲内がより好ましく、3〜7モルの範囲内が特に好ましい。水の使用量が少なすぎるとアルコキシドの加水分解が遅く、縮合反応が進行しにくい。ただし、空気中の水分によっても加水分解が徐々に進行するため、溶媒中に必ずしも水を添加する必要はない。水の量が10モルを超えると、得られる多孔質材料の吸蔵特性が低下する。
上記撹拌の条件も特に限定されるものではなく、公知の範囲内であればよい。例えば、撹拌温度は、20〜85℃の範囲内であれば十分に加水分解反応を進めることができ、好ましい。同様に撹拌温度は、0.5〜2時間の範囲内であれば、加水分解反応を効率的に進めることが可能であり、良好なシリカゾルを得ることができる。
上記シリカゾルを重縮合することによりシリカのゲル体(シリカゲル)が得られる。シリカゾルの重縮合反応の条件、すなわちシリカゾルのゲル化の条件も特に限定されるものではなく、公知の条件であればよい。例えば、重縮合温度の温度範囲は、20〜85℃の範囲内であればよい。なお、シリカゲルの作製(重縮合)や焼成には、アルカリ土類金属酸化物および白金の担持も関係するので、これらの担持の説明とともに後述する。
(2)吸蔵材としてのアルカリ土類金属酸化物
本発明にかかる自動車排ガス処理触媒においては、アルカリ土類金属酸化物は、強い塩基点として作用し、リーン条件でNOx を吸収して貯蔵する吸蔵材として機能する。本発明においては、多孔質材料を作製する過程で、シリカゾルにアルカリ土類金属化合物(および白金)を添加して分散させる。その後、重縮合および焼成を経て得られる自動車排ガス処理触媒では、アルカリ土類金属が酸化物となって担持されている。
したがって、シリカゾルに添加されるアルカリ土類金属化合物の具体的な種類は特に限定されるものではなく、最終的に酸化物となるような化合物(前駆物質)であればよい。このような前駆物質としては、特に本発明では、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物等を好ましく用いることができる。これら前駆物質は同一カテゴリー(例えば、炭酸塩のみ、または水酸化物のみ)の化合物を用いてもよいし、ことなるカテゴリー(例えば、炭酸塩および水酸化物)の化合物を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記アルカリ土類金属の具体的な種類は特に限定されるものではなく、IIA族の元素の何れも好ましく用いることが可能であるが、本発明においては、IIA族の元素の中でもマグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)を特に好ましく用いることができる。したがって、本発明においてシリカゾルに添加する前駆物質としてのアルカリ土類金属化合物は、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2 )、水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )の少なくとも何れか1種を特に好ましく用いることができる。
さらに、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒においては、アルカリ土類金属酸化物としては、MgOまたはCaOの一方が含まれていればよいが、両方が含まれていることがより好ましい。アルカリ土類金属としてMgおよびCaの双方を用いれば、吸蔵型NOx 還元触媒としての機能が向上する。したがって、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒には、アルカリ土類金属酸化物としては、MgOおよびCaOが担持されていることが特に好ましい。
(3)活性金属としての白金
本発明にかかる自動車排ガス処理触媒においては、白金(Pt)は、吸蔵型NOx 還元触媒の活性金属として作用する。本発明においては、多孔質材料を作製する過程で、前駆物質としての白金化合物と上記アルカリ土類金属化合物とをシリカゾルに添加して分散させる。その後、重縮合および焼成を経て得られる自動車排ガス処理触媒では、アルカリ土類金属が酸化物となっているとともに、白金化合物は金属Pt(Pt原子)の微粒子となって担持されている。
したがって、シリカゾルに添加される白金化合物(前駆物質)の具体的な種類は特に限定されるものではなく、最終的に金属Ptとなるような化合物であればよい。ただし、本発明では、シリカゾル中に白金化合物を分散させてゲル化するという過程を経るので、シリカゾル中に白金化合物を好適に分散させることができれば、最終的に得られる多孔質材料において金属Ptの微粒子を全体的に均一に分散させる(微分散させる)ことができる。それゆえ、シリカゾルに添加される白金化合物は、シリカゾル中で分散性を有する化合物であることが特に好ましい。
上記分散性を有する白金化合物としては、例えば、粉末や溶液等を挙げることができるが、シリカゾル中の分散性やシリカゾルへの添加の利便性等から、溶液状態で使用可能な化合物であることがより好ましい。このような化合物としては、例えば、ジニトロジアミノ白金(Pt(NO2)2(NH3)2 )、白金アセチルアセトナート(Pt(CH3COCHCOCH3)2)等の白金錯体や、塩化白金等の白金酸を上げることができる。これら白金化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
特に本実施の形態では、シリカゾルの調製において、ケイ素のアルコキシドやアルコール溶媒を用いることが好ましいため、白金アセチルアセトナート等の有機系の白金錯体をより好ましく用いることができる。有機系の錯体化合物であれば、無機系の白金化合物よりも有機系溶媒との間の親和性を高めることが可能であり、分散性を向上させることが可能である。
もちろん、本発明においては、最終的に金属Ptとなり、かつ、シリカゾル中で良好に分散可能な化合物(前駆物質)であれば、上記白金アセチルアセトナートに限定されるものではないことは言うまでもない。
上記白金化合物の溶液の具体的な組成は特に限定されるものではなく、白金化合物を溶解または分散でき、かつ、シリカゾルに添加した状態で良好に混和または分散できる溶液であればよい。例えば、溶媒としては、水、低級アルコール等を好適に用いることができる。これら溶媒は単独で用いてもよいし組み合わせて用いてもよい。低級アルコールも1種類のみ用いてもよいし2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これら以外の溶媒を含んでいてもよい。
上記白金化合物の溶液濃度も特に限定されるものではなく、最終的に得られる自動車排ガス処理触媒中の金属Ptの濃度、シリカゾルの濃度等に応じて適切な濃度を設定すればよい。
(4)シリカゾルへの前駆物質の分散、重縮合および焼成
本発明にかかる自動車排ガス処理触媒では、前記シリカゾルに、上記前駆物質(アルカリ土類金属化合物および白金化合物)を添加して分散させてから、当該シリカゾルを重縮合してゲル化する。このときの各前駆物質の添加方法や添加条件は特に限定されるものではなく、公知の方法や条件を用いることができる。
例えば、上記アルカリ土類金属化合物が粉末であれば、水や低級アルコール等の溶媒や分散媒に溶解または分散させてからシリカゾルに加えて撹拌および混合すればよい。また、白金化合物は溶液として用いることが好ましいので、同様に当該溶液をシリカゾルに加えて撹拌および混合すればよい。
撹拌時間も特に限定されるものではなく、例えば、添加する化合物の量(重量・体積何れも)に対するシリカゾルの量(重量・体積何れも)を考慮して、上記各化合物が十分に分散できる時間を適宜設定すればよい。撹拌温度も同様であり、シリカゾルの品質や重縮合に影響を及ぼさず、かつ、上記各化合物の品質や分散にも影響を及ぼさない温度を適宜設定すればよい。さらに、これら化合物をシリカゾルに添加する手段や、撹拌や混合を行うための手段としても特に限定されるものではなく、小規模の製造であれば公知の実験器具や実験装置を用いればよく、大規模な製造であれば公知のプラント設備等を用いればよい。
上記のように、シリカゾルに対して、所定量のアルカリ土類金属化合物と白金化合物の溶液を撹拌しながら添加して、これら化合物が均一に微分散したシリカゾルを得てから、当該シリカゾルを重縮合してゲル化する。重縮合(ゲル化)の方法や条件も特に限定されるものではなく、公知の方法や条件を用いればよい。
重縮合は基本的に加熱により行えばよい。重縮合温度は20〜85℃の範囲内が好ましく、20〜50℃の範囲内がより好ましいが、特に限定されるものではなく、シリカゾルの種類や状態等に合わせて適切な時間を選択すればよい。同様に、重縮合する時間(ゲル化時間)も特に限定されるものではなく、全体が十分にゲル化する時間であればよい。このようにして得られたシリカゲルは、極めて多孔質のケイ素ポリマーとなっている。
得られたシリカゲルは、そのまま焼成することにより触媒としてもよいが、好ましくは、粉砕して乾燥することにより、微粒子状の乾燥ゲルとすることが好ましい。シリカゲルを粉砕する方法や条件は特に限定されるものではなく、公知のニーダーやチョッパー等を利用して、求める粒子径に対応する条件を適宜設定すればよい。
また粉砕したシリカゲルを乾燥する方法や条件も特に限定されるものではなく、アルカリ土類金属化合物および白金化合物が分散した状態のシリカゲルに影響を及ぼさず、かつ、効率的に溶媒を除去できるような方法や条件を用いればよい。好ましい方法としては加熱脱水による乾燥方法が挙げられ、加熱温度としては、200℃以下の温度、好ましくは100〜180℃の温度で1〜8時間加熱を継続すればよい。これにより、多孔質の乾燥ゲル微粒子を得ることができる。
このようにして得られた乾燥ゲル微粒子は、少量の触媒量で均一な溶液中で縮合反応が進行するため、平均粒径が小さく均一な一次微粒子として得られる。それゆえ、触媒としての比表面積を大きくすることができるとともに、凝集や架橋等により様々な形状に二次加工することも可能となる。それゆえ、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒の触媒作用をより一層向上させることが可能となる。
さらに、上記シリカゾルを塊状にゲル化するのではなく、公知の手法でキャスティングしてからゲル化し、溶媒を除去して乾燥することにより、乾燥ゲルの多孔質フィルムを形成することもできる。したがって、シリカゲルの形状は特に限定されるものではなく、最終生成物である自動車排ガス処理触媒に求める形状に合わせて、適切な形状を選択することができる。
上述する方法でゲル化されたシリカゲル(乾燥状態でも湿潤状態でもよい)は、所定の条件で焼成することにより、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒とすることができる。焼成条件は、(i) シリカゾルに添加したアルカリ土類金属化合物の少なくとも一部(好ましくは全部)が分解して当該アルカリ土類金属の酸化物を形成するとともに、(ii) 添加した白金化合物の少なくとも一部(好ましくは全部)が分解して金属Pt(Pt原子)の状態になる、という二つの要件を達成するように設定される。
つまり、上記二つの要件を達成できる焼成条件であれば、具体的な焼成時間や焼成温度等については、特に限定されるものではなく、シリカゲルの状態やシリカゲルの組成等の諸条件に応じて適宜選定することができる。一般に、焼成温度は400〜800℃の範囲内であればよく、600〜800℃の範囲内であることが好ましい。また、焼成時間は0.5〜20時間の範囲内であればよく、4〜15時間の範囲内が好ましい。
(5)得られる自動車排ガス処理触媒の特性
上記のように、多孔質シリカゲルを所定条件により焼成することで、本発明にかかる高性能の自動車排ガス処理触媒を得ることができる。この自動車排ガス処理触媒は、200℃以下の温度で、排ガス中に含まれるCO、HC、およびNOx の三成分を同時に無害化する吸蔵型NOx 還元触媒の触媒反応の活性を有している。また、構造上の特徴として、触媒表面すなわち担体である多孔質材料の表面だけでなく、内部においてもアルカリ土類金属酸化物と金属Ptとが均一に微分散している。
上記自動車排ガス処理触媒において、活性金属である金属Ptと、吸蔵材であるアルカリ土類金属酸化物の含有量(含有率)は特に限定されるものではなく、触媒の具体的な使用条件や求められる触媒活性の程度等に応じて、適宜設定することができるが、例えば、ディーゼルエンジン車(本発明の最も好ましい用途の一つ)に利用する場合には、次に示すような好ましい範囲を挙げることができる。
本発明においては、Ptの含有量については、自動車排ガス処理触媒の全重量を基準として重量比で規定することができる。具体的には、Ptの含有量の上限が重量比で5%以下であればよく、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。Ptの含有量が上記上限値を超えると、それ以上を含有させても、Ptの使用コストに対する触媒活性の向上効果が得られない。一方、Ptの含有量の下限は、重量比で0.01%以上であればよく、0.1%以上であることが好ましい。Ptの含有量が上記下限未満であると、十分な触媒活性が得られない可能性がある。特に、触媒活性の向上とコストの面から見れば、Ptの含有量は重量比で0.1〜1%の範囲内であることが好ましい。
また、アルカリ土類金属酸化物の含有量については、ケイ素のアルコキシドに対する当該アルカリ土類金属酸化物の前駆物質の添加量(配合比)で規定することができる。具体的には、ケイ素のアルコシキド(A)と、上記アルカリ土類金属(B)との配合比A:B(原子比)が、100:1〜1:1となるように添加すればよく、50:1〜2:1であることが好ましく、20:1〜3:1が最も好ましい。上記配合比100:1よりもアルカリ土類金属の添加量がさらに少なくなると塩基点の形成が不十分となり、吸蔵材としての機能が十分発揮できなくなるため好ましくない。また、上記配合比1:1よりもアルカリ土類金属の添加量がさらに多くなると比表面積が減少し、NOx 還元反応の触媒活性作用が不足するため好ましくない。
ここで、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、あらゆる自動車の排ガス処理に利用することができるが、特にディーゼルエンジン車の排ガス処理に好ましく用いることができる。その理由は、排ガス温度の違いによるところが大きい。
すなわち、ガソリンエンジン車の排ガス温度は、通常400〜600℃の範囲内であるのに対して、ディーゼルエンジン車の排ガスの温度は200〜300℃程度であり、ディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車よりも燃焼温度が低くなっている。この燃焼温度の低さは、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx )の除去に大きな影響を及ぼす(「背景技術」および「発明が解決しようとする課題」も参照)。
すなわち、燃焼温度が高く排ガスの温度が高ければ、吸蔵型NOx 還元触媒による有害成分の除去作用(触媒活性)も向上するが、排ガスの温度が低ければ、ガソリンエンジン車で使用している従来の吸蔵型NOx 還元触媒では、反応温度が低くなるため十分な除去作用を発揮することができない。
これに対して、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、後述する実施例に示すように、少なくとも400℃以下、好ましくは200℃以下の温度で吸蔵型NOx 還元触媒の活性を十分に発揮することが可能であるとともに、室温でも200℃でも同程度の吸蔵型NOx 還元触媒の活性を示すことが可能である。その理由は次のように考えられる。
一般に、Ptのような触媒の活性金属は、できるだけ粒子径が小さい状態で担体に担持されていることが好ましい。これによって活性金属の比表面積をより大きくすることになるため、触媒効率を高めることができる。ここで、担体としては、上記のように、比表面積を大きくすべく多孔質材料が用いられることが多いため、このような多孔質材料に効率的に活性金属を担持させるには、従来では、担体(多孔質材料)を作製してから活性金属の溶液等に浸漬する手法が用いられてきた(特許文献1参照)。
これに対して本発明では、作製した担体をPtの溶液に浸漬して担体表面にPtを吸着させるのではなく、担体の製造過程において、Ptおよび吸蔵材の前駆物質を加えて予め担体中にこれらを分散させている。つまり、本発明の構成では、触媒表面だけでなく触媒の本体となる担体(多孔質材料)の内部にもPtや吸蔵材が分散していることになる。単純に考えれば、含浸により表面吸着させる方がPtや吸蔵材の使用量も少なくて済み、かつ、比表面積の大きい担体の表面にPtや吸蔵材を確実に担持できるように想定できるが、実際には、本発明の方が、Ptや吸蔵材の使用量を低減することが可能であるとともに、触媒活性も向上する。
この理由は、本発明では、シリカゾルにPtや吸蔵材の前駆物質を添加して十分に撹拌してからゲル化し焼成していることから、Ptや吸蔵材が実質的に分子または原子レベルで均一に分散している微分散の状態にあると考えられる。すなわち、含浸により表面に吸着させて担持する方法では、担体表面に吸着した状態のPtや吸蔵材の粒子径が分子または原子レベルより大きく、それゆえに、触媒活性成分のみで見た場合の比表面積は、本発明の場合よりも相対的に小さいと考えられる。一方、本発明では、担体内部に分散しているPtや吸蔵材は表面に露出していないため無駄なように見えるが、実際には、担体表面には分子または原子レベルの微粒子として担持されていることになるので、触媒活性成分のみで見た場合の比表面積が増大する。
さらに、一般には、触媒の使用時間が長くなるほど分散している活性金属の粒子が凝集してくるため、触媒効率が徐々に低下するが、本発明の構成では、Ptや吸蔵材等の触媒活性成分が分子または原子レベルで分散しているため、上記凝集が通常よりも起こり難くなることも考えられる。このような理由から、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、吸蔵型NOx 還元触媒として優れた機能を有していることが分かる。
(6)自動車排ガス処理触媒の製造方法
前述したように、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、アルカリ土類金属化合物と分散性を有する白金化合物との存在下で、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルを重縮合して多孔質シリカゲルを得て、さらに当該多孔質シリカゲルを焼成することにより、吸蔵材であるアルカリ土類金属酸化物と活性金属である白金とを担持する。したがって、本発明には、上記プロセスを含む自動車排ガス処理触媒の製造方法も含まれる。
すなわち、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒の製造方法は、(1)ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解してシリカゾルを得るゾル調製工程、(2)得られたシリカゾルに、アルカリ土類金属酸化物および白金の前駆物質を添加して、これら化合物をシリカゾル中に分散させる分散工程、(3)上記前駆物質を分散させたシリカゾルを重縮合してシリカゲルを得るゲル化工程、(4)得られたシリカゲルを粉砕するゲル粉砕工程、(5)得られたシリカゲルを乾燥するゲル乾燥工程、(6)得られたシリカゲルを加熱焼成し、前駆物質をアルカリ土類金属酸化物および白金とする焼成工程を含む方法を挙げることができる。
本発明にかかる製造方法では、上記各工程のうち、少なくとも上記分散工程、ゲル化工程、および焼成工程を含んでいればよい。これら3工程を含んでいれば、シリカを主成分とする多孔質材料にアルカリ土類金属酸化物と白金とを担持することができる。また、ゲル粉砕工程およびゲル乾燥工程は両方行ってもよいが何れか一方のみであってもよい。なお、上記各工程の具体的な条件や方法等については、自動車排ガス処理触媒の詳細な説明中で述べたので省略する。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
〔実施例1:自動車排ガス処理触媒の製造例1〕
まず、ケイ素のアルコキシドとして、コルコート社製のテトラエトキシシラン40を用い、そのエタノール溶液を調製した上で、表1の「加水分解液」に示す組成(重量比)で水(H2O)および塩酸(ゾル−ゲル法触媒)を添加して加水分解液を調製した。
上記加水分解液を50〜80℃の温度範囲内となるように昇温した。その後、アルカリ土類金属酸化物(吸蔵材)の前駆物質である炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム(アルカリ土類金属の炭酸塩)と、金属白金の前駆物質である白金アセチルアセトナート錯体を、それぞれ表1の「触媒活性成分」に示す組成(重量比)となるようにエタノール溶液として上記加水分解液に添加し、均一に混合した。
Figure 2007244975
その後、前駆物質を均一に分散させたシリカゾルを、20〜30℃の範囲内の温度を維持して重縮合し、湿潤体のシリカゲルを得た。このシリカゲルを粉砕して150℃で6時間加熱乾燥した後、700℃で4時間焼成し、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒(1)を得た。
〔比較例:比較触媒の製造〕
未焼成のシリカゲルに白金アセチルアセトナート錯体のエタノール溶液を含浸させてから焼成した以外は、実施例2と同様にして比較触媒を得た。つまりこの比較触媒においては、本発明のように前駆物質をシリカゾルに添加して分散させてから、重縮合してシリカゲルとし、焼成するという溶液混合の手法を用いるのではなく、シリカゲルを前駆物質の溶液に含浸させる含浸法を用いて、白金を担体に担持している。
〔実施例2:触媒活性における温度の違いの影響〕
実施例1で得られた自動車排ガス処理触媒(1)の粉末1gを500mlのガラス容器に仕込み、当該ガラス容器を密閉した後、ガラス容器中の窒素酸化物濃度が500ppmとなるように一酸化窒素(NO)ガスを注入した。なお、この窒素酸化物濃度は自動車の排ガスと同レベルである。その後、室温で10分放置した後、ガス検知管((株)ガステック製)を用いて、ガラス容器中の窒素酸化物濃度を測定した。
また、上記自動車排ガス処理触媒(1)を仕込んで密閉したガラス容器を、室温ではなくオイルバスに浸して200℃に加熱した状態とした以外は、上記と同様にして窒素酸化物の除去率を測定した。
その結果、室温において10分放置した後の窒素酸化物濃度は40ppmであり、窒素酸化物の除去率は92%であったのに対し、200℃に加熱した条件において10分放置した後の窒素酸化物濃度は30ppmであり、除去率は94%であった。このように、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、200℃でも室温でも良好な吸蔵型NOx 還元触媒活性を示すことが分かる。
〔実施例3:含浸法で得られた比較触媒との対比〕
実施例1で得られた自動車排ガス処理触媒(2)と、比較例で得られた比較触媒について、それぞれ実施例2と同様にしてガラス容器中の窒素酸化物濃度を、3分および10分放置した後に測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2007244975
この結果から明らかなように、本発明にかかる自動車排ガス処理触媒は、従来の含浸法を用いて得られる比較触媒に比べて優れた触媒活性を示すことが分かる。
なお、本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態中の異なる技術的手段や、異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明では、多孔質のシリカゲルを主成分とする担体中に、アルカリ土類金属の酸化物および白金原子を微分散させた状態で担持させることにより、室温あるいは200℃程度の比較的低温であっても、自動車排ガスの有害成分であるNOx 等を有効に分解除去することができる。それゆえ、本発明は、自動車の排ガス処理、特にディーゼルエンジン車の排ガス処理に用いられる触媒や、当該触媒を製造する分野に好適に利用できるだけでなく、当該触媒を利用した排ガス処理装置や浄化装置等、排ガスを処理するための独立した装置やその部品等を製造する分野にも広くするにも応用することが可能である。

Claims (9)

  1. 少なくともシリカからなる多孔質材料の担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる自動車排ガス処理触媒であって、
    上記多孔質材料は、ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルを、重縮合することで多孔質のシリカゲルを得た上で、このシリカゲルをさらに焼成して得られるものであり、
    上記アルカリ土類金属酸化物および白金は、これらの前駆物質を上記シリカゾルに添加して分散させてから、当該シリカゾルを重縮合して焼成することによって上記担体に担持されることを特徴とする自動車排ガス処理触媒。
  2. 上記ケイ素のアルコキシドとして、炭素数1〜4の低級アルコールのアルコキシドを少なくとも1種用いることを特徴とする請求項1に記載の自動車排ガス処理触媒。
  3. 上記ケイ素の低級アルコールのアルコキシドとして、テトラエトキシシランを用いることを特徴とする請求項2に記載の自動車排ガス処理触媒。
  4. 上記アルカリ土類金属酸化物の前駆物質が炭酸塩および/または水酸化物であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の自動車排ガス処理触媒。
  5. 上記アルカリ土類金属が、カルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の自動車排ガス処理触媒。
  6. 上記白金の前駆物質は、溶液状態で使用可能な化合物であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の自動車排ガス処理触媒。
  7. 上記白金の前駆物質が、白金アセチルアセトナート錯体であることを特徴とする請求項6に記載の自動車排ガス処理触媒。
  8. 少なくともシリカからなる多孔質材料の担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる自動車排ガス処理触媒であって、
    少なくとも200℃以下の温度であっても、吸蔵型の窒素酸化物還元触媒の活性を発揮できるとともに、
    上記多孔質材料の表面および内部の何れにも、上記アルカリ土類金属酸化物と白金とが分散していることを特徴とする自動車排ガス処理触媒。
  9. 少なくともシリカからなる多孔質材料の担体に、アルカリ土類金属酸化物および白金を担持してなる自動車排ガス処理触媒の製造方法であって、
    上記多孔質材料にアルカリ土類金属酸化物と白金とを担持するために、
    ケイ素のアルコキシド溶液をゾル−ゲル法で加水分解して得られるシリカゾルにアルカリ土類金属酸化物および白金の前駆物質を添加して、これら化合物をシリカゾル中に分散させる分散工程、
    上記化合物を分散させたシリカゾルを重縮合してシリカゲルを得るゲル化工程、
    当該シリカゲルを加熱焼成し、前駆物質をアルカリ土類金属酸化物および白金とする焼成工程、
    の各工程を含むことを特徴とする自動車排ガス処理触媒の製造方法。
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