JP2007242574A - 多孔質液体保持部材およびアルコール保持部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 液体に対して毛管現象による強い吸収力を持つと同時にそれ自身も液体を多量に保持でき、そして内部の気体を円滑に排出できる構造を有する多孔質液体保持部材および燃料電池のアルコール燃料を保持するアルコール保持部材を提供する。
【解決手段】 平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、横孔と交差して連通し多孔質焼結体の表面に開口する縦孔とを有する多孔質液体保持部材で、横孔および縦孔は平均孔径100μm以上3000μm以下である。また、上述の多孔質液体保持部材にアルコールを吸収、保持させることでアルコール保持部材となる。
【選択図】図1
【解決手段】 平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、横孔と交差して連通し多孔質焼結体の表面に開口する縦孔とを有する多孔質液体保持部材で、横孔および縦孔は平均孔径100μm以上3000μm以下である。また、上述の多孔質液体保持部材にアルコールを吸収、保持させることでアルコール保持部材となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルコールや水等の液体に対して吸収力を有し、さらにその液体を保持することができ、そして、液体の保持と同時に通気性を有することができる多孔質液体保持部材およびアルコール保持部材に関する。
樹脂や天然素材製のスポンジや繊維基材等の多孔質体は、液体に接触させると表面張力にともなう毛管現象により、多孔質体内部に液体を吸収して保持することができる。しかし、スポンジや繊維基材等は、それ自体に強度がなく、自身の形状を保持することができない。このため、強度を有して保水性を保つものとして、素焼き品に代表される多孔質のセラミックスが通常使用されている。しかし、セラミックスは靭性が低いので、小型機器等に使用するために、その形状を薄く、あるいは細く形成すると破損しやすい。
最近注目されている燃料電池の分野においては、多孔質体を、直接メタノール形燃料電池(以下、DMFCという)の燃料極(以下、アノードという)へのメタノール水溶液供給用部材として使用するという提案が、例えば特許文献1になされている。多孔質体は、メタノール水溶液をタンクから毛管現象によって吸収して保持し、アノードの表面上へメタノールを供給できるために好適である。また、空気極(以下、カソードという)では、電解膜を通過した水素イオンと空気中の酸素とが反応して水が生成される。液体を吸収できる多孔質体は、この水をカソード表面から吸収して除去するためにも好適である。
また、上述の液体を吸収できる多孔質体として金属粉末の多孔質焼結体が、例えば特許文献2に提案されている。
また、上述の液体を吸収できる多孔質体として金属粉末の多孔質焼結体が、例えば特許文献2に提案されている。
従来の樹脂、天然素材製のスポンジ、繊維基材等の多孔質体では、上述した通りそれ自体に強度がなく、細孔部が容易に潰れてしまうため液体の保持や供給が困難になることがある。そして、使用する燃料への不純物の溶出といった問題も懸念される。また、セラミックスの多孔質体では、一般には形成可能な細孔径が小さいため液体供給時に液体の粘性による透過抵抗が高くなり、燃料の供給が十分に確保できない可能性がある。
加えて、DMFCが発電する時は、上述の多孔質体がアノードに対してメタノール水溶液を供給すると同時に、アノードでメタノールが分解して発生するCO2ガスを多孔質体内を通して外部に逃がす必要がある。そして、多孔質体が絶えず燃料の液体を供給し、燃料を多量に保持したとしても、上述の燃料電池の用途においては、作動中に大量に発生するCO2ガスの放出が円滑に進まなければ、多孔質体とアノードとの間にCO2ガスの気泡が溜まることとなり、アノードへの燃料の供給に支障をきたしてしまう。また、カソードでは、生成された水の多孔質体による吸収除去が円滑に進まなければ、反応が継続できず出力低下を起こしてしまう。
また、上述の多孔質体においては、モバイル用や車載用を想定した場合、ある程度の振動や衝撃にも耐えることが必要であり、従来のセラミックスは材質的には十分なものであるとはいえない。
本発明の目的は、液体に対して毛管現象による強い吸収力を持つと同時に、液体を多量に保持でき、そして、その状態でも通気性を確保できる構造を有する多孔質液体保持部材および燃料電池の燃料となるアルコール保持部材を提供することである。
本発明者は、多孔質体を検討した結果、金属粉末の多孔質焼結体に形成する細孔の平均径を調整することに加えて、細孔とは別の比較的大きな空孔を連通させる構造とすることにより、上述の課題を解決するに至った。
すなわち、本発明における多孔質液体保持部材は、平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、該多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、該横孔と交差して連通し前記多孔質焼結体の表面に開口する縦孔とを有し、前記横孔および前記縦孔は平均孔径100μm以上3000μm以下である多孔質液体保持部材である。
また、本発明における上述とは別の多孔質液体保持部材は、平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、該多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、該横孔が開口して連通する前記多孔質焼結体の表面に形成される溝状の凹部とを有し、前記横孔の平均孔径および前記溝状の凹部の深さは100μm以上3000μm以下である多孔質液体保持部材である。
本発明において好ましくは、多孔質焼結体の全体空隙率を55体積%以上95体積%以下とすることである。また、多孔質焼結体はチタンからなるものとすることができる。
また、本発明のアルコール保持部材は、上述の多孔質液体保持部材にアルコールを保持させることで、アルコール保持部材とするものである。
本発明により、毛管現象による液体の吸収力と保持力とを持つと同時に、液体の保持時に通気性を確保した構造を有する多孔質液体保持部材および燃料電池の燃料となるアルコール保持部材を提供することができる。
上述した通り、本発明の重要な特徴は、液体の吸収保持に、金属粉末を焼結させて特定の平均細孔径に調整して形成した細孔と、この細孔とは別に、比較的大きな連通した空孔とを有する構造の金属粉末の多孔質焼結体を適用したことである。具体的には、本発明の多孔質液体保持部材は、多孔質焼結体における多数の孔を平均細孔径3μm以上70μm以下に調整して形成し、液体を吸上げて貯めるための細孔とする。そして、比較的大きな空孔として、多孔質焼結体の肉厚方向に平均孔径100μm以上3000μm以下の横孔を形成し、さらに、この横孔と交差して連通するように平均孔径100μm以上3000μm以下の縦孔を多孔質焼結体の表面に開口させて形成する。このように多孔質焼結体に、液体を吸上げて貯める細孔とは別に、交差して連通する横孔と縦孔とを設けることにより、多孔質焼結体において十分な通気性を確保できる。
あるいは、上述の縦孔に替え、多孔質焼結体の表面に、上述の横孔が開口して連通する溝状の凹部を形成することによっても、多孔質焼結体において十分な通気性を確保できる。例えば、多孔質焼結体を位置決め支持するために溝状の凹部を形成した多孔質焼結体の一面を平板等を密着させて覆った場合、溝状の凹部が多孔質焼結体と平板との間に画成された大きな空孔となる。つまり、縦孔は多孔質焼結体の内部に形成された大きな空孔であるが、多孔質焼結体の外表面に形成された溝状の凹部であっても、上述のように平板等で密着された場合には、縦孔と同等の効果を得ることができる。
上述の構造を有する金属粉末の多孔質焼結体は、液体に対して毛管現象による強い吸収力を持つと同時に、液体を多量に保持でき、そして、その状態でも十分な通気性を確保することができる。
上述の構造を有する金属粉末の多孔質焼結体は、液体に対して毛管現象による強い吸収力を持つと同時に、液体を多量に保持でき、そして、その状態でも十分な通気性を確保することができる。
本発明の多孔質液体保持部材おいては、まず、モバイル用や車載用のDMFC燃料保持部材をも想定し、耐振動性や耐衝撃性を確保するために金属粉末を焼結させてなる多孔質焼結体とした。これに使用する金属粉末は、対応する液体に合せ、その影響を受け難い材質を選択することが有効である。金属材料は、一般にそれ自身が持つ表面張力が大きいため、セラミックスと同様に液体の濡れ性が良く、液体を吸収させて保持させる部材の材料として使用するには好適と考えられる。また、金属の導電性を利用し、集電板や電極としての機能を同時に持たせることもできる。
次に、本発明の多孔質液体保持部材が液体を吸収保持できるのは、多孔質焼結体自体が有する平均細孔径が調整して形成された細孔の毛管現象によるものである。本発明において、細孔は、平均細孔径を3μm以上70μm以下に調整して形成する。この細孔に液体が接触すると、毛管現象により細孔内に液体が吸収され、吸収された液体が次々と細孔にしみ渡ることにより多孔質焼結体内に満たされて保持される。このとき、細孔径が小さすぎる場合には、液体の粘性により、液体が細孔を通過する抵抗が大きくなって液体の移送力が低下する。このため、細孔の平均細孔径を3μm以上とすることにより、液体の十分な移送力を確保する。また、細孔径が大きすぎる場合には、細孔の毛管現象による液体の吸上げが不十分となるか、もしくは毛管現象そのものが発現し難くなる。このため、細孔の平均細孔径を70μm以下とすることにより、細孔の毛管現象による液体の吸上げ力を十分に確保する。例えば、DMFCの場合、液体の移送力が十分でないとき、あるいは液体の吸上げ力が十分でないときは、アノードへの十分な燃料供給ができず、燃料保持部材としては致命的である。
一方、上述の比較的大きな空孔部は、多孔質焼結体の液体の吸収保持の結果、液体によって多孔質焼結体の細孔が液体によって塞がれた後も空洞のままで存在させることができる。このため、多孔質焼結体において、液体を十分に保持したままの状態で同時に通気性をも確保できる。例えば、本発明の多孔質液体保持部材の一例を図1に示す(明確化のため多孔質焼結体1の空孔構造は一部のみ記載)。図1において、多孔質焼結体1の肉厚方向に形成した横孔aにより多孔質焼結体1の肉厚方向の通気性を確保し、この横孔aと交差して連通させて形成した縦孔bにより多孔質焼結体1の肉厚方向と交差する方向の通気性を確保する。そして、縦孔bが多孔質焼結体1の表面に開口する開口部cを形成して多孔質焼結体1の内部と外部とを連通させ、多孔質焼結体1の内外の通気性を確保する。また、この場合、横孔aは多孔質焼結体1を完全に貫通していてもよい。
また、例えば、本発明の多孔質液体保持部材の別の一例を図2に示す(明確化のため多孔質焼結体2の空孔構造は一部のみ記載)。図2においては、図1における縦孔bに替えて、多孔質焼結体2の表面に、横孔dが開口する開口部fを有して横孔dと連通する凹部eを形成している。多孔質焼結体2の肉厚方向の通気性は、図1の事例と同様に横孔dによって確保する。そして、多孔質焼結体2の肉厚方向と交差する方向および多孔質焼結体5の内外の通気性は、凹部eによって確保する。また、例えば平板等が配設され、多孔質焼結体2の凹部eを有する側面が覆われたとしても、図1における縦孔bを形成した断面構造と同様になるため、本発明の多孔質液体保持部材としての作用効果を有することができる。
本発明において横孔および縦孔は、その平均孔径を100μm以上3000μm以下に形成する。平均孔径があまりに小さいと毛管現象を発現して液体が横孔や縦孔の内部に引き込まれ、横孔や縦孔が液体で閉塞してしまうことがある。このため、大きな空孔として形成する横孔および縦孔の平均孔径を100μm以上として毛管現象を発現し難くし、十分な通気性を確保する。一方、平均孔径があまりに大きいと、多孔質焼結体において液体を保持する細孔部の体積が減少し、多孔質焼結体に保持可能な液体量が減少する。また、横孔や縦孔の開口部が多孔質焼結体の表面に大きく開口する場合、多孔質焼結体の表面に存在する細孔の分布が不均一となる。例えばDMFCにおいて、本発明の多孔質液体保持部材を燃料供給部材としてアノード部と接触させた場合、その接触部において、燃料を保持せず燃料の供給に寄与しない大きな空孔が大きな面積を占め、細孔の分布が不均一となることから、アノードに対して燃料が十分かつ均一に供給されず、DMFCの効率等を阻害することともなる。このため、横孔および縦孔の平均孔径を3000μm以下とする。
また、本発明において、横孔を開口させる溝状の凹部の深さは、100μm以上3000μm以下に形成する。例えば、多孔質焼結体を位置決め支持するために凹部を形成した多孔質焼結体の一面を平板等を密着させて覆った場合、多孔質焼結体と平板との間に画成される空間があまりに小さいと液体で閉塞してしまうことがある。このため、溝状の凹部の深さを100μm以上として凹部が液体で閉塞することのない空間を画成し、十分な通気性を確保する。一方、画成される空間があまりに大きいと多孔質焼結体の支持が不安定になるばかりか、多孔質焼結体自体の体積が減少し、多孔質焼結体に保持可能な液体量が減少する。このため、溝状の凹部の深さを3000μm以下とし、多孔質焼結体の体積を確保して液体の保持量を十分に確保する。また、上述のように多孔質焼結体の一面を平板等で覆うとき、覆われた凹部は外部と遮断され、多孔質焼結体の内外の通気性を損なうことある。そこで、各横孔が開口する各凹部を孤立して形成せず、溝状に連通させて形成することにより、多孔質焼結体の内外の通気性を確保する。
以下、本発明の多孔質液体保持部材にとって、より好ましい構造を示す。
多孔質焼結体における細孔は、細孔に対応する増孔材と金属粉末とを混合した原料を使用して成形体とし、この成形体から増孔材を分解または焼失させる等により消失させた後、金属粉末を焼結させることによって形成することが可能である。また、細孔は、増孔材を成形原料に混入させる等の方法によっても形成できるが、好ましくは、金属粉末の焼結により多孔質焼結体自体の素地として形成されることとなる多数の微細な空洞を、本発明における細孔とすべく調整して形成することである。これにより、成形後に増孔材を消失させる等の格別な工程を経ることなく簡易に細孔を形成できる。
多孔質焼結体における細孔は、細孔に対応する増孔材と金属粉末とを混合した原料を使用して成形体とし、この成形体から増孔材を分解または焼失させる等により消失させた後、金属粉末を焼結させることによって形成することが可能である。また、細孔は、増孔材を成形原料に混入させる等の方法によっても形成できるが、好ましくは、金属粉末の焼結により多孔質焼結体自体の素地として形成されることとなる多数の微細な空洞を、本発明における細孔とすべく調整して形成することである。これにより、成形後に増孔材を消失させる等の格別な工程を経ることなく簡易に細孔を形成できる。
多孔質焼結体の全体空隙率は、体積率で55%以上が好ましい。多孔質焼結体は、細孔を増やして空隙率を高くすると、隣接する細孔同士の連通の度合いが増加して通気性の確保に有利である。例えば、細孔同士の連通の度合いが低すぎる多孔質焼結体は、乾燥した状態では圧力損失は高いものの通気性を示す。しかし、この多孔質焼結体に、毛管現象により液体を吸収させると次第に各細孔が液体で満たされるにつれて各細孔間での気体の出入りが不十分となる。そして、気体が多孔質焼結体の外部へ排出されず残存してしまい、液体の吸収保持が不十分となることがある。このため、好ましくは多孔質焼結体の全体空隙率を55%以上とし、細孔同士の連通の度合いを高めておくことである。一方、多孔質焼結体の全体空隙率は、体積率で95%以下とし、多孔質焼結体に適当な強度を確保しておくことが好ましい。
本発明の多孔質液体保持部材において、横孔と溝状の凹部とを組み合せた構造とする場合、例えば、図2に示すように溝状に凹部eを連通させて形成することができる。また、図3に示す多孔質焼結体3(明確化のため多孔質焼結体3の空孔構造は一部のみ記載)のように、横孔pを形成した多孔質焼結体3の表面に大きな凹状のリセスgとこれを画成するランドhとを形成し、各横穴pの開口部を連通させた大きな溝状の凹部とする構成にもできる。また、リセスは複数設けることもできる。
例えば、図1に示すような縦孔を設けた多孔質焼結体をDMFCで使用する場合、アノードへの燃料供給を重視するときには、アノードでの発生ガスを排出できる程度に横孔が開口する側をアノードに接触させる側とし、縦孔がアノードに沿うように、そして、縦孔が可能な限りアノードから離間するように多孔質焼結体を形成して配設し、アノードへの燃料供給を十分に確保することが好ましい。また、アノードでの発生ガスの排出を重視するときには、横孔がより多く開口する側をアノードに接触させる側とし、縦孔がアノードに沿うように、そして、縦孔を可能な限りアノードに近づけて発生ガスの搬出経路を短くするように多孔質焼結体を形成して配設し、十分な通気性を確保することが好ましい。
また、図2や図3に示すような溝状の凹部を設けた多孔質焼結体をDMFCで使用する場合、アノードへの燃料供給を重視する場合、表面積が小さくなる凹部のある側をアノード部と接触しない側に配設し、十分な燃料供給を確保することが好ましい。また、発生した気体の排出を重視する場合、大きな空孔となる凹部のある側を配設し、十分な通気性を確保することが好ましい。
また、図2や図3に示すような溝状の凹部を設けた多孔質焼結体をDMFCで使用する場合、アノードへの燃料供給を重視する場合、表面積が小さくなる凹部のある側をアノード部と接触しない側に配設し、十分な燃料供給を確保することが好ましい。また、発生した気体の排出を重視する場合、大きな空孔となる凹部のある側を配設し、十分な通気性を確保することが好ましい。
本発明において、金属粉末としては、接触する液体に対して腐食が進むような素材よりもむしろ、ステンレスや、チタンおよびチタン合金等が有効である。特にチタンは耐酸性に優れており、例えば99質量%以上のチタンからなる多孔質体をDMFCに用いれば、発電過程で燃料のメタノール中に蟻酸等が生じた場合でも、多孔質体が腐食されないため金属イオンが溶出せず、安定した発電状態が維持できるので好ましい。
また、金属粉末の粒径としては、平均粒径200μm以下の金属粉末が好ましい。金属粉末を焼結させるとき、多孔質体自体の素地の微細な空洞は、通常は金属粉末の平均粒径の1/3程度の平均孔径に形成されやすい。このため、この素地の微細な空洞を本発明における平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔として調整して形成する場合、例えば平均粒径200μmの金属粉末を使用すると、細孔は平均細孔径60〜70μmに形成されることとなる。また、例えば100μmの金属粉末を使用すると、細孔は平均細孔径3〜30μmに形成されることとなる。
次に、本発明の多孔質液体保持部材の製造に好適な手段について、一例を挙げて説明する。
まず、例えば多孔質体に平均細孔径20μmの細孔を形成することとし、平均粒径60μmの金属粉末を準備する。この金属粉末にバインダを混合し、十分に混練し、これを成形原料とする。多孔質体の平均細孔径や空隙率等の特性は、金属粉末の物性によっても変化するため、金属粉末の材質は所望の多孔質体の特性に応じて適宜選定することが好ましい。また、多孔質体の空隙率は、金属粉末の相対タップ密度(タップ密度/真密度、以下、T/D比という)と、バインダ添加量によっても変化するため、例えば多孔質体の空隙率を高くしたい場合には、T/D比の低い金属粉末を使用し、バインダ配合量を多くすることが好ましい。
まず、例えば多孔質体に平均細孔径20μmの細孔を形成することとし、平均粒径60μmの金属粉末を準備する。この金属粉末にバインダを混合し、十分に混練し、これを成形原料とする。多孔質体の平均細孔径や空隙率等の特性は、金属粉末の物性によっても変化するため、金属粉末の材質は所望の多孔質体の特性に応じて適宜選定することが好ましい。また、多孔質体の空隙率は、金属粉末の相対タップ密度(タップ密度/真密度、以下、T/D比という)と、バインダ添加量によっても変化するため、例えば多孔質体の空隙率を高くしたい場合には、T/D比の低い金属粉末を使用し、バインダ配合量を多くすることが好ましい。
次に、得られた成形材料を用い、多孔質体の焼結素材となる成形体を形成する。成形手段としては、例えば、射出成形、プレス成形、ロール成形、押出し成形等の成形法を適用することができる。そして、射出成形、プレス成形、ロール成形においては、多孔質体に形成する所望の横孔や縦孔、あるいは凹部の形状に対応する成形部を、成形に使用する金型やロール等に予め付加しておくことにより、成形体の成形と同時に横孔や縦孔、あるいは凹部を形成できる。また、細孔の潰れや目詰まり等を生じやすいものの、成形後の成形体に対し、プレス等での打ち抜き加工やボール盤等での機械加工により、横孔や縦孔、あるいは凹部を形成できる。また、成形体の焼結後に横孔や縦孔、あるいは凹部等を形成する場合には、放電加工等、細孔に目詰りを生じ難い加工方法を選択することが好ましい。
次に、得られた成形体からバインダを除去(以下、脱脂という)した後、金属粉末を焼結させて金属焼結多孔質体を形成する。脱脂は、従来知られている溶剤抽出法、大気雰囲気での加熱脱脂法、各種のガス流雰囲気中での加熱脱脂法、真空または減圧下での加熱脱脂方等を適用できる。また、バインダに水を加えた場合には、脱脂前に乾燥工程を加え、成形体を十分に乾燥させておくことが好ましい。
金属粉末に混合するバインダとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス等のワックス類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン酢ビ共重合体等の熱可塑性樹脂類、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂類等を単一で、または適宜組み合せて使用することができる。例えば、金属粉末としてSUS316Lを使用する場合、バインダ材料としてメチルセルロースと純水の組み合せ、パラフィンワックスとポリプロピレンの組み合せ等が好適である。また例えば、金属粉末として99質量%以上のチタンを使用する場合、カルナバワックスとポリスチレンの組み合せ、パラフィンワックスとポリプロピレンの組み合せが好適である。
(実施例1)
最初に、実施例1において使用した多孔質体となる成形体を成形するための金型装置について説明する。図4は、可動型10、固定型11、およびスライド型12を備えた金型装置の断面構成を示し、金型装置を型閉めして成形体の形状に対応するキャビティ20を画成した状態を示す。図5は、可動型10およびスライド型12を型開きして成形体(図示せず)を離型した状態の断面構成を示す。また、可動型10には、成形する成形体の肉厚方向に沿って外径500μmの複数のステンレス製ピン13が配設される。また、スライド型12には、前記ステンレス製ピン13に接触して交差するように外径1000μmの複数のステンレス製ピン14が配設される。
最初に、実施例1において使用した多孔質体となる成形体を成形するための金型装置について説明する。図4は、可動型10、固定型11、およびスライド型12を備えた金型装置の断面構成を示し、金型装置を型閉めして成形体の形状に対応するキャビティ20を画成した状態を示す。図5は、可動型10およびスライド型12を型開きして成形体(図示せず)を離型した状態の断面構成を示す。また、可動型10には、成形する成形体の肉厚方向に沿って外径500μmの複数のステンレス製ピン13が配設される。また、スライド型12には、前記ステンレス製ピン13に接触して交差するように外径1000μmの複数のステンレス製ピン14が配設される。
まず、成形原料を準備した。具体的には、SUS316Lの平均粒径60μmの水アトマイズ粉末を準備し、この金属粉末100重量部に対し、バインダとしてメチルセルロース3.84重量部、保湿剤としてグリセリン2重量部、および、分散媒として水15.7重量部を加えて混合し、十分に混練して成形原料とした。
この成形原料を、図4に示す金型装置のキャビティ20に装入して加圧し、図1に示す多孔質体1に対応する長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の成形体を形成した。そして、この成形体には、成形体の肉厚方向に孔径500μmの複数の横孔aがステンレス製ピン13により形成された。また、成形体の肉厚方向と交差する方向に、横孔aと交差して連通した孔径1000μmの複数の縦孔bがステンレス製ピン14により形成された。
この成形原料を、図4に示す金型装置のキャビティ20に装入して加圧し、図1に示す多孔質体1に対応する長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の成形体を形成した。そして、この成形体には、成形体の肉厚方向に孔径500μmの複数の横孔aがステンレス製ピン13により形成された。また、成形体の肉厚方向と交差する方向に、横孔aと交差して連通した孔径1000μmの複数の縦孔bがステンレス製ピン14により形成された。
次いで、得られた成形体を80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させた後、この成形体を水素ガス雰囲気の脱脂炉内に静置し、50℃/hで昇温し、600℃で2h維持することにより脱脂した。そして、アルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、1250℃で2h維持し、成形体を焼結させて多孔質体1を形成した。得られた多孔質体1は、平均細孔径27μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体1の全体空隙率は67%であった。
上述の手段によって得た多孔質体1について、以下の測定方法により、液体の吸収速度を測定した(以下、この測定方法を吸上げ試験という)。多孔質体1をこのまま試験体として使用し、エタノールを用いて2分間の超音波洗浄を実施した後、70℃の雰囲気中で十分に乾燥させた。この後、試験体を電子秤に吊るし、試験体の下端10mmをDMFC燃料である10質量%メタノール水溶液中に浸漬させ、試験体の1分間当たりの質量増分を測定した。試験体の質量増分は、多孔質体1に吸収保持された液体の質量と等しい。そして、試験体の質量増分と断面積100mm2とから単位断面積当たりの吸収速度を求めた結果、多孔質体1の液体吸収速度は1.03g/分・cm2であった。また、吸上げ試験中、試験体に形成された横孔aや縦孔b、吸上げた液体で濡れることはあっても閉塞することなく通気性が確保されていた。これにより、平均細孔径を27μmに適正化した細孔と、大きな空孔部となる横孔aと縦孔bとを有する本実施例1における多孔質体1は、液体が十分に吸収保持され、かつ、十分な通気性が確保されていることが確認できた。
(実施例2)
実施例2においては、押出し成形機により上述の実施例1と同じ成形原料を使用した。まず、成形原料を幅50mm、厚さ3mmの長尺シート状に成形した後、これを長さ50mm、幅30mm、厚さ3mmに切断し、80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させて板状の成形体を得た。次いで、外径0.5mmのドリルを使用し、図1に示す多孔質体1’に対応するように成形体の肉厚方向に複数の横孔aを穿孔した。さらに、同じ外径0.5mのドリルで成形体の長手方向に沿って複数の縦孔b’を穿孔した。この後、横孔aと縦孔b’を有する成形体をアルゴンガス雰囲気で減圧した脱脂焼結炉内に静置し、30℃/hで昇温し、600℃で2h維持することにより脱脂した。さらに、1250℃に昇温し、2h維持して成形体を焼結させて多孔質体1’を形成した。得られた多孔質体1’は、平均細孔径23μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体1’の全体空隙率は73%であった。
実施例2においては、押出し成形機により上述の実施例1と同じ成形原料を使用した。まず、成形原料を幅50mm、厚さ3mmの長尺シート状に成形した後、これを長さ50mm、幅30mm、厚さ3mmに切断し、80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させて板状の成形体を得た。次いで、外径0.5mmのドリルを使用し、図1に示す多孔質体1’に対応するように成形体の肉厚方向に複数の横孔aを穿孔した。さらに、同じ外径0.5mのドリルで成形体の長手方向に沿って複数の縦孔b’を穿孔した。この後、横孔aと縦孔b’を有する成形体をアルゴンガス雰囲気で減圧した脱脂焼結炉内に静置し、30℃/hで昇温し、600℃で2h維持することにより脱脂した。さらに、1250℃に昇温し、2h維持して成形体を焼結させて多孔質体1’を形成した。得られた多孔質体1’は、平均細孔径23μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体1’の全体空隙率は73%であった。
上述の手段により成した多孔質体1’をこのまま試験体として使用し、実施例1と同様な吸上げ試験を実施したところ、多孔質体1’の単位断面積当たりの吸収速度は0.94g/分・cm2であった。また、吸上げ試験中、試験体に形成された横孔aや縦孔b’は、吸上げた液体で濡れることはあっても閉塞するなく通気性が確保されていた。これにより、平均細孔径を23μmに適正化した細孔と、大きな空孔部となる横孔と縦孔とを有する本実施例2における多孔質体1’は、液体が十分に吸収保持され、かつ、十分な通気性が確保されていることが確認できた。
(実施例3)
実施例3においては、SUS316Lの平均粒径30μmのガスアトマイズ粉末を準備し、この金属粉末100重量部に対し、バインダとしてメチルセルロース3.5重量部、ポリビニルアルコール0.5重量部、保湿剤としてグリセリン2重量部、および、分散媒として水15重量部を加えて混合し、十分に混練して成形原料とした。
実施例3においては、SUS316Lの平均粒径30μmのガスアトマイズ粉末を準備し、この金属粉末100重量部に対し、バインダとしてメチルセルロース3.5重量部、ポリビニルアルコール0.5重量部、保湿剤としてグリセリン2重量部、および、分散媒として水15重量部を加えて混合し、十分に混練して成形原料とした。
そして、図6に示す多孔質体4(明確化のため多孔質体4の空孔構造は一部のみ記載)を形成すべく、上述の実施例2と同様に成形原料を押出し成形した後に、長さ50mm、幅30mm、厚さ3mmに切断し板状の成形体を得た。次に、得られた成形体を平板上に静置し、この成形体に対して図7に示す10°のテーパー角を有する先端外径100μmの複数の鋼製ピン16を配設した穿孔用治具15を押し付けることにより、成形体の肉厚方向に沿ってテーパー形状の横孔iを穿孔形成した。この成形体を80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させた後、エンドミルを使用し、横孔iにおいて外径の大きい側となる成形体の表面に、横孔iの開口部kが連通された深さ500μm、幅600μmの凹部jを切削形成した。この後、成形体を窒素ガス雰囲気の脱脂炉内に静置し、30℃/hで昇温し、600℃で2h維持することにより脱脂した。そして、アルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、1250℃で2h維持し、成形体を焼結させて図6に示す多孔質体4を得た。得られた多孔質体4は、平均細孔径12μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体4の全体空隙率は69%であった。
上述の手段により成した多孔質体4をこのまま試験体として使用し、実施例1と同様な吸上げ試験を実施したところ、多孔質体4の単位断面積当たりの吸収速度は0.62g/分・cm2であった。また、吸上げ試験中、試験体に形成された横孔iは、吸上げた液体で濡れることはあっても閉塞するなく通気性が確保されていた。これにより、平均細孔径を12μmに適正化した細孔と、大きな空孔部となる横孔iと凹部jとを有する本実施例3における多孔質体4は、液体が十分に吸収保持され、かつ、十分な通気性が確保されていることが確認できた。
(実施例4)
実施例4においては、99.5質量%以上のチタンからなる平均粒径45μmのチタン粉末を準備し、このチタン粉末100重量部に対し、バインダとしてパラフィンワックス2.9重量部、ポリプロピレン2.9重量部、エチレン酢ビ共重合体1.0重量部を加え、加圧ニーダーにより165℃で2h混練して成形原料とした。
実施例4においては、99.5質量%以上のチタンからなる平均粒径45μmのチタン粉末を準備し、このチタン粉末100重量部に対し、バインダとしてパラフィンワックス2.9重量部、ポリプロピレン2.9重量部、エチレン酢ビ共重合体1.0重量部を加え、加圧ニーダーにより165℃で2h混練して成形原料とした。
そして、上述の実施例2と同様に成形原料を押出し成形した後に、長さ50mm、幅30mm、厚さ2mmに切断し板状の成形体を得た。次に、この成形体を平板上に静置し、成形体が冷却して固化する前に図7に示す穿孔用治具15を押し付けることにより、図6に示すようなテーパー形状の横孔iを穿孔した。これを冷却して固化させた後、エンドミルを使用し、横孔iの外径が大きい側の表面に深さ500μm、幅600μmの凹部jを形成して横孔iの開口部kを連通させた。そして、この成形体を60℃に加熱したn-パラフィン液に浸漬させる溶媒脱脂によりパラフィンワックスを除去後、アルゴンガス雰囲気で減圧した脱脂炉内に静置し、30℃/hで昇温し、600℃で2h維持することによりバインダを脱脂した。そして、真空雰囲気とした焼結炉内に静置し、1250℃で2h維持し、成形体を焼結させて図6に示す多孔質体4’を形成した。得られた多孔質体4’は、平均細孔径14μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体4’の全体空隙率は71%であった。
上述の手段により成した多孔質体4’をこのまま試験体として使用し、実施例1と同様な吸上げ試験を実施したところ、多孔質体4’の単位断面積当たりの吸収速度は1.48g/分・cm2であった。また、吸上げ試験中、試験体に形成された横孔iは、吸上げた液体で濡れることはあっても閉塞するなく通気性が確保されていた。これにより、チタンからなる多孔質体4’であっても、平均細孔径を14μmに適正化した細孔と、大きな空孔部となる横孔iと凹部jとを有する多孔質体4’とすることにより、液体が十分に吸収保持でき、かつ、十分な通気性を確保できることが確認できた。
(比較例1)
比較例1においては、使用する金属粉末をSUS316Lの平均粒径5μmのガスアトマイズ粉末とし、上述した実施例1と同様に成形原料を製作した。また、成形体の成形においては、図4に示す金型装置においてステンレス製ピンを有さない可動型とスライド型を用い、上述の実施例1と同様に、成形体の成形と乾燥、および、成形体からの脱脂を実施した。次いで、得られた成形体をアルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、950℃で2h維持し、成形体を焼結させて長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の多孔質体を形成した。得られた多孔質体は、平均細孔径2.6μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体の全体空隙率は63%であった。
比較例1においては、使用する金属粉末をSUS316Lの平均粒径5μmのガスアトマイズ粉末とし、上述した実施例1と同様に成形原料を製作した。また、成形体の成形においては、図4に示す金型装置においてステンレス製ピンを有さない可動型とスライド型を用い、上述の実施例1と同様に、成形体の成形と乾燥、および、成形体からの脱脂を実施した。次いで、得られた成形体をアルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、950℃で2h維持し、成形体を焼結させて長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の多孔質体を形成した。得られた多孔質体は、平均細孔径2.6μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体の全体空隙率は63%であった。
上述の手段により成した多孔質体をこのまま試験体として使用し、実施例1と同様な吸上げ試験を実施したところ、試験体の1分間当たりの質量増分が微量で、多孔質体の単位断面積当たりの吸収速度は0.01g/分・cm2以下であった。また、吸上げ試験中、細孔の内部への液体の充満は確認できなかった。これにより、本発明において下限とする平均細孔径3μmに満たない細孔により構成された多孔質体では、細孔の毛管現象による液体の吸収が不十分であることが確認できた。
(比較例2)
比較例2においては、SUS316Lの平均粒径150μmの水アトマイズ粉末を準備し、この金属粉末100重量部に対し、バインダとして顆粒状のパラフィンワックス65重量部、メチルセルロース3.84重量部、保湿剤としてグリセリン2重量部、および、分散媒として水22重量部を加えて混合し、十分に混練して成形原料とした。そして、上述した比較例1と同様の金型装置を使用して成形し、80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させて成形体を得た。この後、成形体を60℃に加熱したn-パラフィン液に浸漬させる溶媒脱脂によりパラフィンワックスを除去した後、水素ガス雰囲気とした脱脂炉内に静置し、50℃/hで昇温し、600℃で2h維持することによりバインダを脱脂した。そして、アルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、1300℃で2h維持し、成形体を焼結させて長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の多孔質体を形成した。得られた多孔質体は、平均細孔径83μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体の全体空隙率は87%であった。
比較例2においては、SUS316Lの平均粒径150μmの水アトマイズ粉末を準備し、この金属粉末100重量部に対し、バインダとして顆粒状のパラフィンワックス65重量部、メチルセルロース3.84重量部、保湿剤としてグリセリン2重量部、および、分散媒として水22重量部を加えて混合し、十分に混練して成形原料とした。そして、上述した比較例1と同様の金型装置を使用して成形し、80℃の雰囲気中に静置し、水分を除去して十分に乾燥させて成形体を得た。この後、成形体を60℃に加熱したn-パラフィン液に浸漬させる溶媒脱脂によりパラフィンワックスを除去した後、水素ガス雰囲気とした脱脂炉内に静置し、50℃/hで昇温し、600℃で2h維持することによりバインダを脱脂した。そして、アルゴンガス雰囲気で減圧した焼結炉内に静置し、1300℃で2h維持し、成形体を焼結させて長さ100mm、幅20mm、厚さ5mmの板状の多孔質体を形成した。得られた多孔質体は、平均細孔径83μmの細孔がほぼ均一に形成され、多孔質体の全体空隙率は87%であった。
上述の手段により成した多孔質体をこのまま試験体として使用し、実施例1と同様な吸上げ試験を実施したところ、試験体の1分間当たりの質量増分が小さすぎて測定できず、多孔質体の単位断面積当たりの吸収速度は求められなかった。また、吸上げ試験中、細孔の内部への液体の充満は確認できなかった。これにより、本発明において上限とする平均細孔径70μmを超える細孔により構成された多孔質体では、細孔の毛管現象による液体の吸収ができないことが確認できた。
本発明の多孔質液体保持部材は、燃料電池の燃料供給部材の用途以外にも、気体と液体を反応させるためのリアクターや触媒担体等の多種の用途への適用や、さらに気体を凝集させて液体を回収するといった用途にも適用が可能である。
1〜4.多孔質焼結体、1’.多孔質焼結体、4’.多孔質焼結体、10.可動型、11.固定型、12.スライド型、13、14.ステンレス製ピン、15.穿孔用治具、20.キャビティ、a.横孔、b.縦孔、c.開口部、d.横孔、e.凹部、f.開口部、g.リセス、h.ランド、i.テーパー形状の横孔、j.凹部、k.開口部、p.横孔
Claims (5)
- 平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、該多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、該横孔と交差して連通し前記多孔質焼結体の表面に開口する縦孔とを有し、前記横孔および前記縦孔は平均孔径100μm以上3000μm以下であることを特徴とする多孔質液体保持部材。
- 平均細孔径3μm以上70μm以下の細孔を有する金属粉末の多孔質焼結体からなり、該多孔質焼結体の肉厚方向に形成される横孔と、該横孔が開口して連通する前記多孔質焼結体の表面に形成される溝状の凹部とを有し、前記横孔の平均孔径および前記溝状の凹部の深さは100μm以上3000μm以下であることを特徴とする多孔質液体保持部材。
- 多孔質焼結体の全体空隙率が55体積%以上95体積%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の多孔質液体保持部材。
- 多孔質焼結体はチタンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の多孔質液体保持部材。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多孔質液体保持部材にアルコールを保持させることを特徴とするアルコール保持部材。
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US8715359B2 (en) | 2009-10-30 | 2014-05-06 | Depuy (Ireland) | Prosthesis for cemented fixation and method for making the prosthesis |
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-
2006
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