JP2007241699A - 位置決め制御装置および位置決め制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動モータ16に固有のDCゲイン誤差データ、増幅器22に固有のDCゲイン誤差データに基づいて個別ゲインKvIDの値が取得され、設定される。電動モータ16への個別電流指令値は、フィードフォワード制御指令値IFFとフィードバック制御指令値IFBとの和に個別ゲインKvIDを掛けた値IOUTIDとして取得されて、出力される。このように、モータ固有のDCゲイン誤差データ、増幅器固有のDCゲイン誤差データに基づいて可変ゲインの値が設定され、その値に基づいて個別電流指令値が作成されるため、駆動装置1個1個の特性のバラツキに起因する可動部材12の位置決め精度の低下を抑制することができる。
【選択図】 図2
Description
位置決め制御装置において、駆動装置の制御により可動部材の位置が制御される。予め定められた基準制御データと、可動部材の位置と移動との少なくとも一方に関するデータ(例えば、目標位置、目標移動速度、現実の位置、目標移動量等が該当し、以下、位置決め関連データと称する)とに基づいて制御指令値が作成され、それに基づいて駆動装置が制御されるのが普通である。それに対して、本項に記載の位置決め制御装置においては、駆動装置各々の特性を表す個別特性データ(固有データ)が取得され、個別特性データおよび基準制御データと可動部材の位置決め関連データとに用いて個別制御指令値が作成される。駆動装置の個別の特性が考慮されるため、駆動装置の個々の品質バラツキに起因する位置決め制御への影響を軽減することができ、可動部材の位置決め精度を向上させることができる。また、簡単な方法で、品質バラツキに起因する位置決め制御のバラツキを小さくすることが可能となる。さらに、ユーザが、位置決め制御装置の制御対象である駆動装置を交換等した場合に、交換後の駆動装置の固有の特性で位置決め制御が行われるようにすることが可能となるのであり、そのようにした場合には、駆動装置が交換されても、位置決め精度の低下を抑制することができる。
例えば、電流増幅器については、感度誤差等に起因して、DCゲインに誤差が生じ、電動モータについては、インピーダンス誤差、寸法公差、組み付け誤差等に起因して、DCゲインに誤差が生じるが、これらの誤差を表すデータを個別誤差データの一態様とすることができる。DCゲインは、直流(direct current)成分のゲインであり、電流増幅器についてのDCゲインは、例えば、出力電流(出力値)/電流指令値(入力値)[単位なし]とすることができ、電動モータについてのDCゲインは、例えば、出力トルク(出力値)/供給電流値(入力値)[Nm/A]としたり、軸方向力(出力値)/供給電流値(入力値)[N/A]としたりすることができる。
請求項8に記載のように、駆動装置が、自らの個別特性データを記憶する装置側個別特性データ記憶部を含む場合には、個別特性データ受信部においてその駆動装置から供給された個別特性データが受信される。例えば、駆動装置が位置決め制御装置に接続された場合に、そのことがトリガとなって個別特性データが供給されるようにしたり、接続後の予め定められた条件が満たされたことがトリガとなって供給されるようにしたりすること等ができる。また、個別特性データは必要な場合に受信されればよく、本体側に個別特性データを記憶しておく必要は必ずしもない。
また、請求項3に記載の位置決め制御装置においては、個別制御指令値作成部が、個別特性データで基準制御データを変更して個別制御データを作成する個別制御データ作成部を備え、その個別制御データ作成部によって作成された個別制御データを用いて、個別制御指令値が作成される。
個別特性データを用いて基準制御データが変更されて、個別基準制御データとされる。その個別基準制御データと可動部材の位置決め関連データとに基づいて個別制御指令値が作成されて、出力される。
この場合において、基準制御データ、個別制御データは、請求項5に記載のように、ゲインとすることができる。基準制御ゲインは、例えば、比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインとしたり、フィードフォワード制御用ゲインとしたり、フィードバック制御用ゲインとしたり、モータ制御用ゲインとしたり、増幅器制御用ゲインとしたりすること等ができる。基準ゲインが、個別ゲイン作成部によって、個別特性データで変更されて個別ゲインが作成されるのであるが、これら基準ゲインのうち、位置決め制御に利用されるすべてのゲインが変更されても、これらの一部のゲインが変更されてもよい。
請求項6に記載のように、フィードフォワード用のゲインが変更されるようにすることが望ましい。フィードバック制御はロバスト制御、できる限り同様の制御とし、ゲイン等が変更されないようにすることが望ましいため、フィードフォワード制御指令値に駆動装置個々の特性が反映されるようにするのである。
位置決め制御装置は、請求項10に記載のように、駆動装置を制御することにより、回路基板を保持する回路基板保持部を備えた可動部材を、予め定められ、電子部品装着装置によって回路基板に電子部品が装着される電子部品装着位置まで移動させる基板保持部位置決め制御部を含むものとしたり、請求項11に記載のように、駆動装置を制御することにより、可動部材の装着ヘッド保持部によって保持された装着ヘッドを、部品供給装置の電子部品収容位置と回路基板上の電子部品が装着される電子部品装着位置との間で移動させる装着ヘッド位置決め制御部を含むものとしたりすることができる。
回路基板保持部を備えた可動部材、装着ヘッド保持部を備えた可動部材は、X軸方向に移動可能なものであっても、X軸、Y軸方向に移動可能なものであっても、X軸、Y軸、Z軸方向に移動可能なものであってもよい。
位置決め制御装置6において、制御指令値としての電流指令値が作成されて、駆動装置8に出力される。駆動装置8は、本実施例においては、増幅器22,電動モータ16等を含み、増幅器22によって電流指令値が増幅されて(図示しない電源から供給される電流が増幅器22において電流指令値に応じた大きさに調整されて)、電動モータ16に供給される。駆動装置8は、可動部材12が、一定の加速度で加速され、次に一定の減速度で減速され、速度が0になって、所望の位置で停止するか、あるいは、最高速度に達したならばしばらくその最高速度に維持され、次に一定の減速度で減速され、速度が0になって所望の位置で停止するように、制御される。また、電動モータ16の回転角度を検出するエンコーダ18(位置検出装置:図2参照)が設けられ、可動部材12の基準位置からの電動モータ16の回転角度の累積値に基づいて、可動部材12の現時点の位置が検出される。
なお、位置検出装置としては可動部材12の位置を直接検出するリニア型のポテンショメータを設けることもできる。
記憶部30は不揮発性のメモリであり、モータ固有DCゲイン誤差データ記憶部50と、増幅器固有DCゲイン誤差データ記憶部52とを含む。
個別制御データ演算部32においては、可変ゲインKvの値がモータ固有DCゲイン誤差データ、増幅器固有DCゲイン誤差データを用いて演算により求められる。可変ゲインKvの基準値は1であるが、モータ固有のDCゲイン誤差データ、増幅器固有のDCゲイン誤差データから求められた固有値(個別ゲインKvID)が設定される。誤差が0である場合には固有値は1となる。
位置決め指令作成部38においては、可動部材12の目標位置、目標加速度等の目標位置に関連するデータが作成される。なお、これら目標位置に関連するデータは、直接供給されるようにすることもできる。
フィードフォワード制御回路34には、目標加速度(目標ストロークの2階微分値)が入力され、目標加速度が得られるようにフィードフォワード電流指令値IFFが作成されて、出力される。
フィードバック制御回路36には、可動部材12の目標位置と、実際の位置との差である偏差が入力され、偏差が0となるようにフィードバック電流指令値IFBが作成されて、出力される。
そして、フィードフォワード電流指令値IFFとフィードバック電流指令値IFBとが加えられ(IA=IFF+IFB)、加えられた値IAに可変ゲインKvが掛けられることにより、制御指令値(電流指令値)IOUTが作成されて、駆動装置8に出力される。
IOUT=IA・Kv
また、可変ゲインKvに固有値が設定された場合に作成された制御指令値を個別制御指令値(個別電流指令値)IOUTIDと称する。個別制御指令値IOUTIDは、可変ゲインKvが1である場合の制御指令値IOUT(IA)に、固有値(個別ゲインKvID)を掛けた値に対応する。
IOUTID=IOUT・KvID=IA・KvID
DCゲインは直流成分のゲインであり、周波数応答において、周波数に依存しない一定の大きさとなる比例ゲインである。電動モータ16のDCゲインは、出力値(出力トルク)/入力値(供給電流)[Nm/A](トルク定数と称することができる)で表され、増幅器22のDCゲインは、出力値(出力電流)/入力値(電流指令値)[単位なし](電流ループゲインと称することができる)で表される。電動モータ16に固有のDCゲイン誤差は、電動モータ16のトルク定数、電流ループゲインの、その型式のモータの規格値に対する誤差の和をいう。電動モータ16が直流モータである場合において、モータの型式等が同じであっても、1つ1つの磁気回路特性値は同じであるとは限らない。すなわち、同じ電流を流した場合の磁束密度の大きさが異なったり、フレミングの法則が理論通りに成立しないことに起因して流れる電流量が異なったりする。それらに起因して、トルク定数、電流ループゲインに誤差が生じ、これらの誤差の和をDCゲイン誤差と称するのである。本実施例においては、DCゲインがトルク定数とされるため、DCゲイン誤差はトルク定数誤差であると考えることができる。増幅器22に固有のDCゲイン誤差は、増幅器22を構成する回路基板に搭載された電子部品の電気的特性値に基づいて生じる。
本実施例においては、位置決め制御装置6において使用される各ゲイン等制御データは、制御対象である駆動装置8に含まれる電動モータ16,増幅器22が、規格品であるとした場合(トルク定数、電流ループゲイン等が規格値であるとした場合)に決まる大きさに設定されている。このように決められた制御データが基準制御データであり、前述の可変ゲインKvは基準値1である。
それに対して、増幅器22のDCゲイン誤差率が(−3%)、電動モータのDCゲイン誤差率が(−5%)である場合において、個別誤差データが考慮されることなく(可変ゲインKvが1である)、電流指令値10(A)が出力されると、増幅器22の出力が9.7Aとなり、電動モータ16の出力トルクが8.83Nmとなり、可動部材12を意図通りに移動させることができなくなる。
そこで、本実施例においては、モータ固有のDCゲイン誤差データ、増幅器固有のDCゲイン誤差データを用いて可変ゲインKvの値(固有値)が決定され、それに応じて個別電流指令値が作成される。
可変ゲインKvの値は、モータ固有のDCゲイン誤差率GM、増幅器固有のDCゲイン誤差率GAである場合に、式
KvID=Kv/[{(100+GM)/100}{(100+GA)/100}]
Kv=1
に従って求められる。なお、モータ固有のDCゲイン誤差率GM、増幅器固有のDCゲイン誤差率GAは、以下のように表されるデータである。
GM={(KM−KMS)×100}/KMS
GA={(KA−KAS)×100}/KAS
KM−KMS:電動モータ16のDCゲイン誤差
KMS:規格値、KM:実際のゲイン
KA−KAS:増幅器22のDCゲイン誤差
KAS:規格値、KA::実際のゲイン
なお、規格値KMS、KASは作動目標値に対応する値であり、実際のゲインKM、KAは実際の作動値に対応する値である。
ここでは、モータ固有のDCゲイン誤差率GM、増幅器固有のDCゲイン誤差率GAは、製品仕様書等に記載されている値を使用する。これらは、予めわかっており、インターフェイス42を介して入力されて、記憶部30に記憶される。例えば、インターフェイス42に入力装置(例えば、パーソナルコンピュータ)が直接接続されている場合に、そのパーソナルコンピュータを介してこれら誤差率GM、GAが入力される場合、インターフェイス42にホストコンピュータ(サーバ)が接続され、ホストコンピュータあるいは、ホストコンピュータに接続されたパーソナルコンピュータ(入力装置)を介して入力される場合等がある。これらデータの供給は、信号線を介して行われたり、無線で行われたりする。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、モータ固有DCゲイン誤差データ(DCゲイン誤差率GM)が取得され、記憶部30に記憶され、S2において、増幅器固有DCゲイン誤差データ(DCゲイン誤差率GA)が取得され、記憶される(S1,2の実行が個別制御データ取得工程に対応する)。そして、S3において、可変ゲインKvIDの値(個別制御データ、個別データ、固有値)が上述の式に従って取得され、S4において、処理部40で使用される可変ゲインKvが固有値KvIDに設定される。
以下、位置決め指令作成部38において作成された目標位置に関連するデータ、可動部材12の実際の位置データ(これらを位置決め関連データと称する)と固有値KvIDとに基づいて個別電流指令値IOUTIDが作成され、出力される(個別電流指令値の作成、出力が個別制御指令値作成工程に対応する)。
例えば、モータ固有のゲイン誤差率GMが−5%、増幅器固有のゲイン誤差率GAが−3%である場合には、個別ゲインKvIDの値は、固有値(1.085)とされる。
したがって、この個別ゲインを用いれば、個別制御指令値IOUTIDは、10.85(A)となり、増幅器22の出力電流が10.30Aとなり、電動モータ16の出力トルクが9.99Nmとなる。また、モータ固有のゲイン誤差率GMが5%、増幅器固有のゲイン誤差率GAが3%である場合には、個別ゲインKvIDの値は、固有値(0.925)となる。個別制御指令値IOUTIDは9.25(A)となり、増幅器22の出力が9.53Aとなり、電動モータ16の出力トルクが10.0Nmとなる。
このように、本実施例の位置決め制御装置においては、電動モータ16の出力トルクを目標トルクに近づけることができ、可動部材12の位置決め制御精度を向上させることができる。また、簡単な方法で、位置決め精度を向上させ得るという利点もある。
さらに、モータ固有DCゲイン誤差データ等がユーザ等によって入力可能である場合には、ユーザが電動モータを交換した場合に、モータ固有DCゲイン誤差データを新たに入力すればよく、交換後の電動モータ16の特性に応じた個別電流指令値が作成されるようにすることができる。電動モータ16を交換しても、簡単な方法で、可動部材12の位置決め精度の低下を抑制することが可能となる。
また、処理部40の可変ゲインKvの値が固有値に設定されるようにされていたが、フィードフォワード制御回路34,フィードバック制御回路36において使用される可変ゲインKvFF、可変ゲインKvFBの値がそれぞれ固有値に設定されるようにすることができる。その場合には、処理部40は不要となり、制御回路34,36は、補償器と称することができる。その場合の一例を図4に示す。
図4に示すように、フィードフォワード制御回路34には、処理部60,62が含まれる。処理部60において、フィードフォワード用ゲイン(定数)KFFを掛ける処理が行われ、処理部62において、フィードフォワード用可変ゲインKvFFを掛ける処理が行われる。同様に、フィードバック制御回路36には、処理部64,66が含まれ、処理部64において、フィードバック用ゲイン(定数)KFBを掛ける処理が行われ、処理部66において、フィードバック用可変ゲインKvFBを掛ける処理が行われる。フィードフォワード用可変ゲインKvFF、フィードバック用可変ゲインKvFBの値は、電動モータ16、増幅器22の固有DCゲイン誤差データが考慮されない場合は基準値1であるが、本実施例においては、上記実施例における場合と同様に、電動モータ16,増幅器22に固有のDCゲイン誤差率GM、GAに基づいて取得された値KvID(固有値)に設定される。
その結果、フィードフォワード制御指令値が(IFF・KvID)とされ、フィードバック制御指令値が(IFB・KvID)とされ、これらの和が、個別制御指令値IOUTIDとされる。
IOUTID =(IFF・KvID)+(IFB・KvID)=(IFF+IFB)・KvID=IA・KvID
また、上記実施例においては、フィードフォワード用可変ゲインKvFFの値もフィードバック用可変ゲインKvFBの値も変更されるようにされていたが、フィードフォワード用可変ゲインKvFFの値が変更され、フィードバック用可変ゲインKvFBの値は変更されないようにすることもできる。この場合には、可変ゲインKvFBの代わりに固定値(固定ゲイン)とされる。フィードバック制御に、DCゲイン誤差を考慮する必要性は低いため、フィードフォワード制御にのみ反映されるようにするのである。
本実施例においては、位置決め制御装置6の図4のフィードフォワード制御回路34における処理部62の可変ゲインKvFFを個別ゲインKvFFIDに変更する部分等によりフィードフォワード用個別ゲイン作成部が構成される。
個別フィードフォワード用ゲインKFFIDは、フィードフォワード用ゲインKFFの値に、DCゲイン誤差率GM、GAに基づいて求められた固有値KvIDを掛けた値とされるのであり、式
KFFID=KFF・KvID
に従って取得される。
同様に、フィードバック制御回路36に含まれる処理部72において使用されるフィードバック用ゲインKFBの値も、式
KFBID=KFB・KvID
で表される固有値とすることができる。
個別制御データ演算部32においては、図10のフローチャートで表される個別ゲイン演算プログラムが実行される。S11〜13において、上記実施例における場合と同様に、DCゲイン誤差率GM、GAが取得され、これらに基づいて固有値KvIDが求められる。そして、S14において、個別フィードフォワード用ゲインKFFID、個別フィードバック用ゲインKFBIDがそれぞれ求められ、S15において、処理部70,72に設定される。
このように、本実施例においては、フィードフォワード用ゲインKFF、フィードバック用ゲインKFBが基準ゲインとされ、個別フィードフォワード用ゲインKFFID、個別フィードバック用ゲインKFBIDが個別ゲインとされる。個別ゲインKFFID、KFBIDは、基準ゲインKFF、KFBとDCゲイン誤差率GM、GAとに基づいて取得される。位置決め制御装置6の個別ゲイン演算プログラムのS14,15を記憶する部分、実行する部分等により個別ゲイン作成部が構成される。
本実施例においては、駆動装置8にモータ固有DCゲイン誤差データ記憶部80,増幅器固有DCゲイン誤差データ記憶部82を含む記憶部(装置側個別特性データ記憶部)84が設けられる。それに対して、位置決め制御装置6には、固有データ受信部86が設けられる。例えば、位置決め制御装置6に駆動装置8が接続された場合等に、モータ固有DCゲイン誤差データ、増幅器固有DCゲイン誤差データが位置決め制御装置6に供給される。位置決め制御装置6において、固有データ受信部(個別特性データ受信部の一態様である)86において誤差データが受信されて、取得される。
固有データ受信部86において受信されたモータ固有DCゲイン誤差データ、増幅器固有DCゲイン誤差データは個別制御データ演算部32に供給されて、上記実施例における場合と同様に、個別ゲインKvIDが求められる。
また、駆動装置をリニアモータを含むものとすることができる。
DCゲインは、例えば、時間応答から推定する方法、周波数応答から推定する方法によって推定することができる。時間応答から推定する方法の一例は、論文「M.Kobayashi, T.Yamaguchi and H.hirai : Adaptive Seeking Control for Magnetic Disk Drive, JSME International Journal, Series C - 43, 300 / 305 (2000)」に記載されている。磁気ディスク装置におけるシーク制御において、加速度フィードフォワードゲインが可変とされており、目標速度と実速度との差の2乗の値が最小となるように、DCゲインが取得され、逐次的に補正される。
周波数応答から推定する方法は、「MATLABによる制御のためのシステム同定」足立 修一著 東京電機大学出版局 1996年12月発行(ISBN4-501-31860-0 C-3055)、「システム同定」相良節夫、秋月影雄、中溝高好、片山徹著 計測自動制御学会等に記載されている。位置決め制御系において、正弦波、ランダム信号等が入力された場合の、出力値(可動部材の位置)に基づいて周波数応答が取得される。周波数応答の大きさは、ゲイン特性曲線(ボード線図)で表されるが、このうちの、制御対象が慣性体として近似できる周波数帯域から、実際のDCゲインが取得される。
図1に示す機械(実際に使用される機械を小型化した機械、あるいは、モデル化した機械)において、例えば、正弦波状の電流指令値IOUTを入力した場合(周波数を変化させる)の可動部材12の位置データ(加速度データ)から、図7に示すボード線図のゲイン特性曲線が得られる。図7の一点鎖線で囲まれた領域が、制御対象である駆動装置8が慣性体として近似し得る(摩擦要素と振動要素の影響を受けない)周波数帯域である。比例ゲインであるDCゲインは周波数に依存しない値なのである。この周波数帯域から、応答Fは、おおよそ
−22≒20log10F
F≒0.079
であることがわかる。
一方、応答Fは、式
F=Km・Ka/J
で表される。
Jは、駆動装置8の総イナーシャ(慣性モーメントIの和)である。電動モータ16のロータの慣性モーメント、ボールねじ14の慣性モーメント、ボールねじ質量のモータ軸換算の慣性モーメント、可動部材12のモータ軸換算の慣性モーメントの和であり、既知である。また、Kmは、電動モータ16のDCゲイン(トルク/供給電流値)[Nm/A]であり、Kaは、増幅器22の電流ループゲイン(DCゲイン)である。DCゲイン誤差率の取得対象が電動モータ16である場合には、取得対象ではない増幅器22の電流ループゲインKaは、定数(既知)とされる。
本実施例においては、可動部材12の加速度(出力)と電流指令値(入力)との関係から応答Fが取得されるが、以下、可動部材12の加速度を回転角加速度に換算する等、電動モータ16の回転力学系に換算してDCゲイン、DCゲイン誤差率等が取得される。
上式から、そのDCゲイン誤差率取得対象の電動モータ16についての実際のDCトルクKmは、式
Km=F・J/Ka
に従って取得することができる。
それに対して、位置決め制御装置6において使用されるゲイン等の基準制御データは、基準となる電動モータ(以下、基準電動モータと称する)が接続された状態で決められる。基準電動モータは、位置決め制御装置6に最初に接続されたモータとしたり、複数個交換した後のモータとしたり、製品仕様書に記載された誤差が0であるモータとしたり、誤差が設定値以下のモータとしたりすること等ができる。したがって、基準制御データが決定されるのに用いられた基準電動モータについてのDCゲインをKmsとした場合に、誤差率取得対象の電動モータの固有のDCゲイン誤差率Emは、式
Em={(Km−Kms)/Kms}×100 =(Km/Kms−1)×100
に従って取得することができる。
誤差率取得対象が増幅器22である場合においても同様である。誤差率取得対象の増幅器22の電流ループゲインKaは、電動モータ16のDCゲインKmを定数とした場合に、式
Ka=F・J/Km
に従って取得することができ、その増幅器22の固有のDCゲイン誤差率Eaは、基準増幅器についての電流ループゲインをKasとした場合に式
Ea={(Ka−Kas)/Kas}×100=(Ka/Kas−1)×100
に従って取得することができる。
このように取得されたモータ固有のDCゲイン誤差率Em,増幅器固有のDCゲイン誤差率Eaは、位置決め制御装置6にインターフェイス42を介して入力されて、上記実施例における場合と同様に、個別ゲインKvIDの値が取得されて、設定される。
また、上記実施例においては、電動モータ16の回転力学系に換算してDCゲイン,DCゲイン誤差率等が取得される場合について説明したが、直線力学系で取得することもできる。その場合には、可動部材12の加速度がそのまま使用される。また、Jを、駆動装置8の総質量M(駆動装置8の総イナーシャを質量に換算した値)とし、Kmを電動モータ16のDCゲイン(軸方向の力/供給電流値)[N/A]とする。駆動装置8の総イナーシャJは、式
M=J・(2π/L)2
L:ボールねじピッチ(ボールねじ14の1回転当たりの軸方向の移動量)[m]
に従って総質量Mに換算することができる。
さらに、駆動装置8がリニアモータを含む場合には、駆動装置の総質量は、リニアモータの可動子(コイル等を含む)および可動部材(可動子に保持されたもの)の質量の総和となる。
図8は、部品保持ヘッドがXYロボットによって移動させられ、静止した回路基板に電子部品を装着するタイプの電子部品装着機を示す。機台126上に、X軸方向に回路基板としてのプリント配線板128を搬送する基板コンベヤ130が設けられている。基板コンベヤ130は搬送経路の途中にプリント配線板128を位置決めして保持する基板保持装置131を備えている。その基板コンベヤ130の上方にはXYロボット132が設けられている。XYロボット132は、X軸方向に移動可能なX軸スライド134と、Y軸方向に移動可能なY軸スライド136とを備えている。X軸スライド134は機台126の上面に配設された図示しない一対のガイドにより案内され、一対ずつのX軸モータ140および送りねじ142によりX軸方向に移動させられる。X軸スライド134のガイドは送りねじ142の下方に、送りねじ142と平行に配設されている。Y軸スライド136は、X軸スライド134に設けられたガイド144により案内され、Y軸モータ146と図示しない送りねじとによってY軸方向に移動させられる。Y軸スライド136には部品保持ヘッド(装着ヘッド)148が、垂直なZ軸方向に昇降可能に設けられており、図示しないガイドに案内され、Z軸モータと送りねじとにより昇降させられる。部品保持ヘッド148は、部品供給装置149から電子部品を受け取り、プリント配線板128の所定の位置に装着する。
なお、部品保持ヘッド148を昇降させる昇降装置等に本発明を適用することも可能である。
本実施例においては、X軸モータ170および増幅器197、Y軸モータ178および増幅器198、D軸モータ186および増幅器202によりそれぞれ駆動装置が構成され、位置決め制御装置200のうち個別電流指令値IOUTIDX,IOUTIDYを作成して、出力する部分等により基板保持部位置決め制御部210が構成される。
Claims (12)
- 電動モータを備えて可動部材を移動させる駆動装置を制御することにより、前記可動部材の位置を制御する位置決め制御装置であって、
前記駆動装置各々の個別の特性を表す個別特性データを取得する個別特性データ取得部と、
その個別特性データ取得部によって取得された個別特性データと予め定められている基準制御データとを用いて、その駆動装置への個別制御指令値を作成して、出力する個別制御指令値作成部と
を含むことを特徴とする位置決め制御装置。 - 前記個別制御指令値作成部が、前記基準制御データを用いて作成された制御指令値を前記個別特性データに基づいて、個別に補正し、出力する場合の個別補正係数を作成する個別補正係数作成部を備え、その個別補正係数作成部によって作成された個別補正係数と、前記基準制御データとを用いて、前記個別制御指令値を作成するものである請求項1に記載の位置決め制御装置。
- 前記個別制御指令値作成部が、前記個別特性データで前記基準制御データを変更して個別制御データを作成する個別制御データ作成部を備え、その個別制御データ作成部によって作成された個別制御データを用いて、前記個別制御指令値を作成するものである請求項1に記載の位置決め制御装置。
- 前記個別特性データ取得部が、前記駆動装置の各々について、制御指令値に対応する作動目標値と、その制御指令値で制御された場合の前記駆動装置の実際の作動を表す実作動値との差に応じた個別誤差データを前記個別特性データとして取得する個別誤差データ取得部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 前記個別制御指令値作成部が、前記個別特性データで前記基準制御データを変更して個別制御データを作成する個別制御データ作成部を備え、その個別制御データ作成部が、前記個別誤差データ取得部によって取得された前記個別誤差データで、前記基準制御データとしての基準ゲインを補正して前記個別制御データとしての前記個別ゲインを作成する個別ゲイン作成部を含む請求項4に記載の位置決め制御装置。
- 前記ゲインがフィードフォワード制御に使用されるフィードフォワード用ゲインであり、前記個別ゲイン作成部が、前記個別誤差データでフィードフォワード用基準ゲインを変更してフィードフォワード用個別ゲインを作成するフォードフォワード用個別ゲイン作成部を含む請求項5に記載の位置決め制御装置。
- 当該位置決め制御装置がデータを入力可能なインターフェースを含み、前記個別特性データ取得部がそのインターフェイスを介して入力された個別特性データを記憶する本体側個別特性データ記憶部を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 前記駆動装置が、自らの個別特性データを記憶する装置側個別特性データ記憶部を含み、前記個別特性データ取得部が、その駆動装置から供給された個別特性データを受信して取得する個別特性データ受信部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 前記駆動装置が、制御指令値としての電流指令値を増幅して、前記電動モータに出力する電流増幅器を含み、前記個別制御指令値作成部が、前記電動モータに特有の個別モータ特性データおよび前記電流増幅器に特有の個別増幅器特性データと、前記基準制御データとを用いて、個別の電流指令値を作成する個別電流指令値作成部を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 前記可動部材が、回路基板を保持する回路基板保持部を備え、当該位置決め制御装置が、前記駆動装置を制御することにより、前記可動部材を、予め定められ、電子部品装着装置によって前記回路基板に電子部品が装着される電子部品装着位置まで移動させる基板保持部位置決め制御部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 前記可動部材が、回路基板上に電子部品を装着する装着ヘッドを保持する装着ヘッド保持部を備え、当該位置決め制御装置が、前記駆動装置を制御することにより、前記装着ヘッドを、部品供給装置の電子部品収容位置と前記回路基板上の前記電子部品が装着される電子部品装着位置との間で移動させる装着ヘッド位置決め制御部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載の位置決め制御装置。
- 電動モータを備えて可動部材を移動させる駆動装置を制御することにより、前記可動部材の位置を制御する位置決め制御方法であって、
外部から供給された前記駆動装置各々の個別の特性を表す個別特性データを用いて、個別制御データを取得する個別制御データ取得工程と、
その個別制御データ取得工程において取得された個別制御データと、予め定められている基準制御データとを用いて、その駆動装置への個別制御指令値を作成して、出力する個別制御指令値作成工程と
を含むことを特徴とする位置決め制御方法。
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