JP2007238729A - 水系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】その乾燥塗膜が金属類、セラミックス、オレフィンなどに密着性、接着性、金属面への防錆性、安定性に優れた水系樹脂組成物、より詳しくは、オレフィン系材料との密着性、接着性に優れた水系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体、(B)マレイン酸由来の構成単位をその構造中に5質量%以上有する樹脂および(C)ロジン及び/またはロジン誘導体の3成分を必須成分として含有する水系樹脂組成物。

Description

本発明は粘接着または表面保護を目的に金属、セラミックス、フイルム、シート、紙、繊維又は木工品などの加工に用いられる水系樹脂組成物に関するものである。
これまで金属材料、セラミックス、各種プラスチック類、紙・繊維・木材類には様々な接着剤、塗料が使用されている。これらは現在でも多量に溶剤系材料が使用されており環境汚染の問題が指摘されている。溶剤系から水系への移行を促進するため、より性能の優れた水系樹脂が望まれてきた。従来水系樹脂として各種天然・合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、オレフィン系、スチレン系などに代表される様に、多くの水系樹脂が用途、目的に合わせ選択され使用されてきた。近年では、環境保護の観点のみならず、より多機能・高機能が水系樹脂に求められている。
そのため一般的に既存の水系樹脂材料を複数種併用して使われているが、使用する水系樹脂の持ついずれかの欠点がそのまま現われてしまい、水系樹脂の高機能化が実用段階に至っていない。一方水分散可能な架橋剤を併用し塗工後の後架橋で性能改良に腐心している。しかしながらこの方法では水系樹脂と使用可能な架橋剤の選定、使用量、架橋剤による乾燥条件、可使時間などに制限が生じ必要な膜強度、接着性、密着性などの性能向上を発現するには不十分である。特に金属シート、箔、蒸着面などの無機材料表面、さらにはオレフィン樹脂などとの接着性、密着性を得ることは極めて困難であった。
改良検討を例示するとプラスチックフイルム用にポリマレイン酸無水物を利用する方法(特許文献1)、顔料の分散作用も兼ねてのポリマレイン酸エステル、酢ビーマレイン酸エステルコポリマーを利用する方法(特許文献2)、金属用接着層に各種マレイン酸系樹脂を利用する方法(特許文献3)、オレフィン−不飽和カルボン酸系共重合体の水系分散体を配合して改質する方法(特許文献4、5)があり、いずれもオレフィン系ポリマーの特徴、マレイン酸系樹脂の特徴など、特性は見出されているものの、望まれている十分な性能を発揮する水系樹脂エマルションを得るに至っていない。本発明による研究者はさらに性能向上を期待できる塗膜形成能を有する、新たな水系樹脂組成物を求め検討を行ない本発明に至った。
特開平6−25452号公報 特表2002−521580号公報 国際公開第2004/011231号パンフレット 特開2002−371256号公報 特開2000−7860号公報
本発明が解決しようとする課題は、その乾燥塗膜が金属類、セラミックス、オレフィンなどに密着性、接着性、金属面への防錆性、安定性に優れた水系樹脂組成物を提供することにある。
また、従来の材料系は金属面との密着性は得られるがオレフィン系材料との密着性、接着性を得ることが出来ない。特にポリプロピレンフイルム、シートなどへの十分な接着性、ヒートシール性などを得ることは出来ない。さらに、従来オレフィン用には塩素化ポリプロピレンなど溶剤タイプが使用されているが、塩素問題及び溶剤使用の問題、熱に対する安定性の観点から使用は好ましくなく、又金属面に対しては錆びの原因ともなる。従って、本発明は従来の材料が有していた上記欠点を解決し、実用上の性能を兼ね備えた水系樹脂組成物を提供することをも目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体と、ポリマレイン酸、マレイン酸系共重合体、マレイン酸付加オレフィン樹脂などマレイン酸構造を有する樹脂およびロジン系化合物の3成分を必須成分とする水系樹脂組成物が安定性に優れ、またその乾燥被膜が、金属類、セラミックス、オレフィンなどとの密着性、接着性、さらに被塗工材料が金属の場合、防錆性も良好であることを見出すに至った。すなわち本発明は、(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体、(B)マレイン酸由来の構成単位をその構造中に5質量%以上有する樹脂および(C)ロジン及び/またはロジン誘導体の3成分を必須成分として含有する水系樹脂組成物に関する。
本発明の水系樹脂組成物を含有する塗料、接着剤は、厚さ0.2〜10μmの薄い塗装厚でも優れた密着性、接着性を有し、また金属への防錆性も有する皮膜を形成する安定性に優れ、実用上きわめて有用なものである。
本発明の水系樹脂組成物が上記効果を有する正確なメカニズムは不明であるが、前記3成分は相溶性に特に優れるがゆえに均質な樹脂皮膜が形成されて、カルボキシル基の有する接着作用が効果的に発揮されるためであると推定することができる。
本発明で使用する(A)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンとの共重合体は、オレフィン由来の構成単位を共重合体中に50質量%以上(即ちα,β−エチレン性不飽和カルボン酸由来の構成単位が50質量%以下)含有する重合体を指し、オレフィンと不飽和カルボン酸を公知の方法によって共重合することにより得られる共重合体である。その態様としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、不飽和カルボン酸がグラフトした共重合体などが挙げられる。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン等を挙げることができるが、エチレンが最も好ましい。
前記共重合体(A)の製造に使用できるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
前記共重合体(A)中のカルボキシル基は、水分散性、金属表面への密着性を向上させ、また一般的に行われる造膜時の、皮膜の性状向上のための後架橋の反応基として使用される。そのため、共重合体(A)中のα,β−不飽和カルボン酸由来の構成単位の比率は5〜30質量%であれば好ましく、10〜25質量%であればより好ましい。該単量体単位が少なすぎると被塗工材料の表面への密着性が不十分であり、多すぎるとブロッキング性、耐水性の低下が見られ実用的でなくなる。
また、本発明で用いるオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体は、本発明の効果である被塗工材料への密着性、接着性を損なわない範囲でその他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体中において、その他の単量体に由来する構成単位量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、最も好ましいオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体には、エチレン−アクリル酸共重合体が挙げられる。
本発明で用いるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンの共重合体の重量平均分子量は1,000〜100,000であるが、分散性の点で好ましくは3,000〜70,000である。
本発明で用いる(B)マレイン酸由来の構成単位をその構造中に5質量%以上有する樹脂(以下、「マレイン酸構造を有する樹脂」と省略することがある)の例を挙げると、(無水)マレイン酸重合体、α−オレフィンと(無水)マレイン酸との共重合体、アクリル酸‐マレイン酸共重合体等のマレイン酸系共重合体、マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。マレイン酸系共重合体について詳しく例示すると、メチルビニルエーテル(アルキルビニルエーテル)−無水マレイン酸共重合体、メタアクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−メチルビニルエーテル(アルキルビニルエーテル)−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン(α―オレフィン)−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン(α―オレフィン)−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン(α―オレフィン)−アクリル酸エステル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、インデン−無水マレイン酸共重合樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)などが挙げられ、さらにこれらの共重合体中は本発明の効果である被塗工材料への密着性、接着性を損なわない範囲でその他の単量体に由来する構成単位、例えばメタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等モノカルボン酸類、フマル酸、イタコン酸等の ジカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよい。マレイン酸変性ポリオレフィンにはマレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレンなどを例示できるがこれに限定されるものではない。
本発明で用いるマレイン酸構造を有する樹脂の重量平均分子量は500〜100万であれば好ましい。
カルボキシル基を含有する樹脂としては他に、アクリル酸系、メタクリル酸系、フマル酸系、フマル酸系、クロトン酸系、イタコン酸系樹脂などあるが本発明においては接着性、防錆性などにおいてバランスのとれた性能が得られることからマレイン酸構造を有する樹脂を使用した。しかし、目的の性能を損なわない範囲で他の酸系樹脂を必要に応じて配合してもよい。
本発明では(C)ロジン及び/またはロジン誘導体を使用する。ロジンは松に含まれる樹脂酸を精製したもので製造法により、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどに分けられる。ロジン中には主にデヒドロアビエチン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、レポピマル酸、ヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、デキストロピマル酸、イソデキストロピマル酸、パラストリン酸などが存在するが、主にジテルペン化合物を含有している。本発明で用いるロジン及びロジン誘導体を例示すると、ロジン、精製ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、これらをマレイン化したロジン、さらには各種エステル化ロジン、ロジンアルコール、ロジンアミン、ロジン変性フェノール類、アルデヒド変性ロジンなどが例示できる。さらに、天然に産出するロジン原料を使用した誘導体、誘導体にアルキレンオキサイドを付加した化合物なども含まれる。これらは市販されており、また必要に応じ各種合成も可能である。
ロジン及びロジン誘導体へのアルキレンオキサイドの付加は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2ブチレンオキサイド、1,3ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類を単独または2種以上を混合して使用し、ブロック付加、ランダム付加を行うことによって合成でき必要付加物を得ることができる。
オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(A)100質量部に対し(B)マレイン酸構造を有する樹脂は5質量部〜600質量部が好ましく、5〜400質量部がより好ましく、5〜300質量部が特に好ましい。また、(C)ロジン及び/又はロジン誘導体はオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(A)100質量部に対し1〜50質量部が好ましい。
系中のカルボキシル基を架橋剤によって架橋させることにより、塗膜の耐薬品性を向上させることができる。架橋剤としては、エポキシ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、カルボジイミド基、ブロックイソシアネート基、アジリジニル基などを有する化合物等が使用可能であるが、この他シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤類を使用でき、これらは各種市販されている。架橋剤の使用量は、得られる塗膜の耐薬品性などを向上できる点で系中のカルボキシル基に対し好ましくは0.3当量以下、さらに好ましくは0.15当量以下、特に好ましくは0.1当量以下である。架橋剤の使用量が多すぎると乳化が不十分となり実用的でない。
シランカップリング剤などのカップリング剤類を例示すると、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、中でもグリシジル基を有するシランカップリング剤が密着性、接着性、耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性などに効果がある。
架橋剤は前記樹脂成分を水系媒体に分散させた後に添加するだけでなく、分散前に添加することも可能である。架橋剤の使用量は乳化前後で合計して系中のカルボキシル基に対して0.3当量以下が好ましく、さらに好ましくは0.15当量以下である。
(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体、(B)マレイン酸構造を含む樹脂および(C)ロジン又はロジン誘導体を水系媒体に分散または溶解させるためには、系中に残存しているカルボキシル基を部分または完全中和することが好ましい。中和剤としては例えば、アンモニア水、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物等の強塩基などがあるが、塗膜の耐水性を向上させるために、乾燥時に揮発するトリエチルアミン、ジエタノールアミンが望ましい。ただし、アミンは水分散性の向上効果が小さいため、前記強塩基とアミンとの組合せを用いることが好ましい。中和剤の使用量は特に限定されないが、後述の界面活性作用を有する化合物の使用量を低減し、また水系分散体の粘度をハンドリング性の点で好適な範囲とするため、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンとの共重合体とマレイン酸構造を有する樹脂中の全カルボキシル基に対し0.2〜0.9当量が好ましく、0.2〜0.8当量がより好ましい。前記強塩基とアミンとを組み合わせて用いる場合、前記(共)重合体中の全カルボキシル基に対し、前記強塩基を好ましくは0.01〜0.3当量、アミンを好ましくは0.2〜0.8当量である。
また、樹脂粒子の平均粒子径を細かくし、さらに被塗布材料への濡れ性向上のために、(a)飽和または不飽和脂肪酸(塩)もしくはそれらの誘導体、(b)カルボキシル基を含有する高分子界面活性剤からなる群から選ばれる界面活性作用を有する化合物の1種又は2種以上を使用し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンとの共重合体とマレイン酸構造を有する樹脂を水系媒体に分散させるのが好ましい。これにより、機械安定性が飛躍的に向上しロールコーター法だけではなくスプレー塗装などにも利用可能となる。飽和脂肪酸としてはプロピオン酸、酪酸、纈草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミスチリン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸、ヘンアイコサン酸、ベーヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ドトリアコンタン酸、テトラコリアコンタン酸、セロプラスチン酸、ヘキサトリアコンタン酸、オクタトリアコンタン酸、ヘキサテトラコンタン酸や、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の天然脂肪酸が挙げられる。不飽和脂肪酸ではオブツシル酸、カプロレン酸、10−ウンデシレン酸、ラウロレン酸、フィゼテル酸、ミリストレン酸、パルミトレン酸、ペトロセリン酸、ペトロセライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレン酸、セトレン酸、エルシン酸、ブラシン酸、セラコレン酸、チメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレライジン酸、ヒラゴン酸、α-エレオステアリン酸、β-オレオステアリン酸、プニシン酸、リノレン酸、エライドリノレン酸、シュードエレオステアリン酸、モロクチン酸、α-パリナリン酸、β-パリナリン酸、アラキドン酸、クルパノドン酸、ニシン酸、リシノレン酸、リカン酸などがあり、カルボキシル基を含有する高分子界面活性剤はα-オレフィン-マレイン酸共重合体などがあるが、これらのカルボキシル基を中和し界面活性剤としての機能を持たせ、塗膜を形成する際に中和剤が揮発するようにし耐食性を劣化させないことが望ましい。したがって、使用する脂肪酸、また高分子界面活性剤はなるべく分子量の高く、耐水性のあるものが好ましい。しかしながら分子量があまり高すぎると界面活性機能が発現しなくなる。
またバリアー性向上、ブロッキング性防止のために、本発明の水系樹脂組成物に、本発明により得られる効果を損なわない範囲でワックス類を添加することができる。使用できるワックス類には大きく分けて、天然ワックス、合成ワックスの2種類がある。天然ワックスとしては例えば、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、モンタン系ワックス及びそれらの誘導体、鉱油系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなど、及びこれらにカルボキシル基を付与した誘導体を使用できる。合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの酸化物、これらにカルボキシル基を付与した誘導体などの変性ワックスも含まれる。また、エチレンとプロピレンの共重合系ワックス、エチレン系共重合体の酸化ワックスが挙げられる。更にマレイン酸を付加したワックス、脂肪酸エステル系なども例示できる。これらのワックス類は必要に応じ単独で、または配合して使用される。また他の水系樹脂、水系材料なども必要に応じ配合することができる。
塗布時の発泡防止のための消泡剤の添加も可能で、塗布後の皮膜にハジキの出ないものであれば市販されている一般的な消泡剤の使用が可能である。処理剤塗布時の界面張力を低下させ、塗工面の濡れ性を上げる目的に有機溶剤を配合することもできる。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール類、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールのエチルエーテルもしくはブチルエーテル、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず使用でき、2種類以上混合しても良い。また目的に応じ分解抑制剤、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、無機質材料、酸化防止剤、レべリング剤、増粘剤、防腐剤、着色剤、芳香剤の添加、濡れ性の改良又揮発性の改良を目的とした溶剤類、さらには必要に応じて他の水系樹脂材料など配合することもできる。
これらオレフィンと(A)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体、(B)マレイン酸構造を有する樹脂および(C)ロジン又はロジン誘導体の混合、架橋反応及び水系媒体への分散方法は特に限定しないが高粘度での反応、及び乳化が行うことが可能な装置を用いればよい。高粘度の混練装置としては公知の手段としてニーダー、バンバリーミキサー、単軸、多軸スクリュ押出機などが挙げられる。
本発明の水系樹脂組成物は、インキ、接着剤、塗料など広い分野で被塗工材質もアルミ板、鋼板、銅板など各種金属材料、セラミック類及びポリエチレン、ポリプロピレンなどのフイルム、シートなど各種オレフィン材料面などに塗工し接着剤、ヒートシール剤、表面保護剤、アンダーコート剤、絶縁コート剤、磁気コート剤、着色コート剤、各種コーチング剤などで応用され、これらは事務器材、土木建築、住宅、電気電子、機械、自動車、航空機などの広い分野で使用されることが期待される。
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
製造例1(水系樹脂組成物E−1の製造)
(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体として、エチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製「プリマコール5990I」)30質量部、(B)マレイン酸構造を有する樹脂として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(イーストマンケミカル社製「エポレンE−43」)65質量部、(C)ロジン及び/またはロジン誘導体として不均化ロジン(東邦化学工業社製「ディプロジンA−100」)5質量部を混合し、ニ軸混練押出機(東芝機械社製「TEM−26SS」;L/D=65)のホッパーより供給し、押出機の樹脂溶融ゾーンに設けた供給口より表1に記載のアルカリ水溶液を、プランジャーポンプを用いて注入した。押出機のバレル温度はアルカリ水溶液を注入する前までは170℃、その後、90℃に設定し回転数300rpmで、連続的に押し出した。その後、押し出された混合物をオートクレーブ中に仕込み固形分が40%になるように水を加え150℃、10分間、回転数500rpmで撹拌し水系樹脂組成物E−1を得た。
製造例2〜5(水系樹脂組成物E−2〜E−5の製造)
表1に示した仕込み量で製造例1と同様の方法で水系樹脂組成物E−2〜E−5を得た。固体物質はホッパーより投入し、液状物質はプランジャーポンプを用いて注入した。
比較例1 水系樹脂組成物比−1の製造
表1に示した仕込み量で実施例1と同様な手法を用いて水系樹脂組成物比−1を得た。
比較例2 水系樹脂組成物比−2の製造
1Lのオートクレーブにオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体として、エチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製「プリマコール5990I」)100質量部、エポキシ基を有する架橋剤としてジャパンエポキシレジン社製「エピコート1001」を前記エチレン−アクリル酸共重合体のカルボキシル基に対し0.02当量、アルカリ化合物を表1に示すとおり秤取り固形分が40%になるように水を加え、160℃に加熱した後1時間撹拌し水系樹脂組成物比−2を得た。
比較例3〜4
表1に示した仕込み量で比較例2と同様な手法を用いて水系樹脂組成物比−3〜同4を得た。
樹脂は樹脂使用量の合計を100とした質量部数、架橋剤、アルカリは系中のカルボキシル基に対する化合物の当量、活性剤は樹脂100に対する使用部数で表記した。
Figure 2007238729
表中の説明
(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸共重合樹脂
A−1:エチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製「プリマコール5990I」)
A−2:エチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製「プリマコール5980」)
(B)マレイン酸構造を有する樹脂
B−1:ポリマレイン酸(日本油脂社製「ノンポールPMA−50W」乾燥後使用)
B−2:α-オレフィン無水マレイン酸共重合体(三菱化学社製「ダイヤカルナ30」)
B−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(イーストマンケミカル社製「エポレンE−43」)
B−4:ポリアクリル酸(日本純薬社製「ジュリマーAC−10L」)
(C)ロジン及び/またはロジン誘導体
C−1:不均化ロジン(東邦化学工業社製「デイプロジンA−100」)
C−2:ロジンエステル(荒川化学社製「ロジングリセリンエステルA−75」)
C−3:ロジンプロピレンオキサイド付加物(東邦化学工業社製「DRA−100P」)
架橋剤
架橋剤−1:エポキシ基含有架橋剤(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート1001」)
架橋剤−2:ポリカルボジイミド(日清紡社製「カルボジライトV−04」)
架橋剤−3:シランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製「TSL8350」)
アルカリ
アミン:50%ジエタノールアミン水溶液
NaOH:48%NaOH水溶液
界面活性剤:トール油脂肪酸
(1)密着性、耐薬品性、防錆性テスト用試験板の作製
エンジニアリングテストサービス社製ノンクロム処理鋼板(0.6×70×150mm)を使用。脱脂処理はキシレン、トルエン、アセトンの混合溶液(混合比2:2:1)を使用して脱脂した。各サンプルはバーコーターにて上記試験板に乾燥後に1μmの厚さになるように塗布し、105℃に保たれた乾燥機で2分間乾燥させ、その後一日室温にて静置した。
(2)接着性(剥離強度)用試験片の作成
エンジニアリングテストサービス社製アルミ及び市販のコロナ処理PPフイルムを使用しアセトン含侵布で脱脂しバーコーターで乾燥後に10μmの厚さになるように塗布し80℃にて3分乾燥させ、その後一日室温にて静置した。
(性能評価)
<密着性>
密着性は試験片作製翌日に測定した。 試験片に1mm角の碁盤目を切り、セロハンテープ剥離で測定した。
◎ 0〜9%剥離
○ 10〜50%剥離
× 51%以上剥離
<耐水性>
試験片作製翌日評価した。スポットでイオン水を滴下し、5分後にろ紙にてラビングテストを行い状態を目視観察した。
◎ 異常なし
○ 塗膜の白化又は膨潤で剥離
× 塗膜溶解
<耐アルカリ性試験>
試験板をpH9のアルカリ水溶液に60秒浸漬し、その後、水洗、乾燥を行い、皮膜残存状態を観察した。
◎ 皮膜残存率が全面積の80%以上
○ 皮膜残存率が全面積の50%以上80%未満
× 皮膜残存率が全面積の50%未満
<接着性(剥離強度)>
引張り強度試験機で布をあてヒートシール後10cm/minの速度、180度方向で剥離強度を測定した。数値は50g単位に四捨五入した。
<防錆性>
コロイダルシリカを20質量部添加した状態でJIS−Z−2371による塩水噴霧試験を48時間行った。
試験機器:アスコット社製S120t型
◎ 白錆発生率が全面積の3%未満
○ 白錆発生率が全面積の3%以上60%未満
× 白錆発生率が全面積の60%以上
Figure 2007238729
本発明の水系樹脂組成物は(A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合樹脂、(B)ポリマレイン酸、マレイン酸系共重合体、マレイン酸付加オレフィン樹脂などマレイン酸構造を有する樹脂および(C)ロジン及び/またはロジン誘導体の3成分を必須成分とすることにより、その乾燥塗膜が被塗工材料との密着性、接着性に優れ、また防錆性、安定性に優れた水系樹脂組成物を得ることが可能となった。従って、本発明の水系樹脂組成物皮膜は金属、フィルムなどの接着、表面保護に有用である。

Claims (6)

  1. (A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体、(B)マレイン酸由来の構成単位をその構造中に5質量%以上有する樹脂および(C)ロジン及び/またはロジン誘導体の3成分を必須成分として含有する水系樹脂組成物。
  2. (A)オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体が、70〜95質量%のオレフィン由来の構成単位と5〜30質量%の不飽和カルボン酸由来の構成単位とからなる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水系樹脂組成物。
  3. 共重合体(A)を5〜95質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水系樹脂組成物。
  4. 架橋剤を用いて架橋したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系樹脂組成物を含有する塗料。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系樹脂組成物を含有する粘接着剤。

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