JP2007234058A - 動線情報を基にした施設管理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】当初は適切な施設のレイアウトであったとしても、時間の経過とともに、次第に不適切なレイアウトへと変化すると考えられる。しかし、従来技術では、現状のレイアウトの、良し悪しの状態を自動的に把握できないため、適切なタイミングで施設のレイアウトを変更できないという問題があった。
【解決手段】自動計測した移動物体の動線を使って算出した移動コストでレイアウトの良し悪しを判定する。この目的を達成するために、監視対象中の移動物体を検出して、その動線を計測する動線計測手段と、移動物体の動線情報から、移動物体が移動に費やしたコスト、すなわち移動コストを算出する移動コスト算出手段と、移動コスト算出手段が算出した移動コストが許容範囲内であるかどうか判定する移動コスト評価手段を備える。
【選択図】図1
【解決手段】自動計測した移動物体の動線を使って算出した移動コストでレイアウトの良し悪しを判定する。この目的を達成するために、監視対象中の移動物体を検出して、その動線を計測する動線計測手段と、移動物体の動線情報から、移動物体が移動に費やしたコスト、すなわち移動コストを算出する移動コスト算出手段と、移動コスト算出手段が算出した移動コストが許容範囲内であるかどうか判定する移動コスト評価手段を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、計測した人間の動線情報を基にして施設を有効的に利用するための施設管理装置に関する。
オフィスビルや工場の製造ラインなどの施設を有効利用するために、様々な施設管理技術が開発されてきている。
まずは、施設のレイアウトを最適化することで、施設の有効利用を図った技術がある。オフィスビルのレイアウトの最適化を対象としたものには、「ファシリティマネージメント・ガイドブック第2版」(日刊工業新聞社)第356ページから第359ページに紹介されているゾーニングという手法がある。ゾーニングとは、会社組織が効率的に機能するように、各部門を建物内のスペースに配置する手法である。そのために、部門間の関連の強さを表す近接関連度を調査し、近接度の高い部門同士をできるだけ近い距離に配置する。ここで、部門間で近接度が高いほど、高い頻度で移動が発生すると考えられる。したがって、この配置によって、何の価値を生み出さない移動に費やす時間を総合的に小さくすることが可能になり、オフィスビルの有効利用が実現できる。
また、工場の製造ラインのレイアウトの最適化を対象としたものには、特許文献1に示されている半導体製造ラインの構成方法がある。ここでは、できるだけ少ない設備台数の制約下で、人間や物の移動距離が短くなるように製造ラインを配置する工夫がなされている。これにより、移動に費やす時間を小さくすることが可能になり、製造ラインの有効利用が実現できる。
次に、共有施設の維持管理費用を削減したり、維持管理費用の分担の不公平感を低減するために、施設の利用に応じて利用料金を賦課するための技術もある。例えば、特許文献2においては、共有駐車場が付随する店舗ビルを想定して、客の駐車料金に対する各店舗の負担金を、各店舗の利用客の売上げ高に基づいて配分することで、各店舗ごとの不公平感をなくす手法が紹介されている。ここでは、客が駐車場から退出する時に、POS(Point Of Sale、販売時点情報管理システム)を参照して、店舗別の売上げ構成比を求め、その構成比に応じて駐車料金の店舗負担分を算出している。これにより、実態に応じた不公平感のない、料金の賦課が可能になる。
次に、人間の利便性のために、人間の動きに応じて、建物に付随するエレベータ等の設備を自動的に制御する技術もある。例えば、特許文献3においては、エレベータの呼出しを省略し、さらにはエレベータの待ち時間を短くするための技術が紹介されている。ここでは、集合住宅に設置したエレベータを対象としており、共同玄関、および各戸のドアを開閉した場合には、エレベータに乗る確率が高いと予想して、自動的にエレベータを呼び出している。これにより、ドアの開閉で自動的にエレベータを呼出せるので、人手による呼出し操作が不用になる。また、エレベータとは離れた場所で呼出せるので、エレベータの待ち時間を短くすることが可能である。
次に、清掃などの施設の維持保全業務については、維持保全計画を立てた上で、定期的に実行することが一般的に行われている。例えば、毎週月曜日と木曜日に清掃を実施することが考えられる。
また、特許文献3には、出入口を含む施設内の複数の位置にそれぞれ撮影手段を設置し、取り込んだ画像から人物像を抽出して人物個々の、時間の関数を持つ動線情報を収集する人物動線情報の収集方法及び収集装置が開示されている。この人物動線情報は、人物の属性情報と動線情報が関連付けられており、属性別の来店パターンなどを自動的に収集できる。さらに、特許文献4には、店内各所に発信器を設け、買い物籠に受信器を取り付け、客の移動軌跡を動線情報として算出し、表示する動線調査装置が開示されている。これにより、施設内の人の移動軌跡を確実に把握でき、施設内のレイアウトの変更を容易に行うことができる。
特開平6−84740号公報
特開平6−187348号公報
特開2000−191246号公報
特開平11−64505号公報
当初は適切な施設のレイアウトであったとしても、時間の経過とともに、組織が変更されるなどするため施設の利用状況が変化し、次第に不適切なレイアウトへと変化すると考えられる。そこで、現状のレイアウトの良し悪しの状態を把握して、適切なタイミングで施設のレイアウトを変更することが重要になる。しかし、ゾーニングに関する上記いくつかの従来技術では、現状のレイアウトの状態を把握するために人間を介する必要があり、手間がかかっていた。そのため、継続的にレイアウトの良し悪しを把握することが難しいため、レイアウト変更の適切なタイミングを掴むことが難しいという問題があった。
また、特許文献1に示されている工場の製造ラインのレイアウトに関する上記従来技術についても、レイアウトの検討段階で利用する技術であるため、レイアウト実施後の改善については考慮されていなかった。そのため、レイアウト実施後にレイアウトの状態を把握することができないため、適切なタイミングで施設のレイアウトを変更することができないという問題があった。
また、特許文献2に示されている駐車料金の賦課に関する上記従来技術については、POS利用を前提としているため、オフィスビルのようにPOS利用が非現実的な場合には適用できないという問題があった。
さらに、特許文献3に示されているエレベータの自動呼出しに関する上記従来技術は、エレベータ呼出しの原因として、ドアを開閉するといった単独の事象しか考慮していない。そのため、ドアを開けると高い確率でエレベータに乗るといった住民の行動パターンが限定できる集合住宅にしか適用できないという問題があった。
さらに、施設の維持保全業務の実行に関する上記従来技術については、利用者が多い少ないといった設備の利用状況を考慮せずに、定期的に維持保全業務を実施するため次のような問題が発生していた。この問題とは、例えば、維持保全が必要なのに実施されずに、美観・安全上の問題を発生させたり、逆に維持保全が不要なのに実施して無駄コスト要因となるものであった。
また、人物の動線情報の自動的収集を行う、特許文献3や特許文献4に記載の方法は、不特定多数の者を監視対象としているため、移動体特有の属性を踏まえた詳細な動線情報の収集は困難であり、その情報の利用形態は施設内のレイアウト改善など限られた用途となる。
本発明の目的は、特定の者すなわち監視対象の施設に関連の深い従業員や居住者のような特定の者を監視対象とし、利用価値の高い移動コスト情報を提供できる施設監視装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、施設に関係の深い特定の者の動線情報収集を通して現状のレイアウトの良し悪しの状態を監視し、適切なタイミングでレイアウトの変更を利用者に促すことのできる移動コスト監視機能を備えた施設監視装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、施設の利用状況に応じて、施設の適切な維持保全業務を計画する施設保全視装置を提供ことにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、監視対象となる施設内の移動物体を検出して該移動物体の動線を計測する動線計測手段と、該動線情報から管理のための管理情報を生成する管理情報生成手段とを備えた施設管理装置において、前記管理情報生成手段は、前記移動物体を特定する移動物体特定手段と、前記動線情報から前記移動物体が移動に費やしたコストを算出する移動コスト算出手段とを備えており、前記移動コスト算出手段は、前記移動コストとして、特定された前記移動物体固有の時間単価と、前記移動に要した時間とに基づいて前記移動コストを算出することを特徴とする。
さらに、上記の目的を達成するために、本発明では、監視対象中の移動物体を検出して、その動線を計測する動線計測手段と、計測した動線データと施設の場所・維持管理費用などの施設固有の情報である施設データから利用者・利用時刻等の施設の利用に関係する情報である施設利用状況データを算出する施設利用状況算出手段と、算出した施設利用状況データ、施設データ、および社員と部署の所属関係を表す組織データから、賦課する金額と賦課先の部署の関係を示す賦課料金データを算出する賦課料金算出手段と、会社の経理処理を一括して担当する経理処理手段を備える。
さらに、上記の目的を達成するために、本発明では、監視対象中の移動物体を検出して、その動線を計測する動線計測手段と、計測した動線データが、エレベータを呼び出す条件を表す動線履歴パターンに適合するかどうかを判定し、適合する場合には、エレベータを呼出す動線履歴照合手段と、実際にエレベータを制御するエレベータ制御手段を備える。
さらに、上記の目的を達成するために、本発明では、監視対象中の移動物体を検出して、その動線を計測する動線計測手段と、動線データから、施設の空間的な利用頻度を表すヒストグラムデータを算出するヒストグラム算出手段と、算出したヒストグラムデータから得られる利用頻度から、その頻度に応じた保全計画を作成するヒストグラム評価手段と、実際に保全計画全体をとりまとめる施設保全計画手段を備える。
本発明は、特定の者すなわち監視対象の施設に関連の深い従業員や居住者のような特定の者を監視対象とすることにより、レイアウトの良し悪しの状態を、人間の総動線長、すなわち移動コストで定量的に把握することが可能であり、移動コストが許容値を超えた場合には本装置の利用者に警告を出すことができる。したがって、本装置の利用者は、適切なタイミングで施設のレイアウトを変更することが可能になる。
また、人間の動線情報を基にして、施設利用に対する費用を、利用者の所属する部署に対して賦課することが可能になるので、POSが設置していない建物でも適用可能となる。
さらに、人間の動線情報を基にしてエレベータの呼出し条件を自由に設定することが可能になり、人間の行動パターンが限定される集合住宅以外にも適用可能になる効果がある。
さらに、人間の動線情報を基にして、多くの人間に利用されている場所を特定して、その場所を重点的に維持管理できるようになるので、効率的な維持管理が可能になる効果がある。
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明における移動コスト監視装置を含む施設管理装置全体の機能構成を示すものである。監視対象100は、本装置で監視する実世界の領域であり、本領域中に存在する人間などの移動物体が監視の対象となる。施設管理装置は、監視対象となる施設内の移動物体100を検出してこの移動物体の動線を計測する動線計測手段102と、この動線情報から管理のための管理情報を生成する管理情報生成手段とを備えている。そして、管理情報生成手段は、移動物体を特定する移動物体特定手段、動線情報から移動物体100が移動に費やしたコストを算出する移動コスト算出手段106、算出されたコストを所定の基準で評価する移動コスト評価手段108、移動コスト評価毛塚に基づいて表示や、警告、制御などを行う制御手段や、施設配置最適化手段及び出力手段112等を備えている。
移動物体特定手段は、後述するように、ビデオカメラで撮影され処理された移動物体100の映像上の特徴を予め保持されたデータと照合したり、ICカードのデータを利用したり、PHS端末を利用するなどの方法で、移動物体100の人物を特定する。
動線計測手段102は、監視対象100中の移動物体を検出して、その動線を計測し、結果を動線データ104として蓄積する。移動コスト算出手段106は、蓄積された動線データ104から、移動物体が移動に費やしたコスト、すなわち移動コストを算出する。移動コストとしては、移動物体の総移動時間、総移動距離などを考えることができる。移動コスト評価手段108は、移動コスト算出手段106が算出した移動コストと、あらかじめ本装置の利用者が設定した移動コスト許容値110とを比較して、その移動コストが許容範囲内であるかどうかを判定する。出力手段112は、ディスプレイなどの表示装置であり、移動コスト評価手段108が現在の移動コストが許容範囲を超えたと判定した場合に、本装置の利用者に対して注意を促すために、映像、音声などを出力する。
なお、ここで、移動コスト評価手段108の評価結果を出力手段112で出力するのではなく、移動コスト算出手段106の算出した移動コストの値を出力手段112で直接出力するようにしてもよい。
図2は、本発明における移動コスト監視装置のハードウェア構成の一例を示すものである。本発明の移動コスト監視装置は、一式の計算機システム200上に実現される。計算機システム200は、中央演算装置(CPU)201と、主記憶装置202と、外部記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、動線計測装置206と、バス207から構成される。中央演算装置201は、計算機システム200全体を制御する装置である。ここでは、主記憶装置202に記憶された動線計測手段102、移動コスト算出手段106などの機能を実現するプログラムに従い、本発明の移動コスト監視装置の機能を提供する。主記憶装置202は、RAM(Random Access Memory)などデータのアクセスが高速な記憶装置であり、中央演算装置201用の制御プログラムやデータを一時的に格納することができる。ここには、外部記憶装置203から、動線計測手段102、移動コスト算出手段106などの機能を実現するプログラム類を読込み保存する。必要に応じて、これらのプログラムの実行に必要な動線データ104等のデータ類も、外部記憶装置203から読込み保存することも可能である。
外部記憶装置203は、磁気ディスクなど主記憶装置202に比べてデータアクセスが低速であるが大容量の記憶容量を持つものであり、中央演算装置201用の制御プログラムやデータを半永続的に格納する装置である。ここには、動線計測手段102、移動コスト算出手段106などの機能を実現するプログラム類と、これらのプログラムの実行に必要な動線データ104等のデータ類を保存する。入力装置204は、キーボード、マウスなど本装置の利用者の装置への操作を受け付ける装置である。出力装置205は、CRT(陰極線管)ディスプレイ、液晶ディスプレイなど監視結果を映像で表示する装置、またはスピーカなど分析結果を警告音のような音声で知らせる装置であり、出力手段112を実現する。
動線計測装置206は、無線、ICカード、ビデオカメラなど人の移動を計測する装置であり、動線計測手段102を実現する。計測した動線データ104は、主記憶装置202、または外部記憶装置203に格納する。そして、これらの装置は、データを高速にやり取りするバス207で接続されている。なお、バス207として、データ転送速度が速くはないイーサネット(登録商標)などのネットワークや他の接続手段を利用しても構わない。
図3では、フローチャートを使って図1に示した本発明による移動コスト監視装置の処理全体の流れを説明する。処理全体は、大きく二つに分けられる。一つは、動線データの収集処理、そして、もう一つは動線データの評価処理である。これら二つの処理は、並列的に、非同期で処理される。これらの二つの処理を順に説明する。まずは、図3(a)に示した動線データの収集処理である。これは、監視対象100中の移動物体の動線を得るための処理である。まず、ステップ300では、ステップ302の処理を所定の頻度で繰り返す。所定の頻度とは、例えば一秒間に一回といったものである。ステップ302では、動線計測手段102を使って、移動物体の位置を計測する。以上のステップ300〜ステップ302の処理により、移動物体の動線を近似的に表現する点群を得ることが可能になる。この結果は動線データ104として格納する。
次は、図3(b)に示した動線データの評価処理である。これは、計測によって得られた動線データ104を評価するための処理である。ステップ350では、本装置の利用者に移動コスト許容値110を設定させる。ステップ352では、ステップ354からステップ358の処理を所定の頻度で繰り返す。所定の頻度とは、例えば一ヶ月に一回といったものである。ステップ354では、所定の期間の動線データを用いて移動物体が移動に費やした移動コストを算出する。ステップ356では、算出した移動コストが許容値内かどうか判定する。具体的には、算出した移動コストが移動コスト許容値110よりも大きくなった場合に、許容値を超えたと判定する。ステップ358では、ステップ356で移動コストが許容値を越えたと判定した場合には、出力手段112を利用して、本装置の利用者に警告を発する。
次に、図4を使って、動線計測装置206としてビデオカメラを利用した装置の一例を説明する。まず、建物内に、ビデオカメラで撮影できない場所、すなわち死角ができるだけ生じないように、複数のビデオカメラを設置する。そして、これら複数のビデオカメラを連携させて、映像中の移動する人間を画像処理によって追跡し、動線を検出する。例えば、人間401が動線402に沿って移動した場合、人間401を撮影するビデオカメラ410、ビデオカメラ411、ビデオカメラ412、ビデオカメラ413を連携して、映像上で人間401を追跡する。ここで、カメラで撮影した物体の映像上の位置から、その物体の建物内での実際の位置が特定できるようにしておけば、映像情報から動線402を求めることが可能になる。
なお、一般に画像処理を利用する場合は、ビデオカメラで撮影した不特定多数の人を対象として人間や移動手段を特定することは難しい。しかし、本発明のように、特定すべき人間や移動手段が監視対象の施設などに関連の深い特定の者に限定されている場合は、例えば、特開2000-200357号公報に記載されているような人物画像から特徴ベクトルを生成し、対象リストの各人物の属性情報や特徴ベクトルとを照合するような方法を利用して、特定することができる。すなわち、特定すべき人間の映像上の特徴をデータベースにあらかじめ格納しておき、動線計測時に撮影した人間の映像上の特徴と照合して、最も特徴が一致する人間を特定する。
次に、図5を用いて、動線計測手段102が計測する動線データ104の一例を説明する。動線計測手段102は、ある時間間隔で移動物体の位置を連続的に検出するので、人間が移動した場合には、その動線上の連続した複数の点が測定される。例えば、人間401が動線402に沿って移動した場合には、動線上の点列、すなわち点500、点501、点502、点503、点504が測定される。ここでは、これら複数の点列で、動線を近似的に表現することにする。近似の精度を上げるには、動線計測手段102の計測間隔を密にしたり、スプライン補間などの一般的に用いられる自由曲線の表現方法を採用すればよい。
次に、図6を用いて、動線データを計算機で扱う場合のデータ構造の一例について述べる。テーブル600は、動線計測手段102で計測した複数の動線データ104を格納するテーブルである。このテーブルの各行すなわちレコードに、計測した一つの動線データを格納する。レコード602は、動線402に対する動線データを格納している例を示している。このレコードには、計測した動線データを特定するためのユニークな番号である動線ID、計測対象の人間を特定するユニークな番号である従業員ID、そして、動線上の点の集合である点列の情報が含まれている。なお、必ずしも、これらの情報のすべてを格納する必要はない。後の処理に利用しない情報などは保持しなくても良い。逆に、これらの情報以外にも、点列を計測した時刻など、動線に付随する情報を必要に応じて格納してもよい。
次に、図19を使って、動線計測装置206の別の一例を説明する。これは、コードレス電話機の一実現形態であるPHS(Personal Handyphone System)を利用した方法である。PHSとは、人間が携帯するPHS端末と建物内に配置した複数の基地局で通信することで、音声通話を可能にする装置である。ここで、PHS端末は、各々の基地局が与える電界強度を知ることができる。通常、PHS端末と基地局の距離が近いほど電界は強くなるので、PHS端末に最も強い電界強度を与える基地局の近くに、PHS端末が存在することができる。ここで、基地局は建物内に固定されているので、その場所は事前に把握可能であり、従って、PHS端末のおおよその位置も特定できる。
この仕組みを利用して、PHS端末の位置を逐次検出することで、PHS所有者の動線を把握できる。なお、PHS端末ごとに固有の識別子を持っているため、PHS端末を特定することができる。従って、PHS端末の所有者をあらかじめデータベース化しておけば、PHS端末を所有する人間も特定することができる。
図19は、PHS端末1900を所有する人間401が動線402に沿って移動した場合の動線を、PHSを使って計測している例を示している。PHS端末1900を持つ人間401が、設計A1920という部屋にいる場合には、同じ部屋に設置されている基地局1910から受ける電界が最も強くなると考えられるので、基地局1910の近くに人間401が存在すると認識できる。同様に、人間401が、通路1922、経理1924という部屋にいる場合には、それぞれ基地局1912、基地局1914の近くに人間401が存在することが分かる。従って、人間は、基地局1910の近くから、基地局1912の近くに移動して、最終的に基地局1914の近く行ったことが分かる。
ここで、基地局1910の近くといった表現は人間にとって理解しにくいので、便宜上、基地局が属する領域の名前をもって、その場所を表すことにする。つまり、基地局1910の近くに人間401が存在すると認識した場合は、設計A1920という部屋に存在すると表現する。このように表現することで、人間401は、設計A1920から、通路1922に移動し、最終的に経理1924に移動したと表現できる。ここでは、これを人間401とみなす。
なお、ここにあげた装置以外にも、ICカードとICカードリーダを使った入退出管理システムでも、同様に動線計測が可能である。これは、部屋の出入り口にICカードリーダを設置しておき、人間がその部屋を出入りするときに、各人に持たせておいたICカードをICカードリーダで読み込ませることで、入退出を管理するものである。誰が、いつ、どの出入り口を通ったのかを知ることができるので、PHSを使った動線計測装置と206と同様に、動線を得ることができる。
次に、図20を用いて、図19の装置を使って計測した動線データを計算機で扱う場合のデータ構造の一例について述べる。テーブル2000は、動線計測手段102で計測した複数の動線データ104を格納するテーブルである。このテーブルの各行すなわちレコードに、計測した一つの動線データを格納する。レコード2002は、動線402に対する動線データを格納している例を示している。このレコードには、計測した動線データを特定するためのユニークな番号である動線ID、計測対象の人間を特定するユニークな番号である従業員ID、そして、動線上の点の集合である点列の情報が含まれている。ここでは、従業員IDが335である人間が、設計A、通路、経理の順に移動していることを表している。なお、必ずしも、これらの情報のすべてを格納する必要はない。後の処理に利用しない情報などは保持しなくても良い。逆に、これらの情報以外にも、点列を計測した時刻など、動線に付随する情報を必要に応じて格納しても良い。
図7は、図3のステップ354に示した移動コストの算出処理の一例を詳細に説明するフローチャートである。この例では、移動コストとして、所定の期間内に移動物体が移動した距離の総和を考えている。この値が大きければ、価値を生み出さない移動という行為に費やす時間が大きいので、無駄が多いと考えることができる。ステップ700では、今から算出する移動コストの値を格納する変数COSTを0にクリアする。ステップ702では、所定の期間内に計測された全動線について、ステップ704からステップ706の処理を繰り返す。ステップ704では、処理対象の動線について、その長さ、つまり動線長Lを求める。ステップ706では、変数COSTに処理対象の動線長Lを加えた値を、新たに変数COSTの値とする。以上の処理によって、所定の期間内に移動物体が移動した距離の総和を変数COSTに得ることができる。
なお、ここでは、移動コストとして、移動距離の総和を考えたが、他にも、移動時間の総和を考えても良い。さらには、移動物体によって単位時間当たりのコスト、例えば時給が異なることを考慮に入れ、移動物体の単位時間辺りのコストとその移動物体の移動時間の総和を移動コストと考えてもよい。
さらには、移動手段によって単位時間または単位距離当たりのコストが違うことを考慮に入れ、動線に重み付けをして移動コストを算出してもよい。
図11には、エレベータ1100とエスカレータ1102を利用して移動した動線1150を示している。動線1150の場合、区間BCはエレベータ1100を利用した移動、区間DEはエスカレータ1102を利用した移動である。そして、これら以外の区間は徒歩による移動である。それぞれの移動手段によって、ランニングコストや保守費用が異なるため、移動に必要なコストが異なると考えられる。そこで、動線1150の移動コストを、移動手段を利用する場合のコストの距離単価に着目して、(区間ABの長さ+区間CDの長さ+区間EFの長さ)×徒歩の距離単価+区間BCの長さ×エレベータの距離単価+区間DEの長さ×エスカレータの距離単価、と移動手段に応じて移動距離を重み付けして算出することも可能である。また、動線1150の移動コストを、移動手段を利用する場合のコストの時間単価に着目して、(区間ABの移動時間+区間CDの移動時間+区間EFの移動時間)×徒歩の時間単価+区間BCの移動時間×エレベータの時間単価+区間DEの移動時間×エスカレータの時間単価、と移動手段に応じて移動時間を重み付けして算出することも可能である。
ここで、同じ移動手段を用いている場合でも、場所に応じて重み付けし移動コストを算出してもよい。例えば、同じ徒歩による移動の場合でも、多くの人が行き交う場所であるほど、歩きにくいと考えることができので、重みを大きくすればよい。同様に、移動物体の時給、年齢、役職、職種といった移動物体固有の情報で重み付けして移動コストを算出してもよい。また、曲がった動線は直進するよりも歩きにくいと考えて、動線の曲がり具合を示す曲率で重み付けして移動コストを算出してもよい。
図8は、図7のステップ704に示した動線長の算出処理の一例を詳細に説明するフローチャートである。この例では、動線データを構成する線分の長さの総和を求めることで近似的に動線長としている。ステップ800では、今から算出する動線長の値を格納する変数Lを0にクリアする。ステップ802では、動線データを構成する線分の数だけ、ステップ804からステップ806の処理を繰り返す。ここで、動線データを構成する点列の数をnとすると、線分の数はn−1となる。ステップ804では、処理対象の線分について、その長さSを求める。ステップ806では、変数Lに処理対象の線分長Sを加えた値を、新たに変数Lの値とする。以上の処理によって、動線長を変数Lに得ることができる。
次に、図9を使って、出力手段112の表示例を説明する。この図は、移動コストが許容値を超えた場合に出力する画面の例を示している。画面には、警告を表す文字列と、算出された移動コストと、移動コストの許容値を表示している。本装置の利用者は、この警告を見ることで、現状の移動コストが予期しない状態にあることを知ることができ、レイアウトを変更するなど対策を取ることができる。なお、この例では文字だけを使って表示したが、他に図形等を使ってビジュアルに表示しても良い。また、音、風、においなど他の表示方法を使っても構わない。
このような構成をとることで、移動物体が移動に費やしたコストを定量的に算出することができ、また、そのコストが許容範囲を超えた場合には本装置の利用者に警告を発することもできる。したがって、本装置の利用者は、適切なタイミングで施設のレイアウトを変更することが可能になる。
上記の実施形態では、移動コストが許容範囲を超えた場合に、警告を発するだけであったが、レイアウトの変更案を本装置の利用者に提示してもよい。この場合、図1に示した機能構成に対して、図10に示すように施設配置最適化手段1000を新たに設ける。施設配置最適化手段1000は、移動コスト評価手段108が現在の移動コストが許容範囲を超えたと判定した場合に、移動コストが最小となるようにレイアウトを最適化した案を作成し、結果を出力手段112に出力する。レイアウトを最適化するためには、例えば、レイアウトの全ての組み合わせについて移動コストをシミュレーションにより予測して、移動コストが最小になるレイアウトを求めればよい。移動コストをシミュレーションするに当たっては、実測した動線データから施設間の関連度を算出し、あるレイアウトに対して、関連度に応じた確率で施設間に動線を模擬的に発生させ移動コストを算出すればよい。
次に、図25を使って、施設間の関係の深さを表す施設間の関連度の例を説明する。これは、計測した動線情報から施設から施設への移動頻度を求め、所定の時間で割り時間当たりの移動頻度を算出することで得られる。所定の時間を1分とすると、要素2500からは、総務から経理への動線は、1分間に0.1回の割合で発生すると考えることができる。この値が大きいほど、両施設間に多くの動線が発生することを表し、両施設間の関係が深いことを意味する。
このような構成をとることで、移動コストが許容範囲を超えレイアウトを見直すべきタイミングで、レイアウトの修正案が示されるので、本装置の利用者は、即座にレイアウト変更の計画を立てることが可能になる。
次に、本発明の別の実施の形態について、図12を用いて説明する。これは、動線情報から算出した施設の利用状況を基にして、施設の利用料金を賦課する装置である。オフィスビルを想定した場合、エレベータ、会議室、トイレなど共有施設が多数存在する。これらの共有施設を維持するには、保守料金、清掃費、光熱費などの維持管理費用が必要になる。この費用を、できるだけ不公平感を少なくするために、施設の利用状況に応じて、賦課する仕組みを本発明は提供する。例えば、社員がエレベータ等の共有施設を利用するたびに、その社員が所属する部署に対して、施設の維持管理を目的とした利用料金を賦課する。以下、図12を使って機能構成を説明する。計測対象100、動線計測手段102、動線データ104は、図1で説明したものと同じであるので、説明は省略する。施設利用状況算出手段1200は、動線データ104と施設データ1202から、施設利用状況データ1204を算出する。施設データ1202とは、維持管理に費用がかかる施設について、その場所、維持管理費用などの施設固有の情報を表すものである。また、施設利用状況データ1204とは、利用者、利用時刻等の施設の利用に関係する情報である。
ここで、ある施設に人間がある時間以上、近づいた状態を保持し続けた場合に、その施設を利用したと考えることにすれば、この情報と動線データ104とを照らし合わせることで、施設の利用状況が算出可能になる。賦課料金算出手段1206は、算出した施設利用状況データ1204、施設データ1202、および社員と部署の所属関係を表す組織データ1208から、賦課する金額と賦課先の部署の関係を示す賦課料金データ1210を算出する。経理処理手段1212は会社の経理処理を一括して担当する手段であり、賦課料金データ1210を基にして、施設の利用者の所属する部署に対して、施設使用料金を賦課する手続きをとり、その結果を経理データ1214に格納する。なお、ここでは、施設の利用者の所属する部署に対して利用金を賦課する形態を説明したが、直接、利用者に対して賦課しても構わない。
図21では、施設利用状況データ1204を計算機で扱う場合のデータ構造の一例について述べる。テーブル2100は、施設利用状況算出手段1200で算出した複数の施設利用状況データ1204を格納するテーブルである。このテーブルの各行すなわちレコードに、算出した一つの施設利用状況データ1204を格納する。例えば、レコード2102には、施設の利用者を表す従業員ID、利用した施設、そして、利用の開始・終了時刻の情報が含まれている。なお、必ずしも、これらの情報のすべてを格納する必要はない。逆に、これらの情報以外にも、施設の利用状況に付随する情報を必要に応じて格納しても良い。
図22は、賦課料金算出手段1206の処理の流れを説明するフローチャートである。ステップ2200からステップ2202の処理は、施設ごとの利用頻度を算出する処理であり、後で賦課料金を算出するために利用する。ステップ2200は、所定の期間内の全ての施設利用状況データについて、ステップ2202の処理を繰り返すことを示す。ステップ2202では、処理対象の施設利用状況データを基にして、施設ごとの利用頻度をカウントする。続いて、ステップ2204からステップ2210の処理は、実際に、施設の利用料金、およびそれを賦課する部署を決めるための処理である。ステップ2204は、所定の期間内の全ての施設利用状況データについて、ステップ2206からステップ2210の処理を繰り返すことを示す。
ステップ2206では、処理対象の施設利用状況データについて、施設の利用料金を算出する。施設の利用料金としては、所定の期間において施設を維持するために必要な費用を、施設の利用頻度で割ったものなどが利用できる。例えば、1ヶ月あたり100万円の維持管理費用が必要な施設において、ある1ヶ月の間に10000回の利用があったとするならば、1回あたりの利用料金は100円と考えることができる。ステップ2208では、ステップ2206で算出した利用料金を賦課すべき部署を決定する。このためには、組織データ1208から、施設の利用者の所属する部署を検索すればよい。ステップ2210では、算出した利用料金、および賦課先の部署の情報を賦課料金データ1210に格納する。
このような構成を取ることで、施設利用に対する費用を、利用者の所属する部署に対して賦課することが可能になるので、POSが設置していない建物でも適用可能となる。
本発明は、図12で説明したオフィスビル以外にも、複数の小売点が入居する店舗ビルについても応用可能である。これの実現形態の一例を図13に示す。オフィスビルの場合は、施設の利用料金を、施設の利用者の属する部署に賦課していたが、店舗ビルの場合は、客が買い物のために立ち寄った店に対して賦課するのが合理的と考えられる。この場合、複数の店舗に立ち寄ることが多いと考えられるので、賦課先が複数となる。
以下、図13を使って機能構成を説明する。店舗利用状況算出手段1300、店舗データ1302、店舗利用状況1304以外は、図12で説明したものと同じであるので、説明は省略する。店舗利用状況算出手段1300は、動線データ104と店舗データ1302から、店舗利用状況データ1304を算出する。店舗データ1302とは、店舗の場所などの店舗固有の情報を表すものである。また、店舗利用状況データ1304とは、店舗への客、店舗の利用時刻等の店舗の利用に関係する情報である。ここで、ある店舗内に人間がある時間以上留まっていた場合に、その店舗を利用したと考えることにすれば、この情報と動線データ104とを照らし合わせることで、店舗の利用状況が算出可能になる。賦課料金算出手段1206は、算出した店舗利用状況データ1304と施設利用状況データ1204、および店舗データ1302と施設データ1202から、賦課する金額と賦課先の店舗の関係を示す賦課料金データ1210を算出する。なお、ここでは、客の利用したの店舗に対して利用金を賦課する形態を説明したが、直接、利用者に対して賦課しても構わない。
このような構成を取ることで、施設利用に対する費用を、利用者が立ち寄った店舗に賦課することができるので、施設の利用料金の賦課先が複数存在する場合にも、料金の賦課が可能になる。
なお、図12と図13では異なる利用料金の賦課形態を説明したが、この両者を混合した形態も考えられる。例えば、店舗ビルを想定した場合、客に対する料金賦課は、図13で示した賦課形態を適用し、店舗の従業員に対する料金賦課は、図12で示した賦課形態を適用するのである。このような構成を取ることで、より実態に即した、施設の利用料金の賦課が可能になる。
次に、本発明の別の実施の形態について、図14を用いて説明する。これは、動線の履歴情報に基づいて、エレベータ、自動ドア、空調などの建物の設備を制御する装置である。あるオフィスビルでは、営業の人は、外出する前に、ロッカーに立ち寄る可能性が高い傾向が観察されことがあるかもしれない。
この場合、図15に示すように、営業A1500からロッカーE1502に移動する動線1520の後に、ロッカーE1502から通路G1504に移動する動線1522が測定された場合には、次にエレベータ1506を利用する確率が高いと考えて、エレベータ1506を自動的に呼び出すものである。
以下、図14を使って機能構成を説明する。これは、特定の動線履歴を計測した場合に、エレベータ自動的に呼び出す場合の例である。前出の動線計測手段102は、監視対象1400中の移動物体を検出して、その動線を計測し、結果を動線データ104として蓄積する。動線履歴パターン1402は、エレベータを呼び出す条件を示すものである。これは、人間が人手で設定しても良いし、過去の動線データ104から傾向を分析することで、計算機を用いて自動生成してもよい。動線履歴照合手段1404は、計測した動線データ104が、動線履歴パターン1402に適合するかどうかを判定する。適合すると判定した場合にはエレベータ制御手段1406を使って、エレベータ1408を呼び出す制御信号を発する。
次に、動線履歴照合手段1404による動作履歴の照合の手順を図16を使って説明する。テーブル1600は、動線計測手段102で計測した複数の動線データ104を格納するテーブルであり、図20で説明したものと同じ形式である。ここで、動作履歴パターン1610は、場所A1612、場所G1614、場所E1616、場所G1618の順に移動した動線を検索対象とすることを表している。テーブル1600中で、動作履歴パターン1602に適合する動線データは、動線レコード1604である。従って、この動線データが、動線履歴照合手段1404の照合結果となる。
なお、ここでは、動線履歴パターン1610の各要素と、動線データの点列を一対一で照合していたが、曖昧性をもたせるために計算機を利用した文字列検索に一般的に利用される正規表現による照合を用いてもよい。例えば、人間がAGEGと移動した場合でも、移動速度によって測定される動線は、AAGEG、AGGEGといった具合に、同じ場所に複数回留まった形になることがある。ところが、ここで重要なのは、AGEGという順序関係だけであり、同じ場所に留まっている回数は考慮する必要がない。この場合、動線履歴パターン1610を正規表現で“A+B+E+G+”と表現して、テーブル1600を検索すれば良い。ここで“+”は直前の文字を一回以上繰り返すことを表す。つまり、このパターンは、Aを一回以上繰り返し、Bを一回以上繰り返し、Cを一回以上繰り返し、Dを一回以上繰り返した動線に適合する。
この例では、エレベータの呼び出しを自動化していたが、他にも、エレベータの運転モードを変更することも考えられる。例えば、診療所からエレベータに移動してきた人に対しては、病気などで通常の動作ができないと考えて、エレベータのドアが開いている時間が長くなる車椅子モードにすることも可能である。また、動線算出した移動速度が遅い場合にも、通常の動作ができないと考えて、車椅子モードにすることも可能である。
このような構成を取ることで、人間の動線情報を基にしてエレベータの呼出し条件を自由に設定することが可能になり、人間の行動パターンが限定される集合住宅以外にも適用可能になる。
次に、本発明の別の実施の形態について、図17を用いて説明する。これは、動線に基づいて、部屋や通路など空間的に広がりをもつ施設において特に利用頻度が高い場所を特定して、その部分を重点的に維持管理するための装置である。例えば、オフィスビルの通路を考えてみると、多くの人が通る場所は、そうでない場所に比べて、多くの汚れが発生すると考えられる。従って、その場所を特定して、優先的に清掃することで、少ない清掃費用で、効率的に清掃業務を遂行可能になる。以下、図17を使って機能構成を説明する。計測対象100、動線計測手段102、動線データ104は、図1で説明したものと同じであるので、説明は省略する。ヒストグラム算出手段1700は、動線データ104から、施設の空間的な利用頻度を表すヒストグラムデータ1702を算出する。ヒストグラム評価手段1704は、算出したヒストグラムデータ1702から得られる利用頻度から、その頻度に応じた保全計画を作成して、実際に保全計画全体をとりまとめる施設保全計画手段1706に出力する。作成する保全計画の具体例としては、例えば、利用頻度が所定の値より大きい場所に対して、清掃依頼を出すといったことが考えられる。また、利用頻度が所定の値より小さい場所については、人がほとんど利用していないことを表しているので、施設の有効利用という観点から、その施設を廃止したり、レイアウトの変更を行うといったことも可能である。
次に、図18を使って、ヒストグラム算出手段1700の処理概要の一例を説明する。まず、廊下など空間的に広がりをもつ施設を複数の小領域に空間を分割し、それぞれの小領域に、その領域を通過する動線の数を保持する頻度値を持たせる。例えば、動線1800が発生した場合は、その動線が通過する小領域1810から小領域1816の頻度値を1ずつ増加させる。この処理を所定の期間に発生した全ての動線に対して施すことで、小領域を通過した動線の回数を求めることが可能になる。
なお、動線が小領域を通過する頻度を算出するだけでなく、小領域間の移動に関する情報を算出してもよい。移動に関する情報とは、例えば、ある小領域から隣接する小領域への移動確率であるとか、隣接する小領域間の人間の出入りの差などである。このような情報を人間に提示することで、動線の流れを把握することが容易になる。
このことを、図24を使って説明する。小領域2400と小領域2402の間には、これら両者間の移動に関する情報を保持する移動頻度保持領域2404と移動頻度保持領域2406が設けられている。移動頻度保持領域2404は、小領域2400から小領域2402への移動頻度を保持する。逆に、移動頻度保持領域2406は、小領域2402から小領域2400への移動頻度を保持する。例えば、動線2408が発生した場合には、小領域2400から小領域2402への移動が発生したと考えて、動頻度保持領域2404の値を1増加させる。動線2410が発生した場合には、小領域2402から小領域2400への移動が発生したと考えて、動頻度保持領域2406の値を1増加させる。ここでは、小領域2400と小領域2402との関係について述べたが、他の領域間についても同様に移動頻度保持領域を設ける。
ある期間に発生した動線について、このような移動頻度の算出処理を施すことで、ある領域からある領域への移動確率が分かる。例えば、小領域2400から小領域2402への移動確率は、「小領域2400から小領域2402への移動頻度/小領域2400から隣接する小領域への全移動頻度」で計算できる。ここで、小領域2400から小領域2402への移動頻度は、動頻度保持領域2404が保持する値である。また、小領域2400から隣接する小領域への全移動頻度は、動頻度保持領域2404、動頻度保持領域2412、動頻度保持領域2414、および動頻度保持領域2416の保持する値の総和である。また、ある領域からある領域への人間の出入りの差も知ることができる。例えば、動頻度保持領域2404の保持する値から動頻度保持領域2406の保持する値を減じた値は、両小領域間の人間の出入りの差を表す。この値が、正のときは、小領域2400から小領域2402に出ていった人が多いことを示す。この値が、負のときは、小領域2402から小領域2400に入ってきた人が多いことを示す。この値が、0のときは、出入りの差がないことを示す。
次に、図23を使って、ヒストグラム評価手段1704の処理概要の一例を説明する。ヒストグラムデータ2300は、ある施設を通過する動線の数、すなわち通過頻度を保持するテーブルであり、それぞれの小領域中の数字は、通過頻度を表している。ここで、ヒストグラム評価手段1704は、小領域の頻度値が、あらかじめ設定した頻度の許容値以上になった場合に、清掃が必要と判断すると考える。ここで、この許容値を700とするならば、小領域の集合2302が清掃の対象となる。ヒストグラム評価手段1704は、この領域を、清掃の対象として、保全計画手段1706に伝える。清掃が終了したら頻度値を0にクリアして、次回以降の清掃に備える。また、ヒストグラムデータ2300の値を利用者に直接提示して、判断を利用者に委ねても良い。この場合、ヒストグラムデータ2300を把握しやすくするために、科学技術計算結果の可視化で用いられる可視化技術を利用すればよい。例えば、ヒストグラムデータ2300の中の小領域の通過頻度のようなスカラ量を可視化する場合は、同じ通過頻度の小領域を線で結ぶ等高線図などで表示すればよい。ヒストグラムデータ2300の中の小領域間の移動頻度のようなベクトル量を可視化する場合は、ベクトルを矢印で表示するベクトル図などで表示すればよい。この時、移動頻度の大きさに応じて、ベクトルの長さ、太さ、色、輝度値などを変更してもよい。
このような構成を取ることで、多くの人間に利用されている場所を特定して、その場所を重点的に維持管理できるようになるので、効率的な維持管理が可能になる。
次に、図1の移動コスト監視装置を利用した事業の一形態について説明する。ここでは、複数の店舗の動線の状況を監視センタで一括監視して、移動コストが大きい場合には、監視センタから店舗側に、改善措置を促すような監視サービス事業を想定している。図26は、店舗A(2600)、店舗B(2602)で発生する移動コストを、監視センタ2604で遠隔監視する場合の事業形態を示している。店舗A(2600)、店舗B(2602)と監視センタ2604の間は、インターネット2606で接続されており、相互にデータを交換することが可能である。
次に、図27に、本発明の移動コスト監視装置を、この事業形態に適用するための、具体的な機能構成を示す。機能的には、図1に示したものと同じであるが、これらの機能を、各店舗2600、2602や監視センタ2604への分散的に割り当てる点が異なる。領域2700は、監視対象となる店舗に割り当てるべき機能を示している。これからは、動線計測手段102と出力手段112を、店舗に割り当てることがわかる。一方、領域2702は、監視対象である各店舗を監視する監視センタ2606に割り当てるべき機能を示している。これから、移動コスト算出手段106、移動コスト評価手段108、動線データ104、移動コスト許容値110を、監視センタ2606に割り当てることがわかる。
このような事業形態をとる場合の処理の流れは、図3のフローチャートで示したもの同じであり、動線データの収集処理と動線データの評価処理の二つの処理に分けられる。図3(a)は、動線データの収集処理を表すフローチャートである。これは、監視対象である各店舗中の移動物体の動線を得るための処理である。まず、ステップ300では、ステップ302の処理を所定の頻度で繰り返す。ステップ302では、各店舗に設置した動線計測手段102で、店舗中の移動物体の位置を計測する。以上のステップ300〜ステップ302の処理により、移動物体の動線を得ることができる。監視センタ2604では、この計測結果を、インターネット2606経由で取得し、動線データ104として蓄積する。
次に、図3(b)は、動線データの評価処理を表すフローチャートである。これは、計測によって得られた動線データ104を評価するための処理である。ステップ350では、監視センタ2604の監視員に移動コスト許容値110を設定させる。ステップ352では、ステップ354からステップ358の処理を所定の頻度で繰り返す。ステップ354では、監視センタ2604に設置した移動コスト算出手段106を使って、所定の期間の動線データを用いて移動物体が移動に費やした移動コストを算出する。ステップ356では、監視センタ2604に設置した移動コスト評価手段108を使って、算出した移動コストが許容値内かどうか判定する。ステップ358では、ステップ356で移動コストが許容値を越えたと判定した場合には、各店舗に設置した出力手段112を利用して、監視対象である店舗の管理者に警告を発する。
このような事業形態をとることで、監視に必要なデータをインターネット経由でやり取りすることで、監視対象と監視センタを分離することができるようになり、遠隔監視が実現できる。また、インターネットを介して、監視センタが複数の監視対象とデータをやり取りできるので、一つの監視センタで複数の監視対象を監視することが可能となり、効率的な監視事業が実現できる。
100:監視対象
102:動線計測手段
104:動線データ
106:移動コスト算出手段
108:移動コスト評価手段
110:移動コスト許容値
112:出力手段
200:計算機システム
201:中央演算装置(CPU)
202:主記憶装置
203:外部記憶装置
206:動線計測装置
401:人間
402:動線
410〜413:ビデオカメラ
102:動線計測手段
104:動線データ
106:移動コスト算出手段
108:移動コスト評価手段
110:移動コスト許容値
112:出力手段
200:計算機システム
201:中央演算装置(CPU)
202:主記憶装置
203:外部記憶装置
206:動線計測装置
401:人間
402:動線
410〜413:ビデオカメラ
Claims (2)
- 監視する対象がエレベータを呼び出す制御信号を生成することのできるエレベータ制御手段を備えたエレベータを含む複数の施設を備えた建物であるときに、該建物の配置は、エレベータの配置を含めて施設の組み合わせた構成で、登録手段に登録され、施設を移動する人間が予め登録された登録手段と、前記施設間を移動する登録された人間を撮像する撮像手段と、撮像によって得られた撮像情報から前記登録手段に登録された人間を特定する特定手段と、該特定された人間が施設間を移動する動線を計測する動線計測手段と、動線に対する施設の区間の動線データを格納する動線−動線データ格納手段と、計測された動線について施設の区間の動線データである動線情報を生成する動線情報生成手段とを有して、該動線情報から管理情報を生成する管理情報生成手段を備え、
前記管理情報生成手段は、過去に計測された動線によって生成された動線データである動線情報を蓄積し、蓄積された動線情報に関連してエレベータ呼び出しを登録した動線履歴パターンを格納する格納手段、前記動線情報生成手段によって生成された動線情報を前記格納手段に格納された前記動線履歴パターンと照合し、該動線情報が動線履歴パターンに適合するかを判定する動線履歴照合手段、適合すると判定された場合に、エレベータ制御手段は、前記適合する動線履歴パターンに対応してエレベータを呼び出す制御信号を生成すること
を特徴とする施設管理装置。 - 請求項1において、前記エレベータ制御手段は、適合判定がなされた場合に制御モードを変更してエレベータを呼び出すことを特徴とする施設管理装置。
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