JP2007231216A - 難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体及びその製造方法 - Google Patents

難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ハロゲン系難燃剤を使用せずに、難燃性、しかも異方性を示さない難燃性を付与し、さらに機械的物性の低下を抑えた高発泡倍率の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体及びその製造方法の提供。
【解決手段】難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重量部、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部が配合された樹脂組成物からなる。また、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部および熱分解型発泡剤とを配合した樹脂組成物を用いて長尺シート化する工程にてシート化し、次いで該シートに電離性照射線を照射することによって樹脂を架橋させる工程を経た後、該シートを加熱して熱分解型発泡剤を分解させる工程を通すことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ハロゲン含有化合物を全く使用せずに優れた難燃性を付与した発泡体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、外観が良好で、発泡体の製造が容易であり、機械的特性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその製造方法を提供する。
産業界および日常消費生活の中に占める高分子材料は年々増加し、様々な用途に使用されている。しかしこれらの高分子材料は燃焼しやすいことが欠点である。この欠点を補うため、従来は難燃性を付与するために、臭素系などに代表されるハロゲン系難燃剤に、難燃助剤として三酸化アンチモンを併用する方法が主として利用されてきた。しかし近年、環境に対する考え方の高まりを受けて、例えば、電気業界における欧州でのRoHS指令などに代表されるように、デカブロモジフェニルエーテルなどはダイオキシン類を発生する懸念があるため抑制する方向にある。また、それ以外のハロゲン系難燃剤においても、成形加工時や廃棄物として焼却処理する場合に多量の刺激性の煙を発生し、機器を腐食させ、除外設備が必要であった。
そのため、高度の難燃性能を有する非ハロゲン系難燃剤の開発が熱望されているが、現在のところ、ハロゲン系レベルの難燃性を有する難燃剤は開発されていない。
ナイロンやポリブチレンテレフタレートといったエンプラ樹脂においては、非ハロゲン系難燃剤とドリップ防止剤としてポリテトラフルオロエチレンを添加した成形品がUL-94のV-0レベルの難燃性を有している(特許文献1)。
ポリオレフィン系樹脂においても、類似の報告はされているが、エンプラ樹脂に比べて、非ハロゲン系難燃剤の添加量は多い。特に分子中に炭素と水素しか存在しないポリエチレンやポリプロピレン等では、難燃性能を向上させることが困難である。
また、ポリオレフィン系樹脂を発泡させたポリオレフィン系樹脂発泡体は、電気機器における筐体の断熱材用途として使用されており、発泡体の高倍化が必要である。かかる発泡体にあっては発泡体の気泡に燃焼の3要素である酸素を空気として含んでいることと、発泡することにより単位体積あたりの樹脂量が少なく低密度になっていることで、単位断面積当たりに含まれる難燃剤量も少なくなり、その難燃化は非常に困難である。例えば、リン系、窒素系化合物によるポリオレフィン系樹脂の難燃化が検討されている(特許文献2)。この組み合わせは、自己消化するまでに著しく熱変形してしまう事に加え、燃焼中に分解した低分子量化合物が液状となり滴下するドリップ現象が発生するなどの問題点がある。
また、通常長尺のポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、熱分解型発泡剤を分解させ、発泡体を得るに際して、長手方向のみ、また長手方向と幅方向に延伸させながら発泡体を製造する。特に長手方向には搬送張力がかかるため、気泡形状はやや偏平となり易く、その結果、難燃性に異方性が生じ、長手方向の難燃化は幅方向に比べて難しいものであった。
特開2000−319492号公報 特開平8−41234号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、ハロゲン系難燃剤を使用せずに、難燃性、しかも異方性を示さない難燃性を付与することができ、さらに機械的物性の低下を抑えた高発泡倍率の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体及びその製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部が配合された樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂架橋発泡体であって、該架橋発泡体のゲル分率が10%以上であることを特徴とするものである。
かかる難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の好ましい態様としては、
(1)該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、金属酸化物を1〜100重量部含有しているものであること。
(2)前記フルオロエチレン系重合体が、ポリテトラフルオロエチレンであること。
(3)前記フルオロエチレン系重合体が、アクリル変性されているものであること。
(4)該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、密度が50kg/m以下であるものであること。
(5)該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、長手方向の平均気泡径と厚み方向の平均気泡径の比、及び幅方向の平均気泡径と厚み方向の平均気泡径の比が1.0〜1.5であるものであること。
である。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部および熱分解型発泡剤とを配合したポリオレフィン系樹脂樹脂組成物を用いて長尺シート化する工程にてシート化した後、次いで該シートに電離性照射線を照射することによって樹脂を架橋させる工程を経た後、該シートを加熱して熱分解型発泡剤を分解させる工程を通すことを特徴とするものである。
本発明によれば、ハロゲン系難燃剤を使用せずに、優れた難燃性を有し、外観が良好で、機械的特性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を得ることが出来る。
本発明の好ましい態様によれば、上記に加え、高発泡倍率であっても、難燃性、機械的特性に優れ、燃焼性に異方性を示さない架橋発泡体を得ることが出来る。
本発明は、前記課題、つまりハロゲン系難燃剤を使用せずに、難燃性、しかも異方性を示さない燃焼性を付与することができ、さらに機械的物性の低下を抑えた高発泡倍率の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体について、鋭意検討し、ポリオレフィン系樹脂に、非ハロゲン系難燃剤とフルオロエチレン系重合体とをそれぞれ特定量組み合わせて配合した樹脂組成物を採用してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン及び/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレン及び/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下の例えば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸エステル、芳香族アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などを使用することができる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独または2種以上混合して用いることができる。かかるポリオレフィン系樹脂の中でも、PP、HDPE、LDPE、LLDPE、エチレン−プロピレンランダムまたはブロック共重合体から選ばれた少なくとも1種が、汎用性が高く、安価であるという点で好ましく使用される。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、0.1〜30g/10分が好ましく、さらに0.3〜20g/10分であることが好ましい。
さらに具体的にいえば、ポリオレフィン系樹脂のMFRが0.1g/10分未満では、流動性が充分でなく、発泡性シートの成形が困難であり、また、MFRが30g/10分を超えると、樹脂の溶融張力が低下して、該シートの発泡における安定性が不充分であるとともに、発泡セルが大きくなり、表面での破泡とガス抜けが起こり、良好な発泡成形品を提供しにくくなる。これらのMFRの値は後述するポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の架橋度とフルオロエチレン系重合体の添加量に密接に関係する。尚、ここにおいて、MFRの値とはJISK6760に準じて測定した数値であり、ポリエチレン系樹脂においては190℃で、ポリプロピレン系樹脂においては、230℃で測定した数値のことである。
本発明に用いられている非ハロゲン系難燃剤は、特に限定されるものではないが、リン含有化合物、窒素含有化合物が挙げられる。上記リン含有化合物としては、リン、リン酸亜鉛、リン酸メラミン、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ポリリン酸アミド、ポリリン酸アンモニウム、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートが挙げられ、窒素含有化合物として尿素、メラミン、シアヌル酸、ビウレット、バルビツール酸、尿酸、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。リン含有化合物を単独で使用しても良いが、窒素含有化合物と併用すると相乗効果があるため好ましい。
本発明に用いられる非ハロゲン系難燃剤の添加量は、5〜100重量部が必要であり、好ましくは10〜50重量部である。かかる添加量が5重量部未満であると、燃焼時に生成する炭化皮膜が少なく、自消性を示さなくなり、100重量部を越えると、機械的物性が著しく低下し、良好な発泡体が得られなくなる。
本発明に用いられるドリップ防止剤として用いるフルオロエチレン系重合体の配合量は、合成樹脂の重量100重量部に対して、0.05〜2重量部が必要で、より好ましくは0.1〜1重量部である。0.05重量部未満ではドリップ防止剤としての効果が発現されない。フルオロエチレン系重合体はチクソトロピー性を示す化合物であるため、熱分解型発泡剤を分解させ発泡体を作成する工程において、樹脂の溶融張力を増大する効果がある。そのため、シート成形時に残る歪みムラが発泡時にも大きく影響され、歪みの大きい部分は発泡しにくくなる。このような現象は後述する架橋度が高いほど顕著である。また、熱分解型発泡剤を分解しないように混練して発泡性シートを作成する工程において、フルオロエチレン系共重合体の添加部数が多すぎると、樹脂のMFRに大きく影響され、均一に混練する際に発泡剤が分解されてしまう恐れがあるため、フルオロエチレン系重合体の配合量は2重量部以下であることが必要である。また、フルオロエチレン系重合体に変えて酸化チタンを用いても良い。
本発明に用いられるフルオロエチレン系重合体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン 、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン/エチレン共重合体等が例示され、これらをそれぞれ単独又は複数併用して使用してもよい。
一般に上述のようなフルオロエチレン系重合体は、ポリオレフィン系樹脂に対する相溶性が良くない場合が多く、単に添加するだけでは凝集してしまい、外観の良好な発泡体が得られない場合がある。その様な場合にはフルオロエチレン系重合体を公知の方法、例えば、ポリオレフィン系樹脂に相溶するアクリル化合物で変性することにより分散性を向上させることが可能であり、好ましい態様の一つである。アクリル化合物で変性する方法は、フルオロエチレン、アクリル酸エステルを乳化重合することで得られたそれぞれの分散液を混合し、凝固又は噴霧乾燥することで得られる。分散液の凝固は例えば塩化カルシウムや硫酸マグネシウムなどの金属塩を溶解した熱水中に投入して塩析させることで行うことができ、噴霧乾燥は例えば、加熱雰囲気下で噴霧することで行うことが出来る。
本発明では、ポリオレフィン系樹脂発泡体の難燃性をより一層向上させるために、上記樹脂組成物の発泡性を阻害しない範囲で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水和金属酸化物;赤リン等の難燃助剤が添加されてもよい。赤リンとしては、耐湿性、安全性(混練時の自然発火)の点から粒子表面を樹脂でコーティングしたものが好ましい。
本発明に用いる熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、および重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。必要に応じて、酸化亜鉛やステアリン酸亜鉛などの発泡剤分解促進剤を使用することは均一な発泡体を得るために好ましい態様である。
また、様々な要求特性を満足するために、本発明の効果を阻害しない範囲において、種々の従来公知の添加剤成分を添加しても良い。例えば、添加剤として、有機過酸化物、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、顔料、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、核剤、可塑剤、抗菌剤、生分解促進剤、発泡剤分解促進剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、充填剤、防臭剤、増粘剤、気泡安定剤などを、単独もしくは2種類以上併用して添加しても良い。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、樹脂組成物が架橋され構成されてなるものであり、架橋の程度を示すゲル分率は、10%以上である。ゲル分率が10%を下回ると、発泡体の製造が困難になるほか、得られた発泡体の機械的強度が低くなるし、高発泡倍率も達成することができなくなるため好ましくない。
なお、ゲル分率は下記方法で測定した値のことである。
すなわち、発泡体を約50mg精密に秤量し、130℃の温度のテトラリン25mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、アセトンで洗浄、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、下記の式に従ってゲル分率を百分率で算出したものである。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量した発泡体の重量(mg)}×100
本発明の発泡体の密度は、要求される特性に応じて適宜設定され、密度が低くなればなるほど、難燃化は難しくなるが、断熱性や軽量性を鑑みて、密度は50kg/m以下であることが好ましく、45kg/m以下であることが更に好ましい。なお、発泡体の密度は、JIS K6767に従い測定した値である。
通常、長尺のポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、熱分解型発泡剤を分解させ、発泡体を得るに際し、長手方向と幅方向に延伸させながら発泡体を製造する。特に長手方向には、搬送張力がかかるため、長手方向の気泡径は、幅方向に比べて偏平になりやすい。その結果、長手方向の難燃化は、幅方向に比べて難しくなる。この様な傾向は高発泡倍率になればなる程より顕著になる。しかし、フルオロエチレン系重合体を用いると、同一の搬送張力とした場合、フルオロエチレン系重合体を用いない場合に比べると、長手方向と幅方向の燃焼性の異方性が小さくなることが分かった。その原因は現時点では明らかにはなっていないが、以下の様に考えられる。発泡時には、ポリオレフィン系樹脂がその融点以上に加熱され溶融状態にあるが、通常は予め電離性放射線等により樹脂を架橋させることで溶融張力を付与し、発泡剤の分解ガスを保持するとともに、搬送、延伸張力等がかかってもシートが切断されたり、極度に伸ばされたりしない様にしている。架橋度を上げ溶融張力を向上させることで、搬送張力等に対して延伸されにくくなるため、延伸倍率が低下し、長手方向の気泡径は偏平になりにくくなるが、架橋度を高くしすぎると伸度等が低下し、所望の物性のものが得られない場合がある。逆に架橋度を低くすると、今度は溶融張力が低下し、長手方向の搬送張力等により気泡が偏平化してしまう可能性がある。しかし、チクソトロピー性を示すフルオロエチレン系重合体を使用すると、発泡時に増粘効果が発現することで、同じ架橋度においても、溶融張力を高めることが出来、そのため長手方向の延伸倍率を低下させることができるものと考えられる。その結果、発泡体の気泡がより球形に近づくと考えられる。これにより、長手方向の気泡径と幅方向の気泡径の差が小さくなるために、燃焼時の異方性も小さくなるものと考えられる。
上記の理由から、燃焼時の異方性を小さくするためにも、長手方向と厚み方向の平均気泡径の比及び幅方向と厚み方向の平均気泡径の比は1.0〜1.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、1.0〜1.4の範囲である。
次に本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の製造方法について説明する。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部、および熱分解型発泡剤とを配合したポリオレフィン系樹脂樹脂組成物を用いて長尺シート化する工程にてシート化した後、次いで該シートに電離性放射線を照射することによって樹脂を架橋させる工程を経た後、該シートを加熱して熱分解型発泡剤を分解させる工程を通すことによって製造される。
前記長尺シート化する方法としては、例えば、各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の混練装置を用いて溶融混練した後、シ−ト金型を付けた押出機、カレンダ−ロ−ル等を用いて、シート状に成形する方法などが挙げられる。
次いで、得られたシート状成形体に電離性放射線を照射して架橋させる。電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線および電子線等を挙げることができる。電離性放射線の照射線量は、目的とする架橋度、被照射物の形状および厚み等によって異なるが、照射線量は通常1〜200kGyであり、好ましくは1〜100kGyである。照射線量が少なすぎると、十分に架橋が進行しないためその効果が不十分であり、多すぎると樹脂の溶融張力が大きすぎるため発泡ムラが生じる。これらの中でも、電子の加速電圧を制御することで様々な厚みの被照射物に対して効率よく樹脂を架橋させることができるため、電子線が好ましく用いられる。また、電離性放射線の照射回数については特に制限はない。
次いで、かかる架橋シートを加熱することにより発泡体を作成する。加熱の方法としては、従来より公知の方法を用いて良く、例えば熱風やラジエーションヒーターにより加熱する方法、メタルバスやソルトバスなどの熱媒に接触させて加熱する方法など、特に限定されるものではない。これらの中でも縦型の発泡方法では、搬送張力に加え重力がかかり、長手方向に延伸されやすくなる傾向があるため、横型の発泡方法が好ましい。この中でも、特に熱媒に接触させることで搬送張力を低減できるため、メタルバスやソルトバス等を用いて加熱させる方法が最も好ましい。
なお、上記の電離性放射線の照射および加熱発泡は連続式でも良いし、バッチ式でもよい。
以上、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物によって、ハロゲン含有化合物を全く使用せずに難燃性の優れたポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を得ることができる。
本発明の実施例、比較例で用いた測定方法は以下の通りである。
燃焼試験
燃焼性は以下の2つの基準について評価を行った。
1.自動車用有機資材の燃焼性試験方法(MVSS No.302)に準拠してサンプルの長手方向、幅方向の燃焼速度を測定した。長手方向、幅方向の両方向について自己消火性を示すか、または燃焼速度が100mm/min.以下の場合を合格とし、燃焼速度が100mm/min.を超えてサンプルが燃え切る場合か、一方向についてのみ自己消火性を示すか、または燃焼速度が100mm/min.以下の場合を不合格とした。
2.発泡材料の水平燃焼試験(UL94)に準拠してサンプルの長手方向、幅方向の燃焼区分を測定し、HF−1区分に合格するかどうかを判定した。両方向について、HF−1の基準を満たす場合のみ合格とする。
通常難燃性の評価は上記どちらかの一方であることが多いが、発泡体の密度が高くなると燃焼時に出来た炭化層が落下し、UL94試験において、下部に設置した脱脂綿に着火しやすくなるが、MVSS No.302試験における燃焼速度は低下する傾向にある。一方、発泡体の密度が低くなると、MVSS No.302試験において、燃焼速度が速くなる傾向があり、難燃性の観点からは、両方の規格に合格する発泡体であることは非常に好ましいことである。
MFR測定
MFRはJIS K6760に準じて、190℃にて測定を行った値である。
密度測定
発泡体の密度をミラージュ社製「ED120T」型比重計を用いて測定した。
ゲル分率測定
発泡体を約50mg精密に秤量し、130℃の温度のテトラリン25mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、アセトンで洗浄、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、下記の式に従ってゲル分率を百分率で算出した。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量した発泡体の重量(mg)}×100
外観評価
できた発泡体を目視観察し、表面が非常に良好なものを○、表面に若干の凹凸があるものを△とした。
機械的強度評価
機械的強度の評価として引張伸度を用いた。引張伸度は、JIS K 6767(1999年)に準拠して測定を行い、試験片を常温下で、速度500mm/分で試験片を引張り、破断点の伸度を測定した。難燃剤を加えず、ポリオレフィン系樹脂のみで作成した発泡体の伸度に対する各サンプルの伸度の比から伸度低下率を測定した。
長手方向の平均気泡径と幅方向の平均気泡径の比
・平均気泡径の測定方法
発泡体試料片を、気泡が潰れないよう切断し、その断面をマイクロスコープで拡大(倍率25〜50倍)し、厚さ方向に垂線を引き、垂線上にある気泡の内径を計測する。任意に抽出した120点の気泡の内径を測定し、その平均値を平均気泡径(μm)とした。
本発明を実施例により、さらに説明する。
実施例1
表1に示すように、密度925kg/m、MFR=2.3のポリエチレン100部、非ハロゲン系難燃剤として、FP2000(旭電化製) 30重量部、アクリル変性したポリテトラフルオロエチレンを20重量%マスターバッチしたものとしてメタブレン(登録商標)(三菱レイヨン製、マスターバッチ中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は4重量%)を2重量部、酸化防止剤として、イルガノックス(登録商標)1010(チバスペシャリティケミカルズ製) を0.5重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学製)15重量部をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、シリンダー前半部分を160〜170℃の温度に、後半部分を130〜140℃の温度に設定したスクリュー径60mmφの2軸押出機を用い、スクリュー回転数18rpmでTダイから押し出し、厚さ2.1mmの長尺の発泡性シートを作成した。
このシートに加速電圧650Kvで, 50kGyに相当する線量を両面から照射して架橋させた。次いで、このシートを225℃に設定したソルト浴に連続的に投入し加熱するとともに、ソルト面に接触していない面を赤外線ヒーターで加熱させることで、シート状の発泡体を得た。その時のシート供給速度に対する引取速度の比は3.7であった。
実施例2〜4、比較例1〜5
実施例2〜4、比較例1〜5については表1に示した組成で行った以外は実施例1と同様な方法で行った。なお、実施例4において用いたポリプロピレン樹脂は、エチレンが3.5%共重合したエチレン−プロピレンランダム共重合体であり、MFRは230℃で1.4g/10min.である。シリンダー部分の温度は前半部分を180〜190℃、後半部分を150〜160℃とした。
Figure 2007231216
実施例1〜4については、得られた発泡体の燃焼試験結果、MVSSNo.302自己消火性、UL94 HF-1ともに合格する難燃性能が得られた。また、その外観、機械的強度はアクリル変性したポリテトラフルオロエチレンを用いた場合に特に良好であった。これはフルオロエチレン系共重合体とポリオレフィン樹脂との相溶性が向上したことが原因ではないかと考えられる。
実施例1と比較例1で作成した発泡体においては、燃焼試験結果に差があった。これは比較例1の場合、燃焼時にドリップ現象が生じ、炭化層が発泡体中に保持できていなかったことが原因である。
比較例5においては、フルオロエチレン系共重合体が多すぎるため、発泡体作成時に歪みが生じ良好な発泡体を作成することが出来なかった。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、従来のハロゲン系難燃剤を用いた発泡体と同等の難燃性を有し、従来の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡体と同様の用途に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部が配合された樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂架橋発泡体であって、該架橋発泡体のゲル分率が10%以上であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  2. 該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、金属酸化物を1〜100重量部含有しているものである請求項1記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  3. 前記フルオロエチレン系重合体が、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1または2に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  4. 前記フルオロエチレン系重合体が、アクリル変性されているものである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  5. 該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、密度が50kg/m以下であるものである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  6. 該ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体が、長手方向の平均気泡径と厚み方向の平均気泡径の比、及び幅方向の平均気泡径と厚み方向の平均気泡径の比が1.0〜1.5であるものである請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
  7. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、非ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、フルオロエチレン系重合体0.05〜2重量部および熱分解型発泡剤とを配合したポリオレフィン系樹脂組成物を用いて長尺シート化する工程にてシート化した後、次いで該シートに電離性照射線を照射することによって樹脂を架橋させる工程を経た後、該シートを加熱して熱分解型発泡剤を分解させる工程を通すことを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の製造方法。
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